(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202555
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】循環流動層ボイラの流動媒体回収器
(51)【国際特許分類】
F23C 10/10 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
F23C10/10
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-118466(P2013-118466)
(22)【出願日】2013年6月5日
(65)【公開番号】特開2014-234976(P2014-234976A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133032
【氏名又は名称】株式会社タクマ
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】吉本 聡
(72)【発明者】
【氏名】喜多 照行
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−322308(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0197753(US,A1)
【文献】
特表2002−534600(JP,A)
【文献】
特開平05−340510(JP,A)
【文献】
特開2000−210514(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0180557(US,A1)
【文献】
特開2005−030664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層及び燃焼室を有する炉本体の燃焼室出口に接続されて構造上最低長さとした水平部及び水平部に下向きに連設された垂直部から成る燃焼室出口ダクトに一基又は複数基接続され、燃焼室出口ダクトから下向きに排出された排ガス、流動媒体、飛灰を受け入れ、重力加速度と遠心加速度によって排ガス及び飛灰と流動媒体とに分離し、排ガス中から流動媒体を回収する循環流動層ボイラの流動媒体回収器において、前記流動媒体回収器は、上端面に排ガス出口を形成した円筒胴部と、円筒胴部の下端部に設けられ、下方へ行くに従って漸次縮径すると共に、下端面に流動媒体出口を形成した円錐部と、燃焼室出口ダクトの垂直部に伸縮継手を介して下向き傾斜姿勢で接続され、円筒胴部にその接線方向に接続された入口ダクトとから成り、前記円筒胴部と入口ダクトを一体で構成したことを特徴とする循環流動層ボイラの流動媒体回収器。
【請求項2】
入口ダクトの傾斜角度αを10°〜45°に設定したことを特徴とする請求項1に記載の循環流動層ボイラの流動媒体回収器。
【請求項3】
流動媒体回収器の円筒胴部及び入口ダクトを水管パネル構造とすると共に、円筒胴部の水管と入口ダクトの水管を一体で構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の循環流動層ボイラの流動媒体回収器。
【請求項4】
入口ダクトを含まない流動媒体回収器の外形の大きさを2500mm以下に、また、入口ダクトを含む流動媒体回収器の外形の大きさを3800mm以下にそれぞれ設定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の循環流動層ボイラの流動媒体回収器。
【請求項5】
流動媒体回収器の流動媒体出口に伸縮継手を介してダウンカマーを接続すると共に、流動媒体回収器の排ガス出口に伸縮継手を介して排ガス出口ダクトを接続し、流動媒体回収器を支柱により中間支持構造で自立させたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の循環流動層ボイラの流動媒体回収器。
【請求項6】
