特許第6202572号(P6202572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202572
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】半導体レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/18 20060101AFI20170914BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20170914BHJP
   H01S 5/12 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01S5/18
   H01S5/022
   H01S5/12
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-21447(P2014-21447)
(22)【出願日】2014年2月6日
(65)【公開番号】特開2015-149403(P2015-149403A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明佳
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 剛孝
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 和義
(72)【発明者】
【氏名】杉山 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】野田 進
【審査官】 高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−134259(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/118358(WO,A1)
【文献】 Yoshitaka Kurosaka et al.,Effects of non-lasing band in two-dimensional photonic-crystal lasers clarified using omnidirectiona,Optics Express,米国,Optical Society of America,2012年 9月 7日,Vol. 20, Issue 19,21773-21783
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面発光レーザ素子と、
モニタ用光検出素子と、
格納容器と、
を備え、
前記格納容器は、上壁と底壁とを備え、
前記格納容器は、前記面発光レーザ素子と前記モニタ用光検出素子とを格納し、
前記上壁は、開口を備え、前記底壁と対向し、
前記面発光レーザ素子は、主面と光出射領域と二次元フォトニック結晶層とを備え、前記底壁に設けられ、主ビームと副ビームとを前記光出射領域から出射し、前記主ビームが前記開口を通るように配置され、
前記光出射領域は、前記主面に設けられ、
前記主ビームの第1光軸は、前記主面の垂直方向に沿って延び、
前記副ビームの第2光軸は、前記垂直方向との間で予め定められた角度αを成し、
前記二次元フォトニック結晶層は、複数の孔部を備え、前記主面に沿って延び、
前記複数の孔部は、同一の形状を備え、前記主面に並行に複数の配列方向に沿って格子状に配列され、回折格子を構成し、
前記モニタ用光検出素子は、前記上壁に設けられ、前記第2光軸と前記上壁とが交わる箇所に配置され、
前記モニタ用光検出素子は、光入射面を備え、
前記光入射面は、前記第2光軸と交差し、
前記第1光軸と前記第2光軸とは、基準方向と同一の面にあり、
前記基準方向は、前記複数の配列方向のうち、隣接の格子間隔が最も短い配列方向であり、
前記面発光レーザ素子の駆動電流の増加に伴って、前記主ビームのピーク光強度と前記副ビームのピーク光強度とは共に単調増加し、前記主ビームのピーク光強度と前記副ビームのピーク光強度のうち、一方の値を決めると他方の値を一意的に決めることができる、
半導体レーザモジュール。
【請求項2】
駆動装置と表示装置とを更に備え、
前記駆動装置は、前記面発光レーザ素子に接続され、前記駆動電流を前記面発光レーザ素子に出力し、
前記表示装置は、前記モニタ用光検出素子に接続され、前記モニタ用光検出素子から出力される光強度信号の内容を表示する、
請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項3】
駆動装置と制御装置とを更に備え、
前記駆動装置は、前記面発光レーザ素子に接続され、前記駆動電流を前記面発光レーザ素子に出力し、
前記制御装置は、前記モニタ用光検出素子と前記駆動装置とに接続され、前記モニタ用光検出素子から出力される光強度信号に基づいて前記駆動装置の制御信号を前記駆動装置に出力する、
請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項4】
前記回折格子が正方格子の場合、前記回折格子の格子間隔は、前記面発光レーザ素子の発振波長と略一致しており、前記面発光レーザ素子は、正方格子に由来する四つの光バンドのうち長波長側から2番目の光バンドで発振する、請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項5】
前記面発光レーザ素子は、活性層を備え、
前記孔部の底面の形状は、直角三角形であり、
前記孔部は、前記回折格子の母材の屈折率とは異なった屈折率を備え、
前記活性層の発光によって前記回折格子に生じる光の定在波の電磁界の節は、前記孔部の直角三角形の重心と、略同じ位置にあり、
