特許第6202496号(P6202496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

6202496溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法
<>
  • 6202496-溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法 図000002
  • 6202496-溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法 図000003
  • 6202496-溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法 図000004
  • 6202496-溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法 図000005
  • 6202496-溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法 図000006
  • 6202496-溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法 図000007
  • 6202496-溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202496
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20170914BHJP
   E04G 17/06 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   E04G23/02 E
   E04G17/06 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-219980(P2013-219980)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81445(P2015-81445A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】393010215
【氏名又は名称】山下 譲二
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】山下 譲二
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−254754(JP,A)
【文献】 特開2009−263951(JP,A)
【文献】 特開平04−228262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G23/02
E04G17/06
E04B2/86
E04G7/34
E04B1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の強度を確保するのに必要な板厚及び板幅を備える板材からなり、その一側面と前記板材の上面又は下面とが交わる箇所を溶接代とし、この溶接代が溶接されることによって溶接部が形成される溶接補助部材であって、
前記板材には、棒材の先端を装着するための軸受穴が、前記板材の上面又は下面に沿って前記一側面における長手方向長さを二等分する仮想垂線上であって、前記一側面に接する位置又は前記仮想垂線の板材上の中点位置よりも前記仮想垂線上の一側面に近い側に設けられ、
前記棒材の荷重が前記仮想垂線に対して斜め方向から作用した場合、前記棒材の荷重が、前記溶接部に均一に分散される、
ことを特徴とする溶接補助部材。
【請求項2】
前記一側面に開先加工が施されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接補助部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の溶接補助部材の前記溶接代を溶接して溶接部を形成し、前記溶接補助部材の前記軸受穴に装着した棒材からの荷重が作用したときに、前記溶接補助部材を前記軸受穴を支点にした天秤棒のように作用させ、前記荷重を前記軸受穴を中心に左右に分配させて前記溶接部に均一に分散させる、
