特許第6202401号(P6202401)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202401
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】結合親和性の検出に用いる装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20170914BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20170914BHJP
   G01N 21/45 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01N21/17 N
   G01N21/41 Z
   G01N21/45 A
【請求項の数】19
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-551651(P2014-551651)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-503757(P2015-503757A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2013050825
(87)【国際公開番号】WO2013107811
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】12151436.8
(32)【優先日】2012年1月17日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512115852
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロッシュ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001346
【氏名又は名称】特許業務法人 松原・村木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファッティンガー クリストフ
【審査官】 佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−521728(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0053610(US,A1)
【文献】 特開平05−172732(JP,A)
【文献】 特開2003−194697(JP,A)
【文献】 特表2003−503732(JP,A)
【文献】 特表2003−504659(JP,A)
【文献】 特開2008−014732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
G01N 21/17−21/74
G02B 6/12− 6/14
G02B 6/26− 6/27
G02B 6/30− 6/34
G02B 6/42− 6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合親和性の検出に用いる装置であって、基板(3)上に配置された平面導波路(2)を備え、所定波長のコヒーレント光(1)を前記平面導波路(2)内に結合するための光カプラー(4)をさらに備え、前記平面導波路(2)の外表面(5)に沿って伝播する該コヒーレント光のエバネッセント場(6)を伴って該コヒーレント光が前記平面導波路(2)を通って伝播するよう構成され、前記平面導波路(2)の外表面(5)は、その上に結合サイト(7)を備え、当該結合サイト(7)には、対象試料(8)を結合可能であり、前記結合サイト(7)に結合された対象試料(8)によって前記エバネッセント場(6)の光を散乱させるよう構成され、前記結合サイト(7)は複数の所定の線(9)に沿って配置され、当該線(9)は、前記結合サイト(7)に結合された前記対象試料(8)により散乱させた光が所定の検出域において当該光の所定波長の整数倍の光路差で干渉するように配置されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
隣接する所定の線(9)間の距離が前記エバネッセント場の光の伝播の方向に減少することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記結合サイト(7)が配置された前記複数の所定の線(9)は曲線を含み、当該線の曲率が、前記結合サイト(7)に結合された前記対象試料(8)により散乱させた前記エバネッセント場の光が検出域としての所定の検出ポイントで干渉するように設定されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の所定の線(9)は、それらの位置が幾何学的に下記の式により定義されるように、前記平面導波路(2)の前記外表面(5)上に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。

[ここで、
λは、伝播する光の真空波長、
Nは、前記平面導波路の被嚮導モードの有効屈折率であり、Nは、前記平面導波路の厚みと屈折率、前記基板の屈折率、前記平面導波路の前記外表面上の媒質の屈折率、および前記被嚮導モードの偏光度に依存する、
は、前記基板の屈折率、
fは、前記基板の厚み、
は、前記基板の屈折率nと厚みfとの積を前記波長λで除算した値に近くなるよう選択された整数、
jは、前記線それぞれの指数を表す連続する整数
である。]
【請求項5】
前記結合サイトが、前記所定の線(9)のみに沿って前記平面導波路(2)の表面に付着した捕獲分子(7)を含み、当該捕獲分子が前記対象試料(8)を結合可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記結合サイトが、前記対象試料(8)を結合可能な捕獲分子(7)を含み、前記平面導波路(2)の前記外表面(5)上に前記対象試料(8)を結合可能な捕獲分子(7)を供給し、かつ、前記所定の線(9)に沿って配置されていない捕獲分子(12)については不活性化することによって、前記対象試料(8)を結合可能な当該捕獲分子(7)が、前記所定の線(9)に沿って配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記平面導波路(2)は前記基板(3)の屈折率(n)よりも実質的に高く、前記平面導波路(2)の前記外表面(5)上の媒質の屈折率(nmed)よりも実質的に高い屈折率(n)を有し、前記光の所定波長に対して、前記エバネッセント場(6)が50nmから200nmの範囲の浸透深度を有するよう構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記平面導波路(2)を通って伝播した光を外部に結合するさらなる光カプラー(13)を備え、前記光を前記平面導波路内に結合する前記光カプラー(4)と前記平面導波路(2)を通って伝播した光を外部に結合する前記さらなる光カプラー(13)とがともに前記平面導波路(2)の内部または外部に前記光をコヒーレントに結合する光学回折格子(4,13)を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記平面導波路(2)が、当該平面導波路(2)を通る光の伝播方向に対して当該平面導波路(2)の互いに反対側の端部に配置されている第1端部セクション(14)および第2端部セクション(15)を有し、前記第1端部セクション(14)および前記第2端部セクション(15)がそれぞれ前記平面導波路(2)を通って伝播する光の波長で吸収性を有する材料を含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記平面導波路(2)の前記外表面(5)上に複数の測定ゾーン(10,17)が配置され、各測定ゾーン(10)に、前記結合サイト(7)が前記複数の所定の線(9)に沿って配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記複数の測定ゾーンが異なるサイズの測定ゾーン(10,17)を含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
