(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6202549
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】吊り金具
(51)【国際特許分類】
E04D 13/072 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
E04D13/072 501J
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-125766(P2016-125766)
(22)【出願日】2016年6月24日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503267858
【氏名又は名称】有限会社 広島金具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】水ノ上 貴史
【審査官】
金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−48680(JP,A)
【文献】
実開昭48−015610(JP,U)
【文献】
特開平9−88271(JP,A)
【文献】
実開平2−087833(JP,U)
【文献】
米国特許第4940198(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/072
E04D 13/064
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
L字状の板金を屈曲した軒先固定部であって、互いが重なり合う第1辺部と第2辺部と、前記第2辺部の側辺から突出して折り曲げられた第3辺部とを有し、前記第1辺部には前記第1辺部の長さ方向に複数の孔f3、f4が設けられ、前記第1辺部に正対する前記第2辺部の位置には孔f3、f4よりも小さい径の複数の孔f5、f6が設けられた軒先固定部と
前記第2辺部の長さ方向に沿って、前記第3辺部に溶接された螺軸と、
前記螺軸が貫通し、貫通した両側に配置されるナットにより、前記螺軸の長さ途中の任意の位置で固定可能であって、軒樋の耳に係合する樋支持部とを有し、
軒先曲げの軒先を前記第1辺部と第2辺部とで挟み、孔f3、f4からドリルねじを螺入することにより、ドリルねじが孔f3、f4を案内として前記軒先を穿孔し、孔f5、f6に雌ネジを形成しつつ螺合することを特徴とする吊り金具。
【請求項2】
前記螺軸は、第1辺部と第2辺部に対して反対側の前記第3辺部の面に溶接されていることを特徴とする請求項1記載の吊り金具。
【請求項3】
帯状の板金を屈曲した軒先固定部であって、互いが重なり合う第1辺部と第2辺部とを有し、前記第1辺部には前記第1辺部の長さ方向に複数の孔f3、f4が設けられ、前記第1辺部に正対する前記第2辺部の位置には孔f3、f4よりも小さい径の複数の孔f5、f6が設けられた軒先固定部と
前記第2辺部の長さ方向に沿って、孔f5、f6よりも屈曲位置に近い箇所の前記第2辺部に溶接された螺軸と、
前記螺軸が貫通し、貫通した両側に配置されるナットにより、前記螺軸の任意の位置で固定可能であって、軒樋の耳に係合する樋支持部とを有し、
軒先曲げの軒先を前記第1辺部と第2辺部とで挟み、孔f3、f4からドリルねじを螺入することにより、ドリルねじが孔f3、f4を案内として前記軒先を穿孔し、孔f5、f6に雌ネジを形成しつつ螺合することを特徴とする吊り金具。
【請求項4】
J字状の板金を屈曲した軒先固定部であって、互いが重なり合う第1辺部と第2辺部と、前記第2辺部の側辺から突出して折り曲げられた第3辺部と、前記第3辺部からさらに第1辺部と第2辺部から離れるように折り曲げられた第4辺部とを有し、前記第1辺部には前記第1辺部の長さ方向に複数の孔f3、f4が設けられ、前記第1辺部に正対する前記第2辺部の位置には孔f3、f4よりも小さい径の複数の孔f5、f6が設けられ、さらに第4辺部には孔f7が設けられた軒先固定部と
前記第2辺部の長さ方向に沿って、前記第4辺部の孔f7に螺着された螺軸と、
前記螺軸が貫通し、貫通した両側に配置されるナットにより、前記螺軸の長さ途中の任意の位置で固定可能であって、軒樋の耳に係合する樋支持部とを有し、