ことを特徴とする溶接補助部材を利用した溶接工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼矢板や深礎杭の地上に露出した壁面、既設構造物の劣化が進行した壁面等を、残存型枠パネル等の壁面補修材で装飾補強する際に用いられる溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法に関し、壁面補修材で装飾補強する際に、上記壁面の所定位置にセパレーター等の鋼棒材を渡してその先端に装着し、溶接を介して鋼棒材を壁面に固定するようにした溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1などで提案されているように、鋼矢板や深礎杭の地上に露出した壁面、既設構造物の劣化が進行した壁面等を、残存型枠パネル等の壁面補修材で装飾補強する施工技術が知られている。従来の壁面補修材の取り付け方法は、図6図7(a)に示すように、壁面補修材が連結されているセパレーターSの先端を曲げ加工する等し、所定の溶接強度を確保するのに必要な溶接部Bを形成し、この溶接部Bを通じて壁面Wにセパレーターを溶接して取り付けている。
【0003】
しかしながら、従来の壁面補修材の取り付け方法に用いる溶接手法では、セパレーターの引抜き強度試験等の結果から、溶接強度が設計上の半分程度しか得られないことが分かってきている。図7(a)〜(c)に示すように、セパレーターSに作用する荷重(引っ張り力)が溶接部Bの全域に均一に作用せず、溶接部BのうちのセパレーターS先端の付け根部分(曲げ加工された被加工部)の概ね1cm程度の範囲に集中的に作用することが原因である(図7(b)参照)。引抜き強度試験等では、この付け根部分が破断すると隣の溶接部Bへ破断が連鎖、波及し、芋づる式にセパレーターSが溶接した壁面から引き剥がされる様子が観察されている(図7(c)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3689164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、今後、劣化壁面等を残存型枠パネル等の壁面補修材で装飾補強する施工のあり方を見直す等の影響が出る恐れがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑み提案され、セパレーターの先端を壁面に直接溶接する代わりに、セパレーターの先端に装着され、これを通じてセパレーターを壁面に溶接することで形成される溶接部の強度向上、及び施工の信頼性向上を実現した溶接補助部材及び、この溶接補助部材を利用した溶接工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、所定の強度を確保するのに必要な板厚及び板幅を備える板材からなり、その一側面と前記板材の上面又は下面とが交わる箇所を溶接代とし、この溶接代が溶接されることによって溶接部が形成される溶接補助部材であって、前記板材には、棒材の先端を装着するための軸受穴が、前記板材の上面又は下面に沿って前記一側面における長手方向長さを二等分する仮想垂線上であって、前記一側面に接する位置又は前記仮想垂線の板材上の中点位置よりも前記仮想垂線上の一側面に近い側に設けられ、前記棒材の荷重が前記仮想垂線に対して斜め方向から作用した場合、前記棒材の荷重が、前記溶接部に均一に分散される、ことを特徴とする溶接補助部材である。特に、上記溶接補助部材において、その一側面には開先加工が施されていることが好ましい。
【0008】
なお、上記一側面は、平面であっても、曲面であっても、円弧状の面であってもよい。
【0009】
また、本発明は、上記溶接補助部材の前記溶接代を溶接して溶接部を形成し、前記溶接補助部材の前記軸受穴に装着した棒材からの荷重が作用したときに、前記溶接補助部材を前記軸受穴を支点にした天秤棒のように作用させ、前記荷重を前記軸受穴を中心に左右に分配させて前記溶接部に均一に分散させることを特徴とする溶接補助部材を利用した溶接工法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る溶接補助部材は、板材であって、その一側面と板材の上面又は下面とが交わる箇所を溶接代とし、所定の強度を確保するのに必要な板厚及び板幅を備えさせてなり、板材には、棒材の先端を装着するための軸受穴が、板材の上面又は下面に沿って一側面における長手方向長さを二等分する仮想の垂線上であって、一側面に接する位置、又は、一側面の近傍に設けられている構成である。この構成により、溶接補助部材の溶接代を壁面に溶接して溶接部を形成し、この溶接補助部材に棒材の荷重が作用したときに、溶接補助部材は、その軸受穴が支点となる天秤棒のように作用し、荷重が軸受穴を中心に左右に分配されて溶接部に均一に分散されることとなる。したがって、荷重が溶接部に均一に分散されることで、荷重が溶接部の一極に集中するという従来の不都合を回避することができ、溶接部の強度向上、及び施工の信頼性向上を実現することができる。溶接補助部材は棒材の荷重が作用したときに軸受穴が支点となる天秤棒のように作用するから、溶接補助部材を通じて、斜め方向から棒材を壁面に溶接することができる。このため一種類の棒材で壁面の様々な箇所に溶接可能となるという利点もある。
