特許第6202431号(P6202431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202431
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】かご型シルセスキオキサン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/21 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   C07F7/21CSP
【請求項の数】3
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-181594(P2013-181594)
(22)【出願日】2013年9月2日
(65)【公開番号】特開2014-65706(P2014-65706A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2016年8月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-194570(P2012-194570)
(32)【優先日】2012年9月4日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年3月25日〜28日公益社団法人日本化学会主催日本化学会第92春季年会にて配布の刊行物“講演予稿集”(平成24年3月9日発行)に掲載。
(73)【特許権者】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山口 和夫
(72)【発明者】
【氏名】加部 義夫
(72)【発明者】
【氏名】力石 紀子
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−504890(JP,A)
【文献】 特表2005−509042(JP,A)
【文献】 特開2011−063568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/21
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体。
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はアリールアルキル基を示し、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子で置換してもよいアルコキシ基を示す。Gは、−COO−,−SOO−,−O−、−S−,−NHCOO−、−SCOO−、−O−(CHCHO)−CHCOO−、又は−O−(CHCHO)−CHSOO−を示す。nは0以上の整数を、mは2〜20の整数を示す。)
【請求項2】
式(2)で表される活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体。
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はアリールアルキル基を示し、pは2〜20の整数を表し、Yは下記式(Y1)〜(Y8)のいずれかである活性エステル基を示す。)
【化3】
【請求項3】
請求項1記載の式(1)で表される光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体に光を照射することによる式(3)で表される反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサンの製造方法。
【化4】
(式中、Rはそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又はアリールアルキル基を示し、Wは、−COOH、−SOOH、−NH、−SH、−OH、−O−(CHCHO)CHCOOH、又は−O−(CHCHO)CHSOOHを表し、nは0以上の整数を、mは2〜20の整数を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かご型シルセスキオキサン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機−無機ハイブリッド材料の一つであるかご型シルセスキオキサンは、無機シリカと有機シリコーンの中間的な物質である。かごの構造や置換基を変化させることでさまざまな性質の材料を作ることができるため、近年電子材料や光学材料の分野への応用の期待が高まっている。例えば、かご型シルセスキオキサンを添加した材料やかご型シルセスキオキサンをグラフト化したポリマーでは、溶解性、親和性、熱特性、機械強度、光学透過性、ガス透過性、誘電率、難燃性等を高めることができるといわれている。他の材料に化学結合させてかご型シルセスキオキサンを導入する場合、例えばポリマーに結合させてポリマー性能の改良を図る場合、あるいは、金属表面に結合させて表面改質を図る場合等は、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルファニル基、スルホン酸基等の反応性官能基をもつかご型シルセスキオキサンが必要であり(特許文献1〜2を参照)、これらは不完全かご型シルセスキオキサンとシランカップリング剤との反応で得られることが知られている(特許文献3〜4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−128239号公報
【特許文献2】特開2011−34083号公報
【特許文献3】米国特許第5484867号明細書
【特許文献4】特表2009−504890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規なかご型シルセスキオキサン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の新規なかご型シルセスキオキサン誘導体は、光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体及び活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体である。より具体的には、本発明は以下の通りである。
【0006】
[1]式(1)で表される光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体。
【化1】
(式中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素基を示し、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又はフッ素原子で置換してもよいアルコキシ基を示す。Gは、−COO−,−SOO−,−O−、−S−,−NHCOO−、−SCOO−、−O−(CHCHO)−CHCOO−、又は−O−(CHCHO)−CHSOO−を示す。nは0以上の整数を、mは2〜20の整数を示す。)
【0007】
[2]式(2)で表される活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体。
【化2】