各測定ゾーン(10)は、面積が25μmより大きく、前記複数の所定の線(9)は、隣接する所定の線(9)間の距離が1.5μm未満、特に、1μm未満であることを特徴とする請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記結合サイト(7)が、単一の測定ゾーン(10)内において少なくとも2本の複数の所定の線(9)に沿って配置されており、当該2本の複数の所定の線(9)が、それぞれ、前記それぞれの複数の所定の線(9)に沿って配置された前記結合サイト(7)に結合されている前記対象試料(8)によって散乱させた光が、各複数の所定の線(9)に対して互いに空間的に離間した個別の検出域で、前記光の所定波長の整数倍の光路差で干渉するように配置されていることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
開口(21)を有する隔膜(11)をさらに備え、前記検出域における光が当該開口(21)を通過可能で、前記検出域とは異なる位置における光が前記隔膜(11)で遮断されるように配置されていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記隔膜(11)が、前記平面導波路(2)を通る光の伝播方向に見たときに前記開口(21)に隣接して配置された少なくとも一つのさらなる開口(18)をさらに備えていることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の装置を有するとともに、所定波長のコヒーレント光(1)を発する光源をさらに有し、前記コヒーレント光(1)が前記光カプラー(4)を介して前記平面導波路(2)内に結合されるように、前記光源および前記装置が相対配置されていることを特徴とする結合親和性を検出するためのシステム。
【請求項17】
光学撮像ユニット(19)をさらに有し、当該光学撮像ユニット(19)が、前記装置の検出域の画像を生成するように焦点を合わせるよう構成されていることを特徴とする請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムが、前記検出域における前記光の強度を測定するための光検出器(20)をさらに有することを特徴とする請求項16または請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
結合親和性を検出するための方法であって、
− 基板(3)上に配置された平面導波路(2)と光カプラー(4)とを準備するステップと、
− 所定波長のコヒーレント光(1)を、前記平面導波路(2)の外表面(5)に沿って伝播する該コヒーレント光のエバネッセント場(6)を伴って、該コヒーレント光が前記平面導波路(2)に沿って伝播するように、結合するステップと、
− 前記平面導波路(2)の前記外表面上の複数の所定の線(9)に沿って配置された結合サイト(7)に、対象試料(8)を付着させるステップと、
− 前記所定の線(9)に沿って配置された前記結合サイト(7)に結合された前記対象試料(8)によって散乱させた前記エバネッセント場の光を、所定の検出域で検出するステップとを有し、前記結合サイト(7)に結合された前記対象試料(8)によって散乱させた前記光が、前記所定の検出域において、当該光の前記所定波長の整数倍となる光路差を有する
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合親和性の検出に用いる装置ならびに結合親和性の検出のためのシステムおよび方法であって、それぞれ独立クレームに記載されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置は、たとえばバイオセンサーとして、多様な用途で使用される。個別の用途の一つとしては、結合親和性または結合プロセスの検出または監視があげられる。たとえば、この種のバイオセンサーを利用して、対象となる試料の結合サイトへの結合を検出するさまざまな分析検査を行うことができる。通常、多くのそのような分析検査は、バイオセンサー上で、当該バイオセンサーの表面の2次元マイクロアレイに配置されたスポットで行われる。マイクロアレイの使用によって、高スループットの選別において異なる対象試料の結合親和性または結合プロセスを同時検出するためのツールが提供され、分子、タンパク質またはDNAなどのような大量の対象試料の高速分析が可能となる。対象試料の、特定の結合サイトに結合する親和性(たとえば、対象分子が異なる捕獲分子に結合する親和性)を検出するために、バイオセンサーの表面上の、たとえばインクジェットスポッティングによって塗布可能なスポットで、数多くの結合サイトを固定化する。各スポットは、所定タイプの捕獲分子用の個別測定ゾーンを形成する。特定タイプの捕獲分子への対象試料の親和性が検出され、当該対象試料の結合親和性に関する情報を提供するために使用される。
【0003】
対象試料の結合親和性を検出するための公知の技術には、励起すると蛍光を発することが可能なラベルを用いるものがある。たとえば、対象試料をラベリングためのラベルとして、蛍光タグを用いることができる。励起すると、蛍光タグは特有の発光スペクトルをもつ蛍光を放出させられる。特定のスポットでこの特有の発光スペクトルが検出されることで、ラベリングされた対象分子がそれぞれのスポットに存在する結合サイトの特定のタイプに結合していることが示される。
【0004】
ラベリングされた対象試料のセンサーが、論文『Zeptosensのタンパク質マイクロアレイ:低存在度タンパク質分析のための新規な高性能マイクロアレイプラットフォーム(Zeptosens’ protein microarrays: A novel high performance microarray platform for low abundance protein analysis)』(Proteomics 2002, 2, S. 383-393, Wiley-VCH Verlag GmbH, 69451 Weinheim, Germany)に記載されている。この論文に記載のセンサーは、基板上に配置された平面導波路と、所定波長のコヒーレント光を当該平面導波路内に結合する回折格子とを備える。この平面導波路の、当該平面導波路内に結合する回折格子から離れた端部には、もう一つの回折格子が配置されている。平面導波路を通って伝播したコヒーレント光は、このもう一つの回折格子によって導波路外部に結合される。外部結合された光は、所定波長のコヒーレント光の平面導波路内への結合を調整するために利用される。平面導波路の外面に沿って伝播するコヒーレント光がエバネッセント場により全反射する状況下で、コヒーレント光は平面導波路を通って伝播する。平面導波路の外面において低屈折率の媒質側へのエバネッセント場の浸透する深さは、平面導波路を伝播するコヒーレント光の波長の数分の1のオーダーである。エバネッセント場は、平面導波路の表面上に配置された結合サイトに結合されたラベル付対象試料の蛍光タグを励起する。平面導波路の外表面ではエバネッセント場の光学的に薄い媒質内への浸透が非常に小さいので、平面導波路の外表面で固定化された結合サイトに結合されたラベル付試料のみが励起される。そして、これらのタグが発する蛍光が、CCDカメラを手段として検出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光ラベルを用いて結合親和性を検出することは基本的に可能であるが、この技法は、検出信号が結合の相手方自体ではなく、ラベルによって生成される点に難点がある。また、対象試料のラベリングには、追加の作業工程が必要となる。さらに、ラベル付の対象試料は、比較的高価である。もう一つの問題は、光退色やクエンチングの効果により、検出結果に歪曲が生じることである。
【0006】
