(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記水洗圧送式便器の設置時に前記粉砕圧送時間計測手段により計測される初期粉砕圧送時間を取得し、前記初期粉砕圧送時間に基づいて、前記粉砕圧送対象判別期間及び前記粉砕圧送完了判別期間を設定することを特徴とする請求項2または3に記載の水洗圧送式便器。
前記制御部は、前記水洗圧送式便器の設置時に前記粉砕圧送時間計測手段により計測される初期粉砕圧送時間を取得し、前記初期粉砕圧送時間に基づいて、前記異常判別閾値を設定することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の水洗圧送式便器。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0022】
本実施形態に係る水洗圧送式便器は、便器本体の汚物や汚水を下水へ圧送する前に、一旦貯留槽へ汚物や汚水を排出し、貯留槽内に設けた粉砕部が有する粉砕手段を用いて、貯留槽へ排出された汚物を粉砕し、その後、粉砕された汚物および汚水を圧送手段により圧送配管へと圧送排水する構成において、粉砕圧送判別期間におけるモータ電流変位が任意の閾値より低い状態であり続ける場合にのみ、粉砕圧送完了時間を計測し、粉砕圧送完了時間が予め決められた閾値より長い場合に、貯留槽の外部へ圧送する圧送動作の圧送異常を報知する報知部を備えることで、精度よく圧送異常を報知し、水洗圧送式便器が使えなくなる前にメンテナンスを促すことができるものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る水洗圧送式便器について、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる水洗圧送式便器1を示す斜視模式図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の水洗圧送式便器1は、便器本体20と、その便器本体20に接続される給水ホース11及び排水ホース12と、を備えている。給水ホース11の上流側及び排水ホース12の下流側は、建物に配管された図示しない給水配管及び排水配管に接続される。
次に、本発明の実施形態である水洗圧送式便器1の要部構成について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施形態にかかる水洗圧送式便器1の要部構成を表す要部構成図である。
【0025】
図2に示すように、本実施形態にかかる水洗圧送式便器1は、便器本体20と、この便器本体20に給水管3を経て給水する給水装置4(給水洗浄手段)と、固形物粉砕圧送装置である圧送装置50と、を備えている。
【0026】
便器本体20は、汚物を受けるボウル部21と、汚物を排出する排出口22と、ボウル部21と排出口22とを連通させる排水路23と、を有する。排水路23は、溜水24により封水されている。
【0027】
給水装置4は、便器本体20を給水洗浄するものである。給水装置4の下流側は、給水管3を介して便器本体20に接続されている。給水管3の途中には、電磁バルブ等からなる給水弁4aが設けられている。一方、給水装置4の上流側は給水ホース11の下流側に接続されている。便器本体20への給水量は、図示はされていないが圧送装置50に設置された制御装置90(
図3参照)によって給水弁4aが開閉制御されることで調整される。
【0028】
例えば、使用者が水洗圧送式便器1を使用後、便器本体20を洗浄するための図示しないリモコン98の洗浄操作スイッチをオンにすると、制御装置90が給水弁4aを制御することで給水装置4から便器本体20に洗浄用の給水がなされて、便器本体20が給水洗浄される。なお、便器本体20に着座検知用センサを設け、その着座検知用センサにより、便器本体20に着座していた使用者が離座したことを検知すると、給水装置4から便器本体20に洗浄用の給水がなされて、便器本体20が給水洗浄される構成としてもよい。
【0029】
圧送装置50は、便器本体20の外部に設けられている。圧送装置50は、便器本体20の排出口22に接続された貯留槽51を有する。
