(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、スラグタップにおけるバーナの先端を移動させた位置に対応する箇所に、固化スラグが付着している場合、バーナの先端から噴射させた火炎が固化スラグを介して反射し、自己火炎によってバーナが焼損してしまうおそれがあるという課題がある。
【0006】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、バーナの焼損を防止しつつ、効率よく、かつ確実に固化スラグを溶融、除去することができる固化物溶融バーナ装置、石炭ガス化炉
を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る固化物溶融バーナ装置は、対象部位に生成された固化物を溶融するための固化物溶融バーナ装置であって、先端から火炎を噴射させるバーナと、該バーナを前記対象部位に近接、離間させるバーナ駆動部と、前記対象部位よりも前記バーナが設けられた側に設定された検出範囲に生成される固化物を検出する固化物検出部と、該固化物検出部による検出結果に基づいて前記バーナを制御する制御部と、を備え
、前記固化物検出部は、前記検出範囲に生成される固化物までの距離を検出可能であり、前記制御部は、前記固化物検出部による検出結果に基づいて、前記バーナの先端から固化物までの距離が、予め設定された点火限界閾値以上の場合に、前記バーナを点火させる。
【0008】
このように構成することで、対象部位に固化物が生成されている場合、固化物に対するバーナの先端の距離を、適正な距離に保つことができる。このため、バーナの先端から噴射された火炎が固化物を介して反射し、自己火炎によってバーナを焼損してしまうことを防止できる。また、固化物に対して適正な距離から火炎を噴射するので、効率よく、かつ確実に固化物を溶融することができる。
また、固化物に対するバーナの先端の距離が所定の距離よりも短い場合に、火炎を噴射してしまうことを確実に防止できる。このため、バーナの焼損を確実に防止できる。
【0011】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置は、対象部位に生成された固化物を溶融するための固化物溶融バーナ装置であって、先端から火炎を噴射させるバーナと、該バーナを前記対象部位に近接、離間させるバーナ駆動部と、前記対象部位よりも前記バーナが設けられた側に設定された検出範囲に生成される固化物を検出する固化物検出部と、該固化物検出部による検出結果に基づいて前記バーナを制御する制御部と、を備え、前記固化物検出部は、前記検出範囲に生成される固化物までの距離を検出可能であり、前記制御部は、前記バーナ駆動部により前記バーナを、前記対象部位に近接させる方向に進出させると共に、前記固化物検出部による検出結果に基づいて、前記固化物検出部で検出された固化物から前記バーナの先端までの距離が移動限界閾値に達する位置で前記バーナ駆動部による前記バーナの進出を停止させ、前記バーナを点火させる。
【0012】
このように構成することで、バーナの焼損のおそれがない範囲で、固化物にできる限りバーナの先端を近づけることができる。このため、効率よく固化物を溶融することができる。
【0013】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置において、前記移動限界閾値は、前記バーナを点火した時に、当該バーナが前記固化物により偏向した自己火炎による損傷が無い範囲として選定する。
【0014】
このように構成することで、バーナの先端から噴射された火炎が、固化物を介してバーナの先端に衝突してしまうことを確実に防止しつつ、固化物にできる限りバーナの先端を近づけることができる。このため、さらに効率よく固化物を溶融することができる。
【0017】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置は、対象部位に生成された固化物を溶融するための固化物溶融バーナ装置であって、先端から火炎を噴射させるバーナと、該バーナを前記対象部位に近接、離間させるバーナ駆動部と、前記対象部位よりも前記バーナが設けられた側に設定された検出範囲に生成される固化物を検出する固化物検出部と、該固化物検出部による検出結果に基づいて前記バーナを制御する制御部と、を備え、前記バーナを複数備え、前記制御部は、前記固化物検出部による検出結果に基づいて、点火させる前記バーナを選択し、選択された前記バーナを点火させ、
前記固化物検出部は、前記検出範囲に生成される固化物までの距離を検出可能であり、記制御部は、前記固化物検出部による検出結果に基づいて、複数の前記バーナのうち、前記固化物検出部で検出された固化物から前記バーナの先端までの距離が、予め設定された点火限界閾値以上の前記バーナから、点火させる前記バーナを選択し、選択された前記バーナを点火させる。
【0018】
このように構成することで、複数のバーナのうち、固化物を溶融させるのに最適な位置に配置されたバーナを用い、効率よく固化物を溶融することができる。また、バーナの先端から噴射された火炎が固化物を介して反射し、自己火炎によってバーナを焼損してしまうことを確実に防止できる。
また、複数のバーナのうち、選択されたバーナの先端と固化物との間の距離が所定の距離よりも短い場合、選択されたバーナの先端から火炎を噴射してしまうことを確実に防止できる。このため、バーナの焼損を確実に防止できる。
【0021】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置において、前記バーナは、前記対象部位の中心軸回りに異なる位置で複数設けられている。
【0022】
このように構成することで、対象部位の中心軸回りに、さまざまな位置から固化物にバーナを近づけることができるので、固化物に対して最適な位置にあるバーナを選択し易くなる。また、その選択したバーナにより、固化物を効率よく溶融することができる。
【0023】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置において、複数の前記バーナは、前記対象部位の中心軸回りに、噴射する火炎が互いに干渉しない位置に設けられている。
【0024】
このように構成することで、1つのバーナから噴射された火炎が、他のバーナに干渉してしまうことを防止できる。さらに、例えば、複数のバーナから火炎を噴射する際、これら火炎同士が干渉してしまうことを防止できる。このため、バーナの焼損を防止できる。
