特許第6202332号(P6202332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202332
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】紫外線ランプ
(51)【国際特許分類】
   H01J 65/00 20060101AFI20170914BHJP
   H01J 61/35 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01J65/00 B
   H01J61/35 F
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-48451(P2014-48451)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-209451(P2014-209451A)
(43)【公開日】2014年11月6日
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-70441(P2013-70441)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】細谷 浩二
(72)【発明者】
【氏名】片桐 毅
(72)【発明者】
【氏名】畑瀬 和也
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−056007(JP,A)
【文献】 特開2011−175823(JP,A)
【文献】 特開2010−218833(JP,A)
【文献】 特開2013−109991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0061667(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J61/35
61/50−65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性ガラスからなり、内部に所定ガスが封入された密閉空間を有する放電容器と、
前記放電容器の外表面に形成された少なくとも一対の電極と、
前記密閉空間内において放電により発生した光が前記放電容器外へと射出される光射出部と、
ピーク波長λ以上の紫外線は透過するとともに、ピーク波長λ未満の紫外線は反射又は吸収するものであり、前記放電容器の内表面において少なくとも前記光射出部に対応する領域に形成されている放電容器保護膜とを備え
前記放電容器保護膜が、平均粒径が前記ピーク波長λよりも小さく、160nm以上のSiO粒子で形成されていることを特徴とする紫外線ランプ。
【請求項2】
透光性ガラスからなり、内部に所定ガスが封入された密閉空間を有する放電容器と、
前記放電容器の外表面に形成された少なくとも一対の電極と、
前記密閉空間内において放電により発生した光が前記放電容器外へと射出される光射出部と、
ピーク波長λ以上の紫外線は透過するとともに、ピーク波長λ未満の紫外線は反射又は吸収するものであり、前記放電容器の内表面において少なくとも前記光射出部に対応する領域に形成されている放電容器保護膜とを備え、
前記放電容器保護膜が、平均粒径が175nmよりも小さく、160nm以上のSiO粒子で形成されていることを特徴とする紫外線ランプ。
【請求項3】
透光性ガラスからなり、内部に所定ガスが封入された密閉空間を有する放電容器と、
前記放電容器の外表面に形成された少なくとも一対の電極と、
前記密閉空間内において放電により発生した光が前記放電容器外へと射出される光射出部と、
ピーク波長λ以上の紫外線は透過するとともに、ピーク波長λ未満の紫外線は反射又は吸収するものであり、前記放電容器の内表面において少なくとも前記光射出部に対応する領域に形成されている放電容器保護膜とを備え、
前記放電容器保護膜が、MgO、CaF又はMgFのいずれかにより形成された単層反射膜であることを特徴とする紫外線ランプ。
【請求項4】
前記電極は、メッシュ電極であり、かつ前記光射出部に形成されている請求項1乃至いずれか一項に記載の紫外線ランプ。
【請求項5】
前記放電容器は、概略扁平直方体形状である請求項1乃至いずれか一項に記載の紫外線ランプ。
【請求項6】
前記紫外線ランプは、エキシマランプであり、
