(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記撮像素子の画素アドレスの少なくとも1つの範囲についての温度依存参照固定パターンノイズデータを有する工場特性情報を記憶することをさらに有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
前記撮像素子の全画素アドレスについての温度依存参照固定パターンノイズデータを有する工場特性情報を記憶することをさらに有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
前記撮像素子の対象画素アドレスについての前記実際の固定パターンノイズを取得することが、前記画素アレイの対象行または列についての実際の固定パターンノイズを取得することを有し、前記実際の固定パターンノイズと前記参照固定パターンノイズとの相関をとることが、前記対象行または列を含む、前記画素アレイの行または列の範囲についての参照固定パターンノイズを取得することと、前記対象行または列についての実際の固定パターンノイズと前記範囲内の各行または列についての参照固定パターンノイズとの相関をとることとを有し、前記相関の結果に基づいて前記撮像素子についての前記アドレス指定誤りを検出することが、前記対象行または列についての前記実際の固定パターンノイズが前記対象行または列についての前記参照固定パターンノイズと明白な相関を示さない場合にアドレス指定誤りがあると決定することを有し、前記対象行または列についての前記実際の固定パターンノイズが前記対象行または列の前記参照固定パターンノイズに関して規定された相関閾値を満たし、前記範囲内の他の行または列のいずれについての前記参照固定パターンノイズとも強い相関を示さない場合に、前記対象行または列についての前記実際の固定パターンノイズが前記対象行または列についての前記参照固定パターンノイズと明白な相関を示すとみなされる、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
前記撮像素子の前記対象画素アドレスについての前記実際の固定パターンノイズを取得することが、前記撮像素子の対象画素アドレスから実際の固定パターンノイズ(FPN)値を読み出すことを有し、
前記実際の固定パターンノイズと前記対象画素アドレスについて既知の前記参照固定パターンノイズとの相関をとることが、前記実際のFPN値が前記対象画素アドレスに実際に存在する画素の特性である参照FPN値と合致するか否かを判定することを有し、
前記相関の結果に基づいて前記撮像素子についてのアドレス指定誤りを検出することが、前記対象画素アドレスについて前記実際のFPN値が前記参照FPN値と合致しない場合に前記撮像素子についてアドレス指定誤りが存在すると決定することを有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
図1はCMOS撮像素子の例を示す。なお、図の細部はここでの教示を理解するために有用ではあるが、非限定的なものとして理解すべきである。図示のCMOS撮像素子10において、「CMOS」は相補型金属酸化膜半導体を意味する。撮像素子10はカバーガラスおよびマイクロレンズアレイ12、有効画素センサアレイ14を、関連するアナログ処理回路16),アナログ−デジタルコンバータまたはADC18、および、ADC18によってデジタル形式に変換されたアナログ信号を処理するデジタル信号処理回路20とともに有する。
【0003】
撮像素子10はさらに、デジタル処理回路20のような、撮像素子10の1つ以上の要素とインタフェースするための、処理およびインタフェース回路22を有する。また、撮像素子10は、露光タイミングおよび制御回路26、および、画像読み出しタイミングおよび制御回路28の動作といった所定の動作を制御するための制御レジスタ24を有する。そして、画像読み出しタイミングおよび制御回路28は、有効画素アレイ14からデータを読み出すために用いられる行デコーダ回路30および列デコーダ回路32を制御する。
【0004】
行デコーダ回路30によって有効画素アレイ14の1行を一度にアクティブにすることにより、有効画素アレイ14は選択された行に関する画素データを表すアナログ信号を出力する。アナログ処理回路16はアナログ画素データを取り込むためのサンプルホールド回路を有する。すべてのアナログ処理の後、取り込まれたアナログデータはADC18によってデジタルドメインに変換され、デジタル処理回路20でさらに処理される。
