特許第6202372号(P6202372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202372
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】接点部材、及び接点構造
(51)【国際特許分類】
   H01H 1/06 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H01H1/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-123817(P2013-123817)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-241257(P2014-241257A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】栗田 智久
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−161254(JP,A)
【文献】 特開2004−297037(JP,A)
【文献】 特開2002−170617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 1/06 − 1/66
H01R 4/48
H01R 12/00 − 12/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏の関係にある両側のうち、一方側にはプリント配線板が有する導体部分にはんだ接合される接合部を有し、他方側には軸方向へ圧縮されて弾性変形する接触子の先端が圧接する接触部を有し、前記接合部を前記導体部分にはんだ接合して前記接触部に前記接触子の先端を圧接させることにより、前記導体部分と前記接触子を電気的に接続可能に構成されており、
前記接触部には、当該接触部側及び前記接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込むことにより、前記接触部に圧接させた状態にある前記接触子の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部が形成され
前記接合部には、前記プリント配線板側から離れる方向へ凹む接合部側凹部が形成され、
前記接合部は、前記プリント配線板側に近づくほど小径となる円錐台状に形成され、前記プリント配線板側に向けられる円形の端面の中央には、前記プリント配線板側から離れるほど小径となる円錐台状の前記接合部側凹部が形成されている
接点部材。
【請求項2】
前記位置ずれ抑制部は、前記接触子側に向かって突出し、その先端部分が前記接触子の先端にある開口部分の内側に嵌まり込む接触部側凸部、又は、前記接触子側から離れる方向へ凹んでおり、その内側に前記接触子の先端部分が嵌まり込む接触部側凹部、いずれかである
請求項1に記載の接点部材。
【請求項3】
プリント配線板が有する導体部分にはんだ接合される接点部材と、
軸方向へ圧縮されて弾性変形し、その先端が前記接点部材に圧接する接触子と
を備え、
前記接点部材は、表裏の関係にある両側のうち、一方側には前記導体部分にはんだ接合される接合部を有し、他方側には前記接触子の先端が圧接する接触部を有し、
前記接触部には、当該接触部側及び前記接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込むことにより、前記接触部に圧接させた状態にある前記接触子の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部が形成され
前記接合部には、前記プリント配線板側から離れる方向へ凹む接合部側凹部が形成され、
前記接合部は、前記プリント配線板側に近づくほど小径となる円錐台状に形成され、前記プリント配線板側に向けられる円形の端面の中央には、前記プリント配線板側から離れるほど小径となる円錐台状の前記接合部側凹部が形成されている
接点構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接点部材、及び接点構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルばね状の接触子をプリント配線板上に形成された導体部分に圧接させて、両者間を電気的に接続する接点構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の図4図10に開示された接点構造においては、対向配置された一対のプリント配線板間にコイルばね状接触子が介装され、各プリント配線板上の導体部分がコイルばね状の接触子を介して電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−170617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなコイルばね状接触子は、弾性変形して軸方向に伸縮する他、軸が湾曲する方向にも弾性変形し得る状態にある。このようなコイルばね状接触子を強い振動が伝わる機器において採用した場合、プリント配線板が揺れるのに伴ってコイルばね状接触子が湾曲するようなことがあると、その湾曲変形に伴ってプリント配線板上における接触位置にずれが生じることがある。
