特許第6202349号(P6202349)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202349
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/02 20060101AFI20170914BHJP
   F02G 1/043 20060101ALI20170914BHJP
   F02G 1/053 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H02K35/02
   F02G1/043 D
   F02G1/053 A
   F02G1/053 G
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-504065(P2015-504065)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(86)【国際出願番号】JP2013056287
(87)【国際公開番号】WO2014136236
(87)【国際公開日】20140912
【審査請求日】2016年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】507206000
【氏名又は名称】北海道特殊飼料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】小野瀬 和宏
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−005708(JP,A)
【文献】 特開2004−007864(JP,A)
【文献】 特開2008−092756(JP,A)
【文献】 特開2005−033917(JP,A)
【文献】 特開2000−213418(JP,A)
【文献】 米国特許第04649283(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/02
F02G 1/043
F02G 1/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状フレーム体と、
該管状フレーム体の内側に配置され、2個以上の磁性体を同極同士が対向した状態で一体化した遊動磁性体群と、
該管状フレーム体上で、該遊動磁性体群の外周に間隔を有する位置に配置され、交互に巻き方向が逆となるように構成されたコイルと、
該コイルから電力を出力する出力線と
を備え、該コイルの軸方向に該遊動磁性体群が相対的に摺動することで発電する構成において、
該遊動磁性体群の両方の最端部に略軸方向に連結した伝動手段を備える構成であって、
一方の伝動手段には動力源を連結すると共に、他方の伝動手段は従動して該動力源の入力を外部に伝達する作用をなし、該動力の伝達時に発電を行うようにした
ことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記発電装置において、
該遊動磁性体群の少なくともいずれか一方の最端部の磁極と同極を対向させるように配置された端部磁性体を備えた
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
少なくとも一方の前記伝動手段において、
前記遊動磁性体群の略軸方向の往復運動を回転運動に変換する運動変換機構を備え、
歯車又はタービンの軸からの回転運動を入力する
請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記発電装置の少なくとも一方の伝動手段を、
スターリングエンジンのディスプレーサピストンと接続し、
パワーピストンからの出力を得ると同時に発電する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項5】
前記発電装置の前記動力源側の伝動手段を、
スターリングエンジンのパワーピストンと接続し、
スターリングエンジンの出力を発電に用いる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の発電装置。
【請求項6】
前記発電装置を複数用い、前記伝動手段同士を連結する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項7】
スターリングエンジンであって、
管状フレーム体と、
該管状フレーム体の内側に配置され、2個以上の磁性体を同極同士が対向した状態で一体化した遊動磁性体群と、
該管状フレーム体上で、該遊動磁性体群の外周に間隔を有する位置に配置され、交互に巻き方向が逆となるように構成されたコイルと、
該コイルから電力を出力する出力線と
を備え、該コイルの軸方向に該遊動磁性体群が相対的に摺動することで発電する構成において、
前記管状フレーム体をシリンダーとし、前記遊動磁性体群をディスプレーサピストンとして摺動させ、