(式中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素基を示し、pは2〜20の整数を表し、Yは活性エステル基を示す。)
【0008】
[3]上記活性エステル基Yが、式(Y1)〜(Y8)のいずれかである[2]記載の活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体。
【化3】
【0009】
[4][1]記載の光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体に光を照射することによる式(3)で表される反応性官能基を有するかご型シルセスキオキサンの製造方法。
【化4】
(式中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素基を示し、Wは、−COOH、−SOOH、−NH、−SH、−OH、−O−(CHCHO)CHCOOH、又は−O−(CHCHO)CHSOOHを表し、nは0以上の整数を、mは2〜20の整数を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規なかご型シルセスキオキサン誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
≪かご型シルセスキオキサン誘導体≫
本発明に係る新規なかご型シルセスキオキサン誘導体は、式(1)で表される光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体である。
【0012】
【化5】
【0013】
上記式中、Rはそれぞれ独立に、炭化水素基を示す。炭化水素基の炭素数は、1〜20のものが好ましく、1〜10がより好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソオクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。また、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、2−プロピニル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基等が挙げられる。アリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0014】
また、上記式中、Rは水素原子、又は置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基を示す。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよく、炭素数1〜10のものが好ましく、1〜6がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。また、アルケニル基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、2〜7がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘプチニル基等が挙げられる。アルキニル基としては、炭素数3〜10のものが好ましく、3〜8がより好ましい。具体的には、2−プロピニル基等が挙げられる。脂肪族炭化水素基が有してもよい置換基としては、アルコキシ基、アシル基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ホルミル基、アセチル基等が挙げられる。これらの中でもRとして特に水素原子又はメチル基を好適なものとして挙げることができる。
【0015】
また、上記式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又はフッ素原子で置換されていてもよいアルコキシ基を示す。アルコキシ基における炭素数は1〜12が好ましく、1〜7が特に好ましい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロヘプチルオキシ基、4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11−ヘプタデカフルオロウンデシルオキシ基等が挙げられる。
【0016】
また、上記式中、Gは、−COO−,−SOO−,−O−、−S−,−NHCOO−、−SCOO−、−O−(CHCHO)−CHCOO−、又は−O−(CHCHO)−CHSOO−を示す。nは0以上の整数を示す。
【0017】
また、上記式中、mは2〜20の整数を示す。好ましくは、2〜15の整数を示す。
【0018】
式(1)の化合物としては、具体的には、以下の化合物を例示できる。
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【0019】
本発明に係る他の新規なかご型シルセスキオキサン誘導体は、式(2)で表される活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体である。
【0020】
【化12】
【0021】
上記式中、Rは式(1)と同様である。
上記式中、pは2〜20の整数を表す。pは2〜15の整数であることがより好ましい。
【0022】
上記式中、Yは活性エステル基を示す。活性エステル基は、カルボキシ基を活性化して反応性を高める基であれば特に限定されず、具体的には、下記に示す(Y1)〜(Y8)基を挙げることができる。これらの中でもN−ヒドロキシスクシンイミドエステル基(Y1)が好ましい。
【0023】
【化13】
【0024】
式(2)の化合物としては、具体的には、以下の化合物を例示できる。
【化14】
【化15】
【化16】
【0025】
≪かご型シルセスキオキサン誘導体の製造≫
本発明の光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体及び活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体は、不完全かご型シルセスキオキサンとシランカップリング剤とを反応させることにより製造できる。
【0026】
上記不完全かご型シルセスキオキサンは、特表2003−510337号公報等に記載された公知の方法によって合成することができ、例えば、RSiOMeをアセトン、メタノール等の溶媒中、LiOHを添加し加熱撹拌して反応させた後、HCl水溶液で処理することにより得られる。得られる不完全かご型シルセスキオキサンの骨格は合成条件に依存するが、安定に生成しやすいものとして、[(RSiO1.5(HOSiO1.0Σ8、[(RSiO1.5(R(OH)SiO1.0Σ8、及び[(RSiO1.5(R(HO)SiO1.0Σ7を挙げることができる。特に式(4)の化合物[(RSiO1.5(R(HO)SiO1.0Σ7は市販されているものがあり、簡便に用いることができる。
【0027】
【化17】
【0028】
本発明で用いるシランカップリング剤は、光分解性の基を有する式(5)で表される化合物、又は活性エステル基を有する式(6)で表される化合物である。
【0029】
【化18】
【0030】
上記式(5)において、R〜R,mは式(1)と同様である。Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表す。アルコキシ基における炭素数は1〜7が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素が好ましく、塩素が特に好ましい。