入口ダクトに入口ダクト内の底面と平行に且つ底面に近い位置に空気投入ノズルを設け、当該空気投入ノズルから空気若しくは空気と補充用流動媒体、脱硫剤及びクリンカ抑制剤のうちの少なくとも何れか一つとの混合流体を投入するようにしたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の循環流動層ボイラの流動媒体回収器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスや石炭等を燃料とし、発電用を主とする蒸気ボイラとして使用される循環流動層ボイラの流動媒体回収器の改良に係り、特に、流動媒体回収器内に排ガス及び流動媒体等を導くダクト等に改良を加えることによって、極低負荷運転を行った場合でも、流動媒体の落下を滑らかに行えると共に、低負荷運転でガス流速が遅い場合でも、ダクト内での飛灰や流動媒体の堆積を抑制することができ、また、据付工事期間の短縮や据付工事費及び材料費の削減を図れるようにした循環流動層ボイラの流動媒体回収器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、循環流動層ボイラは、バイオマスや石炭、RDF、木屑、都市ごみ、産業廃棄物、汚泥等の燃料に対して優れた燃焼性能を有するものであり、ごみ焼却施設の発電用蒸気ボイラとして使用されている。
【0003】
従来、この種の循環流動層ボイラとしては、例えば、特開平10−220708号公報(特許文献1)や特開2001−235101号公報(特許文献2)に開示されたものが知られている。
【0004】
図9は従前の循環流動層ボイラの一例を示すものであり、当該循環流動層ボイラは、流動層20a及び燃焼室20bを有する炉本体20と、炉本体20にダクト21を介して接続され、内筒22を有するサイクロン23と、サイクロン23及び炉本体20に接続されたループシール部24等から構成されており、炉本体20とサイクロン23とループシール部24等の構成材(水管壁等)による吸収熱及び煙道に配設した熱交換器等による吸収熱により発電用の高温高圧の過熱蒸気を発生させるようにしたものである。
【0005】
即ち、前記循環流動層ボイラによれば、燃料供給口20cから炉内に供給された燃料は、流動層20a内において流動ノズル(図示省略)から噴出する一次空気により流動砂等の流動媒体Sと撹拌・混合されつつ燃焼する。
【0006】
燃焼により発生した燃焼ガスや飛灰等の焼却残渣は、流動媒体Sと一緒に流動層20aから燃焼室20bへ吹き上げられ、ここで流動媒体Sと撹拌・混合されつつ燃焼室20bに供給される二次空気により燃焼ガスや未燃分を完全燃焼させた後、ダクト21を通してサイクロン23に導入される。
【0007】
サイクロン23に導入された飛灰等を含んだ排ガスGと流動媒体Sは、ここで遠心分離作用により流動媒体Sと、飛灰等を含んだ排ガスGとに分離される。
【0008】
分離された流動媒体Sは、サイクロン23からダウンカマー25、ループシール部24、流動媒体Sの戻し口20dを通して炉本体20の流動層20a内へ戻され、流動媒体Sの持っている保有熱を再利用し、また、飛灰等を含んだ排ガスGは、サイクロン23から煙道を通って熱交換器等で熱を回収され、バグフィルタ等の排ガス処理装置により飛灰等を除去された後、煙突から大気中へ放出される。
【0009】
前記循環流動層ボイラは、炉本体20内を上昇する燃焼ガスと流動媒体Sとの流速差が大きいため、炉内の全域で燃料と流動媒体Sの撹拌・混合が旺盛に行われ、燃焼反応が急速に進行する。その結果、低い空気過剰率でもって燃料を完全燃焼させることができ、未燃焼物損失の減少によるボイラ効率の向上や低空気過剰率による低NOx燃焼が可能となる等の優れた効用を有するものである。
【0010】
ところで、標準的なサイクロンを採用する循環流動層ボイラにおいては、通常炉本体20とサイクロン23とを水平なダクト21で連通状に接続しているが、この場合、低負荷燃焼を行うと、ダクト21内のガス流速が遅くなり、また、ガス温度も低下するため、飛灰や流動媒体Sがダクト21内に堆積・固化し、ダクト21を閉塞し易くなると云う問題があった。この問題は、炉内に投入する燃料を変えた場合にも起こり得る。
また、ダクト21内に飛灰や流動媒体Sが堆積・固化した状態で高負荷燃焼に移行した場合、ダクト21内の開口面積が狭くなっているため、ダクト21内のガス流速が急上昇し、排ガスG中に含まれる流動媒体Sによりサイクロン23の周壁内面に摩耗を生じることになる。
【0011】
尚、循環流動層ボイラにおいて、ダクト内での飛灰等の堆積を抑制するため、特開平11−082968号公報や特開2005−058872号公報のようにダクトを傾斜させたものもある。