本発明は、対象となる試料の結合親和性の検出に利用する装置、ならびに、そのような結合親和性を検出可能なシステムおよび方法であって、前記した先行技術のセンサーの問題を克服ないし大幅に低減するものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にしたがって、この目的は、結合親和性の検出に用いる装置によって、達成される。この装置は、基板上に配置された平面導波路を備え、所定波長のコヒーレント光を前記平面導波路内に結合するための光カプラーをさらに備え、前記平面導波路の外表面に沿って伝播する該コヒーレント光のエバネッセント場を伴って該コヒーレント光が前記平面導波路を通って伝播するよう構成されている。前記平面導波路の外表面は、その上に結合サイトを備え、当該結合サイトには、対象試料を結合可能であり、前記結合サイトに結合された対象試料によって前記エバネッセント場の光を散乱させるよう構成されている。前記結合サイトは複数の所定の線に沿って配置され、当該線は、前記結合サイトに結合された前記対象試料により散乱させた光が所定の検出域において当該光の所定波長の整数倍の光路差で干渉するように配置されている。
【0008】
本発明による結合親和性の検出は、対象試料の特定の種類に限定されるものではなく、結合サイトの任意の種類に限定されるものでもなく、分子、タンパク質、DNAなどの結合特性が、平面導波路上の任意の種類の結合サイトについて分析可能である。結合親和性の検出は、ラベルを使用しない方法で達成可能である。代替的に、光を強力に散乱させる散乱エンハンサー(たとえば、散乱ラベル)を使用して、検出感度を高めることができる。そのような散乱エンハンサーとしては、ナノ粒子(単独でまたはバインダーとともに)あるいは、他の例としては、コロイド粒子を使用することができる。分析対象とする結合特性としては、静的なタイプ(たとえば、対象試料が結合サイトに結合しているか、していないかを分析することができる)、または、動的なタイプ(たとえば、結合プロセスの経時的な動態を分析することができる)とすることができる。結合サイトとは、対象試料が結合するかもしれない平面導波路の外表面上の場所である。たとえば、結合サイトは、平面導波路の外表面上に固定化された捕獲分子を含むものであってもよく、単に、対象試料を結合させることができる平面導波路の外表面上の活性化された場所を含んでいるのでもよく、平面導波路の外表面上の所望の場所に対象試料を結合するのに適した他の任意の方法で構成してもよい。複数の所定の線は、個々に分離した線を含むものであってもよく、個々の線が1本の線を形成するように連結された線のパターン、たとえば、蛇行する一本の線のパターンを含むものであってもよい。結合サイトがそれらに沿って配置される隣接する所定の線の間の距離は、光の所定波長を基準にして選択される。隣接する所定の線間の好ましい距離は、100nmを超えるオーダーである。標準的な光学手段により散乱させた光が検出できるためには、平面導波路に可視光を使用する場合、隣接する所定の線の間の距離は、約100nmから約1000nmの範囲が好ましい。また、平面型光学導波路は、エバネッセント場の浸透深度が小さく、そのエバネッセント場を伝播するコヒーレント光の割合が高くなるように、平面導波路の外表面上の媒質に対する屈折率が高いことが望ましい。たとえば、平面導波路の屈折率は、1.6から2.5の範囲とすることができ、そのときの平面導波路の表面の媒質の屈折率は、通常、1から1.5の範囲である。例を挙げると、結合サイトは、平面導波路の外表面上で固定化されている捕獲分子を含むものとすることができる。固定化された捕獲分子は、それに結合された対象試料とともに、エバネッセント場のコヒーレント光を散乱させる複数の散乱中心を形成する。平面導波路に沿って伝播するコヒーレント光は、所定波長を有し、好ましくは単色光(理想的には単一の波長)である。平面導波路の表面に沿って伝播するエバネッセント場の光は、平面導波路内を伝播するコヒーレント光がそうであるようにコヒーレントなので、エバネッセント場のコヒーレント光は、異なる所定の線上に配置された捕獲分子によって(より一般的には、結合サイトに結合された対象試料によって)形成される散乱中心によってコヒーレントに散乱させられている。任意の場所の散乱させられた光は、個々の散乱中心のそれぞれからの貢献を加えることにより測定することができる。所定の検出域では、異なる散乱中心により散乱させた光の光路長が光の波長の整数倍だけ異なるように、所定の線が配置されているので、散乱させた光の最大のものが所定の検出域に配置される。検出域における最大の信号に対して、光カプラーから所定の線まで、そして、そこから所定の検出域までの光の光路長も、所定波長の整数倍である。したがって、結合サイトに結合された対象試料によって散乱させた光は、所定の検出域で干渉する。強め合う干渉の要件がいずれかの散乱された光によって満たされ、検出域の検出可能な信号にその光が加わる。所定の検出域には、特に形状の限定はなく、たとえば、点状であっても、細長い帯状であってもよい。「所定の線に沿った」結合サイトの配置とは、すべての結合サイトが精確に所定の線上に配置される最も理想的な場合を表している。結合サイトのそのような最も理想的な配置によって、検出域で最大の信号が得られることになる。当該技術分野における熟練技術者にとって、実用上、結合サイトの配置は、そのような最も理想的な配置からある程度ずれてもよいことは明らかである。たとえば、ずれは、詳細を後述するように、平面導波路の外表面上の結合サイトに配置する方法が原因となって生ずるものかもしれない。
【0009】
本発明による装置の一態様によれば、隣接する所定の線の間の距離が前記エバネッセント場の光の伝播の方向に減少する。一般に、エバネッセント場の散乱させた光が所定の検出域で干渉する角度は、所定の線に沿って配置されたさまざまな散乱中心(結合サイトに結合された対象試料)ごとに異なっている。所定の検出域では、散乱させた光は最大に干渉するので、様々な散乱中心から散乱される光の光路差は、光の波長の整数倍でなければならない。隣接する所定の線の間の距離の減少は、この事実を考慮し、光を、所定の検出域で最大に干渉させる。この所定の検出域は必ずしも点状や小さなスポット状である必要はなく、細長い帯状や、任意の他の所望形状であってもよい。
【0010】
本発明による装置のさらなる態様によれば、前記結合サイトが配置された前記複数の所定の線は曲線を含む。これらの線の曲率は、これらの所定の線に沿って配置された前記結合サイトに結合された前記対象試料により散乱させた前記エバネッセント場の光が検出域で最大に干渉するように設定されている。検出域は、好ましくは点(ポイント)状である。個々の所定の線はそれぞれが他の所定の線と異なる曲率を有するものであってもよい。実施の上では、検出域は点ではなく、小さなスポットまたは前記結合サイトが配置される所定の線の長さよりも短い長さの細長い帯状であってもよい。個々の湾曲した所定の線の曲率は、光カプラーから個々の所定の線に、そしてそこから所定の検出域に伝播する光の光路長が曲線全体に対する伝播する光の所定波長の整数倍となるように選択される。このことは、所定の線の外側のセクション上に配置された散乱中心によって散乱させた光も、ポイント状(またはスポット状、細長い帯状)の空間的に縮小された領域における信号に寄与することになるという点で有利である。
【0011】
本発明による装置のさらなる態様によれば、複数の所定の線は、x座標におけるそれらの位置が幾何学的に下記の式により定義されるように、平面導波路の外表面上に配置されている:
ここで、
λは、伝播する光の真空波長、
Nは、前記平面導波路の被嚮導モードの有効屈折率であり、Nは、前記平面導波路の厚みと屈折率、前記基板の屈折率、前記平面導波路の前記外表面上の媒質の屈折率、および前記被嚮導モードの偏光度に依存する、
は、前記基板の屈折率、
fは、前記基板の厚み、
は、前記基板の屈折率nと厚みfとの積を前記波長λで除算した値に近くなるよう選択された整数、
jは、前記線それぞれの指数を表す連続する整数
である。
【0012】
選択された整数Aは、線の中心の負のxの値に、負のjの値を割り当て、線の中心の正のxの値に、正のjの値を割り当てる。あるいは、言い換えると、整数Aは、平面導波路の外表面における線の配置に使用されるx、y座標の枠組みの原点を定義しており、選択されたAの値は検出域をx=0,y=0,z=−fにセットする。
【0013】