【0031】
【化19】
【0032】
上記式(6)において、Y,pは式(2)と同様である。また、Xは式(5)と同様である。
【0033】
式(5)で表されるシランカップリング剤は、特開2009−215197号公報、特開2002−80481号公報、特開2003−321479号公報等を参照し、例えば以下のように製造することができる。
【0034】
式(5)において、Gが−COO−であるシランカップリング剤(5A)は、下記のスキームに従い合成できる。芳香族ケトン(7)に硝酸を反応させてニトロ基を導入し(8)とした後、水素化ホウ素ナトリウム等で還元してアルコール(9)を得る。次に末端に二重結合を有するカルボン酸(10)と脱水縮合させてエステル結合を形成させる(11)。その後、塩化白金(IV)酸六水和物を触媒として、化合物(11)とシラン化合物(12)とのヒドロシリル化反応を行い、シランカップリング剤(5A)を得る。
【0035】
【化20】
【0036】
式(5)において、Gが−O−であるシランカップリング剤(5B)は、下記のスキームに従い合成できる。末端に二重結合を有するアルコール(14)とo−ニトロフェニル基を有する臭化物(13)とのウイリアムソンエーテル合成により化合物(15)を得る。その後、塩化白金(IV)酸六水和物を触媒として、化合物(15)とシラン化合物(12)とのヒドロシリル化反応を行い、シランカップリング剤(5B)を得る。
【0037】
【化21】
【0038】
また、シランカップリング剤(5B)は、下記のスキームに従っても合成できる。o−ニトロフェニルケトン(8)をヒドラジンと反応させて化合物(16)とし、さらに、二酸化マンガンで酸化してジアゾ化合物(17)とする。これに過塩素酸の存在下、末端に二重結合を有するアルコール(14)と反応させて化合物(15)を得、シラン化合物(12)とヒドロシリル化反応を行い、シランカップリング剤(5B)を得る。
【0039】
【化22】
【0040】
式(5)において、Gが−NHCOO−のシランカップリング剤(5C)は、下記のスキームに従い合成できる。o−ニトロフェニルエチルアルコール(9)とN,N’−ジスクシンイミジルカーボネートとを第三アミンの存在下反応させてカーボネート(18)を得る。これにシリル基を有するアミン(19)を反応させて、シランカップリング剤(5C)を得る。
【0041】
【化23】
【0042】
式(5)において、Gが−SOO−のシランカップリング剤(5D)は、下記のスキームに従い合成できる。末端に二重結合を有する臭化物(20)に亜硫酸ナトリウムを作用させ、スルホネートナトリウム(21)を得、これをイオン交換樹脂に通して、スルホン酸(22)を得る。次にo−ニトロフェニル基を有するジアゾ化合物(17)と反応させてスルホネート(23)とし、シラン化合物(12)とヒドロシリル化反応を行い、シランカップリング剤(5D)を得る。
【0043】
【化24】
【0044】
式(5)において、Gが−S−であるシランカップリング剤(5E)は下記のスキームに従い、合成できる。o−ニトロフェニル基を有する臭化物(13)とシリル基を有するチオール(24)とのウイリアムソンエーテル合成により、シランカップリング剤(5E)を得る。
【0045】
【化25】
【0046】
式(5)において、Gが−SCOO−であるシランカップリング剤(5F)は、下記のスキームに従い合成できる。カーボネート(18)と末端に二重結合を有するチオール(25)との反応によりチオカーボネート(26)を得る。これにシラン化合物(12)を作用させてヒドロシリル化反応を行い、シランカップリング剤(5F)を得る。
【0047】
【化26】
【0048】
式(6)で表されるシランカップリング剤は、特開2005−225789号公報等を参照し、以下のように合成することができる。
【0049】
【化27】
【0050】
上記式中−COZは式(6)中のYと同じ基を表す。末端に二重結合を有するカルボン酸(27)と炭酸化合物(28)とを塩基の存在下反応させて−COZで表される活性エステル(29)を形成させ、次いでシラン化合物(12)と反応させてシランカップリング剤(6)を得る。あるいは、カルボン酸(27)とアルコール類(30)との脱水縮合により活性エステル(29)を形成させ、次いでシラン化合物(12)と反応させてシランカップリング剤(6)を得る。
【0051】
上記のようにして得られたシランカップリング剤(5)又は(6)と、不完全かご型シルセスキオキサン(4)とは、酸又は塩基触媒の存在下、溶媒中で撹拌することにより反応し、本発明の新規なかご型シスセスキオキサン誘導体を得ることができる。
【0052】
【化28】
【0053】
上記反応に用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等が挙げられる。これらの溶媒を単独で用いても混合して用いてもよい。
【0054】
上記反応に用いられる触媒としては、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム等の塩基、酢酸、塩酸等の酸が挙げられる。特に塩基触媒を用いることが好ましい。触媒の添加量は、不完全かご型シルセスキオキサンに対し、0.1〜4モル/モル用いることが好ましく、2〜3モル/モル用いることがより好ましい。
【0055】
シランカップリング剤は、不完全かご型シルセスキオキサンに対し、1〜3モル/モル用いることが好ましく、1〜1.5モル/モル用いることがより好ましい。
【0056】
反応温度は、−20〜100℃が好ましく、0〜25℃がより好ましい。
【0057】
具体的には、脱水テトラヒドロフラン中に不完全かご型シルセスキオキサン(4)を溶解させ、トリエチルアミン存在下、シランカップリング剤(5)又は(6)を添加後、室温で撹拌した後、カラムクロマトグラフィーに付して目的のかご型シルセスキオキサン(1)又は(2)を単離する方法をとることが好ましい。
【0058】
≪かご型シルセスキオキサン誘導体の反応≫
本発明の光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体(1)は、光分解性の保護基を有するため、光を照射することにより、容易に光分解型の保護基をはずすことができ、式(3)で表されるかご型シルセスキオキサンカルボン酸、かご型シルセスキオキサンアルコール、かご型シルセスキオキサンチオール、かご型シルセスキオキサンスルホン酸、かご型シルセスキオキサンアミン等を得ることができる。
【0059】
【化29】
【0060】
上記式(3)中、R、mは上記式(1)と同様である。Wは−COOH、−SOOH、−NH、−SH、−OH、−O−(CHCHO)CHCOOH、又は−O−(CHCHO)CHSOOHを表し、nは0以上の整数を示す。
【0061】
脱保護反応は、光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体(1)を溶媒に溶解させ、光照射しながら撹拌することにより行うことができる。
【0062】
溶媒としては、ヘキサン、酢酸エチル、エチルアセテート、クロロホルム、テトラヒドロフラン等が挙げられ、この中でも、脱水処理したテトラヒドロフランを用いることが特に好ましい。
