(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周波数掃引されたレーダー波を外部に送信し、外部の測定対象にて反射した反射波を送信波長に基づく一定距離だけ離隔した2点にて検出し、送信波及び受信波から合成される定在波を検知する定在波検知部と、
前記定在波検知部が検知した合成波の強度の周波数分布から、その直流成分を除去し、フーリエ変換して、距離スペクトルを求める距離スペクトル演算部と、
前記距離スペクトルから、基準時の距離スペクトルを減算して、距離スペクトルの差分を演算し、この差分距離スペクトルを経時的に求める差分検出部と、
前記差分距離スペクトルの位相成分の微小変化により呼吸波形を検知し、呼吸波形の上昇により汗を検知する汗検知部と、
を有することを特徴とする定在波レーダーによる状態検知装置。
周波数掃引されたレーダー波を外部に送信し、外部の測定対象にて反射した反射波を送信波長に基づく一定距離だけ離隔した2点にて検出し、送信波及び受信波から合成される定在波を検知する定在波検知部と、
前記定在波検知部が検知した合成波の強度の周波数分布から、その直流成分を除去し、フーリエ変換して、距離スペクトルを一定のサンプリング時間毎に求める距離スペクトル演算部と、
前記距離スペクトルから、前回又は所定回前のサンプリング時の距離スペクトルを減算して、距離スペクトルの差分を演算し、この差分距離スペクトルを経時的に求める差分検出部と、
前記差分距離スペクトルの位相成分の微小変化により呼吸波形を検知し、呼吸波形の上昇により汗を検知する汗検知部と、
を有することを特徴とする定在波レーダーによる状態検知装置。
前記距離スペクトルの位相の変化分から測定対象の微小変位として呼吸数及び/又は脈拍を検知する呼吸等検知部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の定在波レーダーによる状態検知装置。
前記距離スペクトルの位相の変化分から測定対象の睡眠状態を検知する睡眠検知部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の定在波レーダーによる状態検知装置。
透光部を備え少なくとも前記定在波検知部を収納する筐体と、この筐体内に格納され前記透光部を介して光を外部に照射する発光体としてのLED光源と、前記睡眠検知部が検知した睡眠状態の睡眠の深さに応じて前記LED光源の発光色を変更するように制御する制御部とを有することを特徴とする請求項4に記載の定在波レーダーによる状態検知装置。
透光部を備え少なくとも前記定在波検知部を収納する筐体と、この筐体内に格納され前記透光部を介して光を外部に照射する発光体としてのLED光源と、前記呼吸等検知部が検知した呼吸状態の空気を吸い込む吸気と、肺から空気を出す呼気とのタイミングに応じて
前記LED光源の発光強度を変更するように制御する制御部とを有することを特徴とする請求項3に記載の定在波レーダーによる状態検知装置。
前記制御部は、前記汗検知部が汗を検知したときに、前記LED光源の発光色を変更するように制御することを特徴とする請求項5又は6に記載の定在波レーダーによる状態検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る定在波レーダーによる状態検知装置の定在波検知部2を含むセンサ100を示す分解図、
図2はその外観図、
図3はその室内設置態様を示す図である。このセンサ100は、定在波検知部2を格納する筐体101と、筐体101の中に収納されたLED光源110と、同じく筐体101の中に収納され外部との信号の送受を行う通信部111とを有する。そして、筐体101の前面には、蓋102が取り付けられ、定在波検知部2及びLED光源110等を筐体101内に格納するようになっている。
図2(a)及び
図3に示すように、このセンサ100は、室内の壁の上部等に設置され、斜め下方に向けてレーダー波を照射する。また、センサ100から発せられるLED光は、筐体101の後面の透光部を介して、センサ100の後方に照射され、間接照明で、室内を照らすようになっている。通信部111は、定在波検知部2及びLED光源と、外部に設置された距離スペクトル演算部、差分検出部及び汗検知部と、制御部等との間で、無線又は有線で、信号の送受を行う。なお、本実施形態においては、筐体101内に、定在波検知部2、LED光源110及び通信部111が格納されているが、後述する距離スペクトル演算部、差分検出部、及び汗検知部等の状態検知に必要な回路部も、筐体101内に格納することができる。この場合には、外部との信号の送受を行う通信部111を、筐体101内に設置する必要がなくなる。また、センサ100の外観形状は、
