特許第6202329号(P6202329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202329
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ハイブリッド電気推進装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 21/17 20060101AFI20170914BHJP
   B63H 23/24 20060101ALI20170914BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20170914BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B63H21/17
   B63H23/24
   B63J99/00 A
   H02P9/04 N
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-37756(P2014-37756)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160553(P2015-160553A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145816
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿股 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147315
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧本 十良三
(74)【代理人】
【識別番号】100119699
【弁理士】
【氏名又は名称】塩澤 克利
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−116070(JP,A)
【文献】 特開2011−063173(JP,A)
【文献】 特開2012−153341(JP,A)
【文献】 特開2010−141998(JP,A)
【文献】 特開2010−116071(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0182466(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 21/17
B63H 23/24
B63H 20/00
B63J 99/00
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船内母線を介して船内発電機から電力が供給され、インバータで回転制御される推進用電動機および船内機器と、
充放電装置を介して前記船内母線に接続され、電力を充放電する蓄電池と、
前記推進用電動機を回転制御するインバータの消費電力および前記船内機器の消費電力を検出する電力検出器と、
停泊中を含む一航海中の間に消費される前記インバータと船内機器との総消費電力を予め測定し、その平均消費電力値を演算する平均値演算器と、
前記平均消費電力値を格納しておく第1のメモリと、
前記停泊中を含む一航海中において前記電力検出器で検出される前記インバータの消費電力および前記船内機器の消費電力の加算消費電力値と、前記第1のメモリに格納されている前記平均消費電力値との差分である消費偏差量から前記充放電装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記加算消費電力値が前記平均消費電力値より大きい場合には、前記蓄電池から前記船内母線に前記消費偏差量に応じた電力を放電させ、
前記加算消費電力値が前記平均消費電力値より小さい場合には、前記船内発電機の電力で前記蓄電池を前記消費偏差量に応じて充電させるように前記充放電装置を制御することにより、
停泊中を含む前記一航海中において前記船内発電機で発電する電力を、常時前記平均消費電力値に近づけて運転すると共に、船内発電機の定格出力を前記平均消費電力値より少し大きく設定することにより船内発電機を高効率運転させることを特徴とするハイブリッド電気推進装置。
【請求項2】
前記蓄電池の充電量を検出する監視装置と、