【0030】
貯留槽51は、貯留槽51の内部に、粉砕部60と、インペラ70(圧送手段)と、を有する。粉砕部60は、便器本体20の排出口22から貯留槽51に排出された汚水中の汚物やトイレットペーパ等の固形物を粉砕するパルセータ61(粉砕手段)を有する。インペラ70は、粉砕部60の下部に設けられ、貯留槽51内の汚水を外部へ強制的に圧送する。
粉砕部60は、複数の孔62を有するスクリーン63によって形成された粉砕室64を有し、便器本体20の排出口22から貯留槽51内に排出される汚水および固形物は、まず粉砕室64に一旦収容される。この粉砕室64内の固形物のうち、スクリーン63の孔62の大きさよりも大きい固形物は孔62を通過できずに粉砕室64内に捕捉され、スクリーン63の孔62の大きさよりも小さい固形物は、貯留槽51内において孔62を通過して粉砕室64外へと流れ出ていく。
【0031】
粉砕室64内には、パルセータ61が設けられている。パルセータ61は、粉砕室64内において上下方向に配置された回転軸71により回転可能に支持される。パルセータ61が回転することにより、スクリーン63の孔62を通過できず粉砕室64内に捕捉された固形物が粉砕される。
【0032】
インペラ70は、パルセータ61と回転軸を共有しており、粉砕室64内から粉砕室64外へと下方に向けて延出されたパルセータ61の回転軸71の下端に取り付けられている。インペラ70が回転することにより、貯留槽51内においてスクリーン63の孔62を通過して粉砕室64外へと流れ出てきた汚水および固形物は、貯留槽51に接続された圧送配管53を通して、貯留槽51の外部へと圧送される。一方、回転軸71の上端には、回転軸71を正逆転可能に駆動する粉砕圧送用モータ52が取り付けられている。粉砕圧送用モータ52は制御装置90により駆動され、回転軸71を回転駆動させることで、パルセータ61とインペラ70とは同軸上で回転駆動する。なお、本実施形態では、パルセータ61とインペラ70とは、1つの粉砕圧送用モータ52の駆動により回転駆動させるが、別体のモータの駆動によりそれぞれ回転駆動させてもよい。
【0033】
報知部55は、圧送装置50に設置され、水洗圧送式便器1に生じた異常状態を使用者やメンテナンス作業者に対し報知する。尚、報知部55の詳細は後述する。
【0034】
次に、本発明の実施形態に係る制御装置90の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る水洗圧送式便器1の制御装置90の構成を示すブロック図である。
【0035】
図3に示すように、制御装置90は、制御部91と、操作受付部92と、モータ駆動信号出力部93、モータ電流計測部94と、報知出力部96と、給水弁駆動信号出力部97と、を有する。
【0036】
操作受付部92は、リモコン98から入力される操作信号を制御部91に出力する部分である。モータ駆動信号出力部93は、制御部91から出力される制御信号に基づいて粉砕圧送用モータ52にモータ駆動信号を出力する部分である。また、モータ電流計測部94は、粉砕圧送用モータ52を駆動する際に発生するモータ電流を計測し、制御部91に出力する部分である。報知出力部96は、制御部91から出力される制御信号に基づいて報知部55に圧送異常報知などを行う報知信号を出力する部分である。給水弁駆動信号出力部97は、制御部91から出力される制御信号に基づいて給水弁4aに給水弁駆動信号を出力する部分である。
【0037】
制御部91は、操作受付部92およびモータ電流計測部94のそれぞれから出力される信号を受け取って所定の情報処理を行い、その情報処理の結果実行する制御に応じた制御信号をモータ駆動信号出力部93、報知出力部96、及び給水弁駆動信号出力部97のそれぞれに出力する。制御部91は、モータ電流変位計測手段91aと、第1モータ電流変位判定手段91bと、第2モータ電流変位判定手段91cと、粉砕圧送対象判別期間記憶手段91dと、粉砕圧送完了判別期間記憶手段91eと、粉砕圧送時間計測手段91fと、異常判別閾値記憶手段91gと、異常判定手段91hと、異常報知手段91iと、を有する。
【0038】
