特許第6202461号(P6202461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6202461
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電流測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/22 20060101AFI20170914BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   G01R1/22 A
   G01R15/20 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-42140(P2017-42140)
(22)【出願日】2017年3月6日
【審査請求日】2017年3月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】503086396
【氏名又は名称】株式会社シーブイエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 洋一
【審査官】 名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−233470(JP,A)
【文献】 特開2004−325273(JP,A)
【文献】 特開2012−185176(JP,A)
【文献】 特開2014−238386(JP,A)
【文献】 実開昭50−086163(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0316523(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/22
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定導体を挟むよう設けられた1対の挟持部と、
各挟持部のいずれか一方または双方に設けられた電流測定用磁電変換素子と、
各挟持部の距離に対応する物理量を測定可能に設けられた距離測定部と、
各挟持部で前記被測定導体を挟んだとき、前記電流測定用磁電変換素子で検出された磁界および前記距離測定部で測定された前記物理量に基づいて、前記被測定導体を流れる電流を求めるよう設けられた電流計算手段とを
有することを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
互いの距離に応じて、各挟持部の距離を変更可能に設けられた1対の把持部を有し、
各挟持部は閉まる方向に付勢されており、
前記距離測定部は、前記物理量として、各把持部の距離に対応する物理量を測定可能に設けられていることを
特徴とする請求項1記載の電流測定装置。
【請求項3】
前記距離測定部は、一方の把持部に設けられた磁石と、前記磁石による磁界を検出可能に他方の把持部に設けられた距離測定用磁電変換素子とを、有することを特徴とする請求項2記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記電流計算手段は、前記電流測定用磁電変換素子で検出された磁界に基づいて求めた電流値を、前記距離測定部で測定された前記物理量に基づいて求めた補正値で補正することにより、前記被測定導体を流れる電流を求めるよう構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体を流れる電流を非接触で測定する装置として、C型の磁気コアと、磁気コアの開口部に挟むようにして配置されたホール素子などの磁電変換素子とを有し、磁気コアの内側に配置された被測定導体を流れる電流により発生する磁界を磁気コアで捕捉し、磁界コアの端面での磁界強度を磁電変換素子で検出して測定を行うクランプ式の電流センサがある(例えば、特許文献1または2参照)。
【0003】
また、C型の磁気コアの開口部をオープンにした状態で、その開口部の両端面にそれぞれ磁電変換素子を取り付けて構成されており、開口部を通して磁気コアの内側に被測定導体を挿入して測定を行うU字型の電流センサもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−122150号公報
【特許文献2】特開2000−180475号公報
【特許文献3】特開2002−5967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複雑な配線が配線ダクト内に収納された配電盤等において、各配線の電流測定を行う場合、特許文献1や2に記載のクランプ式電流センサでは、測定する配線(被測定導体)をダクト内から探し出した後、磁気コアの内側に配置するために、その配線をある程度引っ張り出す必要があり、各配線の測定作業が繁雑になるという課題があった。