前記電磁界における磁界の強度の極値は、前記孔部の周囲に存在する、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の半導体レーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2次元フォトニック結晶面発光レーザを開示する。この2次元フォトニック結晶面発光レーザでは、キャリアの注入により発光する活性層12(第1媒質)と、この活性層12又はその近傍に、屈折率の異なる第2媒質からなるフォトニック結晶周期構造体21とを、2次元の周期で配列されている。フォトニック結晶20の格子構造は、正方格子又は直交格子であり、並進対称性を備えるが回転対称性を備えていない。あるいは、フォトニック結晶20の格子構造は、正方格子又は直交格子であり、2次元文様の分類方法でp1、pm、pg又はcmのいずれかである。格子点の形状は、ほぼ三角形であることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4484134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の2次元フォトニック結晶面発光レーザにおいて、主ビームの光強度をモニタするためには、面発光されたレーザビームの一部を分岐することが考えられる。しかしながら、レーザビームの一部を分岐すると、2次元フォトニック結晶面発光レーザの光強度が低下し、よって、ビーム品質も低下する。そこで、本発明の目的は、上記の事項を鑑みてなされたものであり、主ビームの光強度を低下させずに主ビームの光強度のモニタが可能な面発光レーザを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
PCSEL(Photonic Crystal Surface Emitting Laser:フォトニック結晶面発光レーザ)は、面発光型レーザであり、この面発光型レーザの光出射面の垂直方向に1度未満のビーム拡がり角の単峰ビーム(主ビーム)が光出力として得られるという特徴を有する。発明者は、様々なタイプのPCSELの研究を進めるなかで、デバイス面の垂直方向への主ビームに加えて、PCSELの光出射面の上部から見て例えば互いに90度の角度を成す斜め四方向(或いは、PCSELの光出射面の上部から見て互いに180度の角度を成す斜め二方向)に微弱な副ビームが得られる構成を見い出した。発明者は、この斜め方向の副ビームが得られる物理的要因につき鋭意研究を進めた結果、面発光型レーザの光出射面の垂直方向に主ビームが回折する際に、PCSELの共振器であるフォトニック結晶によってこの主ビームの一部がフォトニック結晶の分散関係を反映した回折を受けた結果、斜め方向に副ビームが得られている、ということを見出した。さらに、発明者は、鋭意検討を進めた結果、面発光型レーザに印加する電流を変化させた場合の主ビームのピーク光強度と副ビームのピーク光強度とを比較すると、両者は互いに単調増加しており、一方を決めると他方を一意に決めることが可能となっていることが分かった。すなわち、予め両者の関係を測定しておくことによって、副ビームのピーク光強度が分かれば、主ビームのピーク光強度を推定することが可能となる。従って、副ビームのピーク光強度を測る手段を用いれば、主ビームの光量を損なうことなく主ビームのピーク光強度を推定ことが出来る。
【0006】
本発明の第一の側面に係る半導体レーザモジュールは、上記のような考察に基づいて成されたものであり、面発光レーザ素子と、モニタ用光検出素子と、格納容器と、を備え、前記格納容器は、上壁と底壁とを備え、前記格納容器は、前記面発光レーザ素子と前記モニタ用光検出素子とを格納し、前記上壁は、開口を備え、前記底壁と対向し、前記面発光レーザ素子は、主面と光出射領域と二次元フォトニック結晶層とを備え、前記底壁に設けられ、主ビームと副ビームとを前記光出射領域から出射し、前記主ビームが前記開口を通るように配置され、前記光出射領域は、前記主面に設けられ、前記主ビームの第1光軸は、前記主面の垂直方向に沿って延び、前記副ビームの第2光軸は、前記垂直方向との間で予め定められた角度αを成し、前記二次元フォトニック結晶層は、複数の孔部を備え、前記主面に沿って延び、前記複数の孔部は、同一の形状を備え、前記主面に並行に複数の配列方向に沿って格子状に配列され、回折格子を構成し、前記モニタ用光検出素子は、前記上壁に設けられ、前記第2光軸と前記上壁とが交わる箇所に配置され、前記モニタ用光検出素子は、光入射面を備え、前記光入射面は、前記第2光軸と交差し、前記第1光軸と前記第2光軸とは、基準方向と同一の面にあり、前記基準方向は、前記複数の配列方向のうち、隣接の格子間隔が最も短い配列方向であり、前記面発光レーザ素子の駆動電流の増加に伴って、前記主ビームのピーク光強度と前記副ビームのピーク光強度とは共に単調増加し、前記主ビームのピーク光強度と前記副ビームのピーク光強度のうち、一方の値を決めると他方の値を一意的に決めることができる。面発光レーザ素子は、単峰ビームに対応する主ビームと、微弱光に対応する副ビームとを出力し、モニタ用光検出素子が、副ビームの光強度を検出するので、このモニタ用光検出素子の出力を用いれば、副ビームを、主ビームの光強度のモニタに用いることができるので、主ビームの光量を損なうことなく、主ビームのピーク光強度を推定することが出来る。
【0007】
本発明の第2の側面に係る半導体レーザモジュールでは、第1の側面に係る半導体レーザモジュールに対し、駆動装置と表示装置とを更に備え、前記駆動装置は、前記面発光レーザ素子に接続され、前記駆動電流を前記面発光レーザ素子に出力し、前記表示装置は、前記モニタ用光検出素子に接続され、前記モニタ用光検出素子から出力される光強度信号の内容を表示する。表示装置が副ビームの光強度を表示できるので、半導体レーザモジュールの操作者は、表示装置の表示内容を参照しながら、面発光レーザ素子に対する駆動信号(面発光レーザ素子の駆動電流)の制御を駆動装置によって行うことができる。
【0008】
本発明の第3の側面に係る半導体レーザモジュールでは、第1の側面に係る半導体レーザモジュールに対し、駆動装置と制御装置とを更に備え、前記駆動装置は、前記面発光レーザ素子に接続され、前記駆動電流を前記面発光レーザ素子に出力し、前記制御装置は、前記モニタ用光検出素子と前記駆動装置とに接続され、前記モニタ用光検出素子から出力される光強度信号に基づいて前記駆動装置の制御信号を前記駆動装置に出力する。制御回路は、副ビームの光強度に基づいて、駆動装置の動作を制御できるので、面発光レーザ素子に対する駆動信号(面発光レーザ素子の駆動電流)が、副ビームの光強度に基づいて、自動的に好適に行える。
【0009】
本発明の第4の側面に係る半導体レーザモジュールでは、前記回折格子が正方格子の場合、前記回折格子の格子間隔は、前記面発光レーザ素子の発振波長と略一致しており、前記面発光レーザ素子は、正方格子に由来する四つの光バンドのうち長波長側から2番目の光バンドで発振する。このように、回折格子が正方格子の場合、正方格子に由来する四つの光バンドのうち長波長側から2番目の光バンドで発振する。