【0005】
図2は
図1に示す例示的撮像素子10にも当てはまる「平面図」の例を示す。タイミングおよび制御回路28内のカウンタは画素アレイ14の自動スキャンを実施する。より詳細には、カウンタは行および列デコーダ回路30および32へのアドレス信号を生成する。この手法は有効画素アレイ14内の各画素の独立したアドレス指定を可能にする。
【0006】
図3は、
図1および
図2に示した有効画素アレイ14を構成する例示的な画素回路の詳細を提供する。
図3は撮像素子の有効画素アレイ14で実施される行/列読み出し手法を示している。特に、行/列アクティベーションに関するトランジスタQ1およびQ2、および、蓄電および飽和制御を提供するトランジスタQ3およびQ4がそれぞれ図示されている。
【0007】
図1〜
図3の例に示したようなタイプの撮像素子に関するさまざまな故障のうち、所定の故障は動作に与える影響および/または検出の困難性という点において特に問題が大きい。例えば、アドレス指定誤りは特に問題である。より詳細には、アドレス指定を引き起こすように行デコードまたは列デコードが失敗すると、選択された画素について読み出されたデータは、有効画素アレイ14の別の行または列の選択されていない画素についてのデータを表す可能性がある。
【0008】
撮像素子から読み出されている画像データのアーチファクトまたは破損を引き起こすだけでなく、撮像素子アドレス指定誤りは、撮像素子10が機械防護(machine guarding)、自律車両ガイダンス、エリア監視、または他の高セキュリティおよび/またはセーフティクリティカルな撮影機能に用いられる用途において、重大な設計の安全性の検討を表すことが理解される。例えば、セーフティクリティカルなマシンビジョンまたは他の物体検知用途において、誤った撮像素子のアドレス指定は、そうでなければ検知されたであろう物体を撮像システムが検知しそこなう結果を招く可能性がある。
【0009】
撮像素子アドレス指定誤りを検出するためのさまざまな既知のアプローチは、テストパターンまたは画像を撮像素子に投入することを含んでいる。これら投入されるパターンまたは画像は内蔵されても外部にあってもよい。いずれの場合も、関与する撮像素子から読み出される画像データは、投入したテストパターンまたは画像と一致しなくてはならない。残念なことに、テストパターンの利用は潜在的に非常に長い検証テストを意味し、かつ一般的に撮像素子をオフラインにすること、例えばテストパターン導入のために通常の、または名目上の撮像動作を中断することを必要とする。
【0010】
別のアプローチは各画素のアドレスを表すデータやマークの類いの付与を伴う。付与は関連する画素アレイから画素信号が読み出される際に行われる。しかし、この、アドレス指定誤り検出のためのアプローチは撮像素子が特別に設計されていることを必要とし、そのような撮像素子は低コストの汎用CMOS撮像素子よりも高価になる傾向がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図4は、撮像素子の選択された行/列ライン出力または信号をセーフティクリティカル出力として特定する「緩和策」テーブルを示す。図示のテーブルは、行/列デコーディングテストを軽減技術として特定している。特に興味深いのは、ここに開示されている緩和テストは特別なセンサ回路または機能を必要とせず、
図1〜
図3の例に示されるような「一般的」もしくは汎用撮像素子に直接適用されることである。
【0020】
ここで教示される誤ったアドレス指定の検出の1態様において、誤り検出は、所与のアドレス位置で画素アレイから読み出された「固定パターンノイズ」またはFPNが、それらのアドレス位置について既知の特徴的なFPNを合致するかどうかの判定を含む。ここで、FPNは、個々の画素および/または関連付けられた増幅回路の感度または応答性の変動によって引き起こされる、イメージングアレイ内の画素にわたって見られる強度または輝度変動の明瞭かつ固定のパターンを意味することを理解されたい。
【0021】
一般に、所与の撮像素子の画素アレイ内の各行または列は、特徴的なFPNを呈する。そのため、プログラミングされたプロセッサのようなテスト回路が、画素アレイ内の各行および/または列について特徴的なFPNを知っている範囲で、テスト回路は、画素アレイの1つ以上の行または列について、所与の行/列アドレスに関して得られたFPNがその所与の行/列アドレスに関するFPN特性と合致しないことを検出することの検知に基づいて、撮像素子に入力される行/列選択が正しくデコードされていないことを検知可能である。