【0025】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置において、前記バーナは、前記対象部位の中心軸に沿う方向に異なる位置で複数設けられている。
【0026】
このように構成することで、効率よく固化物を溶融できると共に、固化物を溶融した後、対象部位に火炎が衝突してしまうことを防止できる。
【0027】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置において、前記バーナのそれぞれは、前記バーナ駆動部でそれぞれ予め設定された噴射位置で噴射させた場合に、前記バーナの先端から噴射する火炎の噴射中心線が前記対象部位の一部に交差するように火炎の噴射方向が設定されている。
【0028】
このように構成することで、複数のバーナを備えた固化物溶融バーナ装置において、バーナの先端から噴射された火炎によって固化物を溶融した後、対象部位に火炎が衝突してしまうことを防止できる。
【0033】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置は、対象部位に生成された固化物を溶融するための固化物溶融バーナ装置であって、先端から火炎を噴射させるバーナと、該バーナを前記対象部位に近接、離間させるバーナ駆動部と、前記対象部位よりも前記バーナが設けられた側に設定された検出範囲に生成される固化物を検出する固化物検出部と、該固化物検出部による検出結果に基づいて前記バーナを制御する制御部と、を備え、前記検出範囲に向けて進出して固化物を突き押す突き押し手段を備え、前記制御部は、前記固化物検出部での検出結果に基づいて、前記突き押し手段で固化物を突き押
し、前記検出範囲に生成された固化物の温度を検出可能な温度検出部を備え、前記制御部は、該温度検出部で検出された温度が予め設定された第1温度閾値以下のときに、前記突き押し手段で固化物を突き押す。
【0034】
このように構成することで、バーナの先端から火炎を噴射させることにより、バーナが焼損してしまうおそれがある場合、バーナの先端から火炎を噴射させることなく、突き押し手段によって固化物を突き押すことにより、対象部位から固化物を除去することが可能になる。
また、固化物が第1温度閾値以下であり、確実に固化している場合に限り、突き押し手段によって固化物を突き押すことができる。このため、突き押し手段によって、確実に固化物を除去することができる。
【0037】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置において、前記制御部は、前記温度検出部で検出された温度が前記第1温度閾値を超えるときに、前記バーナを点火させる。
【0038】
ここで、固化物が所定温度以上の高温であると、突き押し手段が損傷するおそれがあると共に、固化物が完全に固化しきれず、突き押し手段で突き押したとしても除去できない場合がある。そこで、温度検出部で検出された温度が第1温度閾値を超えるときに、バーナを点火させるように構成することにより、固化物が高温であり、この固化物を突き押し手段によって突き押すことが困難な場合、バーナの先端から火炎を噴射させて固化物を溶融できる。
【0039】
本発明に係る固化物溶融バーナ装置は、少なくとも一つの前記バーナと当該バーナを駆動させる前記バーナ駆動部とにより前記突き押し手段が構成されている。
【0040】
このように構成することで、簡素な構造で安価な突き押し手段とすることができる。部品点数も削減でき、固化物溶融バーナ装置の製造コストを低減できる。
【0041】
本発明に係る石炭ガス化炉は、石炭が供給され燃焼する炉本体と、該炉本体の底部に設けられ、発生したスラグを排出させるスラグタップとを備え、前記固化物溶融バーナ装置が、該スラグタップの下方に設けられて、該スラグタップを前記対象部位として、前記固化物である固化スラグを溶融する。
【0042】
このように構成することで、バーナの焼損を防止しつつ、効率よく、かつ確実にスラグを溶融することが可能な石炭ガス化炉を提供できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、対象部位に固化物が生成されている場合、固化物に対するバーナの先端の距離を、適正な距離に保つことができる。このため、バーナの先端から噴射された火炎が固化物を介して反射し、バーナを焼損してしまうことを防止できる。また、固化物に対して適正な距離から火炎を噴射するので、効率よく、かつ確実に固化物を溶融することができる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1実施形態)
(石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラント)
次に、この発明の第1実施形態を
図1〜
図4に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る石炭ガス化炉1を備えた石炭ガス化コンバインドサイクル発電プラント(以下、単に発電プラントという)100の一部を示す系統図である。
同図に示すように、発電プラント100は、石炭ガス化炉1と、この石炭ガス化炉1の後流側に設けられたチャー回収設備11と、を備えている。
【0048】
(石炭ガス化炉)
石炭ガス化炉1には、下流側から順に、スラグホッパ2、スラグ燃焼室3、コンバスタ4、リダクタ5、および後部熱交換器6が設けられている。
スラグホッパ2は、スラグ燃焼室3から流れ落ちるスラグ(詳細は後述する)を冷却するものである。スラグホッパ2には、一定量の冷却用のスラグホッパ水19が貯水されている。
【0049】
スラグ燃焼室3の側面3aには、スラグ溶融バーナ装置23が1つ設けられている。このスラグ溶融バーナ装置23は、後述のスラグタップ10に生成された固化スラグS(
図2参照)を溶融するためのものである。スラグ溶融バーナ装置23の内部には、燃料配管24および酸化剤配管25が接続されている。燃料配管24は、LNG弁27および配管を介してLNG供給設備29に接続されている。一方、酸化剤配管25は、酸素弁30を介して酸素供給設備31と接続されており、これらLNG弁27および酸素弁30は、それぞれ操作盤32により制御されるようになっている。なお、スラグ燃焼室3の詳細については、後述する。
【0050】