図2(b)に示すセンサ105及び
図2(c)に示すセンサ106等のように、LED発光源を使用した照明装置として、室内の調度品と調和する任意の形状にすることができる。
【0016】
定在波検知部2においては、後述するように、周波数掃引されたレーダー波を外部に送信し、測定対象の人120の身体の表面で反射した反射波を検出し、送信波及び受信波から合成される定在波を検知する。この合成波である定在波の強度の周波数分布から、距離スペクトルを求め、距離スペクトルの位相成分から人120の身体の微小変位を求め、距離スペクトルの振幅から測定対象までの距離及び測定対象の誘電率を求める。
【0017】
図4は人120の睡眠状態を示す図である。
図4(a)は、横臥する人120の下に、シートセンサーを敷き、心拍と、呼吸と、体動とを検出し、その時間変化を示す図である。
図4(b)は、レーダー計測により、距離スペクトルの位相成分からもとめた人120の微小変位の時間変化を示す図である。
図4(c)は、睡眠の深さを縦軸にとって睡眠状態の変化を示す図である。レム(REM)睡眠は眼球運動が早く、浅い睡眠であり、ノンレム(non−REM)睡眠は眼球運動が遅いか又は停止しており、深い睡眠である。このレム睡眠においては、心拍及び呼吸は早く、乱れるが、ノンレム睡眠においては、心拍及び呼吸が遅い。そこで、周知のように、
図1(a)に示す心拍及び呼吸の状態から、
図1(c)に示す睡眠の深さを検知することができる。このとき、
図1(b)に示す距離スペクトルの位相変化から微小変位をみると、レム睡眠のときに微小変位が大きく変化し、ノンレム睡眠のときに微小変位の変化が小さいことがわかる。よって、定在波レーダーにより、人120の身体の表面の微小変位を検知することにより、この人120のレム睡眠中か又はノンレム睡眠中かの睡眠状態を検出することができ、この微小変位の状態により、ノンレム睡眠中の睡眠の深さも検出することができる。
【0018】
図5(a)は、上述の距離スペクトルの位相変位の推移を示す図である。そして、
図5(b)はノンレム睡眠時の微小変位の変化が小さいときの一部を拡大して示す図である。更に、
図5(c)は
図5(b)の更に一部を拡大して示す図である。
図5(c)は、人120の胸の皮膚の変位を検知しており、呼吸に伴う胸の上下運動を表している。よって、
図5(c)は呼吸波形ということができ、胸の表面が0.5mmの幅で上下している。そして、この呼吸波形は、その谷の位置及び山の位置が経時的に上昇している。即ち、この部分は、呼吸を繰り返しながら、この呼吸を示す呼吸波形が全体的に上昇していることがわかる。
【0019】
図6(a)は位相変位の時間経過を示す。このように、呼吸波形の例えば谷の位置が経時的に上昇するのは、
図6(b)に示すように、人120の胸の表面に汗が出てきたことにより、身体の表面水位が上がり、レーダー波の反射位置が徐々に上昇し、反射波の位相が変化したからである。また、この位相変位により求まる呼吸波形の例えば谷の位置が経時的に下降するのは、汗が引くことにより、身体の表面水位が下がり、レーダー波の反射位置が徐々に下降したことによる。このように、反射波、即ち定在波の位相の位置がずれることを検知することにより、身体の表面に汗が出てきたこと、又は汗が引いたことを検知することができる。
【0020】
一方、後述するように、距離スペクトルの振幅から、誘電率を測定することができ、この誘電率の測定により、水分を検知することができる。このため、距離スペクトルの振幅の変化をもとに、誘電率の変動を検知し、この誘電率に基づいて、身体の表面にある水分を検知することができる。これにより、例えば、おねしょに基づく水分の現出を検知することができる。
【0021】
このように、汗のような微量な水分は、距離スペクトルの位相変位の変化から検知することができ、おねしょのような比較的大量の水分は、距離スペクトルの振幅から誘電率を測定することにより検知することができる。そして、本実施形態においては、制御部が、これらの検出結果を、LED光源110から発光されるLED光の色の相違として表示する。
図8は、国際照明委員会(CIE)で規定された色度図(CIE1931)である。この色度図の曲線部分がスペクトル軌跡であり、このスペクトル軌跡に沿って表示されている数値は波長(nm)である。また、図中、「×」は、無彩色(白)を示す。
図8中、ポイント(i)は、
