(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
めっき鋼板のレーザ切断加工方法であって、前記めっき鋼板の上面へレーザ光を照射してレーザ切断加工を行う際、レーザ光の照射によって溶融及び/又は蒸発されためっきの一部を、レーザ加工部へ噴出されるアシストガスによって、前記めっき鋼板の切断面側へ誘導して、前記切断面にめっきを被覆する際、前記めっき鋼板のレーザ切断加工位置における上面にプラズマを発生させてレーザ切断加工を行うことを特徴とするめっき鋼板のレーザ切断加工方法。
請求項1に記載のめっき鋼板のレーザ切断加工方法において、前記めっき鋼板の上面に対するレーザ光の照射によって加熱蒸発されためっきの蒸気内にレーザ光を照射してプラズマを発生させることを特徴とするめっき鋼板のレーザ切断加工方法。
請求項1又は2に記載のめっき鋼板のレーザ切断加工方法において、レーザ光の焦点位置は、+0.5mm〜−4.5mmの範囲で調節することを特徴とするめっき鋼板のレーザ切断加工方法。
請求項1〜3のいずれかに記載のめっき鋼板のレーザ切断加工方法において、レーザ加工ヘッドにおけるノズルとめっき鋼板の上面との間のノズルギャップを、0.3mm〜1.0mmの範囲で調節し、かつアシストガス圧を、0.5MPa〜1.2MPaの範囲で調節することを特徴とするめっき鋼板のレーザ切断加工方法。
請求項1〜4のいずれかに記載のめっき鋼板のレーザ切断加工方法において、レーザ切断加工速度を、1000mm/min〜5000mm/minの範囲で調節することを特徴とするめっき鋼板のレーザ切断加工方法。
請求項1〜5のいずれかに記載のめっき鋼板のレーザ切断加工方法において、アシストガスを噴出するノズルの径は2.0mm〜7.0mmであることを特徴とするめっき鋼板のレーザ切断加工方法。
請求項1〜6のいずれかに記載のめっき鋼板のレーザ切断加工方法において、アシストガスは、窒素ガス又は窒素ガス97%、酸素ガス3%の混合ガスであることを特徴とするめっき鋼板のレーザ切断加工方法。
レーザ切断加工装置であって、板状のワークを支持するワークテーブルと、前記ワークに対してX,Y,Z軸方向へ相対的に移動位置決め自在なレーザ加工ヘッドと、前記レーザ加工ヘッドの動作を制御するための制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記ワークテーブル上のめっき鋼板にレーザ光を照射してレーザ切断を行う際に、レーザ光の照射によって溶融及び/又は蒸発されためっきの一部を、レーザ加工部へ噴出されるアシストガスによってめっき鋼板の切断面側へ誘導して、前記切断面にめっきを被覆するためのレーザ切断加工条件を、前記めっき鋼板の板厚及びめっき厚さ毎に格納した切断条件データテーブルを備えていることを特徴とするレーザ切断加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照するに、本発明の実施形態に係るレーザ切断加工装置1は、板状のワークWを支持するワークテーブル3を備えると共に、前記ワークWにレーザ光LBを照射してワークWのレーザ切断加工を行うためのレーザ加工ヘッド5を備えている。前記ワークテーブル3は、前記レーザ加工ヘッド5に対して相対的にX,Y軸方向へ移動自在に備えられており、このワークテーブル3を相対的にX,Y軸方向へ移動位置決めするためのサーボモータなどのごとき位置決めモータ7が備えられている。さらに、前記ワークWに対して相対的に接近離反する方向(Z軸方向)へ前記レーザ加工ヘッド5を移動位置決めするZ軸モータ9が備えられている。
【0015】
また、前記レーザ切断加工装置1には、例えばファイバーレーザ発振器、CO
2レーザ発振器などのごときレーザ発振器11が備えられている。そして、前記レーザ加工ヘッド5には、前記レーザ発振器11から発振されたレーザ光LBを前記ワークW方向へ反射する反射鏡13や、レーザ光LBの集光を行う集光レンズ15等の光学装置17が備えられている。また、前記レーザ加工ヘッド5には、前記ワークWのレーザ切断加工位置へアシストガスを噴出するノズル19が着脱交換可能に備えられている。
【0016】