ここまですでに概要を説明したように、所定の検出域での信号強化のためには、複数の所定の線が、それらの所定の線に沿って配置された散乱中心が、隣接する所定の線の間の距離が狭くなる曲面のグリッド状の構造上に位置づけられるように、配置されるのが好ましい。そのように配置することで、光カプラーから個々の所定の線に伝播し、散乱中心によって所定の検出域に散乱させられた光に対する光路差が導波路内を伝播する光の所定波長の整数倍であるという条件を満足することになる。また、光カプラーから個々の所定の線へ、そしてそこから所定の検出域へと伝播する光の光路長は、曲線全体に対する伝播する光の所定波長の整数倍である。このように、結合サイトが平面導波路の表面上に配置される一方で、検出域を、平面導波路を保持する基板の底面に形成することができるのでコンパクトな装置を形成することが可能である。
【0014】
結合サイトをどのように複数の所定の線に沿って配置することができるかに関して、2つの実施形態が特に想定されている。第1の実施形態によれば、結合サイトは、所定の線のみに沿って平面導波路の表面に付着した捕獲分子を含む。これらの捕獲分子は、対象試料を結合可能であり、平面導波路の外表面上に固定化される(もっとも、上述のように、結合サイトは、平面導波路自体の活性化された表面によって形成することが可能である)。捕獲分子を平面導波路の外表面上に所定の線に沿って固定化することは、一般に、任意の適切な方法によって実現可能であり、たとえば、曲線とともにリソグラフィックマスクを使用したフォトリソグラフィック法を用いて実行してもよい。言うまでもなく、所定の線に沿って結合サイトを配置することは、本発明のすべての実施形態において、結合サイトの大多数が―本実施形態では捕獲分子が―所定の線に沿って配置されているとともに一部の結合サイトはそれらとは異なる場所に配置されていることを明示的に含むものであると理解されるべきである。
【0015】
第2の実施形態によれば、結合サイトは、ここでも、対象試料を結合することができる捕獲分子を含んでおり、このことは、特定の種類の結合サイトまたは特定の種類の対象試料に限定するものではない。捕獲分子は、同様に、対象試料を結合することができる。しかし、所定の線に沿って対象試料を結合することができる捕獲分子を配置することは、平面導波路の(全)面の対象試料を結合することができる捕獲分子を供給して固定化することによって、そして、続けて、所定の線に沿って配置されていない捕獲分子については不活性化することによってなされる。この文脈での「不活性化」という用語は、対象試料を結合することができなくなる状態を実現するために捕獲分子の結合能力を(たとえば、捕獲分子を所定時間露光することによって)改変するための任意の適切な方法を示している。本発明のこの実施形態によれば、捕獲分子は、平面導波路の外表面上に均一にあるいは統計的に、塗布することができる。所定の線の間に配置された捕獲分子の不活性化後、所定の線に沿って配置された捕獲分子(これらは不活性化されていない)のみが対象試料を結合することができる。しかしながら、不活性化された捕獲分子は、平面導波路の外表面上に固定化されたままである。
【0016】
この実施形態には、捕獲分子に結合された対象分子により散乱された光によって生成する信号の、検出域における信号全体に対する寄与が増すという追加の利点がある。一般に、捕獲分子に結合された対象分子によって散乱された光の信号と対象分子が結合されていない捕獲分子によって散乱された光の信号との間の差は捕獲分子だけで散乱された光に比べると小さい。所定の線に沿って配置された(不活性化されていない)捕獲分子の散乱特性と所定の線の間に配置された不活性化された捕獲分子の散乱特性とが同一であると仮定し、さらに、平面導波路の外表面を覆って捕獲分子が均一に分布していると仮定すると、理想的には、捕獲分子が平面導波路の外表面上で固定化された後であって、かつ、所定の線の間に配置された捕獲分子が不活性化された後において、検出域で信号が生成されることはない。しかし、実際には、捕獲分子の不活性化は、捕獲分子の散乱特性をわずかに変化させるので、所定の線の間に配置された捕獲分子のすべてを不活性化することは、理想的ではないかもしれない。そのかわり、不活性化されるのは、所定の線の間に配置された捕獲分子の大部分すぎないこととしてもよい。捕獲分子の不活性化は、所定の線に沿って配置された捕獲分子によって生ずる信号と所定の線の間に配置された不活性化された捕獲分子および少数の不活性化されていない捕獲分子によって生ずる信号とを含む、検出域の信号全体が最小となる、そして好ましくはゼロとなるような程度で実行される。そのように検出域で得られた信号がゼロまで小さくすることができると仮定すると、対象試料を加えた後には、検出域で生成される信号が、捕獲分子に結合された対象試料からだけ得られることを意味する。捕獲分子に結合されている対象試料がない場合には、検出域における信号はゼロのままである。これによって、検出域で捕獲分子に結合された対象分子により散乱される光によって発生する信号に対する検出器の感度が向上する。
【0017】
本発明による装置のさらなる態様によれば、平面導波路は、基板の屈折率nよりも実質的に高く、平面導波路の外表面上の媒質の屈折率nmedよりも実質的に高い屈折率nを有し、光の所定波長に対してエバネッセント場が40nmから200nmの範囲の浸透深度を有するよう構成されている。「実質的に高い」という用語は、光が全反射で伝播する平面導波路内への光の内部結合を可能にする屈折率の差を指すものとして理解されるべきである。平面導波路に沿って伝播する光は、平面導波路の外表面に沿って伝播するエバネッセント場を有する。当該エバネッセント場は、屈折率nmed、被嚮導モードの有効屈折率Nに依存するとともに伝播する光の波長にも依存する浸透深度を有し、エバネッセント場の光が外表面上の所定の線上(あるいは所定の線に近接して)配置された結合サイトに結合された対象試料によってコヒーレントに散乱されるように構成することができる。前記浸透深度のおおよその値は、その正確な境界値を明示的に含むものであると理解されるべきである。
【0018】
本発明による装置のさらなる態様によれば、前記装置は、平面導波路を通って伝播した光を外部に結合するさらなる光カプラーを備える。光を平面導波路内に結合する光カプラーと平面導波路を通って伝播した光を外部に結合するさらなる光カプラーとはともに、平面導波路の内部または外部に前記光をコヒーレントに結合する光学回折格子を有する。前記光カプラーおよびさらなる光カプラーは、それぞれ所定の内部結合(in-coupling)角度ないし外部結合(out-coupling)角度で平面導波路の内部および外部に光をコヒーレントに結合するための光学回折格子を有する。内部結合角度や外部結合角度は、光の波長および光カプラーの特性によって決定される。しかし、本発明の範囲内で、数ナノメートルから数百ナノメートルの範囲の厚みの平面導波路の内部および外部に光を結合するために適した他の任意の手段によって光を平面導波路の内部および外部に結合させることもできる。ほんの一例を挙げるなら、代替的光カプラーは、光学プリズムであってもよい。
【0019】
本発明の装置のさらなる態様によれば、平面導波路は、当該平面導波路を通る光の伝播方向に対して当該平面導波路の互いに反対側の端部に配置された第1端部セクションおよび第2端部セクションを有する。第1端部セクションおよび第2端部セクションは、それぞれ平面導波路を通って伝播する光の波長で吸収性を有する材料を含んでいる。吸収性を有する材料は、平面導波路に沿って伝播しそれぞれの端部セクションに向かい、平面導波路内に戻る光の反射を最少化する。これにより、平面導波路の両端部から反射していたかもしれない光がなくなり、あるいは少なくとも大幅に最少化されるので、検出信号が向上する。
【0020】
本発明による装置のさらなる態様によれば、複数の測定ゾーンが、平面導波路の外表面上に配置される。各測定ゾーンには、結合サイトが複数の所定の線に沿って配置されている。高スループットの選別のために、異なる種類の結合サイトおよび対象試料に対して、結合サイトに結合されたそれぞれの対象試料を別個の測定ゾーンに配置することによって、試料の結合親和性の同時検出が実現可能である。各測定ゾーンには、エバネッセント場の散乱された光を別々に検出可能になるように対応する個別検出域がある。
【0021】
