(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202471
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】医用ポリオキシプロピレン重合体の製造方法および医用ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/30 20060101AFI20170914BHJP
C08G 65/26 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
C08G65/30
C08G65/26
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-227328(P2013-227328)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-86320(P2015-86320A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】粒崎 拓真
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕二
【審査官】
中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−176847(JP,A)
【文献】
特開2004−315554(JP,A)
【文献】
特開2007−146191(JP,A)
【文献】
特開平11−106500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−67/04
C07C 1/00−409/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(A) プロピレンオキシドと反応する活性水素を有する開始物質にプロピレンオキシドを開環重合させて得られる、不純物としてアリルエーテルを含むポリオキシプロピレン重合体に対して、アルカリ金属の三級アルコキシドを前記開始物質の前記活性水素のモル数に対して過剰に加え、115℃以下で熱処理してアリルエーテルをプロペニルエーテルに異性化させる工程;および
(B) 工程(A)で得られた生成物に対して鉱酸を加えてpH 4以下に調整し、70℃以下で処理してプロペニルエーテルを加水分解する工程;
を有することを特徴とする、医用ポリオキシプロピレン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記工程(B)の後に、
(C) ポリオキシプロピレン重合体を水洗する工程と
(D) ポリオキシプロピレン重合体をアルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤で処理する工程
との少なくとも一方を実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
以下の工程:
(A) プロピレンオキシドと反応する活性水素を有する開始物質にプロピレンオキシドを開環重合させて得られる、不純物としてアリルエーテルを含むポリオキシプロピレン重合体に対して、アルカリ金属の三級アルコキシドを前記開始物質の前記活性水素のモル数に対して過剰に加え、115℃以下で熱処理してアリルエーテルをプロペニルエーテルに異性化させる工程;および
(B) 工程(A)で得られた生成物に対して鉱酸を加えてpH 4以下に調整し、70℃以下で処理してプロペニルエーテルを加水分解する工程;
を実施して医用ポリオキシプロピレン重合体を得た後、前記医用ポリオキシプロピレン重合体に対して、エチレンオキシドを開環重合させる工程を含む、医用ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
前記工程(B)の後に、
(C) ポリオキシプロピレン重合体を水洗する工程と
(D) ポリオキシプロピレン重合体をアルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤で処理する工程
との少なくとも一方を実施することによって、前記医用ポリオキシプロピレン重合体を得ることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオキシプロピレン重合体ならびにポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、医用材料に用いることを目的とした、高純度ポリオキシプロピレン重合体ならびにポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性水素を有する開始物質にアルキレンオキシドなどの環状エーテル化合物を開環重合させて得られるポリオキシアルキレン重合体は、非抗原性で生体適合性に優れており、医用材料の分野においては創傷被覆材、癒着防止材、薬物徐放材および再生医療における足場材料などの用途に使用される。中でもポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体は、疎水性のポリオキシプロピレンと親水性のポリオキシエチレンの組成を変えることで、膨潤性、柔軟性、力学的強度、細胞・組織接着性を任意に調節することが可能であり、その高い汎用性から医用材料として広く利用されている。