ところで、レーザ切断加工位置へアシストガスを噴出する構成としては、レーザ加工ヘッド5にサイドノズルを備え、このサイドノズルからアシストガスをレーザ加工部へ噴出する構成とすることも可能である。
【0017】
さらに、前記レーザ切断加工装置1には、アシストガス供給装置21が備えられている。このアシストガス供給装置21は、例えば窒素ガス約97%、酸素ガス約3%の混合ガスを供給するもので、窒素ガス供給装置23、酸素ガス供給源(空気供給源)25及び混合ガスを生成するミキサー27が備えられている。さらに、前記アシストガス供給装置21には、前記レーザ加工ヘッド5へ供給するアシストガスの圧力を調節するための圧力調節弁29が備えられている。またアシストガス供給装置21の酸素ガス供給源25を停止させ、窒素ガス供給装置23のみを稼働させると窒素ガスのみのアシストガスとして加工部へ供給することができる。
【0018】
ところで、窒素ガス約97%、酸素ガス約3%の混合ガスをアシストガスとしてレーザ加工部へ供給する構成としては、前述した構成に限ることなく、別個の構成とすることも可能である。すなわち、例えば特許第3291125号公報に記載されているように、中空糸膜を利用した分離装置によって、供給された圧縮空気中の窒素と酸素とを分離することも可能である。なお、窒素ガス約97%(96%以上)、酸素ガス約3%(4%以下)の混合ガスをアシストガスに使用してのレーザ切断加工の場合を、以下、単にイージカットと称す。
【0019】
また、前記レーザ切断加工装置1には、制御装置31が備えられている。この制御装置31は、コンピュータから構成してあって、前記ワークWに対する前記レーザ加工ヘッド5の相対的な移動位置決めの制御を行う機能、前記レーザ発振器11におけるレーザ出力の制御及び前記レーザ加工ヘッド5に対するアシストガスの供給圧力を制御する機能を有するものである。
【0020】
前記構成により、ワークテーブル3上にワークWを載置位置決めした後、ワークWに対してレーザ加工ヘッド5をX,Y,Z軸方向へ相対的に移動位置決めする。また、レーザ発振器11から発振されたレーザ光LBを集光レンズ15によって集光してワークWへ照射する。さらに、アシストガス供給装置21からレーザ加工ヘッド15に供給されたアシストガスをノズル19からワークWのレーザ加工部へ噴出することにより、ワークWのレーザ切断加工が行われる。
【0021】
上述のように、ワークWのレーザ切断加工を行う際、前記ワークWがめっき鋼板である場合には、前記特許文献1の
図21に記載されているように、めっき層の蒸発物質が加工範囲に侵入して、加工品質に欠陥を生じさせることがある。したがって、前記特許文献1の記載においては、特許文献1の
図1に示されているように、めっき鋼板の表面へレーザ光を照射してめっき層を予め除去する。そして、次に同一軌跡のレーザ切断加工を行うものである。
【0022】
上記構成によれば、レーザ切断加工時にはめっきの蒸発がないので、加工品質の改善が行われ得るものの、めっき層の除去加工と切断加工との2度のレーザ加工が必要である。また、めっき鋼板の切断面はレーザ切断加工が行われた状態のままであるので、切断面の防錆処理が必要である、という問題がある。
【0023】
本発明の実施形態は、めっき鋼板のレーザ切断加工を行う際に、めっき鋼板の上面のめっき層の溶融及び/又は蒸発を行うことにより、溶融及び/又は蒸発されためっき層含有金属を切断面へ流動することができ、かつ流動しためっき層含有金属によって切断面を被覆することができることを見出したものである。
【0024】
本発明の実施形態においては、めっき鋼板の一例として、アルミニウム6%、マグネシウム3%、残り亜鉛91%のめっき層を鋼板の表面に被覆した溶融めっき鋼板(以下、単にめっき鋼板と称す)を使用した。
【0025】
そして、レーザ切断加工において一般的に行われている酸素カットは、アシストガスとして酸素ガスを使用するものである。そして、切断加工面のEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)の分析行ったところ、酸素カットの場合は、
