(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二酸化炭素分離回収・貯留法(Carbon Dioxide Capture and Storage)、又は炭酸ガス圧入攻法(CO2−Enhanced Oil Recovery)において用いられる、請求項1又は2に記載の再資源化方法。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は強力な温室効果ガスの一つであり、化石燃料の燃焼などによって人為的に生成する二酸化炭素の大気中への排出量を抑えることは、地球温暖化対策のための重要課題となっている。
【0003】
二酸化炭素の大気中への排出量を減らす方法として、二酸化炭素をメタン生成菌によってメタンに変換させ、人間活動に使えるエネルギーとして再利用しようとする再資源化が提唱されている。
【0004】
しかしながら、二酸化炭素をメタン生成菌によってメタンに変換する反応は、二酸化炭素を電子受容体とする酸化還元反応であり(例えば、CO
2+4H
2→CH
4+2H
2O)、この反応のためには、二酸化炭素と反応させるための電子供与体が必要となる。
【0005】
電子供与体を供給する方法としては、水素ガスを注入する方法や、電子を与える(電流を流す)方法が挙げられる。例えば、特許文献1には、地中に貯留された二酸化炭素をメタンに変換するメタン変換工程、及び発生したメタンを回収するメタン回収工程を備える地中貯留二酸化炭素のメタン変換回収方法であって、上記メタン変換工程が、二酸化炭素の地下貯留層に設置された電極井に、電源から電子を供給し、メタン菌を触媒として下記式(1)の反応、及び下記式(2)を伴う下記式(3)の反応の少なくともいずれかにより、上記二酸化炭素をメタンに変換する工程であり、上記電極井が、電極井外壁と、アノード電極と、カソード電極と、上記アノード電極及び上記カソード電極の接触を防ぐセパレータとを含み、上記カソード電極が、その表面にメタン菌を配し、上記二酸化炭素と接触可能であり、上記セパレータが、気液透過性を有することを特徴とする地中貯留二酸化炭素のメタン変換回収方法が記載されている。
CO
2+8H
++8e
−→CH
4+2H
2O・・・式(1)
2H
++2e
−→H
2・・・式(2)
CO
2+4H
2→CH
4+2H
2O・・・式(3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子供与体を供給するために、水素ガスを発生させたり、電流を起こしたりするには、相応のエネルギーを必要とする。そのため、コストが高く、また二酸化炭素をメタンに変換できたとしても、電子供与体の供給に使用したエネルギーを差し引いた結果、相対的に得られるエネルギーは少なくなってしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、供給するエネルギーが少なく、したがって低コストで二酸化炭素をメタンに変換することができる二酸化炭素の再資源化方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水素よりイオン化傾向の大きい金属を、嫌気水及び液状の二酸化炭素の混合液中に配置するステップと、上記金属の酸化により水素を発生させるステップと、発生させた水素を上記混合液と共にメタン生成菌に供給し、二酸化炭素をメタンに変換するステップと、を含む、二酸化炭素の再資源化方法を提供する。
【0010】
本発明の二酸化炭素の再資源化方法によれば、嫌気条件下における金属とプロトンとの酸化還元反応により水素を発生させているため、外部からのエネルギー供給を必要とせず、低コストで二酸化炭素をメタンに変換することができる。また、混合液が二酸化炭素を含むため、混合液のpHが酸性側に寄っており、より効率よくプロトンと金属とを反応させることができる。
【0011】
また、混合液が高圧下におかれているため、発生した水素を混合液に溶解させたままメタン生成菌に供給することができる。これにより、メタン生成菌によるメタン変換反応を効率よく進めることができる。
【0012】
上記金属は、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)であることが好ましい。鉄又はニッケルは、取り扱いが容易なうえ、安価に入手することができるため、より一層低コストでの二酸化炭素の再資源化が可能となる。
【0013】
