(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
飛行制御手段を備えた本体部と、該本体部から放射状に延設された複数本のアームと、前記各アームに配置されたモータ駆動のロータとを備え、無人で飛行して所定の作業を遂行するマルチコプターにおいて、その機体の所定位置には1機以上の子機を搭載及び分離するための保持手段を備えており、前記子機を搭載した状態で親機として飛行し、所定の位置で前記子機を分離して別個に飛行させる操作又は/及び設定が可能とされている、ことを特徴とするマルチコプター。
前記子機は、本体部から放射状に延設された複数本のアームに各々ロータを備えたマルチコプターであって、前記各アームが所定方向に折り畳まれた状態で、前記本体部の所定位置にて前記保持手段で保持されて搭載される、ことを特徴とする請求項1に記載したマルチコプター。
前記保持手段は、前記本体部の下面側から垂設または前記本体部を上下に貫通して配置されその内部に前記子機を収納・保持してその下端側から下向きに放出・分離する方式の収納体を有しており、前記収納体内に前記アームを折り畳んだ状態で前記子機が収納され、保持状態を解除することで前記子機が重力で下方に放出されて分離作業が完了する、ことを特徴とする請求項2に記載したマルチコプター。
所定の通信手段により分離した前記子機との間で通信を実行可能とされており、前記子機との間のデータ信号の送受信又は/及び管理者側と前記子機との間の通信の中継を実行可能とされている、ことを特徴とする請求項1,2又は3に記載したマルチコプター。
前記子機は保持手段を有して孫機を搭載可能とされ、前記孫機を搭載した前記子機を搭載して前記親機として飛行可能とされており、前記親機から分離された前記子機が所定の位置で前記孫機を分離して飛行させる操作又は/及び設定が可能とされている、ことを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載したマルチコプター。
前記親機又は/及び前記子機の前記本体部の上面又は/及び前記アームの上面には面状の太陽電池が配設されており、飛行中又は/及び待機中に発電するとともにバッテリの充電が行えるものとされている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4又は5に記載したマルチコプター。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、無人で飛行して所定の作業を遂行するマルチコプターについて、より広い活動範囲をカバー可能としながら複数地点での作業を同時に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、飛行制御手段を備えた本体部とその本体部から放射状に延設された複数本のアームとその各アームに配置されたモータ駆動のロータとを備えており、無人で飛行して所定の作業を遂行するマルチコプターにおいて、その機体の所定位置には1機以上の子機を搭載及び分離するための保持手段を備えており、子機を搭載した状態で親機として飛行し、所定の位置で子機を分離して別個に飛行させる操作又は/及び設定が可能とされている、ことを特徴とするものとした。
【0009】
このように、親機として1機以上の子機を搭載しながら所定位置で子機を分離して飛行させることを可能としたことで、単独ではカバー困難な範囲まで子機がカバーできるとともに、1機以上の子機が親機とは別個の動作を行うものとして複数地点での作業を同時に行えるものとなる。
【0010】
また、このマルチコプターにおいて、その子機は、本体部から放射状に延設された複数本のアームに各々ロータを備えたマルチコプターであって、その各アームが所定方向に折り畳まれた状態で、その本体部の所定位置にて前記保持手段で保持されて搭載されることを特徴としたものとすれば、子機を嵩張りにくいコンパクトな状態に折り畳んで搭載することでより多くの子機を保持可能なものとなる。
【0011】