【0003】
ポリオキシアルキレン重合体の製造は、通常、塩基触媒の存在下、活性水素を有する開始物質にアルキレンオキシドを開環重合させることにより行なわれる。しかし、塩基触媒を用いてプロピレンオキシドの開環重合を行うと、プロピレンオキシドの重合反応と並行してプロピレンオキシドの異性化が起こり、アリルアルコールが生成する。生成したアリルアルコールは新たな重合起点となってプロピレンオキシドが開環重合するため、結果としてポリオキシプロピレン重合体はポリオキシプロピレンモノアリルエーテルを含有することとなる。
【0004】
ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体は、ポリオキシプロピレン重合体に対してエチレンオキシドを開環重合させることで得られる。ここで、ポリオキシプロピレン重合体が、プロピレンオキシドの異性化に由来するポリオキシプロピレンモノアリルエーテルを含有する場合、ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルの水酸基からもエチレンオキシドが重合するため、結果としてポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体のモノアリルエーテルが副生することとなる。
ポリオキシプロピレン重合体およびポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体において、アリルエーテルなどの不飽和エーテルの存在は、水酸基数の実質的な低下をもたらし、水酸基を他の官能基に化学変換して医用材料として用いる場合は、その機能を損なうことになる。また、不飽和エーテルは予期せぬ界面活性効果や副反応などにより、材料の物性に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0005】
従来、プロピレンオキシドの開環重合で副生したアリルエーテルは、塩基の触媒作用によりプロペニルエーテルに異性化し、さらにプロペニルエーテルは、酸処理によりプロピオンアルデヒドと水酸基に加水分解されることが知られている(非特許文献1)。この方法論に基づいた不飽和エーテル(アリルエーテルとプロペニルエーテルを総称して不飽和エーテルとする、以下同様)の低減に関する先行例は数多くある。しかし、実際は不飽和エーテルの低減はそれほど容易ではなく、先行例のほとんどは不飽和エーテルが多く残存している。
【0006】
例えば特許文献1では、水酸化カリウムやナトリウムメトキシドを用いるアリルエーテルのプロペニルエーテルへの異性化と、続くプロペニルエーテルの加水分解の方法が開示されている。ここに記載の方法は、塩基触媒としてアルカリ金属の水酸化物およびアルカリ金属の一級または二級アルコキシドを使用して120℃で処理しているが、アリルエーテルのプロペニルエーテルへの異性化効率が低く、続くプロペニルエーテルの加水分解後でも不飽和エーテルが多く残存している。
【0007】
不飽和エーテル含量を十分に低減できている例としては、非特許文献2が挙げられる。グリセリンの水酸基に対して約10mol%の水酸化カリウム存在下にプロピレンオキシドを開環重合させた後、これを160℃で3時間処理し、次いで鉱酸処理することで不飽和エーテルをほとんど除去している。ところが、ここに記載の方法ではアリルエーテルの異性化のために160℃の高温で長時間処理する必要があるため、ポリオキシプロピレン重合体が着色しやすい欠点がある。医用材料分野において着色品は忌避されるため、不飽和エーテル含量を十分に低減し、かつ着色を抑制できる方法の開発は非常に意義が大きい。
【0008】
一方で、アリルエーテルは酸触媒のみでもプロペニルエーテルに異性化することから、特許文献2ではプロピレンオキシド開環重合後のポリオキシプロピレン重合体に、鉱酸を加えてpH 2〜4に調整後、80〜150℃で処理することで不飽和エーテル含量を低減している。しかし、ここに記載の方法はアリルエーテルの異性化効率が低く、より低いpHや高温で処理することで不飽和エーテルをさらに低減できる可能性はあるが、刺激臭の発生などの品質劣化を引き起こすため、医用材料の製造方法として適当ではない。
【0009】
また、特許文献3では、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体に含まれる不飽和エーテルをゲル透過クロマトグラフィーにて除去し、不飽和エーテルを含まないポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体として医用材料に用いている。しかし、ここに記載の方法は、技術面およびコスト面の問題から、工業的スケールへの適用は困難である。
【0010】
以上のように、不飽和エーテル含量が低く、かつ着色を抑制したポリオキシプロピレン重合体ならびにポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の製造方法については、工業的スケールで容易に実施可能な例は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9-40769号公報