上記二酸化炭素の再資源化方法は、二酸化炭素分離回収・貯蔵法(CCS:Carbon Dioxide Capture and Storage)、又は炭酸ガス圧入攻法(CO
2−EOR:CO
2−Enhanced Oil Recovery)において用いられることが好ましい。
【0014】
上記二酸化炭素の再資源化方法は、外部からのエネルギー供給を必要としないため、低コストで二酸化炭素の再資源化が可能であり、また複雑な設備等が不要である。したがって、CCSやCO
2−EORと組み合わせて用いるのに適している。
【0015】
上記嫌気水は、電解質を含むことが好ましい。電解質を含むことにより、金属の酸化による水素の発生効率が向上する。
【0016】
上記金属は、カラムに充填されていてもよい。これにより、取り扱いが容易となり、操作性がより一層向上する。
【0017】
上記二酸化炭素の再資源化方法においては、発生させた水素を上記混合液のフローにより移送するステップを更に含んでいてもよい。
【0018】
上記二酸化炭素の再資源化方法では、発生した水素を混合液に溶解させた状態を維持できるため、水素を混合液のフローにより離れた場所に移送することもできる。したがって、水素を発生させるステップと、二酸化炭素をメタンに変換するステップを物理的に離れた場所で行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、外部からのエネルギー供給を必要とせず、低コストで二酸化炭素をメタンに変換することができる、二酸化炭素の再資源化方法が提供される。また、複雑な設備等が不要であるため、従来の方法と比べてより実用的な再資源化方法である。したがって、本発明の二酸化炭素の再資源化方法は、CCSやCO
2−EORと組み合わせて用いるのに適している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態に係る二酸化炭素の再資源化方法は、水素よりイオン化傾向の大きい金属を、嫌気水及び液状の二酸化炭素の混合液中に配置するステップと(以下、「配置ステップ」ともいう。)、当該金属の酸化により水素を発生させるステップと(以下、「水素発生ステップ」ともいう。)、発生させた水素を混合液と共にメタン生成菌に供給し、二酸化炭素をメタンに変換するステップと(以下、「メタン生成ステップ」ともいう。)、を含む。
【0023】
配置ステップは、嫌気水及び液状の二酸化炭素の混合液中に、水素よりイオン化傾向の大きい金属(以下、単に「金属」ともいう。)を配置するものである。
【0024】
配置する金属は、水素よりイオン化傾向の大きい金属であればよい。具体的には、例えば、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等である。これらの金属の中でも、取り扱いが容易で安価に入手可能である点から、鉄又はニッケルが好ましい。これらの金属は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。また、これらの金属の合金を用いてもよい。
【0025】
上記金属は、嫌気水及び液状の二酸化炭素の混合液との接触面積を増加させ、水素発生効率を高める観点から、粉末状であることが好ましい。また、カラム等の液体の出入りが可能な容器に充填されていることが好ましい。これにより、取り扱い性が向上する。
【0026】
混合液は、嫌気水と液状の二酸化炭素を含む。嫌気水は酸素が欠乏した水であればよい。混合液は酸素が欠乏しているため、金属と酸素との反応により錆が形成されることが抑制されている。また、嫌気水は、メタン生成菌がメタンを生成できる嫌気条件を満たすことが好ましい。メタン生成は酸化還元電位が−150mV以下であることが好ましい。嫌気水と液状の二酸化炭素の混合割合は、特に制限されるものではないが、例えば、嫌気水と液状の二酸化炭素の全量に対し、液状の二酸化炭素が0.01体積%以上10体積%以下であることが好ましく、6体積%以下であることがより好ましい。
【0027】
嫌気水としては、例えば、嫌気的な地下帯水層に存在する水、枯渇油田や枯渇ガス田に滞留している冠水等の天然に存在する嫌気水であってもよく、また嫌気処理を施した嫌気水であってもよい。嫌気水とするための嫌気処理方法としては、例えば、水を不活性ガスでバブリングすることにより溶存酸素を追い出す方法や、水に硫化ナトリウムや塩化チタン等の還元剤を添加することで溶存酸素を除去する方法が挙げられる。