【0011】
特に、上記溶接補助部材において、その一側面に開先加工が施されている構成とすれば、同じサイズの溶接補助部材と比べ、溶接強度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る溶接補助部材を利用した溶接工法では、溶接補助部材の溶接代を溶接して溶接部を形成し、溶接補助部材の軸受穴に装着した棒材からの荷重が作用したときに溶接補助部材を、軸受穴を支点にした天秤棒のように作用させ、その荷重を、軸受穴を中心に左右に分配させて溶接部に均一に分散させる構成となるので、棒材に作用する荷重が、溶接部の一極に集中することを避けて溶接部の破断を抑制し、溶接部の強度向上、及び施工の信頼性向上を実現することができる溶接工法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る溶接補助部材を概略的に説明する図であって、(a)は、溶接補助部材の概略斜視図、(b)は、この溶接補助部材の溶接部における溶接強度を説明する説明図である。(c)は、この溶接補助部材の上下の溶接代で壁面に溶接した様子を説明する説明図である。
図2】第1実施形態に係る溶接補助部材の溶接部における溶接強度が向上する仕組みを説明する説明図であって、(a)は、仮想の垂線に対して0度方向からセパレーターの荷重が作用した場合の溶接部に掛かる荷重を示す説明図、(b)は、仮想の垂線に対して約45度の斜め方向からセパレーターの荷重が作用した場合の溶接部に掛かる荷重を示す説明図である。
図3】第1実施形態に係る溶接補助部材を利用した溶接工法により、壁面補修材で装飾補強されている施工の様子を説明する説明図であって、(a)は、平面型の壁面に対する施工の様子を説明する説明図、(b)は、円柱型の壁面に対する施工の様子を説明する説明図である。
図4】第2実施形態に係る溶接補助部材の概略斜視図である。
図5】第3実施形態に係る溶接補助部材を概略的に説明する図であって、(a)は、溶接補助部材の概略斜視図、(b)は、溶接補助部材の溶接部における溶接強度を説明する説明図である。
図6】従来の壁面補修材の取り付け方法により、壁面補修材で装飾補強されている施工の様子を説明する説明図である。
図7】従来の壁面補修材の取り付け方法における溶接部が破断するメカニズムを説明する説明図であって、(a)は、セパレーターに荷重が作用している様子を説明する説明図、(b)は、セパレーターに作用する荷重が溶接部の一部分に集中的に作用し、その一部分が破断してしまう様子を説明する説明図、(c)は、溶接部の一部分の破断が連鎖、波及してセパレーターが溶接した壁面から引き剥がされる様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る溶接補助部材及び溶接補助部材を利用した溶接工法に関し、いくつかの実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下の実施形態は、本発明の構成を具現化した例示に過ぎず、本発明は、特許請求の範囲に記載した事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことができる。
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る溶接補助部材1Aは、図1(a)に示すように、矩形状の板材1であって、その一側面11と板材1の上面3又は下面4とが交わる箇所を溶接代12とし、板材そのものの所定の強度を確保するのに必要な板厚及び板幅を備えさせて構成されている。この板材1には、棒材(例えば、セパレーター)の先端を装着するための軸受穴2が、板材1の上面3又は下面4に沿って、一側面11における長手方向長さを二等分する仮想の垂線X(図1中で、1点鎖線により示している。)上に設けられている。特に、軸受穴2は、板材1における垂線X上の中点位置よりも一側面11に近い位置に設けられている。なお、本発明において軸受穴の位置は、板材の一側面に接する位置、又は、一側面の近傍に設けられていればよい。
【0016】
溶接補助部材1Aは、図1(b)に示すように、所定の溶接強度を確保するのに必要な板厚及び板幅を備えさせるため、その厚みが例えば、4.5mmとされている。また、溶接補助部材1Aの溶接代12を壁面Wに、脚長6mmとして溶接して溶接部Aを形成しようとするとき、溶接部Aのせん断作用面積は、「のど厚×溶接長」で示されるから、21/2/2×6(=4.243)×溶接長となる。例えば、溶接長を30mmとした場合、溶接部Aのせん断作用面積は、21/2/2×6(=4.243)×30=127.29mm2となる。そうすると、溶接部Aのセパレーターの許容引抜き強度(Fs)は、「のど厚×溶接長×許容せん断応力度(σ)」で示されるから、溶接による許容せん断応力度(σ)を80N/mm2とすれば、127.29×80Nf、凡そ10kNfとなる。