パワーピストンからの出力を得ると同時に発電する
ことを特徴とするスターリングエンジン。
【請求項8】
管状フレーム体と、
該管状フレーム体の内側に配置され、2個以上の磁性体を同極同士が対向した状態で一体化した遊動磁性体群と、
該管状フレーム体上で、該遊動磁性体群の外周に間隔を有する位置に配置され、交互に巻き方向が逆となるように構成されたコイルと、
該コイルから電力を出力する出力線と
を備え、該コイルの軸方向に該遊動磁性体群が相対的に摺動することで発電する発電装置において、
前記発電装置をヒートポンプ機構における低温側環境内に備え、該発電装置を冷却しながら発電を行う
ことを特徴とする発電装置。
【請求項9】
前記伝動手段において、
前記遊動磁性体群の略軸方向の往復運動を回転運動に変換するフライホイールを備え、該フライホィールの円周と、その円周に対向する位置に、電磁石及び永久磁石を備え、フライホイールの回転に伴って電磁石の極性を変換することでフライホイールの回転を付勢する
請求項1又は2に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル内を磁性体が摺動することで発電を行う発電装置に関し、特に該磁性体に伝動する伝動方法に特徴を有する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から磁性体を往復運動させて発電する機構が知られている。特許文献1に開示されるリニア振動電機においては、非磁性体製のスペーサーを挟んで可動コアの変位方向一端側と他端側に永久磁石を配置することを提案している。これにより、可動コア内において、多くの磁束が閉じてしまうことを抑制できる。したがって、歯部と可動コアとの間で多くの磁束を通すことができるので、リニア振動電機をアクチュエータとして利用した場合には、歯部と可動コアとの間に発生する磁気吸引力を増大させることができる。延いては、可動コアに発生する推力を増大させることができるので、アクチュエータの作動効率を向上させることができる、としている。
【0003】
特許文献2に開示される振動発電機は、同極同士を微小な距離を有して対向させ、複数の長さ方向に着磁した複数の永久磁石を一体化し、磁束分布の変化を急峻にするとともに、磁束の方向をコイルの巻き方向に概略直角になるようにし、磁束を局所的に高密度にするように一体化した複数の永久磁石の外周に複数のコイルを直列に配置し、コイルは適宜の間隔を有し、交互に巻き方向が逆になるように構成して、一体化した永久磁石を移動させることにより発電する振動発電機を構成している。
【0004】
特許文献3に開示される振動発電機は、筒状に形成され、非磁性体からなるケースと、ケースの外周に巻回されるコイルと、ケースの長さ方向に着磁され、ケースの内部に同極を対向して移動可能に配置され、筒状に形成される複数の可動磁石と、複数の磁石の穴部に挿入され、複数の磁石を一体化する締結部材と、を備えるものである。本構成により、発電のための負荷が少なく、発生電圧が高い高出力、高効率を実現する、としている。
その他、同極同士を対向させて発電を行う技術として、特許文献4,5が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3818243号
【特許文献2】特許第4704093号
【特許文献3】特許公開2011−050245号
【特許文献4】国際特許公開WO2004/093290
【特許文献5】国際特許公開WO2005/031952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術によって磁性体のリニアな摺動による発電方法は様々提案されているが、磁性体を動作させるための往復、振動運動を与えるかについては十分に検討されていない。例えば、特許文献1では「何らかの手段」として熱音響エンジンを挙げており、特許文献2では人が持ち歩くことによる振動や衝撃等を用いて発電を行うとしている。
【0007】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、リニアな磁性体の動作を利用した新しい発電装置を提案すると共に、従来提案されている発電装置のさらなる効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は次の手段を用いる。
