(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の発明は、インジウムのハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物が封入された放電空間を内部に有する発光部と;前記放電空間の内部に突出し、所定の距離を置いて対向配置させた一対の電極と;前記発光部の前記一対の電極が延びる方向の両端部にそれぞれ設けられ
、前記電極の前記放電空間側とは反対側の端部が内部に設けられた封止部と;
前記封止部の内部に設けられた前記電極の外側に巻きつけられたコイルと;を具備し、前記金属ハロゲン化物に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合は、0.1wt%以上、0.33wt%以下であり、前記放電空間の前記一対の電極が延びる方向と直交する方向であって、前記放電空間の最も長い部分の寸法は、1.5mm以上、2.3mm以下であり、前記封止部と、前記電極と、の間には、隙間が設けられている放電ランプである。
この放電ランプによれば、製品寿命中における管電圧の上昇を抑制することができる。
【0010】
第
2の発明は、第1
の発明において、前記放電ランプの点灯と消灯を行うことで、前記隙間にインジウムのハロゲン化物が設けられる放電ランプである。
この放電ランプによれば、製品寿命中における管電圧の上昇をより確実に抑制することができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記金属ハロゲン化物は、ナトリウムのハロゲン化物、スカンジウムのハロゲン化物、および亜鉛のハロゲン化物をさらに含む放電ランプである。
【0011】
第4の発明は、上記のいずれか1つに記載の放電ランプと;前記放電ランプに電気的に接続された点灯回路と;を具備した車両用灯具である。
この車両用灯具によれば、製品寿命中における管電圧の上昇を抑制することができる。
【0012】
第5の発明は、第4の発明において、前記放電ランプに設けられた一対の電極が水平となるように前記放電ランプが取り付けられた車両用灯具である。
この車両用灯具によれば、水平点灯を行うことができる。
【0013】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本発明の実施形態に係る放電ランプは、例えば、自動車の前照灯に用いられるHID(High Intensity Discharge)ランプとすることができる。また、自動車の前照灯に用いられるHIDランプとする場合には、いわゆる水平点灯を行うものとすることができる。
本発明の実施形態に係る放電ランプの用途は、自動車の前照灯に限定されるわけではないが、ここでは一例として、放電ランプが自動車の前照灯に用いられるHIDランプである場合を例に挙げて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る放電ランプ100を例示するための模式図である。
なお、
図1においては、放電ランプ100を自動車に取り付けた場合に、前方となる方向を前端側、その反対方向を後端側、上方となる方向を上端側、下方となる方向を下端側としている。
図1に示すように、放電ランプ100には、バーナー101、ソケット102が設けられている。
【0014】
バーナー101には、内管1、外管5、発光部11、封止部12、電極マウント3、サポートワイヤ35、スリーブ4、金属バンド71が設けられている。
内管1は、円筒状を呈し、透光性と耐熱性を有した材料から形成されている。内管1は、例えば、石英ガラスなどから形成することができる。
外管5は、内管1の外側に内管1と同芯に設けられている。すなわち、二重管構造となっている。
【0015】
外管5と内管1との接続は、内管1の円筒部14付近に外管5を溶着することにより行うことができる。内管1と外管5との間に形成された閉空間には、ガスが封入されている。封入されるガスは、誘電体バリア放電可能なガス、例えば、ネオン、アルゴン、キセノン、窒素から選択された一種のガス、またはこれらの混合ガスとすることができる。ガスの封入圧力は、例えば、常温(25℃)で0.3atm以下、特に0.1atm以下とすることが好ましい。
【0016】
外管5は、内管1の材料の熱膨張係数に近く、かつ紫外線遮断性を有する材料から形成することが好ましい。外管5は、例えば、チタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加した石英ガラスから形成することができる。
【0017】
発光部11は、断面形状が楕円形を呈し、内管1の中央付近に設けられている。発光部11の内部には、中央部分がほぼ円柱状で、両端がテーパ状にすぼまっている放電空間111が設けられている。