また、特許文献3に記載のU字型電流センサでは、所定の精度で電流を測定するために、磁気コアの内側の最奥部に配線を押し付けなければならず、やはり測定する配線(被測定導体)をある程度引っ張り出す必要があり、各配線の測定作業が繁雑になるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、配線ダクト等から被測定導体を引っ張り出す作業を軽減または不要とすることができ、電流の測定作業を容易に進めることができる電流測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る電流測定装置は、被測定導体を挟むよう設けられた1対の挟持部と、各挟持部のいずれか一方または双方に設けられた電流測定用磁電変換素子と、各挟持部の距離に対応する物理量を測定可能に設けられた距離測定部と、各挟持部で前記被測定導体を挟んだとき、前記電流測定用磁電変換素子で検出された磁界および前記距離測定部で測定された前記物理量に基づいて、前記被測定導体を流れる電流を求めるよう設けられた電流計算手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電流測定装置は、各挟持部で被測定導体を挟むことにより、被測定導体を流れる電流を測定することができる。本発明に係る電流測定装置は、各挟持部で被測定導体を挟んだとき、各挟持部のいずれか一方または双方に設けられた電流測定用磁電変換素子により、被測定導体を流れる電流により発生する磁界を検出することができる。しかし、通常の測定対象となる電線のように被覆された被測定導体では、導体の太さや被覆の厚みが異なるため、その導体の太さや被覆の厚みに応じて、被測定導体と電流測定用磁電変換素子との距離が変化する。この距離の変化のため、検出される磁界の強さが変化してしまう。そこで、本発明に係る電流測定装置は、被測定導体と電流測定用磁電変換素子との距離は、各挟持部の距離と相関があると考えられるため、距離測定部により各挟持部の距離に対応する物理量を測定し、その物理量に基づいて、電流計算手段により、電流測定用磁電変換素子で検出した磁界から求められる電流値等を補正することにより、被測定導体を流れる電流を精度良く求めることができる。
【0009】
本発明に係る電流測定装置は、各挟持部で被測定導体を挟むだけで、被測定導体を流れる電流を測定することができる。このため、例えば、配電盤の配線ダクト等に収納された各配線の電流を測定する場合であっても、従来のクランプ式電流センサやU字型電流センサを使用するときほど、配線ダクト等から配線を引っ張り出す必要がない。このように、本発明に係る電流測定装置は、配線ダクト等から被測定導体を引っ張り出す作業を軽減または不要とすることができ、電流の測定作業を容易に進めることができる。また、被測定導体を引っ張り出すためのスペースを確保する必要もない。
【0010】
本発明に係る電流測定装置で、電流測定用磁電変換素子は、例えば、ホール素子から成る。また、電流測定用磁電変換素子は、各挟持部のいずれか一方に設けられていてもよいが、被測定導体に隣接する導体を流れる電流の影響を抑制するためには、双方の挟持部に設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る電流測定装置は、互いの距離に応じて、各挟持部の距離を変更可能に設けられた1対の把持部を有し、各挟持部は閉まる方向に付勢されており、前記距離測定部は、前記物理量として、各把持部の距離に対応する物理量を測定可能に設けられていることが好ましい。この場合、各把持部の距離と各挟持部の距離との間に相関があるため、各挟持部の距離に対応する物理量として、各把持部の距離に対応する物理量を測定することができる。各把持部の距離に対応する物理量を測定することにより、その測定が各挟持部での電流測定に悪影響を及ぼすのを防ぐことができる。各挟持部が閉まる方向に付勢されているため、測定時に各挟持部で被測定導体をしっかりと挟むことができる。各挟持部および各把持部は、例えば、先端部で対象物を挟むように構成された挟持用のクリップの、それぞれ先端部および操作部から成っていてもよい。
【0012】
本発明に係る電流測定装置で、距離測定部は、各挟持部または各把持部の距離に対応する物理量を測定可能であれば、いかなる構成から成っていてもよい。距離測定部は、例えば、一方の把持部に設けられた磁石と、前記磁石による磁界を検出可能に他方の把持部に設けられた距離測定用磁電変換素子とを有していてもよく、歯車にポテンショメータを連結した機械方式のものから成っていてもよい。磁石と距離測定用磁電変換素子とを有する構成の場合、特に簡単な構成で、容易に各把持部の距離に対応する物理量を測定することができる。また、磁石が把持部に設けられているため、その磁石の磁界が挟持部に設けられた電流測定用磁電変換素子に与える影響をほとんど無視することができる。
【0013】
本発明に係る電流測定装置で、前記電流計算手段は、例えば、前記電流測定用磁電変換素子で検出された磁界に基づいて求めた電流値を、前記距離測定部で測定された前記物理量に基づいて求めた補正値で補正することにより、前記被測定導体を流れる電流を求めるよう構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、配線ダクト等から被測定導体を引っ張り出す作業を軽減または不要とすることができ、電流の測定作業を容易に進めることができる電流測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態の電流測定装置を示す(a)斜視図、(b)測定クリップの内部構造を透視した側面図である。
図2図1に示す電流測定装置の、各電流測定用磁電変換素子の測定時の使用状態を示す(a)正面図、(b)側面図である。
図3図1に示す電流測定装置の、距離測定部による補正の効果を調べる試験の試験装置の構成を示すブロック図である。
図4図3に示す試験装置の、増幅器(Amp)の回路図である。
図5図3に示す試験装置による試験で求められた、通電電流と測定クリップで測定された電流信号電圧との関係を示すグラフである。
図6図3に示す試験装置による試験で求められた、補正前の誤差と距離測定部で測定された各被測定導体のサイズ補正信号電圧との関係を示すグラフである。
