(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の第1の実施形態に係る移動型無線電力伝送システム1は、
図1に示すように、送電装置2と多重化制御装置3と受電装置4を備えるものである。この移動型無線電力伝送システム1では、多重化制御装置3が出力する多重化制御信号に基づき、送電装置2から受電装置4に高周波電力が送電される。
【0013】
送電装置2は、高周波電源21とそれに接続された伝送線路22を有している。高周波電源21は、所定の単一の送電周波数の高周波電力を出力する。また、高周波電源21とは反対側の伝送線路22の端部には、無反射終端23(例えば、50Ωの抵抗)が接続されている。
【0014】
伝送線路22は、例えば、
図2に示すように、長く延伸するマイクロストリップ線路を用いることができる。また、この伝送線路22と平行に、その裏面側(
図2においては紙面の向こう側)に接地線路を設けることができる。なお、
図2においては、長く延伸する伝送線路22の一部を示しており、僅かな曲率を有している部分を示している。
【0015】
多重化制御装置3は、受電装置4へ多重化制御信号を出力することにより時分割多重制御を行うものである。すなわち、多重化制御装置3は、伝送線路22に沿って複数台の受電装置4が位置するとき、時間を分割して各々の受電装置4に割り当てる複数個の受電タイムスロットを生成し、この受電タイムスロットの情報(例えば、割り当てる受電装置4の台数や割り当ての状態など)を含んだ多重化制御信号を出力する。なお、受電タイムスロットは、時間が等分に分割されたものとせず、複数台のうちのいずれかの受電装置4の受電タイムスロットを長く又は短くして、その受電装置4が受電する電力の割合を調整することも可能である。また、伝送線路22に沿って位置する受電装置4が1台のときは、受電タイムスロットを1個に(時間を分割せずに)すればよい。また、多重化制御装置3は、受電装置4の有無又は数に応じて高周波電源21が出力する高周波電力の大きさを制御することも可能である。更に、受電装置4が伝送線路22に沿って位置していないときは、高周波電源21の出力を止めるように制御することも可能である。
【0016】
多重化制御装置3が出力する多重化制御信号は、好ましくは、高周波電力に重畳された変調信号として伝送線路22を介して受電装置4に送られる。これにより、システムが簡便になるとともに、多重化制御装置3が認識し高周波電力を受電できる状態にある受電装置4が確実に多重化制御信号を受信し得るようになって、安定した通信に基づいた信頼性の高い制御となる。多重化制御装置3は、
図1に示すように、伝送線路22にコンデンサなどの結合素子3Aを介して接続することができる。また、受電装置4は、この多重化制御信号を受信するために、図示は省略するが、例えば、方向性結合器など公知の方式を用いることができる。
【0017】
なお、多重化制御装置3が伝送線路22に沿って位置する受電装置4の台数を認識するために、受電装置4は、自己が受電可能であることを示す信号を公知の無線の通信方法等を用いて多重化制御装置3に送ることができる。或いは、受電装置4は、自己が受電可能であることを示す信号を高周波電力に重畳された変調信号として伝送線路22を介して多重化制御装置3に送ることもできる。
【0018】
受電装置4は、給電を必要とするときに送電装置2の伝送線路22に沿った位置に移動し得る移動型の装置であり、1台又は複数台の受電装置4が伝送線路22に沿って位置し得る。受電装置4は、伝送線路22に沿って移動しつつ給電(送電)されるようにしてもよいし、給電中は静止するようにしてもよい。受電装置4は、複数台が伝送線路22に沿って位置したとき、多重化制御装置3が出力する多重化制御信号に基づき、高周波電源21が出力し伝送線路22を介して送られてくる高周波電力の全送電電力を分配して受電する。この高周波電力の全送電電力を分配するために、各々の受電装置4は、多重化制御信号を受信してそれに含まれる受電タイムスロットの情報に基づき、自己が受電すべき割り当てられた受電タイムスロット時に高周波電力を受電する。すなわち、各々の受電装置4は、多重化制御信号によって互いに同期して動作する。そして、自己が受電すべき受電タイムスロット時においては、送電装置2との間で最大の結合を利用することができるので、トータルとして高効率な送電が可能である。
【0019】
より詳細には、各々の受電装置4は、受電共振器41を有するようにできる。受電共振器41は、受電装置4が伝送線路22に沿って位置したとき、それに電磁界結合可能なものである。受電共振器41は、例えば、
図2に示したように、その一部をマイクロストリップ線路の伝送線路22にオーバラップさせることによって、電磁界結合する。受電共振器41と伝送線路22との間には隙間(