図2に示すように、切断面が酸化被膜に覆われていた。したがって、めっき鋼板のレーザ切断加工を行うとき、溶融又は蒸発されためっき層含有金属でもって被覆しようとする場合、酸素カットは、めっき鋼板のレーザ切断加工には不適当であることが判明した。
【0026】
次に、アシストガスとして窒素ガスを使用するレーザ切断加工方法(以下、単にクリーンカットと称す)を行った場合、切断条件によっては、
図3(A)の拡大写真に示すように、めっき鋼板における基材Bの切断面CFのレーザ切断加工は良好に行われている。そして、前記切断面CFの上端部付近における上面のめっき層Mは除去されていて極めて薄くなっている。そして、切断面CFには酸化皮膜等はなく、めっき鋼板の原板成分(Fe)のみがほとんど現れている(
図2参照)。また、切断面CFの被覆層(めっき層)も極めて薄いものである。したがって、クリーンカットにおいては、適正な切断条件によっては上面の溶融しためっき層含有金属によって切断面CFを被覆可能であり、サビ(赤さび)が発生しないことがある。
【0027】
次に、前述したイージーカットを行った場合には、
図2、
図3(C)に示すように、切断面には薄い酸化被膜が現れている。また、切断面の上部には、めっき層Mの成分である亜鉛、アルミニウム、マグネシウムが現れている。
すなわち、切断面CFの上端部付近において溶融しためっき層の一部が切断面CFに流れ込み、溶融しためっき層の流れ込みの濃い部分が白い筋状に現れている。なお、上記筋状部分の間には、溶融しためっき層が薄く存在しているものである。
【0028】
すなわち、鋼板のレーザ切断加工方法において一般的に採用されているクリーンカット又はイージーカットを行うことにより、めっき鋼板(ワーク)Wの切断面にめっき層Mの含有金属を回り込ませて、切断面CFの被覆を行い得ることを見出した。
【0029】
そこで、レーザ切断加工における切断速度、集光レンズの焦点位置、アシストガスのガス圧、レーザ光におけるパルスの周波数、等の加工条件を種々変更して、切断面へのめっき層の被覆状態を試験した。なお、試験条件は次のとおりである。
【0030】
レーザ切断加工機:株式会社 アマダ製、FOM2−3015R1
材料:アルミニウム6%、マグネシウム3%、残り亜鉛91%のめっきを表面
に被覆しためっき鋼板、板厚t=2.3mm、K35(片側めっき付着
量175g/m
2)
切断サンプル形状:130mm×30mm
標準加工条件
・ノズル直径:D4.0(4.0mm)
・切断速度:F1600(1600mm/min)
・アシストガス種類:EZ(前述したイージーカットに使用されるアシストガ
スを表わす。この場合のアシストガスは、窒素約97%、酸素3%の混合ガ
スである)
・アシストガス圧:0.9MPa
・ノズルギャップ:0.3mm(ノズルとめっき鋼板の上面との間隔)
・焦点位置:−4.5mm(ワーク上面を0として、上側を+、下側を−とし
ている)
上記の標準加工条件の各条件を変化して加工を行った結果は次のとおりであった。
【0031】
図4から明らかなように、切断速度を1120mm/min〜3840mm/minの範囲で調節すると、切断面(切断端面)に対するめっきの被覆量は、速度が大きいほど被覆量が次第に多くなっている。
【0032】
図5から明らかなように、集光レンズの焦点位置を、−6.5mm〜+0.5mmの範囲で調節すると、焦点位置を次第に+側にすると、切断面に対するめっきの被覆量が次第に多くなっている。
【0033】
図6に示すように、アシストガス圧を0.5MPa〜0.9MPaの範囲で調節すると、アシストガス圧は低くなるほど切断端面に対するめっきの被覆量は次第に多くなる。
【0034】
図7に示すように、レーザ光のパルス周波数を800Hz〜CW(連続)の範囲において調節した場合には、切断端面に対するめっきの被覆量には大きな変化は見られなかった。
【0035】
図4〜
図7に示された結果から、イージーカットにおいては、めっき鋼板におけるレーザ切断面に対するめっき層含有金属の被覆量は、切断速度が大きい(例えば、3840mm/min)ほど多くなる。また、焦点位置は+側(例えば、+0.5mm)ほどめっき層含有金属の被覆量が多くなる。しかし、焦点位置を+側に大きくすると、めっき鋼板の上面でのエネルギー密度が低くなるので、レーザ切断加工においては一側に設定することが望ましいものである。さらに、アシストガス圧は低圧(例えば、0.5MPa)ほどめっき層含有金属の被覆量が多くなる。なお、レーザ光をパルスレーザ、連続レーザに調節した場合には、めっきの被覆量に大きな変化は認められなかった。