【0022】
よりおおまかに述べれば、ここでは、個々のイメージャセンサは、その画素アレイを構成する行および列に関して統計学的に固有のFPNを有すると認めている。従って、画素アレイの特定のアドレスからの読み出しを試行し、対応して出力されたFPNが読み出されているアドレスに関する特性であるかどうかを判定することにより、ここで教示されるテスト回路および方法は、デコーディング誤りとも呼ばれるアドレス指定誤りを検出する。検出される誤りの非限定的な例は、行取り違え、列取り違えなどを含む。
【0023】
特に、FPNは有効画素アレイと、画素アレイのダーク行および列との両方に現れる。この点に関し、一般的な撮像素子は1つ以上の「ダーク」行/列を有することに留意されたい。ダーク行または列は必要に応じてブラックであり、入射光に対して感受性を有しない。通常、ダーク行および列は光学的にアクティブな画素エリア(すなわち、入射光に反応する画素アレイのエリア)を取り囲んでおり、ダーク行および列は画素アレイの有効画素エリア内の行および列と同じやり方でアドレス指定することができる。
【0024】
図5はCMOS撮像素子の画素アレイについての例示的なFPNを示す。ここで、画素アレイの行および列は特徴的なFPNを呈し、
図6は、所与の撮像素子についてのファクトリーキャリブレーションまたは特徴付け処理の一部としてFPN「テンプレート」40を生成するための1つの想定される手法を示している。図示した例において、FPNは24℃で特徴付けられ、撮像素子についてのFPNテンプレート40は100のダーク画像42を平均することに基づいて生成される。一例において、FPNテンプレート40は、撮像素子の行/列の少なくとも一部(例えばダーク行および列)に対応するFPN値を有するファイル、データレコード、または他の電子データを有する。
【0025】
同様に、
図7はFPNテンプレート40によって特徴付けられる撮像素子を含んだ機器またはシステムでランタイム時にFPNテンプレート40を用いるための例示的なアプローチを示している。例えば、マシンビジョンシステムのセンサヘッドまたはカメラはエリア監視などのためのCMOS撮像素子を含み、さらに、撮像素子のためのFPNテンプレートを記憶するための不揮発性記憶装置を含む。センサヘッドまたはカメラはさらに、少なくともFPNテンプレートに表されているアドレスについて、アドレスを撮像素子に入力することに基づいて画素データを読み出すためのテスト回路を含む。そのような回路は、通常の画像取得および処理のために撮像素子を読むのに用いられている通常のアドレス指定/インタフェース回路と少なくとも部分的に共通であってよい。
【0026】
テスト回路は特定のアドレスについてFPNテンプレート40に記憶された画素データと、それらのアドレス値が撮像素子に入力された際に撮像素子から読み出された実際の画素データとの相関をとる。撮像素子に入力されたある読み出しアドレスが撮像素子によって正しくデコードされている場合、撮像素子から出力される実際の画素データは、そのアドレスについてFPNテンプレート40に記憶されている特性FPNを構成する画素データと強い関連性を有するはずである。
【0027】
例えば、
図7は撮像素子の画素アレイ内の特定の行iが選択されて撮像素子から読み出されていることを示している。選択行iについて撮像素子から読み出された画素データはFPNテンプレート40内の画素データの各行と相関が取られる。これは「行対行」の相関処理として理解することができ、したがって、選択された行アドレス(すなわち、画素データを読み出すために撮像素子に入力された行アドレス)に対応する、FPNテンプレート40内の画素データの行で、最も高い、または最も強い相関が得られるであろう。
【0028】
言い換えれば、撮像素子に入力される読み出しコマンドが行iに関するアドレスを対象としている場合、その読み出し動作に関して画素アレイから出力される画素データは、アドレス指定に誤りがなければ、FPNテンプレート40から既知の、行iの特性FPNと最も強い関連性を有するはずである。
【0029】