モータ電流変位計測手段91aは、モータ電流計測部94で計測されるモータ電流信号Imotorを例えばアナログ・デジタル変換回路(A/Dコンバータ)で受けて、任意の微小時間ΔT当たりのモータ電流変位ΔImotor(=Imotor(t)−Imotor(t−ΔT)を計測する。
【0039】
次に第1モータ電流変位判定手段91bは、予め粉砕圧送対象判別期間記憶手段91dに記憶された時間t1(T1≦t1<T2)において、モータ電流変位計測手段91aで計測されるモータ電流変位ΔImotorを受けて、第1の閾値Ith1より高くなるか否かを判定する。尚、本実施の形態において、第1の閾値Ith1は「0.05アンペア(A)」とする。また、粉砕圧送対象判別期間記憶手段91dについては、後述する。
【0040】
第2モータ電流変位判定手段91cは、予め粉砕圧送完了判別期間記憶手段91eに記憶された時間t2(t2≧T2)において、モータ電流変位計測手段91aで計測されたモータ電流変位ΔImotorを受けて、第2の閾値Ith2より低くなるか否かを判定する。尚、本実施の形態において、第2の閾値Ith1は「−0.05A」とする。また、粉砕圧送完了判別期間記憶手段91eについては、後述する。
【0041】
粉砕圧送時間計測手段91fは、粉砕圧送開始から、モータ電流変位ΔImotorが第2の閾値Ith2より低くなるまでの時間T_cmpを第2モータ電流変位判定手段91cにより計測する。
【0042】
次に、異常判定手段91hは、予め異常判別閾値記憶手段91gに記憶された閾値TA(第1の判別値)及びTB(第2の判別値)(TB>TA)と、粉砕圧送時間計測手段91fにより得られた時間T_cmpを比較し、T_cmp>TAとなる場合に、異常報知手段91iにより、報知出力部96に対して、圧送異常報知を行う報知信号を出力する。
【0043】
粉砕圧送対象判別期間記憶手段91dは、水洗圧送便器1の粉砕圧送対象が汚物やトイレットペーパ等の固形物かまたは、小便などの汚水(非固形物)のみか、を判別する期間を固定値として予め記憶する。または、水洗圧送便器1を現場に設置した時に計測される、粉砕圧送時間計測手段91fにより得られる初期粉砕圧送時間T_initialを基に、粉砕圧送対象判別期間記憶手段91dに固定値を記憶する。尚、本実施の形態においては、粉砕圧送対象判別期間記憶手段91dに記憶される情報は、粉砕圧送対象判別期間としてT1=[T_initial−9秒]からT2=[T_initial−2秒]までの7秒間とする。
【0044】
また粉砕圧送完了判別期間記憶手段91eは、水洗圧送便器1の粉砕圧送完了タイミングを判別する期間を固定値として予め記憶する。または、水洗圧送便器1を現場に設置した時に計測される、粉砕圧送時間計測手段91fにより得られる初期粉砕圧送時間T_initialを基に、粉砕圧送完了判別期間記憶手段91eに固定値を記憶する。尚、本実施の形態においては、粉砕圧送完了判別期間記憶手段91eに記憶される情報は、T2=[T_initial−2秒] から粉砕圧送モータの停止までの期間とする。
【0045】
次に、異常判別閾値記憶手段91gについて説明する。異常判別閾値記憶手段91gは、圧送異常を判定するための固定値を閾値TA(第1の判別値)及びTB(第2の判別値)として予め記憶する。または、水洗圧送便器1を現場に設置した時に計測される、初期粉砕圧送時間T_initialを基に、閾値TA及びTBを決定し固定値として記憶する。尚、本実施の形態においては、異常判別閾値記憶手段91gに記憶される固定値を、TA=T_initial×1.2、TB=T_initial×1.5と設定する。
【0046】
ここで、粉砕圧送対象判別期間記憶手段91d及び粉砕圧送完了判別期間記憶手段91e及び異常判別閾値記憶手段91gへ記憶される固定値を決めるための、初期粉砕圧送完了時間T_initialについて、
図4(a)及び
図4(b)を用いて説明する。
【0047】
図4は、本実施形態の粉砕圧送用モータ52のモータ電流およびモータ電流変位を表すグラフ図である。