【0010】
本発明の第5の側面に係る半導体レーザモジュールでは、前記面発光レーザ素子は、活性層を備え、前記孔部の底面の形状は、直角三角形であり、前記孔部は、前記回折格子の母材の屈折率とは異なった屈折率を備える。このとき、例えば回折格子が正方格子の場合、正方格子に由来する四つの光バンドのうち長波長側から2番目の光バンドにおいて発振が生じ、上記の第1の側面に係る面発光レーザ素子は主ビームと副ビームとを出力できる。この場合、前記活性層の発光によって前記回折格子に生じる光の定在波の電磁界の節は、前記孔部の直角三角形の重心と、略同じ位置にあり、前記電磁界における磁界の強度の極値は、前記孔部の周囲に存在する、という特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主ビームの光強度を低下させずに主ビームの光強度のモニタが可能な面発光レーザを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る面発光レーザ素子の構成を概略的に示す図である。
図2】実施形態に係る面発光レーザ素子の回折格子の構成の一例を説明するための図である。
図3】実施形態に係る面発光レーザ素子の回折格子の構成他の一例を説明するための図である。
図4】実施形態に係る面発光レーザ素子の主ビームを説明するための測定図である。
図5】実施形態に係る面発光レーザ素子の主ビームを説明するための測定図である。
図6】実施形態に係る面発光レーザ素子の副ビームを説明するための測定図である。
図7】実施形態に係る面発光レーザ素子の副ビームを説明するための測定図である。
図8】実施形態に係る面発光レーザ素子において、主ビームのピーク光強度と副ビームのピーク光強度との相関を示す図である。
図9】実施形態に係る半導体レーザモジュールの構成の一例を概略的に示す図である。
図10】実施形態に係る半導体レーザモジュールの構成の一例を概略的に示す図である。
図11】実施形態に係る面発光レーザ素子の製造方法の主要な工程を説明するための図である。
図12】実施形態に係る面発光レーザ素子の製造方法の主要な工程を説明するための図である。
図13】実施形態に係る面発光レーザ素子の回折格子が正方格子であり格子点が直角三角形の平面形状の孔である場合に、この回折格子によって生じる電磁界を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において、可能な場合には、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1図5を参照して、実施形態に係る半導体レーザモジュール100の構成と面発光レーザ素子1の構成とを説明する。図1には、x軸、y軸、z軸からなる直交座標系が示されている。x軸、y軸、z軸と面発光レーザ素子1(特に、回折格子6ba、孔部6b)との配置は、図1〜5において、同様とする。
【0014】
面発光レーザ素子1は、再成長型のPCSEL(Photonic Crystal Surface Emitting Laser:フォトニック結晶面発光レーザ)である。面発光レーザ素子1は、半導体積層1a、ARコート9a(Anti Reflective:無反射)、n側電極9、p側電極10、絶縁膜11を備える。半導体積層1aの材料は、例えば、GaAsを含むIII−V族半導体である。半導体積層1aは、支持基体2、積層1b1、二次元フォトニック結晶層6、積層1b2を備える。積層1b1は、n型クラッド層3、活性層4、電子ブロック層5を備える。積層1b2は、p型クラッド層7、コンタクト層8を備える。積層1b1は、支持基体2の主面2aに設けられている。積層1b2は、二次元フォトニック結晶層6の上に設けられている。二次元フォトニック結晶層6は、積層1b1と積層1b2との間に設けられている。n側電極9は、面発光レーザ素子1の主面1a2に設けられている。
【0015】
面発光レーザ素子1の主面1a2は、主面2aの反対側にある支持基体2の表面であり、面発光レーザ素子1の表面1a1の反対側にある。n側電極9は、主面1a2に接触する。n側電極9は、開口9bを囲むような形状を備える。n側電極9は、開口9bを画定する。開口9bは、主面1a2の中心部を含む。ARコート9aは、主面1a2に設けられている。ARコート9aは、平面視で、主面1a2のうちn側電極9を除く領域に設けられている。ARコート9aは、主面1a2に接触する。p側電極10は、半導体積層1aの表面1a1(コンタクト層8の表面)に、設けられている。
【0016】
面発光レーザ素子1は、光出射領域R1を備える。光出射領域R1は、主面1a2に設けられている。光出射領域R1は、開口9bに形成される。面発光レーザ素子1は、主ビームL1と副ビームL2とを光出射領域R1から出射する。主ビームL1の第1光軸A2は、主面1a2の垂直方向に沿って延び、副ビームL2の第2光軸A3は、主面1a2の垂直方向(或いは、第1光軸A2)との間で予め定められた角度αを成す。n側電極9とp側電極10とに電圧を印可し、半導体積層1aに電流を流すと、主面1a2の上方向に、主ビームL1と、副ビームL2とが、光出射領域R1から出力される。
【0017】
n型クラッド層3、活性層4、電子ブロック層5、二次元フォトニック結晶層6、p型クラッド層7、コンタクト層8は、主面2aから、z軸方向と逆向き(主面2aの法線方向)に、順に、エピタキシャル成長によって、積層されている。支持基体2、n型クラッド層3、活性層4、電子ブロック層5、二次元フォトニック結晶層6、p型クラッド層7、コンタクト層8は、xy面に沿って延びている。主面1a2(支持基体2の表面)と、主面2aと、二次元フォトニック結晶層6のp側表面6aと、表面1a1(コンタクト層8の表面)とは、xy面に沿って延びている。n型クラッド層3は、支持基体2と活性層4とに接触し、活性層4はn型クラッド層3と電子ブロック層5とに接触し、電子ブロック層5は、活性層4と二次元フォトニック結晶層6とに接触し、二次元フォトニック結晶層6は、電子ブロック層5とp型クラッド層7とに接触し、p型クラッド層7は二次元フォトニック結晶層6とコンタクト層8とに接触する。
【0018】