放電空間111の一対の電極32が延びる方向と直交する方向であって、放電空間111の最も長い部分の寸法d(以下、発光部11の内径の最も長い部分の寸法dと称する)は、1.5mm以上、2.3mm以下とすることが好ましい。発光部11の内径の最も長い部分の寸法dは、例えば、中央部分の内壁11a間の寸法(中央部分が円柱状の場合には直径寸法)である。
なお、発光部11の内径の最も長い部分の寸法dに関する詳細は後述する。
【0018】
放電空間111には、放電媒体が封入されている。放電媒体は、金属ハロゲン化物2と、不活性ガスとを含む。
すなわち、発光部11は、インジウムのハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物2が封入された放電空間111を内部に有する。
【0019】
金属ハロゲン化物2は、インジウムのハロゲン化物、ナトリウムのハロゲン化物、スカンジウムのハロゲン化物、および亜鉛のハロゲン化物を含む。ハロゲンとしては、例えば、ヨウ素を例示することができる。ただし、ヨウ素の代わりに臭素や塩素などを用いることもできる。
【0020】
金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合(インジウムのハロゲン化物の重量÷インジウムのハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物2の重量×100)は、0.1wt%以上、0.33wt%以下とすることができる。
この場合、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合は、初期状態(例えば、未使用の放電ランプ100)の場合である。後述するように、放電ランプ100の点灯と消灯を繰り返すことで、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合は徐々に低下する。
なお、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合に関する詳細は後述する。
【0021】
放電空間111に封入される不活性ガスは、例えば、キセノンとすることができる。不活性ガスは、目的に応じて封入圧力を調整することができる。例えば、全光束を増加させるためには、封入圧力を常温(25℃)で10atm以上、20atm以下にすることが好ましい。また、キセノンの他に、ネオン、アルゴン、クリプトンなどを用いたり、これらを組み合わせた混合ガスを用いることもできる。
【0022】
封止部12は、板状を呈し、発光部11の両端に設けられている。すなわち、封止部12は、板状を呈し、発光部11の一対の電極32が延びる方向の両端部にそれぞれ設けられている。
封止部12は、例えば、ピンチシール法を用いて形成することができる。なお、封止部12は、シュリンクシール法により形成され、円柱状を呈したものであってもよい。
一方の封止部12の発光部11側とは反対側の端部には、境界部13を介して円筒部14が連続的に形成されている。
【0023】
電極マウント3は、封止部12の内部に設けられている。
電極マウント3には、金属箔31、電極32、コイル33、リード線34が設けられている。
金属箔31は、薄板状を呈し、例えば、モリブデンから形成されている。
【0024】
電極32は、円柱状を呈し、例えば、タングステンに酸化トリウムをドープした、いわゆるトリエーテッドタングステンから形成されている。なお、電極32の材料は、純タングステン、ドープタングステン、レニウムタングステンなどであってもよい。
【0025】
電極32の一端は、金属箔31の発光部11側の端部に溶接されている。電極32の他端は、放電空間111内に突出している。電極32は、先端同士が所定の距離を保って互い対向するように配置されている。
すなわち、一対の電極32は、放電空間111の内部に突出し、所定の距離を置いて対向配置されている。
【0026】
電極32の先端同士の間の距離は、例えば、3.4mm以上、4.4mm以下とすることができる。
また、電極32の形状は、径が管軸方向に一定の円柱状でなくてもよい。例えば、電極32の形状は、先端部の径を基端部の径よりも大きくした非円柱状であってもよいし、先端が球体であってもよいし、直流点灯タイプのように一方の電極径と他方の電極径が異なる形状であってもよい。
【0027】
コイル33は、例えば、ドープタングステンからなる金属線から形成することができる。コイル33は、封止部12の内部に設けられた電極32の外側に巻きつけられている。この場合、例えば、コイル33の線径は30μm〜100μm程度、コイルピッチは600%以下とすることができる。
なお、コイル33の作用効果に関する詳細は後述する。
【0028】
リード線34は、例えば、モリブデンからなる金属線とすることができる。リード線34の一端は、金属箔31の発光部11側とは反対側の端部に載置されている。リード線34の他端は、内管1の外部にまで延びている。