本発明による装置のさらなる態様によれば、前記複数の測定ゾーンは、異なるサイズの測定ゾーンを含んでいる。測定ゾーンのすべてのサイズは、既知である。それぞれの検出域では、同じ種類の対象試料が同じタイプの結合サイトに結合される測定ゾーンの中で対応する異なるサイズを有する測定ゾーンで散乱される光が比較可能である。検出域における散乱光の強度は、導波路の平面上のそれぞれの測定ゾーンにある散乱中心の数に対して二次相関を有する。このように、異なるサイズの測定ゾーン内の散乱中心の均一な分布および面密度のために、異なるサイズの対応する測定ゾーンのそれぞれの検出域における散乱光の強度は、それぞれの測定ゾーンのサイズに対して二次相関を有する。したがって、異なるサイズの測定ゾーンの検出域における散乱光の強度は、測定された強度が本当に所定の線上に配置された散乱中心により散乱された光を表していることを確認するために用いることができる。
【0022】
本発明の一態様によれば、各測定ゾーンは、面積が25μmより大きく、前記複数の所定の線は、隣接する所定の線の間の距離が1.5μm未満、特に、1μm未満である。このことによって、多数の測定ゾーン、すなわち、1平方センチメートル当たり1000,10000,100000,・・・,4×10個の測定ゾーンを備える高度に統合された装置が実現可能となる。
【0023】
好ましくは、結合サイトは、単一の測定ゾーン内において少なくとも2本の複数の所定の線に沿って配置されている。当該2本の複数の所定の線は、それぞれが、それぞれの複数の所定の線に沿って配置された結合サイトに結合されている対象試料によって散乱させた光が、各複数の所定の線に対して、個別の検出域で、光の所定波長の整数倍の光路差で干渉するよう配置されている。個別の検出域は互いに空間的に離間している。空間的に離間した個別の検出域を形成するように配置された測定ゾーン内の2本以上の複数の所定の線によって、結合イベントの検出(たとえば、協同的結合の検出や、反応カスケードの検出)のための追加の方法を実行することが可能となる。
【0024】
本発明による装置の他の態様によれば、装置は、開口を有する隔膜を備え、それらは、検出域における光が当該開口を通過可能で、前記検出域とは異なる位置における光が前記隔膜で遮断されるように配置されている。機械的隔膜および電子的隔膜が検出域に散乱される光以外のすべての光を見えなくするよう構成することができる。好ましくは、隔膜は、基板の平面導波路からは遠い側の外表面上に形成することができる。たとえば、不透明な材料、たとえばクロム層を基板の導波路からは遠い方の表面に塗布することができる。不透明なクロム層は、検出域に透明な開口を有し、それを通って検出域に散乱された光が透過可能で、開口に散乱しなかった残りの光は遮断される。
【0025】
本発明による装置のさらなる態様によれば、隔膜は、平面導波路を通って光が伝播する方向に見て、前記開口に隣接して配置された少なくとも一つのさらなる開口をさらに備えている。このさらなる開口は、当該さらなる開口に散乱されたインコヒーレント光がこのさらなる開口を通過できるように、前記開口に隣接配置されている。好ましくは、さらなる開口を有する隔膜を使用することにより、検出されたインコヒーレントなバックグラウンド光が、補正可能となる。さらなる開口は、それ自体は検出域でインコヒーレントなバックグラウンド光を検出するものではないが、検出域とは異なる位置のインコヒーレント光の測定値から検出域におけるインコヒーレント光の量の測定を可能にする。そのようにして測定された検出域におけるインコヒーレント光の量は、検出域の光と分離することはできないが、検出器で検出域における全体信号が測定されると、検出領域の全体信号から引き去ることができる。補正を向上させるために、伝播する光の方向に対して、検出域の前方に第1のさらなる開口が配置され、検出域の後方に第2のさらなる開口が配置される。そのような構成によって、検出域における信号の補正のために検出域におけるインコヒーレント光に対する平均値を検出することが可能になる。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、本発明にしたがって、結合親和性を検出するための装置を有する結合親和性を検出するためのシステムに関する。このシステムは、所定波長のコヒーレント光を発する光源をさらに有し、コヒーレント光が光カプラーを介して平面導波路内に結合されるように、前記光源および前記装置が相対配置されている。代替的に、当該システムは、光カプラーの正確な結合角度が装置によって異なる可能性があるため、走査および/または光カプラーに入射する光の角度の調整のための光学手段をさらに有する。代替的に、当該システム内の光源により出射される光の波長を調整することができる。これは、構造上の理由で光カプラーに入射する光の角度が固定されている場合に有利である。
【0027】
本発明によるシステムのさらに他の態様によれば、システムは、光学撮像ユニットをさらに有し、当該光学撮像ユニットは、装置の検出域の画像を生成するように焦点を合わせてある。光学撮像ユニットは、結合サイトに結合された対象試料により散乱された光が、当該光の所定波長の整数倍となる光路差で干渉する所定の検出域の画像を提供することができる。光学撮像ユニットは、検出域に存在する光を画像化して観察位置に供するために用いることができる。光学撮像ユニットは、検出域からの光と一つないし複数のさらなる開口からの光を(後者の光は、検出域に存在する光全体からインコヒーレントなバックグラウンド光を引き去るために使用可能なため)両方とも画像化するよう構成することができる。代替的または追加的に、光学撮像ユニットは、当該光学撮像ユニットの焦点を検出域に合わせることによって検出域における光のみを選択するために用いることができる。その場合、隔膜はもはや必要なくなる。
【0028】
本発明のもう一つの態様は、結合親和性を検出するための方法に関する。この方法は、
− 基板上に配置された平面導波路と光カプラーとを準備するステップと、
− 所定波長のコヒーレント光を、前記平面導波路の外表面に沿って伝播する該コヒーレント光のエバネッセント場を伴って、該コヒーレント光が前記平面導波路に沿って伝播するように、結合するステップと、
− 前記平面導波路の前記外表面上の複数の所定の線に沿って配置された結合サイトに、対象試料を付着させるステップと、
− 前記所定の線に沿って配置された前記結合サイトに結合された前記対象試料によって散乱させた前記エバネッセント場の光を、所定の検出域で検出するステップとを有し、前記結合サイトに結合された前記対象試料によって散乱させた前記光が、前記所定の検出域において、当該光の前記所定波長の整数倍となる光路差を有する。
【0029】
本発明のさらなる有利な態様は、以下の、添付の概略図面を参照しての本発明の実施形態の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による装置の実施形態の斜視図を示す。
図2図1の装置の断面図を示す。
図3】外表面に沿って伝播し、検出域に散乱された、エバネッセント場の光に対する異なる光路の図を示す。
図4】複数の所定の線の配置を、所定の線に沿って固定化された結合サイトとともに含む、本発明による装置の測定ゾーンを示す。
図5】一部の対象試料が結合サイトに結合された、図4の測定結果を示す。
図6】複数の所定の線の配置を、所定の線に沿って固定化された結合サイトおよび所定の線の間に固定化された結合サイトとともに含む、本発明による装置の測定ゾーンを示す。
図7】所定の線の間に配置された結合サイトが不活性化された、図6の測定結果を示す。
図8】対象試料が追加された、図7の測定ゾーンを示す。
図9】対象試料が所定の線に沿って固定化された結合サイトに結合されている、図8の測定ゾーンを示す。
図10】測定ゾーンの所定の線が除去されるブランクセクションの構成の図を示す。
図11】所定の線が除去されるブランクセクションとともに、図10の測定ゾーンを示す。
図12】複数の測定ゾーンを含む、本発明による装置のさらなる実施形態の上面図を示す。
図13】各測定ゾーンについて、検出域に開口が設けられ、検出域の前後の位置に2つのさらなる開口が設けられた、図10の装置の実施形態の底面図を示す。
図14】本発明による装置の測定ゾーンの一部を、結合対象試料のプロセスの異なる段階ごとに示す。
図15】本発明による装置の測定ゾーンの一部を、結合対象試料のプロセスの異なる段階ごとに示す。