【0036】
既に理解されるように、めっき鋼板のレーザ切断加工において、イージーカット(EZ)によってめっき鋼板のレーザ切断加工を行う場合、レーザ切断加工条件において、例えば切断速度、集光レンズの焦点位置、アシストガス圧等を種々変更することにより、めっき鋼板のレーザ切断面へのめっき層含有金属の被覆量が変化するものである。なお、レーザ切断加工条件としては、レーザ加工ヘッドにおけるノズル19とワークWの上面との間隔、すなわちノズルギャップを変更することも考えられる。
【0037】
すなわち、レーザ切断面へのめっき層含有金属の被覆量は、めっき鋼板のレーザ切断加工を行う際の加工条件によって異なることを見出した。換言すれば、イージーカットにおいて、めっき鋼板のレーザ切断条件を適正な切断条件とすることにより、レーザ切断面にめっき層含有金属を適正に被覆できることになるものである。
【0038】
イージーカットによれば、めっき鋼板の切断面を、めっき層含有金属によって被覆できることを見出した。
【0039】
次に、クリーンカットにおいての適正な切断条件を見出すために、種々の切断条件によってめっき鋼板のレーザ切断加工を行い、レーザ切断面の赤さびの発生状態を見るために暴露試験を行った。暴露試験としては、めっき鋼板のレーザ切断加工を行ったレーザ切断加工品における切断面を上面に保持して、野外に一ヶ月放置した。
【0040】
ところで、めっき鋼板からレーザ切断加工品をクリーンカットによって切断分離する際、
図8に示すように、レーザ切断加工位置の上面にプラズマが発生する場合と、発生しない場合とがあった。そして、プラズマが発生する場合であっても、弱いプラズマの発生、強いプラズマ(弱くないプラズマ)の発生、を目視によって区別できる状態であった。そこで、プラズマ発生無しの場合は「無」、弱いプラズマ発生の場合は「p」、強いプラズマ発生の場合は「P」として区別する。そして、切断条件が不適切であって、レーザ切断加工が不可能であった場合には「不」とした。
【0041】
また、一ヶ月の暴露試験において、
図9に示すように、赤さびの発生がない場合には「○」、赤さびが発生した場合には「×」とした。ところで、前記暴露試験は、野外での1ヶ月経過後の結果である。したがって、レーザ切断加工品においては、評価が「×」の場合であっても、使用環境によっては使用可能な場合があるものである。
【0042】
次に、窒素ガスをアシストガスとして使用したクリーンカットを行って、めっき鋼板の板厚t=2.3mm,t=3.2mm,t=4.5mm,t=6.0mmにおける暴露試験を行った結果は、
図10〜
図17に示すとおりであった。
図10〜
図17において、K14,K27,K35はそれぞれめっきの付着量表示記号であって、それぞれにおけるめっき付着量は次のとおりである。すなわち、K14(片側めっき付着量70g/m
2)、K27(片側めっき付着量145g/m
2)、K35(片側めっき付着量175g/m
2)である。
【0043】
また、
図10〜17において、S2.0,D4.0及びD7.0はそれぞれノズル径(mm)を示している。すなわち、S2.0=2.0mm,D4.0=4.0mm,D7.0=7.0mmである。そして、各ノズル径に対応してのノズルギャップは、S2.0で0.3mm、D4.0で0.5mm、D7.0で1.0mmに設定してある。すなわち、ノズル径が大きくなると、レーザ加工位置において発生したスパッタ等がノズル内に入り易くなるので、ノズル径が大きくなるほどノズルギャップを大きく設定してある。
【0044】
なお、特記されているパラメータ以外のレーザ加工のパラメータは、前記標準加工条件のパラメータと同じ値を有するものである。
【0045】
さて、
図10を参照するに、焦点位置−0.5mm(焦点位置は各図にそれぞれ示してある)、板厚t=2.3mmでめっき付着量K14の場合において、ノズル径S2.0の場合には、1000mm/minにおいては、アシストガス圧が0.9MPa,0.7MPa,0.5MPaにおいてプラズマの発生はなかった。そして、暴露試験においての評価は全て「×」で、全面的に赤さびが発生している。また、