軒先曲げの軒先を前記第1辺部と第2辺部とで挟み、孔f3、f4からドリルねじを螺入することにより、ドリルねじが孔f3、f4を案内として前記軒先を穿孔し、孔f5、f6に雌ネジを形成しつつ螺合することを特徴とする吊り金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒先曲げの軒先に配置される軒樋を支持する吊り金具に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や、倉庫などの中には、波板を固定した屋根の軒先を垂直方向に壁と平行に曲げた波板先曲がりスレートが使用されていることがある。このような屋根は「軒先曲げ」と呼ばれており、例えば強風地域において、よく見られるものである。波板を用いた金属屋根においても、軒先を垂直方向に壁と平行に曲げた波板が存在しており、ラジアル加工が施されていることから「軒先ラジアル」と呼ばれている。以下、「軒先曲げ」及び「軒先ラジアル」を「軒先曲げ」と総称することにする。
【0003】
図5Aでは軒樋の吊り金具400を、
図4Bでは「軒先曲げ」の軒先1を示している。
図5Aに示した吊り金具は、「軒先曲げ」の軒先1に適用される吊り金具であり、このような金具として、例えば、非特許文献1に開示されているものがある。
図5Aにおいて、吊り金具400は、屈曲した帯状鋼板80は、側面視L字状に曲げられて、長尺と短尺の帯状部80aと80bとを有している。長尺の帯状部80aには、長さ方向に沿って貫通する孔f1、f2が設けられている。短尺の帯状部80bには、螺軸70が貫通する孔が設けられており、螺軸70及びナット11b、ワッシャー12a、12b、座バネ12cを用いて、樋支持部6に設けられた孔6cに固定されている。
【0004】
樋支持部6の両端は、固定されるべき軒樋における両側の耳の形態に応じて様々な形状(例えば、平行樋、前高樋など)を取りうるものである。図示されている樋支持部6の一端(符号6a側)においては、中央辺部b1から斜めに延出された傾斜部b2と、この傾斜部b2から中央辺部b1と平行に延出された辺部b3と、辺部b3の前端を斜めに延出された係合爪部b4とを有しており、前高樋の前側(高い側の耳)を保持する。
【0005】
一方、樋支持部6の他端(符号6b側)は、中央辺部b1から斜めに延出された傾斜部b5と、傾斜部b5から中央辺部b1と平行に延出された辺部b6と、この辺部b6から傾斜部b5と反対側に延出された垂下辺部b7と、この垂下辺部b7の下端を中央辺部b1側に延出された段部b8と、この段部b8の前端を垂下辺部b7と平行に延出された垂下辺部b9とを有している。さらに、中央辺部b1の後部から延出された弾性板9が溶接により固定されている。この弾性板9は起立面部9aを有し、この起立面部9aの少なくとも一部が段部b8の上面より上方に位置され、この起立面部9aと垂下辺部b9との間には隙間d1が形成されており、前高樋の後側(低い側の耳)を保持する。
【0006】
図5Bの軒先1では右の下孔1bは左の下孔1bに対して、位置が若干低くなっている。施工者は、軒樋に水勾配θを確保するため、孔f1、f2に対応して、水糸で軒先1にマーキングしてドリルなどで下孔1bを上下に2つ予め穿孔しておく必要がある。施工者は、孔f1、f2と下孔1bが連通するように、帯状鋼板80を軒先1にあてがい、螺軸71及びナット11c、ワッシャー12d、12e、座バネ12g等を用いて、下孔1bに固定する。帯状鋼板80をあてがう基準位置の無い状態で所定の位置に保持する動作と、螺軸71を螺子止めする動作を同時に行わなくてはならない。
【0007】
また、特許文献1−3においては、屋根勾配に倣って取り付けることが可能な吊り金具が開示されている。特許文献1、2は屋根勾配に対して鉛直に配置される螺軸との角度を合わせるために、固定具となる板材の曲げ角度により調整している。一方、特許文献3では、強風時に揺れを防止するために板材を折り曲げられた補強斜材により、3角形による剛構造を作成している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Panasonic>住まいの設備と建材>外まわり・構造材>雨樋・雨水貯留タンク>大型構造物用雨仕舞商品>吊金具>大型雨とい吊金具[平成28年6月6日検索]URL:http://sumai.panasonic.jp/amatoi/o_gata/lineup/tsurikanagu.html
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−48680号公報
【特許文献2】実開昭62−137938号公報