請求項1に記載の発明によれば、管状フレーム体と、管状フレーム体の内側に配置され、2個以上の磁性体を同極同士が対向した状態で一体化した遊動磁性体群と、管状フレーム体上で、遊動磁性体群の外周に間隔を有する位置に配置され、交互に巻き方向が逆となるように構成されたコイルと、コイルから電力を出力する出力線とを備え、コイルの軸方向に遊動磁性体群が相対的に摺動することで発電する発電装置を提供する。そして、本構成において、遊動磁性体群の少なくともいずれか一方の最端部に略軸方向に連結した伝動手段を備え、伝動手段の動作に伴って発電を行うようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、上記の発電装置において、遊動磁性体群の少なくともいずれか一方の最端部の磁極と同極を対向させるように配置された端部磁性体を備える構成でもよい。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、上記の発電装置において、伝動手段に替えて、管状フレーム体の少なくとも一部を傾斜させ、遊動磁性体群を重力により動作させることで発電を行うようにしてもよい。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、上記の発電装置において、遊動磁性体群を管状フレーム体の低所から高所に揚送する揚送手段を備える構成でもよい。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、上記の発電装置において、伝動手段、又は伝動手段に替えて外力によって上記の遊動磁性体群を付勢する付勢手段を用い、遊動磁性体群が管状フレーム体の内側を遊動させると共に、管状フレーム体の一部にループ状部に構成し、遊動磁性体群がループ状部内を回動する間に発電を行うようにしてもよい。
【0013】
請求項6に記載の発明によれば、上記の浮動磁性体群を複数備える構成であって、浮動磁性体群が互いに所定の間隔で連結され、連動する構成でもよい。
【0014】
請求項7に記載の発明によれば、上記の浮動磁性体群を複数備える構成であって、浮動磁性体群が、隣接する同極同士の反発力により互いに所定の間隔を開けて軸方向に位置しながら連動する構成でもよい。
【0015】
請求項8に記載の発明によれば、上記の伝動手段において、遊動磁性体群の略軸方向の往復運動を回転運動に変換する運動変換機構を備え、歯車又はタービンの軸からの回転運動を入力する構成でもよい。
【0016】
請求項9に記載の発明によれば、上記の発電装置の伝動手段を、スターリングエンジンのディスプレーサピストンと接続し、発電と同時に、パワーピストンからの出力を得ることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明によれば、上記の発電装置の伝動手段を、スターリングエンジンのパワーピストンと接続し、スターリングエンジンの出力を発電に用いることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明によれば、上記の発電装置を複数用い、上記の伝動手段同士を連結することもできる。
【0019】
請求項12に記載の発明によれば、上記の遊動磁性体群の両方の最端部に略軸方向に連結した伝動手段を備える構成であって、一方の伝動手段には動力源を連結すると共に、他方の伝動手段は従動して該動力源の入力を外部に伝達する作用をなし、該動力の伝達時に発電を行う構成でもよい。
【0020】
請求項13に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発電装置を用いたスターリングエンジンであって、発電装置の前記管状フレーム体をシリンダーとし、前記遊動磁性体群をディスプレーサピストンとして摺動させ、パワーピストンからの出力を得ると同時に発電することを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発電装置を用いたスターリングエンジンであって、発電装置の管状フレーム体をシリンダーとし、前記遊動磁性体群をパワーピストンとして摺動させ、パワーピストンからの出力を得ると同時に発電することを特徴とするスターリングエンジンを提供する。
【0022】
請求項15に記載の発明によれば、上記の発電装置をヒートポンプ機構における低温側環境内に備え、発電装置を冷却しながら発電を行うこともできる。
【0023】
上記の伝動手段において、遊動磁性体群の略軸方向の往復運動を回転運動に変換するフライホイールを備え、該フライホィールの円周と、その円周に対向する位置に、電磁石及び永久磁石を備え、フライホイールの回転に伴って電磁石の極性を変換することでフライホイールの回転を付勢することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、遊動磁性体群の少なくともいずれか一方の最端部に略軸方向に連結した伝動手段を備えることにより、様々なエネルギー源の動力を遊動磁性体群に伝動することができ、導入するシステムのエネルギー効率の向上、発電方法の多様化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の発電装置の第1の態様である。
図2】本発明の発電装置の第2の態様である。
図3】伝動手段の例として遊星歯車機構を用いた第3の態様である。
図4】伝動手段の例としてクランクを用いた第4の態様である。
図5】本発明の発電装置の第5の態様である。
図6】本発明の発電装置を用いたシステム例である。
図7】スターリングエンジンの説明図である。