【0017】
なお、溶接補助部材1Aの上記溶接長及び脚長は例示であり、所定の溶接強度を確保することができれば、溶接長及び脚長を適宜、調整することができる。また、図1(c)に示すように、溶接補助部材1Aの上面3又は下面4のそれぞれの溶接代12で壁面Wに溶接し、溶接部Aを形成することも可能で、所定の溶接強度を確実に得ることができる。
【0018】
本発明に係る溶接補助部材を利用した溶接工法では、図1(b)及び図2(a)に示すように、溶接補助部材1Aの軸受穴2にセパレーターSを装着し、セパレーターSを軸受穴2に装着したまま溶接補助部材1Aの溶接代12を溶接して溶接部Aを形成する。これにより、図2(a)及び図2(b)に示すように、溶接補助部材1AにセパレーターSの荷重が作用したときに溶接補助部材1Aを、軸受穴2を支点にした天秤棒のように作用させ、その荷重を、軸受穴2を中心にして左右に分配させて溶接部Aに均一に分散させることができる。特に、図2(b)から、セパレーターSの荷重が溶接補助部材1Aに斜めから作用したときであっても、溶接補助部材1Aが軸受穴2を支点にした天秤棒のように作用することで、その荷重が、軸受穴2を中心に左右に分配され、溶接部Aに均一に分散されていることが理解される。そして、図1(c)に示すように、溶接補助部材1Aの上面3又は下面4のそれぞれの溶接代12で溶接し、溶接部Aを形成した場合にも、溶接補助部材1Aを天秤棒のように作用させて、その荷重を溶接部Aに均一に分散させることができる。
【0019】
第1実施形態において、セパレーターSの荷重が溶接補助部材1Aに斜めから作用する場合、その荷重を、軸受穴2を中心に左右に分配させて溶接部Aに均一に分散することが可能となる角度は、板材1の上面3又は下面4に沿って、一側面11における長手方向長さを二等分する仮想の垂線Xに対して±60度(好ましくは、±45度)以内である。
【0020】
そして、本発明では、図3(a)に示すように、セパレーターSの先端を壁面Wに直接溶接する代わりに、溶接補助部材1AがセパレーターSの先端に装着され、溶接補助部材1Aを通じてセパレーターSを壁面Wに溶接することで溶接部Aが形成される。セパレーターSの荷重が作用したときには、溶接補助部材1Aが軸受穴2を支点にした天秤棒のように作用し、その荷重が、軸受穴2を中心に左右に分配されて溶接部Aに均一に分散されることとなる。図3(b)に示す円柱型の壁面であっても同様に、セパレーターSの荷重が作用したときには、図2(b)に示すようにして、溶接補助部材1Aが軸受穴2を支点にした天秤棒のように作用し、その荷重が、軸受穴2を中心に左右に分配されて溶接部Aに均一に分散される。そうすると、溶接部Aにおいて荷重が均一に分散されているため、その許容引抜き強度(Fs)は、10kNf以上という設計上の値が損なわれることがない。したがって、本発明は、セパレーターSに作用する荷重が溶接部Aの一部分に集中的に作用し、溶接部Aが端部から破断していくといった不都合を回避し、設計どおりの溶接強度を得ることができ、強度向上が容易となり、かつ、施工の信頼を向上させることができる。
【0021】
ここで、本発明に係る溶接補助部材は、セパレーター等の棒材の先端を装着するための軸受穴を設ける位置に関し、溶接補助部材の一側面における長手方向長さを二等分する仮想の垂線の板材上の中点位置よりも垂線上の一側面に近い側、垂線上の一側面と接する位置のいずれかに設けられることが好ましい形態となる。セパレーターの荷重が溶接補助部材に斜めから作用する場合に、その荷重を、軸受穴を中心に左右に分配させて溶接部に均一に分散することが可能となる角度が、上記した±60度よりも広がるからである。
【0022】
(第2実施形態)
例えば、第2実施形態に係る溶接補助部材1Bは、図4に示すように、溶接補助部材1Bの一側面11における長手方向長さを二等分する仮想の垂線X上の、一側面11と接する位置に軸受穴2Bが設けられている構成である。この場合、一側面11と接する位置に軸受穴2Bが設けられているから、溶接補助部材1Bの一側面11と水平に近い斜めからセパレーターの荷重を作用させた場合にも、その荷重を、軸受穴2Bを中心に左右に分配させて溶接部に均一に分散することが可能となる。すなわち、荷重を溶接部に均一に分散させることが可能となる角度を広げることができる。