【0028】
嫌気水としては、電解質が多く溶解しているものであることが好ましい。これにより、混合液の伝導率が高くなるため、水素発生ステップにおける水素の生成効率が向上する。このような観点から、嫌気水は嫌気海水や嫌気の地下水であることが好ましい。海水は電解質が多く溶解していることに加え、豊富に存在するため入手が容易であり、より一層の低コスト化が可能となる。
【0029】
混合液に含まれる液状の二酸化炭素は、液体の二酸化炭素、及び超臨界状態の二酸化炭素(圧縮二酸化炭素)のいずれであってもよい。液状の二酸化炭素を得るためには、温度及び圧力を制御すればよく、当業者であれば、目的に応じて温度及び圧力を適宜設定することができる。また、二酸化炭素は常圧では液状にならないため、圧力を加えることは必須である。液状の二酸化炭素とするための温度及び圧力は、二酸化炭素の状態図に基づいて適宜設定すればよい。
【0030】
水素発生ステップでは、上記金属の酸化により水素を発生させる。上記金属は、混合液中のプロトンとの酸化還元反応により、金属イオンとして混合液中に溶解し、放出された電子を混合液中のプロトンが受け取ることで水素が生成する。例えば、上記金属として鉄を用いた場合の、混合液中のプロトンとの酸化還元反応は下記式(I)及び(II)で表される。
(数1)
Fe→Fe
2++2e
− (I)
(数2)
2H
++2e
−→H
2 (II)
【0031】
混合液は液状の二酸化炭素を含むため圧力が加えられており、このため発生した水素は混合液中に溶解する。これにより、メタン生成ステップにおけるメタン生成の効率が向上する。また、混合液は高濃度の二酸化炭素を含むためpHが酸性となっており、プロトンが豊富に存在する。これにより、水素発生ステップにおける水素の生成効率が向上する。また、水素発生ステップによりプロトンが消費されるため、混合液のpHは再び中性〜弱アルカリ性側に振れることとなる。これは、メタン生成菌の生育やメタン生成に対して好条件である。
【0032】
メタン生成ステップでは、水素発生ステップで発生させた水素を混合液と共にメタン生成菌に供給し、メタン生成菌により混合液中の二酸化炭素をメタンに変換する。メタン生成菌によるメタンの生成は、例えば、下記式(III)で表される反応により行われる。
(数3)
CO
2+4H
2→CH
4+2H
2O (III)
【0033】
メタン生成菌としては、二酸化炭素を基質とするものであれば特に制限なく、生育温度等を指標として、目的に応じて選択して用いることができる。具体的には、例えば、Methanobacteria網のメタン生成菌、Methanomicrobia網のメタン生成菌、Methanococci網のメタン生成菌、及びMethanopyri網のメタン生成菌等が挙げられる。
【0034】
メタン生成菌は、例えば、CCS法における地下貯留二酸化炭素層、CO
2−EOR法における油層に存在する天然由来のメタン生成菌であってもよく、また独立行政法人製品評価技術基盤機構、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター、DSMZ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)等の公共の菌株保存・提供施設より入手したものであってもよい。
【0035】
本実施形態に係る二酸化炭素の再資源化方法においては、上記各ステップに加えて、水素発生ステップで発生させた水素を上記混合液のフロー(流れ)により移送するステップ(以下、「移送ステップ」ともいう。)を更に含んでいてもよい。
【0036】
本実施形態に係る二酸化炭素の再資源化方法では、発生した水素を混合液に溶解させた状態を維持できるため、水素を混合液のフローにより離れた場所に移送することもできる。したがって、水素を発生させるステップと、二酸化炭素をメタンに変換するステップを物理的に離れた場所で行うことができる。移送ステップを含む場合、配置ステップにおいて上記金属は、メタン生成菌よりも上流に配置すればよい。
【0037】
本実施形態に係る二酸化炭素の再資源化方法は、上記混合液が液状の二酸化炭素を含むことから明らかなように、高圧下で行われる。具体的には、例えば、25℃では6MPa以上の高圧である。
【0038】
本実施形態に係る二酸化炭素の再資源化方法は、外部からのエネルギー供給を必要とせず、低コストで二酸化炭素をメタンに変換することができる。また複雑な設備等が不要であるため、屋外における実施も可能であり、従来の方法と比べてより実用的である。したがって、例えば、二酸化炭素再資源化プラント、CCS法、CO