【特許文献2】特開平4-153219号公報
【特許文献3】特許第2647556号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J. Polymer Sci, 1960, 44, 303-311
【非特許文献2】日本化学会誌, 1993, 9, 1085-1090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、医用材料に用いることを目的とした、不飽和エーテル含量が低く、かつ着色を抑制したポリオキシプロピレン重合体ならびにポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、活性水素を有する開始物質にプロピレンオキシドを開環重合させて得られるポリオキシプロピレン重合体に対して、アルカリ金属の三級アルコキシドを開始物質の活性水素のモル数より過剰に加えて、低温でアリルエーテルをプロペニルエーテルに異性化させ、次いで鉱酸を用いてプロペニルエーテルを加水分解することで、不飽和エーテル含量が低く、かつ着色を抑制したポリオキシプロピレン重合体を得ることを見出し、本発明に至った。
【0015】
即ち、本発明は以下のものである。
(1) 以下の工程:
(A) プロピレンオキシドと反応する活性水素を有する開始物質にプロピレンオキシドを開環重合させて得られる、アリルエーテルを含むポリオキシプロピレン重合体に対して、アルカリ金属の三級アルコキシドを開始物質の活性水素のモル数に対して過剰に加え、115℃以下で熱処理してアリルエーテルをプロペニルエーテルに異性化させる工程;および
(B) 工程(A)で得られた生成物に対して鉱酸を加えてpH4以下に調整し、70℃以下で処理してプロペニルエーテルを加水分解する工程;
を有することを特徴とする、医用ポリオキシプロピレン重合体の製造方法。
(2) 前記工程(B)の後に、
(C) ポリオキシプロピレン重合体を水洗する工程と
(D) ポリオキシプロピレン重合体をアルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤で処理する工程
との少なくとも一方を実施することを特徴とする、(1)の方法。
(3)
以下の工程:
(A) プロピレンオキシドと反応する活性水素を有する開始物質にプロピレンオキシドを開環重合させて得られる、不純物としてアリルエーテルを含むポリオキシプロピレン重合体に対して、アルカリ金属の三級アルコキシドを前記開始物質の前記活性水素のモル数に対して過剰に加え、115℃以下で熱処理してアリルエーテルをプロペニルエーテルに異性化させる工程;および
(B) 工程(A)で得られた生成物に対して鉱酸を加えてpH 4以下に調整し、70℃以下で処理してプロペニルエーテルを加水分解する工程;
を実施して医用ポリオキシプロピレン重合体を得た後、前記医用ポリオキシプロピレン重合体に対して、エチレンオキシドを開環重合させる工程を含む、医用ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の製造方法。
(4) 前記工程(B)の後に、
(C) ポリオキシプロピレン重合体を水洗する工程と
(D) ポリオキシプロピレン重合体をアルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤で処理する工程
との少なくとも一方を実施することによって、前記医用ポリオキシプロピレン重合体を得ることを特徴とする、(3)の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポリオキシプロピレン重合体に含まれるアリルエーテルのプロペニルエーテルへの異性化を穏和な温度条件で定量的に達成できるため、結果として不飽和エーテル含量を極めて低く、かつ着色を抑制することが可能である。したがって、本発明の製造方法は、医用材料に適した高品質のポリオキシプロピレン重合体ならびにポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体を工業的スケールで容易に提供することができる。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
医用とは、創傷被覆材、癒着防止材、薬物徐放材、再生医療における足場材料などの、生体に適用されるべき用途である。
【0018】
本発明で用い得る「プロピレンオキシドと反応する活性水素を有する開始物質」は、プロピレンオキシドの開環重合を行わせるための出発原料である。この活性水素を有する官能基は、プロピレンオキシドの開環重合の起点となるものであれば限定されないが、具体的には、開始物質が、水酸基、アミノ基、スルファニル基およびカルボキシ基よりなる群から選択される官能基を有していることが好ましく、水酸基および/またはアミノ基を有していることが更に好ましく、水酸基を有していることが最も好ましい。
【0019】