一航海前の定期航路の中間地点又は所定の地点での蓄電池の充電量を格納しておく第2のメモリと、を更に備え、
前記制御装置は、前記第2のメモリに格納されている充電量が、予め定めた所定の設定充電量を超えている場合には、その差分である蓄電偏差量に応じて航海中は前記蓄電池からの放電量を増やし、停泊中は前記蓄電池への充電量を減らし、
前記第2のメモリに格納されている充電量が、前記設定充電量を下回っている場合には、その蓄電偏差量に応じて航海中は前記蓄電池からの放電量を減らし、停泊中は前記蓄電池への充電量を増やす制御を前記充放電装置に対して行い、
前記蓄電池の充電量を前記設定充電量に近い状態となるように制御して、前記蓄電池を常時充放電可能な状態に維持することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船内に船内発電機と蓄電池を備え、それを電力源として、推進用電動機でプロペラを駆動して定期航路を航海する船舶のハイブリッド電気推進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に及ぼす負荷の低減や速度制御が容易である等の理由から、電気推進装置を備えた船舶が注目されており、特に、このような船舶はフェリーやケミカルタンカーのような国内を航行し、定期航路を往復する船舶に多い。
【0003】
そして、このような電気推進装置を備えた船舶では、停泊時に比べ航行中にプロペラを駆動する推進用電動機の使用電力量が大きいため、あるいは、故障時の予備等を考慮して、1台若しくは2台以上の発電機を船内に備え、推進用電動機の運転状況、即ち船内の消費電力量に応じて発電機の運転台数を制御するような構成になっている。
【0004】
電気推進装置を備えた船舶としては、船内に蓄電池を有しない船舶(特許文献1参照)や船内に蓄電池を有した船舶(特許文献2参照)などが提案されている。蓄電池を有しない一般的な船舶用の電気推進装置の構成を、図6を用いて説明する。
【0005】
図6に示すように、船内発電機1A,1Bは、遮断器2A,2Bを介して船内母線8に接続しており、船内発電機1A,1Bで発電した電力は、船内母線8を介して推進用電動機4A,4Bや船内機器7に供給される。推進用電動機4A,4Bには、推進用インバータ5A,5Bを介して電力が供給され、推進用インバータ5A,5Bの制御によって推進用電動機4A,4Bの回転が制御されている。推進用電動機4A,4Bが回転駆動されることにより、プロペラ3A,3Bが回転して、船舶の推進力を得ることができる。
【0006】
このように構成された船舶用の電気推進装置において、停泊中を含む一航海中に船内機器7と推進用インバータ5A,5Bによって消費される合計の消費電力は、例えば、図5に示すようなグラフで表すことができる。図5に示すように、船舶の航海中は、推進用電動機4A,4Bの駆動に大きな電力が使用されるため、船内で消費される消費電力が大きくなる。一方、停泊中は、推進用電動機4A,4Bの駆動を停止させているため、大きな消費電力を生じることがなく、消費電力としては船内機器7によって消費される小さな消費電力のみとなる。
【0007】
このため、航海中は船内発電機1A,1Bを共に運転することになるが、船内で消費される消費電力が少ない停泊中は、船内発電機1A,1Bは、いずれか一方の発電機のみを運転するように、運転する台数を制御している。
【0008】
船内に蓄電池を有した船舶としては、陸上電源から船舶内の蓄電池を充電する構成を備えた船舶(特許文献3参照)や、特許文献2に記載された船舶のように、船内の発電機からの電力を蓄電池と推進用電動機とに供給するハイブリッド電気推進装置の構成を備えた船舶が提案されている。
【0009】
特許文献2に記載された発明では、推進用電動機を加速させた時や、推進用電動機を高速運転させた時に発生する電力負荷増加により発電機の出力電力が上限設定値を越える場合は、発電機から蓄電池に供給する電力を下げたり、あるいは、蓄電池の電力を放出し、これによって得た電力を上限設定値を超えた電力負荷増加分に充当するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−251895号公報
【特許文献2】特開2011−91939号公報
【特許文献3】特開2013−14222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