しかし、ただ単にダクト全体を傾斜させてサイクロンに接続する場合、ボイラ水管の構造が難しく、燃焼室を形成する炉本体とサイクロンとを一体で構成する必要がある。
また、ダクトの途中に伸縮継手(図示省略)を介設する場合、伸縮継手部分に飛灰や流動媒体が堆積し易く、伸縮継手の能力低下や損傷を引き起こすことがある。
【0012】
更に、水平なダクトを採用する一般的なサイクロンや傾斜ダクトを採用するサイクロンでは、燃焼室との接続位置がサイクロンの横手方向にあり、トラックによる陸送を行う場合にサイクロンの径だけでなく、ダクトによる高さ方向の制約を受けるため、ダクトを分解・組立できる構造にすると共に、ダクトの分割位置を増やす等の対策が必要となる。
【0013】
更に、循環流動層ボイラにおいて、燃焼室とサイクロンのボイラ水管を一体で構成する場合、ボイラの熱伸び差に対応するため、循環流動層ボイラ全体を囲う形で支柱を構築し、最上部の梁から循環流動層ボイラ全体を吊り下げる構造とするが、循環流動層ボイラ自体は高さが20m〜40mになる重量物であり、非常に大掛かりな支柱が必要になる。
また、循環流動層ボイラを吊り下げ構造とした場合、循環流動層ボイラ全体を囲う支柱を構築した後、更に上部から吊り下げて設置する必要があるため、その据付工事に超大型のクレーンを必要とし、据付工事費が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平10−220708号公報
【特許文献2】特開2001−235101号公報
【特許文献3】特開平11−082968号公報
【特許文献4】特開2005−058872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、従前の水平なダクトを採用する一般的なサイクロンや傾斜ダクトを採用するサイクロンを用いた循環流動層ボイラにおける上述の如き問題、即ち、(1)低負荷運転でガス流速が低下したときに、飛灰や流動媒体がダクト内に堆積・固化してダクトを閉塞すること、(2)ダクトの途中に伸縮継手を介設した場合、伸縮継手部分に飛灰や流動媒体が堆積すること、(3)循環流動層ボイラを吊り下げ構造としているため、非常に大掛かりな支柱が必要になって材料費や据付工事費が高くなること、等の問題を解決せんとするものであり、その目的は、流動媒体回収器内に排ガス及び流動媒体等を導くダクト等に改良を加えることによって、極低負荷運転を行った場合でも、流動媒体の落下を滑らかに行えると共に、低負荷運転でガス流速が遅い場合でも、ダクト内での飛灰や流動媒体の堆積を抑制することができ、また、据付工事期間の短縮や据付工事費及び材料費の削減を図れるようにした循環流動層ボイラの流動媒体回収器を提供することにる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の請求項1の発明は、流動層及び燃焼室を有する炉本体の燃焼室出口に接続されて構造上最低長さとした水平部及び水平部に下向きに連設された垂直部から成る燃焼室出口ダクトに一基又は複数基接続され、燃焼室出口ダクトから下向きに排出された排ガス、流動媒体、飛灰を受け入れ、重力加速度と遠心加速度によって排ガス及び飛灰と流動媒体とに分離し、排ガス中から流動媒体を回収する循環流動層ボイラの流動媒体回収器において、前記流動媒体回収器は、上端面に排ガス出口を形成した円筒胴部と、円筒胴部の下端部に設けられ、下方へ行くに従って漸次縮径すると共に、下端面に流動媒体出口を形成した円錐部と、燃焼室出口ダクトの垂直部に伸縮継手を介して下向き傾斜姿勢で接続され、円筒胴部にその接線方向に接続された入口ダクトとから成り、前記円筒胴部と入口ダクトを一体で構成したことに特徴がある。
【0017】
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明において、入口ダクトの傾斜角度αを10°〜45°に設定したことに特徴がある。
【0018】
本発明の請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、流動媒体回収器の円筒胴部及び入口ダクトを水管パネル構造とすると共に、円筒胴部の水管と入口ダクトの水管を一体で構成したことに特徴がある。
【0019】
本発明の請求項4の発明は、
請求項1〜3の何れかの発明において、入口ダクトを含まない流動媒体回収器の外形の大きさを2500mm以下に、また、入口ダクトを含む流動媒体回収器の外形の大きさを3800mm以下にそれぞれ設定したことに特徴がある。