水酸基を有する開始物質の具体例としては、例えば下記のアルコールが挙げられる。1価のアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t-ブタノール、フェノールおよびベンジルアルコールなどが挙げられ、2価のアルコールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、水、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールおよび1,4-ベンゼンジオールなどが挙げられ、3価以上の多価アルコールとしてはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、キシリトール、トリグリセリン、ジペンタエリスリトール、ソルビトールおよびヘキサグリセリンなどが挙げられる。好ましい実施形態においては、3価以上の多価アルコールを開始物質として使用する。また、多価アルコールの水酸基の価数は、一般に8価以下が好ましい。
【0020】
前記アミノ基を有する開始物質の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、モルホリン、アニリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アンモニア、エチレンジアミン、トルイレンジアミンおよびジエチレントリアミンなどが挙げられる。好ましい実施形態においては、アミノ基を2個以上含有する化合物を開始物質として使用する。
【0021】
本発明の活性水素を有する開始物質にプロピレンオキシドを開環重合させて得られる、ポリオキシプロピレン重合体の水酸基当りの数平均分子量は、好ましくは300〜10000であり、より好ましくは500〜5000である。ここで、数平均分子量は、水酸基価から換算される数平均分子量であり、56100×(開始物質の活性水素数)/(水酸基価)で示される。
【0022】
本発明の工程(A)に用い得るアルカリ金属の三級アルコキシドは、三級アルコールの水酸基の水素原子をアルカリ金属で置換したものである。
【0023】
アルカリ金属の三級アルコキシドを構成するアルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましい。また、三級アルコキシドの炭素数は4以上であるが、6以下が好ましく、5以下が更に好ましい。具体例を挙げると、アルカリ金属の三級アルコキシドは、リチウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド、リチウムt-ペントキシド、ナトリウムt-ペントキシド、カリウムt-ペントキシドが好ましく、ナトリウムt-ブトキシド、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ペントキシドまたはカリウムt-ペントキシドが更に好ましく、ナトリウムt-ブトキシドまたはカリウムt-ブトキシドが最も好ましい。
【0024】
本発明の工程(A)では、アルカリ金属の三級アルコキシドの作用によってアリルエーテルのプロペニルエーテルへの異性化を効率良く進行させるため、アルカリ金属の三級アルコキシドの使用量としては、開始物質の活性水素のモル数より過剰に必要である。アルカリ金属の三級アルコキシドの使用量が開始物質の活性水素のモル数以下の場合は、ポリオキシプロピレン重合体のアルコキシドが生成するのみであり、アリルエーテルの異性化効率は極端に低下する。好ましい実施形態においては、アルカリ金属の三級アルコキシドの使用量は開始物質の活性水素のモル数に対して1.1倍当量以上であり、より好ましくは1.3倍当量以上であり、さらに好ましくは1.5倍当量以上であり、特に好ましくは2.0倍当量以上である。また、工程(B)で使用する鉱酸の必要量および後処理の煩雑さを考慮すると5.0倍当量以下が好ましく、より好ましくは4.0倍当量以下である。
【0025】
本発明における工程(A)の処理温度は115℃以下であり、好ましくは110℃以下であり、より好ましくは105℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。115℃より高温では着色が強くなるため好ましくない。
【0026】
また、本発明における工程(A)の処理温度は、異性化反応を促進するという観点からは、70℃以上が好ましく、80℃以上が更に好ましい。
【0027】
本発明の工程(B)に用い得る鉱酸の好ましい例を挙げれば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、リン酸または次亜リン酸であり、より好ましくは塩酸、硫酸またはリン酸であり、さらに好ましくは塩酸または硫酸である。これらの鉱酸は任意の濃度に希釈して使用することができる。
【0028】
本発明の工程(B)では、工程(A)で得られた生成物に対して鉱酸を加えてpH4以下に調整する。好ましくはpH3以下であり、より好ましくはpH2.5以下であり、さらに好ましくはpH2以下である。また、pHが0未満では刺激臭の発生などの品質劣化を引き起こすため、pH0以上が好ましく、より好ましくはpH1以上である。なお、pHが4より大きい場合は酸濃度が不足し、プロペニルエーテルの加水分解が不十分となるか、もしくは加水分解に長時間を要する。
【0029】
本発明における工程(B)の処理温度は、70℃以下であり、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは50℃以下であり、さらに好ましくは40℃以下である。また、処理温度が0℃未満では粘度の上昇や中和塩の析出等により、撹拌に負荷がかかるため、0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上である。