図8はさらなる例示的な詳細を提供する。この場合、表向きには行番号196が撮像素子から読み出され、その読み出しによって得られた画素データは、FPNテンプレート40内の画素データの各行と相関が取られる。これは、行番号196について撮像素子から読み出された実際のFPNと、(例えばその撮像素子のファクトリーキャリブレーションの一部として決定された)FPNテンプレート40内に表される各行の特性FPNとの相関をとることと理解することができる。通常期待されるように撮像素子におけるアドレス指定誤りがないので、撮像素子から読み出された画素データはFPNテンプレート内の行196の特性FPNと最も強い相関を示している。
【0030】
図9は、相関処理に関連するいくらかの偽陽性リスクと、それに対応して1つ以上の実施形態において提案する緩和対抗策とをまとめた表を示している。特に、FPNは撮像素子温度に強く依存し、FPNは低温で明確で無くなってくる(すなわち、行や列によるFPNの差が、撮像素子温度が低いとあまりはっきりしなくなる)。したがって、撮像素子が十分な温度であることを確実にするためにヒータを用いる緩和策が考えられる。
【0031】
もちろん、ヒータの故障や所定の他の状況下では、撮像素子の異なる行または列の間に存在するFPNの差異が不十分になる可能性は依然として存在する。したがって、ある選択された行または列からの読み出しが、誤って複数の行または列からの画素データにアクセスするような撮像素子アドレス指定誤りの場合、別の偽陽性リスクが生じる。この失敗リスクを緩和するため、FPNテンプレート40内の複数の行または列と、撮像素子の選択された1つの行または列から読み出された実際の画素データとに比較的強い相関が認められる場合、相関処理はエラー状態を宣言するように構成されてよい。そのようなエラーは実際のアドレス指定誤りの結果であるかもしれないし、撮像素子が低温で、行/列間のFPNが十分に区別されていないことの結果であるかもしれない。
【0032】
図10は、試作カメラ製品内の例示的な撮像素子から取得された実際の温度データを示す。この表は、外部(環境)温度と、カメラ試作品内部の撮像素子温度との、観察された関係を示している。データは、外部環境温度0℃までは信頼できるアドレス誤り検出が利用可能であることを示している。もちろん、異なるカメラ設計および/または他の対策に応じて、さらに低い外部環境温度での動作も許容されうるであろう。
【0033】
例えば、アナログデジタル変換(ADC)解像度の動的変更を用いることも想定されている。ここで議論するADC解像度は、撮像素子の画素アレイから画素値を読み出すために用いられるもの、すなわち
図1の例に示されるADCとして理解されよう。さらに、または代わりに、さらなる緩和策として動的ゲインおよび/またはオフセット制御が撮像素子に対して用いられる。後述するように、撮像素子画素アレイの動作および/または読み出しに関するゲインおよび/またはオフセット値の動的制御は、撮像素子の異なる行/列が呈する実際のFPNの固有性(distinctiveness)を強めるために用いられてよい。
【0034】
図11は、1つ以上の実施形態において想定される撮像素子アドレス指定誤りの検出のための、行方向相関処理を実行するための疑似コードの例を示す。疑似コードをよく調べると分かるように、アルゴリズムは選択された行、すなわち特定の入力アドレスについて撮像素子から読み出される行が、FPNテンプレート内の同じアドレスの行と最も高い相関を示すことを必要とする。
【0035】
従って、読み出された行のFPNが、FPNテンプレート40の各行のFPNと比較され、読み出された行のFPNが、読み出された行の行アドレスについてのFPNテンプレート40内のFPNと最も強い相関を示す場合だけテストに合格する。より一般的に述べれば、画素データは特定のアドレス(またはアドレス範囲)について読み出される。アドレス指定誤りがなければ、読み出された画素データが示すFPNは、同じアドレスまたはアドレス範囲についてのFPNテンプレート40内に記憶されているFPNと最も強い相関を示すはずである。
【0036】
さらに、アルゴリズムは相関の結果が少なくとも規定された閾値、例えば0(相関なし)から1(完全相関)までの相関スケールで0.8に相当することを必要とするように拡張されてもよい。このアルゴリズムが行方向処理などに適用可能なことはいうまでもない。
【0037】