コンバスタ4およびリダクタ5は、微粉炭等を加熱してガス化するための反応炉である。コンバスタ4には、コンバスタバーナ7およびチャーバーナ8が、それぞれ複数本ずつ設けられている。また、リダクタ5には、リダクタバーナ9が複数設けられている。そして、不図示の粉砕設備で数ミクロン〜数10ミクロンに粉砕された石炭が、熱負荷用石炭としてコンバスタバーナ7へ、ガス化用石炭としてリダクタバーナ9へ、それぞれ供給されるようになっている。また、コンバスタ4内の下部に、スラグタップ10が設けられている。
【0051】
後部熱交換器6は、クロスオーバ22によってリダクタ5と連結されている。後部熱交換器6は、コンバスタ4およびリダクタ5によって発生した石炭ガスが保有する熱を利用して、例えば、不図示の蒸気タービンを駆動する蒸気の一部を発生させる。
【0052】
(チャー回収設備)
チャー回収設備11は、石炭ガス化炉1によって生成された石炭ガスに含まれるチャーを回収するものである。チャー回収設備11は、1個または複数個のサイクロン12と、1個または複数個のポーラスフィルタ13と、チャービン14と、を備えている。回収されたチャー17は、燃料等として外部利用されたり、チャーバーナ8にリサイクルさせてガス化されたりする。
【0053】
(スラグ溶融バーナ装置)
図2は、スラグ溶融バーナ装置23の概略構成図、
図3は、スラグ溶融バーナ装置23の動作説明図である。
図2に示すように、スラグ溶融バーナ装置23は、スラグタップ10に近接、離間可能に設けられたバーナ本体41と、バーナ本体41を駆動するバーナ駆動部42と、スラグタップ10に生成された固化スラグSを検出するレーザ測定器43と、レーザ測定器43による検出結果に基づいて、バーナ本体41の駆動制御を行う制御部44と、を備えている。
【0054】
バーナ本体41は、LNG供給設備29から燃料配管24を介して供給されるLNG燃料と、酸素供給設備31から酸化剤配管25を介して供給される酸素とにより、先端から火炎を噴射する。また、バーナ本体41は、火炎の噴射中心線C1がスラグタップ10の一部、より具体的には、スラグタップ10の固化スラグSが形成されている箇所に交差するように設けられている。
【0055】
さらに、バーナ本体41は、
図3に示すように、バーナ駆動部42によって、その先端が固化スラグSに所定の距離まで近づくまで伸長移動した後、火炎を噴射するようになっている。バーナ本体41とスラグ燃焼室3の側面3aとの間には、この側面3aとバーナ本体41との間をシールする不図示のシール部材が設けられている。なお、バーナ本体41の伸長制御方法についての詳細は後述する。
【0056】
バーナ駆動部42は、バーナ本体41の伸長、縮退距離を測定するセンサ45を備えている。このセンサ45の測定結果に基づいて、バーナ本体41が所望の長さ分、伸長、縮退される。
レーザ測定器43は、スラグ燃焼室3の側面3aに、バーナ本体41に近接するように配置されている。レーザ測定器43は、バーナ本体41が最も縮退した状態のバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離を測定する。
【0057】
レーザ測定器43としては、例えば、固化スラグSに向かってレーザ光を照射し、このレーザ光が固化スラグSに反射してレーザ測定器に到達するまでの時間を測定し、この時間を距離に換算するように構成されたものが用いられる。すなわち、レーザ測定器43自体は、このレーザ測定器43と固化スラグSとの間の距離を測定するが、レーザ測定器43の取付位置と、バーナ本体41の取付位置との誤差を補正することにより、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離を測定できるようになっている。
【0058】
なお、レーザ測定器43の種類としては、上記の構成のものに限られるものではなく、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離を測定可能なさまざまなレーザ測定器43を用いることが可能である。また、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離を測定可能な測定器であればよく、レーザ測定器43に代わってさまざまな測定器を用いることも可能である。
【0059】
制御部44は、レーザ測定器43の測定結果、およびバーナ駆動部42の測定結果に基づいて、バーナ本体41の伸長移動距離を決定し、この移動距離を信号としてバーナ駆動部42に出力する。また、制御部44は、レーザ測定器43の測定結果、およびバーナ駆動部42に設けられているセンサ45の測定結果に基づいて、バーナ本体41からの火炎の噴射の制御を行う。
【0060】
(スラグ溶融バーナ装置の動作)
次に、
図4に基づいて、スラグ溶融バーナ装置23の動作について説明する。
図4は、スラグ溶融バーナ装置23の動作を示すフローチャートである。
【0061】
ここで、スラグタップ10の下部、つまり、スラグタップ10におけるバーナ本体41の移動範囲に対応する箇所(レーザ測定器43の測定範囲)に固化スラグSが生成されていないような場合は、従来と同様のフローにより、スラグ溶融バーナ装置23によって固化スラグSが溶融される。なお、従来の同様のフローとは、バーナ駆動部42によって、バーナ本体41の先端がスラグタップ10の下部に至るまで伸長移動され、この後、バーナ本体41の先端から火炎を噴射して固化スラグSを溶融することをいう。
このため、以下の説明では、スラグタップ10におけるバーナ本体41の移動範囲に対応する箇所に固化スラグSが生成された場合における、スラグ溶融バーナ装置23の動作について説明する。
【0062】
まず、スラグ溶融バーナ装置23の作動準備を行う(ステップST100、固化物検出工程)。
具体的には、レーザ測定器43を常時起動しておき、スラグタップ10に固化スラグSが生成されているか否かの検出をレーザ測定器43により行う。そして、スラグタップ10に固化スラグSが生成されていることが検出された場合、スラグ溶融バーナ装置23の作動準備を行う。
【0063】
レーザ測定器43による固化スラグSの有無の検出方法としては、例えば、レーザ測定器43と固化スラグSとの間の距離として考えられる最大距離を想定しておき(以下、この最大距離を想定最大距離という)、この想定最大距離までを検出可能なレーザ測定器43を用いる方法がある。この方法の場合、レーザ測定器43による測定が不可であれば、制御部44によってスラグタップ10に固化スラグSが生成されていないと判断される。一方、レーザ測定器43によって測定できるようであれば、制御部44によってスラグタップ10に固化スラグSが生成されていると判断される。