【0030】
本発明においては、工程(B)の後にポリオキシプロピレン重合体から過剰の鉱酸および中和塩を除去することが好ましく、具体的には工程(C)および工程(D)の少なくとも一方により除去することが好ましい。工程(C)および工程(D)は、単独もしくは組み合わせて行ってもよい。
【0031】
工程(C)の水洗には、水またはアルカリ性水溶液を使用することができる。アルカリ性水溶液の調製に用い得る塩基の好ましい例を挙げれば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは酢酸ナトリウムなどであり、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウムである。上記塩基は単独もしくは組み合わせて使用してもよく、水洗は繰り返し行ってもよい。
【0032】
工程(C)の好ましい実施形態においては、工程(B)で用いた鉱酸の除去に使用する水またはアルカリ性水溶液の使用量を低く抑えるために、鉱酸を予め塩基で中性付近まで中和した後、水またはアルカリ性水溶液による水洗を行う。鉱酸の中和に用い得る上記塩基の具体的な例を挙げれば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムエトキシドなどであり、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。
【0033】
工程(C)の水洗に使用する水またはアルカリ性水溶液の使用量は、ポリオキシプロピレン重合体に対して0.5〜10質量倍が好ましく、より好ましくは1〜8質量倍であり、さらに好ましくは2〜6質量倍である。
【0034】
工程(C)においては、乳化現象などにより分層が困難または長時間を要する場合は、これらを改善するために適当な無機塩もしくは低級アルコールを添加して水洗を行ってもよい。具体的な無機塩としては塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウムおよび臭化カリウムなどが挙げられ、好ましくは塩化ナトリウムである。無機塩の使用量は、水洗で使用する水またはアルカリ水溶液の1〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜15質量%であり、さらに好ましくは3〜10質量%である。また、具体的なアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびt-ブタノールなどが挙げられ、好ましくはメタノールまたはエタノールである。
【0035】
低級アルコールの使用量は、水洗で使用する水またはアルカリ水溶液の0.1〜3質量倍が好ましく、より好ましくは0.2〜2.5質量倍であり、さらに好ましくは0.3〜2質量倍である。上記無機塩および低級アルコールは、単独もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0036】
また、工程(C)においては、ポリオキシプロピレン重合体を適当な有機溶媒に溶解して水洗を行ってもよい。具体的な有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、酢酸エチル、ヘキサン、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルムおよびジクロロメタンなどの非プロトン性溶媒が挙げられ、好ましくはトルエン、酢酸エチル、t-ブチルメチルエーテル、クロロホルムまたはジクロロメタンであり、より好ましくはクロロホルムまたはジクロロメタンである。有機溶媒の使用量は、ポリオキシプロピレン重合体に対して0.5〜10質量倍が好ましく、より好ましくは1〜8質量倍であり、さらに好ましくは2〜6質量倍である。上記有機溶媒は、単独もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0037】
工程(D)で用い得るアルミニウムとケイ素との少なくとも一方を含む酸化物からなる無機系吸着剤とは、酸化物中にアルミニウムとケイ素との一方または両方を含む酸化物である。具体的には、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムと二酸化ケイ素との複合酸化物、酸化アルミニウムと他の金属との複合酸化物および二酸化ケイ素と他の金属との複合酸化物が挙げられる。ここで言う他の金属としては、ナトリウム、マグネシウムおよびカルシウムが挙げられる。
【0038】
工程(D)において、過剰の鉱酸を取り除くためには酸性物質吸着能を有する吸着剤が好ましく、具体的な例を挙げれば、協和化学工業(株)製のキョーワードシリーズのキョーワード300(2.5MgO・Al
2O
3・0.7CO
3・nH
2O)、キョーワード500(Mg
6Al
2(OH)
16(CO
3)・4H
2O)、キョーワード1000(Mg
4.5Al
2(OH)
13(CO
3)・3.5H
2O)などが挙げられる。また、中和塩を取り除くためには塩吸着能の高い吸着剤が好ましく、具体的な例としては、キョーワード2000(4.5MgO・Al