【0063】
照射光としては、光分解性の保護基を離脱して官能基を露出することができるものであれば、特に制限されないが、紫外線(10〜400nm)であることが好ましい。より好ましくは、300nm以上の波長を用いる。
【0064】
また、本発明の活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体(2)は、活性エステルの高い反応性を利用して官能基を変換することができる。例えば、アミンと容易に反応してアミドを生成することができる。また、カルボン酸と反応して酸無水物を生成することができる。このように、活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体(2)は、新たな修飾を加え、性能の調整をすることも可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例では、式(1)又は(2)で表される化合物として、下記の化合物(1a)、(1b)、(2a)を製造した。
【0066】
【化30】
【0067】
[合成例1]
<光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体(1)の合成>
【0068】
【化31】
【0069】
ナスフラスコに1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)3.56g(18.6mmol)を加え、テトラヒドロフラン(THF)35mlに溶解させ、10分撹拌し0℃に冷却した。反応混合液に、THF20mlに溶解した4−ペンテン酸(10a)1.46ml(14.6mmol)、4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジルアルコール(9a)2.52g(11.8mmol)、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン(DMAP)1.80g(14.7mmol)を反応混合液に滴下し、滴下終了後室温へと昇温して一晩撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)により原料の消失を確認後、0.03規定の塩酸67mlを加え、ヘキサン50mlで三回抽出した。有機層に硫酸マグネシウムを加えて乾燥、ろ過し、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム)で精製し、黄色固体の4−ペンテン酸 4,5−ジメトキシ―2−ニトロベンジル(11a)を3.46g得た。収率は99%であった。物性値は以下の通りである。
【0070】
IR(KBr disk):2941、2850、1741、1521、1321cm−1
H−NMR(CDCl):δ
2.45(m、2H、CH)、
2.53(t、J=6.9Hz、CH)、
3.97(s、3H、OCH)、
3.99(s、3H、OCH)、
5.02、5.08(d、J=10.0Hz、1H、d、J=17.1Hz、1H、CH)、
5.52(s、2H、CH)、
5.85(dd、J=10.0Hz、J=17.1Hz、1H、=CH)、
7.00(s、1H、Ar)、
7.72(s、1H、Ar);
UV:(0.1mM/EtOH)λmax 337nm、Σ 5400dmmol−1cm−1
【0071】
ナスフラスコに、4−ペンテン酸−4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル(11a)1.00g(3.39mmol)を入れ、2時間真空乾燥した。窒素下でトリクロロシラン1.10g(8.12mmol)を入れ、クロロホルム1mlを加えた。カルステッド触媒を数滴加え5時間磁気撹拌した。反応混合溶液から溶媒と原料を除去し、褐色粘体の(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)5−トリクロロシリルペンタノエート(5Aa)1.41gを得た。収率は95%であった。物性値は以下の通りである。
【0072】
IR(KBr disk):1735、1524、1332cm−1
H−NMR(CDCl):δ
1.43(m、2H、SiCH)、
1.65(m、2H、CH)、
1.80(quin、J=7.3Hz、CH)、
2.46(t、J=7.3Hz、2H、CH)、
3.96(s、3H、OCH)、
3.99(s、3H、OCH)、
5.51(s、2H、CH)、
6.98(s、1H、Ar)、
7.72(s、1H、Ar).
【0073】
30ml二口ナスフラスコにトリシラノールイソブチルシルセスキオキサン(4a)2.10g(2.65mmol)(白色固体)を入れ、2時間真空乾燥を行い、乾燥THF5mlを加えて溶解させた。乾燥THF5mlに溶解した(4,5−ジメトキシー2−ニトロベンジル)5−トリクロロシリルペタノエート(5Aa)1.41g(3.27mmol)(黄色固体)、トリエチルアミン0.88g(8.70mmol)を加え、69時間40分撹拌した。撹拌後、沈殿物をろ過し、ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(カラム径5.5cm、長さ30cm、展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、得られた溶液を濃縮し、黄色固体0.62gを得た。クロロホルム1mlに溶解させ、メタノール20ml中に再沈殿させ、濾別後、4時間真空乾燥を行い、淡黄色固体の(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシカルボニルブチルイソブチルシルセスキオキサン(1a)1.18gを得た。得られた固体はヘキサン、クロロホルム、THFに可溶であるが、メタノール、アセトニトリルには難溶だった。物性値は以下の通りである。
【0074】
元素分析:Calcd for C4281NO18Si:C,45.33;H,7.34;N,1.26%.Found:C,45.39;H,7.33;N,1.21%;
HRMS(ESI):1036.3100,calcd for C377516NSiNa[M+Na]1036.3138.
TG/DTA:重量減少を伴わない吸熱ピーク195℃、分解開始温度215℃、吸熱ピーク277、300、336℃;
IR(KBr disk):1744、1524、1332、1107cm−1
H−NMR(CDCl):δ
0.59〜0.64(m、16H、SiCH)、
0.93〜0.96(q、J=8Hz、42H、CH)、
1.47〜1.54(m、2H、CH)、
1.72(q、J=16Hz、2H、CH)、
1.79〜1.90(m、9H、CH)、
2.42(t、J=8Hz、2H、CH)、
3.97(d、J=8Hz、6H、OCH)、
5.51(s、2H、OCH)、
7.00(s、1H、Ar)、
7.72(s、1H、Ar);
13C−NMR(CDCl):δ11.84、22.45、22.48、22.52、23.86、23.89、25.67、25.70、27.97、33.95、56.40、63.04、127.27、140.08、148.27、153.49、168.53、169.11、172.93;
29Si−NMR(CDCl):δ−67.50、−67.29、−67.14.