前記放電容器内においてエキシマ放電を発生させることを特徴とする請求項1乃至いずれか一項に記載の紫外線ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス製の放電容器内で発生した紫外線を光射出部から外部へと射出するように構成した紫外線ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、基板の洗浄やインクの硬化等といった用途に紫外線を照射するための紫外線ランプが用いられている。このような紫外線ランプ100Aの一例としては、特許文献1及び図6に示されるように、内部に希ガスが封入された密閉空間13Aを有する概略扁平直方体形状の放電容器1Aと、放電容器1Aの外表面11Aに対向するように設けられたメッシュ状の一対の電極2Aとを備え、前記放電容器1Aにおいて一方のメッシュ状電極22Aが設けられている面を光射出部3Aとして、内部で発生した紫外線を放電容器1A外に取り出すように構成されたものがある。さらに、このものは放電容器1Aで発生した紫外線を前記光射出部3Aのみから射出されるようにし、光の取り出し効率を向上させられるように、放電容器1Aの内表面12Aにおいて光射出部3Aに対応する部分以外にSiO粒子からなる紫外線反射膜4Aが形成されている。
【0003】
ところで、放電容器1A内で発生する紫外線は、基板の洗浄やインクの硬化等といった目的に合った所望の波長帯域の紫外線だけでなく、それよりも短波長の紫外線も併せて発生する。そして、この短波長の紫外線は放電容器1Aの内表面12Aに形成された紫外線反射膜4Aにより反射されるため、放電容器1Aの内表面12Aにおいて光射出部3Aに対応する部分にのみ照射されることになる。
【0004】
この短波長の紫外線が放電容器1Aを形成するガラスに照射されると、ガラスの劣化が少しずつ進行し、まず紫外線の透過率が低下し、紫外線の取り出し効率が落ちてしまう。さらにガラスの劣化が進行すると、放電容器1Aにクラックが生じ不点灯となってしまい、交換が必要となる。
【0005】
近年、稼働率を上げてライン全体においてコストを下げることが望まれているため、この光射出部3Aにおける短波長の紫外線によるガラスの劣化を無くす、又は、遅らすことによりランプの交換頻度を低減できるようにすることが求められている。
【0006】
このような光射出部3Aにおける放電容器1Aを形成するガラスの劣化を防ぐために、特許文献2に示される二重円筒管構造の放電容器1Aを備えた紫外線ランプ100Aにおいては、放電容器1Aの内表面12Aに形成される紫外線反射膜4Aを光射出部3Aの一部まで覆うように形成したものがある。
【0007】
具体的にはこのものは、図7に示すように放電容器1Aの内側管の内表面11Aに第1のベタ電極21Aが形成され、放電容器1Aの外側管の外表面11Aに横断面視においてC字状となるように第2のベタ電極22Aが形成され、第2のベタ電極22Aが形成されていない開口部分を光射出部3Aとしたものである。そして、放電容器1Aの外側管の内表面12Aにおいて第2のベタ電極22Aと対応する部分と、放電容器1Aの外側管の内表面12Aにおいて第2のベタ電極22Aの近傍であり、前記光射出部3Aの一部に紫外線反射膜4Aが形成されている。
【0008】
すなわち、特許文献2では光射出部3Aにおいて特に紫外線によるガラスの劣化が生じやすい、外側管の内表面12Aの第2のベタ電極22A近傍の一部を紫外線反射膜4Aで覆うことにより長寿命化を達成できるとしている。
【0009】
しかしながら、上述した構成では短波長の光が光射出部に到達しないようにXeガスの封入圧やランプ形状、寸法を細かく設計する必要があるし、特許文献1のように一方のメッシュ状電極22Aが設けられている面を光射出部3Aとしたランプにおいては、短波長の光が光射出部に到達するので、紫外線によるガラスの劣化を防ぐことはできない。かといって、光射出部3Aにおける全領域における短波長の紫外線の劣化を防ぐために、放電容器1Aにおける光射出部3Aに対応する部分の全てに紫外線反射膜4Aを内表面12Aに形成してしまうと、放電容器1Aの内部において発生した紫外線を光射出部3Aを介して外部にほとんど取り出すことができなくなってしまい、紫外線ランプ100A本来の機能を発揮できなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2012−243435号公報
【特許文献2】特開2010−218833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、短波長の紫外線によるガラスの劣化を防ぎ、紫外線の取り出し効率の低下やクラックの発生等を無くす、又は、さらに遅らせることができる紫外線ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明の紫外線ランプは、透光性ガラスからなり、内部に所定ガスが封入された密閉空間を有する放電容器と、前記放電容器の外表面に形成された少なくとも一対の電極と、前記密閉空間内において放電により発生した光が前記放電容器外へと射出される光射出部と、ピーク波長λ以上の紫外線は透過するとともに、ピーク波長λ未満の紫外線は反射又は吸収するものであり、前記放電容器の内表面において少なくとも前記光射出部に対応する領域に形成されている放電容器保護膜とを備えたことを特徴とする。