【0064】
また、レーザ測定器43による固化スラグSの有無の検出方法としては、例えば、制御部44に想定最大距離を記憶しておく方法がある。レーザ測定器43による測定結果を信号として制御部44に出力し、制御部44で測定結果と想定最大距離とを比較して測定結果よりも想定最大距離が大きい場合、制御部44によってスラグタップ10に固化スラグSが生成されていると判断する。
【0065】
なお、レーザ測定器43による固化スラグSの有無の検出方法は、上述の方法に限られるものではなく、さまざまな検出方法を用いることができる。また、レーザ測定器43とは別に固化スラグSの有無を検出するセンサを設け、このセンサの検出結果に基づいて、スラグ溶融バーナ装置23の作動準備を行うように構成してもよい。
【0066】
スラグ溶融バーナ装置23の作動準備を行った後、レーザ測定器43によって、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrを測定する(ステップST101)。
そして、レーザ測定器43の測定結果を、信号として制御部44に出力する。
続いて、レーザ測定器43が正常に動作しているか否かの判断を行う(ステップST102)。
例えば、レーザ測定器43による測定距離が極端に短い場合等、レーザ測定器43のレーザ光照射面に異物が付着していることも考えられ、このような場合、レーザ測定器43に異常が生じていると判断する。
【0067】
ステップST102による判断が「No」、つまり、レーザ測定器43に異常が生じていると判断した場合、レーザ測定器43のチェックを行う(ステップST103)。
一方、ステップST102による判断が「Yes」、つまり、レーザ測定器43が正常に動作していると判断した場合、バーナ駆動部42のセンサ45によって、バーナ本体41の現在位置を検出する(ステップST104)。
【0068】
そして、バーナ駆動部42によって、バーナ本体41を固化スラグSに向かって伸長移動させ、さらにセンサ45によってバーナ本体41の伸長移動距離Xbを測定する(ステップST105)。
続いて、制御部44によって、距離Xrと伸長移動距離Xbとの差分を計算し、この計算値が予め制御部44に記憶されている規定値(点火限界閾値)以上か否かの判断を行う(ステップST106)。
なお、バーナ本体41が最も縮退した位置にあるとき、伸長移動距離Xbは、Xb=0となる。
【0069】
ここで、制御部44に記憶されている規定値は、バーナ本体41の先端から火炎を噴射した際、この火炎が固化スラグSで反射してバーナ本体41に衝突しない値に設定されている。より具体的には、規定値は、バーナ本体41から噴射されるLNG燃料や酸素の噴射速度や、バーナ本体41の火炎の噴射中心線C1のスラグタップ10に対する角度等を考慮して決定される。
【0070】
ステップST106の判断が「No」、つまり、距離Xrと伸長移動距離Xbとの差分が規定値よりも小さい場合、固化スラグSに対してバーナ本体41の先端が接近しすぎていると判断し、ステップST104に戻る。そして、再度バーナ本体41の現在位置を検出し、その後、バーナ駆動部42によってバーナ本体41を縮退移動させる(ステップST105)。
【0071】
一方、ステップST106の判断が「Yes」、つまり、距離Xrと伸長移動距離Xbとの差分が規定値以上の場合、バーナ本体41の先端の位置が適正な位置にあると判断する。そして、バーナ本体41の先端から火炎を噴射させる(ステップST107、
図3参照、バーナ点火工程)。
【0072】
ここで、バーナ本体41の先端の位置において、距離Xrと伸長移動距離Xbとの差分が規定値と一致する位置が、火炎を噴射させるのに固化スラグSに最も近接した位置(以下、移動限界閾値という)となる。すなわち、この移動限界閾値の位置で火炎を噴射させることが、最も効率よく固化スラグSを溶融できることになる。このため、制御部44は、バーナ本体41が移動限界閾値に達した時点でバーナ本体41を停止させ、引き続き火炎を噴射させる。
【0073】
そして、一定時間、火炎を噴射させて固化スラグSを溶融した後、火炎の噴射を停止する(ステップST108)。
これにより、スラグ溶融バーナ装置23の動作が完了する。
なお、一定時間は、固化スラグSを溶融するのに十分な時間に設定されており、この時間は、制御部44に記憶されている。また、バーナ本体41は、火炎の噴射中心線C1がスラグタップ10の一部、より具体的には、スラグタップ10の固化スラグSが形成されている箇所に交差するように設けられている。このため、固化スラグSが完全に溶融された後、バーナ本体41の先端から火炎が噴射し続けていたとしても、スラグタップ10が焼損してしまうことを防止できる。
【0074】
このように、上述の第1実施形態では、スラグ溶融バーナ装置23は、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrを測定するレーザ測定器43と、このレーザ測定器43の測定結果に基づいて、バーナ本体41を駆動させたり、バーナ本体41の先端から火炎を噴射させたりする制御部44と、を備えている。そして、バーナ本体41を適正な位置に伸長移動させた後、このバーナ本体41の先端から火炎を噴射させて固化スラグSを溶融するようになっている。このため、バーナ本体41の先端から噴射された火炎が固化スラグSを介して反射し、自己火炎によりバーナ本体41が焼損してしまうことを防止できる。
【0075】
また、制御部44は、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrと、バーナ本体41の伸長移動距離Xbとの差分が規定値以上の場合に、バーナ本体41の先端から火炎を噴射するように構成されている。このため、固化スラグSに対してバーナ本体41の先端が接近しすぎている状態で火炎を噴射してしまうことを確実に防止できる。
さらに、制御部44は、バーナ本体41が移動限界閾値に達した時点でバーナ本体41を停止させ、火炎を噴射させるので、バーナ本体41の焼損のおそれがない範囲で、効率よく固化スラグSを溶融させることができる。
【0076】