【0075】
[合成例2]
<光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体(1)の反応>
【0076】
【化32】
【0077】
500ml石英ビーカーに(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシカルボニルブチルイソブチルシルセスキオキサン(1a)0.28g(0.26mmol)を入れ、THF250mlを加え、溶解させた。超高圧水銀灯を起動させ、光源が安定するまで1時間暖気を行った。水フィルターを用いて光源の波長をλ>300nmとした。照度計を用いて、照度が100mW/cmとなる場所に試料溶液の入った石英ビーカーをセットし、撹拌しながら22時間光照射を行った。光照射終了後、ろ液を濃縮し、その後クロロホルム1.5mlに溶解させ、アセトニトリル50mlに再沈殿させ、褐色の固体として4−カルボキシブチルイソブチルシルセスキオキサン(3a)0.15gを収率62%で得た。得られた固体は、シクロヘキサン、クロロホルム、THFに可溶であるが、メタノール、アセトニトリルには難溶であった。物性値は以下の通りである。
【0078】
HRMS(ESI):939.2954,calcd for C337214SiNa[M+Na]939.2974.
TG/DTA:重量減少を伴わない吸熱ピーク212℃、分解開始温度215℃、吸熱ピーク266、279、286、345℃;
IR(KBr disk):1712、1107cm−1
H−NMR(CDCl):δ
0.59〜0.64(m、16H、SiCH)、
0.95(d、J=8Hz、42H、CH)、
1.46(q、J=16Hz、2H、CH)、
1.68(q、J=12Hz、2H、CH)、
1.80〜1.89(m、7H、CH)、
2.35(t、J=4、8Hz、2H、CH);
13C−NMR(CDCl):δ11.76、22.33、22.47、22.52、23.86、23.89、25.66、25.70、27.58、33.53、178.82;
29Si−NMR(CDCl):δ−67.66、−67.72、−67.86.
【0079】
[合成例3]
<活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体(2)の合成>
【0080】
【化33】
【0081】
窒素雰囲気下、200mlナスフラスコに炭酸N,N’−ジスクシンイミジル8.06g(47.1mmol)、4−ペンテン酸4.74g(46.9mmol)、ジメチルホルムアミド30ml、トリエチルアミン6滴を加え室温で23時間撹拌した。TLCより原料が消失したことを確認後、80℃で溶媒と塩基を減圧留去した。水100ml、2規定の塩酸10mlを加えた後、酢酸エチル100mlで3回抽出した。
有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで3回洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥後、ろ過、濃縮し、3時間真空乾燥して白色の4−ペンテン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(29a)7.11gを収率77%で得た。物性値は以下の通りである。
【0082】
IR:1729cm−1
H−NMR(CDCl):δ
2.49(q、J=7.0Hz、2H、CH)、
2.72(t、J=7.4Hz、2H、CHCO)、
2.84(s、4H、COCH)、
5.11(m、2H、CH=)、
5.85(m、1H、CH).
【0083】
2時間真空乾燥した4−ペンテン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(29a)0.56g(2.84mmol)を窒素雰囲気下、クロロホルム2mlに溶解した。カルステッド触媒4滴を加えた後、1mlのクロロホルムに溶解したトリクロロシラン0.73g(5.39mmol)溶液を加え、室温で5時間撹拌した。未反応のトリクロロシランを減圧留去して、5−トリクロロシリル−ペンタン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(6a)0.88gを白色固体として定量的に得た。物性値は以下の通りである。
【0084】
IR:1738cm−1
H−NMR(CDCl):δ
1.47(t、J=8.0Hz、2H、Si−CH)、
1.72(m、2H、CH)、
1.88(m、2H、CH)、
2.64(t、J=6.0Hz、2H、COCH)、
2.84(s、4H、COCH).
【0085】
二口ナスフラスコにトリシラノールイソブチルシルセスキオキサン(4a)1.61g(2.03mmol)(白色固体)を入れ、2時間真空乾燥を行い、乾燥THF5mlを加えて溶解させた。これにトリエチルアミン0.61g(6.00mmol)を加え、氷浴した。乾燥THF7mlに溶解した5−トリクロロシリル−ペンタン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(6a)0.67g(2.01mmol)(黄色固体)を滴下し、室温に戻して40時間30分撹拌した。撹拌後、沈殿物をろ過し、ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(カラム径5.5cm、長さ30cm、展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、得られた溶液を濃縮し、白色固体として(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)イソブチルシルセスキオキサン(2a)1.13gを得た。得られた固体はヘキサン、クロロホルム、THFに可溶であるが、メタノール、アセトニトリルには難溶だった。物性値を以下の通りである。
【0086】
元素分析:Calcd for C3775NO16Si:C,43.80;H,7.45;N,1.38%.Found:C,43.81;H,7.30;N,1.36%;
HRMS(ESI):1036.3100,calcd for C377516NSiNa[M+Na]1036.3138.
