(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付している。以下の実施形態では、本発明の液体吐出ヘッドを具備する液体吐出装置の一例として、インク(液体)を利用して記録紙等の被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンタ1の概略構成図である。
プリンタ1は、被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2、3と、被記録媒体Sにインク(図示せず)を吐出するインクジェットヘッド4と、インクジェットヘッド4にインクを供給するインク供給手段5と、インクジェットヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(Y方向)と直交する走査方向(X方向)に走査させる走査手段6と、を備えている。なお、被記録媒体Sとして、紙や、樹脂フィルム、ガラス、セラミックス等、種々の材料を用いることができる。
【0019】
また、本実施形態のプリンタ1には、搬送手段2、3、インクジェットヘッド4、インク供給手段5、及び走査手段6等に電気的に接続されて相互に信号を送受信する制御ユニット8が設けられている。筺体9は、プリンタ1の外観を構成し、この筺体9に上述した各構成品が搭載されている。また、本実施形態では、Y方向及びX方向の2方向にそれぞれ直交する方向をZ方向(
図1では、上下方向)とする。
【0020】
一対の搬送手段2、3は、Y方向に間隔をあけて配置されており、一方の搬送手段2がY方向の上流(被記録媒体Sの搬送元により近い部分)に位置し、他方の搬送手段3がY方向の下流(被記録媒体Sの搬送先により近い部分)に位置している。これら搬送手段2、3は、X方向に延設されたグリッドローラ2A,3Aと、このグリッドローラ2A,3Aに対して平行に配置されるとともに、グリッドローラ2A,3Aとの間で被記録媒体Sを挟み込むピンチローラ2B、3Bと、グリッドローラ2A,3Aをその軸回りに回転させるモータ等の駆動機構(図示せず)と、をそれぞれ備えている。
そして、一対の搬送手段2、3のグリッドローラ2A,3Aを回転させることで、被記録媒体SをY方向に沿った矢印A方向に搬送することが可能とされている。
【0021】
インク供給手段5は、インクが収容されたインクタンク10と、インクタンク10及びインクジェットヘッド4間を接続するインク配管11と、を備えている。
図1に示す例では、インクタンク10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の四色のインクがそれぞれ収容されたインクタンク10Y,10M,10C,10BがY方向に並んで配置されている。インク配管11は、例えば可撓性を有するフレキシブルホースであり、インクジェットヘッド4を支持するキャリッジ16の動作(移動)に追従可能とされている。
【0022】
走査手段6は、X方向に延び、Y方向に間隔をあけて互いに平行に配置された一対のガイドレール15と、これら一対のガイドレール15に沿って移動可能に配置されたキャリッジ16と、このキャリッジ16をX方向に移動させる駆動機構17と、を備えている。
駆動機構17は、一対のガイドレール15の間に配置され、X方向に間隔をあけて配置された一対のプーリ18と、これら一対のプーリ18の間に巻回されてX方向に移動する無端ベルト19と、一方のプーリ18を回転駆動させる駆動モータ20と、を備えている。
【0023】
キャリッジ16は、無端ベルト19に連結されており、一方のプーリ18の回転駆動による無端ベルト19の移動に伴ってX方向に移動可能とされている。また、キャリッジ16には、複数のインクジェットヘッド4がX方向に並行して配列された状態で搭載されている。図示の例では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各インクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド4、すなわちインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bがキャリッジ16に搭載されている。
上述した搬送手段2、3及び走査手段6により、インクジェットヘッド4と被記録媒体Sとを相対的に移動させる搬送手段が構成されている。
【0024】
(インクジェットヘッド)
次に、インクジェットヘッド4について説明する。インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bは、供給されるインクの色以外は何れも同一の構成からなるため、以下の説明では、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bのそれぞれを、インクジェットヘッド4として説明する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るインクジェットヘッド4の斜視図である。
インクジェットヘッド4は、キャリッジ16に固定される固定プレート25と、この固定プレート25上に固定されたヘッドチップ26と、インク供給手段5から供給されたインクを、ヘッドチップ26の後述するインク導入孔41A(
図3参照)にさらに供給するインク供給部27と、ヘッドチップ26に駆動電圧を印加する液体吐出制御回路28と、を備えている。
【0026】
インクジェットヘッド4は、駆動電圧が印加されることで、各色のインクを所定の吐出量で吐出する。このとき、インクジェットヘッド4が走査手段6によりX方向に移動することで、被記録媒体Sにおける所定範囲に記録(印刷)を行うことができ、この走査を搬送手段2、3により被記録媒体SをY方向に搬送しながら繰り返し行うことで、被記録媒体Sの全体に記録を行うことが可能となる。
【0027】