図4(a)は、水洗圧送便器1を現場に設置し洗浄した時に、モータ電流計測部(モータ電流計測手段)94により計測される、粉砕圧送用モータ52のモータ電流Imotorの遷移を示している。尚、この現場設置時の状態とは、圧送異常がなく、また粉砕圧送対象がボウル21の溜水24及び洗浄水(非固形物)のみの状態を示している。更に、
図4(b)は、モータ電流変位計測手段91aにより計測された、粉砕圧送モータ52のモータ電流変位ΔImotorを示している。
【0048】
図4(a)より、粉砕圧送用モータ52のモータ電流Imotorは約1秒後の粉砕圧送モータ駆動時に上昇する。そして、約13秒後にモータ電流Imotorが急峻に低下することがわかる。このt=約13秒後のモータ電流Imotorが急峻に低下するタイミングは、圧送装置50に送られた洗浄水がなくなることで、モータ電流の負荷が急激に軽減されることから、粉砕圧送が完了する時間であることがわかる。
尚、約25.5秒後のモータ電流Imotorが0Aとなるタイミングは、粉砕圧送用モータ52の駆動を停止したタイミングとなる。
【0049】
また
図4(b)より、粉砕圧送モータ電流変位ΔImotorが約13秒後にΔImotorが低下し、第2の閾値「−0.05A」を下回っていることが分かる。よって第2モータ電流変位判定手段91cにより第2の閾値を下回ることを検出し、そのタイミングを粉砕圧送計測時間91eにより、粉砕圧送時間T_cmp(=初期粉砕圧送時間T_initial)として計測されることになる。
【0050】
本実施の形態において、初期粉砕圧送時間T_initialは約13秒であり、粉砕圧送対象判別記憶手段91d及び粉砕圧送完了判別期間記憶手段91eに記憶される時間は、T1=4秒(T_initial−9秒)及びT2=11秒(T_initial−2秒)となる。また異常判別閾値記憶手段91gに記憶されるTAはT_initial×1.2=15.6秒で、TBは、T_initial×1.4=18.2秒となる。
【0051】
異常判定手段91hは、粉砕圧送時間計測手段91fにより得られる粉砕圧送時間T_cmpと、異常判別閾値記憶手段91gと、に基づいて、貯留槽51外へ圧送する圧送動作の圧送異常を判定する。異常報知手段91iは、異常判定手段91hにより判定された異常を報知出力部96へ出力する。
【0052】
次に、本発明の実施形態に係る報知部55の構成について、
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る水洗圧送式便器1の報知部55の構成を表すブロック図である。
【0053】
報知部55は、第1状態表示手段55aと、第2状態表示手段55bと、第3状態表示手段55cと、音声出力手段55dと、を有している。本実施形態では、第1状態表示手段55a、第2状態表示手段55b、および第3状態表示手段55cとして、LEDなどの発光素子を使用し、音声出力手段55dとして、スピーカを使用した例を説明する。報知部55には、水洗圧送式便器1の状態に応じた点灯パターンが予め設定されており、報知部55は、水洗圧送式便器1の状態に応じて、第1状態表示手段55a、第2状態表示手段55b、および第3状態表示手段55cを点灯させる。例えば、第1状態表示手段55aは、電源がオンになると緑色点灯を行い、異常報知する際には、赤色点滅を行う。また、第2状態表示手段55bは、粉砕圧送動作中に赤色点灯を行い、異常報知する際には、赤色点滅を行う。また、第3状態表示手段55cは、粉砕室64の掃除中に赤色点灯を行い、異常報知する際には、赤色点滅を行う。
【0054】
また、報知部55は、音声出力手段55dにより、水洗圧送式便器1に生じた異常状態に応じた音声を出力する。
【0055】
このようにして、報知部55は、水洗圧送式便器1に生じた異常状態を使用者やメンテナンス作業者に対し報知する。報知部55の詳細は、後述する。
【0056】
次に、本発明の実施形態に係る水洗圧送式便器1の動作の具体例について、
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る水洗圧送式便器1の動作の具体例を例示するフローチャートである。
【0057】