この場合、その保持手段は、その本体部の下面側から垂設またはその本体部を上下に貫通して配置されその内部に子機を収納・保持して、その下端側から下向きに放出・分離する方式の収納体を有しており、その収納体内にアームを折り畳んだ状態で子機が収納され、保持状態を解除することで子機が重力で下方に放出されて分離作業が完了する、ことを特徴としたものとすれば、親機の飛行中に子機を安全に分離可能として、そのまま飛行状態に移行させやすいものとなる。
【0012】
さらに、上述したマルチコプターにおいて、所定の通信手段により分離した子機との間で通信を実行可能とされており、子機との間のデータ信号の送受信又は/及び管理者側と子機との間の通信の中継を実行可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、子機による広範囲の作業が一層確実に行いやすいものとなる。
【0013】
さらにまた、上述したマルチコプターにおいて、その子機は保持手段を有して孫機を搭載可能とされ、その孫機を搭載した子機を搭載して前記親機として飛行可能とされており、親機から分離された子機が所定の位置で孫機を分離して飛行させる操作又は/及び設定が可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、さらに広範囲且つ多数の機体による作業が可能なものとなる。
【0014】
加えて、上述したマルチコプターにおいて、その親機又は/及び子機の本体部の上面又は/及びアームの上面には、面状の太陽電池が配設されており、飛行中又は/及び待機中に発電するとともにバッテリの充電を行えるものとされている、ことを特徴としたものとすれば、子機を分離した親機や孫機を分離した子機が、分離位置で待機しながらソーラー発電による電力を通信に使用したりバッテリを充電したりすることが可能になるため、さらに広範囲の作業が可能なものとなる。
【0015】
そして、上述したマルチコプターが親機として子機又は孫機を搭載した子機を搭載してなるマルチコプター複合体とすれば、これを用いることで一層広い活動範囲をカバー可能としながら、複数地点における作業を同時に行えるようになる。
【発明の効果】
【0016】
親機として1機以上の子機を搭載しながら所定位置で子機を分離して別個に飛行させるものとした本発明によると、より広い活動範囲をカバー可能としながら複数地点での作業を同時に行えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本発明における第1の実施の形態であるマルチコプターの平面図、(B)は(A)の正面図である。
【
図2】(A)は
図1のマルチコプターに搭載可能な子機のアームを折り畳み状態にした正面図、(B)は(A)の子機のアームを展開状態にした正面図である。
【
図3】(A)は
図2の子機の応用例を折り畳み状態にした正面図、(B)は(A)の子機の応用例を折り畳み状態にした正面図、(C)は
図2の子機の変形例を折り畳み状態にした正面図である。
【
図4】(A)は
図2の子機を円筒状の収納体に収納した状態の部分縦断面図、(B)は(A)の子機が収納体から放出されてアームを展開した状態を示す平面図である。
【
図5】(A)は
図3(A)の子機を円筒状の収納体に収納した状態の部分縦断面図、(B)は(A)の子機が収納体から放出されてアームを展開した状態を示す平面図である。
【
図6】(A)は
図3(B)の子機を円筒状の収納体に収納した状態の部分縦断面図、(B)は(A)の子機が収納体から放出されてアームを展開した状態を示す平面図である。
【
図7】(A)は本発明における第2の実施の形態であるマルチコプターの平面図、(B)は(A)の正面図である。
【
図8】(A)及び(B)は、
図7のマルチコプターの応用例における本体部の平面図である。
【
図9】(A)は
図7のマルチコプターに搭載可能な子機を折り畳み状態にした平面図、(B)は(A)の子機のアームを展開状態にした平面図である。
【
図10】(A)は
図9の子機の変形例を折り畳み状態にした平面図、(B)は(A)の子機のアームを展開状態にした平面図である。
【
図11】(A)は
図10の子機の変形例を折り畳み状態にした平面図、(B)は(A)の側面図、(C)は(A)の子機のアームを展開状態にした平面図である。
【
図12】(A)は