図2においては紙面に垂直方向の間隙)が存在する。また、受電共振器41は、伝送線路22の高周波電力の送電周波数で共振可能なような所定長さのストリップ導体で形成することができる。
【0020】
各々の受電装置4は、自己の受電タイムスロット時に受電共振器41の共振周波数を高周波電力の送電周波数に一致させ、自己以外の受電タイムスロット時には共振周波数を送電周波数から離調させる。受電共振器41の共振周波数が高周波電力の送電周波数に一致すると、受電共振器41が伝送線路22上の高周波電力に共振し、伝送線路22上の高周波電力が受電共振器41に吸収(受電)される。その一方、受電共振器41の共振周波数が高周波電力の送電周波数から離調すると、受電共振器41は伝送線路22上の高周波電力に共振せず、伝送線路22上の高周波電力は受電共振器41には吸収(受電)されない。
【0021】
この離調を完全にするには、受電共振器41に接続されたスイッチ41Aを用いればよい。すなわち、各々の受電装置4は、自己の受電タイムスロット時にスイッチ41Aをオン又はオフのうちの一の状態として、受電共振器41の共振周波数を高周波電力の送電周波数に一致させる。また、各々の受電装置4は、自己以外の受電タイムスロット時にはスイッチ41Aをオン又はオフのうちの他の状態として、共振周波数を送電周波数から完全に離調させ、自己の受電共振器41では電力を受電しないようにする。
【0022】
例えば、スイッチ41Aが受電共振器41の一端と一定電位(通常は接地電位)との間を導通又は非導通にするものとする。その場合、スイッチ41Aがオフ(非導通)のとき、受電共振器41の共振周波数が高周波電力の送電周波数に一致し、2分の1波長で共振するようにできる。スイッチ41Aがオン(導通)のとき、受電共振器41の共振周波数は高周波電力の送電周波数に一致しなくなり、完全に離調する。なお、スイッチ41Aは、オン(導通)のとき受電共振器41の共振周波数が離調するのならば、受電共振器41に接続される箇所又は数は限定されず、また、他方の接続先は高周波にとって一定電位であればよい。
【0023】
また、各々の受電装置4は、以下に説明するように、受電共振器41とともに共振型反射器42を有するようにするのが好ましい。この場合、送電装置2の高周波電源21から近い側に受電共振器41を配し、高周波電源21から遠い側に共振型反射器42を配する。共振型反射器42は、受電装置4が伝送線路22に沿って位置するとき、伝送線路22に電磁界結合可能なものである。共振型反射器42は、例えば、
図2に示したように、その一部をマイクロストリップ線路の伝送線路22にオーバラップさせることによって、電磁界結合する。共振型反射器42と伝送線路22との間には隙間(
図2においては紙面に垂直方向の間隙)が存在する。また、共振型反射器42は、伝送線路22の高周波電力の送電周波数で共振可能なような所定長さのストリップ導体で形成することができる。
【0024】
各々の受電装置4は、自己の受電タイムスロット時に受電共振器41とともに共振型反射器42の共振周波数を高周波電力の送電周波数に一致させ、自己以外の受電タイムスロット時には共振周波数を送電周波数から離調させる。受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数が高周波電力の送電周波数に一致すると、受電共振器41及び共振型反射器42が伝送線路22上の高周波電力に共振し、受電共振器41の位置では伝送線路22上の高周波電力が受電共振器41に吸収(受電)され、共振型反射器42の位置では伝送線路22上の高周波電力のほぼ全部が共振型反射器42によって反射され、その反射波のほぼ全部が受電共振器41に吸収される。その一方、受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数が高周波電力の送電周波数から離調すると、受電共振器41及び共振型反射器42は伝送線路22上の高周波電力に共振せず、各々の位置において伝送線路22上の高周波電力は受電共振器41には吸収(受電)されず、共振型反射器42によって反射されない。
【0025】
なお、各々の受電装置4が受電共振器41とともに共振型反射器42を有するようにすると、伝送線路22上のインピーダンス整合については、受電装置4が受電しない場合は、伝送線路22の端部に接続された無反射終端23が行って受電装置4は影響せず、また、複数台の受電装置4のいずれかが受電する場合は、その受電装置4が行って無反射終端23は影響しないようにすることができる。それにより、高周波電力の伝送効率のインピーダンス不整合による低下を防ぐことができる。
【0026】
