特許第6202526号(P6202526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202526
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/14 20060101AFI20170914BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20170914BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20170914BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20170914BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01M2/14
   H01G11/52
   H01G11/78
   H01M2/02 Z
   H01G9/08 E
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-244983(P2013-244983)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-103474(P2015-103474A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忠仁
(72)【発明者】
【氏名】三塚 輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 知美
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−004864(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/047462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14
H01G 9/08
H01G 11/52
H01G 11/78
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を収容部とし、絶縁性を有する凹状容器と、
前記凹状容器の上端面に接合されたシールリングと、
前記シールリングの上面に接合され、かつ、前記シールリングの上面を塞ぐ蓋部とから形成され、
前記凹状容器は、四角板状の底部と、前記底部の外縁に立設した四角枠状の壁部とから構成されており、
前記底部と前記壁部とから形成された前記凹状容器の凹部(収容部)の内部には、正極が収容されており、
前記収容部の底面から上方に向けて突出させると共に、前記正極の外周を取り囲む絶縁体を設けたことを特徴とする電気化学セル。
【請求項2】
内部を収容部とし、絶縁性を有する凹状容器と、
前記凹状容器の上端面に接合されたシールリングと、
前記シールリングの上面に接合され、かつ、前記シールリングの上面を塞ぐ蓋部とから形成され、
前記凹状容器は、四角板状の底部と、前記底部の外縁に立設した四角枠状の壁部とから構成されており、
前記底部と前記壁部とから形成された前記凹状容器の凹部(収容部)の内部には、正極が収容されており、
前記正極の外周に前記壁部内面との間に間隙を有するように絶縁体を設け、
前記絶縁体は、前記収容部の底面から上方に向けて、あるいは前記壁部内面から前記正極側に向けて、突出させることによって前記正極の外周に配された複数の突起であることを特徴とする電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面実装可能な電気化学セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気二重層キャパシタや電池等の電気化学セルは、時計や半導体メモリのバックアップ用電源としてプリント基板上に実装されている。これらの実装機器の小型化に伴い、電気化学セル自体の小型化や実装面積の縮小化に対応すべく、従前の丸形状であるコイン型やボタン型の電気化学セルに代わって、四角形状であるチップ型の電気化学セルが提供されている。
チップ型の電気化学セルは、ケースに凹状容器が用いられている。この凹状容器の凹部(収容部)には正極及び負極からなる一対の電極、両電極の間に設けたセパレータ及び電解質が収容されている。また凹状容器の上面にシールリングを設け、その上に板状の蓋を被せることにより、容器として形成されている。
【0003】
特許文献1には、小型化及び高容量を実現した電気化学セルが開示されている。凹状容器の収容部の底面に設けられた正極集電体は、電解質と直接接触した状態で使用すると表面が腐食し断線が生じる。そのためこの電気化学セルでは、正極集電体をアルミニウム等からなる保護膜で覆うことで信頼性の向上を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2007/013223