【0029】
サポートワイヤ35は、L字状を呈し、放電ランプ100の前端側から出ているリード線34の端部に接続されている。サポートワイヤ35とリード線34との接続は、レーザ溶接により行うことができる。サポートワイヤ35は、例えば、ニッケルから形成することができる。
スリーブ4は、サポートワイヤ35の内管1と平行に延びる部分を覆っている。スリーブ4は、例えば、円筒状を呈し、セラミックから形成されたものとすることができる。
金属バンド71は、外管5の後端側の外周面に固定されている。
【0030】
ソケット102には、本体部6、取り付け金具72、底部端子81、側部端子82が設けられている。
本体部6は、樹脂などの絶縁性材料から形成されている。本体部6の内部には、リード線34、サポートワイヤ35、およびスリーブ4の後端側が設けられている。
【0031】
取り付け金具72は、本体部6の前端側の端部に設けられている。取り付け金具72は、本体部6から突出しており、金属バンド71を保持する。取り付け金具72により金属バンド71を保持することで、バーナー101がソケット102に保持される。
【0032】
底部端子81は、本体部6の後端部側の内部に設けられている。底部端子81は、導電性材料から形成され、リード線34と電気的に接続されている。
側部端子82は、本体部6の後端部側の側壁に設けられている。側部端子82は、導電性材料から形成され、サポートワイヤ35と電気的に接続されている。
【0033】
そして、底部端子81が高圧側、側部端子82が低圧側になるように点灯回路205(
図7を参照)と接続される。自動車の前照灯の場合には、放電ランプ100の中心軸がほぼ水平の状態で、かつサポートワイヤ35がほぼ下端側(下方)に位置するように取り付けられる。そして、この様な方向に取り付けられた放電ランプ100を点灯することを水平点灯という。
【0034】
ここで、放電ランプ100を点灯すると発光部11の温度が上昇する。発光部11の温度が上昇すると、金属ハロゲン化物2の蒸発量が増加する。この場合、ナトリウムのハロゲン化物、スカンジウムのハロゲン化物、および亜鉛のハロゲン化物が蒸発して管電圧に寄与している。
【0035】
放電空間111における蒸発したハロゲン化物の量が増加すると、発光量が増加するとともに発光部11の温度がさらに上昇する。発光部11の温度がさらに上昇すると、放電空間111における蒸発したハロゲン化物の量がさらに増加する。そして、放電空間111における蒸発したハロゲン化物の量が増加すると、管電圧が上昇する。また、長時間点灯することで発光部11がハロゲン化物と化学反応することで透過率が減少してしまうため、発光部11の温度が上昇する。
つまり、放電ランプ100を点灯すると時間の経過とともに管電圧が上昇し易くなる。
【0036】
自動車の前照灯などに用いられる放電ランプ100は、後述するバラスト回路などにより定格時の電力がほぼ一定となるように制御される。そのため、管電圧が上昇すると、電流が小さくなり放電が抑制されるので、不灯に至るおそれがある。
この場合、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合を少なくすれば、管電圧の上昇を抑制することができる。しかしながら、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合を単に少なくすれば、点灯開始時に蒸発したインジウムのハロゲン化物の量が少なくなり、管電圧が低くなることで電流が大きくなりすぎるおそれがある。
【0037】
またさらに、放電ランプ100の使用時間が長くなれば、発光部11の黒化や白濁(失透)が徐々に進むことになる。発光部11の黒化や白濁が進むと、発光部11の外部に放射されるべき光が遮光されることになるので、発光部11において熱が発生する。そのため、放電ランプ100の使用時間が長くなれば、発光部11の温度が上昇しやすくなり、点灯開始時から管電圧が高くなりやすくなる。
【0038】
以上に説明したように、放電ランプ100においては、種々の原因により管電圧が上昇しやすくなる。また、放電ランプ100の点灯開始時には管電圧が所定の範囲内(例えば、40V以上)となるようにすることが好ましい。
つまり、放電ランプ100の製品寿命中における管電圧の上昇を抑制するとともに、点灯開始時に管電圧が所定の範囲内となるようにすることが好ましい。
【0039】
そこで、放電ランプ100においては、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合を0.1wt%以上、0.33wt%以下とし、発光部11の内径の最も長い部分の寸法dを1.5mm以上、2.3mm以下としている。
また、電極32と封止部12との間に、放電空間111につながる隙間を設けるようにしている。
【0040】