また、バーナ本体41は、火炎の噴射中心線C1がスラグタップ10の一部、より具体的には、スラグタップ10の固化スラグSが形成されている箇所に交差するように設けられている。このため、固化スラグSが完全に溶融された後、バーナ本体41の先端から火炎が噴射し続けていたとしても、スラグタップ10が焼損してしまうことを防止できる。
【0077】
さらに、スラグタップ10におけるバーナ本体41の移動範囲に対応する箇所に固化スラグSが生成されていることが検出されない場合、バーナ駆動部42によって、バーナ本体41の先端がスラグタップ10の下部に至るまで伸長移動され、火炎を噴射して固化スラグSを溶融する。このように、火炎の反射の要因となる固化スラグSが無い場合にバーナ本体41の先端から火炎が噴射されるので、バーナ本体41の焼損を確実に防止できる。
【0078】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を
図5、
図6に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明する(以下の実施形態についても同様)。
図5は、第2実施形態におけるスラグ溶融バーナ装置223の概略構成図である。
同図に示すように、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態のスラグ溶融バーナ装置23には、レーザ測定器43が設けられているのに対し、第2実施形態のスラグ溶融バーナ装置223には、レーザ測定器43に代わって温度センサ243が設けられている点にある。
【0079】
温度センサ243は、センサプローブ51と、センサプローブ51の基端に、一端が接続されているイメージファイバ52と、イメージファイバ52の他端に接続されている温度監視装置53とにより構成されている。
【0080】
センサプローブ51は、スラグ燃焼室3の側面3aに、バーナ本体41に近接するように配置されている。温度監視装置53は、分光器54および信号処理器55を備えており、分光器54にイメージファイバ52の他端が接続されている。そして、固化スラグSから放出される励起光がセンサプローブ51に入射され、イメージファイバ52を介して分光器54に入射される。そして、分光器54により分光された励起光に基づいて、信号処理器55が固化スラグSの温度を算出する。
【0081】
なお、温度センサ243の種類としては、上記の構成のものに限られるものではなく、非接触で固化スラグSの温度を検出可能なさまざまな温度センサ243を用いることが可能である。例えば、分光方式の温度センサ243に代わって赤外線方式の温度センサ243を用いることも可能である。
【0082】
制御部244は、温度センサ243の測定結果に基づき、バーナ駆動部42にバーナ本体41を駆動するための信号を出力する。以下、スラグ溶融バーナ装置223の動作について詳述する。
【0083】
(スラグ溶融バーナ装置の動作)
次に、
図6に基づいて、スラグ溶融バーナ装置223の動作について説明する。
図6は、スラグ溶融バーナ装置223の動作を示すフローチャートである。
【0084】
ここで、スラグタップ10の下部、つまり、スラグタップ10におけるバーナ本体41の移動範囲に対応する箇所に、固化スラグSが生成されていないような場合は、従来と同様のフローにより、スラグ溶融バーナ装置223によって固化スラグSが溶融される。従来のフローは、前述の第1実施形態で説明しているので、ここでは説明を省略する。
このため、以下の説明では、スラグタップ10におけるバーナ本体41の移動範囲に対応する箇所に固化スラグSが生成された場合の、スラグ溶融バーナ装置223の動作について説明する。
【0085】
まず、スラグ溶融バーナ装置223の作動準備を行う(ステップST200、固化物検出工程)。
具体的には、上述の第1実施形態で用いたレーザ測定器43等、固化スラグSを検出可能な装置を用い、スラグタップ10に固化スラグSが生成されていることが検出された場合、スラグ溶融バーナ装置223の作動準備を行う。
なお、
図5では、レーザ測定器43等の装置の図示を省略している。レーザ測定器43を用いた場合の固化スラグSの検出方法は、前述の第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0086】
スラグ溶融バーナ装置23の作動準備を行った後、温度センサ243によって、固化スラグSの温度を検出する(ST201)。
続いて、温度センサ243が正常に動作しているか否かの判断を行う(ステップST202)。
例えば、スラグタップ10に固化スラグSが生成されていることが検出されているにも関わらず、温度センサ243によって温度を検出することができない場合、温度センサ243に異常が生じていると判断する。
【0087】
ステップST202による判断が「No」、つまり、温度センサ243に異常が生じていると判断した場合、温度センサ243のチェックを行う(ステップST203)。
一方、ステップST202による判断が「Yes」、つまり、温度センサ243が正常に動作していると判断した場合、温度センサ243によって、固化スラグSの温度を検出し、温度センサ243の測定結果を、信号として制御部244に出力する(ステップST204)。
【0088】
続いて、制御部244によって、温度センサ243による測定温度が、予め制御部244に記憶されている規定値(第1温度閾値)を越えているか否かの判断を行う(ステップST205)。
【0089】
ここで、制御部244に記憶されている規定値は、固化スラグSが完全に固化しているか、または軟性を有しているかを判断する値になっている。すなわち、温度センサ243による測定温度が規定値を越えている場合、固化スラグSは、高温のために軟性を有するスライム状になっているということになる。一方、温度センサ243による測定温度が規定値以下の場合、固化スラグSは、冷えて完全に固化した状態になっている。
【0090】
ステップST205の判断が「Yes」、つまり、固化スラグSが軟性を有するスライム状になっているとき、バーナ駆動部42によってバーナ本体41を伸長移動させる(ステップST206)。
そして、固化スラグSに対してバーナ本体41の先端が適正な位置にあることを確認し、バーナ本体41の先端から火炎を噴射させる(ステップST207、バーナ点火工程)。
【0091】
なお、固化スラグSに対するバーナ本体41の先端の位置の確認方法は、前述の第1実施形態のように、レーザ測定器43等のバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離を測定可能な装置と、バーナ駆動部42に設けられたセンサ45とを用いた方法になる。このため、本第2実施形態では、固化スラグSに対するバーナ本体41の先端の位置の確認方法についての説明を省略する。