二次元フォトニック結晶層6は、回折格子6baを備える。回折格子6baは、正方格子配置又は三角格子配置の2次元フォトニック結晶構造を備える。三角格子の場合、単位格子の格子形状は平行四辺形である。回折格子6baの2次元フォトニック結晶構造は、主面1a2に沿って延在する。回折格子6baの2次元フォトニック結晶構造は、2次元(xy面)の結晶構造である。回折格子6baは、二次元フォトニック結晶層6のp側表面6aに設けられる。二次元フォトニック結晶層6の屈折率は、回折格子6baにおいて、主面1a2に沿って延びる方向(xy面内)に周期的に変化する。二次元フォトニック結晶層6は、複数の孔部6bを備える。複数の孔部6bは、同一の形状(略三角柱状、又は、円柱状)を備える。複数の孔部6bは、回折格子6baの母材中において、主面1a2に沿って延びるxy面内の複数の配列方向に周期的に設けられている。すなわち、複数の孔部6bは、回折格子6baの正方格子又は三角格子に沿って配置される。複数の孔部6bは、回折格子6baを構成する。孔部6bは、回折格子6baの格子点に対応する。孔部6bは、回折格子6baの母材の屈折率とは異なった屈折率を備える。複数の孔部6bによって、回折格子6baの屈折率は、同一波長の光において、主面1a2に沿って延びる方向(xy面内)に周期的に変化する。孔部6bは、二次元フォトニック結晶層6のp側表面6aに設けられており、孔部6bの形状(略三角柱状又は円柱状であってもよい)は、孔部6bの底面からp側に向けて(p側表面6aに向けて)延びる。孔部6bの底面の形状と孔部6bの開口(p側表面6aにおける孔部6bの開口)の形状(孔部6bの平面形状)とは、同一の形状を備え、何れも、直角三角形又は円であってもよいが、作製工程において生じる変形は許容するものとする。
【0019】
例えば、回折格子6baが正方格子の場合に、孔部6bの平面形状(孔部6bの底面の形状)が直角三角形(三つの頂点の形状が丸められている)であって、この直角三角形の直角を挟む二辺の縦横比が1.0以上2.0以下であり、フィリングファクタ(単位格子R2の面積に対し、孔部6bの底面の面積の占める割合(%))が10%以上35%以下であり、この直角三角形の三つの頂点の丸みが0.10×La(Laは格子間隔)の程度である場合に、この二次元フォトニック結晶層6の四つの光バンド(後述の図4に示す光バンドB1〜B4)のうち長波長側から2番目のバンド(後述の図4に示すB2)において発振が得られる。このとき、二次元フォトニック結晶層6の発光によって、回折格子6baに生じる光の定在波の電磁界の節(後述の図13に示す電磁界の節R4)は、孔部6bの直角三角形の重心と、略同じ位置にある。この場合、この電磁界における磁界の強度の極値は、孔部6bの周囲に存在する。
【0020】
図13には、回折格子6baが正方格子であり、孔部6bの平面形状(孔部6bの底面の形状)が直角三角形の場合において、単位格子R2に配置された孔部6bと、単位格子R2における電界の向きR3と、単位格子R2における磁界分布M1とが示される。磁界分布M1は、活性層4の発光によって回折格子6baに生じる光の定在波の電磁界に含まれ、磁界の強度の比較的に強い略円形状の領域を示しており、磁界の強度の極値を含む。面発光レーザ素子1の主ビームL1においては、電磁界の節R4は、孔部6bの直角三角形(孔部6bの底面の形状)の重心と、ほぼ同じ位置にある。主ビームL1の場合、磁界分布M1(活性層4の発光によって回折格子6baに生じる電磁界における磁界の強度の極値)は、孔部6bの周囲に存在する。主ビームL1の場合における孔部6bの周囲の電界の電界成分は、孔部6bの底面の直角三角形の斜辺に交差する方向Dr1と、この斜辺に沿って延びる方向Dr2とにおいて、比較的に大きい。
【0021】
支持基体2の材料は、例えば、n型のGaAsである。n型クラッド層3の材料は、例えば、n型のAlGaAsである。n型クラッド層3の厚みは、例えば、2000[nm]程度である。例えば、面発光レーザ素子1の発振波長として980[nm]を想定すると、n型クラッド層3の屈折率は、3.11の程度である。
【0022】
活性層4は、光を発生する。活性層4は、例えば、三つの量子井戸層を備える。活性層4の量子井戸層の材料は、例えば、i型のInGaAsである。活性層4のバリア層の材料は、例えば、i型のAlGaAsである。活性層4は、n型クラッド層3に接するガイド層を備えることができる。この活性層4のガイド層の材料は、例えば、i型のAlGaAsである。活性層4の厚みは、例えば、140[nm]程度である。活性層4の屈折率は、例えば、面発光レーザ素子1の発振波長980[nm]を想定すると、3.49の程度である。
【0023】
電子ブロック層5は、p型の導電型のp型クラッド層7と、活性層4との間にある。電子ブロック層5の材料は、例えば、i型のAlGaAsである。電子ブロック層5は、二次元フォトニック結晶層6に接するガイド層を備えることができる。この電子ブロック層5のガイド層の材料は、例えば、i型のAlGaAsである。電子ブロック層5の厚みは、例えば、35[nm]程度である。電子ブロック層5の屈折率は、例えば、発振波長980[nm]を想定すると、3.33の程度である。
【0024】
二次元フォトニック結晶層6は、p型の導電型のp型クラッド層7と、活性層4との間にある。二次元フォトニック結晶層6は、2次元フォトニック結晶構造の回折格子6baを備える。二次元フォトニック結晶層6は、電子ブロック層5に接するガイド層を更に備える。二次元フォトニック結晶層6の厚みは、例えば、300[nm]程度である。二次元フォトニック結晶層6のガイド層の材料は、例えば、i型のGaAsである。回折格子6baの母材は、例えば、i型のGaAs、i型のAlGaAs等である。回折格子6baは、複数の孔部6b(空洞)を備える。複数の孔部6bは、主面1a2に並行に複数の配列方向に沿って格子状に配列されている。複数の孔部6bは、回折格子6baの母材中において、xy面内において(主面1a2、p側表面6aに沿って)周期的に設けられている。複数の孔部6bによって、回折格子6baの屈折率は、同一波長の光において、主面1a2(p側表面6a)に沿って延びる方向に周期的に変化する。回折格子6baの屈折率は、例えば、面発光レーザ素子1の発振波長980[nm]を想定し、孔部6bを屈折率=1の空洞と仮定し、回折格子6baの表面(p側表面6aに含まれる面領域)に対する孔部6bの面積に応じて各部の誘電率(ここでは屈折率の2乗)を平均化して求めた誘電率の値によって、見積もることができる。孔部6bの深さは、例えば、200[nm]である。二次元フォトニック結晶層6の厚みが300[nm]程度であって孔部6bの深さが300[nm]の場合、二次元フォトニック結晶層6はガイド層を備えない。