図2は、インジウムのハロゲン化物の割合と、管電圧の変化との関係を例示するためのグラフ図である。
図2は、日本電球工業会において定められている自動車前照灯放電ランプの寿命試験条件であるEU120分モードと同様の条件で点滅試験を行った結果である。
【0041】
点滅試験は、以下の条件で行った。
発光部11は、内径の最も長い部分の寸法dを2.2mm、外径寸法を5.2mm、発光部11の長手方向の長さを7.8mmとした。
電極32は、円柱状を呈し、直径寸法を0.28mm、長さ寸法を7.5mmとした。また、電極32の放電空間111への突出長さは、2.2mmとした。
外管5は、UVカット石英ガラスからなるものとした。内管1と外管5との間に形成された閉空間には不活性ガスであるアルゴン(Ar)を封入し、不活性ガスの封入圧力は常温(25℃)で0.1atmとした。
【0042】
インジウムのハロゲン化物を含む金属ハロゲン化物2の量は、0.2mgとした。なお、ハロゲン化物は、ヨウ化物とした。
金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合は、0.05wt%、0.10wt%、0.15wt%とした。
なお、
図2中のAは0.05wt%、Bは0.10wt%、Cは0.15wt%である。 また、点灯開始時に60W、安定点灯時に25Wとなるように、安定器(electrical ballast)を用いて制御した。
そして、EU120分モードの点滅サイクルで点滅させ、管電圧の変化を測定した。
【0043】
図2から分かるように、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合を0.1wt%以上とすれば、管電圧の上昇を抑制することができる。
【0044】
ここで、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合が変化すれば、管電圧が変化する理由は必ずしも明らかではないが、例えば、以下のことが考えられる。
まず、放電ランプ100を点灯すると、放電空間111内にプラズマが発生する。この際、プラズマは、対流により放電空間111の上端側に偏在する。そのため、発光部11の上端側の温度は、発光部11の下端側の温度よりも高くなる。また、プラズマに近く、熱伝導率の高い材料からなる電極32の温度は、発光部11の温度よりも高くなる。
【0045】
次に、放電ランプ100を消灯すると、温度が低下するため、放電空間111内に存在する蒸発したインジウムのハロゲン化物が凝縮して放電空間111の下端側に溜まる。
ここで、本発明者の得た知見によれば、電極32と、凝縮したインジウムのハロゲン化物が溜まる放電空間111の下端側とでは温度が降下する速度が異なるものとなる。すなわち、熱伝導率の高い材料からなる電極32の温度低下の速度が、放電空間111の下端側の温度低下の速度よりも速くなる。
【0046】
図3は、温度降下の様子を例示するための模式グラフ図である。
図3中のS1は電極32の温度低下を表し、S2〜S4は凝縮したインジウムのハロゲン化物が溜まる放電空間111の下端側の温度低下を表している。
また、S2およびS3は、寿命中の放電ランプ100を消灯した際の放電空間111下側の温度カーブである。S4は、寿命初期の放電空間111下側の温度カーブである。寿命中に発光部11の温度が上昇すると、S1とS2とが交わる際の温度Tは、蒸発したインジウムのハロゲン化物が凝縮する温度よりも低くなる。
【0047】
放電ランプ100の消灯により温度低下が生じ、蒸発したインジウムのハロゲン化物が凝縮する温度よりも低くなると凝縮が始まる。この際、温度が低い場所において優先的に凝縮が生じる。
【0048】
図3から分かるように、S2とS3の場合は、時間の経過とともにS2とS3の温度よりもS1の温度が低くなる。そのため、S2とS3の場合は、電極32において優先的に凝縮が生じることになる。
【0049】
これに対し、S4の場合は、S4の温度がS1の温度よりも低いままとなるので、放電空間111の下端側において優先的に凝縮が生じることになる。
【0050】
ここで、電極32において優先的に凝縮が生じると、凝縮したインジウムのハロゲン化物が電極32と封止部12との間の隙間に侵入する。そして、電極32と封止部12との間の隙間に侵入したインジウムのハロゲン化物は、以降の点灯の際に再度蒸発することが抑制される。
なお、電極32と封止部12との間の隙間にインジウムのハロゲン化物が侵入することは、目視により確認されている。
【0051】
すなわち、点灯と消灯を繰り返す間に、インジウムのハロゲン化物が電極32と封止部12との間の隙間に徐々に溜まるので、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の量が徐々に少なくなる。