【0020】
本発明の請求項5の発明は、
請求項1〜4の何れかの発明において、流動媒体回収器の流動媒体出口に伸縮継手を介してダウンカマーを接続すると共に、流動媒体回収器の排ガス出口に伸縮継手を介して排ガス出口ダクトを接続し、流動媒体回収器を支柱により中間支持構造で自立させたことに特徴がある。
【0021】
本発明の請求項6の発明は、
請求項1〜5の何れかの発明において、入口ダクトに入口ダクト内の底面と平行に且つ底面に近い位置に空気投入ノズルを設け、当該空気投入ノズルから空気若しくは空気と補充用流動媒体、脱硫剤及びクリンカ抑制剤のうちの少なくとも何れか一つとの混合流体を投入するようにしたことに特徴がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、円筒胴部に入口ダクトを下向き傾斜姿勢で接続しているため、極低負荷運転を行った場合でも、流動媒体の落下が滑らかになり、流動媒体回収器の円錐部に流動媒体がまとまって落ちることにより生じる閉塞を回避することができる。
【0023】
本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、燃焼室出口ダクトの垂直部に伸縮継手を介して入口ダクトを接続しているため、低負荷運転でガス流速が遅い場合でも、伸縮継手部分に飛灰や流動媒体が堆積すると云うことがなく、伸縮継手の損傷によるトラブルを回避することができる。
【0024】
本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、円筒胴部に入口ダクトを下向き傾斜姿勢で且つ接線方向に接続し、入口ダクトから排ガス、流動媒体及び飛灰を流動媒体回収器内に下向き傾斜姿勢で且つ接線方向へ導入するようにしているため、流動媒体回収器内で重力加速度と遠心加速度により流動媒体を分離・回収することができ、従来の一般的なサイクロンで使用している内筒が不要になり、設備費の削減や内筒の変形、脱落、閉塞等のトラブルを回避することができる。
【0025】
本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、円筒胴部と入口ダクトとを一体で構成しているため、据付工事期間の大幅な短縮が可能となる。
【0026】
本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、円筒胴部及び入口ダクトを水管パネル構造とすると共に、円筒胴部の水管(ボイラ水管)と入口ダクトの水管(ボイラ水管)を一体で構成しているため、現地での工事において水管の溶接工数を低減でき、据付工事期間をより短縮できる。
【0027】
本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、燃焼室出口ダクトの垂直部に伸縮継手を介して入口ダクトを接続し、流動媒体回収器の流動媒体出口に伸縮継手を介してダウンカマーを接続すると共に、流動媒体回収器の排ガス出口に伸縮継手を介して排ガス出口ダクトを接続し、流動媒体回収器を支柱により中間支持構造で自立させているため、燃焼室を有する炉本体も支柱による中間支持構造で自立させることができ、循環流動層ボイラ全体を囲う支柱類が不要となり、支柱類を簡素化できて材料費や据付工事費を大幅に削減できると共に、工期も短縮することができる。
【0028】
本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、入口ダクトに入口ダクト内の底面と平行に且つ底面に近い位置に空気投入ノズルを設け、当該空気投入ノズルから空気を投入するようにしているため、未燃分を流動媒体回収器内で完全燃焼させることができると共に、入口ダクト内への飛灰等の堆積を防止することができる。
また、本発明の循環流動層ボイラの流動媒体回収器は、空気投入ノズルから空気と一緒に補充用流動媒体や脱硫剤、クリンカ抑制剤を投入しているため、燃焼室に直接投入することによる炉内温度の低下を抑制することができるうえ、補充用流動媒体や脱硫剤等の研磨効果により入口ダクト内をクリーニングすることができ、入口ダクトの閉塞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る流動媒体回収器を組み込んだ循環流動層ボイラの概略正面図である。
