【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなコイルばね状接触子は、弾性変形して軸方向に伸縮する他、軸が湾曲する方向にも弾性変形し得る状態にある。このようなコイルばね状接触子を強い振動が伝わる機器において採用した場合、プリント配線板が揺れるのに伴ってコイルばね状接触子が湾曲するようなことがあると、その湾曲変形に伴ってプリント配線板上における接触位置にずれが生じることがある。
【0005】
そのため、例えば、プリント配線板上における接触位置となる導体部分が小さめである場合には、コイルばね状接触子のずれが原因で瞬断(瞬間的な接触不良)が発生しやすくなるなどの問題があった。また、コイルばね状接触子が振動してプリント配線板上の導体部分が擦られる状態が続くと、ごく薄い銅箔などで形成された導体部分が摩耗したり剥がれたりするおそれがあり、これも接触不良を招く要因であった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、コイルばね状接触子のような圧接型の接触子を採用した接点構造において、被圧接箇所に対する位置ずれや被圧接箇所の損傷を抑制するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
本発明の接点部材は、表裏の関係にある両側のうち、一方側にはプリント配線板が有する導体部分にはんだ接合される接合部を有し、他方側には軸方向へ圧縮されて弾性変形する接触子の先端が圧接する接触部を有し、前記接合部を前記導体部分にはんだ接合して前記接触部に前記接触子の先端を圧接させることにより、前記導体部分と前記接触子を電気的に接続可能に構成されており、前記接触部には、当該接触部側及び前記接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込むことにより、前記接触部に圧接させた状態にある前記接触子の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部が形成されている。
【0008】
このような接点部材によれば、接合部をプリント配線板が有する導体部分にはんだ接合することによって接点部材をプリント配線板上に実装することができる。また、そのような実装状態において接触子の先端を接触部に圧接させれば、接点部材を介してプリント配線板上の導体部分と接触子を電気的に接続することができる。
【0009】
しかも、接触部には位置ずれ抑制部が形成されているので、接触部側及び接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込む。そのため、この位置ずれ抑制部により、接触部に圧接させた状態にある接触子の先端が所定の接触位置からずれることは抑制される。また、接触子やプリント配線板に振動が伝わった際、仮に接触子の先端が所定の接触位置から僅かにずれたとしても、接触子は圧縮応力が最も緩和される方向へ自ら戻ろうとする。したがって、プリント配線板上の導体部分が小さめであっても、そこに上記接点部材を実装しておけば、接点部材と接触子との接触を良好に維持することができる。
【0010】
また、このような接点部材であれば、薄膜状に形成されるプリント配線板上の導体部分に比べれば、容易に機械的強度が高い構造にできる。そのため、接触子が振動して接点部材が擦られる状態が続いたとしても、プリント配線板上の導体部分のように摩耗したり剥がれたりすることはなく、むしろ、接触子に擦られることで接点部材表面の酸化被膜が削られれば、接触子と接点部材との間の電気抵抗は低下する。したがって、接点部材と接触子との電気的な接触を良好に維持することができる。
【0011】
ところで、本発明の接点部材において、位置ずれ抑制部の具体的形状は、接触子の先端形状に応じて、位置ずれを抑制する上で最適な形状となっていれば、どのような形状であってもかまわないが、より具体的な一例を挙げれば、例えば、前記位置ずれ抑制部は、前記接触子側に向かって突出し、その先端部分が前記接触子の先端にある開口部分の内側に嵌まり込む接触部側凸部、又は、前記接触子側から離れる方向へ凹んでおり、その内側に前記接触子の先端部分が嵌まり込む接触部側凹部、いずれかであることが好ましい。
【0012】