そして、インジウムのハロゲン化物の量が少なくなると、点灯時に放電空間111内に存在する蒸発したインジウムのハロゲン化物の量が少なくなる。
そのため、
図2中のB、Cのように、管電圧の上昇が抑制されることになる。なお、Bに比べてCの方が封入されているインジウムのハロゲン化物が多いため、管電圧に寄与しているインジウムのハロゲン化物が多く、影響が顕著にみられる。
【0052】
また、インジウムの封入量が少ないと、管電圧に寄与しているインジウムのハロゲン化物量が少なく、
図2中のAのように管電圧の上昇を抑制することができない。
【0053】
以上に説明したように、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合を0.1wt%以上とすれば、管電圧の上昇を抑制することができる。ところが、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合を高くすると、寿命中にインジウムが入り込んでしまう影響が大きすぎて光束が低下するという問題が生じる。
【0054】
図4は、インジウムのハロゲン化物の割合と、光束の低下との関係を例示するためのグラフ図である。
図4に示すように、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合を0.50wt%とすれば、光束の低下が大きくなりすぎる。
そのため、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合は、0.1wt%以上、0.33wt%以下とすることが好ましい。
【0055】
また、発光部11の内径の最も長い部分の寸法dが変化すれば、放電空間111の下端側の温度低下が変化する。
図5は、温度降下の様子を例示するための模式グラフ図である。
図5中のS1は電極32の温度低下を表し、S5、S6は凝縮したインジウムのハロゲン化物が溜まる放電空間111の下端側の温度低下を表している。
また、S5における寸法dは、S6における寸法dよりも小さいものとしている。
【0056】
寸法dが小さければプラズマとの距離が小さくなるので、点灯時における放電空間111の下端側の温度は高くなる。
そのため、
図5に示すように、S5における消灯直後の温度は、S6における消灯直後の温度よりも高くなる。
【0057】
図5から分かるように、S5の場合は、時間の経過とともにS5の温度よりもS1の温度が低くなる。そのため、S5の場合は、電極32において優先的に凝縮が生じることになる。
一方、S6の場合は、S6の温度がS1の温度よりも低いままとなるので、放電空間111の下端側において優先的に凝縮が生じることになる。
【0058】
そのため、寸法dの小さいS5の場合は、点灯と消灯を繰り返す間に、インジウムのハロゲン化物が電極32と封止部12との間の隙間に徐々に溜まるので、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の量が徐々に少なくなる。
その結果、管電圧の上昇を抑制することができる。
寸法dの大きなS6の場合は、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の量がほぼ一定となる。
そのため、管電圧の上昇を抑制することができない。
【0059】
以上に説明したように、寸法dを小さくすれば、管電圧の上昇を抑制することができる。
ただし、寸法dを小さくしすぎるとリークが発生し、不灯となるおそれがある。
表1は、発光部11の内径の最も長い部分の寸法dの適正な範囲を例示するための表である。
【0060】
【表1】
表1から分かるように、発光部11の内径の最も長い部分の寸法dを1.5mm以上、2.3mm以下とすれば、管電圧の上昇を抑制することができ、且つ、リークの発生による不灯を抑制することができる。
【0061】
なお、放電ランプ100の点灯と消灯を繰り返すことで、金属ハロゲン化物2に含まれるインジウムのハロゲン化物の割合が徐々に低下すると、点灯開始時の管電圧も徐々に低くなるように思える。しかしながら、放電ランプ100の使用時間が長くなれば、発光部11の黒化や白濁が進むので、点灯開始時の温度を上昇させることができる。そのため、前述した条件を満たす放電ランプ100とすれば、点灯開始時の管電圧を所定の範囲内に収めることが可能となる。
【0062】
次に、電極32と封止部12との間の隙間についてさらに説明する。
電極32と封止部12との間の隙間は、以下のようにして形成することができる。
例えば、ピンチシール法やシュリンクシール法などにより封止部12を形成した直後は、電極32と封止部12とが密着しているため隙間は形成されていない。封止部12の形成後の冷却過程において、材料の熱膨張係数の差により、電極32の収縮量の方が封止部12の収縮量よりも大きくなる。そのため、電極32と封止部12との間に、放電空間111につながる隙間が形成されることになる。