図10の子機の他の変形例を折り畳み状態にした平面図、(B)は(A)の側面図、(C)は(A)の子機のアームを展開状態にした平面図である。
【
図13】(A)は
図9の子機を
図7の親機に搭載した場合の収納状態を示す部分縦断面図、(B)は
図11の子機を
図8(B)の親機に搭載した場合の収納状態を示す部分縦断面図、(C)は
図12の子機を
図8(B)の親機に搭載した場合の収納状態を示す部分縦断面図である。
【
図14】(A)は
図8(B)の収納体の変形例を示す部分底面図、(B)は
図7の収納体の変形例に子機を搭載した場合の収納状態を示す部分縦断面図である。
【
図15】(A)はアームの折り畳み手段の一例を示す拡大部分図、(B)は他の折り畳み手段の一例を示す拡大部分図である。
【
図16】(A)は
図4(A)の保持手段において子機を保持・分離するための機構の一例を示す部分縦断面図、(B)は
図13(A)の保持手段において子機を保持・分離するための機構の一例を示す部分縦断面図、(C)は
図14(B)の保持手段において子機を保持・分離するための機構の一例を示す部分縦断面図である。
【
図17】(A)は保持手段における連結構造の一例を示す拡大部分縦断面図、(B)は(A)の横断面図である。
【
図18】(A)は本発明における第3の実施の形態としてのマルチコプターを2機連結した状態を示す平面図、(B)は(A)の正面図である。
【
図19】(A)は
図18のマルチコプターを親機として子機と孫機を搭載した状態の正面図、(B)は親機に孫機3機を搭載した状態の正面図である。
【
図20】
図19(A)のマルチコプター複合体を分離した状態を示す正面図である。
【
図21】
図19(A)のマルチコプター複合体における連結構造の一例を示す拡大部分縦断面図、(B)は(A)の横断面図である。
【
図22】
図1のマルチコプターによるマルチコプター複合体の運用例を示す説明図である。
【
図23】
図19(A)のマルチコプター複合体の運用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
図1(A)は、本発明における第1の実施の形態としてのマルチコプター1Aの平面図を示しており、図(B)はその正面図を示している。このマルチコプター1Aは、平面視8角形でタブレット状の本体部2Aの各側面からアーム4a,4b,4c,・・,4hが水平方向に放射状に延設され、各先端側にロータ6a,6b,6c,・・,6hを有した電動モータ5a,5b,5c,・・,5hを設けてなる無人式のオクトコプターである。
【0020】
その本体部2Aには、図示しない蓄電手段(バッテリ)、通信手段、GPS測位機能・姿勢制御機能・飛行ルート記憶機能等を有した飛行制御手段を備えて、無線遠隔操作による飛行に加え、予め設定したルートで自律的な飛行を行えるようになっており、測定手段・撮影手段等の作業目的に応じた各種作業装置を搭載できるとともに、これらで取得した各種データを記憶又は送信することも可能である。
【0021】
そして、その本体部2Aの下面側には、子機を保持するための保持手段を構成している7本の円筒状の収納体21a,21b,21c,・・,21gが垂設され、その内部にアームを縦方向に折り畳んだ状態の子機を各々収納することが可能とされているとともに、保持状態を解除することで重力により下端側から子機を下向きに放出して分離することも可能とされており、この点が本実施の形態における最大の特徴部分である。
【0022】
図2(A)は、
図1のマルチコプター1Aを親機として、その収納体21a,21b,21c,・・,21g内に収納される子機としてのマルチコプター10Aが、ロータ16a,16b,16c,16dを有した電動モータ15a,15b,15c,15dを先端に設けてなるアーム14a,14b,14c,14dを縦方向に折り畳んだ状態を示しており、図(B)はアーム14a,14b,14c,14dを展開した状態を示している。
【0023】
このマルチコプター10Aも、本体部12A内において親機と同様に図示しない蓄電手段、通信手段、飛行制御手段等を備え、無線遠隔操作による飛行や予め設定したルートにて自律的な飛行を実施可能とされた無人のクアッドコプターであり、作業目的に応じた測定手段・撮影手段等の各種作業装置を搭載して、取得した各種データを記憶又は送信可能とされている点も同様である。