本願発明でいう透光性とは、放電によって発生した少なくとも紫外線光の波長領域の光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明であるのが好ましい。
また、本願でいうピーク波長とは、発光光のスペクトル分布のピーク値に対応する波長であり、詳しくは、前記密閉空間内において放電により発生した光が前記放電容器外へと射出される際の容器外で検出される前記スペクトル分布の最も強度の高い波長である。
【0013】
このようなものであれば、ピーク波長λ以上の紫外線は透過するとともに、ピーク波長λ未満の紫外線は反射又は吸収する放電容器保護膜が、前記放電容器の内表面において前記光射出部に対応する領域に形成されているので、必要なピーク波長λ以上の紫外線を外部に取り出しつつ、放電容器における光射出部に対応する部分にはピーク波長λ未満の紫外線が直接照射されることはない。
【0014】
すなわち、従来ガラスの劣化の進行を防ぐことができなかった放電容器において光射出部に対応する領域についても短波長の紫外線であるピーク波長λ未満の紫外線が照射されるのを前記放電容器保護膜によって防ぐことができる。したがって、放電容器において光射出部に対応する部分での紫外線の透過率の低下や、クラックの発生を従来に比べて長期間に亘って防ぐことができる。
具体的には、特許文献2のように短波長の光が光射出部に到達しないようにXeガスの封入圧やランプ形状、寸法を細かく設計する必要がないし、特許文献1のように一方のメッシュ状電極が設けられている面を光射出部としたランプにおいて、短波長の光が光射出部に到達しても、紫外線によるガラスの劣化を防ぐことができる。
【0015】
このように本発明であれば紫外線ランプ本来の機能を保ちながら、放電容器を形成するガラスの劣化を防ぎ、長寿命化を実現することができる。したがって、紫外線ランプの交換頻度を低減し、例えばラインにおける稼働率を向上させられる。
【0016】
前記密閉空間内において発生する外部へと取り出したいピーク波長λ以上の紫外線は、前記光射出部へと集中させて取り出し効率を高めるとともに、前記密閉空間内において発生する短波長の紫外線が放電容器まで到達することがなく、放電容器におけるどの部分についても短波長紫外線によるガラスの劣化が生じるのを防ぐことができるようにするには、前記放電容器保護膜が、前記放電容器の内表面において前記光射出部に対応する領域に形成されており、紫外線を反射するものであり、前記放電容器の内表面において前記光射出部以外に対応する領域に形成された紫外線反射膜をさらに備えたものであればよい。
【0017】
例えば基板の洗浄に用いるのに適した波長帯域の紫外線が前記光射出部から射出されるようにするとともに、前記放電容器を形成するガラスの劣化を防ぐことができるようにするための波長λの具体例としては、前記ピーク波長λが、165nm以上175nm以下の範囲内の波長であるものが挙げられる。
【0018】
前記紫外線反射膜において光射出部から射出されてほしい所望の波長帯域の紫外線が透過せずに反射されるようにするとともに、放電容器を形成するガラスを劣化させる短波長の紫外線も反射されるようにするための具体的な構成例としては、前記紫外線反射膜が、平均粒径が前記ピーク波長λよりも大きいSiO粒子で形成されているものが挙げられる。
なお、本願でいう平均粒径とは、透過型電子顕微鏡で観察した粒子の投影面積を真円に換算した時の円相当径を計算し、観測粒子数500個での平均円相当径を示す。
【0019】
前記放電容器保護膜においてガラスを劣化させる短波長の紫外線のうち特に劣化を進行させる波長よりも短い波長の紫外線は反射又は吸収されるようにしつつ、所望の波長帯域の紫外線としてピーク波長λよりも長い波長を有した紫外線のみを透過するようにするための具体的な構成例としては、前記放電容器保護膜が、平均粒径が前記ピーク波長λよりも小さく、160nm以上のSiO粒子で形成されていればよい。
【0020】
前記放電容器保護膜において、ピーク波長λよりも長い波長の紫外線については透過させるとともに、ピーク波長λよりも短い波長の紫外線については吸収させるようにするには、前記放電容器保護膜が、Alにより形成された紫外線透過膜であればよい。
【0021】
前記放電容器保護膜の別の態様として、前記放電容器保護膜において、ピーク波長λよりも長い波長の紫外線については透過させるとともに、ピーク波長λよりも短い波長の紫外線については反射させるようにするには、前記放電容器保護膜が、MgO、CaF又はMgFのいずれかにより形成された単層反射膜であればよい。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明の紫外線ランプによれば、前記放電容器の内表面において少なくとも前記光射出部に対応する領域に対してピーク波長λ以上の紫外線は透過するとともに、ピーク波長λ未満の紫外線は反射又は吸収する前記放電容器保護膜が形成されているので、従来保護されていなかった光射出部における放電容器を形成するガラスの劣化を防ぐことができ、長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る紫外線ランプの使用状態を示す模式的斜視図。