2O
3)、キョーワード200B(Al
2O
3・2.0H
2O)などが挙げられる。なお、これらの吸着剤は、単独もしくは組み合わせて使用してもよい。
【0039】
また、本発明における工程(D)では、工程(C)にて鉱酸を除去した後、僅かに残留する塩基を除去することができる。この目的で用い得る吸着剤の具体的な例を挙げれば、キョーワード600(MgO・3SiO
2・nH
2O)、キョーワード700(Al
2O
3・9SiO
2・nH
2O)などの塩基性物質吸着能を有する吸着剤であり、好ましくはキョーワード700(Al
2O
3・9SiO
2・nH
2O)である。なお、これらの吸着剤は、単独もしくは他の吸着剤と組み合わせて使用してもよい。
【0040】
さらに、本発明における工程(D)では、工程(A)および工程(B)で僅かに生じる着色成分を除去することができる。この目的で用い得る吸着剤の具体的な例を挙げれば、キョーワード500(Mg
6Al
2(OH)
16(CO
3)・4H
2O)、キョーワード1000(Mg
4.5Al
2(OH)
13(CO
3)・3.5H
2O)などの色素吸着剤であり、好ましくはキョーワード1000(Mg
4.5Al
2(OH)
13(CO
3)・3.5H
2O)である。なお、これらの吸着剤は、単独もしくは他の吸着剤と組み合わせて使用してもよい。
【0041】
本発明の工程(D)における無機系吸着剤の使用量は、好ましくはポリオキシプロピレン重合体に対して10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。10質量%を超えると、ろ過操作に負荷がかかり、ろ過ケーキも増加するため好ましくない。
【0042】
工程(D)は、工程(A)および工程(B)で僅かに生じる微量の着色成分の除去には効果的であるが、比較例に示す不飽和エーテルの高温処理によって生じる着色成分に対しては、その効果は限定的であり、相当量の着色成分が除去されずに残存することとなる。すなわち、工程(D)のみを適用することで、本発明によって達成される水準まで着色を低減することは不可能であると言える。
【0043】
本発明で得られるポリオキシプロピレン重合体に対して、エチレンオキシドを開環重合させることにより、不飽和エーテル含量が低く、かつ着色を抑制したポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体を製造することができる。
【0044】
本発明のポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体において、ポリオキシエチレン部分の水酸基当りの数平均分子量は、好ましくは600〜20000であり、より好ましくは1000〜10000である。ここで、ポリオキシエチレン部分の数平均分子量は、ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の水酸基価から換算される数平均分子量から、エチレンオキシド重合前のポリオキシプロピレン重合体の数平均分子量を差し引くことにより求められる。
【0045】
着色の度合いは、ハーゼン色数で評価される値を用いる。ハーゼン色数はJIS K 0071に記載されている通り、塩化白金酸および塩化コバルトの混合溶液を用いて調整したハーゼン標準比色液と試料の透過色を比較して定める色番号である。また、ハーゼン色数測定器を用いて測定することもできる。ハーゼン色数の値が大きくなるほど、無色から黄色、褐色、濃褐色となる。本発明におけるポリオキシプロピレン重合体ならびにポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体のハーゼン色数は、好ましくは100以下であり、より好ましくは80以下であり、さらに好ましくは60以下であり、40以下であることが特に好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
なお、着色の度合いはハーゼン色数によって表わし、不飽和エーテル含量は
1H-NMRで測定し、ポリオキシプロピレン重合体ならびにポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体1g当たりの不飽和エーテルのミリ当量(meq/g、以下同様)で表わした。
【0048】
着色の度合いは、試料を関東化学(株)製特級エタノール(99.5)で4質量倍に希釈した溶液について、JIS K 0071に記載されているハーゼン標準比色液との透過色の比較により評価した。
【0049】
1H-NMR分析では、日本電子データム(株)製JNM-ECP400またはJNM-ECA600を使用し、φ5mmチューブを用いた。重溶媒としてはCDCl
3またはCD
3ODを使用し、内部標準物質としはテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定を行なった。
【0050】
不飽和エーテル含量は、ポリオキシプロピレン重合体におけるオキシプロピレン繰り返しユニットのメチルシグナル (1.1ppm付近)、アリルエーテル末端のメチレンシグナル (5.1〜5.3ppm付近)、プロペニルエーテル末端のメチルシグナル(1.55ppm付近)の積分値をそれぞれI