図16】本発明による装置の測定ゾーンの一部を、結合対象試料のプロセスの異なる段階ごとに示す。
図17】本発明による装置の測定ゾーンの一部を、結合対象試料のプロセスの異なる段階ごとに示す。
図18】装置が、追加の保持基板を備える、装置のさらなる実施形態の断面図を示す。
図19】単一の測定ゾーンに配置された2つの異なる複数の所定の線で散乱させたエバネッセント場の光に対する異なる光路の図を示す。
図20】12の測定ゾーンをその上に配置し、3つの複数の所定の線を各測定ゾーンに配置した、図18の装置の上面図を示す。
図21】追加の保持基板の上面に形成された不透明層に開口を有する、図18の装置の底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1に、試料の結合親和性の検出のための、本発明による装置の実施形態の斜視図を示す。装置は、透明な材料からなる基板3を備えており、この基板は、図示した本実施形態においては、直方体(rectangular cube)の形状を有しているが、この形状に限定されるものではない。平面導波路2(図2も参照)は、基板3の上面に配置されており、その内部にコヒーレント光1が結合され、コヒーレント光が平面導波路2を通って全反射で伝播するようになっている。平面導波路2は、わずか数ナノメーターから数百ナノメーターの範囲の厚みしかないので、図1では別の層として図示していないが、図2では誇張して示してある。図1に平行な矢印で示されているように、所定波長を有するコヒーレント光1は、基板3を通って、光カプラーとして作用する回折格子4の補助によって平面導波路2内に結合される。平面導波路2内に結合されたコヒーレント光は、平面導波路2の上面の上側の媒質内に浸透する(図2を再度参照)エバネッセント場6(矢印で示す)を伴い、平面導波路2に沿って伝播する。エバネッセント場6は平面導波路2の外表面5に沿って伝播する。平面導波路2の外表面上に配置された測定ゾーン10は、複数の所定の線9を有する(図示された線のそれぞれが複数の線を、特に、この装置の本実施例では50本の線を、示している。また、図1では、はっきりとわかりやすいように、そのような測定ゾーンが一つだけ図示してある)。対象試料が結合可能な結合サイト(図1には不図示)はこれらの所定の線9に沿って配置されている。エバネッセント場6のコヒーレント光は、測定ゾーン10内の結合サイトに結合された対象試料によって散乱させられる。結合サイトに結合された対象試料により散乱させられた光の一部は、開口21を有する隔膜11が配置された検出域に向かう。隔膜11は、不透明な材料から作られており、たとえば、基板3の下面に塗布されたクロム層であってもよい。
【0032】
図2に、図1の装置(導波路の厚みは、全体的な作用原理を説明するため誇張して示した)の断面図を示す。図示されているように、光学回折格子4に補助されて平面導波路2内に結合された光は、全反射で平面導波路2を通って伝播し、平面導波路2の反対側端部に配置されたさらなる回折格子13に達する。このさらなる回折格子13は、平面導波路の外部に光を結合するためのさらなる光カプラーとして機能する。反射を防ぎ、インコヒーレントなバックグラウンド光を最小化するために、平面導波路2の第1端部セクション14および第2端部セクション15は、吸収性材料を含んでいる。平面導波路内を伝播する光に対応して、エバネッセント場6が平面導波路2の外表面5に沿って伝播する。
【0033】
平面導波路2の屈折率nは、基板3の屈折率nよりも実質的に高く、また、平面導波路2の外表面5上の媒質の屈折率nmedよりも実質的に高い。外表面5上の媒質の屈折率nmedは、塗布される試料の種類によって変わってくる。たとえば、外表面5上の媒質の屈折率nmedは、対象試料が、平面導波路2の外表面5に塗布される水溶液中に存在する場合には、おおよそ水の屈折率程度とすることができ、乾性の対象試料の場合には、おおよそ空気の屈折率程度としてもよく、対象試料8が結合可能な結合サイトが外表面5上のヒドロゲル層16に含有されている場合には、おおよそヒドロゲル層16の屈折率程度としてもよい。平面導波路2の外表面5上の媒質内へのエバネッセント場6の浸透深度(平面導波路2の外表面5とエバネッセント場6の1/e強度低下するところとの間の距離)は、平面導波路2の外表面5上の媒質の屈折率nmed、被嚮導モードの有効屈折率Nおよび光の波長λに依存する。
【0034】
平面導波路2の外表面5に沿って伝播するエバネッセント場6の光は、結合サイトに結合された対象試料8により散乱させられる、これらの結合サイトは、捕獲分子7を含んでいてもよい。捕獲分子は、対象試料8を結合可能で、所定の線9に沿って測定ゾーン10内に(図1参照)配置されている。図2には、光の伝播方向に見ていったときに、隣り合った所定の線(それらに沿って捕獲分子7が配置されている)の間の距離が短くなっていくことが、徐々に短くなっている矢印によって示されている。図からさらに看取できるように、図2の実施形態において対象試料8は、対象試料8を含有する液滴を供給することによって測定ゾーンに塗布されている。捕獲分子7に結合させた対象試料8により散乱された光の一部は、隔膜11の開口21が配置された検出域に向けられている。オプションとして、検出域の光は、光学撮像ユニット19により、光検出器20上に画像化することができる。光学撮像ユニット19および光検出器20は、代替的に、あるいは組み合わせて設置することができるものであり、特に、ひとつのユニット内に組み合わせて装備することができるものなので、波線で示したボックスで囲んで示してある。
【0035】
異なる捕獲分子7に結合させた対象試料8により散乱させられたエバネッセント場6の光の検出域までの光路長が異なることは図2から既に明らかではあるが、いくつかのそのような異なる光路が明示されている図3を一瞥すれば、そのことはさらに明白となる。エバネッセント場6のコヒーレント光の一部は、隔膜11の開口21の場所である検出域で干渉するように、異なる捕獲分子7に結合された対象試料8によって散乱させられている。所定の検出域ごとに、その検出域における光路差がコヒーレント光の所定波長の整数倍となるように、所定の線9の配置と形状、および基板3の厚みが選択されている。したがって、検出域における光の干渉は、異なる捕獲分子7に結合された対象分子8によって検出域へと散乱させられた光のコヒーレントで加法的な重ね合わせである。
【0036】
図3に示されている実施形態については、複数の所定の曲線9が、平面導波路の外表面5上に配置されており、それらの平面導波路の外表面5の平面における位置が、下記の式によりx,y座標で幾何学的に表現されるように構成されている。
ここで、
λは、伝播する光の真空波長、
Nは、平面導波路の被嚮導モードの有効屈折率であり、Nは、平面導波路の厚みと屈折率、前記基板の屈折率、平面導波路の外表面上の媒質の屈折率、および被嚮導モードの偏光度に依存する、
は、基板の屈折率、
fは、基板の厚み、
は、基板の屈折率nと厚みfとの積を波長λで除算した値に近くなるよう選択された整数、
jは、前記線それぞれの指数を表す連続する整数
である。
【0037】
図4に、所定の線9と、所定の線9に沿って平面導波路5の外表面(図1参照)上に固定化されている捕獲分子7により表される結合サイトとを含む測定ゾーン10を、拡大視して示す。捕獲分子7を所定の線に沿った位置でのみ固定化することは、上述したように、リソグラフィック技術を利用して実現できる。図5において、対象試料8は、捕獲分子7のいくつかに結合されている。捕獲分子7が複数の所定の線9に沿って配置されているので、捕獲分子7に結合された対象試料8もまた複数の所定の線9に沿って配置されるのである。検出域において、このことが、上述したように、結果として、捕獲分子7に結合された対象試料8により形成される散乱中心により散乱させられる光のコヒーレントで加法的な重ね合わせを起こすのである。
【0038】
図6図7図8および図9にも測定ゾーン10が拡大視して示されている。しかし、対象試料8を結合可能な捕獲分子7がどのように所定の線9に沿って固定化されているかというその方法においては、異なっている。
【0039】