図11、
図12、
図13、
図14及び
図15に示すように、切断速度1000mm/min場合、ノズル径S2.0のノズルにおいては、アシストガス圧に拘わりなくプラズマの発生はなかった。そして、暴露試験においての評価は「×」で切断面の防錆効果においては、あまり望ましいものではなかった。
【0046】
したがって、ノズル径2.0のノズルを用い、切断速度1000mm/minでもってめっき鋼板のレーザ切断加工を行った場合、レーザ切断加工時に溶融及び/又は蒸発されためっき層含有金属を切断面に流動して、前記切断面を被覆することは難しいものである。
【0047】
次に、
図10、
図11、
図12においてノズル径D4.0の場合について検討するに、
図10、
図11においてはプラズマの発生がなく、暴露試験の評価は「×」である。しかし、
図11においてアシストガス圧0.7MPaの場合には「○」に改善されている。そして、ノズル径D7.0の場合には、弱いプラズマの発生が見られた。暴露試験の評価は、
図10においては「×」であるが、
図11においては「○」、「×」である。そして、
図12においては「×」である。
【0048】
ところで、
図10〜
図17において、暴露試験の評価が「○」、「×」の部分を見ると、プラズマの発生(P)がある場合には、殆ど「○」である。したがって、めっき鋼板のレーザ切断加工をクリーンカットで行う際、溶融及び/又は蒸発しためっき層含有金属を切断面へ流動して、切断面を溶融及び/又は蒸発されためっき層含有金属によって被覆するには、プラズマを発生させつつレーザ切断加工を行うことが望ましいものである。
【0049】
ところで、
図11より明らかなように、めっき付着量K27、ノズル径D4.0には、プラズマの発生がないにも拘わらず、暴露試験の評価が「○」の場合がある。また、
図10のノズル径D7.0、アシストガス圧0.9MPaにおいては、僅かなプラズマの発生があるものの、前記評価は「×」である。
【0050】
そして、
図10,11,12においては、切断速度が3000mm/min〜5000mm/minの範囲においては、全てにおいてプラズマの発生が見られ、そして、観察の結果は、切断速度が速くなるほどプラズマの発生は強くなっている。そして、
図10におけるノズル径S2.0、アシストガス圧0.9MPa,0.7MPa(3000mm/min)を除いた全域においての前記評価は全て「○」である。なお、
図10において、ノズル径2.0mm、アシストガス圧0.7MPaの4000mm/min〜5000mm/minにおいては「○」となっている。
【0051】
したがって、暴露試験の評価を「○」にするには、めっき鋼板の板厚t=2.3mmにおいて、めっき付着量K14においては、ノズル径S2.0の場合にはアシストガス圧0.7MPaで切断速度が4000mm/mmin〜5000mm/minの範囲が望ましい。そして、アシストガス圧0.5MPaの場合には、3000mm/min〜5000mm/minの範囲が望ましいものである。ノズル径がD4.0,D7.0の場合には、アシストガス圧が0.9MPa,0.7MPa,0.5MPaに拘わりなく、切断速度は3000mm/min〜5000mm/minの範囲が望ましいものである。
【0052】
ところで、
図11に示すように、めっき鋼板が同一板(t=2.3mm)において、めっき付着量がK27となって多く(厚く)なると、ノズル径D4.0、アシストガス圧0.7MPaにおいて、切断速度1000mm/minの条件においては、プラズマの発生が無いにも拘わらず、評価は「○」となっている。したがって、めっき鋼板の板厚(t=2.3mm)、めっき付着量K27、ノズル径D4.0、アシストガス圧0.7MPa、切断速度1000mm/minの各条件が適正に調和すると、プラズマが発生しなくても、評価を「○」とすることができるものである。換言すれば、前述した各条件が整うと、プラズマが発生しない場合であっても、レーザ切断加工時に溶融及び/又は蒸発しためっき層含有金属を、切断面に流動して切断面を被覆することができるものである。
