(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウム二次電池であって、前記合材層のいずれかが、請求項2または3記載の電池用組成物を集電体上に塗布することにより形成されたものであることを特徴とするリチウム二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の電池用組成物は、リチウム二次電池、アルカリ二次電池、ニッケルカドミウム二次電池、アルカリマンガン電池、鉛電池、燃料電池、キャパシタなどに用いることができるが、特にリチウム二次電池に用いると好適である。
【0024】
まず、本発明の電池用分散剤、電池用組成物に含まれる材料について説明する。
【0025】
<電池用分散剤>
本発明の電池用分散剤は、下記一般式(1)で示される。
【0026】
【化2】
[一般式(1)中、X
1は−NH−または−O−を表し、Yは−X
2−Zまたは−(C
mH
2mO)
nHで表される基を表す。X
2は置換基を有してもよいアルキレン基または置換基を有してもよいシクロアルキレン基を表し、Zは−OHまたは−SHを表す。mは1〜4の整数、nは1〜10の整数を表す。
Q
1およびQ
2はそれぞれ独立に、−O−R
1、−S−R
2、−NH−R
3、ハロゲン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、−X
3−R
4または−X
1−Yを表す。
R
1、R
2およびR
3はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいシクロアルキル基を表す。X
3は−NH−、−O−、−S−、−NHCO−、−NHSO
2−、−NHCH
2CONHCH
2−または−X
4−V−X
5−を表す。X
4は−NH−または−O−を表し、X
5は−CONH−、−NHCO−または−NHSO
2−を表す。また、Vは炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表す。R
4は有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。]
【0027】
一般式(1)中、Q
1およびQ
2は同一でも異なっても良く、その具体例としては、−O−R
1、−S−R
2、−NH−R
3、ハロゲン基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、−X
3−R
4または−X
1−Yが挙げられ、R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいシクロアルキル基が挙げられる。上記Q
1およびQ
2が置換基を有する場合、置換基は、同一でも異なっても良く、その具体例としては、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン基、アミノ基、水酸基、ニトロ基等の特性基の他、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、複数あっても良い。
【0028】
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、ステアリル基、2−エチルへキシル基等の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられ、「置換基を有するアルキル基」としては、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、2−エトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、2−ニトロプロピル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、4−tert−プチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−ニトロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基等が挙げられる。
【0029】
置換基を有してもよいアリール基の「アリール基」としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基等が挙げられ、「置換基を有するアリール基」としては、p−メチルフェニル基、p−ブロモフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−メトキシフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−アミノフェニル基、2−メチル−4−クロロフェニル基、4−ヒドロキシ−1−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、4,5,8−トリクロロ−2−ナフチル基、アントラキノニル基、2−アミノアントラキノニル基等が挙げられる。
【0030】
置換基を有してもよいシクロアルキル基の「シクロアルキル基」としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基、アダマンチル基等が挙げられ、「置換基を有するシクロアルキル基」としては、2,5−ジメチルシクロペンチル基、4−tert−プチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0031】
次に、X
3の具体例としては、−NH−、−O−、−S−、−NHCO−、−NHSO
2−、−NHCH
2CONHCH
2−または−X
4−V−X
5−が挙げられ、X
4は−NH−または−O−、X
5は−CONH−、−NHCO−または−NHSO
2−が挙げられる。ただし、X
3が、−NHCO−、−NHSO
2−、−NHCH
2CONHCH
2−または−X
4−V−X
5−で表される場合、左側が一般式(1)におけるトリアジン環、右側がR
4との結合位置を表す。同様に、X
5が、−CONH−、−NHCO−または−NHSO
2−で表される場合、左側が−X
4−V−X
5−で表される基のVと、右側がR
4との結合位置を表す。
【0032】
また、Vとしては炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基または置換基を有してもよいアリーレン基が挙げられ、置換基を有してもよいアルキレン基または置換基を有してもよいアリーレン基の「置換基」としては、Q
1およびQ
2の置換基と同義である。
【0033】
Vにおける置換基を有してもよいアルキレン基の「アルキレン基」は一般式(1)のQ
1およびQ
2で説明したアルキル基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができる。また、同様に置換基を有してもよいアリーレン基の「アリーレン基」は一般式(1)のQ
1およびQ
2で説明したアリール基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができる。
【0034】
次に、R
4の具体例は有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環基、置換基を有していてもよいアリール基が挙げられ、R
4で表される有機色素残基の「有機色素」としては、例えばジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、アントラキノン系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素が分散性に優れるため好ましい。さらに好ましくはアゾ系色素である。
【0035】
またR
4で表される置換基を有してもよい複素環基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族あるいは脂肪族の複素環が挙げられ、具体的には、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、ピロリル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾトリアゾリル基等が挙げられる。とりわけ、少なくとも窒素原子、酸素原子のいずれかを含む複素環基が分散性に優れるため好ましく、中でもベンゾイミダゾリル基がより好ましい。
【0036】
またR
4で表される置換基を有してもよいアリール基における「アリール基」、および「置換基」は、Q
1およびQ