図7に示すレム睡眠の場合、ポイント(ii)はノンレム睡眠の第1段階の場合、ポイント(iii)はノンレム睡眠の第2段階、ポイント(iv)はノンレム睡眠の第3段階、ポイント(v)はノンレム睡眠の最も深い第4段階の場合の色である。また、ポイント(vi)は汗が出てきてそれを検知した場合、ポイント(vii)はおねしょが出てそれを検知した場合、ポイント(viii)は呼吸停止の場合の色である。制御部は、定在波検知部2により検知された定在波を基に、後述する距離スペクトル演算部、差分検出部、汗検知部、呼吸等検知部、睡眠検知部及び水分検知部等で、演算した結果、検知された睡眠状態(第1段階〜第4段階)、汗、おねしょ、及び呼吸停止に夫々対応した波長光で、LED光源110からLED光を発光させる。これにより、室内においては、検知された人120の状態に応じて色が異なる発光がなされる。例えば、レム睡眠の場合は緑色光が室内を照らし、第4段階のノンレム睡眠の場合は濃青色光が室内を照らし、汗が出てきた場合には、黄色光が室内を照らし、呼吸停止の場合は赤色光が室内を照らす。
【0022】
また、前述の如く、制御部は、距離スペクトルの位相変位データを基に、睡眠検知部が人120の睡眠状態を検知したときに、この睡眠状態を、LED光源110の異なる発光色の室内間接照明で表示するが、これに限らず、例えば、
図5(c)に示す呼吸波形において、その谷部により示される呼気(肺から空気を出すこと)と、その山部により示される吸気(空気を吸い込むこと)とのタイミングに応じて、LED光源110の発光色を異ならせ、呼気と吸気のタイミングに合わせて、異なる発光色で室内を間接照明することもできる。
【0023】
次に、本実施形態の定在波検知部2,距離スペクトル演算部、差分検出部及び汗検知部の構成について、具体的に説明する。
図9は、本実施形態の定在波レーダーによる水分検出装置のブロック図である。定在波検知部2は、定在波レーダーモジュールとして構成され、この定在波レーダーモジュールには、24GHz高周波送受信部4が設けられている。この24GHz高周波送受信部4は、24GHz帯VCO(電圧制御発振器)と平面アンテナ3とが一体化されたモジュールである。そして、この送受信部4は、VCOにより平面アンテナ3から電波1を発信し、測定対象としての被反射体からの反射波がアンテナ3に検出される。送受信部4には2個の検波器5a、5bが内蔵されており、検波器5a、5bは送信波及び受信波を検波する。
【0024】
アンテナ3から電波1を送信すると、反射物体がある場合は、アンテナ3に反射波が戻ってきて、周波数が同じで進行方向が異なる波が重なり、合成波である定在波が発生する。VCOとアンテナ3とを接続する線路上及びアンテナ給電部には、送信信号(進行波)と受信信号(反射波)が混在し、それらの合成で定在波が発生する。この場合に、VCOに供給するスイープ電圧を、少なくとも発信電波が被反射体に反射して戻ってくるまでの時間は一定に保持する必要があるため、前記スイープ電圧は、ステップ状に変化させる必要がある。そして、VCOを制御して周波数を順次切り替えることにより、複数の周波数に対する混合波の信号レベルが検波器5a、5bにより検出される。検波器5a、5bでは、送信波の電力と、反射波の電力と、定在波によって生じた成分とが検出される。得られた検波信号は、オペアンプ6a、6bで400kHz以下の必要な帯域が増幅されて、信号処理部8に入力される。
【0025】
レーダー制御モジュール基板として構成された信号処理部8は、変調信号生成部10にてFM変調された周波数制御電圧を生成する。この周波数制御電圧はDA変換部9にてアナログ信号に変換され、更に、この周波数制御信号がオペアンプ7を介して増幅された後、24GHz高周波モジュール4のVCOの制御入力に入力される。この周波数制御信号により、VCOは発信電波の周波数をスイープさせる。
【0026】
信号処理部8においては、オペアンプ6a、6bで増幅された検波信号がAD変換部11に入力された後、距離スペクトル演算部12に入力される。この距離スペクトル演算部12は、定在波検知部2が検知した合成波の周波数の強度分布から、その直流成分を除去し、フーリエ変換して、距離スペクトルを求める。この距離スペクトルは、差分検出部13に入力される。差分検出部13は、前記距離スペクトルから、基準時の距離スペクトルを減算して、距離スペクトルの差分を演算し、この差分距離スペクトルを経時的に求める。この差分距離スペクトルは、距離演算部14に入力される。そして、距離演算部14は、前記差分距離スペクトルの距離成分により測定対象までの距離を求める。そして、判定部15は、差分距離スペクトルの振幅が、測定対象の誘電率の変化に基づいて変化する経緯を監視し、その振幅の変化に基づいて、測定対象における人の汗の変化を検知する検知部と、この検知部が検知した汗の変化に基づいて、人の周囲の空調状態を制御する制御部とを備えている。