【
図2】同じく循環流動層ボイラの概略平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る流動媒体回収器を示し、(A)は流動媒体回収器の概略正面図、(B)はその概略平面図である。
【
図4】
図3に示す流動媒体回収器を示し、(A)は流動媒体回収器の概略右側面図、(B)はその概略平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る流動媒体回収器を複数基用い、各流動媒体回収器を複数の燃焼室出口ダクトを介してそれぞれ炉本体に接続した循環流動層ボイラの概略正面図である。
【
図6】
図5に示す循環流動層ボイラの概略平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る流動媒体回収器を複数基用い、複数基の流動媒体回収器を一つの燃焼室出口ダクトを介して炉本体に接続した循環流動層ボイラの概略縦断面図である。
【
図8】
図7に示す循環流動層ボイラの概略平面図である。
【
図9】従来の循環流動層ボイラの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び
図2は本発明の実施形態に係る流動媒体回収器4を組み込んだ循環流動層ボイラを示し、当該循環流動層ボイラは、流動層1a及び燃焼室1bを有する炉本体1と、炉本体1に燃焼室出口ダクト2及び伸縮継手3を介して接続された円筒状の流動媒体回収器4と、流動媒体回収器4にダウンカマー5を介して接続されたループシール部6と、ループシール部6と炉本体1を接続する循環用ダクト7等から構成されており、炉本体1等の構成材(水管パネル等)による吸収熱及び煙道に配設した熱交換器等による吸収熱により発電用の高温高圧の過熱蒸気を発生させるようにしたものである。
【0031】
具体的には、前記炉本体1は、隣接する水管相互間をヒレ板を介して気密状に連結して成る水管パネルにより横断面形状が四角形に形成されており、その内部には、一次空気を吹き込む複数の流動ノズル(図示省略)を配設した流動層1aと、二次空気が吹き込まれる燃焼室1bとが設けられている。この炉本体1を形成する水管パネルの外面は、断熱材及び鋼板製のケーシングで覆われている
また、炉本体1の側壁の上部位置には、炉内の燃焼ガス及び吹き上げられた飛灰、流動媒体Sを排出する燃焼室出口1cが形成されていると共に、炉本体1の側壁の下部位置には、排ガスGから分離された流動媒体Sの戻し口1dが形成されている。
【0032】
尚、水管パネルの流動層1aに対向する部分の内面には、耐火煉瓦やキャスタブル耐火物等の耐火物が内張りされており、流動化している流動媒体Sによる水管パネルの摩耗が防止されている。
また、水管パネルの燃焼室1bに対向する部分は、裸管状態としても良く、或いは耐摩耗性の金属を溶射して保護皮膜を形成し、この保護皮膜により水管パネルを保護するようにしても良い。
【0033】
上記の実施形態においては、炉本体1を水管パネル構造としたが、他の実施形態においては、炉本体1を、ケーシング内に耐火物を内張りして成る耐火物壁構造としても良い。
また、上記の実施形態においては、炉本体1の横断面形状を四角形としたが、他の実施形態においては、炉本体1の横断面形状を円形としても良い。
【0034】
前記燃焼室出口ダクト2は、四角筒状に形成されて水管パネル構造又は耐火物構造に構成されており、炉本体1の燃焼室出口1cに接続され、構造上最低長さとした四角筒状の水平部2aと、水平部2aに90°下向きに連設された四角筒状の垂直部2bとから成る。
また、燃焼室出口ダクト2は、水平部2aの底壁を燃焼室1bに対して下り傾斜状に傾斜させた状態で炉本体1の燃焼室出口1cに接続されており、水平部2aの底壁の水平部2a分が構造上最低長さとなるように形成されている。
更に、燃焼室出口ダクト2の垂直部2bの上端部には、流動砂等の補充用流動媒体、脱硫剤(石灰石やドロマイト等)及び粉末状のクリンカ抑制剤(Mg、Si、Ca、Al等の化合物)の投入口1cが形成されており、当該投入口1cから自然落下により補充用流動媒体、脱硫剤又はクリンカ抑制剤のうちの何れか一つ又は二つ以上を同時に投入することができるようになっている。
【0035】
前記流動媒体回収器4は、
図3及び