2で説明したものと同義であり、とりわけ、分散性の観点から、R
4としては置換基を有するフェニル基が好ましく、中でも置換基を有しない無置換のフェニル基がより好ましい。
【0037】
一般式(1)中、Yの具体例は−X
2−Z、または−(C
mH
2mO)
nHで表される基が挙げられ、X
2は置換基を有してもよいアルキレン基または置換基を有してもよいシクロアルキレン基、Zは−OH、−SHが挙げられる。またmは1〜4の整数、nは1〜10の整数を表す。
【0038】
X
2における置換基を有してもよいアルキレン基の「アルキレン基」は一般式(1)のQ
1およびQ
2で説明したアルキル基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができ、X
2における置換基を有してもよいシクロアルキレン基の「シクロアルキレン基」は一般式(1)のQ
1およびQ
2で説明したシクロアルキル基と同一の置換基から1個の水素原子を除いてできる二価の基を挙げることができる。置換基を有する場合の「置換基」は上記Q
1およびQ
2のものと同義である。とりわけ、分散安定性の観点からX
2としては置換基を有してもよいアルキレン基が好ましく、中でも置換基を有しない直鎖アルキレン基がより好ましい。
【0039】
また、Yにおいて−(C
mH
2mO)
nHで表される構造の具体例としては、−(CH
2O〕
nH、−(CH
2CH
2O〕
nH、−(CH
2CH(CH
3)O〕
nH、−(CH
2CH
2CH
2O〕
nH等が挙げられる。これらの構造においてnは1〜10の整数を表すが、分散性の観点からnは1〜5が好ましい。
【0040】
上記R
4とYの組合せとしては、R
4がアゾ系色素、アントラキノン系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、少なくとも窒素原子、酸素原子のいずれかを含む複素環基または置換基を有するフェニル基であり、Yにおける−X
2−Zで表される基のX
2が置換基を有してもよいアルキレン基またはYにおける−(C
mH
2mO)
nHで表される基のnが1〜5であるものを組み合わせたものが好ましい。なかでも、R
4がアゾ系色素、ベンゾイミダゾリル基または置換基を有しない無置換のフェニル基であり、Yにおける−X
2−Zで表される基のX
2が置換基を有してもよいアルキレン基またはYにおける−(C
mH
2mO)
nHで表される基のnが1〜5であるものを組み合わせたものが特に好ましい。
【0041】
<導電助剤>
本発明における導電助剤としては、炭素材料が最も好ましい。炭素材料としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー、フラーレン等を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0042】
カーボンブラックとしては、気体もしくは液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0043】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0044】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m
2/g以上、1500m
2/g以下、好ましくは50m
2/g以上、1500m
2/g以下、さらに好ましくは100m
2/g以上、1500m
2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m
2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m
2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0045】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡などで測定された粒子径を平均したものである。
【0046】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
<溶剤>
本発明に使用する溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。
【0048】
これらの中でも、比誘電率が15以上の極性溶剤を使用することが好ましい。比誘電率は、溶剤の極性の強さを表す指標のひとつであり、浅原ほか編「溶剤ハンドブック」((株)講談社サイエンティフィク、1990年)等に記載されている。
【0049】
例えば、メチルアルコール(比誘電率:33.1)、エチルアルコール(23.8)、2−プロパノール(18.3)、1−ブタノール(17.1)、1,2−エタンジオール(38.66)、1,2−プロパンジオール(32.0)、1,3−プロパンジオール(35.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、ジエチレングリコール(31.69)、2−メトキシエタノール(16.93)、2−エトキシエタノール(29.6)、2−アミノエタノール(37.7)、アセトン(20.7)、メチルエチルケトン(18.51)、ホルムアミド(111.0)、N−メチルホルムアミド(182.4)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.71)、N−メチルアセトアミド(191.3)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78)、N−メチルプロピオンアミド(172.2)、N−メチルピロリドン(32.0)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(29.6)、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)、アセトニトリル(37.5)、プロピオニトリル(29.7)、水(80.1)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
とりわけ、比誘電率が15以上、200以下、好ましくは15以上、100以下、さらに好ましくは、20以上、100以下の極性溶剤を使用することが、炭素材料の良好な分散安定性を得るのに好ましい。
【0051】
比誘電率が15を下回る溶剤では分散剤の溶解性が著しく低下し良好な分散が得られないことが多く、また、比誘電率が200を超える溶剤を使用しても、顕著な分散向上効果が得られないことが多い。
【0052】
また、炭素材料の分散安定性は、溶剤の電子供与性にも影響される傾向が見いだされた。電子供与効果の大きな溶剤の使用が好ましく、とりわけ溶剤のドナー数が15kcal/mol以上の溶剤が好ましいが、20kcal/mol以上、60kcal/mol以下の溶剤がさらに好ましい。
【0053】
ドナー数は、各種溶剤の電子供与性の強さを測る尺度であり、基準のアクセプターとして、ジクロロエタン中10
-3M SbCl
5を選び、ドナーとの反応モルエンタルピー値として定義される値であって、値が大きいほどその溶剤の電子供与性が強いことを示す。また、いくつかの溶剤については、ドナー数はその溶剤中におけるNaClO
4の
23Na−NMRの化学シフトから間接的に推定されている。このドナー数については、V.グートマン(大瀧、岡田訳)「ドナーとアクセプター」(学会出版センター(株)1983年)に記載されている。溶剤が有する誘電率の大きさにもよるが、ドナー数が15kcal/molを下回る溶剤を用いると、十分な分散安定化効果が得られない場合がある。また、ドナー数が60kcal/molを超えた溶剤を用いても、顕著な分散向上効果はないものと思われる。
【0054】
ドナー数が15kcal/mol以上の溶剤としては、例えば、メチルアルコール(ドナー数:19)、エチルアルコール(20)、エチルアミン(55)、t−ブチルアミン(57)、エチレンジアミン(55)、ピリジン(33.1)、アセトン(17)、ホルムアミド(24)、N,N−ジメチルホルムアミド(26.6)、N,N−ジエチルホルムアミド(30.9)、N,N−ジメチルアセトアミド(27.8)、N,N−ジエチルアセトアミド(32.2)、N−メチルピロリドン(27.3)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(38.8)、ジメチルスルホキシド(29.8)、酢酸エチル(17.1)リン酸トリメチル(23)、リン酸トリブチル(23.7)、テトラヒドロフラン(20.0)、イソブチロニトリル(15.4)、イソプロピオノニトリル(16.1)、水(18.0)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