【0025】
p型クラッド層7の材料は、例えば、p型のAlGaAsである。p型クラッド層7の厚みは、例えば、2000[nm]程度である。p型クラッド層7の屈折率は、例えば、面発光レーザ素子1の発振波長980[nm]を想定すると、3.27の程度である。p型クラッド層7の導電型とn型クラッド層3の導電型とは、互いに異なる。
【0026】
コンタクト層8の材料は、例えば、p型のGaAsである。コンタクト層8の厚みは、例えば、200[nm]程度である。コンタクト層8の屈折率は、例えば、面発光レーザ素子1の発振波長980[nm]を想定すると、3.52の程度である。
【0027】
n側電極9の材料は、GaAs系の材料の半導体層に設ける電極の材料が利用できる。n側電極9の材料は、例えば、Auなどの金属とGeなどの半導体との混合物であることができる。n側電極は、例えばAuGe、AuGe/Au等であることができる。
【0028】
p側電極10の材料は、GaAs系の材料の半導体層に設ける電極の材料が利用できる。p側電極10の材料は、例えば、Au、Ti、Pt、Crなどの金属であることができる。p側電極10は、例えば、GaAs半導体層側から順番に、Ti/Pt/Au、Ti/Au、Cr/Au等であることができる。p側電極10に接するコンタクト層8は、1×1019[cm−3]以上の高濃度に不純物が添加される。p側電極10は、例えば、正方形の形状で、面積は例えば200×200[μm]の程度である。
【0029】
図2及び図3を参照して、二次元フォトニック結晶層6の回折格子6baの構成を説明する。図2の(A)部及び図3の(A)部は、回折格子6baを、主面1a2の側からみた図である。図2の(B)部は、図2の(A)部に示す回折格子6baの逆格子空間を示し、図3の(B)部は、図3の(A)部に示す回折格子6baの逆格子空間を示す。図2の(B)部及び図3の(B)部には、逆格子点6cが示されている。図2の(A)部及び図3の(A)部に示す孔部6bの形状は、p側表面6aにおける孔部6bの開口(xy面における孔部6bの断面)の形状である。
【0030】
図2の(A)部に示す回折格子6baは、正方格子である。図2の(A)部に示す回折格子6baの単位格子R2の形状は、正方形である。図2の(A)部に示す単位格子R2の配列方向(孔部6bの配列方向)は、Γ−X方向(Γ−Y方向)及びΓ−M方向を含む。一つの単位格子R2に、一つの孔部6bが配置されている。図2の(A)部に示す単位格子R2の正方形の辺の方向は、Γ−X方向(Γ−Y方向)である。図2の(A)部に示す単位格子R2の対角線の方向は、Γ−M方向を含む。図2の(A)部に示すΓ−X方向(Γ−Y方向)は、x軸又はy軸と平行である。図2の(A)部に示す基準方向A1は、Γ−X方向(Γ−Y方向)に平行である。図2の(A)部に示す基準方向A1は、孔部6bの複数の配列方向(Γ−X方向(Γ−Y方向)及びΓ−M方向)のうち、隣接の格子間隔(格子定数)が最も短い配列方向であり、すなわち、図2の(A)部に示す単位格子R2の正方形の辺の方向でありΓ−X方向(Γ−Y方向)である。図2の(A)部の場合、Γ−X方向(Γ−Y方向)において、隣接の格子間隔は、Laである。なお、図2の(A)部の場合、Γ−M方向における隣接の格子間隔は、√2×La(Laを2の平方根で乗じた値)であり、Laより長い。図2の(B)部に示す逆格子点6cは、Γ−X方向(Γ−Y方向)に配置されている。図2の(B)部の場合、Γ−X方向(Γ−Y方向)において、隣接の二つの逆格子点6cの間隔は、2π/Laである。
【0031】
図3の(A)部に示す回折格子6baは、三角格子である。図3の(A)部に示す回折格子6baの単位格子R2の形状は、平行四辺形である。図3の(A)部に示す単位格子R2の配列方向(孔部6bの配列方向)は、Γ−J方向及びΓ−X方向を含む。図3の(A)部に示す単位格子R2の平行四辺形の各頂点に、一つの孔部6bが配置されている。図3の(A)部に示すΓ−J方向、Γ−X方向は、それぞれ、x軸、y軸と平行である。図3の(A)部に示す単位格子R2の平行四辺形の辺の方向は、Γ−J方向である。図3の(A)部に示す単位格子R2の平行四辺形の辺に垂直な方向は、Γ−X方向である。図3の(A)部に示す基準方向A1は、Γ−J方向に平行である。図3の(A)部に示す基準方向A1は、孔部6bの複数の配列方向(Γ−J方向及びΓ−X方向)のうち、隣接の格子間隔が最も短い配列方向であり、すなわち、図3の(A)部に示す単位格子R2の平行四辺形の辺の方向でありΓ−J方向である。図3の(A)部の場合、Γ−J方向において、隣接の格子間隔は、Laである。なお、図3の(A)部の場合、Γ−X方向における隣接の格子間隔は、√3La(Laを3の平方根で乗じた値)であり、Laより長い。図3の(B)部に示す逆格子点6cは、Γ−X方向に配置されている。図3の(B)部の場合、Γ−X方向において、隣接の二つの逆格子点6cの間隔は、2π/(La×sin(π/3))である。
【0032】
次に、面発光レーザ素子1の発光特性について説明する。面発光レーザ素子1は、図2に示すような正方格子の回折格子6baを有する場合、回折格子6baの格子間隔(La)は、面発光レーザ素子1の発振波長に略一致しており、図4に示すように、正方格子に由来する四つの光バンドB1,B2,B3,B4(二次元フォトニック結晶層6の四つの光バンド)を有する。図4は、面発光レーザ素子1の複数の光バンドを示す。図4の横軸は、フォトニック結晶層に沿った方向の波数[2π/La]を表し、図4の縦軸は、波長[nm]を表す。なお、図4図8に示す結果は、図2に示すような正方格子の回折格子6baを有する面発光レーザ素子1についての測定結果であるが、図3に示すような三角格子の回折格子6baを有する面発光レーザ素子1についても、同様の主張が可能である。この場合は、六つの光バンドが存在する。
【0033】
図4に示すように、光バンドB2のΓ−X方向に沿った形状は、Γ点から離れるに従って、一旦、長波長の側へ曲がった後に、再び短波長の側へ曲がっている(下に向けた凸形状を有する)。従って、光バンドB2において、光バンドB2のバンド端(光バンドのΓ点上の部分をバンド端と呼ぶこととする、以下同様。)と周波数の等しい箇所がΓ−X方向の波数0.045「2π/La」付近にも存在していることが分かる。