図4に示す如く、上端面にフランジ構造の排ガス出口4aを形成した円筒胴部4Aと、円筒胴部4Aの下端部に設けられ、下方へ行くに従って漸次縮径すると共に、下端面にフランジ構造の流動媒体出口4bを形成した円錐部4Bと、燃焼室出口ダクト2の垂直部2bに伸縮継手3を介して下向き傾斜姿勢で接続され、円筒胴部4Aにその接線方向に接続された入口ダクト4Cとから成り、前記円筒胴部4Aと入口ダクト4Cを一体で構成したものである。
【0036】
具体的には、円筒胴部4Aは、隣接する水管相互間をヒレ板を介して気密状に連結して成る横断面形状が円形の水管パネル構造に構成されており、上端面の中央部には、フランジ構造の排ガス出口4aが形成されている。
この円筒胴部4Aは、その高さが比較的高い高さに形成されており、円筒銅部内で排ガスGと流動媒体Sの分離が行われるようになっている。そのため、円筒銅部内には、従前のサイクロンの内筒に相当する部材は設けられていない。
【0037】
円錐部4Bは、下方へ行くに従って漸次縮径する円錐形状を呈し、鋼板及び耐熱材等の組み合せから成る耐火物構造に構成されており、下端面には、フランジ構造の流動媒体出口4bが形成されている。
この円錐部4Bは、その高さが極めて低い高さに形成されており、流動媒体Sのガイド機能のみを果たし、排ガスGと流動媒体Sの分離機能を全く有しないものである。
【0038】
入口ダクト4Cは、円筒胴部4Aと一体的に構成されており、フランジ構造の排ガス入口4cを有する四角筒状の垂直部4C′と、垂直部4C′の下端に連設されて円筒胴部4Aに下向き傾斜姿勢で且つ接線方向に接続された四角筒状の傾斜部4C″とから成る。
また、入口ダクト4Cの垂直部4C′は、鋼板及び耐熱材等の組み合せから成る耐火物構造に構成され、一方、入口ダクト4Cの傾斜部4C″は、円筒胴部4Aと同じ水管パネル構造に構成されており、円筒胴部4Aの水管と傾斜部4C″の水管とが一体で構成されている。
更に、入口ダクト4Cの上流側部分には、空気投入ノズル8が一つ又は複数個設けられており、当該空気投入ノズル8から空気若しくは空気と補充用流動媒体S、脱硫剤及びクリンカ抑制剤のうちの少なくとも何れか一つとの混合流体を投入することができるようになっている。この空気投入ノズル8は、入口ダクト4Cの垂直部4C′に傾斜部4C″内の底面と平行に且つ底面に限りなく近い位置に設けられており、傾斜部4C″内の底面に堆積する飛灰や流動媒体Sを吹き飛ばせるようになっている。
【0039】
尚、入口ダクト4Cの傾斜角度αは、入口ダクト4C内の排ガスGの流速及び必要とする流動媒体回収器4の分級性能から適宜に決定されている。
また、入口ダクト4Cの断面積(高さ×幅)は、入口ダクト4C内を流通する排ガスGの流速が所定の値になるように設定されている。
この実施形態においては、入口ダクト4Cの傾斜角度αを10°〜45°に設定し、また、入口ダクト4Cの断面積を入口ダクト4C内の排ガスGの流速が循環流動層ボイラの最大負荷燃焼時で20m/s以下になるように設定すると共に、低負荷燃焼時の下限を設けないようにしている。これらの値は、実機を用いた試験結果から決定されたものである。
【0040】
そして、流動媒体回収器4の排ガス入口4cは、伸縮継手3を介して燃焼室出口ダクト2の垂直部2bに、流動媒体回収器4の流動媒体出口4bは、伸縮継手3を介して水管パネル構造又は耐火物構造の円筒状のダウンカマー5に、流動媒体回収器4の排ガス出口4aは、伸縮継手3を介して円筒状の排ガス出口ダクト9にそれぞれ接続されている。
従って、流動媒体回収器4は、入口ダクト4C、ダウンカマー5及び排ガス出口ダクト9に伸縮継手3をそれぞれ介設することによって、炉本体1とは別に複数本の支柱10による中間支持構造で自立させることができる。これに伴って、炉本体1も、複数本の支柱10による中間支持構造で自立させることができる。
【0041】
尚、流動媒体回収器4の高さ及び直径は、循環流動層ボイラの容量に応じて適宜に選定されていることは勿論である。
また、流動媒体回収器4の外形の大きさは、トラックによる搬送に支障を来たさない程度に設定されている。
この実施形態においては、入口ダクト4Cを含まない流動媒体回収器4の外形の大きさは2500mm以下に、また、入口ダクト4Cを含む流動媒体回収器4の外形の大きさは3800mm以下にそれぞれ設定されている(
図4参照)。
【0042】