【0027】
信号処理部8においては、検波信号が、AD変換部11によりデジタル信号に変換された後、距離スペクトル演算部12に入力される。距離スペクトル演算部12においては、入力される信号は周期関数で、その周期は被反射体からの距離に逆比例しているので、これをフーリエ変換することにより、周期の逆数である周波数を求めることによって、この周波数から被反射体までの距離を求めることができる。また、得られた波形の位相を基に、被反射体の微小変位情報を検出することができる。例えば、24GHzの場合は、微小変位は光速を4πfで除算した値となり、約±3.125mmの範囲の変位を検出することができる。このように、検波器5a、5bから検出された信号を信号処理することにより、被反射体からの距離、被反射体の速度及び変位を演算し、その経時変化を計測することにより、被反射体の状態を検出することができる。
【0028】
判定部15では、測定対象の人の汗の変化を検知し、この汗の変化に基づいて人の周囲の空調状態を制御する。この制御信号は、有線又は無線で、外部に出力される。
【0029】
次に、信号処理部8の構成について更に詳細に説明する。定在波は、
図11に示すように,信号源であるVCOから生成した送信波VTと、各ターゲットからの反射波VR1,VR2,VR3、・・・VRnとの干渉によって生じる。定在波レーダーは、この定在波を利用することによって、測定対象の人の汗の変化を検知すると共に、各測定対象までの距離d1,d2,d3・・・dnを測定する。
【0030】
送信波(進行波)は、信号源の振幅をA、周波数をf(t)、光速をc(3×10
8m/s)とすると、下記数式1で表される。但し、周波数f(t)は、
図12に示すように、f0とfdで表される。
【0032】
k番目のターゲットの距離をdk、x軸上の任意の点における送信波に対する反射波の大きさの比をγk(反射係数の大きさ)、位相差をφk(反射係数の位相)とすれば、そのターゲットからの反射波は下記数式2にて表すことができる。
【0034】
アンテナから検出される検波出力は、合成波になるので、振幅Vcは下記数式3で表され、パワーは振幅の2乗であるので、合成波のパワーは、下記数式4で表される。
【0037】
送信波の大きさは、反射波の大きさより桁違いに大きいので、γkは1より極めて小さい。そこで、数式4に数式1及び数式2を代入して近似値をとると、下記数式5が得られる。
【0039】
この数式5において、{}内の第1項は、送信波のパワーを示し、第2項は、反射波のパワーを示し、第3項は、定在波によるパワーの変化分を示す。従来のレーダーは、第2項の反射波を受信して、信号処理を行うが、本発明においては、第3項の信号を信号処理する。このため、第1項目と第2項目を削除するため、合成波パワーp(fd、xs)をfdで微分して、この第1項目及び第2項目を除去する。
【0040】
ここで、ターゲット(被反射体)の数が1であるとすると、n=1を数式5に代入して、下記数式6が得られる。この数式6をグラフ化すると、
図13のようになる。即ち、合成波のパワーは、固定値1+γ
2と、周期関数との和となる。この
図13において、周期関数の周波数(周期の逆数)はc/2dとなり、距離dの成分が入る。このため、周期から周波数を求めれば、距離dが求まることになる。数式6から、直流成分1+γ
2を除去して、フーリエ変換すると、
図14に示すように、距離スペクトルP(x)が求まる。
【0042】
先ず、下記数式7に示すフーリエ変換公式に対し、変数の置き換えをし、更に、観測位置を原点として、フーリエ変換すると、下記数式8に示す距離スペクトルが得られる。但し、Sa(z)=sin(z)/zとする。なお、数式8では、直流分がカットされていない。周期のある関数をフーリエ展開すると、その関数に含まれる直流成分と、振動成分(sin、cos)に分解されてしまう。距離スペクトルは、その公式上、下記数式8のように表示される。
【0045】
なお、数式8のA
2f
w(1+Σγ
k2)Sa(2πf
w/c)x)は、直流成分であるが、この直流成分は、実際の回路において、コンデンサにより除去される。
【0046】
この数式8の最後の式で表される距離スペクトルP(x)をグラフ図でみると、