船内に蓄電池を有しない船舶では、上述したように、船舶の停泊中は、船内発電機1A,1Bはいずれか1台のみの運転となる。1台のみの運転になっても、船内機器7の負荷は船内発電機1A又は1Bの定格容量に比べて小さいため、定格出力よりも著しく下げた状態で船内発電機1A又は1Bを運転することになる。その結果、船内発電機1A又は1Bとしては燃費の良い領域での運転とはならず、発電効率の悪い領域での運転となり、船内発電機1A又は1Bの燃費効率が悪化する。
【0012】
また、航海中は推進用電動機4A,4Bを駆動するため、船内での消費電力が大きくなり、2台の船内発電機1A,1B を運転する必要がある。しかし、推進用電動機4A,4Bは推進用インバータ5A,5Bによって回転制御されているため、推進用インバータ5A,5Bによる回転制御の状態に応じて消費電力も変動することになる。そのため、2台の船内発電機1A,1Bを定格状態で運転させずに、定格出力よりも下げた状態で運転する場合が生じる。
【0013】
その結果、2台の船内発電機1A,1Bは、発電効率が悪い状態での運転が行われることになり、船内発電機1A,1Bの燃費効率が悪くなる場合が生じることになる。
また、船舶の推進力を得るため推進用電動機4A,4Bを共に運転する場合に備えて、船内には2台の船内発電機1A,1Bを備えておくことが必要であることから、メンテナンスを行う際には、2台の船内発電機1A,1Bに対してメンテナンスを行うことが必要になる。
【0014】
また、特許文献2に記載された発明のような船内に蓄電池を有した船舶では、船内の発電機で発電した電力を蓄電池に充電し、この充電した電力を推進電動機の負荷が増大し、発電機の出力電力が上限値を越えた場合に充当することにより、推進電動機の運転が制限されないように構成している。このように特許文献2の発明は、発電機の出力電力が上限値を越えた場合に推進電動機が運転制限を受けないようにするもので、船内負荷の変動に伴う発電機の高効率運転、特に停泊中から航海中までの一航海における発電機の高効率運転については、何ら注意が払われていない。
【0015】
本発明では、船舶の停泊から航海まで、一航海中の間、発電機を高効率運転させ、それによって船内発電機の燃費の向上と、船内発電機のメンテナンス費用の削減ができるハイブリッド電気推進装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の実施形態に係るハイブリッド電気推進装置では、船内母線を介して船内発電機から電力が供給され、インバータで回転制御される推進用電動機および船内機器と、充放電装置を介して前記船内母線に接続され、電力を充放電する蓄電池と、前記推進用電動機を回転制御するインバータの消費電力および前記船内機器の消費電力を検出する電力検出器と、停泊中を含む一航海中の間に消費される前記インバータと船内機器との総消費電力を予め測定し、その平均消費電力値を演算する平均値演算器と、前記平均消費電力値を格納しておく第1のメモリと、前記停泊中を含む一航海中において前記電力検出器で検出される前記インバータの消費電力および前記船内機器の消費電力の加算消費電力値と、前記第1のメモリに格納されている前記平均消費電力値との差分である消費偏差量から前記充放電装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記加算消費電力値が前記平均消費電力値より大きい場合には、前記蓄電池から前記船内母線に前記消費偏差量に応じた電力を放電させ、前記加算消費電力値が前記平均消費電力値より小さい場合には、前記船内発電機の電力で前記蓄電池を前記消費偏差量に応じて充電させるように前記充放電装置を制御することにより、停泊中を含む前記一航海中において前記船内発電機で発電する電力を、常時前記平均消費電力値に近づけて運転すると共に、船内発電機の定格出力を前記平均消費電力値より少し大きく設定することにより船内発電機を高効率運転させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の実施形態に係るハイブリッド電気推進装置では、前記蓄電池の充電量を検出する監視装置と、一航海前の定期航路の中間地点又は所定の地点での蓄電池の充電量を格納しておく第2のメモリと、を更に備え、