2−EOR法、メタン発酵処理プラント等において好適に用いることができる。
【0039】
(1)二酸化炭素再資源化プラント
図1は、二酸化炭素再資源化プラントの一実施形態を示す模式図である。
図1に示す二酸化炭素再資源化プラント100は、液状の二酸化炭素と嫌気水とを混合するミキサー11と、ミキサー11を通して供給される混合液の流路に配置された金属カラム12と、金属カラム12を通過し、水素を含む上記混合液をメタン生成菌により資化してメタンを生成するメタン生成リアクター13と、を備える。金属カラム12には、水素よりイオン化傾向の大きい金属が充填されている。
【0040】
ミキサー11に供給される液状の二酸化炭素は、例えば、火力発電所等で大量に発生する二酸化炭素を液化して回収したものである。メタン生成リアクター13には、予めメタン生成菌を植菌しておく。
【0041】
図1に示す二酸化炭素再資源化プラント100では、ミキサー11にAを介して供給される液状の二酸化炭素(
図1中、白丸で表示)は、Bを介して供給される嫌気水とミキサー11により混合され、混合液となる。金属カラム12を通過した混合液中には、上記金属と混合液中のプロトンとの酸化還元反応により発生した水素(
図1中、斜線付きの丸で表示)が含まれる。メタン生成リアクター13では、混合液中の二酸化炭素と水素を基質としてメタン生成菌によりメタン(
図1中、黒丸で表示)を生成する。生成したメタンはCを介して回収され、エネルギー源として使用される。
【0042】
(2)CCS
地球温暖化対策のため、人為的二酸化炭素の大気への排出を減らす方法として、二酸化炭素を液化して回収し、海水とともに地下へ圧送し、地下に貯留・隔離することが効果的な方法の一つとされている(CCS法)。また、二酸化炭素を地下に貯留するだけでは、エネルギーを消費するのみで利益が得られないため、貯留した二酸化炭素を地下に生息するメタン生成菌によってメタンに変換させ、リサイクルする手法が提案されている。
【0043】
図2は、一実施形態に係る二酸化炭素分離回収・貯留法における二酸化炭素の再資源化を示す概念図である。
図2に示す二酸化炭素の地下貯留層200は、海水と液状の二酸化炭素を混合するミキサー21と、地下貯留二酸化炭素層23へ混合液を圧送する圧入機(図示せず)及び坑井24と、坑井24と地下貯留二酸化炭素層23との接続部に配置された金属カラム22とを備える。金属カラム22には、水素よりイオン化傾向の大きい金属が充填されている。地下貯留二酸化炭素層23は、帯水層等であり、天然由来のメタン生成菌が存在する。
【0044】
図2に示す二酸化炭素の地下貯留層200では、ミキサー21にEを介して供給される液状の二酸化炭素(
図2中、白丸で表示)は、Dを介して供給される海水とミキサー21により混合され、混合液となる。混合液は、圧入機により圧入され坑井24を通って地下へと移送される。金属カラム22を通過して地下貯留二酸化炭素層23に到達した混合液中には、上記金属と混合液中のプロトンとの酸化還元反応により発生した水素(
図2中、斜線付きの丸で表示)が含まれる。混合液には圧入による圧力と地下深くにあることによる圧力が加わっており、発生した水素は混合液中に溶解している。地下貯留二酸化炭素層23では、混合液中の二酸化炭素と水素を基質として地下貯留二酸化炭素層23に存在する天然由来のメタン生成菌によりメタンを生成する。
【0045】
(3)CO
2−EOR
油田に残存する石油の回収率を増加する技術として、三次回収法(Enhanced Oil Recovery)が注目されている。三次回収法の一つに、炭酸ガス圧入攻法(CO
2−EOR法)がある。CO
2−EOR法は、圧入井より油層に気体又は水に溶解させた二酸化炭素を圧入する方法である。
【0046】
例えば、圧入する二酸化炭素を嫌気水に溶解させ、圧入井と油層との接続部に、水素よりイオン化傾向の大きい金属を充填した金属カラムを配置することにより、水素を発生させ、油層内に存在するメタン生成菌により、メタンを生成することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
〔高圧培養試験〕
図3は、本試験で用いた高圧培養リアクターを説明する模式図である。
図4は、本試験で用いた反応カラムを説明する模式図である。
【0049】