また、使用する溶剤としては、非プロトン性の極性溶剤であることが好ましい。非プロトン性の極性溶剤とは、溶剤自身にプロトンを放出する能力がなく、また自己解離もしない極性溶剤であり、非プロトン性の極性溶剤は水素結合による自己会合を生じず、溶剤自身の凝集性が弱い。そのため炭素材料の凝集体への浸透力が強く、分散促進効果が期待される。また、非プロトン性の極性溶剤は、溶剤自身の凝集性が弱いために溶解力が強く、種々の分散剤や樹脂を溶解することができるため、汎用性に優れる。
【0056】
また、溶剤の選択は、本発明の分散剤と、導電助剤としての炭素材料、および溶剤以外に、後述する電極活物質もしくはバインダー樹脂等をさらに添加する場合は、上述の分散性に与える溶剤の影響に加え、活物質との反応性、およびバインダー樹脂に対する溶解性等を鑑みつつ行う。分散性が高く、活物質との反応性が低く、バインダー樹脂の溶解性の高い溶剤を選択することが好ましい。
【0057】
さらに、環境負荷軽減や経済的有利性等から、電極製造工程において排出される溶剤を回収・再利用する場合は、混合溶剤ではなく、単一溶剤での使用が好ましい。
【0058】
以上、炭素材料の分散安定性促進効果、活物質との反応性、およびバインダー樹脂の溶解性を満たし、単一使用での汎用性を有する溶剤としては、アミド系溶剤が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド系非プロトン性溶剤の使用が好ましい。
【0059】
<バインダー樹脂>
本発明の組成物には、さらに、バインダー樹脂を含有させることが好ましい。使用するバインダー樹脂としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
【0060】
また、バインダー樹脂としてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。分子量が小さいとバインダー樹脂の耐性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダー樹脂の耐性は向上するものの、バインダー樹脂自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、合材成分が著しく凝集してしまうことがある。
【0061】
<正極活物質及び負極活物質>
本発明の組成物を正極合材もしくは負極合材に用いる場合は、上記分散剤、導電助剤としての炭素材料、および溶剤以外に、少なくとも正極活物質または負極活物質を含有させる。
【0062】
使用する正極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS
2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性ポリマーを使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0063】
使用する負極活物質としては特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属Li、またはその合金、スズ合金、シリコン合金負極、Li
xFe
2O
3、Li
xFe
3O
4、Li
xWO
2等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が用いられる。
【0064】
<本発明の分散剤、組成物の用途>
本発明の分散剤及び組成物は、正極合材または負極合材に用いることができる。正極合材または負極合材に用いる場合は、上記分散剤、導電助剤としての炭素材料、溶剤を含む組成物に、正極活物質または負極活物質、好ましくはさらにバインダー樹脂を含有させた正・負極合材ペーストとして使用することが好ましい。
【0065】
電極合材ペースト中の総固形分に占める活物質の割合は、80重量%以上、98.5重量%以下が好ましい。また、電極合材ペースト中の総固形分に占める、本発明の電池用分散剤と、導電助剤としての炭素材料とを合わせた固形分の割合は、0.5重量%以上、19重量%以下が好ましい。そして、電極合材ペースト中の総固形分に占める、バインダー樹脂の割合は、1重量%以上、10重量%以下が好ましい。また、電極合材ペーストの適正粘度は、電極合材ペーストの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0066】
正・負極合材ペーストは、導電助剤としての炭素材料粒子の分散性に優れるだけでなく、正・負極活物質の凝集を緩和する効果もある。導電助剤である炭素材粒子の分散性が優れるため、導電助剤としての炭素材料および正・負極活物質を溶剤に混合・分散する際のエネルギーが、炭素材料(導電助剤)の凝集物に阻害されることなく効率よく活物質に伝わり、結果的に正・負極活物質の分散性も向上させることができるものと思われる。
【0067】
そして、正極合材ペーストでは、正極活物質の周りに導電助剤である炭素材料粒子を均一に配位・付着することができ、正極合材層に優れた導電性および密着性を付与できる。また、導電性が向上することにより、導電助剤としての炭素材料の添加量を減らすことができるため、正極活物質の添加量を相対的に増やすことができ、電池の大きな特性である容量を大きくすることができる。
【0068】
さらに、本発明の正極合材ペーストは、正極活物質、炭素材料(導電助剤)の凝集が極めて少ないため、集電体に塗布した際に平滑性の高い均一な塗膜を得ることができ、集電体と正極合材との密着性が改善される。また、分散剤が炭素材料(導電助剤)表面に作用(例えば吸着)しているため、リチウム遷移金属複合酸化物のような正極活物質の表面と炭素材料(導電助剤)表面との相互作用が強まり、分散剤を使用しない場合と比較して正極活物質と炭素材料(導電助剤)との密着性が向上する。
【0069】
また、負極合材ペーストでは、負極活物質として炭素材料系の活物質を使用した場合、添加している分散剤の効果により、炭素材料系活物質の凝集が緩和される。そして、負極活物質の周りに炭素材料粒子(導電助剤)を均一に配位・付着することができ、負極合材層に優れた導電性、密着性および濡れ性を付与できる。
【0070】
本発明の組成物は、電極下地層にも用いることができる。電極下地層に用いる場合は、本発明の電池用分散剤と、導電助剤としての炭素材料および溶剤とからなる分散体をそのまま使用しても良いが、上記バインダー樹脂を添加し、電極下地ペーストとして使用することが好ましい。電極下地層に用いる組成物の総固形分に占める導電助剤としての炭素材料の割合は、5重量%以上、95重量%以下が好ましく、10重量%以上、90重量%以下がさらに好ましい。導電助剤としての炭素材料が少ないと、下地層の導電性が保てない場合があり、一方、導電助剤としての炭素材料が多すぎると、塗膜の耐性が低下する場合がある。また、電極下地ペーストの適正粘度は、電極下地ペーストの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0071】
<本発明の分散剤及び組成物の製造方法>
次に、本発明の電池用分散剤の製造方法について説明する。
【0072】
本発明の分散剤の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開昭60−88185号公報、特開昭63−305173号公報、特開平11−199796号公報等に記載されている方法を参考として製造することができる。
【0073】
次に、本発明の電池用組成物の製造方法について説明する。
【0074】
上記製造方法は、電池用分散剤から選ばれる1種以上の分散剤を、溶剤中に完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に導電助剤としての炭素材料を添加、混合することで、これら分散剤を炭素材料に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するものである。このときの分散体中における炭素材料の濃度は、使用する炭素材料の比表面積や表面官能基量などの炭素材料固有の特性値等にもよるが、1重量%以上、50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは5重量%以上、35重量%以下である。炭素材料の濃度が低すぎると生産効率が悪くなり、炭素材料の濃度が高すぎると分散体の粘度が著しく高くなり、分散効率や、後述するコンタミ除去工程の効率および、分散体のハンドリング性が低下する場合がある。とりわけ、コンタミを除く工程を入れる場合は、このときの分散体の粘度を好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下、さらに好ましくは3,000mPa・s以下とする。
