特許第6202388号(P6202388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202388
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】計器用指針
(51)【国際特許分類】
   G01D 11/28 20060101AFI20170914BHJP
   G01D 13/22 20060101ALI20170914BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01D11/28 P
   G01D13/22 101
   B60K35/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-220706(P2013-220706)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-81873(P2015-81873A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平岩 光
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−079434(JP,U)
【文献】 特開2003−130692(JP,A)
【文献】 特開平08−110244(JP,A)
【文献】 特開2007−309836(JP,A)
【文献】 米国特許第04274358(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/28
B60K 35/00
G01D 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計器用表示板に形成された計測値表示部を指示する指針本体を備え、
前記指針本体が、光源からの照明光を受光する受光部を有する基部と、前記基部から前記計測値表示部側に向けて延びる指示部とを備え、
前記基部を覆う非透光性の指針キャップには、前記指示部の上部表面を露出させるためのスリットが設けられ、
前記指示部の上部表面には膜状に形成された金属層と、
前記金属層の表面に積層され複数個の溝部を有する透光性の光学部材と、が形成されており、
前記基部には、前記受光部を通じて前記基部内に導入された前記照明光を表面側から前記溝部および前記金属層に向けて出射する出射部が前記スリットを臨むように設けられていることを特徴とする計器用指針。
【請求項2】
前記光学部材は、その表面側において、前記指示部の長手方向に沿うようにV字状からなる複数個の溝部が連続形成されていることを特徴とする請求項1記載の計器用指針。
【請求項3】
前記指示部は、前記基部から遠ざかるに従って、視認者側に湾曲していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の計器用指針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種車両に備えられる車両用計器に搭載された計器用指針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の計器用指針にあっては、例えば下記特許文献1に記載されているものが知られている。この特許文献1に記載の計器用指針は、線状に延びる透光性の指示部の背面に、ハーフミラー層と、拡散層と、蛍光層とが順次積層形成された構成となっており、指示部は、青色光を発する光源からの光を導光部を通じて背後から入射可能な構成となっている
【0003】
ハーフミラー層は、例えば光の透過率が略30〜35%となるように印刷で形成されたアルミニウム等の金属材料を指示部の背面に薄膜状に形成したものである。また、拡散層は、例えば乳白色の透過性インクなどを塗布したものであり、導光部から出射され、蛍光層を透過した青色光が入射して拡散される。また、蛍光層は、導光部から出射された青色光により励起され、蛍光を発光する蛍光体から構成され、例えばYAG:Ce系蛍光体等の青色光によって励起されて蛍光を発光する蛍光体を拡散層の背面に層状に積層形成したものであり、導光部から出射された青色光により励起されて、黄色の蛍光を発光する。
【0004】