図15に示すようになる。そして、数式8の{}内の第1項目の直流分を除去し、第3項目をcos成分を複素正弦波(解析信号)に変換して除去し、定在波成分である第2項目の成分を抽出することができる。しかし、
図15に破線にて示すように、数式8の{}内の第2項目の成分には、虚数側の信号が漏れ込んでしまう。つまり、この部分の定在波成分には、虚数側の信号が漏れ込んだ値になってしまう。
【0047】
このような問題点を解消するためには、例えば、
図16に示すように、送信波とその反射波を合成した信号を検出する際に、送信波の波長をλとして、λ/8だけ離隔した2点にて、信号レベルを検出するように構成することができる。つまり、レーダーの進行方向をx軸にとった場合に、被反射体であるn個(nは自然数、図示は2個のみ)のターゲットからの反射波をアンテナが受信し、これを送信波と共に、x軸方向にλ/8だけ離隔した2個のパワーディテクタで検出し、これを信号処理する。このとき、この2個のディテクタが検出したパワーレベルをp(f
d,x
1)、p(f
d,x
2)とすると、x
1=0の位置に置かれたディテクタの出力は、検出パワーを示す数式5に、x
1=x
s=0を代入して、下記数式9に示すp(f
d、0)として求まり、x
1=−λ/8の位置に置かれたディテクタの出力は、検出パワーを示す数式5に、x
2=x
s=−λ/8を代入して、下記数式9に示すp(f
d、−λ/8)として求まる。この数式9に示すように、λ/8だけ離隔した2点で定在波を検出することにより、各位置(0,−λ/8)に置かれたディテクタの出力の定在波成分に、cosとsinの直交成分が得られ、これにより、虚像信号を消去することができ、虚像側から漏れ込む信号の影響を解消することができる。即ち、cosとsinの直交成分(X軸成分とY軸成分)から合成されるベクトルが求める解析信号である。通常、虚軸側の信号は測定できないのであるが、−λ/8の位置に、虚軸側の信号が計測できることになり、ベクトル合成信号を形成できる。このベクトルの回転速度が周波数になるので、本実施形態では、この周波数と位相を解析することになる。
【0049】
この数式9におけるx
s=0の位置のディテクタの出力のうちの定在波成分をa、x
s=−λ/8の位置のディテクタの出力のうちの定在波成分をbとすると、a、bは下記数式10にて表される。そして、数式8の3項からなる最後の式を下記数式11に基づいて置き換えをすると、下記数式12及び数式13が得られる。即ち、数式10が求めるX軸、Y軸(実信号、虚軸信号)を実信号に変換された形に置き換えることが可能になる。数式13は、まさに、時間方向の信号と、回転軸での信号を表現しているが、結局、この数式13により、回転する解析信号を計算できることがわかる。
【0054】
数式12の右辺のP
DCは直流成分であり、m(f
d)cos(θ(f
d)−4π(f
0+f
d)/c・x
s)は周期的に変化する定在波成分である。この定在波成分は、前述のごとく、x
s=0の位置の成分aと、x
s=−λ/8の位置の成分bとの合成成分a+jbは、sinとcosとの直交成分となり、aとbとから解析信号を合成することにより、不要の信号(
図15に示す虚数側から漏れ込んだ信号)による影響が除去される。よって、この値(数式13の信号)を解析することにより、
図17に示す目的の成分p
a(f
d,0)が得られる。
【0055】
而して、数式13の解析信号において、反射係数γkの大きさに依存して、検出される信号強度が変化する。換言すれば、解析信号の信号強度の時間的推移を測定すれば、強度の変化が生じた場合に、その要因の一つとして、反射係数γkの変化があったことを挙げることができる。即ち、周波数分布の各周波数のγk(反射係数の大きさ)が変化することで生じる信号強度の変化が、測定対象の状態の変化を示している。
【0056】
誘電率が異なる2物質の境界面での反射係数γは、その誘電率を、ε1、ε2とすると、下記数式14にて表される。
【0058】
このように、境界面での反射強度は、境界面を形成している各媒体が有する固有の比誘電率の差によって決定され、反射波形の極性も比誘電率の大小関係により決まる。よって、電波の反射強度は、反射係数γの大きさにより異なり、反射係数γは、誘電率により異なるため、反射面の物質の変化により、反射強度が変化する。例えば、水は誘電率が高く、電波の反射強度が大であるため、皮膚からの反射との識別が可能であり、また反射強度の変化により水膜の形成状況が分かるため、薄く濡れた状態と厚い水膜が形成された状態の区別が可能である。
【0059】