【0075】
電池用分散剤の添加量は、用いる導電助剤としての炭素材料の比表面積等により決定される。一般には、炭素材料100重量部に対して、分散剤を0.5重量部以上、40重量部以下、好ましくは1重量部以上、35重量部以下、さらに好ましくは、2重量部以上、30重量部以下である。分散剤の量が少ないと十分な分散効果が得られないとともに、電解液への濡れ性向上効果や、金属析出を抑制する効果が十分に得られない。また、過剰に添加しても顕著な分散向上効果は得られない。
【0076】
導電助剤としての炭素材料の分散粒径は、0.03μm以上、2μm以下、好ましくは、0.05μm以上、1μm以下、さらに好ましくは0.05μm以上、0.5μm以下に微細化することが望ましい。導電助剤としての炭素材料の分散粒径が0.03μm未満の組成物は、その作製が難しい場合がある。また、導電助剤としての炭素材料の分散粒径が2μmを超える組成物を用いた場合には、電極の抵抗分布のバラつきや、低抵抗化のために導電助剤の添加量を増やさなければならなくなるなどの不具合が生じる場合がある。ここでいう分散粒径とは、体積粒度分布において、粒子径の細かいものからその粒子の体積割合を積算していったときに、50%となるところの粒子径(D50)であり、一般的な粒度分布計、例えば、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)等で測定される。
【0077】
また、上記分散剤を炭素材料に作用(例えば吸着)させつつ、炭素材料を溶剤に分散するための装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機が使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0078】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーターおよびベッセルがセラミック製または樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーターおよびベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズや、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましく、中でもジルコニアビーズの使用が好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。
【0079】
また、炭素材料分散時に金属異物等のコンタミを除く工程を入れることが好ましい。カーボンブラック、グラファイトおよび、炭素繊維等の炭素材料には、それらの製造工程由来(ラインコンタミや触媒として)の金属異物が含まれている場合が多く、これら金属異物を除去することは、電池の短絡を防ぐために非常に重要となる。本発明では電池用分散剤の効果により、炭素材料の凝集がよくほぐれること、および分散体の粘度が低くなるため、分散剤が未添加の場合に比して、分散体中の炭素材料濃度が高い場合でも、効率良く金属異物を取り除くことができる。金属異物を除く方法としては、磁石による除鉄や、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。
【0080】
バインダー樹脂の添加方法としては、上記分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、固形のバインダー樹脂を添加し、溶解させる方法が挙げられる。また、バインダー樹脂を溶剤に溶解したものを事前に作製しておき、上記分散体と混合する方法が挙げられる。また、バインダー樹脂を上記分散体に添加した後に、上記分散装置で再度分散処理を行っても良い。
【0081】
また、本発明の電池用分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散するときに、バインダー樹脂の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。
【0082】
正極活物質または負極活物質の添加方法としては、上記分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、正極活物質または負極活物質を添加し、分散させる方法が挙げられる。また、本発明の電池用分散剤の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散するときに、正極活物質または負極活物質の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。また、このときの混合、分散を行うための装置としては、通常の顔料分散等に用いられている上述の分散機が使用できる。
【0083】
本発明の電池用組成物は、上述のように、通常は溶剤を含む分散体(液)、ペーストなどとして、製造、流通、使用される。これは、導電助剤や活物質と分散剤を乾燥粉体の状態で混合しても、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることはできず、液相法で、分散剤の存在下、導電助剤や活物質を溶剤に分散することにより、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることができるからである。また、以下に説明するように、集電体に電極合材層を形成する場合には、液状の分散体をできるだけ均一に塗布してこれを乾燥させることが好ましいからである。
【0084】
しかしながら、例えば、液相法で作製した分散体を、運搬コストなどの理由から、一度溶剤を除去して乾燥粉体とすることも考えられる。そして、この乾燥粉体を適当な溶剤で再分散させて、電極合材層の形成に用いることも考えられる。したがって、本発明の組成物は、液状の分散体に限られず、このような、乾燥粉体の状態の組成物であってもよい。
【0085】
<リチウム二次電池>
次に、本発明の組成物を用いたリチウム二次電池について説明する。
【0086】
リチウム二次電池は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備する。前記正極合材層と前記集電体との間や、前記負極合材層と前記集電体との間には、電極下地層が形成されていてもよい。
【0087】
電極について、使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属や合金が用いられるが、特に正極材料としてはアルミニウムが、負極材料としては銅の使用が好ましい。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、およびメッシュ状のものも使用できる。
【0088】
集電体上に電極下地層を形成する方法としては、前述の電極下地ペーストを電極集電体に塗布、乾燥する方法が挙げられる。電極下地層の膜厚としては、導電性および密着性が保たれる範囲であれば特に制限されないが、一般的には0.05μm以上、20μm以下であり、好ましくは0.1μm以上、10μm以下である。
【0089】
集電体上に電極合材層を形成する方法としては、集電体上に上述の電極合材ペーストを直接塗布し乾燥する方法、および集電体上に電極下地層を形成した後に電極合材ペーストを塗布し乾燥する方法などが挙げられる。また、電極下地層の上に電極合材層を形成する場合、集電体上に電極下地ペーストを塗布した後、湿潤状態のうちに電極合材ペーストを重ねて塗布し、乾燥を行っても良い。電極合材層の厚みとしては、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0090】
塗布方法については、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、静電塗装法等が挙げられる。また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。
【0091】
<電解液>
本発明のリチウム二次電池を構成する電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
3C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF
2、LiSCN、LiBPh
