特許第6202463号(P6202463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202463
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】手乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/48 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   A47K10/48 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-268547(P2012-268547)
(22)【出願日】2012年12月7日
(65)【公開番号】特開2014-113259(P2014-113259A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 謙悟
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−204738(JP,A)
【文献】 特開2006−075499(JP,A)
【文献】 特開2012−217716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の手に空気を吹きつけて乾燥させる手乾燥装置において、
前記使用者の手を挿入する手乾燥室を有するハウジングと、
前記手乾燥室の前側の壁面から空気を吹き出す第1ノズルと、
前記手乾燥室の後側の壁面から空気を吹き出す第2ノズルと、
前記手乾燥室の第1ノズルに送風する第1送風機を駆動させる第1ブラシモータと、
前記手乾燥室の第2ノズルに送風する第2送風機を駆動させる第2ブラシモータと、
前記手乾燥室に挿入された前記使用者の手を検出するセンサと、
前記センサが前記使用者の手を検出した検出情報に基づき前記第1ブラシモータ及び前記第2ブラシモータの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1ブラシモータ及び前記第2ブラシモータの駆動中において、前記第1ブラシモータ又は前記第2ブラシモータの一方に抵抗部を介して電力供給を行い、
前記抵抗部は、前記第1送風機からの空気を前記第1ノズルに送風する第1風路又は前記第2送風機からの空気を前記第2ノズルに送風する第2風路に設けられ、前記送風機からの空気に熱を供給するヒーターであることを特徴とする手乾燥装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1風路に設けられた前記第1ヒーター又は前記第2風路に設けられた前記第2ヒーターのいずれか一方に電力供給するように選択する選択手段を備えることを特徴とする請求項に記載の手乾燥装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1ノズル又は前記第2ノズルから吹き出される空気の温度を変更するために、前記ヒーターの出力を変更する変更手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の手乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の手に空気を吹き付けて乾燥させる手乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に公共のトイレ等においては、手洗い後に手に付着している水を拭き取るためのペーパータオルを削減する傾向が強まっており、ペーパータオルの代わりに手乾燥装置を設置する場合が増えている。このような手乾燥装置は、洗面ボウルが配置されている場所からは少し離れた洗面カウンター上の壁面や、洗面カウンターから離れたトイレ空間の壁面等に設置されている場合が多い(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1において提案されている手乾燥装置では、手をハウジングの上方から開口凹部内へ挿入し、開口凹部の掌側壁面及び甲側壁面にそれぞれ設けられたセンサが手を検知すると、両壁面それぞれにほぼ水平方向直線状に設けられた複数の掌側用のノズル及び甲側用のノズルから、手の掌側及び甲側にそれぞれ温風が吹き付けられ、手に付着していた水滴を飛ばしながら下方へ流れるようになっている。
【0004】
また、複数の掌側用のノズル及び甲側用のノズルそれぞれに温風を供給するために、掌側用のファンモータユニット及び甲側用のファンモータユニットが手乾燥装置本体内に設けている。掌側用のファンモータユニット及び甲側用のファンモータユニットとも同一の最大出力を有する同一形態のものであり、両者とも駆動回転数を所望に変えることができるようになっている。
【0005】