【0092】
続いて、一定時間、火炎を噴射させて固化スラグSを溶融した後、火炎の噴射を停止する(ステップST208)。
これにより、スラグ溶融バーナ装置23の動作が完了する。
【0093】
一方、ステップST205の判断が「No」、つまり、固化スラグSが完全に固化している状態のとき、バーナ駆動部42によってバーナ本体41を伸長移動させ(ステップST209)、さらに、そのままバーナ本体41の先端から火炎を噴射させずに、先端を固化スラグSに衝突させる(ステップST210、
図5における2点鎖線参照)。
このとき、固化スラグSが完全に固化しているので、バーナ本体41の先端が衝突することにより、スラグタップ10から固化スラグSが剥離し、除去される。これにより、スラグ溶融バーナ装置23の動作が完了する。
【0094】
なお、本第2実施形態においては、バーナ本体41を構成する材料は、このバーナ本体41を固化スラグSに衝突させても耐え得る材料を選定する。
また、バーナ本体41に、固化スラグSを突き押すための突き押し棒(不図示)を一体的に設けてもよい。さらに、バーナ本体41とは別に突き押し棒を設け、ステップST205の判断が「No」の場合、突き押し棒を駆動させて固化スラグSを除去するように構成してもよい。バーナ本体41とは別に突き押し棒を設ける場合、この突き押し棒を駆動させるための駆動部(不図示)を別途設け、この駆動部を制御部244によって制御する。
【0095】
したがって、上述の第2実施形態によれば、固化スラグSの温度によって、固化スラグSを溶融して除去するか、固化スラグSを突き押して除去するかを選択することができる。換言すれば、固化スラグSの温度によって、最適な方法で固化スラグSを除去することができる。このため、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、より効率よく固化スラグSを除去することが可能になる。
【0096】
(第2実施形態の変形例)
なお、上述の第2実施形態では、温度センサ243を用いて固化スラグSの温度を測定し、固化スラグSの温度が規定値以下で完全に固化している場合のみ、固化スラグSにバーナ本体41を衝突させる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、固化スラグSの温度が規定値を越えている場合、固化スラグSの温度が規定値以下になるまでバーナ本体41を静止させておき、その後、固化スラグSにバーナ本体41を衝突させるように制御してもよい。
【0097】
(第1実施形態に第2実施形態の一部の構成を加えた変形例)
また、前述の第1実施形態に、第2実施形態のような固化スラグSにバーナ本体41を衝突させる制御を加えてもよい。すなわち、
図7に示すように、第1実施形態のレーザ測定器43によって固化スラグSを検出し、かつ、固化スラグSとバーナ本体41の先端との間の距離Xrが、バーナ本体41の焼損を回避できないような距離(点火限界閾値よりも短い距離)である場合、バーナ本体41の先端から火炎を噴射させることなく、そのままバーナ本体41の先端を、固化スラグSに衝突させるように制御してもよい。
このように構成することで、固化スラグSが生成された位置がバーナ本体41の先端に接近しており、そのままバーナ本体41から火炎を噴射するとバーナ本体41が焼損してしまうような場合であっても、確実に固化スラグSを除去することができる。
【0098】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を、
図8に基づいて説明する。
図8は、第3実施形態におけるスラグ溶融バーナ装置323の概略構成図である。
同図に示すように、前述の第1実施形態と第3実施形態との相違点は、第1実施形態では、バーナ本体41、バーナ駆動部42、およびレーザ測定器43のセット(以下、バーナセットという)が1セット設けられているのに対し、第3実施形態では、バーナセットが2セット設けられている点にある。
【0099】
各バーナセットは、それぞれスラグタップ10の中心軸C2回りに、噴射する火炎が互いに干渉しない位置に設けられている。例えば、
図8に示すように、2つのバーナセットは、それぞれ中心軸C2を挟んで両側に配置されている。これにより、1つのバーナ本体41から噴射された火炎が、他のバーナ本体41に干渉してしまうことを防止できる。
【0100】
ここで、バーナセットが2セット設けられている場合、各バーナセットのレーザ測定器43により、それぞれのバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xr
1,Xr
2を測定する。そして、固化スラグSに火炎を噴射させることが可能な距離に位置するバーナセットのバーナ本体41を駆動させ、固化スラグSを溶融する。
【0101】
なお、「固化スラグSに火炎を噴射させることが可能な距離」とは、バーナ本体41の先端から火炎を噴射させた際、固化スラグSを介して反射した火炎がバーナ本体41に衝突しない距離をいう。換言すれば、「固化スラグSに火炎を噴射させることが可能な距離」とは、前述の第1実施形態における規定値(点火限界閾値)以上の距離をいう。
【0102】
より具体的には、例えば、2つのバーナセットのうち、一方のバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xr
1が接近しすぎて、そのままバーナ本体41から火炎を噴射させると、この火炎がバーナ本体41に衝突するおそれがある場合。そして、他方のバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xr
2が十分に離間されているような場合。このような場合は、他方のバーナ本体41を用いて固化スラグSを溶融する。
【0103】
なお、2つのバーナセットの距離Xr
1,Xr
2が、共に固化スラグSに火炎を噴射させることが可能な距離である場合、何れかのバーナセットのバーナ本体41を用いて固化スラグSを溶融する。これは、1つのバーナ本体41から噴射される火炎によって、固化スラグSを十分溶融することが可能だからである。
また、2セットとも使用可能な場合、固化スラグSに効率よく火炎を衝突させることが可能なバーナ本体41を使用することが望ましい。
【0104】