共振型反射器42の離調を完全にするには、共振型反射器42に接続されたスイッチ42Aを用いればよい。すなわち、各々の受電装置4は、自己の受電タイムスロット時にスイッチ41Aとともにスイッチ42Aを同時にオン又はオフのうちの一の状態として、受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数を高周波電力の送電周波数に一致させる。また、各々の受電装置4は、自己以外の受電タイムスロット時にはスイッチ41A、42Aをオン又はオフのうちの他の状態として、それらの共振周波数を送電周波数から完全に離調させ、自己の受電共振器41では高周波電力を受電せず、共振型反射器42では高周波電力を反射しないようにする。
【0027】
例えば、スイッチ42Aが共振型反射器42の一端と一定電位(通常は接地電位)との間を導通又は非導通にするものとする。その場合、スイッチ42Aがオフ(非導通)のとき、共振型反射器42の共振周波数が高周波電力の送電周波数に一致し、2分の1波長で共振するようにできる。スイッチ42Aがオン(導通)のとき、共振型反射器42の共振周波数は高周波電力の送電周波数に一致しなくなり、完全に離調する。完全に離調すると、伝送線路22上のインピーダンスを乱すことが全くなくなる。なお、スイッチ42Aは、オン(導通)のとき共振型反射器42の共振周波数が離調するのならば、共振型反射器42に接続される箇所又は数は限定されず、また、他方の接続先は高周波にとって一定電位であればよい。
【0028】
このようにして、この移動型無線電力伝送システム1では、伝送線路22に沿って複数台の受電装置4が位置する場合、高周波電源21から近い側の最初の1台と全く同様に、高周波電源21から遠い側に位置する2台目以降の受電装置4に対しても効率良く電力が無線送電できる。
【0029】
なお、受電装置4で受電された電力は、例えば、インピーダンス整合回路43を通って負荷44に供給される。インピーダンス整合回路43は、負荷44に電力が供給される場合に、インピーダンス不整合による反射が起きないようにするものである。負荷44は、受電装置4などが所要の機能を発揮するためのバッテリ等の回路である。
【0030】
次に、この移動型無線電力伝送システム1において、本願発明者が行ったシミュレーションを説明する。シミュレーション構成として、伝送線路22に沿って同じ形状の2台の受電装置4を位置させた(
図1参照)。マイクロストリップ線路の伝送線路22の幅A、ストリップ導体の受電共振器41の幅B、及びストリップ導体の共振型反射器42の幅Cは屈曲部を除いて約3.2mmとしている(
図2参照)。また、受電共振器41の全長(
図2においてD+E+F)及び共振型反射器42の全長(
図2においてG+H+I)は、約36mmとしている。受電共振器41と共振型反射器42の間の距離Jは、約22mmとしている。伝送線路22と受電共振器41(及び共振型反射器42)のオーバラップ部分の間隙の長さは、1.5mmとし、空気層が介在しているとした。
【0031】
図3は、1台目(高周波電源21から近い側)の受電装置4のスイッチ41A、42Aがオフ、2台目(1台目の受電装置4よりも高周波電源21から遠い側)の受電装置4のスイッチ41A、42Aがオンの時のSパラメータの特性を示している。
図4は、1台目の受電装置4のスイッチ41A、42Aがオン、2台目の受電装置4のスイッチ41A、42Aがオフの時のSパラメータの特性を示している。高周波電力の送電周波数は、2.45GHzとしている。Sパラメータのうち、S11は伝送線路22の高周波電源21側に返る(反射される)高周波電力の比率、S21は伝送線路22の無反射終端23側に通過して行く高周波電力の比率、S31は1台目の受電装置4が受電した高周波電力の比率、S41は2台目の受電装置4が受電した高周波電力の比率である。
【0032】
周波数が約2.45GHzのとき、
図3の特性図では、S11が約−36dB、S21が約−23dB、S31が約−0.5dB、S41が−50dB以下となっており、
図4の特性図では、S11が約−27dB、S21が約−27dB、S31が−50dB以下、S41が約−0.5dBとなっている。すなわち、これら2個の特性図のS31とS41を比べると、受電装置4は、受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数を高周波電力の送電周波数に一致させて、自分の受電タイムスロット時にほぼ全ての高周波電力を受電することができることが分かる。また、受電装置4は、受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数を高周波電力の送電周波数から完全に離調させ、自分の受電共振器41及び共振型反射器42では高周波電力を受電しないようにできることが分かる。また、これら2個の特性図のS11より、伝送線路22上の反射が少なく、インピーダンス整合が適正に行われていることが分かる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態に係る移動型無線電力伝送システム1’を説明する。移動型無線電力伝送システム1’は、
