特許第6202520号(P6202520)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202520カルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜、及びカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202520
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】カルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜、及びカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/06 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   C01B33/06
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-124188(P2013-124188)
(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-240341(P2014-240341A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】今川 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】板原 浩
(72)【発明者】
【氏名】立岡 浩一
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−072046(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/009073(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaSi2を加熱し、
前記CaSi2とハロゲンを含むガスとを反応させ、
前記CaSi2からCaを引き抜き、CaySi2(0<y<1)を生成させる
反応工程を備えたカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記ハロゲンを含むガスは、前記CaSi2と金属ハロゲン化物とを離間して配置し、前記金属ハロゲン化物を加熱することにより発生させたものである
請求項1に記載のカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲンは、塩素である請求項1又は2に記載のカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記金属ハロゲン化物は、Cr、Fe、Mn及びWからなる群から選ばれるいずれか1以上の遷移金属元素を含む金属塩化物である
請求項2に記載のカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記CaSi2は、基板表面に形成された薄膜である請求項1から4までのいずれか1項に記載のカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法。
【請求項6】
基板の表面に形成された、一般式:CaySi2(0<y<1)で表される組成を持つナノシートの集合体の単相からなるカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜、及びカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法に関し、さらに詳しくは、一般式:CaySi2(0<y<1)で表され、かつ、ナノシートの集合体からなるカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜、及びカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CaとSiの化合物として、Ca2Si、CaSi、及び、CaSi2が知られている。これらのカルシウム−シリコン化合物は、いずれも平衡状態においては化学量論組成を持つ化合物である。カルシウム−シリコン化合物は、その組成に応じて、種々の用途に用いられ、あるいは、種々の用途への応用が期待されている。
【0003】
例えば、Siナノシートは、ポリシラン(Si22)nやシロキセン(Si2HOH)nを出発原料として製造されている。また、ポリシランやシロキセンは、CaとSiが交互に積層した構造を持つCaSi2結晶を塩酸処理し、CaSi2結晶からCaを抜くことによって合成されている。
また、Ca2Siは、直接遷移型の半導体であり、可視領域の光電変化デバイスへの応用が期待されている。
【0004】
また、特許文献1には、遷移金属シリサイド粒子と、Siナノシート又はCa欠損層状Caシリサイドとを含む複合体からなる遷移金属シリサイド−Si複合粉末が開示されている。