このような接触部側凸部又は接触部側凹部を位置ずれ抑制部として備えていれば、接触部側及び接触子側のうち、いずれか一方側の先端にある凸部が他方側にある凹部に嵌まり込むので、所期の位置ずれ抑制作用を発現させることができる。
【0013】
また、本発明の接点部材において、前記接触部側凸部又は前記接触部側凹部は、円錐又は円錐台の側面に相当する形状とされたテーパー面を有し、当該テーパー面において、前記接触子が有するコイルばね状の先端部分に接触することが好ましい。
【0014】
このようなテーパー面を有する構造を採用すれば、接触子の先端をテーパー面に向かって強く押し付ける力が作用した際、コイルばね状の先端部分が拡径又は縮径しつつテーパー面との接触を維持することができる。また、そのような力が作用しなくなれば、拡径したコイルばね状の先端部分が縮径しつつテーパー面との接触を維持することができ、あるいは縮径したコイルばね状の先端部分が拡径しつつテーパー面との接触を維持することができる。したがって、接触子の先端部分がコイルばね状に形成されている場合には、本構成を採用することで、接触子と接点部材との接触を極めて良好に維持できるようになる。
【0015】
また、本発明の接点部材において、前記接合部には、前記プリント配線板側から離れる方向へ凹む接合部側凹部が形成されていることが好ましい。
このような接合部側凹部を備えていれば、接合部をプリント配線板上の導体部分にはんだ接合する際に、熔融したはんだが接合部側凹部においてもフィレットを形成する。したがって、接合部の外周側においてのみはんだフィレットが形成される場合に比べ、接点部材のプリント配線板に対する接合強度を向上させることができる。
【0016】
あるいは、熔融したはんだが接合部側凹部においてフィレットを形成することで、接点部材のプリント配線板に対する接合強度を十分に確保することができるので、接合部の外周側に配されるはんだの量を減らすこともできる。この場合、熔融したはんだが接合部の外周側へ流出するのを抑制することができるので、接点部材の近傍に配置される他部品との配設間隔を狭めることが可能となり、プリント配線板上における電子部品の実装密度を高めることができる。
【0017】
また、接合部とプリント配線板との間に挟まれたはんだペーストが多めの場合でも、余剰分のはんだを接合部側凹部の方へ逃がすことができるので、余剰はんだによって接点部材が浮き上がるのを抑制することができる。
【0018】
また、本発明の接点部材において、前記接合部は、前記プリント配線板側に近づくほど小径となる円錐台状に形成され、前記プリント配線板側に向けられる円形の端面の中央には、前記プリント配線板側から離れるほど小径となる円錐台状の前記接合部側凹部が形成されていることが好ましい。
【0019】
このような接点部材によれば、接合部の外周側の円錐面及び接合部側凹部の内周側の円錐面は、双方ともプリント配線板の表面に対して鋭角をなす傾きを持つ。したがって、この鋭角をなす部分にある空隙にはんだフィレットが形成されやすくなり、接点部材のプリント配線板に対する接合強度を向上させることができる。
【0020】
さらに、本発明の接点構造は、本発明の接点部材と上述のような接触子とで構成されるものである。すなわち、本発明の接点構造は、プリント配線板が有する導体部分にはんだ接合される接点部材と、軸方向へ圧縮されて弾性変形し、その先端が前記接点部材に圧接する接触子とを備え、前記接点部材は、表裏の関係にある両側のうち、一方側には前記導体部分にはんだ接合される接合部を有し、他方側には前記接触子の先端が圧接する接触部を有し、前記接触部には、当該接触部側及び前記接触子側のうち、いずれか一方側の先端部分が他方側に嵌まり込むことにより、前記接触部に圧接させた状態にある前記接触子の先端が所定の接触位置からずれるのを抑制する位置ずれ抑制部が形成されている。
【0021】
このような接点構造によれば、本発明の接点部材に相当する構成を備えているので、接点部材をプリント配線板上に実装して、接点部材を介してプリント配線板上の導体部分と接触子を電気的に接続することができ、位置ずれ抑制部により、接点部材と接触子との接触を良好に維持することができる。なお、本発明の接点構造が備える接点部材においても、本発明の接点部材が備えると好ましい構成を採用可能なことはもちろんである。