【0034】
図5に、面発光レーザ素子1の発振前後の分光スペクトルを示す。図5の横軸は、波長[nm]を表し、図5の縦軸(左右)は、光強度を表す。図5に示すピークP1,P2は、面発光レーザ素子1に160[mA]の駆動電流を供給した場合(発振前)のピークであり、図5の縦軸(左)によって規定される。図5に示すピークP21は、面発光レーザ素子1に210[mA]の駆動電流を供給した場合(発振後)のピークであり、図5の縦軸(右)によって規定されている。発振前のピークP2と発振後のピークP21は、共に、光バンドB2のバンド端の波長と同様の波長にあり、発振前のピークP1は、光バンドB1のバンド端の波長と同様の波長にある。このことから、発振は光バンドB2のバンド端から生じていることが分かる。すなわち、正方格子に由来する四つの光バンドB1〜B4のうち長波長側から2番目の光バンドB2で発振する。この面発光レーザ素子1の発振では、光バンドB2のバンド端の波長と同一波長の二つのビーム(主ビームL1及び副ビームL2)が出力される。このとき、主ビームL1は、Γ点、すなわち主面1a2の垂直方向に出射されるビームであり、副ビームL2は、主面1a2の垂直方向(主ビームL1の第1光軸A2)と基準方向A1(すなわちΓ−X方向(Γ−Y方向))とによって規定される面において、主面1a2の垂直方向(或いは、第1光軸A2)に対し角度α(αは、7度以上9度以下であり、例えば8度程度)だけ傾いた方向に出射される微弱なビームである。
【0035】
一例として、Γ−X方向における面発光レーザ素子1の出射光の光強度の測定結果を、図6に示す。図6の横軸は、ビーム方向(主面1a2の垂直方向からの傾き)[度]を表し、図6の縦軸は、光強度を表す。図6によれば、主面1a2の垂直方向から7度以上9度以下(より具体的には8.2度の程度)の方向に微弱なピークP3が存在していることがわかり、このピークP3が、副ビームL2に対応している。
【0036】
次に、副ビームL2の発生原因について考察する。面発光レーザ素子1の光バンドを全方向に渡って測定し、光バンドB2のバンド端と同一の周波数の断面を切り出して得られた結果を、図7に示す。図7の縦軸は、Γ−X方向の波数[2π/La]を表し、図6の横軸は、Γ−Y方向の波数[2π/La]を表す。図7に示す色の濃淡は、光強度を表す。図7は、実測された微弱な副ビームL2のパターンと良く一致しており、光バンドB2のバンド端で発振した主ビームL1が、Γ−X方向およびΓ−Y方向へ伸びる光バンドB2によって回折を受け、微弱な副ビームL2が生じたと考えられる。一般に、正方格子においては光バンドB2は図4に示すように、Γ−X方向およびΓ−Y方向に沿って一旦長波長側に曲がった後に再び短波長側に曲がるため、Γ点以外の部分にバンド端と同一波長の部分が存在する。すなわち、光バンドB2ではΓ−X方向およびΓ−Y方向に沿ったΓ点から離れた部分において、Γ点と同一波長の部分が存在する。従って、光バンドB2のバンド端すなわちΓ点において発振が得られた場合に、Γ−X方向およびΓ−Y方向に沿って微弱光が得られやすいと考えられる。同様に、三角格子の場合には、Γ−J方向に沿って、微弱光が得られ易いと考えられる。
【0037】
ところで、面発光レーザ素子1の駆動電流を変化させて、主面1a2の垂直方向に出射される主ビームL1のピーク光強度(光強度のピーク値)と微弱な副ビームL2のピーク光強度との関係が一意に決まるものであれば、副ビームL2を、主ビームL1のピーク光強度のモニタに用いることが可能となる。このような観点から、面発光レーザ素子1をパルス駆動した場合の主ビームL1のピーク光強度と副ビームL2のピーク光強度との電流依存性を光スペクトルアナライザで測定し、その測定結果を図8に示す。図8の横軸は、駆動電流[mA]を表し、図8の縦軸は、ピーク光強度[dBm]を表す。図8に示すように、面発光レーザ素子1の駆動電流の変化に対する主ビームL1のピーク光強度の変化(グラフK1)と、面発光レーザ素子1の駆動電流の変化に対する副ビームL2のピーク光強度の変化(グラフK2)とが、互いに相関している。より具体的には、主ビームL1のピーク光強度と、副ビームL2のピーク光強度とは、共に、駆動電流の増加に伴って単調増加しており、主ビームL1のピーク光強度と、副ビームL2のピーク光強度との間には一意に決まる関係が認められる。以上は、例としてパルス駆動した場合について説明を行ったが、連続駆動した場合にも同様である。言い換えると、主ビームL1のピーク光強度と副ビームL2のピーク光強度のうち、一方の値(ピーク光強度の値)を決めると他方の値(ピーク光強度の値)を一意的に決めることができる。従って、副ビームL2の第2光軸A3にモニタ用のフォトダイオードを配置し、このモニタ用のフォトダイオードを用いて副ビームL2の光強度を測定することによって、副ビームL2のピーク光強度のモニタ結果に基づいて主ビームL1のピーク光強度のモニタが可能となる。図9及び図10に示す半導体レーザモジュール100,100aは、面発光レーザ素子1の発光特性に対する上記考察に基づいて実現されたものであり、副ビームL2を、主ビームL1のピーク光強度のモニタに用いている。
【0038】
まず、図9に示す半導体レーザモジュール100について説明する。図9に示す半導体レーザモジュール100は、面発光レーザ素子1と、格納容器101と、モニタ用光検出素子101dと、駆動装置102と、表示装置103とを備える。格納容器101は、底壁101aを備える。格納容器101は、上壁101bを備える。格納容器101は、面発光レーザ素子1とモニタ用光検出素子101dとを格納する。上壁101bは、開口101cを備える。上壁101bは、底壁101aと対向する。面発光レーザ素子1は、底壁101aに設けられる。面発光レーザ素子1は、主ビームL1(第1光軸A2)が開口101cを通るように配置されている。
【0039】
モニタ用光検出素子101dは、フォトダイオードである。モニタ用光検出素子101dは、上壁101bに設けられる。モニタ用光検出素子101dは、副ビームL2(第2光軸A3)と上壁101bとが交わる箇所に配置される。モニタ用光検出素子101dは、光入射面101daを備える。光入射面101daは、第2光軸A3と交差する。第1光軸A2と第2光軸A3とは、基準方向A1と同一の面にある。
【0040】