手の掌側及び甲側にそれぞれ温風が吹き付けられる際、手の甲側よりも掌側が乾燥し難いことから、掌側により多くの風が当たるように、掌側に供給する風量を可能な限り多くすることが好ましく、手乾燥装置の使用時には、掌側用の駆動回転数が甲側用の駆動回転数よりも高速に回転するように各ファンモータユニット設定し、掌側に供給する風量が手の甲側に供給する風量に比べて大きく設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−227320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の手乾燥装置では、掌側用のノズル及び甲側用のノズルからの風速調整は、掌側用のブラシモータ又は甲側用のブラシモータのいずれか一方の印加電圧を基準とし、他方のブラシモータに対して電圧の通電角を変える位相制御を行うことで他方のブラシモータの出力を下げて風速を弱めるようにしていた。しかしながら、位相制御を行った時の特有の現象として、ブラシモータ駆動時にブラシモータのブラシと整流子間にスパイク電圧が発生し、ブラシの磨耗が生じてブラシモータの寿命が低減するという課題があった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブラシモータの磨耗によってブラシモータの寿命が短くなるという位相制御を利用せずに、第1ノズル又は第2ノズルから吹き出される空気の風量調整を行い、ブラシモータの寿命を長くすることができる手乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る手乾燥装置は、使用者の手に空気を吹きつけて乾燥させる手乾燥装置において、前記使用者の手を挿入する手乾燥室を有するハウジングと、前記手乾燥室の前側の壁面から空気を吹き出す第1ノズルと、前記手乾燥室の後側の壁面から空気を吹き出す第2ノズルと、前記手乾燥室の第1ノズルに送風する第1送風機を駆動させる第1ブラシモータと、前記手乾燥室の第2ノズルに送風する第2送風機を駆動させる第2ブラシモータと、前記手乾燥室に挿入された前記使用者の手を検出するセンサと、前記センサが前記使用者の手を検出した検出情報に基づき前記第1ブラシモータ及び前記第2ブラシモータの駆動を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記第1ブラシモータ及び前記第2ブラシモータの駆動中において、前記第1ブラシモータ又は前記第2ブラシモータの一方に抵抗部を介して電力供給を行い、前記抵抗部は、前記第1送風機からの空気を前記第1ノズルに送風する第1風路又は前記第2送風機からの空気を前記第2ノズルに送風する第2風路に設けられ、前記送風機からの空気に熱を供給するヒーターであることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1ブラシモータ又は第2ブラシモータの一方に抵抗部を介する簡単な構成により、第1ノズル又は第2ノズルから吹き出される空気の風量調整を行うため、ブラシモータの磨耗によってブラシモータの寿命が短くなるという位相制御を利用する必要がなくなり、ブラシモータの寿命を長くすることができる。
また、抵抗部が送風機からの空気に熱を供給するヒーターであるため、抵抗部で失われる電気エネルギーを送風機からの空気に与えられる熱エネルギーとなり、送風機からの空気を効率的に暖めることができる。
【0013】
また本発明に係る手乾燥装置では、前記ヒーターは、前記第1風路に設けられた第1ヒーターと、前記第2風路に設けられた第2ヒーターと、を有し、前記制御部は、前期第1ヒーター又は前期第2ヒーターのいずれか一方に電力供給するように選択する選択手段を備えることも好ましい。
【0014】
この好ましい態様では、制御部が第1ヒーター又は第2ヒーターのいずれか一方に電力供給するように選択する選択手段を備えるため、例えば、第1ノズルから吹き出される空気の温度だけを高く設定したい場合、選択手段が第1ヒーターだけ電力供給するように電力供給を選択すれば、ヒーター全体の電力供給を減らすことにより節電に繋げることができる。
【0015】
また本発明に係る手乾燥装置では、前記制御部は、前記第1ノズル又は前記第2ノズルから吹き出される空気の温度を変更するために、前記ヒーターの出力を変更する変更手段を備えることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、制御部がヒーターの出力を変更する変更手段を備えるため、ノズルから吹き出される空気の温度を使用者の使用状況に応じて変更できるようになり、使用者が節電をより行いやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ブラシモータの磨耗によってブラシモータの寿命が短くなるという位相制御を利用せずに、第1ノズル又は第2ノズルから吹き出される空気の風量調整を行い、ブラシモータの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態である手乾燥装置の外観を示す斜視図である。
図2図1に示す手乾燥装置の縦断面図である。
図3図1に示す手乾燥装置の横断面図である。
図4図1に示す手乾燥装置の内部を示す斜視図である。
図5図1に示す手乾燥装置の制御的な構成を示すブロック構成図である。
図6図1に示す手乾燥装置の制御回路図ある。
図7図1に示す手乾燥装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本実施形態の手乾燥装置1の全体を示す斜視図である。図2〜4は、本実施形態の手乾燥装置1の縦断面図、横断面図、内部を示す斜視図をそれぞれ示す図面である。手乾燥装置1は、ハウジング2及び水受けトレー19を備えている。ハウジング2は、手前側部材2a(正面側部材)と、壁面側部材2b(背面側部材)と、側面部材2cと、側面部材2dとによって構成されている。ハウジング2には手乾燥部としての開口凹部4が形成され、その開口凹部4の下方には送風機が内蔵されている。開口凹部4は上方に開口しており、使用者が手を差し入れるための開口部4uが形成されている。
【0021】