ここで想定されているアドレス指定誤り検出の別の態様では、ランタイムおよび起動時両方での検出処理が考えられる。ランタイム検出の1つのアプローチにおいて、想定されるテスト回路は撮像素子に関する実際のFPNパターンを得るために低統合(低露出)テストフレームを用い、かつダーク列および/またはダーク行と、少なくとも一部の実施形態においてはさらに有効画素アレイ内の画素とを用いる。撮像素子を有するカメラまたはセンサヘッドが一般にはランタイム動作中に、撮像素子の異なる行および列間で十分に異なったFPNを確実とするのに足りる程度に熱くなるであろうため、このような柔軟性が許容される。
【0038】
一方、起動時において撮像素子は、異なる行および/または列間で十分に異なったPFNパターンを呈するには冷たすぎるかもしれない。しかしながら、アドレステストを実行する前に撮像素子が暖まるのを待つのは現実的でなく、また、セーフティクリティカルアプリケーションでは、防護型機械(guarded machine)の動作または他の外部動作はセーフティクリティカルテストの全てが成功裏に実行されるまで開始を許可されないかもしれない。
【0039】
そのため、ここでは、アドレステストを起動時に、延長された露出時間、例えば500msから数秒までの露出時間を用いることに基づいて実行することが想定されている。長い露出時間の利用は、環境温度が低い場合、あるいは撮像素子が通常動作温度に達していない場合に効果的である。さらに、コールド/起動アドレステストについて、1つ以上の実施形態におけるテスト回路は、FPNパターンとFPNテンプレート40との相関を求めるために、撮像素子のダーク列および/またはダーク行だけを読み出す。そのため、1つ以上の実施形態では、FPNテンプレート40が、撮像素子のダーク列/行および有効列/行の両方について、温度に依存したFPN特性を含むことが想定されている。
【0040】
撮像素子の異なる行/列から読み出された画素データについて観察されるFPNの固有性または特有性は、アドレス指定誤りの確かな検出の重要な特性である。そのために、一部の実施形態においてテスト回路は、既知の内蔵アナログオフセットを適用することにより、および/またはアナログゲインを変更することにより、撮像素子のFPNパターンを制御し、また変化させる。つまり、撮像素子動作の1つ以上のパラメータを変更(概して撮像素子の「動作点」の変更と呼ぶ)することにより、撮像素子が呈するFPNパターンを変更する。
【0041】
従って、ファクトリーキャリブレーションの一部として、一部または全部の行/列についての撮像素子の特徴的FPNパターンを、いくつかの異なる動作点のそれぞれについて記憶させることができる。そして、撮像素子の本来の場所、すなわちその撮像素子を有する製品内でのライブまたはフィールドテストの間、撮像素子アドレス指定誤りをより確実に検出するためにテスト回路により大きなデータセットを与え、ここで説明したFPN相関処理を、いくつかの動作点のそれぞれについて実行することができる。
【0042】
これを、各動作点に対する異なるFPNテンプレート40の生成すること、もしくはFPNテンプレート40に多次元または複数ページを持たせることと見なすことができる。実際の場所でのテスト中、テスト回路は例えば撮像素子用の適切なゲインおよび/またはオフセット値を設定することにより、動作点を選択するであろう。選択された動作点を維持しながら、テスト回路は選択されたアドレスについて撮像素子から画素データを読み出し、そのデータを、選択された動作点に関するFPNテンプレート40と比較するであろう。そのようなテストは一部または全部の動作点で実行されてよく、テストの全体的な合格/失敗状態は、テスト結果の集計に基づくことができる。特定の厳しいセーフティ設定において、いずれか1つの動作点でのいずれかのテストが失敗すれば、全体的なテストは失敗したと見なしてもよい。
【0043】
図12に示される表は、撮像素子アドレス指定誤りを確実に検出するために、ここで説明したFPNに基づく相関処理を実行するための緩和策および/または強化策の例示的な集団を表す。撮像素子10の画素強度に所定のオフセットを導入するために、アナログ処理回路16のアナログオフセットを制御できることがわかる。さらに、または代わりに、例えば
図1に示されるアナログ処理回路16のアナログゲインを増加させることによってアナログゲインを制御して、撮像素子10が呈するFPNを変更したり、行/列単位でより異ならせたりすることができる。さらに、加えて、または代わりに、想定されるテスト回路は、撮像素子10からの画素値をデジタル化するために用いられるADC18の解像度および/または基準電圧を、撮像素子の異なる行/列が呈する実際のFPN間の違いを拡大させる仕組みとして動的に調整することができる。