図7図3に示す試験装置による試験で求められた、補正後の誤差と通電電流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図7は、本発明の実施の形態の電流測定装置10を示している。
図1に示すように、電流測定装置10は、測定クリップ11と1対の電流測定用磁電変換素子12と距離測定部13とケーシング14と電流計算手段15とを有している。
【0017】
測定クリップ11は、先端側に1対の挟持部11aを有し、後端側に1対の把持部11bを有し、各挟持部11aの間に被測定導体を挟むように構成された挟持用のクリップから成っている。測定クリップ11は、ねじりコイルばね11cにより、各把持部11bが開く方向に付勢されており、これにより各挟持部11aが閉まる方向に付勢されている。測定クリップ11は、各把持部11bを摘んで、ねじりコイルばね11cの付勢力に抗して閉じる方向に動かすことにより、各挟持部11aが開くようになっている。測定クリップ11は、各把持部11bの距離に応じて、各挟持部11aの距離を変更可能になっている。
【0018】
各電流測定用磁電変換素子12は、ホール素子から成り、それぞれ各挟持部11aの先端に取り付けられている。図2に示すように、各電流測定用磁電変換素子12は、各挟持部11aの先端間に被測定導体1を挟んだとき、被測定導体1を流れる電流により発生する磁界を検出可能になっている。
【0019】
図1(b)に示すように、距離測定部13は、一方の把持部11bに設けられた永久磁石13aと、他方の把持部11bに設けられた距離測定用磁電変換素子13bとを有している。永久磁石13aおよび距離測定用磁電変換素子13bは、それぞれの把持部11bの内側の互いに対向する位置に取り付けられている。距離測定用磁電変換素子13bは、ホール素子から成り、永久磁石13aによる磁界を検出可能に設けられている。距離測定部13は、各把持部11bの距離が変化したとき、永久磁石13aとの距離の変化を距離測定用磁電変換素子13bで検出することにより、各把持部11bの距離に対応する物理量、すなわち、それと相関する各挟持部11aの距離に対応する物理量を測定可能になっている。
【0020】
図1に示すように、ケーシング14は、細長い矩形状の箱体から成り、一端部が測定クリップ11の後端側に取り付けられている。電流測定装置10は、ケーシング14を握った状態で、測定クリップ11の各把持部11bを操作可能に構成されている。
【0021】
電流計算手段15は、コンピュータから成り、ケーシング14に内蔵されている。電流計算手段15は、各電流測定用磁電変換素子12および距離測定用磁電変換素子13bからの信号を受信可能に、それらに電気的に接続されている。電流計算手段15は、各挟持部11aで被測定導体1を挟んだとき、各電流測定用磁電変換素子12で検出された磁界および、距離測定部13で測定された各挟持部11aの距離に対応する物理量に基づいて、被測定導体1を流れる電流を求めるよう構成されている。
【0022】
なお、電流測定装置10は、ケーシング14の側面に、電流計算手段15で求められた電流値を表示する表示手段を有していてもよい。
【0023】
次に、作用について説明する。
電流測定装置10は、各挟持部11aで被測定導体1を挟むことにより、被測定導体1を流れる電流を測定することができる。電流測定装置10は、各挟持部11aで被測定導体1を挟んだとき、各挟持部11aにそれぞれ設けられた各電流測定用磁電変換素子12により、被測定導体1を流れる電流により発生する磁界を検出することができる。しかしこのとき、通常の測定対象となる電線のように被覆された被測定導体1では、導体の太さや被覆の厚みが異なるため、その導体の太さや被覆の厚みに応じて、被測定導体1と各電流測定用磁電変換素子12との距離が変化する。この距離の変化のため、検出される磁界の強さが変化してしまう。そこで、電流測定装置10は、距離測定部13により、被測定導体1の被覆等の厚みに応じて変化する、各挟持部11aの距離に対応する物理量を測定する。また、電流測定装置10は、その測定された物理量に基づいて、電流計算手段15により、各電流測定用磁電変換素子12で検出した磁界から求められる電流値等を補正する。これにより、電流測定装置10は、被測定導体1を流れる電流を精度良く求めることができる。
【0024】
電流測定装置10は、各挟持部11aで被測定導体1を挟むだけで、被測定導体1を流れる電流を測定することができる。このため、例えば、被測定導体1として配電盤の配線ダクト等に収納された各配線の電流を測定する場合であっても、従来のクランプ式電流センサやU字型電流センサを使用するときほど、配線ダクト等から配線を引っ張り出す必要がない。このように、電流測定装置10は、配線ダクト等から被測定導体1を引っ張り出す作業を軽減または不要とすることができ、電流の測定作業を容易に進めることができる。また、被測定導体1を引っ張り出すためのスペースを確保する必要もない。電流測定装置10は、特に端子台に接続された電線の電流を測定するのに有効である。また、配電盤の端子台での電流測定が可能となるため、測定対象となる電線の特定も容易となる。
【0025】