前記制御装置は、前記第2のメモリに格納されている充電量が、予め定めた所定の設定充電量を超えている場合には、その差分である蓄電偏差量に応じて航海中は前記蓄電池からの放電量を増やし、停泊中は前記蓄電池への充電量を減らし、前記第2のメモリに格納されている充電量が、前記設定充電量を下回っている場合には、その蓄電偏差量に応じて航海中は前記蓄電池からの放電量を減らし、停泊中は前記蓄電池への充電量を増やす制御を前記充放電装置に対して行い、前記蓄電池の充電量を前記設定充電量に近い状態となるように制御して、前記蓄電池を常時充放電可能な状態に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によれば、停泊中を含め一航海中に消費する船内での消費電力をほぼ一航海中の総消費電力の平均値となるように常に一定に保つことができ、しかも、蓄電池の充電量を所定の設定充電量に維持して蓄電池への充放電を繰り返しできるよう構成したので、停泊中も含め一航海中は、船内発電機を定格出力付近での発電効率のよい状態で常時運転することができ、その結果、船内発電機の燃費効率を向上させることができる。
【0019】
更に、船内発電機の出力電力は、停泊中を含め一航海中の間、常に一定の電力に保てるので、船内発電機の定格出力をその電力より少し大きい程度に設定しておけば、1台の船内発電機で船内電力をまかなうことができ、その結果、船内発電機のメンテナンス費用を削減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態を示すハイブリッド電気推進装置のシステム構成図。
図2】本発明の第1の実施形態を構成する制御装置のブロック図。
図3】本発明の第2の実施形態を示すハイブリッド電気推進装置のシステム構成図。
図4】本発明の第2の実施形態を構成する制御装置のブロック図。
図5】停泊中及び一航海中に船内で消費される消費電力を示すグラフ。
図6】船内に蓄電池を有しない船舶における電気推進装置のシステム構成図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態に係るハイブリッド電気推進装置の構成について、図1乃至図4を用いて説明する。最初に、図1図2を用いて、実施形態1の構成について説明する。
なお、図1乃至図4において、図6のシステムで示した部材と同様の部材に関しては、同じ部材符号を用いている。
【0022】
(実施形態1)
図1において、図6と異なっている構成は、推進用電動機4A,4Bをそれぞれ回転制御する各推進用インバータ5A,5Bの消費電力と船内機器7の消費電力を検出する電力検出器6A,6B,6C を設けた構成と、充放電装置11を介して船内母線8 に蓄電池10 を接続した構成と、電力検出器6A,6B,6Cで検出した消費電力を入力し充放電装置11を制御する制御装置20を設けた構成である。他の構成は、図6における構成と同様の構成になっている。そのため、図6で用いた部材と同様の部材に関しては、図6で用いた部材符号を用いている。
【0023】
航海中に消費電力が大きな推進用電動機に電力を供給するため、あるいは、故障時の予備等を考慮して船内には複数台の船内発電機1A,1Bが備えられている。図示例では、2台の船内発電機1A,1Bを備えた構成を示している。船内発電機1A,1Bは、遮断器2A,2Bを介して船内母線8に接続しており、船内発電機1A,1Bで発電した電力は、船内母線8を介して推進用電動機4A,4Bや船内機器7に供給される。推進用電動機4A,4Bには、推進用インバータ5A,5Bを介して電力が供給され、推進用インバータ5A,5Bの制御によって推進用電動機4A,4Bの回転が制御される。推進用電動機4A,4Bが回転駆動されることにより、プロペラ3A,3Bが回転して船舶に推進力を与えることができる。
【0024】
推進用インバータ5A,5Bで消費される消費電力は、電力検出器6A,6Bによって検出され、検出された消費電力の値は制御装置20に入力される。また、船内母線8に接続した船内機器7で消費される消費電力は、電力検出器6Cによって検出され、検出された消費電力の値は制御装置20に入力される。
【0025】
充放電装置11は、蓄電池10から船内母線8に電力を放電させたり、船内母線8からの電力を蓄電池10に充電させたりする。また、制御装置20は、船内発電機1A,1B の出力電力が航海中および停泊中において略一定となるように充放電装置11を制御するものであり、各電力検出器6A,6B,6Cで検出した推進用電動機4A,4Bの消費電力と船内機器11の消費電力とが入力されている。そして、制御装置20は充放電装置11を制御して、入力した消費電力の値に基づいて、蓄電池10から船内母線8に電力を放電させたり、あるいは、船内母線8から電力を取り出して充電させたりする。