図8】スターリングエンジンと本発電機を組み合わせたシステムの概略図である。
図9】重力を利用した発電システムの概略図である。
図10】同、別の実施例を示す。
図11】ディスプレーサピストンを本発明に係る遊動磁性体群の構造で構成する例である。
図12】伝動手段にフライホイールを備える実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る発電装置の例を以下、図面に基づいて説明する。なお本発明は請求項に記載される範囲内において適宜変更することができ、本実施例に限定されるものではない。
【0027】
図1は本発明の第1の実施形態である。管状フレーム体(1)と、その内側には2個の磁石(4a)(4b)を同極同士が対向した状態でスペーサー(4c)を挟んで一体化した遊動磁性体群(4)を配置している。遊動磁性体群(4)は図示では1個であるが、後述する実施例のように本発明では複数の遊動磁性体群(4)を用いることもできる。
【0028】
管状フレーム体(1)上には、遊動磁性体群(4)の外周に間隔を有する位置に、交互に巻き方向が逆となるように構成されたコイル(2)が配置されている。従来技術においては、各磁石の間隔に相当する間隔をおいて複数のコイルを配置することが提案されており、本実施例でもこれらと同様の配置を行っている。なお、コイルの配置方法については、本実施例に限定されず、発電効率のよい配置を適宜用いることができる。
【0029】
図示しないが、各コイル(2)は相互に接続され、電力を出力する出力線が設けられる。コイル(2)の軸方向に遊動磁性体群(4)が相対的に摺動する際にコイル(2)に生じる起電力が、出力線から出力されて発電装置として作用する。
【0030】
本発明では、管状フレーム体(1)の端部に永久磁石(3)(3)を備えることを新たに提案する。永久磁石は、遊動磁性体群(4)の最端部の極性と同極を対向させるように配置し、図中では磁石(4a)の左端及び磁石(4b)の右端のS極に対向させて永久磁石(3)のS極を向けている。
本構成によると、S極同士が対向することで、遊動磁性体群(4)で同極同士を対向させたのと同様の磁力線を形成し、発電効率の向上を図ることができる。また、管状フレーム体(1)に外力を加えて遊動磁性体群(4)を摺動させた場合に、同極同士の反発力によって、遊動磁性体群(4)が管状フレーム体(1)に衝突することを防止することができる。
この点、特許文献3においては、衝突の緩衝を目的として緩衝部材を備えているが、本発明では永久磁石により、この代替手段を提供すると共に、上記の発電効率の向上を両立させるものである。
【0031】
図2図1の構成に加えて、本発明の特徴である伝動手段を備えると共に、2つの遊動磁性体群を備えた第2の実施態様である。
上記と同様に、管状フレーム体(1)の外周にはコイル(2)を複数配設し、端部には永久磁石(3)を備えている。また、管状フレーム体(1)内には2つの遊動磁性体群(4)を設け、両者は連結部材(5)によって連結されている。
【0032】
右側の遊動磁性体(4)の最端部には略軸方向に連結した伝動ロッド(6)を備え、永久磁石の中心に設けた貫通孔から外部に突出し、公知のクランク機構によりフライホイール(60)を回転させる。すなわち、2つの遊動磁性体群(4)は連動して管状フレーム体(1)内を摺動し、その上死点と下死点とを1往復する間にフライホイール(60)が1回転する。
【0033】
本発明によれば従来、管状フレーム体(1)自体を振動させることで振動発電機とは異なり、回転運動から本発電機を用いて発電を行うことができるようになり、発電方法の多様化に寄与する。
フライホイール(60)は、任意のギア機構によって回転させたり、タービン機構と接続して回転させることもできる。さらに、タービンと発電機とを接続する回転軸にフライホイール(60)を設けて従来の発電に加えて本発明の発電機による発電を行うこともできる。これによりタービンに余力が生じた場合でも最大限のエネルギーの利用を実現することができる。
【0034】
図3は伝動ロッド(6)の端部に遊星歯車機構(7)を連結した伝動手段の第3の実施態様である。遊星歯車機構(7)は、遊星歯車(70)と太陽内歯車(71)とから構成され、遊星歯車(70)が太陽内歯車(71)と噛み合いながら内周を公転すると共に、遊星歯車(70)の自転によってロッド(6)は傾斜することなく往復運動する。遊星歯車(70)を中心歯車(70)によって自転させることで上記往復運動に変換することができるので、回転運動を用いて本発電装置を動作させるのに好適な機構である。
【0035】
図4は、伝動ロッド(6)の端部にクランク(8)を連結した第4の実施態様である。回転軸(80)を中心にクランク部(81)が周回することで、回転軸(80)の回転運動を伝動ロッド(6)の往復運動に変換する。
本発明に係る運動変換機構としては、上記のようなフライホイールと組み合わせたクランク機構、遊星歯車機構、クランクを用いた機構の他、公知の機械要素を適宜用いることもできる。
【0036】