【0024】
また、斯かるマルチコプター10Aは、親機であるマルチコプター1Aよりも顕著にサイズが小さいことに加え、そのアーム14a,14b,14c,14dが、先端側を仰角方向に上下動作可能な状態で基端側を本体部12Aに軸着されており、これらを上向きに折り畳むことで一層コンパクトになって、円筒状の親機の収納体21a,21b,21c,・・,21g内に収納できる状態となる。
【0025】
図3(A),(B)は、前述した子機としてのマルチコプター10Aの応用例を示している。図(A)はアーム17a,17b,17c,17dが上述したマルチコプター10Aとは逆向きに本体10Bの下面側に折り畳まれる方式のマルチコプター10Bであり、図(B)は上述したマルチコプター10Aの底面側に親機と連結するための連結金具121を備えて、マルチコプター10Aとは上下逆向きで収納・保持する方式のマルチコプター10Cである。一方、図(C)のマルチコプター10Dは、そのアーム18a,18b,18c,18dが、折り畳み傘のように途中でさらに屈曲した状態で折り畳まれる方式である。
【0026】
図4(A)は、
図2のマルチコプター10Aを、親機であるマルチコプター1Aの収納体21aに収納した状態を示している。マルチコプター1Aが飛行中にその保持状態を解除することにより、マルチコプター10Aは重力により筒状の収納体21a下端側から放出され、図(B)に示すように、アーム14a,14b,14c,14dを所定の駆動手段で展開させて飛行可能な体勢になる。
【0027】
図3(A)のマルチコプター10Bも同様であるものの、
図5(A)に示すように前述とは上下逆向きで収納体21aに収納され、保持状態を解除することで、図(B)に示すように収納体21a下端側から放出される。この場合、各アーム17a,17b,17c,17dを展開させる方式としては、所定の弾性反発手段で各ロータが干渉しない位置まで開いてから各ロータを回転させ、その揚力で各アーム17a,17b,17c,17dの先端側を持ち上げることが想定される。
【0028】
一方、
図3(B)のマルチコプター10Cは、マルチコプター10Aの本体部12Aの底面に連結金具121を追加しただけの構成であるが、
図6(A)に示すように、収納体21a内に
図4(A)とは上下逆向きで収納される。この場合、連結金具121の係合を解除することで、図(B)に示すように各アーム14a,14b,14c,14dが所定の駆動手段で展開され、その後各ロータが回転を開始することで、図(C)に示すように上下反転して通常の向きになる点を特徴としている。
【0029】
一方、
図3(C)のマルチコプター10Dは、折り畳んだ状態でその高さがマルチコプター10Aを折り畳んだ状態の約半分になる。そのため、図示は省略するが、1つの収納体において縦方向に複数機を収納することも可能である。尚、上述した子機としてのマルチコプター10A,10B,10C,10Dは、各アームが展開位置に達した段階で、その位置にてロックが掛かり固定される方式とすることが好ましい。
【0030】
図7(A)は、本発明における第2の実施の形態であるマルチコプター1Bの平面図を示し、図(B)はその正面図を示している。このマルチコプター1Bは、上述したマルチコプター1Aと基本的な構造は共通しているが、その子機の保持手段を構成している筒状の収納体22aが、本体部2Bの中央位置を上下に貫通している点を特徴としており、且つ、1本の収納体22aに複数の子機を収納して搭載するために、子機のアームが水平方向に折り畳まれて平板状(タブレット状)になる点も特徴となっている。
【0031】
また、本実施の形態では子機のアームが水平方向に折り畳まれるが、収納状態で平面視円盤状になるとは限らず平面視方形状になることも想定されることから、
図8(A)に示すように本体部2Cを貫通する収納体22bが角柱状であってもよく、さらに、図(B)に示すように角柱状の空間を縦方向に仕切った態様の収納体22cとしても良い。
【0032】
図9(A)は、