図2】同実施形態における紫外線ランプの内部構造を示す模式的断面図。
図3】本発明の第2実施形態に係る紫外線ランプの内部構造を示す模式的断面図。
図4】本発明の第3実施形態に係る紫外線ランプの内部構造を示す模式的断面図。
図5】本発明の第4実施形態に係る紫外線ランプの内部構造を示す模式的断面図。
図6】従来の紫外線ランプの内部構造を示す模式的断面図。
図7】さらに別の従来の紫外線ランプの内部構造を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態の紫外線ランプ(エキシマランプ)について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0025】
第1実施形態の紫外線ランプ100は、誘電体バリア放電により発生する紫外線を基板に照射して有機物の除去に用いられるものである。
【0026】
すなわち、図1の斜視図に示すように概略扁平直方体形状の前記紫外線ランプ100から下側に紫外線が照射されて、帯状の紫外線照射領域が形成されるようにしてある。そして、この紫外線照射領域を横切るようにワークが搬送されることによって、ワークに対して紫外線が照射されるようにしてある。
【0027】
次に、この紫外線ランプ100の詳細について説明する。
【0028】
図2の横断面図に示すように、前記紫外線ランプ100は、透光性ガラスからなり、内部に密閉空間13を有した概略中空直方体形状をなす放電容器1と、前記放電容器1の対向する幅広の上下面の外表面11にそれぞれ形成された一対の電極2と、前記放電容器1の下側面に設定されており、前記密閉空間13において放電により発生した光が前記放電容器1外へと射出される光射出部3とを備えたものである。
【0029】
さらに、この紫外線ランプ100は、放電容器1の内表面12において前記光射出部3以外に対応する部分に形成した紫外線反射膜4と、前記放電容器1の内表面12において前記光射出部3に対応する部分に形成した放電容器保護膜5との2種類の膜が形成してある。また、第1実施形態の紫外線反射膜4は、前記密閉空間13において発生する紫外線をその波長に関わらず略全て反射又は吸収するように構成してあるのに対して、前記放電容器保護膜5は、所定の波長帯域の紫外線は透過するとともに、所定の波長帯域よりも短波長の紫外線については反射又は吸収するように構成してある。すなわち、前記放電容器1の内表面12には、それぞれ特性の異なる紫外線反射膜4及び放電容器保護膜5が形成してある。
【0030】
各部について詳述する。
【0031】
前記放電容器1は、石英ガラスにより形成された透光性を有するものであり、密閉空間13内に希ガスとしてキセノンガスを封入してある。
【0032】
前記一対の電極2は、前記放電容器1の幅広面である上下面の外表面11に対して形成されたメッシュ状電極であり、各電極21、22間に所定の高周波・高電圧の電圧を印加することによって誘電体バリア放電を前記密閉空間13内に生じさせるようにしてある。前記密閉空間13内にはキセノンガスが封入されているので、誘電体バリア放電を生じさせると172nmをピークとし、所定の広がりを有した波長帯域の紫外線が生じることになる。また、前記一対の電極2はそれぞれメッシュ状に形成してあるので、前記密閉空間13において発生した紫外線は電極22の空隙部分を通って外部に出ていくことができる。
【0033】
前記紫外線反射膜4は、図2に示すように上面に形成された一方のメッシュ状の電極21に対して放電容器1の内表面12において対向する面と、放電容器1の内表面12において一対の幅細の左右側面とに形成してある。すなわち、前記紫外線反射膜4は、下面において形成されている他方のメッシュ状の電極22に対して内表面12において対向する面以外の部分を全て覆うように形成してある。
【0034】
また、この紫外線反射膜4は、所定の波長帯域の光として前記密閉空間13において誘電体バリア放電により発生する略全ての波長帯域の紫外線を反射又は吸収するように構成してある。より具体的には、前記紫外線反射膜4は、前記所定の波長帯域において最も長い波長よりも平均粒径が大きいSiO粒子で形成してある。このように紫外線反射膜4が構成してあるので、密閉空間13において発生した略全ての紫外線は、紫外線反射膜4を構成するSiO粒子に対して衝突し、反射又は吸収されることになる。したがって、紫外線反射膜4が形成してある放電容器1の内表面12には紫外線が到達することはほぼない。
【0035】