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、上記電気化学セルの小型化の要請があるものの、電気化学セルを小型化しようとした場合、全体の厚さを薄くする必要が生じている。
そこで全体を薄くしようとして、凹状容器の収容部の高さを低くした場合、正極の上端付近と負の電位を持つシールリングの側面部とが近接することになる。このため、蓋部のシールリングへの溶接時や、基板固定の際のリフロー加熱時に、凹状容器や正極の熱変形が起こり内部の相対的な位置関係に変化が生じた場合、正極とシールリングとの接触により、内部ショートが発生することがある。また、正極を凹状容器の収容部に設置する際の製造プロセスにおいて正極の接着位置が凹状容器の中心から偏った場合、正極とシールリングとの接触により、内部ショートが発生することがある。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点を解決すべく、容器の小型化、薄型化を図っても、内部ショートが発生しない信頼性の高い電気化学セルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第1の発明)
本発明のうち第1の発明は、内部を収容部2aとし、絶縁性を有する凹状容器2と、凹状容器2の上端面に接合されたシールリング3と、シールリング3の上面に接合され、かつ、シールリング3の上面を塞ぐ蓋部4とから形成され、凹状容器2は、四角板状の底部2bと、底部2bの外縁に立設した四角枠状の壁部2cとから構成されており、底部2bと壁部2cとから形成された凹状容器2の凹部(収容部2a)の内部には、正極8が収容されており、収容部2aの底面から上方に向けて突出させると共に、正極8の外周を取り囲む絶縁体12を設けたことを特徴とする。
本発明では、凹状容器2の収容部2aの内部に収容された正極8の外周を絶縁体12が取り囲み、かつ、正極8の外周と壁部2cとの間に間隙を設けている。これにより、蓋部4のシールリング3への溶接時や、基板固定の際のリフロー加熱時に、各部に熱膨張による変形が生じたとしても、絶縁体12によって、負の電位を有するシールリング3と、正極8との接触を避けることができる。このため、内部ショートの発生を抑えることができる。また、正極8を収容部2aの底面に接着する際の製造プロセスにおいて、正極8の接着位置が収容部2aの底面の中心から偏ったとしても、絶縁体12によって、負の電位を有するシールリング3と、正極8との接触を避けることができるため、内部ショートの発生を抑えることができる。さらに、正極8を凹状容器2の収容部2aに設置する際の製造プロセスにおいて、正極8の接着位置が凹状容器2の中心から偏った場合であっても、内部ショートの発生を抑えることができる。
【0008】
(第2の発明)
本発明のうち第2の発明は、内部を収容部2aとし、絶縁性を有する凹状容器2と、凹状容器2の上端面に接合されたシールリング3と、シールリング3の上面に接合され、かつ、シールリング3の上面を塞ぐ蓋部4とから形成され、凹状容器2は、四角板状の底部2bと、底部2bの外縁に立設した四角枠状の壁部2cとから構成されており、底部2bと壁部2cとから形成された凹状容器2の凹部(収容部2a)の内部には、正極8が収容されており、正極8の外周に壁部2c内面との間に間隙を有するように絶縁体12を設け、絶縁体12は、収容部2aの底面から上方に向けて、あるいは壁部2c内面から正極8側に向けて、突出させることによって正極8の外周に配された複数の突起であることを特徴とする。
本発明によれば、正極8の外周を絶縁体12で完全に覆わずに、絶縁体12を複数の突起状に形成し、正極8の外周に配している。これにより、正極8への電解質11の供給を阻害しないため、電解液不足による電池抵抗の増大や容量劣化などの特性劣化を防止することができる。
【0009】
(第3の発明)
本発明のうち第3の発明は、内部を収容部2aとし、絶縁性を有する凹状容器2と、凹状容器2の上端面に接合されたシールリング3と、シールリング3の上面に接合され、かつ、凹状容器2を塞ぐ蓋部4と、凹状容器2は、四角板状の底部2bと、底部2bの外縁に立設した四角枠状の壁部2cとから構成されており、凹状容器2の収容部2aの内部には、正極8及び負極9が収容されており、正極8と負極9との間にはセパレータ10が設けられており、セパレータ10は、正極8の上面及びこの上面に連続する正極8の外周面の一部又は全部を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、絶縁体12を設ける代わりにセパレータ10を間隙材として使用することができるため、製造工程の軽減やコストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明に係る電気化学セルによれば、負の電位を有するシールリングと正極との距離が一定以上に離れるように、凹状容器とシールリングと正極とを配置している。