駆動装置102は、面発光レーザ素子1に接続される。駆動装置102は、面発光レーザ素子1を駆動する駆動信号G1を面発光レーザ素子1に出力する。駆動信号G1は、駆動電流である。表示装置103は、モニタ用光検出素子101dに接続されている。表示装置103は、モニタ用光検出素子101dから出力される光強度信号G2の内容(光強度値或いは光強度の分光スペクトル)を表示する。半導体レーザモジュール100の操作者は、表示装置103の表示内容を参照しながら、駆動装置102の動作を操作する。
【0041】
図10に示す半導体レーザモジュール100aは、図9に示す半導体レーザモジュール100の変形例である。半導体レーザモジュール100aは、面発光レーザ素子1と、格納容器101と、モニタ用光検出素子101dと、駆動装置102と、制御装置104とを備える。半導体レーザモジュール100aは、制御装置104を備え、半導体レーザモジュール100の表示装置103を備えない。制御装置104は、モニタ用光検出素子101dと駆動装置102とに接続されている。制御装置104は、モニタ用光検出素子101dから出力される光強度信号G2に基づいて駆動装置102の制御信号G3を駆動装置102に出力する。
【0042】
次に、図11図12とを参照して、面発光レーザ素子1の製造方法を説明する。ステップS1からステップS11までのそれぞれの工程を順次実行することによって、面発光レーザ素子1の構成を備える基板生産物が製造される。ステップS1において、MOCVD法により、第1エピタキシャル層構造20を、成長する。第1エピタキシャル層構造20の層構造は、図12の(A)部に示されている。第1エピタキシャル層構造20は、基板20a(n−GaAs Substrate)、クラッド層20b(n−AlGaAs Cladding layer)、光ガイド層20c(i−AlGaAs Guide layer)、多重量子井戸層20d(i−InGaAs/AlGaAs 3QWs)、電子ブロック層20e(i−AlGaAs Carrier blocking layer)、光ガイド層20f(i−AlGaAs Guide layer)、クラッド層20g(i−GaAs Guide layer)を備える。基板20aは、支持基体2に対応する。クラッド層20bは、n型クラッド層3に対応する。光ガイド層20cと多重量子井戸層20dとから成る層は、活性層4に対応する。電子ブロック層20eと光ガイド層20fとから成る層は、電子ブロック層5に対応する。クラッド層20gは、回折格子6baが形成される層である。第1エピタキシャル層構造20の表面201は、クラッド層20gの表面である。表面201は、p側表面6aに対応する。
【0043】
ステップS2において、第1エピタキシャル層構造20の表面201にレジスト21を塗布する。ステップS3において、電子線描画装置を用いてレジスト21の上にフォトニック結晶パターン22aを露光し、現像液で現像する。この現像によって、レジスト21は、レジスト22になる。レジスト22は、フォトニック結晶パターン22aを備える。
【0044】
ステップS4において、ドライエッチングによって、第1エピタキシャル層構造20の表面201のクラッド層20gに対し、表面201の側から、フォトニック結晶パターン23aを転写する。第1エピタキシャル層構造20は、この転写によって、第2エピタキシャル層構造23になる。第2エピタキシャル層構造23は、フォトニック結晶パターン23aを備える。第2エピタキシャル層構造23においてフォトニック結晶パターン23aの形成されている表面は、図1に示すp側表面6aに対応する。フォトニック結晶パターン23aと、フォトニック結晶パターン22aとは、表面201に直交する方向(z軸方向)から見て、同様のパターンである。フォトニック結晶パターン23aの深さは、クラッド層20gの厚みが、例えば、300[nm]程度の場合、表面201から100〜300[nm]程度、例えば、表面201から100[nm]程度、表面201から200[nm]程度、表面201から300[nm]程度であることができる。ステップS4によって、クラッド層20gは、フォトニック結晶パターン23aを含まないi−GaAs Guide layerと、フォトニック結晶パターン23aを含むi−GaAs Guide layerとから成る層になる。ステップS4によって、第1エピタキシャル層構造20は、第2エピタキシャル層構造23になる。第1エピタキシャル層構造20は、クラッド層20gを備えるのに対し、第2エピタキシャル層構造23は、フォトニック結晶パターン23aを含まないi−GaAs Guide layerと、フォトニック結晶パターン23aを含むi−GaAs Guide layerとから成る層を備え、クラッド層20gを備えない。この相違点のみが、第1エピタキシャル層構造20と第2エピタキシャル層構造23との相違点である。ステップS4の後、ステップS5において、レジスト22を第2エピタキシャル層構造23から剥離する。
【0045】
ステップS6において、一般的な前処理を行った後、図12の(B)部に示す第3エピタキシャル層構造24を、MOCVD法によって、成長する。第3エピタキシャル層構造24は、クラッド層24a(p−AlGaAs Cladding layer)、コンタクト層24b(p−GaAs Contact layer)を備える。クラッド層24aは、第2エピタキシャル層構造23のi−GaAs Guide layerの表面(フォトニック結晶パターン23aが形成されている表面)に成長する。クラッド層24aを成長する工程において、フォトニック結晶パターン23aには、AlGaAsが付着する。第2エピタキシャル層構造23に含まれ、フォトニック結晶パターン23aを含むi−GaAs Guide layerは、クラッド層24aの成長に伴って、Alを含有するフォトニック結晶層20i(i−GaAs/AlGaAs PC layerであり、回折格子6baに対応)になる。このとき、フォトニック結晶層20iの内部には空洞(孔部6bに対応)が形成される。第2エピタキシャル層構造23のフォトニック結晶パターン23aは、クラッド層24aの成長に伴って、AlGaAsと空洞(孔部6bに対応)とを含むフォトニック結晶パターン23a1になる。フォトニック結晶層20iは、フォトニック結晶パターン23a1を含む層である。結局、第1エピタキシャル層構造20のクラッド層20gは、フォトニック結晶パターン23aの転写とクラッド層24aの成長とによって、光ガイド層20h(i−GaAs Guide layer)とフォトニック結晶層20iとから成る層になり、第1エピタキシャル層構造20は、第2エピタキシャル層構造23を経て第4エピタキシャル層構造231になる。第1エピタキシャル層構造20は、クラッド層20gを備えるのに対し、第4エピタキシャル層構造231は、光ガイド層20hとフォトニック結晶層20iとから成る層を備え、クラッド層20gを備えない。この相違点のみが、第1エピタキシャル層構造20と第4エピタキシャル層構造231との相違点である。光ガイド層20hとフォトニック結晶層20iとから成る層は、二次元フォトニック結晶層6に対応する。ステップS6までの工程によって、PCSELのエピタキシャル層構造(面発光レーザ素子1の半導体積層1aに対応)の全体が形成される。