前記ループシール部6は、その内部に仕切壁6aと溢流部6bを備えたトラップ構造のボックス状の水管パネル構造又は耐火物壁構造に構成されており、流動媒体回収器4の円錐部4Bにダウンカマー5を介して接続されていると共に、炉本体1の戻し口1dに水管パネル構造又は耐火物構造の循環用ダクト7を介して接続され、炉本体1内と流動媒体回収器4内とをシールしつつ分離回収した流動媒体Sを炉本体1内の流動層1aへ戻すようにしたものである。
また、ループシール部6内には、その底部から流動化空気が供給されており、これによりループシール部6内にも流動層1aが形成されている。
【0043】
而して、上述した循環流動層ボイラによれば、燃料供給口(図示省略)から炉内に供給されたバイオマスや石炭等の燃料は、流動層1a内において炉本体1内の底部に配設した流動ノズル(図示省略)から噴出する一次空気により流動砂等の流動媒体Sと撹拌・混合されつつ燃焼する。
【0044】
燃焼により発生した燃焼ガスや飛灰等の焼却残渣は、流動媒体Sと一緒に流動層1aから燃焼室1bへ吹き上げられ、ここで流動媒体Sと撹拌・混合されつつ燃焼室1bに供給される二次空気により燃焼ガスや未燃分を完全燃焼させた後、燃焼室出口ダクト2、伸縮継手3及び入口ダクト4Cを通して流動媒体回収器4に導入される。
【0045】
このとき、燃焼室出口ダクト2の水平部2aの長さを構造上最低長さに設定しているため、燃焼負荷変動時や燃料変化時に燃焼室出口ダクト2内のガス流速が低下しても、飛灰や流動媒体Sが燃焼室出口ダクト2内に堆積・固化するのを抑制することができる。
また、流動媒体回収器4に入口ダクト4Cを下向き傾斜姿勢で接続しているため、極低負荷運転を行った場合でも、流動媒体Sの落下が滑らかになる。
更に、燃焼室出口ダクト2の垂直部2bに伸縮継手3を介して入口ダクト4Cを接続しているため、低負荷運転でガス流速が遅い場合でも、伸縮継手3部分に飛灰や流動媒体Sが堆積すると云うことがない。
【0046】
流動媒体回収器4に導入された飛灰等を含んだ排ガスGと流動媒体Sは、ここで流動媒体Sと、飛灰等を含んだ排ガスGとに分離される。即ち、流動媒体回収器4内では、排ガスG及び流動媒体S等が流動媒体回収器4内に下向き傾斜姿勢で且つ接線方向へ導入されているため、重力加速度とサイクロンと同様の遠心加速度によって、粒子径が大きくて重たい流動媒体Sは流動媒体回収器4の下方へ、また、軽い排ガスGと粒子径が小さくて軽い飛灰は流動媒体回収器4の上方へ分けられる。
【0047】
この流動媒体回収器4においては、重力加速度と遠心加速度により流動媒体Sを分離・回収することができるため、従来の一般的なサイクロンで使用している内筒が不要になり、設備費の削減や内筒の変形、脱落、閉塞等のトラブルを回避することができる。
【0048】
分離された流動媒体Sは、流動媒体回収器4からダウンカマー5、ループシール部6、循環用ダクト7通して炉本体1の流動層1a内へ戻され、流動媒体Sの持っている保有熱を再利用される。
また、分離された飛灰等を含んだ排ガスGは、流動媒体回収器4の排ガス出口ダクト9から煙道を通って熱交換器等で熱を回収され、バグフィルタ等の排ガス処理装置により飛灰等を除去された後、煙突から大気中へ放出される。
【0049】
尚、循環流動層ボイラの運転中においては、燃焼室出口ダクト2の垂直部2bの上端に設けた投入口1cから自然落下により補充用流動媒体S、脱硫剤又はクリンカ抑制剤のうちの何れか一つ又は二つ以上を同時に投入している。また、入口ダクト4Cに設けた空気投入ノズル8からも、空気若しくは空気と補充用流動媒体、脱硫剤及びクリンカ抑制剤のうちの少なくとも何れか一つとの混合流体を投入している。
【0050】
その結果、補充用流動媒体や脱硫剤等を燃焼室1bに直接投入することによる炉内温度の低下を抑制することができるうえ、補充用流動媒体や脱硫剤等の研磨効果により燃焼室出口ダクト2内や入口ダクト4C内をクリーニングすることができ、燃焼室出口ダクト2や入口ダクト4Cの閉塞を防止することができる。
また、空気投入ノズル8から投入される空気により未燃分を流動媒体回収器4内で完全燃焼させることができると共に、入口ダクト4C内への飛灰等の堆積を防止することができる。
【0051】