誘電率(比誘電率)は、例えば、水が4.2、絹が1.3〜2、空気が1.00、塩が3.0〜15.0、水が80、木綿が3〜7.5、雪が3.3、ガラスが3.7〜10.0である。水は誘電率が高く、電波の反射強度が大であるため、水分を含むアスファルト又はコンクリートと、乾燥状態のアスファルト又はコンクリートとの判別が可能であり、また反射強度の変化により水膜の形成状況が判別できるため、薄く濡れた状態と厚い水膜が形成された状態の区別が可能である。従って、道路上の雨の観測の場合には、その反射強度の変化を監視することにより、路面状態について、「乾燥」、「湿潤」、「冠水」のいずれであるかを判定することが可能である。そして、計測箇所が濡れ始めた状態(浸水前、雨の降り始め)で、リセットして、その後監視記録することが可能であり、しかも濡れはじめの状態で零点調整(オフセット調整)を自動的に行えば、定期的な調整の必要がなくなる。
【0060】
なお、電波センサは微弱電波を使用しているため、無線局の申請は不要である。また、定在波レーダーの場合は、衣服及び布団を通して、衣服に包まれた人体にて直接反射するので、人体の表面の湿潤の状況を、布団がかけられていても、人体の湿潤の状況を検知することができる。
【0061】
上述のごとく、距離スペクトル演算部12が求めた距離スペクトルの振幅の強度の変化により、測定対象の湿潤の状況の変化を検知することができるが、この距離スペクトルには、水分変化がない物体からの反射波に起因する定在波の距離スペクトルが含まれている。そこで、差分検出部13は、測定された距離スペクトルから、基準時の距離スペクトルを削除して、差分距離スペクトルを演算する。
図18(a)は、距離スペクトル演算部12が求めた距離スペクトルP(x)を示す。この測定結果には、水分を含む測定対象は存在せず、環境からの反射波に起因するものが求められている。そこで、特定の基準時に得られた距離スペクトルをP
0(x)として、以後の各サンプリング時点に得られた距離スペクトルP(x)から、基準時の距離スペクトルP
0(x)を減算する。即ち、各サンプリング時点で得られた距離スペクトルP(x)に対し、
図18(b)に示す−P
0(x)を加算する。このため、差分検出部13からは、水分を含む測定対象がない場合は、
図18(c)に示すように、0信号が得られる。そこで、あるサンプリング時点で、測定対象に水分が含まれた場合には、
図18(d)に示すように、その水分の距離スペクトルの振幅が現れる。このサンプリング時点の距離スペクトルに対しても、
図18(b)の基準スペクトル−P
0(x)を加算すると、
図18(e)に示すように、P(x)−P
0(x)の距離スペクトルが得られ、この距離スペクトルには、水分に起因するピーク強度の振幅のみが現れる。このようにして、差分検出部13にて、距離スペクトルの差分をとることにより、測定対象の環境からの反射の影響を低減して、水分の変化に起因する距離スペクトルの振幅の強度を求めることができる。
【0062】
なお、測定対象が2個の場合の距離スペクトルは、
図19に示すように、x
s=0のパワーp(f
d、0)とx
s=−λ/8のパワーp(f
d,−λ/8)との合成波から直流分を除去して、フーリエ変換することにより、距離に対応する周波数が得られ、距離d
1,d
2が求まる。
【0063】
図20は合成波の真数のスペクトルと、虚数のスペクトルを示す図である。電波の速度cは、約30万km/秒である。発信波の周波数のスイープを、75MHz幅(fw)で行った場合、この75MHzの波長は、c/fw=4mである。しかし、波形を標本化するためのスイープは、往復で4mのため、行きはその半分の2mとなる。この2mを1周期と呼ぶ。そこで、スイープ幅75MHzで20mを計測した場合、10周期を計測することになる。スイープ時間が256μsであるとすると、観測する波形の周波数は、10/256μs=39kHzとなる。同様に、200mを計測した場合、100周期であるので、100/256μs=390kHzとなる。そして、
図20に示す検出されたスペクトルの周波数のレベルは反射の強さを示し、周波数は距離に置き換えられる。よって、
図19に示すように、フーリエ変換して39kHzのところにピークが現れると、それは、距離d
1=10mの位置からの反射波であることがわかり、390kHzのところにピークが現れると、それは、距離d
2=100mの位置からの反射波であることがわかる。このようにして、ディテクタの合成波の検出パワーpa(fd)を微分して直流成分を除去し、フーリエ変換すると、測定対象までの距離を求めることができる。
【0064】