図7のマルチコプター1Bを親機としてその円筒状の収納体22aに収納するために、アーム24a,24b,24d,24eを水平方向に折り畳んだ状態のマルチコプター10Eを示している。このマルチコプター10Eは、円盤状の本体部23Aの外周面に密着するように弧状に湾曲したアーム24a,24b,24d,24eが、その基端側を本体部23Aの外周面に軸着されて水平方向に開閉動作するようになっている。
【0033】
そして、
図9(B)に示すように、親機から分離した後に本体部23Aの上面中央位置に配置したメインロータ29Aを回転駆動させることで、その反作用により本体部23Aが逆方向に回転し、その遠心力で各アーム24a,24b,24d,24eが展開してその位置で固定される構成となっている。即ち、子機であるマルチコプター10Eは、このようなアームの折り畳み方式を採用したことで嵩が極めて小さくなることから、親機における収納容積を最小限にして最大限の子機数を搭載可能としたものである。
【0034】
図10(A)は、前述したマルチコプター10Eの変形例として、収納状態が平面視略四角形のタブレット状になるマルチコプター10Fを示している。この例では、その本体部23Bが平面視正方形とされているとともに、各アーム25a,25b,25c,25dが直線状であり、折り畳んだ状態で本体部23Bの側面に各々密着するようになっており、図(B)に示すように、親機から分離された後でメインロータ29Bを回転駆動させることでアームを展開する方式とされており、
図8(A),(B)の角柱状の収納体22b,22cに収納することを想定している。
【0035】
図11(A)は、前述したマルチコプター10Fの変形例としてのマルチコプター10Gの平面図を示し、図(B)は側面図、図(C)はアーム展開時の平面図を示している。この変形例では、アーム26a,26b,26c,26dが平行になる向きで折り畳まれ、全体として平面視略長方形のタブレット状になる点を特徴としており、これにより収納時の左右幅を小さく抑えることが可能となる。
【0036】
図12(A)は、マルチコプター10Fの他の変形例としてのマルチコプター10Hの平面図を示し、図(B)は側面図、図(C)はアーム展開時の平面図を示している。この変形例では、隣り合うアーム27a,27d、アーム27b,27cが互いに重なる向きで折り畳まれることで、前述のマルチコプター10Gよりも長径側の幅が短くなる点を特徴としている。
【0037】
図13(A)は、
図9のマルチコプター10Eを、
図7のマルチコプター1Bに子機として搭載した場合の収納体22aの収納状態を縦断面図で示している。この場合、全体として略円盤状に折り畳まれてコンパクト化されたマルチコプター10Eは、円筒状の収納体22a内部で縦方向に重ねられて5機収納されており、極めて効率的な収納状態を実現している。尚、その収納にあたり、各子機を上面又は下面が開口した円筒状のケースに入れた状態にすることで、引掛かりを最小限にして分離作業を円滑にすることが可能となる。また、図示は省略するが、
図8(A)の角柱状の収納体22bに、平面視方形の
図10のマルチコプター10Fを収納する場合も前記同様である。
【0038】
図13(B)は、
図11のマルチコプター10Gを、
図8(B)の仕切られた収納体22c内に保持した場合の収納状態を示しており、図(C)は
図12のマルチコプター10Hを収納体22c内に保持した場合の収納状態を示している。このように、タブレット状に折り畳んだ子機を縦方向に区画された収納体22cに縦向きで並列的に収納することで、極めて効率的な収納状態が実現される。
【0039】
一方、
図14(A)の底面図に示すように、
図8(B)の変形例としてその収納体22cで3つに区画された個々の収納室と同じ形状・サイズの収納室を構成する収納体22dを、本体部2Eの下面側に複数配置しても前記同様に効率的な収納を実現することができる。さらに、図(B)に示すように、
図7に記載した収納体22aと同様の収納体22eに、縦方向にアームを折り畳んでバドミントンの羽根のようにしてマルチコプター10Iを重ね合わせながら収納してもよく、この場合、収納体22eを図のように上から下に向かって内径が大きくなるようにすることで、収納及び分離作業を一層行いやすいものとなる。