TG/DTA:重量減少を伴わない吸熱ピーク195℃、分解開始温度215℃、吸熱ピーク277、300、336℃;
IR(KBr disk):1818、1789、1466、1368、1333、1745、1100cm−1
H−NMR(CDCl):δ
0.59〜0.66(m、16H、SiCH)、
0.95(d、J=15Hz、42H、CH)、
1.43〜1.55(m、5H、CH)、
1.73〜1.92(m、9H、CH、CH)、
2.59(t、J=10,15Hz、2H、CH)、
2.83(s、4H、COCH);
13C−NMR(CDCl):δ11.69、22.23、22.50、23.88、25.60、25.67、25.71、27.41、30.61、168.53、169.11;
29Si−NMR(CDCl):δ−67.62、−67.85、−67.88.
【0087】
[合成例4]
<活性エステル型かご型シルセスキオキサン誘導体(2)の反応>
【0088】
【化34】
【0089】
20ml二口ナスフラスコに(N−スクシンイミジルオキシカルボニル)イソブチルシルセスキオキサン(2a)0.18g(0.18mmol)を入れ、4−(N,N−ジメチルアミノスルホニル)−7−(2−アミノエチルアミノ)−2,1,3−ベンゾオキサジアゾール51.2mg(0.18mmol)、乾燥THF12mlを加え溶解させた。トリエチルアミンを10滴加え、23時間撹拌した。撹拌後、反応溶液を濃縮し、ジクロロメタンとメタノール混合溶媒に30℃で溶解後、ゆっくり蒸発させ黄緑色固体0.80gを得た。得られた固体はヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFに可溶だった。物性値は以下の通りである。
【0090】
HRMS(ESI):1206.3789,calcd for C438516SiSNa[M+Na]1206.3795.
IR(KBr disk):1649、1464、1102cm−1
H−NMR(CDCl):δ
0.58〜0.63(m、16H、SiCH)、
0.95(d、J=6.6Hz、42H、CH)、
1.44(quin、J=7.8Hz、2H、CH)、
1.69(quin、J=7.6Hz、2H、CH)、
1.79〜1.90(m、7H、CH)、
2.23(t、J=7.8Hz、2H、CH)、
2.86(s、6H、SON(CH)、
3.53(m、2H、CHN)、
3.65(m、2H、CHN)、
5.85(t、J=6.1Hz、1H、NCH)、
6.15(d、J=8.0Hz、1H、Ar)、
6.73(t、J=4.6Hz、1H、NH)、
7.89(d、J=7.9Hz、1H、Ar);
UV:(0.1mM/シクロヘキサン)λmax 413nm、e 11000dmmol−1cm−1
【0091】
[合成例5]
<光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体(1)の合成>
【化35】
【0092】
100mL二口ナスフラスコにo−ジメトキシベンゼン(30)5.36g(38.80mmol)とヨウ素結晶0.186g(0.73mmol)、イソ無水酪酸(31)10.45gを入れ、5時間還流した。その後、水50mLを加え、ジエトキシエーテル50mLで3回抽出した。有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液50mL、飽和食塩水50mLで洗浄し、さらに水50mLで2回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。濃縮液を用いて、カラムクロマトグラフィー(カラム径5.2cm、長さ30cm、展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製を行い、濃縮し、真空乾燥を行い、黄色液体の1−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(7b)5.00g(19.74mmol)を得た。物性は以下の通りである。
【0093】
H−NMR(CDCl):δ
1.21(d、J=6.8Hz、6H、−CH−(C)、
3.55(sep、J=6.8Hz、1H、−C−(CH)、
3.94(s、3H、Ar−OC)、
3.95(s、3H、Ar−OC)、
6.90(d、J=8.4Hz、1H、Ar−)、
7.55(s、1H、Ar−)、
7.61(d、J=8.4Hz、1H、Ar−).
【0094】
氷浴中で200mLナスフラスコに70%硝酸55mLを入れ、そこにパスツールでゆっくり1−(4,5−ジメトキシフェニル)−2−メチルプロパン−オン(7b)2.68g(12.89mmol)を加え、5時間撹拌した。その後、反応溶液を氷浴で冷やしておいた水300mLに入れ、撹拌した。撹拌後の溶液を用いて、クロロホルム60mlで3回抽出を行った。その後、抽出液を5%炭酸水素ナトリウム水溶液50ml、飽和食塩水50ml、水50mlで洗浄し、無水硝酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮を行った。カラムクロマトグラフィー(カラム径4cm、長さ30cm、展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、濃縮、真空乾燥を行い、黄色固体の1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(8b)2.81g(11.10mmol)を得た。物性は以下の通りである。
【0095】
IR(KBr disk):1701,1524,1333cm−1
H−NMR(CDCl):δ
1.21(d、J=7.0Hz、6H、−CH−(C)、
2.91(sep、J=6.9Hz、1H、−C−(CH)、
3.98(s、3H、Ar−OC)、
3.99(s、3H、Ar−OC)、
6.89(s、1H、Ar−)、
7.66(s、1H、Ar−).