【0044】
図13は、例示的な実施形態に係る、想定されるテスト回路50を示している。テスト回路50は、例えばカメラ、他の装置またはアセンブリであってよい撮像装置48に存在する。テスト回路50の全てまたは少なくとも一部が、撮像装置48と共有されうることが理解されよう。例えば、一部の実施形態において、テスト回路50は、CMOS撮像素子であってよい撮像素子52を統合ならびに用いるために必要に応じて撮像装置48に実装される総合的な画像処理および制御回路に、実装されるか、さもなくば統合される。
【0045】
テスト回路50は、CPUまたは他のデジタル処理回路56を有する処理回路54を有する。処理回路54は例えば、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、DSP、FPGAまたは他のプログラマブルロジックデバイス、ASICなどを、サポート回路とともに有する。例えば、処理回路54はプログラムおよびデータメモリまたは記憶装置60とを有するか、それらに関連付けられる。プログラムおよびデータメモリまたは記憶装置60は、例えばフラッシュメモリ、EEPROMまたは他の不揮発性メモリを有する。もちろん、処理回路54は揮発性のワーキングメモリを含んだり、それに関連付けられたりしてよい。
【0046】
概して、プログラムおよびデータメモリまたは記憶装置60は、1つ以上の実施形態において、コンピュータプログラム62および1つ以上のFPNテンプレート40のための不揮発性の恒久的な記憶装置を提供するコンピュータ読み取り可能な媒体を有する。特定の例において、プログラムおよびデータメモリまたは記憶装置60は、撮像素子52に関する特性FPNデータを有する少なくとも1つのFPNテンプレート40を記憶する。
【0047】
さらなる例として、テスト回路50は、処理回路54を撮像素子52に接続するI/O回路であるセンサインタフェース58を有する。処理回路54は例えば撮像素子52に外向読み出しアドレスを出力し、それらのアドレスについて撮像素子52から読み出される入来画素データを受信する。処理回路54は動作点OP制御信号を表すデータまたは信号をさらに出力する。OP制御信号は、撮像素子アドレス指定テストのために、撮像素子52の1つ以上の動作点を確立するために用いられるADC解像度、ゲイン、および/またはオフセット値を制御する。
【0048】
処理回路54は1以上の実施形態では固定された回路から構成されてよいが、例えばマイクロプロセッサであるプログラマブル回路を用いてテスト回路54を実施することも想定されている。そのような実施形態において、プログラマブル回路は、プログラムおよびデータメモリまたは記憶装置60に記憶されるようなコンピュータプログラム62を構成するコンピュータプログラム命令の実行に基づいて、ここで開示した動作を実行するように特に適合される。
【0049】
テスト回路50はさらに、温度センサ68および/またはヒータ70を含むか、それらと連携してもよい。想定される一実施形態において、1つ以上のFPNテンプレート40は、それぞれが異なる温度範囲に関連付けられた複数のFPNテンプレート40を有する。さらに、処理回路54は温度表示、例えば環境温度測定値をI/O回路58を通じて温度センサ68から取得し、アドレス指定誤りを検出するために用いるための、適切なFPNテンプレート40を選択する。さらに、またはあるいは、温度依存する小区分または部分を含むただ1つのFPNテンプレート40だけが存在し、処理回路54は検出された温度を、FPNテンプレート40の小区分の適切な部分にアクセスするために用いる。
【0050】
更なる追加として、またはさらなる実施形態の1つ以上において、処理回路54は、撮像素子52の実際の行/列FPNがはっきりしなくなるような低温になることを防止するために、ヒータ70(例えば電気コイル、電力抵抗器、または他の加熱回路)を制御する。例えば、処理回路54は、撮像素子52が最小温度値以上を維持するよう、必要に応じてヒータ70を稼働させることができる。
【0051】