図3に示す高圧培養リアクター300は、液体CO
2の入ったボンベ31と、嫌気培地の入ったボトル33と、液体CO
2と嫌気培地を混合して混合液とするミキサー35と、2つの反応カラム400及び410とを備える。反応カラム400及び410は、恒温水が循環している容器36内に収納されている。容器36には、拘束圧を加えるシリンジポンプ37が連結されている。また、反応カラム400及び410は、間隙水圧を加えるシリンジポンプ38と、反応カラム400及び410を通過した混合液を回収するサンプルボトル39とにラインを介してそれぞれ接続されている。
【0050】
図4(a)に示す反応カラム400は、シリカビーズ及び鉄粉(4〜5g)を熱収縮チューブに詰めた後、嫌気バッグ内でメタン生成菌(Methanoculleus submarinus Nankai−1株)を植菌し、密封して作製した(
図4(a))。
図4(a)に示すように、反応カラム400は、混合液の流れ方向Kに沿って、フィルター層41と、鉄粉層43と、シリカビーズ層42と、フィルター層41とがこの順に配置されている。なお、メタン生成菌は、和歌山県沖の南海トラフの海底下から分離されたものであり、DSMZ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures)から入手することができる(DSM No.15122)。
【0051】
比較のため、鉄粉を加えない反応カラムを作製した。
図4(b)に示す反応カラム410は、鉄粉を加えなかったこと以外は、反応カラム400と同様にして作製したものである(
図4(b))。
図4(b)に示すように、反応カラム410は、鉄粉層43がないこと以外は、反応カラム400と同様の配置となっている。
【0052】
作製した反応カラム400及び410を高圧培養リアクター300にセットし、ボトル33からMethanoculleus submarinusの海水ベースの嫌気培地を流量0.01〜0.04mL/分で、ボンベ31から液体CO
2を流量0.00001〜0.00053mL/分で供給し、ミキサー35で混合して混合液とした。なお、上記海水ベースの嫌気培地は、微生物株の分譲機関(DSMZ)で公開されているMethanococcus用の培地組成(141.METHANOCOCCUS JASNNASCHII MEDIUM)をもとに調製した(ただし培地の調製時に水素と二酸化炭素ガスは溶存させていない)。当該混合液を、ラインHからラインIを通して反応カラム400を通過させた。同時に、混合液をラインHからラインJを通して反応カラム410を通過させた(
図3)。
【0053】
反応カラム400及び410を通過した混合液をサンプルボトル39にそれぞれ回収し、混合液中の溶存ガスの組成分析を行った。実験条件は、間隙水圧:12MPa,拘束圧:13MPa、温度:45℃とした。温度条件はMethanoculleus submarinusの至適温度、圧力条件は採取された海底堆積物の圧力を模擬している。
【0054】
溶存ガスの組成分析のために、サンプルボトル39に回収した混合液を、真空ライン(図示せず)に解放し、超音波洗浄によりガス成分を抽出した。抽出したガス成分におけるガス組成は、ガスクロマトグラフィー−ヘリウムイオン化検出器(HID)で分析した。
【0055】
〔結果〕
図5に、高圧培養試験における水素濃度(a)、メタン濃度(b)及び全炭酸濃度(c)の時間変化を示す。ここでいう濃度は、混合液中の溶存ガス濃度を意味する。
【0056】
図5に示すように、鉄粉を添加した反応カラム400を通過した混合液のみ、水素濃度の増加とメタン濃度の増加が検出された(
図5(a)及び(b))。メタン生成活性は、0.2〜3.7μmol/mL/日であった。二酸化炭素濃度が最大450mMでもメタン生成が確認できた。鉄粉を添加していない反応カラム410を通過した混合液では水素とメタンの生成が確認されなかったため、植菌したメタン生成菌は、電子供与体である水素が不足し、死滅したか、メタン生成活性を維持できなかったと考えられる。
【0057】
また全二酸化炭素濃度は、鉄粉を添加した反応カラム400を通過した混合液では、鉄粉を添加していない反応カラム410を通過した混合液の約半分程度であった(
図5(c))。鉄粉を添加した反応カラム400を通過した混合液ではシデライト(FeCO
3)の沈殿が確認され、注入した二酸化炭素の一部は、溶出した鉄イオンと反応してシデライトとして沈殿したと考えられる。