4等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
非水系の溶剤としては特に限定はされないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−オクタノイックラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のグライム類、メチルフォルメート、メチルアセテート、メチルプロピオネート等のエステル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、アセトニトリル等のニトリル類、が挙げられる。またこれらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0093】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持しゲル状とした高分子電解質とすることもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0094】
本発明の組成物を用いたリチウム二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極および負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型など、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、個々の組成物の違いを明確にするために、分散剤、炭素材料、溶剤からなる分散組成物を「炭素材料分散液」、分散剤、炭素材料、溶剤、バインダー樹脂からなる分散組成物を「炭素材料分散ワニス」、分散剤、炭素材料、溶剤、バインダー樹脂、活物質からなる電池用分散組成物を「合材ペースト」と呼称することとする。また、特に断わりの無い限り、溶剤として使用したN−メチル−2−ピロリドンを「NMP」、質量%を「%」と略記する。
【0096】
<分散剤>
以下に本発明の一般式(1)で表わされる電池用分散剤(a)〜(w)の構造を示す。また、比較例として挙げる分散剤(A)〜(D)の構造を示す。
【0097】
【化3】
【0098】
【化4】
【0099】
【化5】
【0100】
【化6】
【0101】
<分散剤の製造方法>
以下の実施例に記載した方法で本発明の一般式(1)で表わされる電池用分散剤を製造した。なお、実施例中、「部」とは「重量部」を意味し、本発明の分散剤は、ブルカー・ダルトニクス社製MALDI質量分析装置autoflex III(以下、TOF−MSと称す)を用い、得られたマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数との一致をもって同定した。
【0102】
[実施例1]
(分散剤(a)の製造)
反応容器中で水1500部を10℃に冷却し、塩化シアヌル18.4部を加え撹拌した。これに2−(2−アミノエトキシ)エタノール26.3部を添加し、10℃で3時間反応させた。続けて、反応溶液に炭酸ナトリウムを徐々に添加しpHを7.0〜8.0に調整し、40℃に昇温後、1時間撹拌した。次いで反応溶液を室温まで冷却した後、30%塩酸を徐々に加えpHを3.0以下に調整し、生成物を濾過、水洗した。水1500部に得られた濾過残渣を加え撹拌し、さらに5−アミノベンズイミダゾロンを29.8部、25%苛性ソーダ80.0部を添加し90℃に昇温した。90℃で3時間撹拌後、室温まで冷却し、30%塩酸を徐々に加えpHを3.0以下に調整した。生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、39.1部の分散剤(a)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(a)の構造であることを確認した。
【0103】
[実施例2]
(分散剤(b)の製造)
上記分散剤(a)の製造において、2−(2−アミノエトキシ)エタノールの代わりに2−アミノエタノール15.3部を使用した以外は、同様にして分散剤(b)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(b)の構造であることを確認した。
【0104】
[実施例3]
(分散剤(c)の製造)
反応容器中でアセトン400部に塩化シアヌル18.4部を加え溶解させた。これにヘキサエチレングリコール28.2部、トリエチルアミン10.1部を添加し、5時間加熱還流させた。続けて、反応溶液に5−アミノベンズイミダゾロン44.7部、トリエチルアミン50.6部を添加し、さらに12時間加熱還流を行った。室温まで冷却した後、水1000部を加え、続けて30%塩酸を徐々に添加し、pHを3.0以下に調整した。生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、31.9部の分散剤(c)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(c)の構造であることを確認した。
【0105】
[実施例4]
(分散剤(d)の製造)
反応容器中で水1500部を10℃に冷却し、塩化シアヌル18.4部を加え撹拌した。これに4−アミノ−1−ブタノール8.9部を添加し、10℃で3時間反応させた。続けて、反応溶液に5−アミノベンズイミダゾロン44.7部を添加し、40℃に昇温後、2時間撹拌した。次いで、25%苛性ソーダ80.0部を添加し90℃に昇温後、3時間撹拌した。室温まで冷却し、30%塩酸を徐々に加えpHを3.0以下に調整した後、生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、42.1部の分散剤(d)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(d)の構造であることを確認した。
【0106】
[実施例5]
(分散剤(e)の製造)
反応容器中で水1500部を10℃に冷却し、塩化シアヌル18.4部を加え撹拌した。これにp−アミノアセトアニリド15.0部を添加し、10℃で3時間反応させた。続けて、反応溶液に2−アミノ−1−プロパノール22.5部を添加し、40℃に昇温後、2時間撹拌した。次いで、25%苛性ソーダ80.0部を添加し90℃に昇温後、3時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、30%塩酸を徐々に加えpHを3.0以下に調整し、生成物を濾過、水洗した。水250部に得られた濾過残渣を加え撹拌し、さらに30%塩酸110.0部を加え、100℃に昇温した。100℃で3時間撹拌後、5℃まで冷却し、さらに、亜硝酸ナトリウム6.9部を水45部に溶解させたものを添加して1時間撹拌した。次いで、スルファミン酸を添加して過剰の亜硝酸ナトリウムを消去し、これをジアゾニウム塩水溶液とした。一方、水1350部に5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン23.3部添加し、さらに25%苛性ソーダ30.8部、炭酸ナトリウム96.9部を添加して30分間撹拌したものをカップラー溶液とした。このカップラー溶液に上記5℃のジアゾニウム塩水溶液を30分かけて注入し、カップリング反応を行った。この時のpHは9.0以上であることを確認し、室温で2時間攪拌後、炭酸ナトリウムを添加することでpHを9.0以上に調整し、80℃に加熱して1時間撹拌した。その後、室温まで冷却し、30%塩酸を添加してpHを3.0以下に調整した後、生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、50.8部の分散剤(e)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(e)の構造であることを確認した。
【0107】
[実施例6]
(分散剤(f)の製造)
上記分散剤(a)の製造において、2−(2−アミノエトキシ)エタノールの代わりに3−アミノ−1−プロパノール18.8部、5−アミノベンズイミダゾロンの代わりにアニリン18.6部を使用した以外は、同様にして分散剤(f)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(f)の構造であることを確認した。
【0108】
[実施例7]
(分散剤(g)の製造)
上記分散剤(e)の製造において、2−アミノ−1−プロパノールの代わりに2−(2−アミノエトキシ)エタノール31.5部を使用した以外は、同様にして分散剤(g)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(g)の構造であることを確認した。