このため、電気化学セルの小型化に伴い凹状容器を薄くしたとしても、内部ショートが発生しないため、信頼性の高い電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態の電気化学セルの垂直断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態の電気化学セルの凹状容器の平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態の電気化学セルの水平断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態の電気化学セルの水平断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態の電気化学セルの垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の電気化学セル1は、その外観が略立方形状である。図1に示すとおり、電気化学セル1は、内部に収容部2aを有する絶縁材料からなる有底四角筒状の凹状容器2と、凹状容器2の上端面に接合された四角枠状のシールリング3と、シールリング3の上面に接合され、かつ、シールリング3の上面を塞ぐ四角板状の蓋部4とから構成されている。
凹状容器2は、上方を開放した箱体状のセラミックからなる容器であって、長方形状の底部2bと、底部2bの外縁に立設した長方形枠状の壁部2cを有している。図2に示すとおり、凹状容器2の収容部2aの底面には正極8と電気的に接続される正極集電体6bが4箇所形成されている。また、図1に示すとおり、収容部2aの底面から底部2bの厚さの半分の深さまでビア配線6cが4箇所形成されている。そして、各ビア配線6cの上面が正極集電体6bとして収容部2aの底面に露出している。収容部2aの底面と底部2bの下面との中間部分には層間配線6dが形成されている。この層間配線6dは、一端はビア配線6cに接続され、他端は凹状容器2の側面に露出している。そして、この層間配線6dの露出部分から底部2bの下面にかけて正極外部端子6eが形成されている。さらに、正極外部端子6eのある凹状容器2の側面と反対側の側面の上端部から、壁部2cを経て底部2bの下面にかけて負極外部端子7bが形成されている。
【0014】
凹状容器2は、アルミナ、窒化ケイ素、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化アルミ、ムライト及びこれらの複合材料からなる群から選ばれた少なくとも1種類を含むセラミックから構成されている。また、凹状容器2は、ガラスやガラスセラミックスなどの耐熱材料を用いることができる。一方、ビア配線6c、層間配線6d、正極外部端子6e及び負極外部端子7bは、タングステン、モリブデン、ニッケル、金及びこれらの複合材料から形成されている。
この凹状容器2は、長方形状に打ち抜かれた底部2bに対応するセラミックグリーンシートに、長方形枠状に打ち抜かれた壁部2cに対応するセラミックグリーンシートを貼り合せた後、焼成することにより形成される。この際、あらかじめセラミックグリーンシートに電極のパターンを印刷しておけば、ビア配線6c、層間配線6d、正極外部端子6e及び負極外部端子7bを形成することができる。また、ビア配線6cは、あらかじめ各ビアホールに炭素と樹脂を混合したペーストを充填し、凹状容器2となるセラミックグリーンシートと共に焼成することにより形成してもよい。
【0015】
シールリング3は、凹状容器2の壁部2cの上端面の形状に合わせた四角枠状の断面を有しており、壁部2cの上端面にロウ材5を介して接合されている。このシールリング3は、熱膨張係数がセラミックの熱膨張係数と近いコバールなどを用いることができる。また、ロウ材5は、Ag−Cu合金やAu−Cu合金などから形成されている。
なお、ロウ材5を使用せず、壁部2cの上端面とシールリング3とを直接接合してもよい。
蓋部4は、シールリング3の上面に接合されており、凹状容器2の収容部2aを密封している。蓋部4には、熱膨張係数がセラミックの熱膨張係数と近いコバールや42alloyなどの合金にニッケルメッキを施したものが使用される。このような材料を用いた蓋部4は、例えば、抵抗シーム溶接、レーザーシーム溶接、電子ビーム溶接などによってシールリング3に溶接させることができ、塞がれた状態の収容部2aの気密性を向上させる。なお、シールリング3を使用せず、壁部2cの上端面と蓋部4とをロウ材で直接接合させてもよい。
【0016】
本実施の形態の蓋部4は、導電性を有する材料であるため、蓋部4自体が負極集電体としての役割を果たしている。一方、蓋部4に耐熱樹脂、ガラス、セラミック又はセラミックガラス等の材料を使用した場合、蓋部4の下面に負極集電体を形成する必要がある。この負極集電体は、耐食性に優れかつ膜厚法での形成が可能なタングステン、銀や金を使用することが好ましい。