一般に、想定される一実施形態によれば、テスト回路50は撮像素子52内のアドレス指定誤りを検出するように構成され、テスト回路50は処理回路54と、撮像素子52の画素アドレスの少なくともある範囲についての参照FPN値を有する固定パターンノイズFPNテンプレート40を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体60とを有する。さらに、テスト回路50は、処理回路54を通信可能に撮像素子52に接続するように構成されたセンサインタフェース回路58を有する。
【0052】
処理回路54は、撮像素子52の対象画素アドレスについての実際の固定パターンノイズを取得し、実際の固定パターンノイズと対象画素アドレスについて既知の参照固定パターンノイズとの相関をとるように構成される。さらに、処理回路54は、相関の結果に基づいて撮像素子に関するアドレス指定誤りを検出するように構成される。
【0053】
例えば、そのような実施形態の少なくとも1つにおいて、処理回路54は、画素アレイの対象行または列について実際の固定パターンノイズを取得することにより、撮像素子の対象画素アドレスについての実際の固定パターンノイズを取得し、画素アレイの行または列の範囲についての参照固定パターンノイズを取得することによって、実際の固定パターンノイズと、参照固定パターンノイズとの相関をとるように構成される。この範囲は対象行または列を含む。
【0054】
処理回路54は、対象行または列についての実際の固定パターンノイズと、その範囲内の各行または列についての参照固定パターンノイズとの相関をとるように構成される。さらに、処理回路54は、対象行または列についての実際の固定パターンノイズが、その対象行または列についての参照固定パターンノイズと「明白に」相関していると認められない場合にアドレス指定誤りがあると決定することにより、撮像素子についてのアドレス指定誤りを検出するように構成される。
【0055】
一般に「明白な」相関とは、規定された相関閾値を超える相関の結果を意味する。さらに、対象画素アドレスについての実際の固定パターンノイズが、対象画素アドレスに対応する参照固定パターンノイズ以外のFPNテンプレート40内のいずれかの固定パターンノイズと強い相関を示さないことも意味する。加えて、対象画素アドレスに対応する実際の固定パターンノイズと参照固定パターンノイズとの間で見られる相関の結果が、他の全ての相関の結果より、規定されたマージンを超えることも意味する。
【0056】
例えば、対象行または列について撮像素子52から読み出された実際の固定パターンノイズは、その対象行または列についてFPNテンプレート40が有している参照固定パターンノイズに関して強い相関の結果を生成するかもしれないが、同時にFPNテンプレート40内の別の行または列とも強い相関を示すかもしれない。そういった不明瞭さは、例えば、撮像素子の温度が低く、撮像素子52の異なる行または列間の実際の固定パターンノイズの区別がしにくくなっている場合に生じる。
【0057】
さらに、テスト回路50の具体的なアーキテクチャとは関係なく、1つ以上の実施形態において、テスト回路50は画素アレイを有する撮像素子における誤った画素アドレス指定を検出する方法を実行するように構成される。この方法は、撮像素子の対象画素アドレスについて実際の固定パターンノイズを取得することと、実際の固定パターンノイズと、対象画素アドレスについて既知の参照固定パターンノイズとの相関をとることと、相関の結果に基づいて撮像素子についてのアドレス指定誤りを検出することとを有する。
【0058】
方法はテスト対象の撮像素子52を有する機器または装置の起動時に実行され、方法は、撮像素子52から実際の固定パターンノイズを読み出すために延長された露出時間を用いることを含んでもよい。さらに、またはその代わりに、方法はランタイムに実行され、動作中のフレームレートに対応する名目上の露出を用いることをさらに有する。
【0059】
一部の実施形態において、方法は、望ましい最小動作温度に従って撮像素子52を加熱することを有し、方法の1つ以上の実施形態は、画素アドレスの少なくとも1つの範囲についての温度依存参照固定パターンノイズデータを有する工場特性情報を記憶することを有する。すなわち、FPNテンプレート40は温度依存特性データを有する。例えば、FPNテンプレート40は、撮像素子52の全画素アドレスについての温度依存参照固定パターンノイズデータを有する工場特性情報を記憶する。
【0060】