同文献には、遷移金属シリサイド−Si複合粉末は、結晶性の高い遷移金属シリサイド粒子(導電材料)と、Siナノシート又はCa欠損層状Caシリサイド(Liイオンの吸蔵放出体)とがナノレベルで複合しているため、これをLi二次電池の負極材料として用いると、高い充放電容量を示す点が記載されている。
【0005】
特許文献2には、Mg2Si薄膜が形成されたシリコン基板を密閉空間内でカルシウム蒸気雰囲気に曝し、Mg2Si薄膜表面にCa2Si薄膜を成長させる方法が開示されている。
【0006】
非特許文献1には、CaSi2を電気化学的に酸化させることにより、Si層の層間にあるCaを引き抜く方法が開示されている。
同文献には、
(a)CaSi2から除去されたCaの割合は、30〜50%である点、
(b)このような方法によりCaSi2からCaを完全に取り除くのは難しい点、及び、
(c)Ca除去の困難性は電気化学的酸化の不均一性に由来する点、
が記載されている。
【0007】
さらに、非特許文献2には、MgがドープされたCaSi2(CaSi1.85Mg0.15)の板状結晶にプロピルアミン塩酸(PA・HCl)及び水を加え、室温で10日間攪拌する方法が開示されている。
同文献には、このような方法により、Caイオンが引き抜かれ、シリコンシートと不溶性の黒色の金属性固体が得られる点が記載されている。
【0008】
特許文献2には、Caの比率がSiより多いCaSi化合物(Ca2Si)の薄膜を合成する技術が開示されている。また、非特許文献2には、CaSi2からCaを全量脱離させ、Siを形成する技術が開示されている。しかしながら、CaSi2からCaが欠損したカルシウム−シリコン化合物を得ることは、通常困難である。
また、得られたとしても、特許文献1に記載されているように、Ca欠損カルシウム−シリコン化合物と他のシリサイドとの混合物であったり、あるいは、非特許文献1に記載されているように、分離困難なカーボンとの混合焼結体であり、Caが欠損したカルシウム−シリコン化合物の選択的生成は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−072046号公報
【特許文献2】特許第3584284号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Physica 105B, pp.230-233(1981)
【非特許文献2】Angew. Chem. Int. Ed. pp.6303-6306(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、CaSi2からCaが欠損したカルシウム−シリコン化合物を、不純物が少ない単相として選択的に、かつ、簡便な方法で合成することが可能な方法を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、不純物が少ないカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係るカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法は、
CaSi2を加熱し、
前記CaSi2とハロゲンを含むガスとを反応させ、
前記CaSi2からCaを引き抜き、CaySi2(0<y<1)を生成させる
反応工程を備えている。
前記ハロゲンを含むガスは、前記CaSi2と金属ハロゲン化物とを離間して配置し、前記金属ハロゲン化物を加熱することにより発生させたものが好ましい
【0013】
また、本発明に係るカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜は、基板の表面に形成された、一般式:CaySi2(0<y<1)で表される組成を持つナノシートの集合体の単相からなる。
【発明の効果】
【0014】
CaSi2とハロゲンを含むガスとを反応させると、CaSi2からCaの一部が引き抜かれる。その結果、不純物の少ないカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物が得られる。
特に、CaSi2と金属ハロゲン化物とを離間して配置し、金属ハロゲン化物を加熱することにより発生させたハロゲンを含むガスとCaSi2とを反応させると、不純物の少ないカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物を簡便に合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】金属ハロゲン化物を用いてカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物を合成するための合成装置の概略図である。
図2】実施例1で得られた薄膜のSEM像である。
図3】実施例1で得られた薄膜の低倍率TEM像である。
図4】実施例1で得られた薄膜の高倍率TEM像(図4(a))及び格子像(図4(b))である。
図5】比較例1で得られた薄膜のSEM像である。
図6】比較例2で得られた粉末のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. カルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法]