【0053】
次に、
図12を参照すると、めっき付着量がK35に変化しただけであるにも拘わらず、切断速度1000mm/minにおいて、ノズル径D4.0、アシストガス圧0.7MPa、ノズル径D7.0、アシストガス圧0.9MPa,0.7MPaの条件においては僅かなプラズマの発生が見られたものの、評価は「×」になっている。
【0054】
ところで、一般的に、金属板のレーザ切断加工を行うとき、プラズマが発生すると、プラズマはレーザ光を吸収する特性があり、レーザ光の照射は連続したプラズマの発生を助長する。そして、プラズマは切断面粗さを悪化させることが知られている。しかし、例えばステンレスの無酸化切断においてはプラズマの熱を利用したプラズマ切断方法がある。この場合、発生したプラズマを助長するように加工条件を設定するものである。
【0055】
すなわち、上記の場合(i)アシストガスは低圧に設定する。(ii)ノズルとワークとの間のノズルギャップは、プラズマが成長する空間を形成するために、通常の場合よりも僅かに大きくする。(iii)焦点位置の追い込み量は、ワーク表面よりも上方を(+)方向、ワーク表面よりも下方を(−)方向としたときに、通常の焦点位置の場合よりも(+)方向に移動させる。(iv)レーザ光のワークへの入熱量を小さくするために、切断速度をより高速にする。上記(i)〜(iv)の条件は、金属板のレーザ切断加工を行う際に、プラズマを発生し易くする条件である。
【0056】
前記条件(i)〜(iv)を勘案して
図10を見ると、めっき付着量K14においては、切断速度が1000mm/min〜2000mm/minの範囲において、ノズル径がS2.0よりもD4.0、そしてD4.0よりもD7.0の方がプラズマの発生が多い。また、切断速度は1000mm/min〜5000mm/minに次第に速くなるほどプラズマの発生が強くなっている。そして、プラズマの発生が強くなると、暴露試験の結果は「○」が多くなっている。なお、
図11、
図12においても同様の傾向が見られる。
【0057】
したがって、めっき鋼板のレーザ切断加工時に、上面の溶融及び/又は蒸発しためっき層含有金属を切断面へ流動して、この一部のめっきによって切断面を被覆するには、プラズマが発生した方がよいものである。
【0058】
図13、
図14、
図15は、クリーンカットの場合であって、めっき鋼板の板厚t=3.2mmで、めっき付着量がK14,K27,K35の場合における暴露試験の結果である。なお、
図13〜
図15において、「不」は切断不可能であったことを示すものである。すなわち、切断条件が不適切な場合である。
図13〜
図15の結果からも明らかなように、アシストガス圧が低く、かつ切断速度が速い方がプラズマを発生し易い傾向にあることが分かる。
【0059】
図16、
図17は、クリーンカットの場合で、板厚t=4.5mm,t=6.0mmの場合における暴露試験結果であって、この場合においても、アシストガス圧は低圧であるほど、換言すればノズル径が大きいほど、また切断速度が速いほどプラズマの発生が強くなる傾向にある。そして、プラズマの発生が強いほど、暴露試験の結果は「○」になる傾向にある。なお、
図16、
図17においては「ド」はドロスの付着量が多いことを示すものである。
【0060】
前記
図10〜17に示した暴露試験の結果は、前記レーザ切断加工装置1における前記制御装置31に備えた切断条件データテーブル33に格納されている。すなわち、上記切断条件データテーブル33には、めっき鋼板の板厚毎、各板厚におけるめっき付着量毎に適用したノズル径、各ノズル径におけるノズルギャップ、各板厚毎に適用した焦点位置、及び切断速度の加工条件データが格納してある。さらに、前記切断条件データテーブル33には、めっき鋼板のレーザ切断加工時におけるプラズマ発生のデータ並びに暴露試験を行った評価結果が合わせて格納されている。なお、前記制御装置31には、イージーカット時の加工条件データを格納した切断条件データテーブルも含まれているものである。
【0061】
したがって、前記制御装置31に接続した入力手段35から各種の加工条件を入力すると、
図10〜