凹状容器2の収容部2aには、正極及び負極からなる一対の電極と電解質などが収容されている。具体的には、収容部2aは図1に示すように、正極集電体6bの上面とその周囲に形成された保護膜6aと、この保護膜6aに接合される正極8と、正極8の上に設置されるセパレータ10と、セパレータ10により正極8と隔離された負極9と、負極9と蓋部4との間位に設けられた接着部7aとから構成されている。また、収容部2a内は、電解質11で満たされている。
【0017】
保護膜6aは、正極集電体6bと正極8とを接着する導通性接着剤であるとともに、正極集電体6bと電解質11との直接の接触を防止することにより、充電や放電による正極集電体6bの腐食を抑制するために設けられている。保護膜6aは、耐腐食性が高く、導電性を有するアルミニウム又は炭素を主体とした材料から構成されている。アルミニウムからなる保護膜6aの場合、JISにより規定された純アルミニウム系、Al−Cu系合金、Al−Mn系合金、Al−Mg系合金などを用いた蒸着、スパッタ、容射、ペースト塗布などの方法で形成することができる。
また、蓋部4と負極9との間に設けられた接着部7aは、導通性接着剤から形成されており、この導通性接着剤については、保護膜6aに使用される導通性接着剤と同様のものを用いることができる。
【0018】
正極8と負極9は、電気化学セルを電気二重層キャパシタとして使用する場合には、それぞれおが屑、椰子殻、ピッチなどを賦活処理して得られる活性炭粉末を、適当なバインダーと一緒にプレス成型、又は圧延ロールしたものを用いることができる。また、フェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系などの繊維を、不融化及び炭化賦活処理して活性炭又は活性炭繊維とし、これをフェルト状、繊維状、紙状、又は焼結体状にして用いてもよい。またポリアニリン(PAN)やポリアセンなども用いてもよい。
また、正極8は、電気化学セルを電池として使用する場合には、リチウム含有マンガン酸化物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、リチウム含有チタン酸化物、三酸化モリブデン、五酸化ニオブなど、従来から知られている活物質に適当なバインダーと導電助剤であるグラファイトを混合したものを用いることができる。
【0019】
また、負極9は、電気化学セルを電池として使用する場合には、炭素、リチウム−アルミニウムなどのリチウム合金、シリコンやシリコン酸化物など従来から知られている活物質に適当なバインダーと導電助剤であるグラファイトを混合したものを用いることができる。
セパレータ10には、大きなイオン透過度を有し、機械的強度を有する絶縁膜を用いることができる。リフローハンダ付けにおける炉での実装と、蓋部4との溶接による熱影響を考慮すると、セパレータ10は、熱的、機械的耐性に優れたガラス繊維を用いることができる。また、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂を用いてもよい。
【0020】
電解質11は、公知の電気二重層キャパシタや非水電解質二次電池に用いられる液体状、ゲル状のものが好ましい。
液体状及びゲル状の電解質11に用いられる有機溶媒には、アセトニトリル、ジエチルエーテル、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボーネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(γBL)などがある。
液体状及びゲル状の電解質11に含まれる材料には、(CPBF、(CPBF、(CH)(CNBF、(CNBF、(CPPF、(CPCFSO、(CNPF、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CFSO]、チオシアン塩、アルミニウムフッ化塩、リチウム塩などを用いることができるが、これらに限定するものではない。
【0021】
また、ゲル状の電解質11は、液体状の電解質をポリマーゲルに含浸させたものである。ポリマーゲルとしては、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデンが適しているが、これらに限定するものではない。
更に、ピリジン系や脂環式アミン系、脂肪族アミン系やイミダゾリウム系のイオン性液体やアミジン系等の常温溶融塩を用いても構わない。
絶縁体12は、図1の垂直断面図で示すとおり、正極8の外周部を収容部2aの底面からその正極8の上端付近まで覆っており、かつ、正極8の外周を取り囲むように形成されている。また、絶縁体12は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、エンジニアリングプラスチック、ポリイミド、ポリアミドイミド又はフッ素樹脂などの耐熱性樹脂、ガラス若しくはセラミックなどの絶縁部材を用いて形成することができる。絶縁体12は、凹状容器2を形成した後、収容部2aの底面に接着することができる。また、セラミックからなる絶縁体12の場合、凹状容器2と一体に焼結させて形成してもよい。
【0022】