【0005】
そのため、例えば、プリント配線板上における接触位置となる導体部分が小さめである場合には、コイルばね状接触子のずれが原因で瞬断(瞬間的な接触不良)が発生しやすくなるなどの問題があった。また、コイルばね状接触子が振動してプリント配線板上の導体部分が擦られる状態が続くと、ごく薄い銅箔などで形成された導体部分が摩耗したり剥がれたりするおそれがあり、これも接触不良を招く要因であった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、コイルばね状接触子のような圧接型の接触子を採用した接点構造において、被圧接箇所に対する位置ずれや被圧接箇所の損傷を抑制するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の接点部材は、表裏の関係にある両側のうち、一方側にはプリント配線板が有する導体部分にはんだ接合される接合部を有し、他方側には軸方向へ圧縮されて弾性変形する接触子の先端が圧接する接触部を有し、前記接合部を前記導体部分にはんだ接合して前記接触部に前記接触子の先端を圧接させることにより、前記導体部分と前記接触子を電気的に接続可能に構成されており、前記接触部には、当該接触部側及び前記接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込むことにより、前記接触部に圧接させた状態にある前記接触子の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部が形成されている。
【0008】
このような接点部材によれば、接合部をプリント配線板が有する導体部分にはんだ接合することによって接点部材をプリント配線板上に実装することができる。また、そのような実装状態において接触子の先端を接触部に圧接させれば、接点部材を介してプリント配線板上の導体部分と接触子を電気的に接続することができる。
【0009】
しかも、接触部には位置ずれ抑制部が形成されているので、接触部側及び接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込む。そのため、この位置ずれ抑制部により、接触部に圧接させた状態にある接触子の先端が所定の接触位置からずれることは抑制される。また、接触子やプリント配線板に振動が伝わった際、仮に接触子の先端が所定の接触位置から僅かにずれたとしても、接触子は圧縮応力が最も緩和される方向へ自ら戻ろうとする。したがって、プリント配線板上の導体部分が小さめであっても、そこに上記接点部材を実装しておけば、接点部材と接触子との接触を良好に維持することができる。
【0010】
また、このような接点部材であれば、薄膜状に形成されるプリント配線板上の導体部分に比べれば、容易に機械的強度が高い構造にできる。そのため、接触子が振動して接点部材が擦られる状態が続いたとしても、プリント配線板上の導体部分のように摩耗したり剥がれたりすることはなく、むしろ、接触子に擦られることで接点部材表面の酸化被膜が削られれば、接触子と接点部材との間の電気抵抗は低下する。したがって、接点部材と接触子との電気的な接触を良好に維持することができる。
【0011】
ところで、本発明の接点部材において、位置ずれ抑制部の具体的形状は、接触子の先端形状に応じて、位置ずれを抑制する上で最適な形状となっていれば、どのような形状であってもかまわないが、より具体的な一例を挙げれば、例えば、前記位置ずれ抑制部は、前記接触子側に向かって突出し、その先端部分が前記接触子の先端にある開口部分の内側に嵌まり込む接触部側凸部、又は、前記接触子側から離れる方向へ凹んでおり、その内側に前記接触子の先端部分が嵌まり込む接触部側凹部、いずれかであることが好ましい。
【0012】
このような接触部側凸部又は接触部側凹部を位置ずれ抑制部として備えていれば、接触部側及び接触子側のうち、いずれか一方側の先端にある凸部が他方側にある凹部に嵌まり込むので、所期の位置ずれ抑制作用を発現させることができる。
【0013】
また、本発明の接点部材において、前記接触部側凸部又は前記接触部側凹部は、円錐又は円錐台の側面に相当する形状とされたテーパー面を有し、当該テーパー面において、前記接触子が有するコイルばね状の先端部分に接触することが好ましい。
【0014】