図5は連結部材(5)を用いずに、遊動磁性体(4)同士の磁石の反発力によって所定の間隔を保持する例を示す第5の実施態様である。
図から明らかなように、各遊動磁性体(4)は隣接する遊動磁性体と同極同士を対向させるように配置してあり、この反発力によって閉じられた空間である管状フレーム体(1)内では自然に間隔をあけて位置することになる。
連結部材(5)を用いないことで、軽量化が図られ、遊動磁性体(4)の摺動に要するエネルギーが少なくて済むことから、発電効率が向上する。
【0037】
また、図5の例は左右両側に伝動ロッド(6)を突出させている点でも他の実施例と異なる。このように、本発明では一端に限らず、両端に伝動手段を備えることもできる。
伝動ロッド(6)を両端に突出させた場合、それぞれの機能は2つの異なる態様が考えられる。その第1は、両方の伝動ロッド(6)が同期運動する構成において、両方とも外力を入力する構成である。この場合には、遊動磁性体(4)に大きな力を作用すると共に、両側から同期した運動を与えることで往復運動の安定性に寄与する。
【0038】
第2は、一方の伝動ロッド(6)を外力の入力(パワーピストン)とし、他方の伝動ロッド(6)は各遊動磁性体(4)を介した往復運動により従動(ディスプレーサピストン)とする構成である。本構成では回転運動を往復運動に変換する機構中に本発電装置を導入し、主動側では上記運動変換機構によって往復運動に変換した後、従動側ではその往復運動を他の装置の動力源として用いることができる。
もちろん、従動側でも再び回転運動に変換してもよい。
【0039】
図6は本発明の発電装置を複数用いたシステム例である。
本システム(100)では、4つの発電装置(101)(102)(103)(104)からの伝動ロッド(6)(6)同士を運動変換機構(105)(106)(107)(108)によって連結することで複数の発電装置を連動させるものである。ループ状に発電装置が連結されていることで単に並列に接続する場合に比して安定した摺動が可能となる。
【0040】
また、運動変換機構には発電機(109)やタービン(110)を伝動軸(111)を介して連結することも可能である。図示のようにどちらか一方を1つの運動変換機構に連結するだけでなく、タービンによって運転される発電機と同軸で運動変換機構に入力することもできるし、又は全ての運動変換機構に発電機やタービンを連結することもできる。
このように、本発明の発電装置は、伝動機構としても利用することができ、使用用途の多様化にも寄与するものである。
【0041】
上記のタービン(110)は燃焼装置による熱エネルギーを用いて発電を行う公知の発電方法と組み合わせてもよい。また、例えば河川の水力によってタービンを回転させる水力発電の発電機と組み合わせて使用することもできる。
【0042】
(別実施例1)
本発明の発電装置は、比較的小さな往復運動の力により発電が行えることから、スターリングエンジンとの組み合わせが特に好適である。
まずスターリングエンジンについて概説する。図7は一般的なスターリングエンジンの2態様である。公知のようにスターリングエンジンは、等容加熱、等温膨張、等容冷却、等温圧縮のスターリングサイクルと呼ばれる熱サイクルの行程でシリンダ内のピストンが動作する。
【0043】
図7(a)のエンジンでは、1つのシリンダ(125)内の同軸上にそれぞれ別に動作するディスプレーサピストン(123)とパワーピストン(124)が配置され、ディスプレーサピストンの上側が膨張空間、その下のパワーピストン(124)との間の空間が圧縮空間となる。
また、図7(b)のエンジンは2シリンダー型(126)(127)であり、ディスプレーサピストン(123)とパワーピストン(124)は90度の位相差を持つクランクによって接続される。
【0044】
本発明ではいずれの方式のエンジンと組み合わせてもよいが、一般的に多く用いられるのは(b)の2シリンダー型であり、本実施例でも2シリンダー型を用いた例を示す。
図8はスターリングエンジン(131)と本発電機(136)を組み合わせたシステム(130)であり、ディスプレーサピストン(132)とパワーピストン(133)を連結するクランク(134)の回転運動をフライホイール(135)、伝動ロッド(6)を用いて発電機(136)に入力し、発電を行う。
【0045】
スターリングエンジンの動作には、加熱と冷却はいかなるエネルギー源を用いてもよいが、例えば下部を雪氷(140)などで冷却する一方、上部を太陽光(139)などで暖める温冷空間を構成し、その温度差を利用して駆動することもできる。寒冷地では多量の雪氷により費用をかけることなく低温の環境を容易に作出でき、高温側を太陽熱とすることで、スターリングエンジンによる動力の確保が期待できる。
本発明はこのスターリングエンジンと組み合わせることで発電も同時に行おうとするものである。
【0046】
上記実施例では、ディスプレーサピストンとパワーピストンとを連動する構成としたが、いずれか一方のピストンに連結する構成でもよい。
【0047】