まず、水洗圧送式便器1の電源を入れると(ステップS101)、水洗圧送式便器1は、待機モードになる(ステップS102)。このとき、便器本体20は溜水24により封水が形成された状態である。また、制御装置90は、報知部55の第1状態表示手段55aを緑色点灯させる。これにより、水洗圧送式便器1の電源がオンとなっていることを使用者や作業者に報知する。なお、このとき電源を切ると、水洗圧送式便器1は運転を終了する。
【0058】
続いて、使用者によって便器本体20を流すためのリモコン98の洗浄操作スイッチがオンされると(ステップS103)、制御装置90は、リモコン98から便器洗浄信号を受信し、給水弁4aが開弁するように給水弁4aへ給水弁駆動信号を出力する。これにより、洗浄水が便器本体20へ給水され、便器本体20の洗浄が行われる(ステップS104)。このとき、便器本体20のボウル部21内の固形物や汚水は、排水路23を通り、貯留槽51の粉砕室64内へと排出される。なお、便器本体20の洗浄は、便器本体20に水を供給することで行われる。また、排水路23内は溜水24が形成され、封水されている。
【0059】
続いて、制御装置90は、粉砕圧送用モータ52へモータ駆動開始信号を出力する。これにより、粉砕圧送用モータ52が駆動を開始し、パルセータ61およびインペラ70が回転駆動を開始する。パルセータ61およびインペラ70が回転駆動することにより、粉砕室64内に捕捉された固形物の粉砕や、貯留槽51内において粉砕室64内から粉砕室64外へと流れ出てきた固形物及び汚水の圧送が実行される(ステップS105)。なお、この時制御装置90は、第2状態表示手段55bを赤色点灯させる。これにより、水洗圧送式便器1が粉砕圧送動作中であることを使用者や作業者に報知する。
【0060】
続いて、粉砕圧送用モータ52が駆動開始すると、ステップS106へと進む。粉砕圧送用モータ52が駆動されると、制御装置90は、モータ電流計測部94により粉砕圧送用モータ52のモータ電流Imotorを計測する(ステップS106)。そして制御部91のモータ電流変位計測手段91aにより、モータ電流変位ΔImotorを計測する(ステップS107)。
【0061】
続いて、制御装置90は、第1モータ電流変位判定手段91bにより、モータ電流変位ΔImotorが任意の閾値Ith1より高くなるか否かについて、予め粉砕圧送対象判別記憶手段91dに記憶された時間t1(T1≦t1<T2)において判断する(ステップS108)。この時、モータ電流変位ΔImotorが閾値Ith1より高くなる場合(ステップS108、Yes)は、ステップS201に移行し、所定時間t=25.5秒経過後に、制御装置90が粉砕圧送用モータ52を停止させ、待機状態(ステップS102)とする。
【0062】
一方で、粉砕圧送対象判別期間t1(T1≦t1<T2)の間、モータ電流変位ΔImotorが閾値Ith1より低い状態が続く場合(ステップS108、No)、ステップS109へと進む。この時、時間t<T2であれば(ステップS109、No)、ステップS106に戻り、ステップS106以降のステップをt=T2となるまで繰り返す(ステップS109)。
【0063】
ここで、
図7(a)、
図7(b)及び
図8(a)、
図8(b)のモータ電流Imotor及びモータ電流変位ΔImotorを示す図面を用いて、粉砕圧送対象判別期間であるT1≦t<T2における制御装置90の動作を説明する。
図7は、圧送異常がなく粉砕圧送対象が非固形物である場合におけるモータ電流及びモータ電流変位を表すグラフ図である。
図7(a)及び
図7(b)は、圧送異常がなく、粉砕圧送対象が汚水等の非固形物である(以下、圧送異常がなく、粉砕圧送対象が汚水等の非固形物である洗浄条件を「洗浄条件A」とする。)洗浄条件における、モータ電流Imotor及び、モータ電流変位ΔImotorの遷移を示している。
【0064】
図7(a)の通り、粉砕圧送対象判別期間T1≦t1<T2において、モータ電流Imotorが急峻に上昇・下降することなく安定して推移していることがわかる。
また
図7(b)の通り、粉砕圧送対象判別期間T1≦t1<T2において、モータ電流変位ΔImotorは0A付近を推移し、第1モータ電流変位判定手段91bによって、モータ電流変位ΔImotorが閾値Ith1より高いと、判定されることはない。