そして、光源の発光時において、蛍光層で発光された光の一部及び蛍光層で発光に寄与しなかった青色光は、拡散層、及びハーフミラー層を透過して指示部に入射する。このため、拡散層は、青色光及び黄色系の光を拡散する。これによって、青色光及び黄色系の光とが混合されて、白色光として指示部側に出射される。従って、拡散層で混合された白色光は、ハーフミラー層を透過して、指示部に供給されることで、線状に延びる指示部の上部表面は単色光である白色光にて発光する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−278736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の計器用指針の場合、指示部の背面に、ハーフミラー層と、拡散層と、蛍光層とが順次積層形成された構成となっており、蛍光層側から光が入射し、この入射した光が拡散層及びハーフミラー層を介して指示部側に至ることで、視認者側から見たときに線状に延びる指示部の上部表面が発光表示されるものであるが、上述したように光源の発光時において、指示部の上部表面は単色光として発光表示されるため、金属質感を失ってしまうという問題点を有している。
そこで本発明は、前述の課題に対して対処するため、指示部の上部表面に金属質感を持たせることが可能な計器用指針の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、計器用表示板に形成された計測値表示部を指示する指針本体を備え、
前記指針本体が、光源からの照明光を受光する受光部を有する基部と、前記基部から前記計測値表示部側に向けて延びる指示部とを備え、
前記基部を覆う非透光性の指針キャップには、前記指示部の上部表面を露出させるためのスリットが設けられ、
前記指示部の上部表面には膜状に形成された金属層と、
前記金属層の表面に積層され複数個の溝部を有する透光性の光学部材と、が形成されており、
前記基部には、前記受光部を通じて前記基部内に導入された前記照明光を表面側から前記溝部および前記金属層に向けて出射する出射部が前記スリットを臨むように設けられていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記光学部材は、その表面側において、前記指示部の長手方向に沿うようにV字状からなる複数個の溝部が連続形成されていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記指示部は、前記基部から遠ざかるに従って、視認者側に湾曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、初期の目的を達成でき、指示部の上部表面に金属質感を持たせることが可能な計器用指針を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による車両用計器の正面図。
図2図1のA−A断面図。
図3】同実施形態による計器用指針の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図2は、本発明の計器用指針を搭載した車両用計器(例えば指針式速度計)の一実施形態を示すものであり、車両用計器は、回路基板10と、この回路基板10に導通装着され回転軸20が前方に延びる駆動装置30と、回転軸20にて回転駆動される指針(計器用指針)40と、この指針40によって指示される後述する計測値表示部を有する表示板(計器用表示板)50と、指針40を照明する光源60と、表示板50を照明する指標用光源70と、回路基板10と表示板50との間に配置されるケース体80とから構成される。
【0013】
回路基板10は、例えばガラスエポキシ系基材に配線パターン(図示せず)を施した硬質回路基板からなり、光源60と、指標用光源70と、駆動装置30の駆動・制御を行う駆動手段(図示せず)や抵抗、コンデンサ等の各種回路部品(図示せず)が前記配線パターンに導通接続されている。
【0014】
駆動装置30は、可動磁石式計器またはステッピングモータからなり、回転軸20が回路基板10を貫通するように、その主要部が回路基板10の背後に装着され、且つ半田付け等の適宜導通手段により前記配線パターン(前記駆動手段)に電気接続される。
【0015】
指針40は、図3に示すように指針本体41と、非透光性の指針キャップ42と、台座部材43と、金属層44と、光学部材45とを備えている。
【0016】
指針本体41は、透光性の合成樹脂材料にて形成され、表示板50に形成された後述する計測値表示部を指示する指示部材からなり、光源60からの照明光を受光する受光部41aを有する基部41bと、この基部41bから前記計測値表示部側に向けて延びる指針部としての指示部41cとを備えている。
【0017】
この場合、指示部41cと一体形成されている基部41bは、断面略三角形状にて形成され、この基部41bには、上述した受光部41aと、反射部41dと、出射部41eとが設けられている。反射部41dは、受光部41aを通じて基部41内に導入された照明光を出射部41e側に向けて反射導光する曲面形状からなる反射面を構成している。
【0018】
また、出射部41eは、受光部41aを通じて基部41b内に導入された照明光を光学部材45側(金属層44側)に向けて出射する立壁形状からなる出射面を構成している。より具体的には、出射部41eは、受光部41aを通じて基部41b内に導入されるとともに反射部41dによって反射導光された照明光を光学部材45側(金属層44側)に向けて出射させるための出射面を構成し、指針キャップ42に備えられる後述するスリットを臨むように配置されている。