【0040】
図15は、子機のアームを能動的に展開するための機構の一例を示したものである。図(A)はアームの基端側にサーボモータ50等のアクチュエータを配設し、通電によりアームを展開方向に動作及び固定させる方式であり、図(B)はアーム基端側にアームを展開方向に付勢するようにバネ60を配設し、バネの反発力に抗してアームを折り畳んで収納体内に納め、収納体から脱出させることでアームを自動的に展開動作させる方式である。尚、図ではアームを水平方向に展開させる場合を示したが、縦方向に展開させる場合も同様である。また、上述したように、本体部を回転させることによる遠心力やロータの揚力を利用してアームを展開させる方式も可能であり、さらに、前述した方式を複数種類組み合わせても良い。
【0041】
次に、上述した各実施の形態で子機の保持手段の一部を構成するものとして、収納体の内部で子機の掛止及び分離を行うための機構の一例について説明する。
図16(A)は、親機であるマルチコプター1Aの収納体21aの内部において、子機であるマルチコプター10Aをローラー70a,70bで左右から挟み込んで掛止・固定した状態であり、そのローラー70a,70bを矢印方向に回転させることで、マルチコプター10Aを下方向に押し出して分離する方式である。
【0042】
図16(B)は、親機であるマルチコプター1Bの収納体22a内部で子機であるマルチコプター10Eを複数段重ねたもののうち、最も下の段をローラー70c,70dで左右から挟み込んで掛止・固定したものであって、そのローラー70c,70dを矢印方向に回転させることにより、マルチコプター10Eを下方向に押し出しながら下から順に分離する方式である。尚、
図16(A),(B)のローラー挟み込みによる掛止・分離方式は、
図13(A),(B)、
図14(A)の子機収納方式にも適している。
【0043】
図16(C)は、
図14(B)の収納体22e内部で子機であるマルチコプター10Iを複数重ねたものの下端側をゲート80a,80bで閉止し、これを開閉操作することで下から順に分離する方式であるが、マルチコプター10Iの各アームが拡開方向にバネ等で付勢されていることで、テーパー状の空間を形成している内周面をアームの先端側で押圧していることから、各機体が分離方向に動作しやすくなっている。
【0044】
図17(A)は、
図3(A)のマルチコプター10B、
図3(B)のマルチコプター10Cの掛止金具121を、親機側に掛止するための機構を縦断面図で示しており、図(B)はその横断面図を示している。この掛止金具121は、キノコ状の部材からなり、その掛止時に親機側の掛止孔130に下から挿通された状態で、その小径部に鈎金具131が横から係合するようになっており、係合することで掛止金具121は脱抜不能な状態となって、掛止状態が固定・維持されるようになっている。
【0045】
その鈎金具131は、バネ132で掛止方向に付勢されており、その先端側に形成した弧状の係合部が、掛止金具121の小径部に係合するようになっている。また、鈎金具131の大径部上面外周側は面取りが施されて全体として傘状を呈しており、掛止孔130に下から挿入する動作により、鈎金具131の係合部を表面で滑らせながら後退させ、所定深さまで挿入して大径部が通過することで、その小径部に係合部が係合するようになっている。
【0046】
また、分離の際には、アクチュエータ133に通電することにより、鈎金具131が後退して掛止状態が解除される。さらに、掛止金具121の先端面には親機との間で電気的な接続を行うための接続孔が開口しており、掛止状態で親機側の接続端子134と接続するようになっている。尚、親機側と子機側の連結状態を堅固にするために、いずれか一方の当接面側に永久磁石、他方の当接面側に磁性体を配して磁力で吸着されるようにしてもよく、分離の際には磁性体側に配置した電磁コイルに通電することで永久磁石側と同一の極性を帯びるようにして、磁気反発で分離動作を促進するようにしてもよい。
【0047】
図18(A)は、本発明における第3の実施の形態としてのマルチコプター1Cを、上下に2機連結してなるマルチコプター複合体1Caの平面図を示し、図(B)はその正面図を示している。本実施の形態においては、親機に搭載される子機は親機と相似形とされているとともに、アームを折り畳まずに親機の下面側又は/及び上面側に連結しながら保持される点を特徴としている。