図17に示した評価と同一の評価が得られるレーザ切断加工が行われることになる。すなわち、例えば
図10に示す板厚t=2.3mmにおいて、めっき付着量K14、ノズル径D4.0、アシストガス圧0.7MPa、切断速度5000mm/minの条件を入力手段35から制御装置31に入力してレーザ切断加工を行うと、プラズマを発生してレーザ切断加工が行われるものである。そして、1ヶ月の暴露試験を行うと、評価は「○」が得られるものである。
【0062】
なお、暴露試験を行うときには、例えば海の近くなどの環境や気象条件等によっては評価が変化する場合があるものである。
【0063】
ところで、めっき鋼板のレーザ切断を行って、溶融及び/又は蒸発されためっき層含有金属を切断面に流動して切断面を被覆するには、めっきの溶融範囲は、ワークの板厚、めっき量及びレーザ切断条件にもよるが、ワークの切断端面から0.03mm〜0.5mmの範囲が望ましいものである。
【0064】
すなわち、めっき層の溶融及び/又は蒸発される範囲が0.5mm以上になる場合は、レーザ切断速度が遅く、入熱量が大であることが多い。この場合、溶融及び/又は蒸発されるめっき量が多くなり、レーザ切断溝内への入流量が多くなるものと考えられる。しかし、レーザ切断速度が遅いことにより、レーザ光の照射時間が長く、加熱時間が長くなって、溶融及び/又は蒸発されためっき層含有金属が高温状態に保持される時間が長くなり、かつアシストガスが作用する時間が長くなって、切断面へ付着して凝固する前に、アシストガスによって吹き飛ばされ易くなり、切断面への溶融及び/又は蒸発されためっき層含有金属の被覆量が少なくなるものと考えられる(例えば、
図12のD4.0,D7.0参照)。
【0065】
ところが、めっき層の溶融及び/又は蒸発範囲が0.03mmの小さな範囲の場合には、レーザ切断速度が速く、入熱量が小であることが多い。この場合、溶融及び/又は蒸発される量が少なくなり、レーザ切断面への入流量が少なくなるものと考えられる。
【0066】
したがって、めっき層の溶融及び/又は蒸発範囲は、切断面から0.03mm〜0.5mmの範囲が望ましいものである。上記範囲においては、レーザ光の照射時間及びアシストガスが作用する時間が適正な時間となり、溶融及び/又は蒸発されためっきがアシストガスによって吹き飛ばされる量が少なくなる。よって、切断面へ被覆して凝固を生じ易く、めっき層含有金属の被覆量が多くなるものと考えられる(例えば、
図12のD4.0,D7.0参照)。
【0067】
既に理解されるように、めっき鋼板のレーザ切断加工を行う際に、アシストガスとして窒素ガスを使用したクリーンカット又は窒素約97%、酸素約3%の混合ガスをアシストガスとして使用したイージーカットを行うと、上面のめっき層含有金属でもって切断面を被覆することができる。そして、レーザ切断加工時にプラズマが発生すると、前記被覆が効果的に行われることを見出した。
【0068】
そこで、板厚t=2.3mmのめっき鋼板のクリーンカット及びイージーカットを行い、プラズマ発生と、1ヶ月後の暴露試験を行ったところ、
図18に示す結果が得られた。
図18に示された結果から、クリーンカット及びイージーカットの両方とも、プラズマを発生させつつレーザ切断を行うと、切断面をめっき層含有金属によって効果的に被覆でき、赤さびの発生を防止できるものである。
【0069】
また、加工速度が大きいほど、めっき層含有金属による切断面の被覆が効果的に行われ、赤さびの発生を防止することができる。そこで、加工速度2200mm/min,5000mm/minの条件で、板厚t=2.3mm、めっき付着量K14のレーザ切断を行った際の切断面の観察結果は
図19に示すとおりである。
【0070】
図19より明らかなように、加工速度が2200mm/minの場合、赤さびの発生があるものである。ところが加工速度が5000mm/minになると、切断面全面にめっき層含有金属成分が検出され、赤さびの発生は見られないものである。この結果は、
図18に示された結果と整合するものである。
【0071】
ところで、
図19に示すレーザ切断面のEDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometry)の分析結果と暴露試験結果(4週間後)から次のことが分かる。