【0026】
図2は、図1で示した制御装置20の詳細をブロック図として示している。図2において、電力検出器6A,6B,6Cで検出した推進用インバータ5A,5Bの消費電力および船内機器7の消費電力は、加算器21において加算される。加算器21で加算されて出力された消費電力は、平均値演算器30と減算器22に入力される。加算器21から出力される消費電力は、ある時点において船内で消費されている消費電力の合計が示されている。
【0027】
平均値演算器30では、加算器21から出力された消費電力を積算して、停泊中を含む一航海中の全消費電力の総和である総消費電力から平均消費電力値Pavoを求める。平均値演算器30で求めた総消費電力の平均消費電力値Pavoは、第1のメモリ31に格納される。
【0028】
平均消費電力値Pavoとしては、予め最初の一航海で消費された総消費電力を求め、求めた総消費電力からその平均値を求めることができるが、次のようにして求めることもできる。即ち、最初の一航海で求めた平均消費電力値Pavoを基にして、次の一航海に対する制御を行い、次の一航海で求めた平均消費電力値Pavoと先の一航海で求めた平均消費電力値Pavoとを更に平均化して、次の一航海で使用する平均消費電力値Pavoとして求めていくことができる。これを繰り返すことにより、より現実に即した平均消費電力値Pavoを得ることができる。あるいは、行きの一航海と帰りの一航海でそれぞれ得た平均消費電力値Pavoとを平均化して、その後における一航海で使用する平均消費電力値Pavoとするなど、必要に応じて適宜の方法で平均消費電力値Pavoを求めておくことができる。
【0029】
減算器22では、加算器21から出力されたある時点での船内で消費されている消費電力の合計値が、第1のメモリに格納されている平均消費電力値Pavoに対してどの程度大きいか小さいかを演算するものであり、加算器21から出力された消費電力の合計値と平均消費電力値Pavoとの差分である消費電力偏差量を求めている。そして、その偏差量に応じた充放電指令信号P1が制御装置20から充放電装置11に出力される。このようにして、充放電指令信号P1によって充放電装置11が制御されることになり、この偏差量に応じて蓄電池10に対する充放電が制御される。
【0030】
船舶の停泊中は、推進用電動機4A,4Bが駆動されないので、加算器21 から出力される消費電力の合計値が、第1のメモリ31に格納されている平均消費電力値Pavoの値よりも小さくなる。従って、それに応じた充放電指令信号P1が充放電装置11に対して出力され、蓄電池10が船内発電機1A,1Bの電力によってその偏差量に応じて充電されることになる。このとき、船内の消費電力としては船内機器7しかないので、船内発電機1A又は1Bはどちらか一方の船内発電機が運転されればよく、運転される船内発電機1A又は1Bの定格出力を蓄電池10の充電電力と船内機器7の消費電力を供給できる程度に選定しておけば、船舶の停泊中でも発電効率のよい運転状態で運転される。
【0031】
また、船舶の航海中は、船舶の推進力を得るため推進用電動機4A,4Bで消費される消費電力が増大し、加算器21から出力される消費電力の合計値が、第1のメモリ31に格納されている総消費電力の平均消費電力値Pavoよりも大きくなるので、その偏差量に応じた充放電指令信号P1が制御装置20から充放電装置11に出力される。
その結果、蓄電池10から船内母線8にその消費電力偏差量に応じた電力が放電されるので、船内発電機1A,1Bから見て船内で消費される消費電力が減ったことになる。
【0032】
ここで、蓄電池10からの放電量と船内発電機1A又は1Bからの電力とによって航海中に消費される消費電力を賄うことができるよう船内発電機1A又は1Bの定格出力を設定しておけば、船内発電機1A,1Bの2台を運転させることなく、発電機1A又は1Bの1台だけの運転で対応させることができ、船内発電機1A又は1Bを発電効率のよい運転状態で運転させることができる。
【0033】