絶縁体12は、図3の水平断面図で示すとおり、凹状容器2の収容部2aの内部に収容された正極8の外周を取り囲むことによって、正極8の外周と壁部2cとの間に間隙を設けている。
これにより、蓋部4のシールリング3への溶接時や、基板固定の際のリフロー加熱時に、各部に熱膨張による変形が生じたとしても、絶縁体12によって、負の電位を有するシールリング3と、正極8との接触を避けることができるため、内部ショートの発生を抑えることができる。また、正極8を収容部2aの底面に接着する際の製造プロセスにおいて、正極8の接着位置が収容部2aの底面の中心から偏ったとしても、絶縁体12によって、負の電位を有するシールリング3と、正極8との接触を避けることができるため、内部ショートの発生を抑えることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の電気化学セル1の断面図を図4に示す。第2の実施形態では、第1の実施形態のように、正極8の外周部全てを絶縁体12で覆わずに、正極8の外周部に複数の突起を配している点に違いがある。この突起は、凹状容器2の収容部2aの底面に設けられている。ここで突起は、正極8の外周部を全て覆わなくても、正極8と壁部2cとの間に障害物を設けることにより、正極8の収容部2aの底面における接着位置の偏りや、溶接やリフロー加熱時に各部に熱膨張による変位が生じたとしても、負の電位を有するシールリング3と正極8との接触を避けることができる。しがたって、図3と同様の作用効果を奏する。また、正極8への電解質11の供給を阻害しないため、電解液不足による電池抵抗の増大や容量劣化などの特性劣化を防止することができる。
【0024】
ここで、絶縁体12からなる突起は、壁部2c内面から正極8側に向けて、突出させる構成であってもよい。この突起が正極8と壁部2cとの間の障害物となるため、正極8の収容部2aの底面における接着位置の偏りや、溶接やリフロー加熱時に熱膨張による変位が生じたとしても、負の電位を有するシールリング3と正極8との接触を避けることができる。また、正極8への電解質11の供給を阻害しないため、電解液不足による電池抵抗の増大や容量劣化などの特性劣化を防止することができる。このように前記と同一の作用・効果を奏する。
なお、これらの突起は壁部2cの4つの各内面に少なくとも1つ以上形成すればよい。これにより、確実に正極8と壁部2cとの間に間隙を設けることができ好ましい。
【0025】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の電気化学セル1の断面図を図5に示す。第3の実施形態は、第1の実施形態で用いる絶縁体12を設けず、代わりに、セパレータ10をカップ状に形成したものである。第3の実施形態では、第1の実施形態のセパレータ10の形状の相違及び絶縁体12を設けない点に違いがあるのもの、その他については第1の実施形態と同様である。
図5に示すように、凹状容器2の収容部2aには、正極及び負極からなる一対の電極と電解質などが収容されている。具体的には、収容部2aは、正極集電体6bの上面とその周囲に形成された保護膜6aと、この保護膜6aに接合される正極8と、正極8の上に設置されるセパレータ10と、セパレータ10により正極8と隔離された負極9と、負極9と蓋部4との間位に設けられた接着部7aとから構成されている。また、収容部2a内は、電解質11で満たされている。
【0026】
ここでセパレータ10は、正極8の上面と、この上面から連続する外周面の一部を覆う、キャップ状に形成された絶縁部材である。セパレータ10の外周面は、必ずしも、その底部2bから上端部までが覆われている必要はなく、正極8の外周面と上面との角部を保護すれば足りる。
なお、セパレータ10は、正極8の上面と、この上面から連続する外周面全体を覆うようにすることもできる。
セパレータ10の材質は、第1の実施形態のものと同様、熱的、機械的耐性に優れたガラス繊維を用いることができる。また、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチエンなどの樹脂を用いてもよい。
【0027】
本実施の形態では、絶縁体12の代わりにセパレータ10を間隙材として使用している以外は、第1の実施形態と同様の構成からなるものであり、第1の実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
また、絶縁体12を設ける代わりにセパレータ10を間隙材として使用することができるため、製造工程の軽減やコストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 電気化学セル 2 凹状容器 2a 収容部
2b 底部 2c 壁部
3 シールリング 4 蓋部 5 ロウ材
6a 保護膜 6b 正極集電体 6c ビア配線
6d 層間配線 6e 正極外部端子
7a 接着部 7b 負極外部端子
8 正極 9 負極 10 セパレータ
11 電解質 12 絶縁体
図1
図2
図3
図4
図5