このようなテーパー面を有する構造を採用すれば、接触子の先端をテーパー面に向かって強く押し付ける力が作用した際、コイルばね状の先端部分が拡径又は縮径しつつテーパー面との接触を維持することができる。また、そのような力が作用しなくなれば、拡径したコイルばね状の先端部分が縮径しつつテーパー面との接触を維持することができ、あるいは縮径したコイルばね状の先端部分が拡径しつつテーパー面との接触を維持することができる。したがって、接触子の先端部分がコイルばね状に形成されている場合には、本構成を採用することで、接触子と接点部材との接触を極めて良好に維持できるようになる。
【0015】
また、本発明の接点部材において、前記接合部には、前記プリント配線板側から離れる方向へ凹む接合部側凹部が形成されていることが好ましい。
このような接合部側凹部を備えていれば、接合部をプリント配線板上の導体部分にはんだ接合する際に、熔融したはんだが接合部側凹部においてもフィレットを形成する。したがって、接合部の外周側においてのみはんだフィレットが形成される場合に比べ、接点部材のプリント配線板に対する接合強度を向上させることができる。
【0016】
あるいは、熔融したはんだが接合部側凹部においてフィレットを形成することで、接点部材のプリント配線板に対する接合強度を十分に確保することができるので、接合部の外周側に配されるはんだの量を減らすこともできる。この場合、熔融したはんだが接合部の外周側へ流出するのを抑制することができるので、接点部材の近傍に配置される他部品との配設間隔を狭めることが可能となり、プリント配線板上における電子部品の実装密度を高めることができる。
【0017】
また、接合部とプリント配線板との間に挟まれたはんだペーストが多めの場合でも、余剰分のはんだを接合部側凹部の方へ逃がすことができるので、余剰はんだによって接点部材が浮き上がるのを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の接点部材において、前記接合部は、前記プリント配線板側に近づくほど小径となる円錐台状に形成され、前記プリント配線板側に向けられる円形の端面の中央には、前記プリント配線板側から離れるほど小径となる円錐台状の前記接合部側凹部が形成されていることが好ましい。
【0019】
このような接点部材によれば、接合部の外周側の円錐面及び接合部側凹部の内周側の円錐面は、双方ともプリント配線板の表面に対して鋭角をなす傾きを持つ。したがって、この鋭角をなす部分にある空隙にはんだフィレットが形成されやすくなり、接点部材のプリント配線板に対する接合強度を向上させることができる。
【0020】
さらに、本発明の接点構造は、本発明の接点部材と上述のような接触子とで構成されるものである。すなわち、本発明の接点構造は、プリント配線板が有する導体部分にはんだ接合される接点部材と、軸方向へ圧縮されて弾性変形し、その先端が前記接点部材に圧接する接触子とを備え、前記接点部材は、表裏の関係にある両側のうち、一方側には前記導体部分にはんだ接合される接合部を有し、他方側には前記接触子の先端が圧接する接触部を有し、前記接触部には、当該接触部側及び前記接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込むことにより、前記接触部に圧接させた状態にある前記接触子の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部が形成されている。
【0021】
このような接点構造によれば、本発明の接点部材に相当する構成を備えているので、接点部材をプリント配線板上に実装して、接点部材を介してプリント配線板上の導体部分と接触子を電気的に接続することができ、位置ずれ抑制部により、接点部材と接触子との接触を良好に維持することができる。なお、本発明の接点構造が備える接点部材においても、本発明の接点部材が備えると好ましい構成を採用可能なことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第一実施形態の接点部材を示し、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその底面図、(d)はA−A線断面図、(e)はその斜視図。
図2】第一実施形態の接点部材を利用して構成された接点構造を示し、(a)はその正面図、(b)はB部を拡大して示す縦断面図。
図3】第二実施形態の接点部材を示し、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はその底面図、(d)はC−C線断面図、(e)はその斜視図。
図4】第二実施形態の接点部材を利用して構成された接点構造を示し、(a)はその正面図、(b)はD部を拡大して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態について、より具体的な例を挙げて説明する。