このように船内で消費される消費電力の変化を蓄電池10で吸収させ、停泊中を含め一航海中の船内発電機1A又は1Bの出力電力をほぼ総消費電力の平均消費電力値Pavoに保つことができるので、船内発電機1A又は1Bの定格容量を、総消費電力の平均消費電力値Pavoよりも少し大きい程度に選定しておくことにより、1台の船内発電機1A又は1Bで、しかも、発電効率のよい定格出力付近で運転させることができ、船内発電機1A又は1Bの燃費効率を向上させることができる。
【0034】
(実施形態2)
実施形態2では、実施形態1の構成に蓄電池10の充電量を監視する監視装置12を設けた構成になっている。また、監視装置12を設けたことにより、監視装置12からの検出信号を処理する構成が制御装置40内に設けられている。他の構成は、実施形態1と同様の構成になっており、同様の構成については、実施形態1で用いた部材符号を用いることで、その部材について重複した説明を省略する。
【0035】
図3に示すように、蓄電池10の充電量を監視する監視装置12が蓄電池10に接続され、監視装置12で検出した蓄電池10の充電量は、制御装置40に入力される。制御装置40内のブロック図は、図4に示すように構成されている。
【0036】
即ち、実施形態1における制御装置20の構成に、監視装置12からの検出信号を入力して記録する第2のメモリ32と、蓄電池10の充電量を設定する設定器34と、減算器24と、ゲイン演算器33と、加算器23と、が設けられた構成になっている。
【0037】
第2のメモリ32は、監視装置20で検出された蓄電池10の充電量の中から一航海の中間点あるいは所定の地点での充電量SOCを選択してその値を記録する。設定器34では、蓄電池10において充電させておく充電量を、予め設定容量として設定することができる。例えば、設定容量としては、蓄電池10をフル充電したときの50%の充電量が、蓄電池10に充電されるように設定することができる。
【0038】
50%の充電量とは、例示であって、船舶の大きさに応じて、また、船舶が航海する距離等に応じて適宜設定することができる。そして、50%の充電量とは、蓄電池10をフルに充電したときを100%の充電量として、フル充電の半分の充電量を示している。減算器24では、第2のメモリ32に記録されている蓄電池10の充電量と設定器34で設定された蓄電池10で蓄電させておく充電量との差分を、蓄電偏差量として演算する。
【0039】
減算器24から出力された蓄電偏差量は、ゲイン演算器33において一定のゲインが掛けられた信号P2が加算器23に入力される。加算器23には、減算器22から出力された信号P1(実施形態1では、充放電指令信号P1として記載しているが、実施形態2では、充放電装置11への指令信号を充放電指令信号P3とするため、信号P1として記載。)が入力されている。
【0040】
加算器23では、ゲイン演算器33から出力された信号P2と減算器22から出力された信号P1とを加算して、充放電装置11に対して充放電を指令する充放電指令信号P3を出力する。充放電装置11では、充放電指令信号P3に基づいて蓄電池10の充電量を制御する。
【0041】
このように構成することにより、蓄電池10に供給して充電させる充電電力量と、蓄電池10から放電させる放電電力量とが偏らないようにすることができる。例えば、船舶の一航海中において、蓄電池10への充電電力量と放電電力量とが異なった値になると、蓄電池10の充電量が偏ってしまうことになる。
【0042】
そして、一航海中に充電電力量より放電電力量が多くなっていると、一航海の運行を繰り返して行っていくと、蓄電池10での充電量が0%になってしまう。逆に、放電電力量が充電電力量よりも少なくなっていると、蓄電池10の充電量が100%のフル充電の状態になってしまう。
【0043】
このように、蓄電池10の充電量が偏っていると、蓄電池10は充放電ができなくなり、船内発電機1A,1Bで発電する電力を、停泊中を含む一航海中においてほぼ一定の発電電力量に制御することができなくなる。そこで、本発明の第2実施形態では、監視装置12で蓄電池10の充電量で監視して、船舶が繰り返し停泊及び航海を行っても、蓄電池10の充電量が偏らず、常に充放電できるように、蓄電池10の充電量を適切な状態、例えばフル充電の50%付近に維持させている。
【0044】