【特許文献3】特開2001−49813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、軒先曲げの軒先に対して、予め水勾配を確保する孔を空けておく必要がなく、簡便に取り付け可能な軒樋の吊り金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る吊り金具は、L字状の板金を屈曲した軒先固定部であって、互いが重なり合う第1辺部と第2辺部と、前記第2辺部の側辺から突出して折り曲げられた第3辺部とを有し、前記第1辺部には前記第1辺部の長さ方向に複数の孔f3、f4が設けられ、前記第1辺部に正対する前記第2辺部の位置には孔f3、f4よりも小さい径の複数の孔f5、f6が設けられた軒先固定部と
前記第2辺部の長さ方向であって、前記第3辺部に溶接された螺軸と、
前記螺軸が貫通し、貫通した両側に配置されるナットにより、前記螺軸の長さ途中の任意の位置で固定可能であって、軒樋の耳に係合する樋支持部とを有し、
軒先曲げの軒先を前記第1辺部と第2辺部とで挟み、孔f3、f4からドリルねじを螺入することにより、ドリルねじが孔f3、f4を案内として前記軒先を穿孔し、孔f5、f6に雌ネジを形成しつつ螺合することを特徴とする。
また、本発明に係る吊り金具は、帯状の板金を屈曲した軒先固定部であって、互いが重なり合う第1辺部と第2辺部とを有し、前記第1辺部には前記第1辺部の長さ方向に複数の孔f3、f4が設けられ、前記第1辺部に正対する前記第2辺部の位置には孔f3、f4よりも小さい径の複数の孔f5、f6が設けられた軒先固定部と
前記第2辺部の長さ方向であって、孔f5、f6よりも屈曲位置に近い箇所の前記第2辺部に溶接された螺軸と、
前記螺軸が貫通し、貫通した両側に配置されるナットにより、前記螺軸の任意の位置で固定可能であって、軒樋の耳に係合する樋支持部とを有しを有し、
軒先曲げの軒先を前記第1辺部と第2辺部とで挟み、孔f3、f4からドリルねじを螺入することにより、ドリルねじが孔f3、f4を案内として前記軒先を穿孔し、孔f5、f6に雌ネジを形成しつつ螺合することを特徴とする。
また、本発明に係る吊り金具は、J字状の板金を屈曲した軒先固定部であって、互いが重なり合う第1辺部と第2辺部と、前記第2辺部の側辺から突出して折り曲げられた第3辺部と、前記第3辺部からさらに第1辺部と第2辺部から離れるように折り曲げられた第4辺部とを有し、前記第1辺部には前記第1辺部の長さ方向に複数の孔f3、f4が設けられ、前記第1辺部に正対する前記第2辺部の位置には孔f3、f4よりも小さい径の複数の孔f5、f6が設けられ、さらに第4辺部には孔f7が設けられた軒先固定部と
前記第2辺部の長さ方向に沿って、前記第4辺部の孔f7に螺着された螺軸と、
前記螺軸が貫通し、貫通した両側に配置されるナットにより、前記螺軸の長さ途中の任意の位置で固定可能であって、軒樋の耳に係合する樋支持部とを有し、
軒先曲げの軒先を前記第1辺部と第2辺部とで挟み、孔f3、f4からドリルねじを螺入することにより、ドリルねじが孔f3、f4を案内として前記軒先を穿孔し、孔f5、f6に雌ネジを形成しつつ螺合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ドリルねじを孔f3、f4を案内として螺入可能である。軒先の前端部が第1辺部と第2辺部の屈曲部内側に当接するようにしておけば、軒先固定部は安定して、片手でも位置を保持でき、螺入の操作が容易になる。ドリルねじが螺入されると、これによりドリルねじは軒先に孔を穿孔し、続いて第2辺部の孔f5、f6の内周面に雌ネジを形成してこの雌ネジに螺合する。軒先1への下孔を穿孔する作業が不要であり、軒先固定部を持ったまま(或いは、持たずに)、電動ドライバやインパクトドライバー等の工具による螺入作業ができるので、軒樋の取り付け作業が容易である。
また、螺軸が溶接された第3辺部は第2辺部に対して、その厚さ方向ではなく、幅方向で鉛直に加わる軒樋の重量を支えることになるので、剛性が高く、強風時においても揺れが抑制される。さらに、螺軸を直接第3辺部に溶接した場合は、第3辺部の折り曲げの作業工程が減少するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例である吊り金具の斜視図である。
【
図2】吊り金具の使用例を示す側面視断面図である。
【
図5】従来の軒樋吊り金具と吊り金具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