【0019】
指示部41cは、出射部41eの下端側から外側(前記計測値表示部側)に向けて線状に延びるように構成され、その先端側は視認者側(図3中、上側)に湾曲している。つまり、このことは、指示部41cが、出射部41e(基部41b)から遠ざかるに従って、視認者側に湾曲していることを意味している。
【0020】
指針キャップ42は、遮光性を有する黒色系の合成樹脂材料によって形成され、基部41b背面側が露出するよう基部41bの前面側からその周囲にわたって覆うもので、下方側が開放した中空カップ状に形成されている。
【0021】
この基部41bを覆う指針キャップ42には、基部41bを覆いながら基部41bから延長形成された光学部材45(指示部41cの上部表面41f)を露出させるための露出部としてのスリット42aが設けられている。
【0022】
台座部材43は、遮光性を有する黒色系の合成樹脂材料によって形成され、台座部43aと、遮光枠43bとが一体形成された構成となっており、フック固定等の適宜固定手段を用いて指針キャップ42と固定されている。
【0023】
この台座部43aは、指針キャップ42の内径に対応した外形を有し、回転軸20に挿入固定されるボス部43cを備えている。また、基部41bの受光部41aに対応する台座部43a箇所には、受光部41aを露出させるための貫通孔形状からなる貫通孔部43dが開口形成されている。
【0024】
一方、遮光枠43bは、断面略凹部形状に形成され、指示部41cの上部表面41fを除いた指示部41cの底面と指示部41cの側面とを覆う遮光ケースからなり、指示部41cの上部表面41fに位置する光学部材45側(金属層44側)は、遮光枠43bによって遮られずに開放している。
【0025】
金属層44は、アルミニウム等の金属材料を指示部41cの上部表面41fに薄膜状に形成したものである。この場合、指示部41cが、基部41bから遠ざかるに従って視認者側に湾曲していることに起因して、上部表面41fに薄膜状に形成された金属層44も、指示部41cから遠ざかるに従って視認者側に湾曲していることになる。
【0026】
光学部材45は、透光性の合成樹脂材料にて形成され、金属層44の表面に積層配置されている。つまり、この場合、指示部41cの上部表面41fには、金属層44と、光学部材45とが順次積層形成された構成となっている。
【0027】
この場合、光学部材45は、その遮光枠43bによって遮られていない表面側において、指示部41cの長手方向に沿うようにV字状からなる複数個の溝部45aが連続形成されており、光学部材45(各溝部45a)に照明光が照射されることによって、指示部41cの先端側まで連続的に線状発光させることが可能となる。
【0028】
そして、この場合、指示部41cが、基部41bから遠ざかるに従って視認者側に湾曲していることに起因して、金属層44上に積層形成された光学部材45も、金属層44と同様に、指示部41cから遠ざかるに従って視認者側に湾曲していることになる。なお、金属層44及び光学部材45は、適宜固定手段を用いて指示部41cに固定されている。
【0029】
表示板50は、指針40の回転軌道(作動範囲)に沿った円弧状の配列形状を有し、指針40の指示対象となる目盛や数字等からなる計測値表示部51と、この計測値表示部51の背景を形成する背景部52とを有している。
【0030】
これら計測値表示部51並びに背景部52は、計測値表示部51が例えば白色系の透光性インクにより、また背景部52が黒色系の遮光性インクにより、それぞれ表示板50の母材となる薄板状の透光性基板53の表面にスクリーン印刷等の手段を用いて印刷形成される。なお、54は、回転軸20が貫通する略円形の孔部であり、この孔部54は、表示板50の略中央部に開口形成されている。
【0031】
光源60は、例えば白色光を発するチップ型発光ダイオードからなり、基部41bに対応する回路基板10上に複数個配置され、光学部材45(金属層44)に向けて照明光を導くための発光体である。
【0032】
指標用光源70は、例えば白色光を発するチップ型発光ダイオードからなり、ケース体80の後述する第1の反射壁部に対応する回路基板10の前方側に複数個配置され、計測値表示部51を発光させる発光体である。
【0033】
ケース体80は、例えば白色系の合成樹脂からなり、回路基板10と表示板50との間に位置して表示板50を保持する保持体としての機能、光源60並びに指標用光源70から発せられる照明光を前方側に反射する反射体としての機能等を有している。
【0034】