【0096】
氷浴中で300mLナスフラスコに1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(8b)2.31g(9.12mmol,KW#119)とTHF21mL、メタノール14mLを入れ、水素化ホウ素ナトリウム0.84g(22.20mmol)を少量加え、室温で1時間撹拌した。濃縮後、濃縮液に水500mL、2規定の塩酸10mLを加え、クロロホルム60mLで3回抽出を行い、無水硝酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過、濃縮、真空乾燥を行い、黄色粘体の1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロパン−1−オール(9b)3.01g(11.79mmol)を得た。物性は以下の通りである。
【0097】
H−NMR(CDCl):δ
0.95(t、J=6.9Hz、6H、−CH−(C)、
1.99〜2.07(m、1H、−C−(CH)、
2.17(d、J=4.4Hz、1H、Ar−CH−O)、
3.95(s、3H、−OCH)、
3.99(s、3H、−OCH)、
5.28(t、J=5.0Hz、1H、Ar−C)、
7.22(s、1H、Ar−)、
7.57(s、1H、Ar−).
【0098】
100mL二口ナスフラスコにEDC・HCl0.946g(4.93mmol,1.8eq.),乾燥THF10mLを入れて、氷浴中で20分間撹拌した。その後1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロパン−1−オール(9b)0.715g(2.80mmol,1.0eq.)、4−ペンテン酸(10a)0.920g(9.20mmol,3.3eq.)、DMAP0.695g(5.69mmol,2.0eq.)を乾燥THF15mlで溶かし、二口ナスフラスコに加えた。反応溶液から氷浴を外し、室温で3時間撹拌した。反応溶液をエバポレーターで濃縮し、水40mL、2規定のHCl10mLを加え、酢酸エチル30mlで4回抽出し、5%炭酸水素ナトリウム50mlで2回洗浄を行った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過、濃縮、真空乾燥を行い黄色粘体1.132gを得た。その後、黄色粘体を用いて、カラムクロマトグラフィー(カラム径4cm、長さ15cm、展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で目的物の単離、濃縮、真空乾燥を行い黄色粘体の1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロピル−4−ペンタノエート(11b)0.890g(2.64mmol)を得た。物性は以下の通りである。
【0099】
IR(KBr disk):1738、1562、1336、1105cm−1
H−NMR(CDCl):δ
0.98(d、J=7.2Hz、6H、−CH−(C)、
2.20(sep、1H、−C−(CH)、
2.37〜2.51(m、4H、C−C−C=O)、
3.94(s、3H、Ar−OC)、
3.95(s、3H、Ar−OC)、
4.98、5.03(d、d、2H、CH=C)、
5.81(dd、1H、C=CH)、
6.34(d、J=6.0Hz、1H、Ar−C)、
7.26(s、1H、Ar−)、
7.59(s、1H、Ar−).
【0100】
30mL二口ナスフラスコに、1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロピル−4−ペンタノエート(11b)1.47g(4.35mmol,1.0eq.)を入れ、真空乾燥を2時間行った。その後、乾燥物を乾燥クロロホルム2mLに溶解した。その後、溶解液に乾燥クロロホルム3mLに溶かしたトリクロロシラン(12a)1.61g(11.8mmol,2.7eq.)、カルステッド触媒をパスツールピペットで数滴加え、3時間30分撹拌した。撹拌終了後、真空ポンプを用いて減圧留去を行い、黄色粘体の1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロピル−5−(トリクロロシリル)ペンタノエート(5Ab)2.00gを得た。1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロピル−5−(トリクロロシリル)ペンタノエート(5Ab)は、加水分解されやすいため、精製せずに次の反応に使用した。物性は以下の通りである。
【0101】
H−NMR(CDCl):δ
1.00(dd、J=6.8,7.0Hz、6H、−CH−(C)、
1.38〜1.42(m、2H、Si−C−CH−)、
1.56〜1.65(m、2H、Si−CH−C−)、
1.75(quin、J=7.4Hz、2H、C−CH−C=O−)、
2.49(sep、1H、−C−(CH)、
3.94(s、3H、Ar−O−C)、
3.95(s、3H、Ar−O−C)、
6.33(d、J=6.0Hz、1H、Ar−C)、
6.88(s、1H、Ar−)、
7.58(s、1H、Ar−).