スイープ幅が200MHzの場合、1周期が0.75mになるので、10mの計測は10/0.75=13.3周期を観測することになり、スイープ時間が256μsである場合は、13.3/256=51.9kHzとなる。つまり、スイープ幅が200MHzの場合は、51.9kHzにピークが現れた場合に、被反射体までの距離が10mと観測される。従って、スイープ幅を調整し、スイープ時間を調整することにより、検波出力の周波数を調整することができ、電波法の規制により帯域幅が制限されているので、一般的には、スイープ時間を可変とすることにより、被反射体までの距離を測定する。
【0065】
次に、微小変位計測について説明する。数式8において、位相に着目すると、k番目のターゲットに対する位相Ψkは、下記数式15の第1式のsinの角度として求まり、φ
kは初期位相であるから変化分では消えるので、距離d
kの変化分をΔd
k、位相の変化分をΔΨ
kとすると、数式14の第2式が得られ、これを変形して、下記数式16が得られる。
【0068】
この数式16から、距離dの微小変位が求まる。周波数が24GHzの場合は、±3.125mmの変位を検知することが可能となる。
【0069】
以上のように、被反射体からの反射波を送信波に合成した定在波の分析により、被反射体の距離及び微小変位を計測することができる。この計測結果を経時的に把握すれば、被反射体の距離、速度及び変位を計測することができ、結局、被反射体の動きを計測できる。従来のレーダーであると、1〜2m以下は距離の測定が困難であったのに対し、本発明により、0mに近い至近距離から、200mの遠距離迄、距離の測定が可能である。また、本発明の場合は、微小変位の検知が可能であり、相対変位分解能は0.01mmにも及ぶ。しかも、定在波レーダーの場合は、衣服及びカーテン等を通して、測定対象の水分を検知することができ、測定対象との間の距離の微小な変動を検知することができる。
【0070】
なお、前述の如く、本発明は、数式13で示す距離スペクトルのピーク強度が、反射係数γkの大きさに依存して変化し、測定対象にて水分が増大すると、水分の誘電率εが高いため、数式14で示す反射係数γkが上昇し、距離スペクトルのピーク強度が上昇することにより、水分を検知することを測定原理とする。このように、ピーク強度を見ているので、測定対象が複数ある場合でも、水分の検知は容易である。しかし、この測定対象が多数となり、しかも、各測定対象の相互間の間隔が短いと、例えば,
図19に示す複数個(図示例は2個)の距離スペクトルが相互に重なりあい、各距離スペクトルを分離できなくなる可能性がある。この場合、各測定対象について、上述の微小変位の測定に必要な位相差を求めることができなくなる。このような場合は、2個の距離スペクトルに対し、帯域通過フィルタをかけて、分離することができる。
【0071】
図10は、この場合の実施形態を示すブロック図である。差分検出部13から出力された差分距離スペクトルは、この帯域通過フィルタ16に入力される。この帯域通過フィルタ16は、差分検出部13の差分距離スペクトルからその複数のピーク位置に対応する中心周波数の中間の周波数にて最小ゲインとなる信号を出力するノッチ型の帯域通過フィルタである。この帯域通過フィルタ16から出力された差分距離スペクトルは、ピーク位置間で分離された複数個の差分距離スペクトルとなる。これら各差分距離スペクトルは、距離演算部14に入力され、位相差から、微小変位を求めることが可能となる。
【0072】
次に、本発明の実施形態に係る定在波レーダーによる状態検知装置の動作について説明する。先ず、本発明の定在波レーダーによる状態検知装置の定在波検知部2及びLED光源110を組み込んだセンサ100を、室内の壁の上部に、その送信波の送信方向を斜め下方に向けて設置する。そして、定在波検知部2により、送信波と受信波との合成波である定在波を検知する。この定在波の検出信号は、AD変換部11を介して、距離スペクトル演算部12に入力され、距離スペクトルが演算される。そして、この距離スペクトルから、差分検出部13にて、差分距離スペクトルが求められる。距離演算部14は、この差分距離スペクトルから、前述の如くして、センサと測定対象との間の距離を演算する。その結果、この差分距離スペクトルのピーク位置は、