前記放電容器保護膜5は、放電容器1の下面において形成された他方のメッシュ状の電極22に対して内表面12において対向する面に形成してあり、ピーク波長λ以上の紫外線は透過するとともに、ピーク波長λ未満の波長の紫外線は反射又は吸収するように構成してある。第1実施形態においては、前記密閉空間13内で発生した紫外線のうち照射用途として有効な波長成分のみが透過するように前記ピーク波長λは、170nmに設定してある。言い換えると、前記ピーク波長λが170nmに設定してあるので、この放電容器保護膜5は、少なくとも密閉空間13で発生する紫外線のピーク波長である172nm及びその近傍の波長の紫外線を透過するものである。したがって、基板の洗浄等において優れた効果を示す波長帯域の光は遮られることなく外部へと射出されることとなる。
【0036】
一方、少なくとも放電容器1を形成するガラスの劣化を進行させる波長帯域の紫外線、すなわち160nm未満のピーク波長の短波長の紫外線については、当該放電容器1に到達せずに反射又は吸収されるように設定してある。すなわち、160nm未満の波長を有する紫外線は、前記放電容器保護膜5により反射又は吸収されるため、放電容器1まで到達することがないようにしてある。
【0037】
このような透過特性と反射、吸収特性を得られるようにこの放電容器保護膜5は、前記紫外線反射膜4よりも平均粒径の小さいSiO粒子により形成してある。より具体的には、本第1実施形態では前記放電容器保護膜5は、平均粒径が前記ピーク波長λである170nmよりも小さく、160nm以上のSiO粒子で形成してある。したがって、160nmよりも長く、170nm未満の波長の紫外線は、放電容器保護膜5を形成するSiO粒子と衝突せずに放電容器1に到達し外部へと射出される一方、160nmよりも短い波長の紫外線は、放電容器保護膜5を形成するSiO粒子と衝突し、反射又は吸収されてしまい、前記放電容器1には到達できない。
【0038】
このように前記放電容器1の内表面12において放電容器保護膜5が形成されている部分のみが密閉空間13で発生するピーク波長及びその近傍の波長帯域の紫外線を透過し、外部に紫外線が射出される光射出部3を形成している。逆に言うと、放電容器1において光射出部3としたい部分の内表面12には放電容器保護膜5を形成し、光射出部3としたくない部分の内表面12には前記紫外線反射膜4を形成してあるとも言える。また、前記紫外線反射膜4を形成するSiO粒子の平均粒径は、密閉空間13において発生する紫外線の略全てを反射又は吸収するように前記波長λよりも大きい平均粒径を有するようにしてあるとも言える。
【0039】
このように構成された第1実施形態の紫外線ランプ100であれば、放電容器1の内表面12の全てに前記紫外線反射膜4又は前記放電容器保護膜5のいずれかが形成してあるので、密閉空間13内で発生した少なくとも160nmよりも短い波長を有し、前記放電容器1を形成するガラスを劣化させる作用を持つ紫外線は、前記紫外線反射膜4又は前記放電容器保護膜5において反射又は吸収されて放電容器1まで到達することはない。
【0040】
したがって、放電容器1を形成するガラスが劣化して、外部へと射出させたい所望の波長帯域の紫外線についての透過率が低下したり、劣化が進行して放電容器1にクラックが発生し、密閉空間13を保つことができなくなって不点灯となったりするのを長期間に亘って防ぐことができる。このため、紫外線ランプ100の長寿命化を実現することができ、ランプハウス101に対して紫外線ランプ100を交換する頻度を低減することができ、ラインにおけるワークの処理効率を向上させることができる。
【0041】
さらに、前記放電容器保護膜5は、170nmよりも平均粒径を小さく形成してあるので所望の波長帯域である172nm及びその近傍の波長帯域の紫外線については透過させることができるので、光射出部3に対応する放電容器1の内表面12の全領域に前記放電容器保護膜5を形成しているにもかかわらず、必要とされる紫外線は外部へと射出させることができる。言い換えると、前記放電容器保護膜5を形成したことにより、ワークに対して照射されるべき波長帯域の紫外線の取り出し効率が低下することはなく、光射出部3としての機能は損なわれない。
【0042】
これらのことから、第1実施形態の紫外線ランプ100によれば、基板の洗浄やインクの硬化等といったワークの処理能力を低下させることなく、長寿命化を実現することができる。
【0043】
次に第2実施形態の紫外線ランプ100について図3を参照しながら説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態に対応する部材については同じ符号を付すこととする。
【0044】
第2実施形態の紫外線ランプ100は、第1実施形態と比較して前記放電容器保護膜5が異なっており、その他の部分については共通させてある。
【0045】