図1において、実施例の吊り金具100は、屈曲により形成された軒先固定部2、軒先固定部2に溶接された螺軸7及び、螺軸7により螺子止めされる樋支持部6からなっている。軒先固定部2は、
図1Bに示す、平面視L字状の板金を一点破線イの箇所で山折りされて互いに折り重ね合わされる第1辺部3と第2辺部4と、第2辺部4の一側辺から鉛直向きに突出し一点破線ロの箇所で他に織りされる第3辺部5からなる。軒先固定部2は、第1辺部3と第2辺部4と第3辺部5を、屈曲することにより一体状に成形されている。第1辺部3には、第1辺部3の長さ方向に複数の孔f3、f4が穿孔されている。また、第2辺部4には一点破線イにおいて互いに折り重ね合わされた時に孔f3、f4と連通する複数の孔f5、f6を有している。
【0015】
軒先固定部2を「軒先曲げ」の軒先1に固定する際には、ドリルねじを用いる。ドリルねじは、鉄骨用のビスとして使用されている螺子であり、ねじの先端が切り刃(ドリル)となっており、螺子自体で下孔あけ、タップたて、締め付けを行う。孔f3、f4は、ドリルねじの軸部の螺子山の頂上部における径と同じ若しくは大きく、ドリルねじの頭部が通過できない経の大きさを持つ孔である。一方、孔f5、f6は、孔f3、f4の径よりも小さく、かつドリルねじの軸部の螺子山の頂上部における径より小さい径を持つ孔である。ドリルねじが使用されたときにき、ドリルねじは、孔f5、f6に対してタップたてを行いながら螺入される。
【0016】
螺軸7は、第1辺部3若しくは第2辺部4の長さ方向に沿って、第3辺部5に対して溶接Wされている(
図1D)。孔f3、f4若しくは孔f5、f6にドリルねじが螺入されたときに干渉しないように、第1辺部3と第2辺部4に対して反対側の第3辺部5の面に螺軸7が溶接されている。
【0017】
螺軸7は、樋支持部6を垂直に貫通し、樋支持部6の長さ方向中央付近で固定されるものであって、樋支持部6の中央辺部b1に設けられ、中央辺部b1の孔6cに挿通される。孔6cは長孔であり、中央辺部b1の長さ方向のどの位置でも固定が可能なようになっている。螺軸7としては、少なくとも片側に雄螺子が設けられたねじ軸や棒螺子、寸切り螺子又はボルトが利用できる。螺軸7は、ワッシャー12a、12b、座バネ12cをはさんで一対のナット11a、11bにより中央辺部b1の表裏両側から螺合されることにより、螺軸7の長さ途中の任意な位置に樋支持部6を固定する。
【0018】
樋支持部6の両端は、固定されるべき軒樋の形態に応じて様々な形状を取りうるものである。
図1に例示されている樋支持部6の両端において、
図4において説明した符号6bに示す構造を両端に有する平行樋の軒樋形状に対応するものであって、
図4と同じ構成のものは同じ符号を付して説明を省略する。
【0019】
図2を用いて、吊り金具100の施工手順について説明する。
まず「軒先曲げ」の軒先1の前端部に対して軒先固定部2を、間隔を開けて差し込む(
図2A)。この差し込みは、第1辺部8aを軒先1の前側(図中、左側)とし第2辺部8bを裏側として、第1辺部3と第2辺部4との間に軒先1の前端部が挟まれ、かつ一点破線イの位置で、軒先1の前端部が当接するようにするのが良い。軒先1に対して、
図4で示したような下孔1bを予め軒先1に開けておく必要はなく、単に軒先固定部2を差し込むだけである。
【0020】
次に、ドリルねじ13を孔f3、f4を案内として(
図2B)、電動ドライバやインパクトドライバー等などの工具により螺入可能である。一点破線イの位置で、軒先1の前端部が当接するようにしておけば、軒先固定部2は安定して、片手でも位置を保持でき、工具を用いた螺入の操作が容易になる。第1辺部3と第2辺部4とが、ある程度の把持力をもって、軒先1の前端部を挟み込んでいれば、軒先固定部2に対して手を添える必要も無い。ドリルねじ13が螺入されると、これによりドリルねじ13は軒先1に孔を穿孔する。よって、軒先1への下孔を穿孔する作業が不要である。ドリルねじ13は、さらに第2辺部4の孔f5、f6の内周面に雌ネジを形成して、この雌ネジに螺合する(
図2C)。螺入軒先固定部2は、第1辺部3と第2辺部4とにより軒先1を挟み込んで固定する。挟み込んで固定することにより、強い固定力が得られる。
【0021】
上記のような処理を繰り返して必要数の軒先固定部2を軒先1に取り付け、次に、樋支持部6を取り付ける。次に、必要な水勾配となるように水糸を張り、それぞれの吊り金具100において一対のナット11a、11bを操作することにより、樋支持部6の上下方向の高さを調整する(