【0046】
ステップS7において、第3エピタキシャル層構造24の表面(表面1a1に対応)にSiN層25を形成する。
【0047】
ステップS8において、通常の露光現像技術と反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)とを用いて、SiN層25に対し、p側電極27に対応する形状(200[μm]角の正方形の形状)の開口26aを、形成する。開口26aの形成によって、SiN層25は、SiN層26になる。SiN層26は、開口26aを備える。開口26aにおいて、第3エピタキシャル層構造24の表面は、露出される。
【0048】
ステップS9において、リフトオフによって、開口26aにp側電極27を形成する。p側電極27は、開口26aを介して、第3エピタキシャル層構造24のコンタクト層24bに接触する。p側電極27は、p側電極10に対応する。
【0049】
p側電極27の材料は、GaAs系の材料の半導体層に設ける電極の材料が利用できる。p側電極27の材料は、例えば、Au、Ti、Pt、Crなどの金属であることができる。p側電極27は、例えば、GaAs半導体層側から順番に、Ti/Pt/Au、Ti/Au、Cr/Au等であることができる。p側電極27に接する第3エピタキシャル層構造24は、1×1019「cm−3」以上の高濃度に不純物が添加される。
【0050】
ステップS10において、第4エピタキシャル層構造231の主面1a2を研磨し、露光現像技術を用いて、研磨後の裏面(主面1a2に対応)の箇所(p側電極27の直下に位置する箇所)にSiN層28を形成する。SiN層28は、無反射コートとしての機能も備える。SiN層28の光学膜厚は、面発光レーザ素子1の発振波長のλ/4(λは発振波長)である。SiN層28は、開口28aを備える。開口28aにおいて、第4エピタキシャル層構造231の裏面は、露出されている。
【0051】
ステップS11において、リフトオフによって、第4エピタキシャル層構造231の裏面上の面出射領域を囲む形状で、n側電極29を形成する。n側電極29は、n側電極9に対応する。
【0052】
n側電極29の材料は、GaAs系の材料の半導体層に設ける電極の材料が利用できるn側電極29の材料は、例えば、Auなどの金属とGeなどの半導体との混合物であることができる。n側電極は、例えばAuGe、AuGe/Au等であることができる。
【0053】
以上、ステップS1の工程からステップS11の工程までを実行することによって、面発光レーザ素子1の構成を備える基板生産物が製造される。ステップS11の後、ステップS11までの工程によって製造された基板生産物を、複数の面発光レーザ素子1のチップに、分割する。
【0054】
以上説明した構成の半導体レーザモジュール100,100aによれば、面発光レーザ素子1が、単峰ビームに対応する主ビームL1と、微弱光に対応する副ビームL2とを出力し、モニタ用光検出素子101dが、副ビームL2のピーク光強度を検出するので、このモニタ用光検出素子101dの出力を用いれば、副ビームL2を、主ビームL1のピーク光強度のモニタに用いることができるので、主ビームL1の光量を損なうことなく、主ビームL1のピーク光強度を推定することが出来る。
【0055】
半導体レーザモジュール100の場合、表示装置103が副ビームL2の光強度(光強度の分光スペクトルであり、光強度信号G2の内容)を表示できるので、半導体レーザモジュール100の操作者は、表示装置103の表示内容を参照しながら、面発光レーザ素子1に対する駆動信号G1(面発光レーザ素子1の駆動電流)の制御を駆動装置102を介して行うことができる。
【0056】
半導体レーザモジュール100aの場合、制御装置104は、副ビームL2の光強度に基づいて、駆動装置102の動作を制御できるので、面発光レーザ素子1に対する駆動信号G1(面発光レーザ素子1の駆動電流)が、副ビームL2の光強度に基づいて、自動的に好適に行える。
【0057】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0058】
1…面発光レーザ素子、10,27…p側電極、100,100a…半導体レーザモジュール、101…格納容器、101a…底壁、101b…上壁、101c…開口、101d…モニタ用光検出素子、101da…光入射面、102…駆動装置、103…表示装置、104…制御装置、11…絶縁膜、1a…半導体積層、1a1,201…表面、1a2…主面、1b1,1b2…積層、2…支持基体、20…第1エピタキシャル層構造、20a…基板、20b,20g,24a…クラッド層、20c,20f,20h…光ガイド層、20d…多重量子井戸層、20e,5…電子ブロック層、20i…フォトニック結晶層、21,22…レジスト、22a,23a,23a1…フォトニック結晶パターン、23…第2エピタキシャル層構造、231…第4エピタキシャル層構造、24…第3エピタキシャル層構造、24b…コンタクト層、25,26,28…SiN層、26a,28a…開口、29,9…n側電極、2a…主面、3…n型クラッド層、4…活性層、6…二次元フォトニック結晶層、6a…p側表面、6b…孔部、6ba…回折格子、6c…逆格子点、7…p型クラッド層、8…コンタクト層、9a…ARコート、9b…開口、A1…基準方向、A2…第1光軸、A3…第2光軸、G1…駆動信号、G2…光強度信号、G3…制御信号、L1…主ビーム、L2…副ビーム、M1…磁界分布、K1,K2…グラフ、R1…光出射領域、R2…単位格子、R3…電界の向き、R4…電磁界の節。
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