本発明に係るカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の製造方法は、
CaSi2を加熱し、
前記CaSi2とハロゲンを含むガスとを反応させ、
前記CaSi2からCaを引き抜き、CaySi2(0<y<1)を生成させる
反応工程を備えている。
【0017】
[1.1. CaSi2
本発明において、出発原料には、CaSi2が用いられる。CaSi2の形状及び大きさは、特に限定されるものではなく、目的に応じて任意に選択することができる。
CaSi2の形状としては、
(1)粉末、
(2)基板表面に形成された薄膜、
などがある。
【0018】
CaSi2からCaを引き抜く反応は、固気反応である。そのため、出発原料の全体を現実的な反応時間内にカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物に変換するためには、出発原料の大きさ(又は、厚さ)は小さいほど良い。一方、出発原料の表面の一部をカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物に変換する場合には、出発原料の大きさ(又は、厚さ)は特に限定されない。
【0019】
[1.2. ハロゲンを含むガス]
本発明において、反応ガスには、塩素、ヨウ素、臭素などのハロゲンを含むガスが用いられる。入手と取扱の容易さから、ハロゲンを含むガスは、塩素を含むガスが好ましい。
ハロゲンを含むガスとしては、例えば、
(1)ハロゲンガス(Cl2、I2、Br2)、
(2)ハロゲン化水素ガス(HCl、HI、HBr)、
(3)金属ハロゲン化物を加熱することにより発生させたガス(以下、これを「分解ガス」ともいう)、
などがある。
【0020】
これらの中でも、ハロゲンを含むガスは、分解ガスが好ましい。これは、金属ハロゲン化物は危険性が少なく、製造時の取扱が容易であるためである。入手と取扱の容易さから、金属ハロゲン化物は、金属塩化物が好ましい。
ハロゲンを含むガスとして分解ガスを用いる場合、CaSi2と金属ハロゲン化物とを離間して配置する必要がある。CaSi2と金属ハロゲン化物とが互いに接触した状態で加熱すると、分解ガスの発生及びCaの引き抜き反応が生じるだけでなく、副生成物として金属シリサイドも生成する。反応物から金属シリサイドを選択的に除去するのは、通常、困難である。
【0021】
分解ガス発生源である金属ハロゲン化物の種類は、特に限定されない。金属ハロゲン化物は、熱力学的に不安定な化合物であるため、適切な温度に加熱すれば、加熱温度に応じた分圧を持つガスを発生させることができる。
金属ハロゲン化物としては、例えば、
(1)遷移金属元素のハロゲン化物、
(2)アルカリ金属元素のハロゲン化物、
(3)アルカリ土類金属元素のハロゲン化物
などがある。
分解ガス発生源として、これらのいずれか1種の金属ハロゲン化物を用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0022】
これらの中でも、金属ハロゲン化物は、遷移金属元素の塩化物が好ましい。これは、脱離したCaにより形成されるCaCl2よりも熱力学的に不安定な塩化物が多いためである。
また、前記金属塩化物は、Cr、Fe、Mn及びWからなる群から選ばれるいずれか1以上の遷移金属元素を含むものが好ましい。これは、基板表面との反応に際し、エッチング効果があり、反応性が向上するためである。
【0023】
[1.3. 反応条件]
CaSi2とハロゲンを含む反応ガスとの反応温度が低すぎると、現実的な時間内に反応が進行しない。従って、反応温度は、400℃以上が好ましい。反応温度は、さらに好ましくは、500℃以上である。
一方、反応温度が高すぎると、CaSi2が融解し、組成や結晶構造、薄膜形状を維持できなくなる。従って、反応温度は、1000℃以下が好ましい。反応温度は、さらに好ましくは、900℃以下である。
反応時間は、反応温度やCaSi2の大きさ(又は、厚さ)にもよるが、通常、0.1〜1時間程度である。
【0024】
ハロゲンを含むガスとして分解ガスを用いる場合、金属ハロゲン化物の加熱温度は、金属ハロゲン化物の種類に応じて最適な温度を選択する。一般に、加熱温度が高くなるほど、ハロゲンを含むガスの分圧が増大する。
例えば、金属ハロゲン化物として、Cr、Fe、Mn及びWからなる群から選ばれるいずれか1以上の遷移金属元素を含む金属塩化物を用いる場合、加熱温度は、400〜1000℃が好ましい。
【0025】
図1に、金属ハロゲン化物を用いてカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物を合成するための合成装置の概略図を示す。
図1において、合成装置10は、石英管12と、2つのヒーター(図示せず)とを備えている。石英管12内は、キャリアガス(例えば、Arガス)を流せるようになっている。2つのヒーターは、キャリアガスの上流側(加熱ゾーンA)と、下流側(加熱ゾーンB)に配置されている。
加熱ゾーンAには、金属ハロゲン化物(図1の例では、CrCl2)を入れたボートが置かれている。また、加熱ゾーンBには、CaSi2図1の例では、表面にCaSi2膜が形成された基板)が置かれている。