【0063】
なお、封止部12の内部にある金属箔31は、封止部12の収縮に倣うように撓むことができる。そのため、封止部12の形成後の冷却過程において、封止部12と金属箔31との間に隙間が形成されることを抑制することができる。すなわち、封止部12と金属箔31との密着を維持することができるので、封止部12の金属箔31が設けられた領域において気密性を維持することができる。
【0064】
ここで、電極32と封止部12との間に隙間が形成されていないと、前述した管電圧の上昇を抑制する効果を得ることが難しくなる。
そのため、放電ランプ100においては、隙間が形成されやすくするために、電極32の外側にコイル33を巻きつけている。
【0065】
電極32の外側にコイル33を巻きつけるようにすると、コイル33と電極32が接触している部分においては、電極32と封止部12との密着が妨げられる。そのため、電極32と封止部12との密着面積を減少させることができるので、封止部12の形成後の冷却過程において隙間が形成されやすくなる。
またさらに、コイル33は封止部12の収縮に倣うように撓むことができるので、封止部12の形成後の冷却過程において、封止部12の外面に達するようなクラックなどの発生を抑制する効果をも享受することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る車両用灯具200について例示する。
車両用灯具200は、前述した放電ランプ100を備えた車両用灯具である。
図6は、車両用灯具200の構成を例示するための模式図である。
なお、
図6中の「前方」は放電ランプ100を取り付けた自動車の前方、「後方」は放電ランプ100を取り付けた自動車の後方、「上方」は放電ランプ100を取り付けた自動車の上方、「下方」は放電ランプ100を取り付けた自動車の下方である。
図6は、放電ランプ100に設けられた一対の電極32が水平となるように放電ランプ100を取り付けた場合である。つまり、水平点灯をさせる放電ランプ100の場合を例示するものである。
図7は、車両用灯具200の回路を例示するための模式図である。
【0066】
図6に示すように、車両用灯具200には、放電ランプ100、リフレクタ202、遮光制御板203、レンズ204、点灯回路205が設けられている。
リフレクタ202は、放電ランプ100から照射された光を前方側に反射させる。リフレクタ202は、例えば、反射率の高い金属などから形成されている。リフレクタ202の内部には空間が設けられ、内面が放物線形状を有している。
【0067】
リフレクタ202の前方側と後方側の端部は開口している。
放電ランプ100のソケット102は、リフレクタ202の後方側の開口付近に取り付けられている。放電ランプ100のバーナー101は、リフレクタ202の内部の空間に位置している。
【0068】
遮光制御板203は、リフレクタ202の内部であって、バーナー101の前方側、かつ、バーナー101の下方側に設けられている。
遮光制御板203は、金属などの遮光性材料から形成されている。遮光制御板203は、カットラインと呼ばれる配光を形成するために設けられている。遮光制御板203は、可動式とされており、遮光制御板203を下方側に倒すことで、ロービームからハイビームへの切り替えが可能となっている。
【0069】
レンズ204は、リフレクタ202の前方側の開口を塞ぐようにして設けられている。レンズ204は、凸レンズとすることができる。レンズ204は、放電ランプ100から直接入射した光、リフレクタ202により反射され入射した光を集光させて所望の配光を形成する。
【0070】
点灯回路205は、放電ランプ100の始動および点灯の維持を行うための回路である。
図7に示すように、点灯回路205は、例えば、イグナイタ回路205aとバラスト回路205bとを備えたものとすることができる。
点灯回路205の入力側には、バッテリーなどの直流電源DSとスイッチSWとが電気的に接続されている。点灯回路205の出力側には、放電ランプ100が電気的に接続されている。
【0071】
イグナイタ回路205aは、例えば、トランス、コンデンサ、ギャップ、抵抗などから構成されている。イグナイタ回路205aは、30kV程度の高圧パルスを生成し、放電ランプ100に印加する。30kV程度の高圧パルスを放電ランプ100に印加することで、一対の電極32間において絶縁破壊が生じ、放電が生じる。すなわち、イグナイタ回路205aにより放電ランプ100が始動する。
【0072】
バラスト回路205bは、例えば、DC/DC変換回路、DC/AC変換回路、電流・電圧検出回路および制御回路などから構成されている。バラスト回路205bは、イグナイタ回路205aにより、始動した放電ランプ100の点灯を維持する。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。