一航海の中間点としては、例えば、1回の航海に要する時間を予め計測しておき、計測した時間の半分の時間が経過した時点を中間点とすることができる。所定の地点としては、一航海において消費される全消費電力のグラフから、最大の消費電力が消費された地点や、全消費電力のグラフにおける標準偏差を求め、偏差値が50となる地点を所定の地点として設定しておくことができる。あるいは、一航海中において最大の加速を行う地点や推進用電動機4A,4Bが高速運転している期間の中間点等を所定の地点として設定しておくこともできる。
【0045】
このように構成することにより、一航海の中間点又は所定の地点において、蓄電池10の充電量SOCが設定器34で設定された設定容量となる充電量、例えば、蓄電池10のフル充電の50%の状態を超えると、充放電装置11への指令値である充放電指令値P3には、その超えた分の値を加算しておくことができる。そして、一航海中において、充放電装置11はその超えた分の値だけ多くの電力を蓄電池10から放電させることができる。
【0046】
逆に、蓄電池10の充電量SOCが設定器34で設定された設定容量となる充電量が、例えば、蓄電池10のフル充電の50%を下がると、充放電装置11へ送られる充放電指令値P3には、その下がった分の値を減算しておくことができる。そして、充放電装置11はその分だけ少なくなっている充放電指令値P3に基づいて蓄電池10から放電させることができる。
【0047】
即ち、充電量SOCが50%を超えている場合、航海中は、その分だけ多く蓄電池10から電力を放電し、停泊中は、その分だけ少なく蓄電池10を充電して蓄電池10の充電量を少なくするように作用する。
【0048】
逆に、蓄電池10の充電量SOCがフル充電時の50%を下がっている場合には、航海中は、その分だけ少なく蓄電池10から電力を放電させることができ、停泊中は、その分だけ多く蓄電池10に充電して蓄電池10の充電量を多くすることができる。これによって、蓄電池10の充電量SOCとしては、設定器34で設定されたフル充電時の50%の状態に維持される。
【0049】
このように船内発電機1A,1Bは、停泊中も航海中もほぼ総消費電力の平均消費電力値Pavoを保ちながら運転することができ、しかも、船舶が所定の航路を繰り返し航行しても、蓄電池10の充電量SOCをほぼ設定容量の充電量に維持できる。例えば、フル充電時の50%付近に維持できる。このように、船舶が繰り返し停泊中も航海中もほぼ総消費電力の平均消費電力値Pavoを保ちながら、船舶の運航を行うことができる。
【0050】
以上のように本発明の実施形態により、図5に示すような船内消費電力の変化を蓄電池10で吸収させることができ、船内で消費される消費電力を停泊中及び航海中において、ほぼ一定に保つことができる。また、船内の船内発電機1A,1Bの定格出力を総消費電力の平均消費電力値Pavoよりも少し大きい程度に選定しておくことにより、航海中も1台の船内発電機1A又は1Bで対応させることができる。その結果、船内発電機1A,1Bを定格出力付近である運転効率のよい状態で運転させることができ、船内発電機1A,1Bの燃費効率を向上させることができる。
また、船内発電機1A又は1Bの運転は1台のみで済むため、船内発電機1A又は1Bに対するメンテナンス費用も削減することができる。
【0051】
尚、上記説明では、一航海中に消費した総消費電力を求めて、求めた総消費電力から平均消費電力値Pavoを求める構成について説明を行ったが、総消費電力を航路の距離や海流等の流れ等を考慮して、理論的に求めておくこともできる。このようにして理論的に求めた平均消費電力値Pavoを用いたハイブリッド電気推進装置も、本発明に包含されるものである。
【0052】
また、平均値演算器30と第1のメモリ31と第2のメモリ32とを制御装置20,40内に設けた構成について説明を行ったが、平均値演算器30と第1のメモリ31と第2のメモリ32とを、制御装置20,40とは別体に構成しておくこともできる。平均値演算器30と第1のメモリ31と第2のメモリ32とを、制御装置20,40とは別体にした構成も、本発明に包含されるものである。
【符号の説明】
【0053】
1…船内発電機、2A,2B…遮断器、3A,3B…プロペラ、4A,4B…推進用電動機、5A,5B…推進用インバータ、6A,6B,6C…電力検出器、7…負荷、8…船内母線、10…蓄電池、11…充放電装置、12…監視装置、20…制御装置、21,23…加算器、22,24…減算器、30…平均値演算器、31,32…第1、第2のメモリ、33…ゲイン演算器、40…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6