[実施例8]
(分散剤(h)の製造)
上記分散剤(a)の製造において、5−アミノベンズイミダゾロンの代わりにアニリン18.6部を使用した以外は、同様にして分散剤(h)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(h)の構造であることを確認した。
【0109】
[実施例9]
(分散剤(i)の製造)
上記分散剤(d)の製造において、4−アミノ−1−ブタノールの代わりに2−(2−アミノエトキシ)エタノール10.5部、5−アミノベンズイミダゾロンの代わりにアニリン27.9部を使用した以外は、同様にして分散剤(i)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(i)の構造であることを確認した。
【0110】
[実施例10]
(分散剤(j)の製造)
上記分散剤(d)の製造において、4−アミノ−1−ブタノールの代わりに4−アミノ−2−メチル−1−ブタノール10.3部、5−アミノベンズイミダゾロンの代わりにアニリン27.9部を使用した以外は、同様にして分散剤(j)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(j)の構造であることを確認した。
【0111】
[実施例11]
(分散剤(k)の製造)
上記分散剤(c)の製造において、ヘキサエチレングリコールの代わりに4−メトキシ−1−ナフトール17.4部、5−アミノベンズイミダゾロンの代わりに2−アミノ−1−ブタノール26.7部を使用した以外は、同様にして分散剤(k)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(k)の構造であることを確認した。
【0112】
[実施例12]
(分散剤(l)の製造)
上記分散剤(c)の製造において、ヘキサエチレングリコールの代わりにヘプタプロピレングリコール42.5部、5−アミノベンズイミダゾロンの代わりに4−クロロベンゼンチオール14.5部を使用した以外は、同様にして分散剤(l)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(l)の構造であることを確認した。
【0113】
[実施例13]
(分散剤(m)の製造)
上記分散剤(e)の製造において、2−アミノ−1−プロパノールの代わりに2−アミノエタノール18.3部、5−アセトアセチルアミノベンズイミダゾロンの代わりに3−ヒドロキシ−2−ナフトアニリド26.3部を使用した以外は、同様にして分散剤(m)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(m)の構造であることを確認した。
【0114】
[実施例14]
(分散剤(n)の製造)
上記分散剤(a)の製造において、2−(2−アミノエトキシ)エタノールの代わりに2−アミノエタノール15.3部、5−アミノベンズイミダゾロンの代わりにベンジルアミン21.4部を使用した以外は、同様にして分散剤(n)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(n)の構造であることを確認した。
【0115】
[実施例15]
(分散剤(o)の製造)
反応容器中で1,2−ジメトキシエタン400部を5℃に冷却し、塩化シアヌル18.4部を加え溶解させた。これにフェニルマグネシウムブロミド (16%テトラヒドロフラン溶液)283.3部を1時間かけて滴下し、5℃で3時間反応させた。続けて、反応溶液を徐々に昇温し、5時間加熱還流した。室温まで冷却した後、生成物をろ過、1,2−ジメトキシエタンで洗浄した。水1500部に得られた濾過残渣を加え撹拌し、さらに4−アミノ−1−ブタノールを17.8部、25%苛性ソーダ80.0部を添加し、90℃に昇温した。90℃で3時間撹拌後、室温まで冷却し、30%塩酸を徐々に加えpHを3.0以下に調整した。生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、25.6部の分散剤(o)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(o)の構造であることを確認した。
【0116】
[実施例16]
(分散剤(p)の製造)
反応容器中でメチルエチルケトン400部に塩化シアヌル18.4部を加え溶解させた。これにテトラエチレングリコール48.6部、トリエチルアミン30.3部を添加し、10時間加熱還流させた。続けて、反応溶液に3−アミノ−4−メトキシベンズアニリド48.4部、トリエチルアミン30.3部を添加し、さらに5時間加熱還流を行った。室温まで冷却した後、水1000部を加え、続けて30%塩酸を徐々に添加し、pHを3.0以下に調整した。生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、60.0部の分散剤(p)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(p)の構造であることを確認した。
【0117】
[実施例17]
(分散剤(q)の製造)
反応容器中で水1500部を10℃に冷却し、塩化シアヌル18.4部を加え撹拌した。これにN−(4−アミノブチル)アセトアミド13.0部を添加し、10℃で3時間反応させた。続けて、反応溶液に4−アミノ−2−メチル−1−ブタノール30.9部を添加し、40℃に昇温後、2時間撹拌した。次いで、25%苛性ソーダ80.0部を添加し90℃に昇温後、3時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却した後、30%塩酸を徐々に加えpHを3.0以下に調整し、生成物を濾過、水洗した。水250部に得られた濾過残渣を加え撹拌し、さらに30%塩酸110.0部を加え、100℃に昇温した。100℃で3時間撹拌後、室温まで冷却した反応液を炭酸ナトリウムでpHを7.0〜8.0に調整し、これを中間体溶液とした。一方、反応容器中でクロロスルホン酸250部にキナクリドン31.2部を溶解させた溶液に、塩化チオニル48.5部を添加し、60℃で3時間反応させた。続けて反応溶液を3℃の冷水5000部に注入し、析出物をろ過、水洗後、得られた残渣を先ほどの中間体溶液に添加した。さらにトリエチルアミン10.1部を加え、40℃で3時間反応させた。生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、61.7部の分散剤(q)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(q)の構造であることを確認した。
【0118】
[実施例18]
(分散剤(r)の製造)
反応容器中でメタノール400部を5℃に冷却し、1−(oートリル)ビグアニド19.1部を加え撹拌した。これにトリフルオロ酢酸エチル28.4部を添加し、40℃で5時間反応させた。室温まで冷却した後、生成物をろ過、メタノールで洗浄し、水500部に得られた濾過残渣を加え撹拌した。続けて、パラホルムアルデヒド7.5部を加え、さらに炭酸ナトリウムを徐々に添加しpHを9.0〜10.0に調整した。次いで40℃に昇温後、2時間撹拌を行い、生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、23.9部の分散剤(r)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(r)の構造であることを確認した。
【0119】
[実施例19]
(分散剤(s)の製造)
反応容器中でアセトン300部を10℃に冷却し、メラミン12.6部を加え撹拌した。これにイソニコチノイルクロリド塩酸塩44.5部、トリエチルアミン30.3部を添加し、50℃で4時間反応させた。次いで、生成物をろ過、アセトンで洗浄し、水500部に得られた濾過残渣を加え撹拌した。続けて、パラホルムアルデヒド7.5部を加え、さらに炭酸ナトリウムを徐々に添加しpHを9.0〜10.0に調整した。40℃に昇温後、2時間撹拌を行い、生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、33.3部の分散剤(s)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(s)の構造であることを確認した。
【0120】
[実施例20]
(分散剤(t)の製造)