したがって、上述の第3実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、最適な位置に配置されたバーナ本体41を用いることによって、効率よく固化スラグSを溶融することができる。
【0105】
なお、上述の第3実施形態では、2つのバーナセットを設けた場合について説明したが、これに限られるものではなく、バーナセットを3つ以上設けてもよい。この場合、各バーナセットは、スラグタップ10の中心軸C2回りに、噴射する火炎が互いに干渉しない位置に設けられる。
【0106】
このように、バーナセットを3つ以上の複数設ける場合であっても、上述の第3実施形態と同様に、各バーナセットにおけるバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xr
1・・・Xr
nを測定する。そして、最適な位置に配置されているバーナ本体41を用いて固化スラグSを溶融する。
このように構成することで、固化スラグSの周囲のさまざまな位置からバーナ本体41を接近させることが可能になるので、固化スラグSに対して最適な位置にあるバーナ本体41を選択し易くなる。また、選択したバーナ本体41により、2つのバーナセットを設けた場合と比較して、さらに効率よく固化スラグSを溶融することが可能になる。
【0107】
また、上述の第3実施形態では、各バーナセットで固化スラグSを溶融する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、前述の第2実施形態のように、各バーナセットのバーナ本体41で固化スラグSを突き押すように構成してもよい。さらに、各バーナセットの少なくとも1つに、突き押し棒を設けてもよい。
【0108】
さらに、上述の第3実施形態では、2つのバーナセットのうち、一方のバーナセットのバーナ本体41を用いて固化スラグSを溶融する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、2つのバーナセットの各バーナ本体41の先端から、同時に火炎を噴射させて固化スラグSを溶融することも可能である。この場合、2つのバーナセットの位置は、各バーナ本体41から噴射された火炎が互いに干渉しない位置とする。このように構成することで、より速やかに固化スラグSを溶融することが可能になる。
【0109】
(第3実施形態の第1変形例)
次に、
図9に基づいて、第3実施形態の第1変形例について説明する。
図9は、第3実施形態の第1変形例におけるスラグ溶融バーナ装置323の概略構成図であって、
図8に対応している。
同図に示すように、この第1変形例では、2つのバーナセットのうち、一方のバーナセット(
図9における右側に配置されているバーナセット)が配置されている位置と、他方のバーナセット(
図9における左側に配置されているバーナセット)が配置されている位置との、スラグタップ10の中心軸C2に沿う方向(以下、単に軸方向という)の高さが異なっている。この点、上述の第3実施形態と異なっている。
【0110】
より具体的には、第1変形例では、他方のバーナセットが配置されている位置は、一方のバーナセットが配置されている位置よりも軸方向の高さが低く設定されている。また、配置された位置の低いバーナセット、つまり、他方のバーナセットは、バーナ本体41の火炎の噴射中心線C1’’の傾斜角度θ2が、一方のバーナセットにおけるバーナ本体41の火炎の噴射中心線C1’の傾斜角度θ1よりも大きく設定されている。
なお、噴射中心線C1’の傾斜角度θ1および噴射中心線C1’’の傾斜角度θ2は、同一角度に設定されていてもよい。しかしながら、傾斜角度θ1よりも傾斜角度θ2を大きく設定することで、各バーナ本体41の先端から噴射される火炎を、確実に固化スラグSに衝突させることができる。
【0111】
このように、2つのバーナセットが配置される高さを異ならせることにより、固化スラグSの形状に基づいて、最適な高さに配置されているバーナ本体41を用いることができる。これにより、固化スラグSを効率よく溶融できると共に、固化スラグSを溶融した後、スラグタップ10を焼損してしまうことを防止できる。
【0112】
つまり、各バーナセットが軸方向に同一の高さに配置されていると、各バーナセットのうちの何れかのバーナ本体41の位置が、固化スラグSを溶融させるには最適な位置であっても、そのまま固化スラグSを溶融させると、スラグタップ10にバーナ本体41の火炎が衝突してしまうおそれがある。このため、各バーナセットの軸方向の高さを異ならせることにより、固化スラグSを効率よく溶融できると共に、固化スラグSを溶融した後、スラグタップ10を焼損してしまうことを確実に防止できる。
【0113】
また、各バーナセットの軸方向の高さを異ならせることにより、1つのバーナ本体41から噴射された火炎が、他のバーナ本体41に干渉してしまうことを確実に防止できる。
さらに、各バーナセットの軸方向の高さを異ならせることにより、2つのバーナセットのそれぞれのバーナ本体41から同時に火炎を噴射させることも、より安全に行うことができる。すなわち、各バーナセットの軸方向の高さが異なるので、2つのバーナ本体41から同時に火炎を噴射させたとしても、火炎同士が干渉したり、バーナ本体41に火炎が衝突したりすることを確実に防止できる。
【0114】
(第3実施形態の第2変形例)
次に、
図10に基づいて、第3実施形態の第2変形例について説明する。
図10は、第3実施形態の第2変形例におけるスラグ溶融バーナ装置323の概略構成図であって、
図8に対応している。
同図に示すように、前述の第3実施形態における第1変形例と第2変形例との相違点は、第1変形例では、軸方向で高さの異なる2つのバーナセットが、スラグタップ10の中心軸C2回りに離間して配置されているのに対し、第2変形例では、軸方向で高さの異なる2つのバーナセットが、軸方向に沿う同一直線上に配置されている点にある。
【0115】
このように構成した場合、スラグ燃焼室3の径方向において、2つのバーナセットの各バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xr
1,Xr
2が同一となる。このため、レーザ測定器43を1つ設ければ、それぞれのバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xr
1,Xr