電流測定装置10は、電流測定用磁電変換素子12が双方の各挟持部11aに設けられているため、例えば導体が密集している場合でも、被測定導体1に隣接する導体を流れる電流の影響を抑制することができる。また、電流測定装置10は、各把持部11bに距離測定部13の永久磁石13aおよび距離測定用磁電変換素子13bが設けられているため、永久磁石13aが各電流測定用磁電変換素子12による被測定導体1による磁界の検出に影響を及ぼしたり、被測定導体1による磁界が距離測定用磁電変換素子13bによる永久磁石13aの磁界の検出に影響を及ぼしたりするのを防ぐことができる。また、電流測定装置10は、ねじりコイルばね11cにより各挟持部11aが閉まる方向に付勢されているため、測定時に各挟持部11aで被測定導体1をしっかりと挟むことができる。
【実施例1】
【0026】
電流測定装置10の測定クリップ11および距離測定部13により測定を行い、測定クリップ11で測定された電流値に対する距離測定部13による補正の効果を調べる試験を行った。なお、本試験は、測定精度の確認等を行うための試験であるため、電流計算手段15を設けず、増幅器やデータロガーを用いた簡易な構成でデータの測定を行い、得られたデータをパーソナルコンピュータの表計算ソフトで解析している。
【0027】
試験では、図3に示すように、電流を流した被測定導体1を、測定クリップ11の各挟持部11aで挟んで測定を行った。このとき、測定クリップ11による測定信号(電圧値)および距離測定部13による測定信号(電圧値)を、増幅器(Amp)21で増幅した後、それぞれ電流信号電圧およびサイズ補正信号電圧としてデータロガー22に送り、デジタルデータにして保存した。増幅器21の回路図を図4に示す。また、被測定導体1を流れる電流を直接、データロガー22で測定し、通電電流としてデジタルデータにして保存した。
【0028】
試験では、被測定導体1に流す電流は直流電流とし、2〜10Aの範囲で変化させた。また、データロガー22のサンプリング・インターバルは、1msecとした。試験には、被測定導体1として、表1に示すNo.1〜6の6種類の電線を使用した。
【0029】
【表1】
【0030】
まず、No.3の電線(KIV 3.5mm2)について、通電電流と測定クリップ11で測定された電流信号電圧との関係を求め、図5に示す。図5に示すように、通電電流と電流信号電圧との関係は直線で表され、ホール素子から成る電流測定用磁電変換素子12の直線性が良好であることが確認された。図5の場合、電流信号電圧をx、通電電流をyとしたときの回帰直線は、
y= 7.1305x − 0.0027 (1)
となる。
【0031】
次に、No.1〜6の電線について、各通電電流で測定された電流信号電圧xを、(1)式を用いて電流値に換算し、その換算電流の通電電流に対する誤差(補正前の誤差)を求めた。求められた誤差と、距離測定部13で測定された各電線No.1〜6のサイズ補正信号電圧との関係を求め、図6に示す。図6に示すように、換算電流と通電電流との間には、約±20%の誤差が生じることが確認された。図6の場合、サイズ補正信号電圧をX、誤差をY(割合)としたときの回帰曲線は、
Y= 1.9173X2 − 4.109X + 1.9842 (2)
となる。
【0032】
(1)式および(2)式から、被測定導体1を流れる電流Iを計算する式として、以下の(3)式が得られる。この(3)式では、電流信号電圧xから求めた換算電流を、サイズ補正信号電圧Xを用いて補正することにより、電流Iを計算している。
【数1】
【0033】
No.1〜3,5,6の電線について、各通電電流で測定された電流信号電圧xから、(3)式を用いて電流Iを求め、さらにその電流Iの通電電流に対する誤差(補正後の誤差)を求め、図7に示す。図7に示すように、求められた電流Iと通電電流との間の誤差は、±2%以下となっていることが確認された。このことから、電流測定装置10は、被測定導体1を流れる電流を精度良く求めることができるといえる。
【0034】
なお、この試験では、距離測定部13による補正の効果を調べるために、増幅器21やデータロガー22を別途に設けたが、これらの機器の機能や(3)式による計算などの機能を電流計算手段15に組み込むことにより、電流測定装置10を構成することができる。また、使用する部材等により(3)式の形や係数等が変化するため、あらかじめ(3)式と同様の計算式を求めておき、電流計算手段15に組み込むことにより、高精度の電流測定装置10を構成することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 被測定導体
10 電流測定装置
11 測定クリップ
11a 挟持部
11b 把持部
11c ねじりコイルばね
12 電流測定用磁電変換素子
13 距離測定部
13a 永久磁石
13b 距離測定用磁電変換素子
14 ケーシング
15 電流計算手段

21 増幅器
22 データロガー
【要約】
【課題】配線ダクト等から被測定導体を引っ張り出す作業を軽減または不要とすることができ、電流の測定作業を容易に進めることができる電流測定装置を提供する。
【解決手段】1対の挟持部11aが、被測定導体1を挟むよう設けられ、閉まる方向に付勢されている。1対の把持部11bが、互いの距離に応じて、各挟持部11aの距離を変更可能に設けられている。電流測定用磁電変換素子12が、各挟持部11aのいずれか一方または双方に設けられている。距離測定部13が、各挟持部11aの距離に対応する物理量として、各把持部11bの距離に対応する物理量を測定可能に設けられている。各挟持部11aで被測定導体1を挟んだとき、電流計算手段15が、電流測定用磁電変換素子12で検出された磁界および距離測定部13で測定された物理量に基づいて、被測定導体1を流れる電流を求めるよう設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7