さらに、低温側の空間にファン(137)を備えて、発電機(136)の冷却に用いることもできる。発電装置は多数のコイルを用いており、発電時にコイルからの発熱とそれに伴う発電効率の低下が懸念される。上記のように、スターリングエンジンでは低温側の環境を有しているので、これを利用して冷却を行うことで、発電の効率化に寄与する。また、高温状態が続くことによるコイル等の部材の劣化も防止することができる。
【0048】
コイルの冷却という観点から、本発電装置をヒートポンプ機構における低温側環境内に備え、発電装置を冷却しながら発電を行うこともできる。周知のようにスターリングエンジンとヒートポンプは逆現象を利用した機構であり、相互の親和性が高い。ヒートポンプ機構を利用する場合、高温側あるいは低温側いずれかの熱は利用されない場合が多く、特に低温側環境を本発電装置のコイルの冷却に用いることもできる。本構成によっても発電の効率化に寄与するものである。
【0049】
(別実施例2)
本発明では上記伝動手段に替えて、管状フレーム体(1)の少なくとも一部を傾斜させ、遊動磁性体群(4)を重力によって落下させる過程で発電を行うこともできる。
図9は重力を利用した発電システム(150)の一例であり、管状フレーム体(151)を大きなU字状の管路で構成し、上端にはアシスト装置(152)(153)を備える。管状フレーム体(151)には上記実施例と同様に多数のコイル(155)が付設されており、遊動磁性体群(154)が管路内を往復運動することによって発電される。
【0050】
遊動磁性体群(154)は上方から下方にむけては重力によって落下するが、そのままでは他方の上端までは上がらないため、アシスト装置(152)(153)によって付勢し、上端まで到達するようにしている。
アシスト装置(152)(153)は言うまでも無く、自然エネルギー、例えば風力や水力によるものであり、遊動磁性体群(154)の運動により連続的に発電を行うことができる。
【0051】
(別実施例3)
同様に重力を用いて遊動磁性体群(4)を動作させる構成を図10に示す。本システム(160)における管状フレーム体は少なくとも落下傾斜部(161)、ループ部(162)、回帰搬送部(163)、揚送部(164)とから構成される。
遊動磁性体群(165)は、落下傾斜部(161)内を落下することで付勢され、ループ部(162)を周回する。落下傾斜部(161)とループ部(162)にはコイル(166)が付設されているので、周回する課程で継続的に発電を行う。
【0052】
ループ部(162)には、図示しない離脱機構を設け、ループ部(162)内で一定の速度以下となった遊動磁性体群(165)を離脱させる。離脱した遊動磁性体群(165)は回帰搬送部(163)を経て揚送部(165)によって再び、落下傾斜部(161)の上端まで揚送される。
ここでも揚送部(165)を自然エネルギー、例えば水車様の機構によって揚送することで、連続的な発電を行うことができる。
【0053】
(別実施例4)
本発明は上記の発電装置の特徴をスターリングエンジンのシリンダ及びピストン自体に適用することもできる。
すなわち、図11に示すように、スターリングエンジン(170)のディスプレーサピストン(171)を本発明に係る遊動磁性体群の構造で構成し、シリンダー(172)の外周には複数のコイル(173)を付設する。
本構成によればスターリングエンジンのディスプレーサピストン(171)の往復運動に伴って、本発電装置による発電の効果を得ることができる。
【0054】
さらに、パワーピストン(174)も遊動磁性体群の構造で構成し、シリンダー(175)の外周に複数のコイル(176)を付設することにより、パワーピストン(174)側においても発電を行うことができる。
スターリングエンジンは2つのピストンによる往復運動が特徴であり、本発明の往復運動による発電装置とは相乗的なメリットを有するものである。
【0055】
(別実施例5)
本発明の発電装置において、伝動手段において、遊動磁性体群の略軸方向の往復運動を回転運動に変換するフライホイールを備え、該フライホィールの円周と、その円周に対向する位置に、電磁石及び永久磁石を備え、フライホイールの回転に伴って電磁石の極性を変換することでフライホイールの回転を付勢することもできる。
【0056】
図12に示すように、伝動ロッド(6)をフライホイール(60)に連結し、そのフライホール(60)上には回転に伴って極性が逆転する電磁石(61)を備える。また、フライホイールの外周には永久磁石(62)を備える。本構成によれば、電磁石と永久磁石との磁力の作用によってフライホイールが連続して回転するようになるので、ピストンの往復運動を補助することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 管状フレーム体
2 発電コイル
3 磁石
4 遊動磁性体群
4a 磁石
4b 磁石
4c スペーサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12