【0023】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る溶接補助部材1Cは、図5(a)に示すように、一側面に開先加工が施され、開先加工部11aが備えられて構成される。その他の構成は、第1実施形態に係る溶接補助部材1Aと同様である。この場合、図5(b)に示すように、溶接補助部材1Cはその開先加工部11aを通じて壁面Wに、脚長4.5mmとして溶接して溶接部Cを形成することができ、溶接用材料を、第1実施形態の溶接補助部材1Aにおける溶接部Aを形成するのに比べて節約することができる。
【0024】
また、溶接部Cの溶接部せん断作用面積を示す「のど厚×溶接長」は、溶接長を30mmとした場合に21/2×4.5(=6.364)×30=190.92mm2となって、溶接部Cのセパレーターの許容引抜き強度(Fs)は、190.92×80Nf、凡そ15kNfとなる。すなわち、同じサイズのもの(例えば、第1実施形態の溶接補助部材1A)と比べ、溶接強度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0025】
このように、本発明に係る溶接補助部材1A,1B,1Cは、板材1であって、その一側面11と板材1の上面3又は下面4とが交わる箇所又は開先加工部11aに溶接代12を設けるともに、所定の強度を確保するのに必要な板厚及び板幅を備えさせてなり、セパレーターSの先端に装着するための軸受穴2,2Bが、板材1の上面3又は下面4に沿って、一側面11又は開先加工部11aにおける長手方向長さを二等分する仮想の垂線X上であって、一側面11に接する位置、又は、一側面11又は開先加工部11aの近傍に設けられている構成である。この構成により、溶接補助部材1A,1B,1Cの溶接代12が壁面Wに溶接されて溶接部A,Cが形成され、この溶接補助部材1A,1B,1CにセパレーターSの荷重が作用したとき、溶接補助部材1A,1B,1Cが、軸受穴2,2Bが支点となる天秤棒のように作用し、荷重を軸受穴2,2Bを中心に左右に分配させて、溶接部A,Cに均一に分散させることができる。したがって、本発明は、セパレーターSの荷重が溶接部A,Cの一部分に集中することを避けて、溶接部A,Cの破断を抑制し、溶接部の強度向上、及び施工の信頼性向上を実現している。
【0026】
特に、セパレーター等の棒材の先端を装着するための軸受穴を設ける位置を一側面に近い側にし、例えば、一側面11における長手方向長さを二等分する仮想の垂線X上の、一側面11と接する位置に軸受穴2Bが設けた溶接補助部材1Bの構成とすれば、溶接補助部材1Bの一側面11と水平に近い斜めからセパレーターの荷重が作用した場合にも、その荷重を、軸受穴2Bを中心に左右に分配させて溶接部に均一に分散することが可能となり、荷重を溶接部に均一に分散させることが可能となる角度を広げることができる。
【0027】
さらに、開先加工部11aが施されている溶接補助部材1Cの構成とすれば、同じサイズの溶接補助部材と比べ、溶接強度の更なる向上を図ることが可能となる。
【0028】
以上、本発明について出願人が好ましいと信じる実施形態をいくつか詳述したが、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、上記実施形態に限定されることなく、種々の設計変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態の溶接補助部材はいずれも矩形状の板材を採用しているが、所定の強度を確保するのに必要な板厚と板幅を有する限り、様々な形状のものを採用し得る。
【0029】
また、棒材の先端を装着するための溶接補助部材の軸受穴の位置は、板材の上面又は下面に沿って一側面における長手方向長さを二等分する仮想の垂線上であれば良い。好ましい形態として、溶接補助部材の一側面における長手方向長さを二等分する仮想の垂線の板材上の中点位置よりも垂線上の一側面に近い側、垂線上の一側面と接する位置等を挙げることができる。本発明に係る溶接補助部材を利用した溶接工法において、上記実施形態では、溶接補助部材の軸受穴にセパレーターを装着し、セパレーターを軸受穴に装着したまま溶接補助部材の溶接代を溶接して溶接部を形成する手順を説明したが、溶接補助部材の溶接代を溶接して溶接部Aを形成した後に、その溶接補助部材の軸受穴にセパレーターを装着する手順であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1A・・溶接補助部材(第1実施形態)
1B・・溶接補助部材(第2実施形態)
1C・・溶接補助部材(第3実施形態)
1・・・板材
11・・一側面
11a・開先加工部
12・・溶接代
2・・・軸受穴
2B・・軸受穴
3・・・上面
4・・・下面
X・・・仮想の垂線
A・・・溶接部
B・・・溶接部(従来)
C・・・溶接部
S・・・セパレーター
W・・・壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7