2を測定することが可能になる。つまり、2つのバーナセットのうちの一方のバーナセットのレーザ測定器43を削除できる。このため、上述の第3実施形態における第1変形例と同様の効果に加え、部品点数を削減でき、スラグ溶融バーナ装置323の製造コストを低減できる。
【0116】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を、
図11に基づいて説明する。
図11は、第4実施形態におけるスラグ溶融バーナ装置423の概略構成図である。
同図に示すように、前述の第1実施形態と第4実施形態との相違点は、第1実施形態では、スラグ燃焼室3にスラグ溶融バーナ装置23が固定されているのに対し、第4実施形態では、スラグ溶融バーナ装置423がスラグタップ10の中心軸C2回りに移動可能に設けられている点にある。
【0117】
より具体的には、スラグ溶融バーナ装置423は、このスラグ溶融バーナ装置423を中心軸C2回りに移動させる移動装置61を備えている。また、スラグ燃焼室3の側面3aには、この側面3aに対するバーナ本体41の移動を許容可能、かつ側面3aとバーナ本体41との間をシール可能な不図示のシール部材が設けられている。
【0118】
(スラグ溶融バーナ装置の動作)
次に、スラグ溶融バーナ装置423の動作について説明する。
まず、レーザ測定器43によって、固化スラグSの有無を検出する。この固化スラグSの有無の検出方法は、前述の第1実施形態と同様である。
次に、レーザ測定器43によって、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrを測定する。そして、この距離Xrとバーナ本体41の伸長移動距離Xbとの差分が規定値(点火限界閾値)以上の場合、制御部44(
図2参照)によって、バーナ本体41を伸長移動させ、その先端が所定の位置に移動したところでバーナ本体41の先端から火炎を噴射する。
【0119】
これに対し、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrと、バーナ本体41の伸長移動距離Xbとの差分が規定値よりも小さい場合、移動装置61によって、スラグ溶融バーナ装置423が中心軸C2回りに移動される。この間、レーザ測定器43は、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrを測定し続ける。
【0120】
さらに、制御部44は、レーザ測定器43が距離Xrを測定し続けている間、この距離Xrとバーナ本体41の伸長移動距離Xbとの差分を繰り返し計算する。そして、制御部44は、距離Xrとバーナ本体41の伸長移動距離Xbとの差分が規定値以上になった時点でレーザ測定器43を停止させる。この後、バーナ本体41を伸長移動させ、その先端が所定の位置に移動したところでバーナ本体41の先端から火炎を噴射する。
【0121】
したがって、上述の第4実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果に加え、スラグ溶融バーナ装置423を移動させることによって、固化スラグSを確実に溶融することができる。
【0122】
なお、上述の第4実施形態では、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrと、バーナ本体41の伸長移動距離Xbとの差分が規定値以上となった時点で、バーナ本体41を伸長移動させ、その先端が所定の位置に移動したところでバーナ本体41の先端から火炎を噴射する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、以下のように動作させてもよい。
【0123】
すなわち、まず、移動装置61によってスラグ溶融バーナ装置423を可動範囲全域に亘って移動させる。これと同時に、レーザ測定器43によって、可動範囲全域におけるバーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrを測定する。
次に、移動装置61によって、スラグ溶融バーナ装置423を最適な位置に移動させる。この後、バーナ本体41を伸長移動させ、その先端が所定の位置に移動したところでバーナ本体41の先端から火炎を噴射する。
【0124】
このように構成することで、スラグ溶融バーナ装置423は、バーナセットを1セット備えただけであるにも関わらず、固化スラグSに対して最適な位置から火炎を噴射させることができる。よって、1セットのバーナセットにより、前述の第3実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0125】
ここで、バーナ本体41の先端と固化スラグSとの間の距離Xrと、バーナ本体41の伸長移動距離Xbとの差分が規定値以上となった時点で、バーナ本体41の先端から火炎を噴射させる場合、スラグ溶融バーナ装置423は、右回転および左回転の少なくとも一方向のみに移動可能に構成されていればよい。
一方、スラグ溶融バーナ装置423を最適な位置に移動させ、バーナ本体41の先端から火炎を噴射させる場合、スラグ溶融バーナ装置423は、右回転および左回転の何れの方向にも移動可能に構成されている必要がある。これは、一旦、可動範囲全域に亘ってスラグ溶融バーナ装置423が移動した後、このスラグ溶融バーナ装置423を最適な位置に移動させる必要があるからである。
【0126】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、スラグ溶融バーナ装置を、各実施形態や各変形例を組み合わせて構成することも可能である。
【0127】
より具体的には、第2実施形態のスラグ溶融バーナ装置223に設けられた温度センサ243を、第3実施形態のスラグ溶融バーナ装置323や第4実施形態のスラグ溶融バーナ装置423に設けることも可能である。この場合、第3実施形態のスラグ溶融バーナ装置323および第4実施形態のスラグ溶融バーナ装置423において、固化スラグSの温度が規定値(第1温度閾値)以下の場合、バーナ本体41を固化スラグSに衝突させ、この固化スラグSを除去するように構成してもよい。
【0128】
また、第3実施形態のスラグ溶融バーナ装置323および第4実施形態のスラグ溶融バーナ装置423において、バーナ本体41に不図示の突き押し棒を一体的に設けるか、または、別途突き押し棒を設けてもよい。そして、固化スラグSの温度が規定値(第1温度閾値)以下の場合、不図示の突き押し棒を用いて固化スラグSを除去するように構成してもよい。