図2D)。樋支持部6は予め、軒先固定部2に取り付けた状態で、ドリルねじ13により軒先1に取付け、その後一対のナット11a、11bを操作することにより、樋支持部6の上下方向の高さを調整しても良い。その後、軒樋10を樋支持部6にセットする(
図2E)。
【0022】
本実施例によれば、軒先1への下孔を穿孔する作業が不要であり、軒先固定部2を持ったまま、工具による螺入作業ができるので、軒樋の取り付け作業を容易化することができる。第1辺部3と第2辺部4とが、ある程度の把持力をもって、軒先1の前端部を挟み込んでいれば、軒先固定部2を持つ必要も無い。また、第3辺部5を設けることにより、螺軸7に対する第1辺部3と第2辺部4の間隔を広げることができるので、大型の軒樋に適用可能な吊り金具が作成できる。また、螺軸7が溶接された第3辺部5は第2辺部4に対して、その厚さ方向ではなく、幅方向で鉛直に加わる軒樋の重量を支えることになるので、剛性が高く、強風時においても揺れが抑制される。そして、螺軸7と第3辺部5との溶接が行われる領域を確保できるので製作しやすい。本実施例においては、軒先固定部2の素材として板金として、鋼板を用いても良い。
【実施例2】
【0023】
図3に、実施例2の吊り金具200を示す。吊り金具200の軒先固定部2は、実施例1における吊り金具100の軒先固定部2の第3辺部5を取り除き、帯状の板金を一点破線イにおいて第1辺部3と第2辺部4との2つに屈曲して、螺軸7を第2辺部4に溶接Wをして形成されたものである。孔f3とf4若しくは孔f5、f6にドリルねじが螺入されたときに干渉しないように、第2辺部4の孔f6(若しくは第1辺部3の孔f4)よりも一点破線イに近い位置であって、第2辺部4若しくは第1辺部3の長さ方向に沿って螺軸7が溶接されている。尚、図においては、前高樋に対応した樋支持部6が描かれている。
【0024】
実施例2の吊り金具200によれば、第2辺部4と第3辺部5の折り曲げ加工が必要無いという利点がある一方で、一点破線イの折り曲げ位置において溶接Wをするので、溶接が行われる領域が狭くなる。
【実施例3】
【0025】
図4に、実施例3の吊り金具300を示す(樋支持部6は省略されている。)。実施例1における吊り金具100の軒先固定部2を形成する板金が
図1BのようにL字状であったのに対して、吊り金具200の軒先固定部2は、
図4Cに示すようなJ字状の板金により形成される。吊り金具200の軒先固定部2は、第1辺部3と第2辺部4と同じ向きに第3辺部5から延びた第4辺部8を有している(
図4Cにおいて第3辺部5に対して短く上に延びた部分)。第4辺部8は、破線ハにおいて山折り状に折り曲げられる。その結果、
図4A、4Bに示すように、第4辺部8は、第1辺部3と第2辺部4から離れる方向に折り曲げられる。第4辺部8には、螺軸7を貫通する孔f7が設けられている。螺軸7と軒先固定部2との間の接続は、本実施例では溶接ではなく、孔f7に螺軸7を貫通させ、両側からナット13a、13b(或いはこれに加えて、ワッシャー14a、14b、座バネ14c)を用いて螺着する(
図4B)。
本実施例によれば、螺軸7と軒先固定部2とを溶接した場合に生ずる汚れが付着することがない。尚、実施例3では孔f7に螺子山を設けていないが、螺子山を設けて螺軸7を螺着することは孔f7の周辺の肉厚が十分であれば可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 軒先
2 軒先固定部
3 第1辺部
4 第2辺部
5 第3辺部
6 樋支持部
7 螺軸
8 第4辺部
10 軒樋
13 ドリルねじ
100、200、300 吊り金具
【要約】 (修正有)
【課題】軒先曲げの軒先に対して、予め水勾配を確保する孔を空けておく必要がなく、簡便に取り付け可能な軒樋の吊り金具を提供すること。
【解決手段】軒先固定部2は、L字状の板金を屈曲して形成される。軒先固定部2は、互いが重なり合う第1辺部3と第2辺部4と、第2辺部4の側辺から突出して折り曲げられた第3辺部5とを有し、第1辺部3には複数の孔f3、f4が設けられ、第2辺部4の位置には孔f3、f4よりも小さい径の複数の孔f5、f6が設けられている。第3辺部5には、第2辺部4の長さ方向に沿って螺軸7が溶接されている。軒樋の耳に係合する樋支持部6は、螺軸7が貫通し、両側に配置されるナット11a、11bにより固定される。軒先曲げの軒先1を第1辺部3と第2辺部4とで挟み、孔f3、f4からドリルねじを螺入することにより、孔f3、f4を案内として軒先1を穿孔し、孔f5、f6に雌ネジを形成しつつ螺合する。
【選択図】
図1