そのため
図6のフローチャートのステップS108、Noの状態を維持し、ステップS109でYesとなるまでステップS106からS109を繰り返すことになる。
【0065】
図8は、圧送異常がなく粉砕圧送対象が固形物である場合におけるモータ電流及びモータ電流変位を表すグラフ図である。
図8(a)及び
図8(b)に、圧送異常がなく、粉砕圧送対象が汚物やトイレットペーパ等の固形物である(以下、圧送異常がなく、粉砕圧送対象が固形物である洗浄条件を「洗浄条件B」とする。)洗浄条件における、モータ電流Imotor及び、モータ電流変位ΔImotorの遷移を示す。
【0066】
図8(a)において、粉砕圧送対象判別期間T1≦t1<T2における、モータ電流Imotorは、安定せずに約4.5秒や、約6.5秒など所々で電流値が急峻に上昇することがわかる。またこのことは
図8(b)における、モータ電流変位ΔImotorが上昇・下降していることからも分かる。
【0067】
このとき、第1モータ電流変位判定手段91bによって、モータ電流変位ΔImotorが閾値Ith1より高いと判定される。そのため
図6のフローチャートのステップS108においてYes判定となり、ステップS201に移行する。
【0068】
このように、粉砕圧送対象判別期間T1≦t1<T2において、第1モータ電流変位判定手段91bを用いて、粉砕圧送対象が汚水等の非固形物か、または汚物やトイレットペーパ等の固形物かを判別することができる。
【0069】
この判別によって、後述する、圧送異常の判定を、粉砕圧送対象が汚水等の非固形物の場合のみ行うことができる。これはモータ電流変位を計測することにより行う圧送異常の判定を、モータ電流が安定する粉砕圧送対象が汚水等の非固形物の条件時のみ行うことで、精度良く圧送異常の検出を行うためである。
【0070】
図6のフローチャートの説明に戻る(S109以降の説明)。
ステップS109において、t≧T2となった場合(ステップS109、Yes)、次のステップS110に進む。S110において、制御装置90は、モータ電流計測部94により粉砕圧送用モータ52のモータ電流Imotorを計測し、次のステップS111において、制御部91のモータ電流変位計測手段91aにより、モータ電流変位ΔImotorを計測する。
【0071】
続いて、制御装置90は、第2モータ電流変位判定手段91cにより、モータ電流変位ΔImotorが閾値Ith2より低くなるか否かについて、判断する(ステップS112)。モータ電流変位ΔImotorが閾値Ith2より高い場合(ステップS112、No)は、ステップS110に戻り、ステップS110〜ステップS112のステップを繰り返す。またモータ電流変位ΔImotorが任意の閾値Ith2より低くなる場合(ステップS112、Yes)は、粉砕圧送が完了したとして、粉砕圧送時間計測手段91fにより、粉砕圧送完了時間T_cmpを計測する(ステップS113)。
【0072】
次に、粉砕圧送時間計測手段91fにより計測された粉砕圧送完了時間T_cmpが、予め異常判別閾値記憶手段91gにより記憶された閾値TA及びTB(TB>TA)に対して、TA>T_cmpの関係である場合(ステップS114、No)、圧送異常はないとして、所定時間のt=25.5秒後に、粉砕圧送用モータ52を駆動停止させて、ステップ102の待機状態とする(ステップS202)。
【0073】
一方ステップS114においてYesの場合(T_cmp>TA)、圧送異常が生じたとしてステップS115に移行する。ステップS115において、粉砕圧送時間T_cmpが、TB>T_cmp>TA(ステップS115、Yes)の関係となる場合は、圧送配管53の詰まりにより圧送動作に異常が生じたと判定し、圧送異常が発生したことを報知部55により報知する(ステップS116)。このとき、本実施形態にかかる水洗圧送式便器1は、報知部55により圧送異常が生じたことを報知することで、メンテナンスを行うよう注意を促すが、使用可能な状態であるため、ステップS202に移行し、粉砕圧送モータが停止するt=25.5秒後に、ステップS102へ戻る。
【0074】