図18(d)に示すように、センサと、測定対象との間の距離(例えば、2.5m)であることがわかる。そして、判定部15は、この2.5mの位置にピーク位置をもつ差分距離スペクトルについて、そのピーク強度の経時変化を監視する。そうすると、判定部15は、このピーク強度が上昇した場合は、測定対象の水分量変化により、誘電率が変化し、反射強度が増大したことに起因するものであることを検知することができ、このピーク強度が増大した時点を、水分量が増大した時点であると判定することができる。なお、レーダーによる反射波と送信波との定在波により、水分を検出するので、レーダーは衣服を透過するため、衣服に包まれた身体上の水分及び身体内の異物も検知することができる。
【0073】
また、測定対象が距離d1及び距離d2にある場合、これらの測定対象に対し、センサからレーダー波が照射され、センサにて、測定対象(d1,d2)からの反射波が検出される。そして、差分検出部13は、距離d1の距離スペクトルに対し、ある特定の時点の距離スペクトルを基準時の距離スペクトルとし、一定のサンプリング時点毎に、得られた距離スペクトル(
図18(a))から、基準時の距離スペクトル(
図18(b))を減算し、差分距離スペクトル(
図18(c))を演算する。その結果、基準時の距離スペクトルP0(x)からの変化がなければ、各サンプリング時点毎に得られた差分距離スペクトルは、
図18(c)に示すように、0となる。そして、
図18(d)に示すように、測定対象に水分が存在する場合は、その水分に起因するスペクトルを含む距離スペクトルP(x)が得られる。その結果、
図18(e)に示すように、差分距離スペクトルP(x)−P0(x)には、水分に起因する距離スペクトルのみが出現する。従って、判定部15は、この差分距離スペクトルを監視し、差分距離スペクトルが0になった時点を乾燥完了時点と判断することができる。このようにして、測定対象の水分の状態を、個別に検知することができる。
【0074】
誘電率は、衣類の繊維を構成するポリエチレンが2.3、木綿が3.0、水が80と、衣類は水との誘電率差が大きいので、距離スペクトルのピーク強度が各衣類の湿潤状態で異なるため、測定対象の水分状態を検知することができる。そして、本実施形態においては、定在波により距離計測が可能であるため、距離が異なる複数の測定対象の水分状態を夫々個別に計測することが可能である。このようにして、ベッド上に横臥した人120がおねしょした場合に,それを検知することができ、迅速に衣服を取り替えることができる。
【0075】
更に、本実施形態においては、差分検出器13が検出した差分距離スペクトルの位相変位から、人120の身体の表面の微小変位を検知することができる。この位相変位から検出される人120の微小変位により、
図5及び
図6に示す呼吸波形が得られ、
図4に示すように、人120の呼吸数を検知し、この呼吸数の変動の大きさから、睡眠状態がレム睡眠(呼吸が速い、浅い睡眠)であるか、又はノンレム睡眠(呼吸が遅い、深い睡眠)であるかを検知することができ、更に、睡眠状態の深さの段階(第1段階〜第4段階)を検知することができる。また、
図5及び
図6に示すように、ノンレム睡眠時に、呼吸波形の谷部が徐々に上昇することを検知した場合に、これを人120から汗が出てきたと判定することができる。つまり、人120から汗が出てきた場合に、レーダー波の反射位置が徐々に上昇し、呼吸に起因する人120の身体の表面の上下動の基準となる位置が連続的に上昇する。例えば、
図5(c)に示す期間において、呼吸波形の基準位置(波形の谷部、山部又は中心位置)が約0.5mm上昇するが、この上昇変化分Δdが汗に起因するといえる。また、
図6(a)に示すように、この呼吸波形の基準位置が徐々に下降している期間は、この期間に人120の身体から汗が引いたことがわかる。このようにして、位相変位の変化により、呼吸数に基づく睡眠状態と、呼吸波形の全体的なかつ緩やかな上昇又は下降による汗の状態とを検知することができる。
【0076】
そして、本実施形態においては、睡眠状態、汗の検知、おねしょの検知又は呼吸停止等の人120の状態を検知したときに、その状態を、LED光源110からの発光色を変更することにより、室内の間接照明光の変更として、表示することができる。
【解決手段】定在波検知部は、周波数掃引されたレーダー波を外部に送信し、外部の測定対象の人にて反射した反射波を送信波長に基づく一定距離だけ離隔した2点にて検出し、送信波及び受信波から合成される定在波を検知する。そして、距離スペクトル演算部は、前記定在波の強度の周波数分布から、距離スペクトルを求め、差分検出部が、前記距離スペクトルから、基準時の距離スペクトルを減算して、差分距離スペクトルを求める。汗検知部は、得られた差分距離スペクトルの位相成分の微小変化により呼吸波形を検知し、呼吸波形の谷部又は山部の経時的な上昇により、発汗を検知する。