1、I
2、I
3として、次の計算式により算出した。
不飽和エーテル含量(meq/g) =
[(I
2/2)+(I
3/3)]/(I
1/3)×(Mn−60.10)/58.08×10
3/Mn
【0051】
ここで、I
2のみまたはI
3のみについて求めた値は、それぞれアリルエーテル含量またはプロペニルエーテル含量となる。なお、Mnは試料の水酸基価から換算される数平均分子量、60.10はエチレンジアミンの分子量、58.08はプロピレンオキシドの分子量である。
【0052】
ポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体については、エチレンオキシド重合前のポリオキシプロピレン重合体の水酸基価から換算される数平均分子量をMn、エチレンオキシド重合後のポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の水酸基価から換算される数平均分子量をMn’として、次の計算式により算出した。
不飽和エーテル含量(meq/g) =
[(I
2/2)+(I
3/3)]/(I
1/3)×(Mn−60.10)/58.08×10
3/Mn’
【0053】
実施例および比較例で使用したポリオキシプロピレン重合体は以下に示すプロピレンオキシド重合反応により合成した。
【0054】
(合成例1)
5Lオートクレーブ容器へN,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン146.2g (0.500mol)、50質量%水酸化カリウム水溶液9.87g (88.0mmol)、およびトルエン730gを仕込み、系内を窒素置換後、110℃に昇温し、水をトルエンで共沸除去した。110℃以下かつ0.5MPa以下でプロピレンオキシド2325g (40.0mol)を加え、同温度にて容器内の圧力が平衡に達するまで2時間以上反応を続けた。減圧にて未反応のプロピレンオキシドガスを除去後、無色透明の低粘度液状ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0055】
(実施例1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、および冷却管を装備した1L四つ口フラスコへプロピレンオキシド重合反応で得られたポリオキシプロピレン重合体300g (60.0mmol)とトルエン300gを仕込み、窒素雰囲気下110℃に昇温し、水をトルエンで共沸除去した。室温へ冷却後、脱水トルエン90gでスラリーにしたカリウムt-ブトキシド53.9g (480mmol)を加え、窒素雰囲気下100℃で2時間反応を行なった。40℃に冷却した後、冷却を続けながら徐々にイオン交換水80gを加えた。6N塩酸120ml
(720mmol)を加えて、窒素雰囲気下40℃で2時間反応を行なった。冷却しながら400g/l水酸化ナトリウム水溶液14ml (140mmol)で中和後、5質量%食塩水600g、メタノール450gおよびクロロホルム600gを加えて分液漏斗で洗浄した。水層を廃棄し、有機層を5質量%食塩/5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液600gとメタノール450gの混合溶液で洗浄した後、有機層の溶媒を留去した。残渣に含まれる水をトルエンで共沸除去した後、トルエン300gでスラリーにした協和化学工業(株)製キョーワード700 9gおよびキョーワード1000 9gを加え、窒素雰囲気下40℃で1時間撹拌した。東洋濾紙(株)製No.5A濾紙で濾過後、溶媒を留去して無色透明の低粘度液状ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0056】
(実施例2)
5Lオートクレーブ容器へ実施例1で得られたポリオキシプロピレン重合体250g (50.0mmol)、トルエン282g、
および50質量%水酸化カリウム水溶液1.56g (13.9mmol)とメタノール5.5gの混合溶液を仕込み、系内を窒素置換後、110℃に昇温し、水とメタノールをトルエンで共沸除去した。120℃以下かつ0.5MPa以下でエチレンオキシド500g (11.4mol)を加え、同温度にて容器内の圧力が平衡に達するまで2時間以上反応を続けた。減圧にて未反応のエチレンオキシドガスを除去後、80℃に冷却し、85質量%リン酸で中和して無色に近い固体のポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体を得た。
【0057】
参考のため、前記のポリオキシプロピレン重合体の合成例および実施例1、2に対応する化学式を示す。
【0058】
【化1】
【0059】
(比較例)
従来技術の中で不飽和エーテル含量が最も低いと考えられる非特許文献2に基づいて、以下の比較実験を行った。
【0060】
(比較例1)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、および冷却管を装備した1L四つ口フラスコへプロピレンオキシド重合反応で得られたポリオキシプロピレン重合体360g (72.0mmol)とトルエン360g、および50質量%水酸化カリウム水溶液1.62g (14.4mmol)を仕込み、窒素雰囲気下110℃に昇温し、水をトルエンで共沸除去した。トルエンを全量留去後、窒素雰囲気下160℃で3時間反応を行なった。40℃に冷却した後、50質量%リン酸でpH 3に調整し、窒素雰囲気下100℃で1時間反応を行なった。40℃に冷却した後、3分割して比較例1〜3の実験に使用した。