このケース体80は、表示板50の孔部54に対応し光源60からの照明光を指針40の受光部41aに導く空洞部81を有する筒状部82と、この筒状部82を取り巻くように表示板50側に傾斜して延び指標用光源70と対向する第1の反射壁部83と、指標用光源70を収納する開放部84と、この開放部84から外周に向けて表示板50に近接する皿形状の環状壁からなる第2の反射壁部85と、この第2の反射壁部85の外周を取り巻く周壁部86とを備えている。
【0035】
この場合、ケース体80の第1の反射壁部83は、指標用光源70からの光を主に外周に向けて放射状に反射する反射面を構成し、またケース体80の第2の反射壁部85は、第1の反射壁部83を通じて外周に反射された光を表示板50側に反射する反射面を構成している。
【0036】
このような構成において、光源60が発光すると、光源60から発せられる照明光は、指針照明室としてのケース体80の空洞部81、並びに表示板50の孔部54を通り、受光部41aを通じて基部41b内に導かれる。そして、受光部41aを通じて基部41b内に導かれた照明光は、反射部41dにて出射部41e側に反射導光され、出射部41eから出射光として出射される。
【0037】
かかる出射光は、出射部41eから指示部41cの上部表面41f側に向けてスポット的に照射(出射)される際に、遮光枠43bによって遮光枠43b外部への漏光が生じない状態で、光学部材45の直下に位置する金属層44を照らす。
【0038】
このとき、光学部材45を透過する出射光が金属層44を照らすことで、金属層44での光反射作用に伴って指示部41cの上部表面41fが金属質感を持つように視認者側から視認され、且つ、光学部材45が指示部41cの長手方向に沿い、連続した複数個の溝部45aを有していることで、指示部41cを、その先端側まで連続的に線状発光させることが可能となる。例えば、本実施形態のように、光源60の発光色が白色である場合には、線状に延びる指示部41cは、光源60から発せられる白色照明光によって、金属質感のある状態で白っぽく光る見栄えとなる。
【0039】
以上のように、本実施形態では表示板50に形成された計測値表示部51を指示する指針本体41を備え、指針本体41が、光源60からの照明光を受光する受光部41aを有する基部41bと、この基部41bから計測値表示部51側に向けて延びる指示部41cとを備え、基部41bを覆う非透光性の指針キャップ42には、指示部41cの上部表面41fを露出させるためのスリット42aが設けられ、指示部41cの上部表面41fには金属層44が形成されており、基部41bには、受光部41aを通じて基部41b内に導入された照明光を金属層44に向けて出射する出射部41eがスリット42aを臨むように設けられているものである。また、金属層44の表面には、光学部材45が積層配置されており、光学部材45は、その表面側において、指示部41cの長手方向に沿うようにV字状からなる複数個の溝部45aが連続形成されているものである。
【0040】
従って、光学部材45を透過する出射光が金属層44を照らすことで、金属層44での光反射作用に伴って指示部41cの上部表面41fが金属質感を持つように視認者側から視認され、且つ、光学部材45が指示部41cの長手方向に沿い、連続した複数個の溝部45aを有していることで、指示部41cを、その先端側まで連続的に線状発光させることが可能となることから、指示部41cの上部表面41fに金属質感を持たせることが可能な指針(計器用指針)40を提供することができる。
【0041】
また本実施形態では、指示部41cが、基部41bから遠ざかるに従って、視認者側に湾曲していることにより、指示部41c(光学部材45)の先端側が出射部41eと向かい合うような位置関係となるため、線状に延びる指示部41c(光学部材45)の先端側を効率よく照明することが可能となる。
【0042】
また本実施形態では、指示部41cの上部表面41fに、金属層44と光学部材45とが順次積層形成されている例について説明したが、例えば光学部材45を廃止し、出射部41eから照射(出射)される出射光を金属層44に照らす構成であっても、金属層44での光反射作用に伴って指示部41cの上部表面41fが金属質感を持つように視認者側から視認されることから、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、出射部41eの形状は、フラットな立壁形状(立壁面)となっているが、これに限らず溝部45aへの光の集光効率を高めるべく、溝部45a側が凸レンズ形状となるような曲面形状としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
40 指針(計器用指針)
41 指針本体
41a 受光部
41b 基部
41c 指示部
41d 反射部
41e 出射部
41f 上部表面
42 指針キャップ
42a スリット
43 台座部材
43a 台座部
43b 遮光枠
43c ボス部
43d 貫通孔部
44 金属層
45 光学部材
45a 溝部
50 表示板(計器用表示板)
51 計測値表示部
60 光源
図1
図2
図3