図6において看取できるように、最初のステップで、捕獲分子7は、測定ゾーン10における平面導波路の外表面(全面)にわたって固定化されているので、捕獲分子は複数の所定の線9に沿って配置されてはいない。したがって、捕獲分子7により散乱させられたエバネッセント場の光は、上述のように検出域で干渉することはない。
【0040】
図7に示されているように、所定の線9の間に配置されている捕獲分子は、不活性化されているので、これらの不活性化された捕獲分子12にはもはや対象試料は結合することはできない。したがって、対象試料を結合可能な捕獲分子7のみが、複数の所定の線9に沿って配置されている。捕獲分子7の所定の線9に沿った位置での固定化の正確性は、捕獲分子7の付着、固定化または不活性化の方法に依存する。その結果、対象試料8を結合することができる固定化された捕獲分子7の位置は、正確に所定の線9「上」というわけではなく、所定の線9の正確な位置からはいくらかずれていてもよい。実際には、所定の線「上」の精確な位置からのずれは、隣り合った所定の線9の距離の四分の一未満の範囲とすることができる。それによって、検出域に散乱された光がなお強め合う干渉となる。
【0041】
導入部分で説明したように、所定の線9の間に配置された捕獲分子12の不活性化は、不活性化された捕獲分子12および対象試料8を結合可能な捕獲分子7により発生させた(対象試料8がまだ加えられていない)検出域における信号全体が、不活性化後に、検出域における調整された最小信号(理想的にはゼロ)となるように設定ないし調整されるように実行される。
【0042】
次のステップは、平面導波路の外表面上の測定ゾーン10に対象試料8を加えることであり、これは図8に示されている。所定の線9に沿って配置されている捕獲分子7のみが対象試料8を結合することができるので、対象試料8は所定の線9に沿った捕捉分子7に結合される。これは図9に示されている。不活性化された捕獲分子12および捕獲分子7により発生させる検出域における調整された信号があらかじめ最小値に設定または調整されていること(前記参照)により、検出域の信号は、そのとき、主に(あるいは、不活性化された捕獲分子および捕獲分子により発生する信号があらかじめゼロにまで引き下げられている場合には完全に)所定の線に沿って配置された捕獲分子7に結合された対象試料8により散乱させられた光により発生することになる。
【0043】
図10に、平面導波路における二次ブラッグ反射を避けるために所定の線9を取り除くべきブランクセクションの構成を図示するための、前記したような測定ゾーン10の一部を示す。ブラッグ反射は、平面導波路に沿って伝播する光の強度を低下させるので回避されるべきものである。こうすることは、複数の測定ゾーン10が、平面導波路の外表面上を、伝播する光の方向に、一つずつ配置されている場合に、特に有利である。このように、後続の測定ゾーンに散乱される伝播光の強度の低下は、前記した様々な測定ゾーンにおける散乱プロセスのみが原因なのではなく、平面導波路におけるブラッグ反射によって、さらに低下するのである。測定ゾーンのそれぞれにおいて、測定ゾーンの円形セクションにおける所定の線9は、隣り合う線の間の間隔が二次ブラッグ反射の条件を満たすので、平面導波路における第二次のブラッグ反射がブラッグ反射された光が強め合う干渉を起こすさらなる場所22を画定する。図示した例では、所定の線9が図示した円弧21と交わる点が、所定の線9のうち、ブラッグ条件が完全に満たされ、光が反射して戻り、さらなる場所22で強め合う干渉を起こす位置を示している。この反射光は、その先に配置された測定ゾーン10における散乱に利用することはできない。
【0044】
図11に、そのような二次ブラッグ反射を回避するために所定の線9が取り除かれる円弧21に近接した領域23を含む測定ゾーン10を示す。
【0045】
図12および図13には、本発明による装置のさらなる実施形態の上面図および底面図が示されている。装置のこの実施形態は,第1のサイズの複数の測定ゾーン10と、異なるサイズの測定ゾーン17とを有する。各測定ゾーン10は、ブラッグ反射を回避するために複数の所定の線9を取り除いた(前記参照)領域23を含む。一般に、測定ゾーンが領域23を含まないことも可能である。光を平面導波路内に結合する光学回折格子4および光を導波路の外部に結合するさらなる回折格子13が設けられている。光学回折格子4とさらなる光学回折格子13との間には、複数の第1のサイズの測定ゾーン10と複数の異なるサイズの測定ゾーン17とが配置されており、そこでは、詳細を上で検討したように、所定の線9に沿って結合サイトが配置されている。複数の第1のサイズの測定ゾーン10と複数の異なるサイズの測定ゾーン17とのおかげで、対象試料および結合サイトの異なる組み合わせの同時検出が可能となり、対象試料および結合サイトを、特定の結合サイトに対する特定の対象試料の結合親和性について、同時に分析することができる。代替的に、対象試料および結合サイトの同じ組み合わせに対して重複した測定を行うこともできる。
【0046】
図13の底面図から、検出域において、各測定ゾーンに対して開口21が設けられていることが看取できる。ここでは、上で詳細を説明したように、散乱させられた光が、導波路内を、所定の線上の散乱中心にまで、そしてそこから所定の検出域にまで伝播する光の波長の整数倍の光路差を有する。図2に関して詳細に検討したように、光学撮像ユニットを設けてもよいことは言うまでもない。
【0047】
異なるサイズの測定ゾーン17は、測定ゾーン10の間に配置されている。測定ゾーン17は、測定ゾーン10のサイズとは異なる既知のサイズを有し、すべてのサイズは既知である。それぞれの検出域において、測定ゾーン10内に散乱させた光および対応する測定ゾーン17内に散乱させた光は、(同じ種類の結合サイトに結合された同じ種類の対象試料について)比較可能である。検出域において散乱光の強度は、導波路の平面表面上の測定ゾーン中の散乱中心の数に対して、二次相関を有する。異なるサイズの測定ゾーン内の散乱中心の均一な分布および面密度を想定すると、異なるサイズの対応する測定ゾーンの各検出域における散乱光の強度は、各測定ゾーンのサイズに二次相関を有する。したがって、異なるサイズの測定ゾーンの検出域における散乱光の強度は、測定された強度が実際に、所定の線上に配置された散乱中心により散乱させられた光を表すものであることを確認するために利用することができる。
【0048】
結合親和性の検出を向上させるため、基板3上の、それぞれの検出ゾーン10に専用の各開口21の前後に、2つのさらなる開口18が形成されている。平面導波路2を通って伝播するコヒーレント光は、平面導波路2を通ってその方向に沿ってインコヒーレントに散乱されることもあるため、このインコヒーレントに散乱された光の寄与分も、開口21を通じて検出域で検出される。所定の間隔で開口21の前後にある開口18が、このインコヒーレントに散乱させた光を表す平均信号を決定することを可能とするのだが、この平均信号は、検出域における検出信号を、検出域で検出された全体信号からインコヒーレント光の平均信号を減じることによって、補正するために利用することができる。このような検出域における信号の補正は、対象分子が付着していない結合サイトで散乱することによって発生するバックグラウンド信号を、上述のように減少させることとの関連で、特に有利である。
【0049】
図14および図17は、本発明による平面導波路の外表面5上に形成される測定ゾーンの一部を示している。対象試料8を捕獲分子7に結合するプロセスの異なる段階(フェーズ)が示されている。このプロセスでは、対象試料8の捕捉分子7への結合が強化されている。捕捉分子7が、外表面5で固定化される。続いて、対象試料8およびリンカー24(linker)が塗布される。塗布された対象試料8は、対象試料8の捕獲分子7への結合および対象試料8の捕獲分子からの解放が均衡した平衡状態に達するまで、捕獲分子7に結合することが可能とされる。そして、リンカーが、対象試料8と捕獲分子7との間の結合を強化するために、(たとえば光で)活性化される。続いて、結合されなかった対象試料8および使用されなかったリンカー24が洗浄され除去される。リンカー24によって対象試料8と捕獲分子7との間の結合が強化されることで、捕獲分子7に結合された対象試料8が意図に反して洗い流されてしまうことが防がれるか、少なくとも大幅に抑制される。したがって、検出域における信号はさらに強化される。光活性化されるリンカーを使用したそのようなプロセスの例は、「捕獲化合物質量分析:小分子タンパク質相互作用検査技術(Capture Compound Mass Spectrometry: A Technology for the Investigation of Small Molecule Protein Interactions)」(ASSAY and Drug Development Technologies, Volume 5, Number 3, 2007)に、詳細に記載されている。