【0048】
このマルチコプター複合体1Caは、先端側にモータ駆動のロータを有したアーム34a,34b,34c,34dを備えてなる無人式のクワッドコプターであるマルチコプター1Cを、上下に2機連結してオクトコプターとしたものであり、上下のロータが重ならないように、互いに中心軸線周りに45°ずれた状態で連結されており、総てのロータを駆動させるオクトコプターとしての使用のほか、一方のみのロータを駆動させて一方を親機、他方を子機として使用することも可能である。
【0049】
また、本実施の形態では、
図19に示すようにマルチコプター1Cよりも小型の相似形で主として子機としての使用を想定したマルチコプター100と、このマルチコプター100よりもさらに小型の相似形で主として孫機としての使用を想定したマルチコプター1000を組み合わせて使用できる点も特徴としている。即ち、図(A)に示すように、マルチコプター1Cを親機、マルチコプター100を子機、マルチコプター1000を孫機として連結してなるマルチコプター複合体1Cbや、図(B)に示すように、マルチコプター1Cを親機、マルチコプター1000の3機を子機として連結したマルチコプター複合体1Cd等、様々な組み合わせを想定したものとなっている。
【0050】
さらに、本実施の形態おいては、親機と子機、子機と孫機を連結するための保持手段の一部をなす凹凸構造の組み合わせによる連結部の構成が、総ての機体において共通している点を特徴としている。即ち、
図20に示すように、マルチコプター1C,100,1000の各本体部2F,2G,2Hの上面中央位置に突設した連結凸体122a,122b,122cは同一形状・同一サイズとされており、本体部2F,2G,2Hの下面中央位置を陥凹させてなる図示しない連結凹体123a,123b,123cも、連結凸体122a,122b,122cの形状に応じた同一形状・同一サイズとされており、総ての機体同士の組み合わせで中心軸線を一致させながら、縦方向に複数連結できるようになっている。
【0051】
また、連結凸体122a,122b,122cは、四角錐(ピラミッド状)の稜線を面取りした形状とされ、連結凹体123a,123b,123cの内側形状も同様とされており、各機体においてこれら上下の組み合わせの水平方向の角度が互いに45°ずれて設けられており、正確な向きで重ねなくてもその面取り形状で滑り動きながら自動的に向きが修正され、機体を上下に連結した状態では、正確に45°ずれた角度位置となるため、上下のロータが平面視で重ならないようになっている。
【0052】
図21(A)は、上述した連結部を構成する連結凹体123aと連結凸体122bの連結状態における拡大した縦断面図を示している。図示したように、連結凸体122bの先端側には、上述した実施の形態における連結金具121とほぼ同様のキノコ状に形成された係合体1230を有しており、連結凹体123aの上端側には
図17に示したものと同じ構造の連結機構を備えている。
【0053】
即ち、
図21(A)に示すように、
図17で説明した連結機構と同様に、連結時には係合体1230の小径部に鈎金具137の係合部が係合して掛止状態となり、分離時にはアクチュエータ139が作動して鈎金具137を後退させ、掛止状態を解除するようになっている。また、係合体1230の先端側には、上下の機体を電気的に接続するための接続端子1231が配設されており、連結凹部123a側の接続孔136に挿入することで接続される。
【0054】
次に、本発明によるマルチコプターを用いた運用例を説明する。
【0055】
図22は、
図1のマルチコプター1Aを親機とし、3機のマルチコプター10Bを子機として搭載したマルチコプター複合体の運用例を簡略図で示している。この例では、3機のマルチコプター10Bに各々カメラを搭載してA,B,Cの3地点で同時にライブ映像を撮影して送信するものであるが、撮影場所が基地局から遠いことに加え複数の地点に分散しているため、後続距離が40km程度の1機のマルチコプター1Aでは実行不可能な作業であるが、親機に3機の子機を搭載したことにより、これを実行可能としたものである。