このように、上述した循環流動層ボイラにおいては、炉本体1の燃焼室出口1cに接続された燃焼室出口ダクト2の垂直部2bに流動媒体回収器4の傾斜状の入口ダクト4を接続すると共に、燃焼室出口ダクト2の水平部2aの長さを構造上最低長さに設定しているため、燃焼負荷変動時や燃料変化時のガス流速低下によるダクト内(燃焼出口ダクト、伸縮継手3及び入口ダクト4C)での飛灰や流動媒体Sの堆積を抑制することができ、その結果、多種類の燃料を切り替えて単独燃焼若しくは混合燃焼させても、広い燃焼範囲(高ターンダウン)で安定した運転を行えると共に、低負荷運転も可能になる。
【0052】
また、この循環流動層ボイラに用いる流動媒体回収器4は、入口ダクト4Cを円筒胴部4Aに下向き傾斜姿勢で接続すると共に、燃焼室出口ダクト2の垂直部2bに伸縮継手3を介して接続しているため、極低負荷運転を行った場合でも、流動媒体Sの落下が滑らかになり、流動媒体回収器4の円錐部4Bに流動媒体Sがまとまって落ちることにより生じる閉塞を回避することができるうえ、低負荷運転でガス流速が遅い場合でも、伸縮継手3部分に飛灰や流動媒体Sが堆積すると云うことがなく、伸縮継手3の損傷によるトラブルを回避することができる。
【0053】
更に、この循環流動層ボイラの流動媒体回収器4は、円筒胴部4Aと入口ダクト4Cとを一体構造とすると共に、円筒胴部4A及び入口ダクト4Cを水管パネル構造とし、円筒胴部4Aの水管(ボイラ水管)と入口ダクト4Cの水管(ボイラ水管)を一体化しているため、据付工事期間の大幅な短縮が可能となると共に、現地での工事において水管の溶接工数を低減でき、据付工事期間をより短縮できる。。
【0054】
そのうえ、この循環流動層ボイラの流動媒体回収器4は、燃焼室出口ダクト2の垂直部2bに伸縮継手3を介して入口ダクト4Cを接続し、また、流動媒体回収器4の流動媒体出口4bに伸縮継手3を介してダウンカマー5を接続すると共に、流動媒体回収器4の排ガス出口4aに伸縮継手3を介して排ガス出口ダクト9を接続し、更に、流動媒体回収器4を支柱10により中間支持構造で自立させているため、燃焼室1bを有する炉本体1も支柱10による中間支持構造で自立させることができ、循環流動層ボイラ全体を囲う支柱10類が不要となり、支柱10類を簡素化できて材料費や据付工事費を大幅に削減できると共に、工期も短縮することができる。
【0055】
図5及び
図6は本発明の実施形態に係る流動媒体回収器4を二基用い、各流動媒体回収器4を二つの燃焼室出口ダクト2を介してそれぞれ炉本体1に接続したボイラ規模の大きな循環流動層ボイラを示し、当該循環流動層ボイラは、流動層1a及び燃焼室1bを有する炉本体1と、炉本体1に燃焼室出口ダクト2及び伸縮継手3を介してそれぞれ接続された二基の円筒状の流動媒体回収器4と、各流動媒体回収器4にダウンカマー5を介してそれぞれ接続された二つのループシール部6と、各ループシール部6と炉本体1を接続する循環用ダクト7等から構成されている。
【0056】
図7及び
図8は本発明の実施形態に係る流動媒体回収器4を二基用い、二基の流動媒体回収器4を一つの燃焼室出口ダクト2を介して炉本体1に接続したボイラ規模の大きな循環流動層ボイラを示し、当該循環流動層ボイラは、流動層1a及び燃焼室1bを有する炉本体1と、炉本体1に燃焼室出口ダクト2及び伸縮継手3を介して接続された円筒状の流動媒体回収器4と、流動媒体回収器4にダウンカマー5を介して接続されたループシール部6と、ループシール部6と炉本体1を接続する循環用ダクト7等から構成されている。
【0057】
図5〜
図8に示す循環流動層ボイラは、ボイラ規模に応じて流動媒体回収器4を二基用いたものであり、その他の構成は
図1及び
図2に示す循環流動層ボイラと同様構造に構成されているため、
図1及び
図2に示す循環流動層ボイラと同じ部位・部材には同一の参照番号を付し、その詳細な説明を省略する。
この大型の循環流動層ボイラ及びこれに用いる流動媒体回収器4も、
図1及び
図2に示す循環流動層ボイラ及び流動媒体回収器4と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0058】
1は炉本体、1aは流動層、1bは燃焼室、1cは燃焼室出口、1dは戻し口、2は燃焼室出口ダクト、2aは水平部、2bは垂直部、2cは投入口、3は伸縮継手、4は流動媒体回収器、4Aは円筒胴部、4aは排ガス出口、4Bは円錐部、4bは流動媒体出口、4Cは入口ダクト、4C′は垂直部、4C″は傾斜部、4cは排ガス入口、5はダウンカマー、6はループシール部、6aは仕切壁、6bは溢流部、7は循環用ダクト、8は空気投入ノズル、9は排ガス出口ダクト、10は支柱、Gは排ガス、Sは流動媒体、αは傾斜角度。