例えば、制御装置90は、圧送異常状態が検出されなくなるまで、第1状態表示手段55aおよび第2状態表示手段55bを同時に赤色点滅させる。例えば、制御装置90は、音声出力手段55dにより、「圧送異常を検出しました。○○へ連絡してください。」という音声を5回繰り返し出力する。これにより、圧送異常を検出したことを使用者や作業者に報知する。
【0075】
また、本実施の形態において「圧送配管53の詰まり」とは、圧送配管53の内部が完全には閉塞されておらず、その一部が閉塞された状態をいうものとする。そのため、圧送配管53の詰まりが生ずると、圧送配管53を通して貯留槽51の内部の水を貯留槽51の外部へ排水するときの単位時間当たりの排水流量は低下し、そのときの粉砕圧送完了時間T_cmpが、圧送配管53の詰まりが生じていない場合と比べて長くなる。
【0076】
一方でステップS115において、粉砕圧送時間T_cmpが、T_cmp>TB(ステップS115、No)の関係となる場合は、制御装置90は、圧送異常が生じたと判定し、その圧送異常が生じたことを報知部55により報知する(ステップS117)。続いて、制御装置90は、粉砕圧送用モータ52および給水装置4の駆動を禁止する(ステップS117)。そして、便器洗浄動作を終了する。
【0077】
例えば、制御装置90は、圧送異常状態が検出されなくなるまで、第1状態表示手段55a、第2状態表示手段55b、を同時に赤色点灯させる。例えば、制御装置90は、音声出力手段55dにより、「製品に異常が生じました。製品は使用不可能な状態です。○○へ連絡してください。」という音声を5回繰り返し出力する。これにより、圧送異常を検出したこと、水洗圧送式便器1を使用不可能な状態にしたことを使用者や作業者に報知する。
【0078】
ここで、
図7(a)、
図7(b)、
図9(a)、
図9(b)のモータ電流Imotor及びモータ電流変位ΔImotorを示す図面を用いて、t≧T2における制御装置90の動作を説明する。
図7(a)及び
図7(b)は、圧送異常がなく、粉砕圧送対象が汚水等の非固形物である「洗浄条件A」における、モータ電流Imotor及び、モータ電流変位ΔImotorの遷移を示している。
【0079】
図7(a)の通り、粉砕圧送用モータ52のモータ電流Imotorは、粉砕圧送が完了する約13秒後にモータ電流Imotorが急峻に低下することがわかる。また
図7(b)においても同様に、粉砕圧送モータ電流変位ΔImotorから、約13秒後にΔImotorが低下し、このことによりモータ電流Imotorが急峻に低下することが分かる。
【0080】
この粉砕圧送モータ電流が急峻に低下するタイミングは、第2電流変位判定手段91cにより検出し、粉砕圧送時間計測手段91fにより、粉砕圧送完了時間T_cmpを計測することができる。
【0081】
次に、圧送異常があり、粉砕圧送対象が汚水等の非固形物である場合(以下、圧送異常があり、粉砕圧送対象が汚水等の非固形物である条件を、「洗浄条件C」とする。)の、粉砕圧送用モータ52のモータ電流Imotor及び、モータ電流変位ΔImotorについて説明する。
【0082】
図9は、圧送異常があり粉砕圧送対象が非固形物である場合におけるモータ電流及びモータ電流変位を表すグラフ図である。
図9(a)及び
図9(b)は、洗浄条件Cにおける、モータ電流Imotor及びモータ電流変位ΔImotorの遷移を示した図である。
【0083】
図9(a)及び
図9(b)より、粉砕圧送完了時間T_cmpは約19秒で、圧送異常のない洗浄条件Aの場合に比べて、粉砕圧送完了時間T_cmpが約6秒伸びていることがわかる。これは圧送異常が発生した場合、圧送配管53を通して貯留槽51の内部の水を貯留槽51の外部へ排水するときの単位時間当たりの排水流量は低下するため、粉砕圧送により多くの時間を要するためである。
【0084】
そして、この粉砕圧送完了時間T_cmpの約19秒は、本実施の形態において異常判別閾値記憶手段91gに記憶された第1の閾値TA=15.6秒及び、第2の閾値TB=18.2を越える時間となり、本実施の形態においては、圧送異常で、粉砕圧送モータ52を停止させることになる(ステップS115、No/ステップS117)。
【0085】