反応容器中でメチルエチルケトン400部に塩化シアヌル18.4部を加え溶解させた。これにp−アセトアミドフェノール15.1部、トリエチルアミン30.3部を添加し、3時間加熱還流させた。次いで、反応溶液にsec−ブチルアミン7.3部を添加し、40℃で2時間反応させた。次いで、2−アミノエタンチオール15.4部、トリエチルアミン20.2部をさらに添加し、80℃で3時間反応させた。続けて、室温まで冷却した後、生成物を濾過、水洗し、水250部に得られた濾過残渣を加え撹拌した。さらに30%塩酸110.0部を加え、100℃に昇温し、3時間撹拌後、室温まで冷却した。この反応液を炭酸ナトリウムでpHを7.0〜8.0に調整し、3−ピリジンスルホニルクロリド35.5部、トリエチルアミン20.2部を添加し、40℃で2時間反応を行った。その後、室温まで冷却し、生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、41.4部の分散剤(t)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(t)の構造であることを確認した。
【0121】
[実施例21]
(分散剤(u)の製造)
上記分散剤(t)の製造において、p−アセトアミドフェノールの代わりにシクロヘキサンチオール11.6部、sec−ブチルアミンの代わりにp−アミノアセトアニリド15.0部、2−アミノエタンチオールの代わりに4−アミノシクロヘキサノール23.0部、3−ピリジンスルホニルクロリドの代わりにアントラキノン−2−カルボニルクロリド54.1部を使用した以外は、同様にして分散剤(u)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(u)の構造であることを確認した。
【0122】
[実施例22]
(分散剤(v)の製造)
反応容器中でアセトン300部を10℃に冷却し、メラミン12.6部を加え撹拌した。これにp−トルエンスルホニルクロリド28.6部、トリエチルアミン15.1部を添加し、10℃で3時間反応させた。次いで、生成物をろ過、水洗し、水500部に得られた濾過残渣を加え撹拌した。続けて、パラホルムアルデヒド15.0部を加え、さらに炭酸ナトリウムを徐々に添加し、pHを9.0〜10.0に調整した。40℃に昇温後、2時間撹拌を行い、生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、30.6部の分散剤(v)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(v)の構造であることを確認した。
【0123】
[実施例23]
(分散剤(w)の製造)
反応容器中でアセトン400部に塩化シアヌル18.4部を加え溶解させた。これに3−エトキシー1−プロパノール10.4部、トリエチルアミン20.2部を添加し、3時間加熱還流させた。続けて、反応溶液に4−アミノシクロヘキサノール11.5部、トリエチルアミン20.2部を添加し、さらに40℃で2時間反応を行った。室温まで冷却した後、水1000部、28%アンモニア水60.7部を加え、80℃で4時間撹拌した。次いで、生成物を濾過、水洗し、水500部に得られた濾過残渣を加え撹拌し、これを中間体溶液とした。一方、反応容器中で濃硫酸170部に2−クロロアセトアミド18.7部、パラホルムアルデヒド7.5部を添加し、溶解させた溶液に、さらにアントラキノン20.8部を添加し、60℃で3時間反応させた。続けて、反応溶液を3℃の冷水3400部に注入し、析出物をろ過、水洗後、得られた残渣を先ほどの中間体溶液に添加した。さらにトリエチルアミン10.1部を加え、40℃で3時間反応させた。生成物をろ過、水洗し、得られた残渣を減圧下で乾燥させて、48.3部の分散剤(w)を得た。TOF−MSによる質量分析の結果、前記分散剤(w)の構造であることを確認した。
【0124】
<炭素材料分散液の製造および評価>
以下の実施例、比較例に記載した方法で炭素材料分散液を製造し、粘度、分散粒径の測定により分散安定性の評価を行った。
【0125】
炭素材料分散液の製造には、実施例1〜実施例23に記載の分散剤(a)〜(w)と、N−メチル−2−ピロリドン、および以下の炭素材料を使用した。また、比較例として分散剤(A)〜(D)(特許文献7、特許文献8、特許文献9に記載されているもの)を使用した。
【0126】
#30(三菱化学社製):ファーネスブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が30nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が74m
2/g。
モナーク800(キャボット社製):ファーネスブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が17nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が210m
2/g、以下「M800」と略記する。
デンカブラック粒状品(電気化学工業社製):アセチレンブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が35nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が68m
2/g、以下「粒状品」と略記する。
EC−300J(アクゾ社製):ケッチェンブラック、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が40nm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が800m
2/g。
カーボンナノチューブ:多層カーボンナノチューブ、電子顕微鏡で観察して求めた繊維径10〜20nm、繊維長2〜5μm、以下CNTと略記する。
VGCF(昭和電工社製):カーボンナノファイバー、電子顕微鏡で観察して求めた繊維径150nm、繊維長10〜20μm。
【0127】
炭素材料分散液の粘度の測定は、B型粘度計(東機産業社製「BL」)を用いて、25℃、60rpmで行った。各種カーボンブラックの分散粒径は、測定時の希釈溶剤としてはN−メチル−2−ピロリドンを用い、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用いて測定された平均粒子径(D50の値)を分散粒径とした。カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバー分散液の分散度は、グラインドゲージによる判定(JIS K5600−2−5に準ず)より求めた。
【0128】
[実施例24〜実施例49]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンと各分散剤を仕込み、混合溶解した後、各炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液D−1〜D−26を得た。いずれも低粘度かつ分散粒径が小さく、分散安定性は良好であった。
【0129】
[実施例50〜実施例51]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンと各分散剤を仕込み、混合溶解した後、各炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液D−27〜D−28を得た。いずれも低粘度かつ50μmグラインドゲージで測定した分散度は実施例50、実施例51共に10μmで、分散安定性は良好であった。
【0130】
[比較例1〜比較例7]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンと分散剤を仕込み、混合溶解した後、各炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液D−29〜D−35を得た。しかし、炭素材料分散液はいずれも高粘度で著しく凝集しており、分散粒径が大きかった。
【0131】
[比較例8〜比較例9]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンと分散剤を仕込み、混合溶解した後、各炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液D−36〜D−37を得た。しかし、炭素材料分散液はいずれも高粘度で著しく凝集しており、100μmグラインドゲージで測定した分散度は比較例8、比較例9共に100μm以上の粗粒が多く見られた。
【0132】