【0102】
30mL二口ナスフラスコにトリシラノールイソブチルシルセスキオキサン(4a)2.33g(2.94mmol)(白色固体)を入れ、3時間真空乾燥した。乾燥物に、乾燥THF3mL、トリエチルアミン 0.73g(7.14mmol)、1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロピル−5−(トリクロロシリル)ペンタノエート(5Ab)2.00g(4.23mmol)を加え、23時間撹拌した。撹拌後、沈殿物をろ過し、反応溶液を濃縮した。濃縮液をクロロホルム4mLに溶解後、メタノール60mLに沈殿させた。沈殿物を吸引濾過後、真空乾燥して白色固体の1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロピル−オキシカルボニルブチルイソブチルシルセスキオキサン(1b)2.50gを得た。得られた固体はヘキサン、クロロホルム、ジクロロメタン、THFに可溶だった。物性値は以下の通りである。
【0103】
EA:Found C,47.18; H, 7.92; N, 1.32.Calcd for C4587NO18Si C, 46.80; H, 7.59; N, 1.21.
IR(KBr disk):1739、1525、1334、1103cm−1
H−NMR(CDCl):δ
0.60(dd、J=7.0, 2.1Hz、16H、SiCH)、
0.95(dd、J=6.7、2.6Hz、42H、CH)、
1.00(dd、J=7.0、2.6Hz、6H、CH)、
1.44(quin、J=7.6Hz、2H、SiCH)、
1.66(quin、J=7.6Hz、2H、CH)、
1.85(sep、J=6.8Hz、7H、CH)、
2.19(oct、J=6.4Hz、1H,CH)、
2.33(dd、J=8.2Hz、2H、CH)、
3.94(s、3H,OCH)、
3.95(s、3H,OCH)、
6.34(d、J=5.8Hz、1H、ArCH)、
6.89(s、1H,Ar)、
7.59(s、1H、Ar);
13C−NMR(CDCl):δ 11.83、17.38、19.32、22.45、22.49、23.86、23.88、25.67、25.69、28.01、33.34、34.13、56.31、56.27、74.97、107.85、108.88、131.31、140.93、147.87、153.01、172.55;
29Si−NMR(CDCl):δ −67.66、−67.73、−67.85.
【0104】
<光分解型かご型シルセスキオキサン誘導体(1)の反応>
【化36】
【0105】
200mLの石英ビーカーに1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロフェニル)−2−メチルプロピル−オキシカルボニルブチルイソブチルシルセスキオキサン(1b)を0.997gいれ、THF86.3mLを加えてほぼ透明な0.01Mの溶液とした。高圧水銀灯でガラス、水フィルターに通して50mW/cmで約5時間、TLCでエステルのピークがなくなるまで光照射した。溶液を濃縮し、粗成性物1.515gを得た。粗成性物をクロロホルム1.8mLに溶解し、カラムクロマトグラフィー(カラム径4cm、長さ30cm、展開溶媒:ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製した。リンモリブデン酸で染色し一番上にピークがでるフラクションを収集し、濃縮、真空乾燥し、クリーム色がかった白色固体の5,6−ジメトキシ−3a−2−メチルエチル−2,1−ベンゾイソオキサゾール−3(3aH)−オン(33)を0.651gを得た。5,6−ジメトキシ−3a−2−メチルエチル−2,1−ベンゾイソオキサゾール−3(3aH)−オン(33)の収率は、82.7%であった。次にニトロソ化合物である2−メチル−1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロソフェニル)プロパン−1−オン(32)が溶出され、24mg得た。また、これらとは別に、褐色の固体4−カルボキシブチルイソブチルシルセスキオキサン(3a)を得られた。
【0106】
5,6−ジメトキシ−3a−2−メチルエチル−2,1−ベンゾイソオキサゾール−3(3aH)−オン(33)の構造は単結晶解析によって決定した。具体的には、メタノールから乾固した、白色固体の5,6−ジメトキシ−3a−2−メチルエチル−2,1−ベンゾイソオキサゾール−3(3aH)−オン(33)の単結晶X線解析装置にのせ、回折ピークを収集し、解析した。
【0107】
2−メチル−1−(4,5−ジメトキシ−2−ニトロソフェニル)プロパン−1−オン(32)の物性値は以下の通りである。
【0108】
IR(KBr disk):1695、1509cm−1
ESI MS Found 260.0904 Calcd for C1215NONa 260.0899;
H−NMR(CDCl):δ
1.26(d、6H、CH)、
3.56(sep、J=6.7Hz、1H、CH)、
3.89(s、3H、OCH)、
4.06(s、3H、OCH)、
6.23(s、1H、 H6)、
7.11(s、3H、 H3).
【0109】
5,6−ジメトキシ−3a−2−メチルエチル−2,1−ベンゾイソオキサゾール−3(3aH)−オン(33)の物性値は以下の通りである。
【0110】
H−NMR(CDCl):δ
0.96、1.12(d、J=6.8Hz、3H、CH、d、J=6.8Hz、3H、CH)、
1.99(sep、J=6.8Hz、1H、CH)、
3.71(s、3H、OCH)、
3.84(s、3H、OCH)、
5.36(s、1H、H4)、
5.65(s、1H、H7);
13C−NMR(CDCl):δ
16.21(CH、iPr)、17.34(CH、iPr)、40.26(CH、iPr)、55.16(C3a)、55.80(OCH)、55.57(OCH)、88.26(C7)、97.26(C4)、149.92、158.41(C5,C6)、168.44(C7a)、177.11(C3,C=O).