[第一実施形態]
図1(a)〜図1(e)に示す接点部材1は、黄銅製のプレス成形品に対してNiめっき及びAuめっきを施したものである。なお、図1(b)は、接点部材1の正面図であるが、背面図、左側面図、及び右側面図は、正面図と同一に表れる。
【0024】
この接点部材1は、上下両面のうち、下面側に接合部2、上面側に接触部3が形成されている。接合部2は、外周側が下方ほど小径となる円錐台状に形成され、下方から見て円形となる下端面の中央には、上方ほど小径となる円錐台状の接合部側凹部11が形成されている。接触部3は、上方ほど小径となる円錐台状の接触部側凸部12を有する。
【0025】
以上のような接点部材1は、図2(a)及び図2(b)に示すように、接合部2をプリント配線板21が有する導体部分22にはんだ接合することによって、プリント配線板21上に実装される。接点部材1を自動実装機が有する吸引ノズルで吸着する際、接触部側凸部12は自動実装機が有する吸引ノズルの内周に嵌まり込むので、これにより、接点部材1と吸引ノズルの軸中心を精度良く一致させることができる。
【0026】
また、接合部2をプリント配線板21上の導体部分22にはんだ接合する際、熔融したはんだは、接合部2の外周側及び接合部側凹部11の内周側においてフィレット23を形成する。したがって、接合部2の外周側においてのみはんだフィレットが形成される場合に比べ、接点部材1のプリント配線板21に対する接合強度を向上させることができる。
【0027】
また、接合部側凹部11の内周側でフィレット23が形成されることで、接点部材1のプリント配線板21に対する接合強度を十分に確保できるので、接合部2の外周側に配されるはんだの量を意図的に減らしておくこともできる。この場合、熔融したはんだが接合部2の外周側へ流出するのを抑制できるので、接点部材1の近傍に配置される他部品との配設間隔を狭めることが可能となり、プリント配線板21上における電子部品の実装密度を高めることができる。
【0028】
さらに、接合部2とプリント配線板21との間に挟まれたはんだペーストが多めであっても、余剰分のはんだを接合部側凹部11側へ逃がすことができるので、余剰はんだによって接点部材1が浮き上がるのを抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態においては、接合部2の外周側の円錐面及び接合部側凹部11の内周側の円錐面は、双方ともプリント配線板21の表面に対して鋭角をなす傾きを持っている。そのため、この鋭角をなす部分にある空隙には、フィレット23が形成されやすく、これも接点部材1のプリント配線板21に対する接合強度を向上させる効果がある。
【0030】
さて、以上のようにして接点部材1がプリント配線板21上に実装されたら、更にコイルばね状の接触子25の先端を接触部3に圧接させることにより、接点部材1を介してプリント配線板21上の導体部分22と接触子25を電気的に接続することができる。
【0031】
接触子25の先端は、概ね円環状となっていて、その内径は接触部側凸部12の最小径部分の径よりも大きい径、かつ、接触部側凸部12の最大径部分の径よりも小さい径とされている。そのため、接触部側凸部12の上端は、接触子25の内周側に嵌まり込み、接触子25の先端は、円錐台状の接触部側凸部12が有するテーパー面13に圧接する。
【0032】
したがって、接触子25の先端が平坦な面(例えば、プリント配線板21の導体部分22の表面)に接触している場合に比べると、プリント配線板21や接触子25に振動が伝わった際に、接触子25の先端が前後左右に位置ずれすることは抑制される。
【0033】
また、仮に接触子25の先端が所定の接触位置から僅かにずれたとしても、その際には、接触子25の先端の一部がテーパー面13の上端方向に向かってずれることになるため、接触子25は圧縮応力が最も緩和される方向へ自ら戻ろうとし、上端方向に向かってずれた箇所はテーパー面13の下端方向へと復帰する。すなわち、圧縮された状態にある接触子25は、常に伸長しようとする状態にあり、その力は、接触子25を接触部側凸部12と同軸位置へ変位させる力として作用する。
【0034】
さらに、接触子25の先端をテーパー面13に向かって強く押し付ける力が作用した際、コイルばね状の先端部分が拡径したとしても、テーパー面13との接触を維持することができる。また、そのような力が作用しなくなれば、拡径したコイルばね状の先端部分は縮径しつつテーパー面13との接触を維持することができる。
【0035】
すなわち、接点部材1において、接触部側凸部12は、接触子25の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部として機能するので、導体部分22に対して接触子25を直に接触させる場合に比べ、接点部材1と接触子25との接触を良好に維持することができる。
【0036】