【0061】
(比較例2)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、および冷却管を装備した300ml 四つ口フラスコへ比較例1で得られたポリオキシプロピレン重合体120g (24.0mmol)、イオン交換水2.5g、協和化学工業(株)製キョーワード600 1.8gおよびキョーワード700 0.6gを仕込み、窒素雰囲気下100℃で1時間撹拌した。40℃に冷却し、東洋濾紙(株)製No.5A濾紙で濾過後、溶媒を留去して褐色透明の低粘度液状ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0062】
(比較例3)
分液漏斗へ比較例1で得られたポリオキシプロピレン重合体120g (24.0mmol)、トルエン120gおよびイオン交換水120gを仕込み、室温で十分振り混ぜた後、静置して分液させた。下層の水層を除いた後、再度同量のイオン交換水を仕込み、同じ操作を繰り返した。次いで水層を除き、上層の有機層を減圧下濃縮して残存する水を共沸除去した後、東洋濾紙(株)製No.5A濾紙により濾過して褐色透明の低粘度液状ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0063】
(比較例4)
比較例1で得られたポリオキシプロピレン重合体120g (24.0mmol)を実施例1に準じて400g/l水酸化ナトリウム水溶液で中和後、クロロホルム240gに溶解し、5質量%食塩水240gおよびメタノール180gを加えて分液漏斗で洗浄した。水層を廃棄し、有機層を5質量%食塩/5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液240gとメタノール180gの混合溶液で洗浄した後、有機層の溶媒を留去した。残渣に含まれる水をトルエンで共沸除去した後、トルエン120gでスラリーにした協和化学工業(株)製キョーワード700 3.6gおよびキョーワード1000 3.6gを加え、窒素雰囲気下40℃で1時間撹拌した。東洋濾紙(株)製No.5A濾紙で濾過後、溶媒を留去して黄色透明の低粘度液状ポリオキシプロピレン重合体を得た。
【0064】
(比較例5)
5Lオートクレーブ容器へ比較例1で得られたポリオキシプロピレン重合体100g (20.0mmol)、トルエン113g、
および50質量%水酸化カリウム水溶液0.62g (5.5mmol)とメタノール2.2gの混合溶液を仕込み、系内を窒素置換後、110℃に昇温し、水とメタノールをトルエンで共沸除去した。120℃以下かつ0.5MPa以下でエチレンオキシド200g (4.5mol)を加え、同温度にて容器内の圧力が平衡に達するまで2時間以上反応を続けた。減圧にて未反応のエチレンオキシドガスを除去後、80℃に冷却し、85質量%リン酸で中和して褐色固体のポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体を得た。
【0065】
(比較例6)
温度計、窒素吹き込み管、攪拌機、Dean-stark管、および冷却管を装備した300ml 四つ口フラスコへプロピレンオキシド重合反応で得られたポリオキシプロピレン重合体100g (20.0mmol)とトルエン100gを仕込み、窒素雰囲気下110℃に昇温し、水をトルエンで共沸除去した。室温へ冷却後、川研ファインケミカル(株)製SM-28 (28質量%ナトリウムメトキシド メタノール溶液) 30.9g (160mmol)を加え、100℃まで昇温しながらメタノールを除去した。その後、窒素雰囲気下100℃で2時間反応を行なった。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示すように、実施例1で得られたポリオキシプロピレン重合体はハーゼン色数が10以下であり、ほとんど無色であった。
【0068】
一方、比較例1の高温処理と続く酸加水分解後の比較例2および3では、いずれもハーゼン色数が500以上と着色が強く、さらに不飽和エーテル含量も多かった。
また、比較例4では、後処理を実施例1と同様の工程(D)で行ったところ、着色は幾分低減されたものの、実施例1と同等の水準まで低減することは不可能であった。したがって、比較例1で生じた着色は、実施例1と同様の工程(D)では除去できない成分を含むと考えられる。
【0069】
表1の実施例1と比較例2のそれぞれのポリオキシプロピレン重合体に対して、エチレンオキシドを開環重合させた実施例2と比較例5を比べると、得られたポリオキシプロピレン/ポリオキシエチレンブロック共重合体の着色は比較例5の方が明らかに強く、エチレンオキシド重合前のポリオキシプロピレン重合体の着色が大きく影響することを示唆している。
【0070】
また、表1の比較例6では、実施例1で使用したカリウムt-ブトキシドの代わりに、特許文献1記載のナトリウムメトキシドを同モル数使用し、同じ温度で処理したところ、アリルエーテルのプロペニルエーテルへの異性化は進行しなかった。