図2のクリーンカットでは、極めて僅かなめっき層含有金属がレーザ切断面より検出された。そこで、
図2のクリーンカット条件とほぼ同等の加工速度2200mm/minのレーザ切断面をEDS分析するとZn、Al、Mg成分すなわちめっき層含有金属はごく僅かであり写真撮影検出量以下であり、ほとんどレーザ切断面がめっき層含有金属では覆われていないことが分かる。更に適切な切断条件に変更することにより
図19の加工速度5000mm/minのEDS分析結果写真にあらわれているようにレーザ切断面全域にめっき層含有金属が検出されレーザ切断面全域をめっき層含有金属で覆っていることがわかった。すなわち、標準条件(加工速度:2200mm/min)での切断面は、鉄成分が約90%(Feの重量%:89.16)であり、めっき成分は(Zn,Al,Mgの値が何れも重量%:1.45以下で)ほとんど検出されない。その為、容易に赤さびが発生する。それに対して、今回の加工条件(加工速度:5000mm/min)で切断を行うと、切断面の鉄成分は約30%(Feの重量%:32.48)と大きく低下し、代わりにZnでは重量%:43.57と大幅に増え、またAl,Mgにおいても数倍以上に増加し、まためっき成分が切断面全体に渡りその表面を覆っていることがわかる。よって、赤さびの発生を抑制しているのは、レーザ切断加工時に上面から流動されて、切断面表面を覆っているめっき成分であることが分かる。
【0072】
以上のごとき実施形態の説明から理解されるように、めっき鋼板の板厚、めっき付着量に対応して、適正な加工条件でもってレーザ切断加工を行うと、レーザ切断加工時に上面の溶融及び/又は蒸発しためっき層含有金属が切断面に流動し、切断面を被覆し易いものである。したがって、めっき鋼板における切断面の上縁付近のめっき層の厚さは、前記切断面から離隔した位置、すなわちレーザ切断加工時に溶融及び/又は蒸発して流動を生じるほどの熱影響を受けなかった位置のめっき層の厚さよりも薄くなっているものである。
【0073】
ところで、前記説明においては、アルミニウム6%、マグネシウム3%、残り亜鉛91%のめっき鋼板の場合について例示した。しかし、めっき鋼板としては前述のめっき鋼板に限ることなく、その他のめっき鋼板の場合にも適用し得るものである。
【0074】
なお、めっき鋼板のレーザ切断加工方法において、板厚は、2.3mmであり、めっき付着量はK14であり、ノズル径は2.0mm〜7.0mmであり、アシストガス圧は0.5〜0.9(MPa)であり、切断速度は3000〜5000(mm/min)であることが望ましい。
【0075】
また、めっき鋼板のレーザ切断加工方法において、板厚は、2.3mmであり、めっき付着量はK27又はK35であり、ノズル径は2.0mm〜7.0mmであり、アシストガス圧は0.5〜0.9(MPa)であり、切断速度は3000〜5000(mm/min)であることが望ましい。
【0076】
また、めっき鋼板のレーザ切断加工方法において、板厚は、3.2mmであり、めっき付着量はK27又はK35であり、ノズル径は7.0mmであり、アシストガス圧は0.5〜0.9(MPa)であり、切断速度は2000〜3000(mm/min)であることが望ましい。
【0077】
また、めっき鋼板のレーザ切断加工方法において、板厚は、4.5mmであり、めっき付着量はK27又はK35であり、ノズル径は7.0mmであり、アシストガス圧は0.7〜0.9(MPa)であり、切断速度は1500〜2000(mm/min)であることが望ましい。
【課題】めっき鋼板のレーザ切断加工を行う際に、上面の溶融及び/又は蒸発しためっきの一部を切断面へ流動して、切断面をめっきによって被覆するレーザ切断加工方法を提供する。
【解決手段】めっき鋼板のレーザ切断加工方法であって、前記めっき鋼板Wの上面へレーザ光LBを照射してレーザ切断加工を行う際、レーザ光LBの照射によって溶融及び/又は蒸発されためっきの一部を、レーザ加工部へ噴出されるアシストガスによって、前記めっき鋼板Wの切断面へ流動して、前記切断面にめっきを被覆する際、前記めっき鋼板のレーザ切断加工位置における上面にプラズマを発生させてレーザ切断加工を行う。