【0056】
先ず、親機に3機の子機を搭載したマルチコプター複合体として出発地点(基地局)から発進し、30km地点の空中で3機の子機を分離してそのまま飛行させてから、親機はその位置で着陸して待機する。そして、各子機はGPS測位手段等を使用しながら予め設定した作業地点A,B,Cに到着すると、飛行しながら、又は着陸して目的物の撮影を行い、映像データを基地局に送信する。
【0057】
その際、作業地点の地形や距離により基地局との通信が不充分な状態になる場合は、分離地点で待機している親機が子機と基地局の間の通信を中継する方式としている。このように、親機に搭載した複数の子機を途中で分離し、各々作業地点まで飛行させて個別的に作業させる方式としたことで、従来は地理的な条件により作業を行うことが不可能であった地点までカバーできるとともに、複数の地点で種々の作業を同時に実施可能なものとしている。また、斯かる運用は、親機として上述したマルチコプター1B,1Cにも適用することができ、子機として上述したマルチコプター10A〜1000の総てに適用することができる。
【0058】
図23は、
図19(A)のマルチコプター複合体1Cbを用いて、所定の物品を目的地まで運搬・投下した後、出発地点まで帰還させる運用例を示している。仮に、マルチコプター1C単独の航続距離が50kmである場合、目的地が出発地点から35kmとすると、往復で70kmになるため1機のみでは帰還することができない状況である。
【0059】
そこで、マルチコプター1Cを親機としてマルチコプター100を子機、マルチコプター1000を孫機として連結してマルチコプター複合体1Cbとすることで、その作業を実行可能としたものである。即ち、子機・孫機を搭載して重量が増したマルチコプター複合体1Cbの航続距離が40kmとすると、出発地点から15kmの分離地点Aで子孫機を分離しながら親機はそのまま着陸して待機し、子孫機は出発地点から25kmの分離地点Bで孫機を分離して子機はそのまま着陸して待機する。
【0060】
そして、孫機は出発地点から35kmの目標地点に到達し、保持していた運搬物を分離・投下してから、そのまま飛行して帰還の途につく。その後、孫機は分離地点Bで待機している子機の上に連結して子孫機を構成し、これが分離地点Aまで飛行して、待機している親機の上に連結して親子孫機、即ちマルチコプター複合体1Cb(搭載順は逆)を構成し、これが出発地点まで飛行して帰還するものである。
【0061】
このように、親機・子機・孫機が互いに分離可能な状態で連結してなるマルチコプター複合体1Cbを、往路の途中で2回分離するとともに復路の途中で2回連結する方式としたことで、従来は帰還不能とされていた作業地点であっても、余裕を持って帰還することが可能なものとなる。また、この例においても親機や子機が孫機と基地局の間の通信を中継することが可能であることは言うまでもない。さらに、上述した運用は、マルチコプター1C,100,1000を用いた他の様々な組み合わせによっても実施可能である。
【0062】
尚、上述した各運用において使用するマルチコプターの本体部又は/及びアームの上面に、面状の太陽電池を配設して飛行時及び待機時に発電しながら必要に応じて蓄電手段(バッテリ)を充電することが可能な構成とすれば、例えば待機時において、通信の中継においてソーラー発電による電力を使用したり帰還するのに足りない電力分を補充したりすることも可能となるため、さらにカバー範囲を広げることが可能なものとなる。
【0063】
また、マルチコプターの本体部を内外液密構造にしながら水面で所定時間以上浮遊可能なものとすれば、待機地点が水上になるような場合でも待機・中継が可能になるとともに、その回収作業も比較的容易なものとなる。さらに、待機する親機や子機の外観を待機地点の状況に溶け込むような配色にしておくことで、他者に持ち去られるリスクを最小限に抑えることもできる。
【0064】
以上、述べたように、無人で飛行して所定の作業を行うマルチコプターについて、本発明により、一層広い活動範囲をカバー可能としながら複数地点における作業を同時に行えるようになった。