想定される方法の詳細に関する他の例において、撮像素子の対象画素アドレスについての実際の固定パターンノイズを取得する工程は、画素アレイの対象行または列についての実際の固定パターンノイズを取得することを有する。実際の固定パターンノイズと参照固定パターンノイズとの相関をとる工程は、画素アレイの、対象画素アドレスを含む行または列の範囲についての参照固定パターンノイズを取得することと、対象行または列についての実際の固定パターンノイズと、範囲内の各行または列についての参照固定パターンノイズとの相関をとることとを有する。相関の結果に基づいて撮像素子52のアドレス指定誤りを検出する工程は、対象行または列についての実際の固定パターンノイズが対象行または列についての参照固定パターンノイズと明白な相関を示さない場合に、アドレス指定誤りが存在すると決定することを有する。
【0061】
図14は、上述した処理の実施として理解することのできる例示的な方法1400に関するフロー図である。方法1400の1つ以上の工程は図で示唆されているものとは異なる順序で実行されうること、また1つ以上の工程が並行して、または他の動作と一緒に実行されうること、繰り替えされたりループされたりしうることが理解されよう。
【0062】
例えば、一部の実施形態において、方法1400は撮像装置48の起動時に、撮像素子14の1つ以上の動作点について実行され、また、撮像装置48の通常のランタイム動作の間に、繰り返しおよび/またはトリガされたことに応じて実行される。少なくとも1つの実施形態において、方法1400の実行頻度はセーフティクリティカル故障検出要件によって命令される。
【0063】
いかなる場合も、方法1400は、撮像素子52の対象画素アドレスから実際の固定パターンノイズ(FPN)値を読み出すこと(ブロック1402)と、実際のFPN値が、対象画素アドレスに実際に存在する画素の特定である参照FPN値と合致するかどうかを判定すること(ブロック1404)とを有する。方法1400はさらに、対象画素アドレスについて、実際のFPN値が参照FPN値と合致しない場合に、撮像素子についてアドレス指定誤りが存在すると決定すること(ブロック1406)を有する。
【0064】
方法1400を実施するテスト回路50の一例において、テスト回路50は、撮像素子52の対象画素アドレスから実際の固定パターンノイズ(FPN)値を読み出し、実際のFPN値が、対象画素アドレスに実際に存在する画素についてFPNテンプレートから既知の参照固定パターンノイズと合致するか否かを判定するように構成される。テスト回路50はさらに、対象画素アドレスについて実際のFPN値が参照FPN値と合致しない場合に、撮像素子52についてアドレス指定誤りが存在すると決定するように構成される。
【0065】
先に示したように、方法1400について要求される「合致」は、単純な合致/非合致よりも複雑な、または微妙な差異を有することが理解されよう。例えば、撮像素子52から読み出された実際のFPN値は、撮像素子の画素アレイ内の対象行または列を有しており、方法1400は以下のいずれか1つまたは任意の組み合わせによって規定されるような明白な合致を要件としてもよい。
- FPNテンプレート24内の複数の行または列について、参照FPN値に対する実際のFPN値の相関をとり、対象行または列に対応する参照FPN値に関して最大相関応答が認められることを確かめること、
- 対象行または列についての実際のFPN値と参照FPN値との間の相関応答が、規定された最低応答閾値に等しいか、最低応答閾値よりある程度高いことを確かめること、
- 対象行または列についての実際のFPN値と参照FPN値との間で認められる相関応答が、FPNテンプレート40内で評価された他の全ての行または列に関して見られる相関応答よりも、何らかの規定されたマージンだけ大きいことを確かめること、
- FPNテンプレート40の複数の行または列が、撮像素子52から読み出された実際のFPN値に関して強い相関応答を生成することがないことを確かめること。
【0066】
特に、上述の説明および関連する図面に示された教示の利点を教授した本技術分野に属する当業者は、開示された1つ以上の発明の変形物および他の実施形態を想起するであろう。従って、1つ以上の発明が開示された特定の実施形態に限定されるべきでないこと、および、変形物および他の実施形態が本開示の範囲に含まれるべきであることを理解すべきである。本明細書では特定の用語が用いられているかもしれないが、それらは汎用的かつ説明的な意味でのみ用いられており、限定を目的としたものではない。