より具体的には、第2実施形態の前記放電容器保護膜5は、Alにより形成された紫外線透過膜であり、波長λ以上の紫外線は透過するとともに波長λよりも短い波長の紫外線を吸収するように構成してある。ここで、Alの紫外線の吸収端は160nm近辺であることから、この放電容器保護膜5を用いた場合、160nm近辺よりも長波長の紫外線を透過させるとともに、160nm近辺よりも短波長の紫外線についてはこの放電容器保護膜5において吸収させることができる。
【0046】
このようなものであっても第1実施形態と同様の効果を得ることができ、紫外線ランプ100の長寿命化を実現することができる。
【0047】
次に第3実施形態の紫外線ランプ100について図4を参照しながら説明する。なお、第3実施形態において第1実施形態に対応する部材については同じ符号を付すこととする。
【0048】
第3実施形態の紫外線ランプ100も、第1実施形態と比較して前記放電容器保護膜5を異ならせてあり、その他の部分については共通させてある。
【0049】
より具体的には、第3実施形態の前記放電容器保護膜5は、MgO、CaF又はMgFのいずれかにより形成された単層反射膜であり、波長λ以上の紫外線は透過するとともに波長λよりも短い波長の紫外線を反射するように構成してある。
【0050】
このようなものであっても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
次に第4実施形態の紫外線ランプ100について図5を参照しながら説明する。なお、第4実施形態において第1実施形態に対応する部材については同じ符号を付すこととする。
【0052】
第4実施形態の紫外線ランプ100は、第1実施形態と比較して放電容器1において前記光射出部3が設けられている面を異ならせてあり、放電容器1の幅細の側面から紫外線が射出されるように構成してある。すなわち、放電容器1の内表面12に形成されている紫外線反射膜4及び放電容器保護膜5の位置を第1実施形態とは異ならせてある。
【0053】
より具体的には、図5に示すように前記紫外線反射膜4は、各電極21、22に対向する内表面12の面と、一方の幅細面と対向する内表面12を全て覆うように形成してあるとともに、前記光射出部3に対応する部分である他方の幅広面に対向する内表面12を全て覆うようにして前記放電容器保護膜5が形成してある。
【0054】
このように前記紫外線反射膜4及び前記放電容器保護膜5を形成する場所を適宜設定することにより、任意の位置に光射出部3を設定することができるとともに、放電容器1の長寿命化を実現することもできる。すなわち、光射出部3の位置は必ずしも前記電極21、22により規定されるものではなく、自由に設定することもできる。
【0055】
その他の実施形態について説明する。
【0056】
前記各実施形態では扁平直方体形状の放電容器を有した放電容器を用いたものであったが、本発明は図7に記載しているような二重円筒管形状の放電容器を備えた紫外線ランプであっても適用することができる。すなわち、図7において放電容器の内表面において光射出部に対応する部分の全領域に亘って各実施形態に記載した放電容器保護膜を形成することによって、従来よりも紫外線ランプの長寿命化を図ることができるとともに、所望の波長帯域の紫外線を光射出部から射出させることができる。
【0057】
前記各実施形態では、各電極はメッシュ状の電極を用いていたが、例えば、電極を通過させて紫外線を射出する必要が無い場合には、ベタ電極を用いても構わない。また、放電容器内に封入される気体は、キセノン以外にもクリプトン等の希ガスであってもよい。また、ハロゲン化された希ガス等であっても構わない。この場合、発生する紫外線の波長帯域に合わせて、前記紫外線反射膜及び前記放電容器保護膜の特性を選べばよい。
【0058】
前記各実施形態において記載した波長λは一例であって、ワークに対して照射したい紫外線の波長帯域、及び、前記放電容器まで到達させたくない紫外線の波長帯域に応じて波長λを設定すればよい。また、波長λについては、放電容器に使用する透光性ガラスの性質に応じて定めてもよい。前記実施形態であれば、160nm未満の波長の紫外線は反射するとともに、160nm以上の波長の紫外線は透過させるように放電容器保護膜を形成してもよい。
【0059】
例えば、基板の洗浄等において好ましい洗浄効果が得られるようにしつつ、放電容器の劣化を防ぎ、紫外線ランプの長寿命化を実現するための具体例としては、前記波長λが、165nm以上175nm以下の波長であるものも挙げられる。
【0060】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0061】
100 紫外線ランプ
1 放電容器
11 外表面
12 内表面
13 密閉空間
2 一対の電極
3 光射出部
4 紫外線反射膜
5 放電容器保護膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7