【0026】
石英管12内にキャリアガスを流しながら、加熱ゾーンA及び加熱ゾーンBを、それぞれ適切な温度に加熱する。加熱ゾーンAでは、加熱温度に応じた分圧のハロゲンを含むガスが発生する。ハロゲンを含むガスは、キャリアガスによって加熱ゾーンBに運ばれ、CaSi2と反応する。その結果、加熱ゾーンBの加熱温度、加熱時間、及び、ハロゲンを含むガスの分圧に応じて、CaSi2からCaの一部が引き抜かれる。
【0027】
なお、ハロゲンを含むガスとして、分解ガス以外のガス(例えば、塩素ガス)を用いる場合、反応管内にCaSi2のみを置き、CaSi2を適切な温度に加熱する。この状態で、反応管内に反応ガスを供給すれば良い。
【0028】
[2. カルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物]
本発明に係るカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物は、本発明に係る方法により得られる。
カルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の組成は、CaySi2(0<y<1)で表される。Ca量(y)は、反応条件を選択することにより、任意に制御できる。
また、カルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物の形状は、出発原料の形状に応じて、粉末又は薄膜となる。
【0029】
[3. 作用]
CaSi2とハロゲンを含むガスとを反応させると、CaSi2からCaの一部が引き抜かれる。その結果、不純物の少ないカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物が得られる。
特に、CaSi2と金属ハロゲン化物とを離間して配置し、金属ハロゲン化物を加熱することにより発生させたハロゲンを含むガスとCaSi2とを反応させると、不純物の少ないカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物を簡便に合成することができる。
【実施例】
【0030】
(実施例1、比較例1〜2)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1]
Si基板:0.03gと、Ca粒:0.5gを容器に入れ、真空下において600℃、1.5時間の熱処理を行うことで、CaSi2基板を得た。続いて、大気下において、得られたCaSi2基板:0.006gを、図1に示す合成装置の加熱ゾーンBに設置した。また、加熱ゾーンAには、CrCl2粉末:0.08gを設置した。CaSi2基板の温度を650℃、CrCl2粉末の温度を900℃に設定し、Ar流通下において10分間加熱することで、Ca欠損カルシウム−シリコン化合物薄膜を合成した。
【0031】
[1.2. 比較例1]
実施例1と同様にして、CaSi2基板を作製した。得られたCaSi2基板とCrCl2粉末とを混合し、混合物を650℃で15分間加熱した。
[1.3. 比較例2]
CaSi2粉末とCrCl2粉末とを混合し、混合物を650℃で15分間加熱した。
【0032】
[2. 試験方法]
SEMにより、生成物の状態解析を行った。また、EDXにより、生成物の組成分析を行った。
【0033】
[3. 結果]
図2に、実施例1で得られた薄膜のSEM像を示す。また、図3に、実施例1で得られた薄膜の低倍率TEM像を示す。得られた薄膜は、3μm程度の粒子が凝集して形成されており(図2)、それらの粒子は、数百nmのシートから構成されていた(図3)。
表1に、元素分析値を示す。SEMの視野におけるEDXを用いた元素組成から、CrやClの含有量が非常に少なく、CaSi2からCaが脱離したカルシウム−シリコン化合物であることを確認した。
図4に、実施例1で得られた薄膜の高倍率TEM像(図4(a))及び格子像(図4(b))を示す。図4に示されるように、得られた薄膜がバルクのSiとは異なる格子像を持つことを確認した。
【0034】
図5に、比較例1で得られた薄膜のSEM像を示す。表1に示すように、得られた薄膜は、クロム−シリコン化合物を形成している部分と、シリコン単相からなる部分の混合物として得られ、CaSi2からCaが脱離したカルシウム−シリコン化合物の形成は確認されなかった。
【0035】
図6に、比較例2で得られた粉末のSEM像を示す。得られた粉末は、クロム−シリコン化合物を形成している粒子と、未反応のCrCl2からなる粒子の混合物であった。表1に示したクロム−シリコン化合物の組成比から判断して、クロム−シリコン化合物が選択的に生成してしまい、CaSi2からCaが脱離したカルシウム−シリコン化合物の形成は確認されなかった。
【0036】
【表1】
【0037】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係るカルシウム欠損カルシウム−シリコン化合物は、Siナノシートを製造するための原料、Li二次電池の負極材料などに使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6