[比較例10〜比較例16]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンと分散剤を仕込み、混合溶解した後、各炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液D−38〜D−44を得た。いずれも低粘度かつ分散粒径が小さく、分散安定性は良好であったが、炭素材料の含有量はいずれも10%であり、これらの分散剤を用いた場合では、炭素材料含有量20%の高濃度な炭素材料分散液を得ることはできなかった。炭素材料含有量が20%の高濃度な炭素材料分散液を得ようとすると、比較例1〜比較例7で示した通り、高粘度化してしまい、分散粒径も大きく、安定な分散液を得ることはできなかった。
【0133】
[比較例17〜比較例18]
表1に示す組成に従い、ガラス瓶にN−メチル−2−ピロリドンと分散剤を仕込み、混合溶解した後、各炭素材料を加え、ジルコニアビーズをメディアとして、ペイントコンディショナーで2時間分散し、炭素材料分散液D−45〜D−46を得た。いずれも低粘度で分散安定性は良好であったが、炭素材料の含有量はいずれも10%であり、これらの分散剤を用いた場合では、炭素材料含有量20%の高濃度な炭素材料分散液を得ることはできなかった。炭素材料含有量が20%の高濃度な炭素材料分散液を得ようとすると、比較例8、比較例9で示した通り、高粘度化してしまい、安定な分散液を得ることはできなかった。
【0134】
【表1】
【0135】
<炭素材料分散ワニスの製造および評価>
以下の実施例、比較例に記載した方法で炭素材料分散ワニスを製造し、粘度、分散粒径の測定により分散安定性の評価を行った。
【0136】
炭素材料分散ワニスの製造には、実施例24〜実施例51および比較例1〜比較例18に記載の炭素材料分散液D−1〜D−46と、N−メチル−2−ピロリドン、および以下のバインダー樹脂を使用した。
【0137】
KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、以下PVDFと略記する。
【0138】
炭素材料分散ワニスの粘度、分散粒径、分散度は、上記炭素材料分散液と同じ方法で測定した。
【0139】
[実施例52〜実施例77]
表2に示す組成に従い、実施例24〜実施例49で調整した炭素材料分散液スD−1〜D−26とバインダー樹脂、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスV−1〜V−26を得た。いずれも低粘度かつ分散粒径が小さく、分散安定性は良好であった。
【0140】
[実施例78〜実施例79]
表2に示す組成に従い、実施例50〜実施例51で調整した炭素材料分散液とバインダー樹脂D−27〜D−28、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスV−27〜V−28を得た。いずれも低粘度かつ50μmグラインドゲージで測定した分散度は実施例78、実施例79共に10μmで、分散安定性は良好であった。
【0141】
[比較例19〜比較例25]
表2に示す組成に従い、比較例1〜比較例7で調整した炭素材料分散液D−29〜D−35とバインダー樹脂、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスV−29〜V−35を得た。しかし、炭素材料分散ワニスはいずれも高粘度で著しく凝集しており、分散粒径が大きかった。
【0142】
[比較例26〜比較例27]
表2に示す組成に従い、比較例8〜比較例9で調整した炭素材料分散液D−36〜D−37とバインダー樹脂、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスV−36〜V−37を得た。しかし、炭素材料分散ワニスはいずれも高粘度で著しく凝集しており、100μmグラインドゲージで100μm以上の粗粒が多く見られた。
【0143】
[比較例28〜比較例34]
表2に示す組成に従い、比較例10〜比較例16で調整した炭素材料分散液D−38〜D−44とバインダー樹脂、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスV−38〜V−44を得た。いずれも低粘度かつ分散粒径が小さく、分散安定性は良好であったが、分散ワニス中に含まれる炭素材料の含有量はいずれも5%であり、これらの分散剤を用いた場合では、炭素材料含有量10%の高濃度な炭素材料分散液を得ることはできなかった。炭素材料含有量が10%の高濃度な炭素材料分散液を得ようとすると、比較例19〜比較例25で示した通り、高粘度化してしまい、分散粒径も大きく、安定な分散液を得ることはできなかった。
【0144】
[比較例35〜比較例36]
表2に示す組成に従い、比較例17〜比較例18で調整した炭素材料分散液D−45〜D−46とバインダー樹脂、N−メチル−2−ピロリドンをディスパーにて混合し、炭素材料分散ワニスV−45〜V−46を得た。いずれも低粘度で分散安定性は良好であったが、分散ワニス中に含まれる炭素材料の含有量はいずれも5%であり、これらの分散剤を用いた場合では、炭素材料含有量10%の高濃度な炭素材料分散液を得ることはできなかった。炭素材料含有量が10%の高濃度な炭素材料分散液を得ようとすると、比較例26、比較例27で示した通り、高粘度化してしまい、安定な分散液を得ることはできなかった。
【0145】
【表2】
【0146】
<合材ペーストの製造>
合材ペーストの製造には、実施例52〜実施例79、比較例19〜27に記載の高濃度に調製した炭素材料分散ワニスと、N−メチル−2−ピロリドン、バインダー樹脂としてPVDF、および以下の活物質を使用した。
【0147】
HLC−22(本荘ケミカル社製):正極活物質、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が6.6μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.62m
2/g、以下LCOと略記する。
【0148】
[実施例80〜実施例107]
表3に示す組成に従い、実施例52〜実施例79で調整した炭素材料分散ワニスV−1〜V−28と活物質、PVDF、N−メチル−2−ピロリドンをプラネタリーミキサーにより混練し、合材ペーストP−1〜P−28を得た。
【0149】
[比較例37〜比較例45]
表3に示す組成に従い、比較例19〜比較例27で調整した炭素材料分散ワニスV−29〜V−37と活物質、PVDF、N−メチル−2−ピロリドンをプラネタリーミキサーにより混練し、合材ペーストP−29〜P−37を得た。
【0150】
【表3】
【0151】
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立ておよび特性評価>
次に、この合材ペーストを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧加熱乾燥して電極の厚みが100μmとなるよう調整した。さらに、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を作製し、密着性を以下の方法にて評価した。
【0152】
上記で作製した電極に、ナイフを用いて電極表面から集電体に達する深さまでの切込みを2mm間隔で縦横それぞれ6本の碁盤目の切込みを入れた。この切り込みに粘着テープを貼り付けて直ちに引き剥がし、活物質の脱落の程度を目視判定で判定した(表4、表5)。評価基準を下記に示す。
◎:「剥離なし(実用上問題のないレベル)」
〇:「わずかに剥離(問題はあるが使用可能レベル)」
△:「半分程度剥離」
×:「ほとんどの部分で剥離」
【0153】
続けて、上記で作製した電極を直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを質量比1:1に混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立てはアルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
【0154】
作製した電池評価用セルを室温(25℃)で、充電レート0.2C、1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計200サイクル行い、充放電サイクル特性評価(評価装置:北斗電工社製SM−8)を行った(表4、表5)。
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
表4、表5より、本発明の電池用組成物を用いた実施例80〜107では、比較例37〜45に比べて、塗膜の密着性向上が見られており、初期放電容量、および200サイクル後の放電容量維持率においても良好な結果が見られた。