この開口凹部4は、そこに手を配置して風を当てて乾燥させる部分(手乾燥部)である。通常、掌をハウジング2の手前側部材2a側に向け、手の甲をハウジング2の壁面側部材2b側に向けた姿勢で、手をハウジング2の上方から開口凹部(手乾燥部)4内へ挿入するようになっている。
【0022】
本実施形態の手乾燥装置1では、手をハウジング2の上方から開口凹部4内へ挿入し、開口凹部4の掌側壁面4a及び甲側壁面4bにそれぞれ設けられたセンサ(投光部、受光部)3a,3bが手を検知すると、両壁面4a,4bのそれぞれにほぼ水平方向直線状に設けられた複数の掌側用のノズル6a及び甲側用のノズル6bから、手の掌側及び甲側にそれぞれ温風が吹き付けられ、手に付着していた水滴を飛ばしながら下方へ流れるようになっている。
【0023】
従来の手乾燥装置では、手の掌側及び甲側にそれぞれ温風が吹き付けられる際、手の甲側よりも掌側が乾燥し難いことから、掌側により多くの風が当たるように、掌側に供給する風量を可能な限り多くすることが好ましく、手乾燥装置の使用時には、掌側用の駆動回転数が甲側用の駆動回転数よりも高速に回転するように各ファンモータユニットを設定し、掌側に供給する風量が手の甲側に供給する風量に比べて大きく設定されている。
【0024】
従来の手乾燥装置では、掌側用のノズル及び甲側用のノズルからの風速調整は、掌側用のブラシモータ又は甲側用のブラシモータのいずれか一方の印加電圧を基準とし、他方のブラシモータに対して電圧の通電角を変える位相制御を行うことで他方のブラシモータの出力を下げて風速を弱めるようにしていた。しかしながら、位相制御を行った時の特有の現象として、ブラシモータ駆動時にブラシモータのブラシと整流子間にスパイク電圧が発生し、ブラシの磨耗が生じてブラシモータ寿命が低減するという課題があった。
【0025】
そこで、本実施形態の手乾燥装置1では、使用者の手を挿入する手乾燥室4とハウジング2と、手乾燥室4の側面から空気を吹き出す第1ノズル6aと、手乾燥室4の別の側面から空気を吹き出す第2ノズル6bと、第1ノズル6aに送風する第1送風機8a’を駆動させる第1ブラシモータ8aと、第2ノズル6bに送風する第2送風機8b’を駆動させる第2ブラシモータ8bと、手乾燥室に挿入された使用者の手を検出するセンサ3a/3bと、第1ブラシモータ8a及び第2ブラシモータ8bの駆動を制御する制御部21と、を備えている。
【0026】
更に、本実施形態の手乾燥装置1では、制御部21は、使用者の手をセンサ3a/3bが検出後、第1ブラシモータ8a及び第2ブラシモータ8bに電源からの電力を供給して駆動させ、第1ブラシモータ8a及び第2ブラシモータ8bの駆動中において、図5図6に示すように、第1ブラシモータ8a又は第2ブラシモータ8bの一方に抵抗部20を介して電力供給を行い、第1ブラシモータ8a又は第2ブラシモータ8bの一方の出力を下げることにより第1ノズル6a、第2ノズル6bの風量調整を行うことができる。
【0027】
本実施形態の手乾燥装置1によれば、第1ブラシモータ8a又は第2ブラシモータ8bの一方に抵抗部20を介する簡単な構成により、第1ノズル6a又は第2ノズル6bから吹き出される空気の風量調整を行うため、ブラシモータの磨耗によってブラシモータ8の寿命が短くなるという位相制御を利用する必要がなくなり、従来の手乾燥装置のブラシモータに比べてブラシモータ8の寿命を長くすることができる。
【0028】
また、上記の抵抗部20は、第1ノズル6aと第1ブラシモータ8aの間の風路に設けられた熱を供給する第1フィンヒータ18a、又は第2ノズル6bと第2ブラシモータ8bの間の風路に設けられた熱を供給する第2フィンヒータ18bであっても良い。また、抵抗部20は、図6に示すように、フィンヒータ18と別に設けて、フィンヒータ18から熱を供給する場合、又はフィンヒータ18から熱を供給しない場合に切替えることができる構成であっても良い。
【0029】
また、本実施形態の手乾燥装置1では、制御部21が第1風路に設けられた第1フィンヒータ18a又は第2風路に設けられた第2フィンヒータ18bのいずれか一方に電力供給するように選択する選択手段22を備えていることが望ましい。例えば、第1ノズル6aから吹き出される空気の温度だけを高く設定したい場合には、操作部24の情報に基づき選択手段22が第1フィンヒータ18aだけ電力供給するように電力供給を選択すれば、フィンヒータ18全体の電力供給を減らすことにより節電に繋げることができる。
【0030】
また、本実施形態の手乾燥装置1では、制御部21が第1ノズル6a又は第2ノズル6bから吹き出される空気の温度を変更するためにヒーターの出力を変更する変更手段23を備えていることが望ましい。ノズル6から吹き出される空気の温度を使用者の使用状況に応じて変更できるようになり、フィンヒータ18の電力供給を減らすことにより節電に繋げることができる。
【0031】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0032】
1:手乾燥装置
2:ハウジング
2a:手前側部材
2b:壁面側部材
2c,2d:側面部材
3a,3b:センサ
4:開口凹部
4a:壁面
4b:壁面
4u:開口部
6a:第1ノズル
6b:第2ノズル
8a:第1ブラシモータ
8a’:第1送風機
8b:第2ブラシモータ
8b’:第2送風機
18a:第1フィンヒータ
18b:第2フィンヒータ
19:水受けトレー
20a:第1抵抗部
20b:第2抵抗部
21:制御部
22:選択手段
23:変更手段
24:操作部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7