また、このような接点部材1であれば、薄膜状に形成されるプリント配線板21上の導体部分22に比べれば、容易に機械的強度が高い構造にできる。そのため、接触子25が振動して接点部材1が擦られる状態が続いたとしても、プリント配線板21上の導体部分22のように摩耗したり剥がれたりすることはない。むしろ、接触子25に擦られることで接点部材1表面の酸化被膜が削られれば、接触子25と接点部材1との間の電気抵抗は低下する。したがって、接点部材1と接触子25との電気的な接触を良好に維持することができる。
【0037】
[第二実施形態]
図3(a)〜図3(e)に示す接点部材31は、黄銅製のプレス成形品に対してNiめっき及びAuめっきを施したものである。なお、図3(b)は、接点部材31の正面図であるが、背面図、左側面図、及び右側面図は、正面図と同一に表れる。
【0038】
この接点部材31は、本発明の第一実施形態として例示した接点部材1と比較すると、接触部側凸部12に代えて、接触部側凹部32を備えている点で相違する。その他の点は、接点部材1と同様の構成である。接触部側凹部32は、下方ほど小径となる円錐台状に形成され、その内周面がテーパー面33とされている。
【0039】
以上のような接点部材31も、接点部材1と全く同様に、プリント配線板21が有する導体部分22にはんだ接合することができ、その作用、効果も接点部材1と全く同様である。また、コイルばね状の接触子25の先端を接触部3に圧接させると、その先端がテーパー面33に接触し、これにより、接点部材31を介してプリント配線板21上の導体部分22と接触子25を電気的に接続することができる。
【0040】
接触子25の先端の外径は、接触部側凹部32の最小径部分の径よりも大きい径、かつ、接触部側凹部32の最大径部分の径よりも小さい径とされている。そのため、接触子25の先端は、接触部側凹部32の内周側に嵌まり込み、接触子25の先端は、テーパー面33に圧接する。
【0041】
このような接触部側凹部32と接触子25との組み合わせであっても、接触子25の先端が平坦な面(例えば、プリント配線板21の導体部分22の表面)に接触している場合に比べると、プリント配線板21や接触子25に振動が伝わった際に、接触子25の先端が前後左右に位置ずれすることは抑制される。
【0042】
また、仮に接触子25の先端が所定の接触位置から僅かにずれたとしても、その際には、接触子25の先端の一部がテーパー面33の上端方向に向かってずれることになるため、接触子25は圧縮応力が最も緩和される方向へ自ら戻ろうとし、上端方向に向かってずれた箇所はテーパー面33の下端方向へと復帰する。
【0043】
さらに、接触子25の先端をテーパー面33に向かって強く押し付ける力が作用した際、コイルばね状の先端部分が縮径したとしても、テーパー面33との接触を維持することができる。また、そのような力が作用しなくなれば、縮径したコイルばね状の先端部分は拡径しつつテーパー面33との接触を維持することができる。
【0044】
すなわち、接点部材31において、接触部側凹部32は、接触子25の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部として機能するので、導体部分22に対して接触子25を直に接触させる場合に比べ、接点部材1と接触子25との接触を良好に維持することができる。
【0045】
また、このような接点部材31であれば、薄膜状に形成されるプリント配線板21上の導体部分22に比べれば、容易に機械的強度が高い構造にできる。そのため、接触子25が振動して接点部材31が擦られる状態が続いたとしても、プリント配線板21上の導体部分22のように摩耗したり剥がれたりすることはなく、また、接触子25に擦られることで接点部材31表面の酸化被膜が削られれば、接触子25と接点部材31との間の電気抵抗は低下する。したがって、この点からも、接点部材31と接触子25との電気的な接触を良好に維持することができる。
【0046】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0047】
例えば、上記各実施形態では、コイルばね状の先端部を有する接触子25を例示したが、接触子の具体的構造はコイルばね状のものに限定されない。一例を挙げれば、コイルばね状の軸部の先端に円筒状の部材を取り付けたものを接触子として用いても、上述の接触子25と同様の接点構造を構成することができる。
【0048】
また、上記各実施形態では、接合部2に接合部側凹部11を形成したものを例示したが、接合部側凹部11を設けるか否かは任意である。
【符号の説明】
【0049】
1…接点部材、2…接合部、3…接触部、11…接合部側凹部、12…接触部側凸部、13…テーパー面、21…プリント配線板、22…導体部分、23…フィレット、25…接触子、31…接点部材、32…接触部側凹部、33…テーパー面。
図1
図2
図3
図4