図5に示すように、送電装置2’と多重化制御装置3’と受電装置4’を備えるものである。この移動型無線電力伝送システム1’では、多重化制御装置3’が出力する多重化制御信号に基づき、送電装置2’から受電装置4’に高周波電力が送電される。
【0034】
送電装置2’は、高周波電源21’とそれに接続された伝送線路22を有している。高周波電源21’は、伝送線路22に沿って位置する受電装置4’の数に応じて、1個又は複数個の送電周波数の高周波電力を出力する。また、高周波電源21’とは反対側の伝送線路22の端部には、無反射終端23(例えば、50Ωの抵抗)が接続されている。伝送線路22と無反射終端23は、上記した移動型無線電力伝送システム1の場合と同様のものである。
【0035】
多重化制御装置3’は、周波数分割多重制御を行うものである。多重化制御装置3’は、伝送線路22に沿って複数台の受電装置4’が位置するとき、高周波電源21’に各々の受電装置4’に割り当てる複数個の送電周波数の高周波電力を送出させるともに、これらの送電周波数の情報を含んだ多重化制御信号を出力する。なお、多重化制御装置3’は、受電装置4’の有無又は数に応じて高周波電源21’が出力する高周波電力の大きさを制御することも可能である。更に、受電装置4’が伝送線路22に沿って位置していないときは、高周波電源21’の出力を止めるように制御することも可能である。
【0036】
多重化制御装置3’が出力する多重化制御信号は、好ましくは、高周波電力に重畳された変調信号として伝送線路22を介して受電装置4’に送られる。これにより、システムが簡便になるとともに、多重化制御装置3’が認識し高周波電力を受電できる状態にある受電装置4’が確実に多重化制御信号を受信し得るようになって、安定した通信に基づいた信頼性の高い制御となる。多重化制御装置3’は、
図5に示すように、伝送線路22にコンデンサなどの結合素子3Aを介して接続することができる。また、受電装置4’は、この多重化制御信号を受信するために、図示は省略するが、例えば、方向性結合器など公知の方式を用いることができる。
【0037】
なお、多重化制御装置3’が伝送線路22に沿って位置する受電装置4’の台数を認識するために、受電装置4’は、自己が受電可能であることを示す信号を公知の無線の通信方法等を用いて多重化制御装置3’に送ることができる。或いは、受電装置4’は、自己が受電可能であることを示す信号を高周波電力に重畳された変調信号として伝送線路22を介して多重化制御装置3’に送ることもできる。
【0038】
受電装置4’は、給電を必要とするときに送電装置2’の伝送線路22に沿った位置に移動し得る移動型の装置であり、1台又は複数台の受電装置4’が伝送線路22に沿って位置し得る。受電装置4’は、伝送線路22に沿って移動しつつ給電(送電)されるようにしてもよいし、給電中は静止するようにしてもよい。受電装置4’は、複数台が伝送線路22に沿って位置したとき、多重化制御装置3’が出力する多重化制御信号に基づき、高周波電源21’が出力し伝送線路22を介して送られてくる高周波電力の全送電電力を分配して受電する。この高周波電力の全送電電力を分配するために、各々の受電装置4’は、多重化制御信号を受信してそれに含まれる送電周波数の情報に基づき、自己が受電すべき送電周波数の高周波電力を受電する。よって、各々の受電装置4’は、自己が受電すべき送電周波数においては、送電装置2’との間で最大の結合を利用することができるので、高効率な送電が可能である。
【0039】
より詳細には、各々の受電装置4’は、受電共振器41を有するようにできる。この受電共振器41は、上記した移動型無線電力伝送システム1の場合と同様のものである。
【0040】
各々の受電装置4’は、自分が受電すべき1つの送電周波数に受電共振器41の共振周波数を一致させる。受電共振器41の共振周波数が高周波電力の送電周波数の1つに一致すると、受電共振器41が伝送線路22上の高周波電力に共振し、伝送線路22上の高周波電力が受電共振器41に吸収(受電)される。
【0041】
受電装置4’が受電すべき送電周波数に受電共振器41の共振周波数を一致させるには、一端が受電共振器41に接続された電圧可変容量素子41A’を用いればよい。電圧可変容量素子41A’の他端は一定電位とされる。そうすると、各々の受電装置4’は、電圧可変容量素子41A’の容量値を印加電圧によって変えることで、受電共振器41の共振周波数が高周波電力の送電周波数の1つに一致して、受電共振器41が共振(同調)するようにできる。