【0050】
図18に、その大部分は図1に示されているが、さらなる実施形態にしたがって、たとえば高度に集約されたシステム(すなわち1cm当たり約4×10個に上る測定ゾーン)において使用される層構造を有する装置の断面図が示されている。図示されている例において、測定ゾーン10は約25μmサイズの領域を有する。このサイズとすることによって、単一の装置で多数の測定を実行するために平面導波路2の外表面5上に多数の測定ゾーン10を配置することが可能になる。狭小化された測定ゾーン10は、たとえば、比較的大きな測定ゾーンから実質的に25μmという小さいサイズの領域を「切り抜く(cutting out)」ことによって達成される。もっとも、狭小化されたサイズの測定ゾーン10内の所定の線の間の距離を変えずに保つことで、狭小化されたサイズの測定ゾーン10内の結合サイトに結合された対象試料で散乱させられる光により形成される円錐が、比較的大きな測定ゾーンとする場合に比べて実質的に小さい開口角を有するものとなる。光の円錐の開口角が小さいと、比較的大きな測定ゾーンの測定に使用され、所与の開口角を有する同様の光学検出ユニット(図2に相当するもの)が検出域における光だけでなく、インコヒーレントなバックグラウンド光をも測定することになってしまう。このことは、信号対雑音比(S/N比)を低下させる。S/N比の低下を防ぐためには、理想的には、狭小化されたサイズの測定ゾーン10の結合サイトに結合された対象試料により散乱させられて検出域で干渉する光により形成される円錐の開口角が、光学検出ユニットの開口角と等しくなるように、測定ゾーン10と検出域との間の距離を縮めなければならない。狭小化されたサイズの測定ゾーン10と検出域との間の距離を縮めるためには、当該狭小化されたサイズの測定ゾーン10内の複数の所定の線の配置を、結合サイトに結合された対象試料により散乱させられた光が新しい検出域で干渉するように、図3を参照しつつ上で説明した式にしたがって決定しなければならない。狭小化されたサイズの測定ゾーン10と新しい検出域との間の距離は10マイクロメーター(μm)から数百マイクロメーター(μm)の範囲にすぎないので、基板3の厚みは、非現実的なほどに薄くなってしまうかもしれない。特に、実験室での条件下では、10から数百マイクロメーター(μm)の範囲の厚みを有する基板3を含む装置を取り扱うことは不利である。そのような装置のハンドリングを向上させるために、この実施形態による装置は、次のような層構成を有する。すなわち、(下側から上側に)追加の保持基板24、不透明材料の層111、基板3、そして平面導波路2である。追加の保持基板24は、透明な材料(たとえば、ガラスやプラスチック)からなり、装置をハンドリングに適したものにする厚み(たとえば、3mm以下)を有する。不透明材料の層111は、追加の保持基板24の上面に形成されている。不透明材料の層111は、たとえば、開口21,18がリソグラフィーで形成されている黒色クロム層である。基板3は透明な材料からなり、狭小化されたサイズの測定ゾーン10と検出域との間の距離に対応する厚みを有する。平面導波路2と測定ゾーン10は、基本的に、上でさらに説明したのと同様である。各測定ゾーン10は、図19と関連付けて以下に検討を加えるように、2つ以上の複数の所定の線を有するものとすることができる。
【0051】
図19の光路の図は図3と類似しているが、2つの複数の所定の線9,91が単一の測定ゾーン内に配置されており、各ゾーンそれぞれにおいて、光が、異なる複数の所定の線9,91に結合された対象試料によって、異なる空間的に離間した検出域(焦点)へと散乱させられている。外表面5に沿って伝播するエバネッセント場6の光は、第1の複数の所定の線9に沿って結合サイトに結合された対象試料において、右手側焦点(実線)で干渉するように散乱させられ、第2の複数の所定の線91に沿って結合サイトに結合された対象試料において、左手側焦点(破線)で干渉するように散乱させられる。この原理は、各検出域に関連する各複数の所定の線9,91に当てはまるので、そのような測定ゾーン内に追加の複数の所定の線(たとえば、図20に示すような3本の線)を配置することができる。所定の線9,91(図19)の両方に配置された結合サイトに結合することができる対象試料は、線9,91の交点で、多重結合反応によって共同的結合を形成することができる。そのような多重結合反応は、高い強度を有する。2つの結合は、同時に、あるいは短時間のうちに(即時に)連続して形成可能である。そのような多重結合反応は、両方の検出域に相関する信号を提供する2つの離れた検出域で、光学的に検出される。
【0052】
図20には、平面導波路の外表面に配置された12の測定ゾーン10を有する図18の装置の上面図が示されている。各測定ゾーン10において、複数の所定の線は3本設けられており、これら3本の複数の所定の線に沿って結合サイトに結合されている対象試料が、平面導波路内に結合された光を、光カプラー4を介して、3つの空間的に離間した別個の検出域に散乱させる。3本という複数配置することは、プロセスカスケードが検出可能なので、有利である。そのようなプロセスカスケードは、たとえば、第1の検出域で信号を供給するように配置された第1のタイプの捕獲分子において別々の生成物に分離されるときに、存在する。この反応の第1の生成物は、そのとき、第2の検出域で信号を供給するように第2のタイプの捕獲分子に結合する。反応の第2の生成物は、第3の検出域で信号を供給するように第3のタイプの捕獲分子に結合する。
【0053】
図21には、図20の装置の底面図が示されている。下から、透明な追加の保持基板24を通して、追加の保持基板24の上面に配置された不透明な材料の層111が見える。9つの開口のグループが不透明な材料の層111に形成されている。構造的に、不透明な材料の層111は、それぞれの検出域での測定に必要な散乱光以外の光を遮断する形状を有するいくつかの開口を有する。検出域における拡散する非コヒーレントなバックグラウンド光の最適な抑制のためには、円形の開口の直径は、検出域において干渉する散乱光により生成する焦点スポットの直径dよりも大きい直径が選択される。原則として、サイズは、顕微鏡の理論的に可能な解像度の計算のためのアッベ式により与えられる:
d0 = λ / 2nS sinα = = λf / nS D
ここで、
λは、平面導波路内を伝播するコヒーレント光の真空波長、
αは、測定ゾーンの開口角の半分
は、基板3の屈折率、
fは、測定ゾーンの焦点距離、
Dは、測定ゾーンの半径
である。
【0054】
不透明な層111における開口21の前後には、平均バックグラウンド信号を決定するために、さらなる開口が形成されている(図18参照)。開口の形状は、検出域で干渉する光によって形成される焦点スポットの形状に対応するように選択することができる。検出域において検出される光の、たとえば、平面導波路の外表面に塗布される試料の屈折率の変化や、平面導波路の厚みの小さな変化に起因して焦点スポットの位置が変化する場合に生じる、開口エッジによる切り離し(cutting off)を避けるために、(エバネッセント場の伝播方向に長い)細長い開口21を設けるのが好ましいかもしれない。
【0055】
本発明の諸実施形態について図面の助けを借りて説明してきたが、本発明の基礎をなす一般的な教示から逸脱することなく、説明された実施形態に対する変形や変更が可能である。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものと理解されるべきではなく、保護の範囲は、特許請求の範囲によって画定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21