以上のように、t≧T2において、粉砕圧送完了時間T_cmpを測定することにより、圧送異常を判別することができる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る水洗圧送式便器1では、粉砕圧送対象判別期間T1≦t<T2において、モータ電流変位計測手段91aにより計測されたモータ電流変位ΔImotorが、第1モータ電流変位判定手段91bによって、第1の閾値Ith1より高いか否かを判定する。モータ電流変位ΔImotorが、第1の閾値Ith1より低い状態を続ける場合、すなわち粉砕圧送対象が非固形物の場合でモータ電流が安定している場合のみ、圧送異常の有無の検出を行う。
【0087】
この時、粉砕圧送完了時間T_cmpが、予め異常判別閾値記憶手段91gに記憶された、閾値TA及びTBより、長い場合に、報知部55により圧送異常を報知する。
【0088】
粉砕圧送完了時間T_cmpは、粉砕圧送完了判別期間t≧T2において、第2モータ電流変位判定手段91cによりモータ電流変位ΔImotorが、第2の閾値Ith2より低くなるタイミングを検出し、粉砕圧送時間計測手段91fにより、粉砕圧送開始から粉砕圧送完了までの時間を計測することで得られる。
【0089】
報知部55は、粉砕圧送時間計測手段91fにより計測された粉砕圧送時間T_cmpが、閾値TAよりも短いか否か、また、閾値TBよりも短いか否かにより、圧送異常を検出するため、水洗圧送式便器1が使えなくなる前にメンテナンスを促すことができる。
【0090】
また、本実施形態に係る水洗圧送式便器1では、制御装置90は、水洗圧送式便器1を設置したときに粉砕圧送時間計測手段91fにより測定される初期粉砕圧送時間T_initialを排水環境測定値として計測し、その測定値に基づいて粉砕圧送対象判断期間T1及びT2、更には異常判別閾値記憶手段91gに記憶される、閾値TA及びTBを設定する。そして、報知部55は、設定された閾値に基づいて圧送異常の報知を行うため、排水環境に応じて適切な報知を行うことができる。
【0091】
また、本実施形態に係る水洗圧送式便器1では、制御装置90は、報知部55により圧送異常が生じたことを報知することでメンテナンスを行うよう注意を促すが使用可能な状態とする制御を行う。あるいは、制御装置90は、報知部55により圧送異常が生じたことを報知することでメンテナンスを行うよう注意を促すとともに、粉砕圧送用モータ52および給水装置4の駆動を禁止することで便器本体20への給水や、汚水や汚物の排出を使用不可能な状態とする制御を行う。そのため、むやみに水洗圧送式便器1が使えなくなってしまうことを防止することができる。
【0092】
なお、粉砕圧送時間T_cmpが、閾値TAよりも長く、閾値TBよりも短い時間領域であることは、使用可能なレベルの圧送異常の状態を示している。また、の閾値TBよりも長い時間領域に粉砕圧送時間T_cmpがあることは、圧送異常により、汚物等の固形物や汚水等を圧送できず貯水槽内の水が溢れる可能性がある状態を示している。
【0093】
以上のように、本実施形態の水洗圧送式便器1においては、圧送異常を報知するための条件として、まず、圧送配管53の詰まりに起因して長くなる粉砕圧送時間T_cmpが所定の時間内より長くなることで、粉砕圧送時間T_cmpに基づいて圧送異常が発生していることとする。また、粉砕圧送対象判別期間T1≦t<T2において、第1モータ電流変位判定手段91bに基づいて、モータ電流変位ΔImotorが第1の閾値より低い状態であり続ける場合のみ、圧送異常の検出を行う。このような構成により、モータ電流を利用して、水洗圧送式便器1で発生した異常の検知・判別を行うことができるので、精度よく圧送異常を検出することが可能となる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水洗圧送式便器1などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや粉砕圧送用モータ52やインペラ70の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。