【0042】
また、各々の受電装置4’は、以下に説明するように、受電共振器41とともに共振型反射器42を有するようにするのが好ましい。この共振型反射器42は、上記した移動型無線電力伝送システム1の場合と同様のものである。
【0043】
各々の受電装置4’は、自己が受電すべき送電周波数に受電共振器41とともに共振型反射器42の共振周波数を一致させる。受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数が高周波電力の送電周波数の1つに一致すると、受電共振器41及び共振型反射器42が伝送線路22上の高周波電力に共振し、受電共振器41の位置では伝送線路22上の高周波電力が受電共振器41に吸収(受電)され、共振型反射器42の位置では伝送線路22上の高周波電力のほぼ全部が共振型反射器42によって反射され、その反射波のほぼ全部が受電共振器41に吸収される。
【0044】
なお、各々の受電装置4’が受電共振器41とともに共振型反射器42を有するようにすると、伝送線路22上の各送電周波数についてのインピーダンス整合については、受電装置4’が受電しない場合は、伝送線路22の端部に接続された無反射終端23が行って受電装置4’は影響せず、また、受電装置4’ のいずれかが受電する場合は、その受電装置4’が行って無反射終端23は影響しないようにすることができる。それにより、高周波電力の伝送効率のインピーダンス不整合による低下を防ぐことができる。
【0045】
共振型反射器42の共振周波数を高周波電力の送電周波数の1つに一致させるには、一端が共振型反射器42に接続された電圧可変容量素子42A’を用いればよい。電圧可変容量素子42A’の他端は一定電位とされる。そうすると、各々の受電装置4’は、電圧可変容量素子42A’の容量値を印加電圧によって変えることで、共振型反射器42の共振周波数が高周波電力の送電周波数の1つに一致して、共振型反射器42が共振(同調)するようにできる。
【0046】
このようにして、この移動型無線電力伝送システム1’では、伝送線路22に沿って複数台の受電装置4’が位置する場合、高周波電源21’ から近い側の最初の1台と全く同様に、高周波電源21’から遠い側に位置する2台目以降の受電装置4’に対しても効率良く電力が無線送電できる。
【0047】
なお、受電装置4’のインピーダンス整合回路43及び負荷44は、上記した移動型無線電力伝送システム1の場合と同様のものである。
【0048】
次に、この移動型無線電力伝送システム1’において、本願発明者が行ったシミュレーションを説明する。シミュレーション構成は、上記した移動型無線電力伝送システム1の場合と同様である。
【0049】
図6は、電圧可変容量素子41A’、42A’の容量値を調整して、1台目(高周波電源21’から近い側)の受電装置4’の受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数が1.65GHz、2台目(1台目の受電装置4’よりも高周波電源21’から遠い側)の受電装置4’の受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数が2.45GHzとしたときのSパラメータの特性を示している。Sパラメータのうち、S11は伝送線路22の高周波電源21’側に返る(反射される)高周波電力の比率、S21は伝送線路22の無反射終端23側に通過して行く高周波電力の比率、S31は1台目の受電装置4’が受電した高周波電力の比率、S41は2台目の受電装置4’が受電した高周波電力の比率である。
【0050】
図6の特性図では、周波数が約1.65GHzのとき、S11が約−30dB、S21が約−30dB、S31が約−0.5dB、S41が約−44dBとなっており、周波数が約2.45GHzのとき、S11が約−25dB、S21が約−33dB、S31が約−30dB、S41が約−0.5dBとなっている。すなわち、S31とS41を比べると、各々の受電装置4’は、受電共振器41及び共振型反射器42の共振周波数を高周波電力の送電周波数の1つに一致させて、各送電周波数のほぼ全ての高周波電力を受電することができることが分かる。また、S11より、伝送線路22上の反射が少なく、インピーダンス整合が適正に行われていることが分かる。
【0051】
以上、本発明の実施形態に係る移動型無線電力伝送システムについて説明したが、本発明は、上述した実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。また、本発明は、様々な分野に適用可能であり、例えば、伝送線路22が道路(又は駐車場)や工場などに敷設されており、受電装置4、4’が電気自動車や工場内運搬ロボットなどの車両の装置である場合等に適用可能である。