固定プレート25には、アルミ等の金属製のベースプレート30がZ方向に沿って起立した状態で固定されているとともに、ヘッドチップ26のインク導入孔41Aにインクを供給する流路部材31が固定されている。流路部材31の上方には、インクを貯留する貯留室を内部に有する圧力緩衝器32がベースプレート30に支持された状態で配置されている。そして、流路部材31と圧力緩衝器32とはインク連結管33を介して連結され、圧力緩衝器32にはインク配管11が接続されている。
【0028】
そして、圧力緩衝器32は、インク配管11を介してインクが供給されると、インクを内部の貯留室内に一旦貯留した後、所定量のインクをインク連結管33の内部及び流路部材31の内部を介してインク導入孔41Aに供給する。
上述した流路部材31、圧力緩衝器32及びインク連結管33により、インク供給部27が構成されている。
【0029】
また、固定プレート25には、ヘッドチップ26を駆動するための集積回路等の制御回路(駆動回路)35Aが搭載されたIC基板36が取り付けられている。制御回路35Aと、ヘッドチップ26の第1コモン電極50(後述)及び駆動電極52(後述)、第2コモン電極50及び検出電極56(後述)とは、配線パターンがプリント配線されたフレキシブル基板37を介して電気的に接続されている。これにより、制御回路35Aは、フレキシブル基板37を介して第1コモン電極50と駆動電極52との間に駆動電圧を印加することが可能になる。また、制御ユニット8では、第2コモン電極50と検出電極56との間に生じた電圧(検出電圧)を検出することが可能になる。
そして、制御回路35Aが搭載されたIC基板36、及びフレキシブル基板37により、液体吐出制御回路28が構成されている。IC基板36には、上述した制御ユニット8がフレキシブル基板37(
図1参照)を介して接続される。
【0030】
(ヘッドチップ)
続いて、ヘッドチップ26について説明する。
図3は、本実施形態に係るヘッドチップ26の斜視図である。
ヘッドチップ26は、アクチュエータプレート40、カバープレート41、支持プレート42及びノズルプレート43を備える。ヘッドチップ26は、吐出チャネル45A(後述)の長手方向(Y方向)端部に臨むノズル孔43Aからインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのヘッドチップである。
【0031】
アクチュエータプレート40の一方の主面40C(
図5参照)には、カバープレート41が重ね合わされている。
カバープレート41は、例えばアクチュエータプレート40と同じ材料であるPZTセラミックス基板で形成され、アクチュエータプレート40と同様の熱膨張をさせることで、温度変化に対する反りや変形を抑制している。但し、この場合に限られず、アクチュエータプレート40とは異なる材料でカバープレート41を形成しても構わないが、熱膨張係数が近い材料を用いることが好ましい。
【0032】
カバープレート41には、Y方向を長手方向とする平面視矩形状のインク導入孔41Aが形成されている。このインク導入孔41Aには、上述した流路部材31(
図2参照)を介して供給されてきたインクを吐出チャネル45A内に導入させ、かつダミーチャネル45B内への導入を規制する複数のスリット55Aが形成されたインク導入板55が形成されている。つまり、複数のスリット55Aは、吐出チャネル45Aに対応する位置に形成され、各吐出チャネル45A内にのみインクを充填することが可能とされる。なお、インク導入孔41Aは、マニホールド(manifold、分岐管)と呼ばれることがある。
【0033】
図4は、本実施形態に係るヘッドチップ26の分解斜視図である。
図4は、
図3に示すヘッドチップ26において、支持プレート42及びノズルプレート43が取り外された状態を示す。
アクチュエータプレート40は、分極方向が厚さ方向(X方向)で異なる第1アクチュエータプレート40A及び第2アクチュエータプレート40Bの、2枚のプレートを積層した積層プレートとされている(いわゆる、シェブロン方式)。これら第1アクチュエータプレート40A及び第2アクチュエータプレート40Bは、ともに厚さ方向(X方向)に分極処理された圧電基板、例えばPZTセラミックス基板であり、互いの分極方向を反対に向けた状態で接合されている。
【0034】
アクチュエータプレート40の形状は、平面視長方形であり、その長手方向をY方向とし、短手方向をZ方向とする。なお、本実施形態のヘッドチップ26はエッジシュート対応のため、X方向、すなわち厚さ方向がプリンタ1におけるインクジェットヘッド4の走査方向に一致し、Y方向、すなわち長手方向が被記録媒体Sの搬送方向に一致する。
また、本実施形態では、アクチュエータプレート40におけるZ方向の両側に位置する側面のうち、ノズルプレート43に対向する側面を前端面40Dと称し、この前端面40DとはZ方向の反対側に位置する側面を後端面40Eと称する。
【0035】
支持プレート42は、重ね合されたアクチュエータプレート40及びカバープレート41を支持するともに、ノズルプレート43を同時に支持している。支持プレート42には、Y方向に沿って嵌合孔42Aが形成されており、重ね合されたアクチュエータプレート40及びカバープレート41を嵌合孔42A内に嵌め込んだ状態で支持している。この際、支持プレート42は、アクチュエータプレート40の前端面40Dと面一となるように組み合わされている(
図3参照)。
【0036】
ノズルプレート43は、支持プレート42及びアクチュエータプレート40の前端面40Dに、例えば接着等により固定されている。ノズルプレート43は、例えばポリイミド等の樹脂材料からなるフィルム状でもよい。なお、ノズルプレート43は、樹脂材料の他に、ガラス等により形成されてもよく、シリコンやステンレスなどの金属により形成されても構わない。
【0037】
また、ノズルプレート43には、Y方向に所定の間隔をあけて複数のノズル孔43Aが一列に並んだ状態で形成されている。これらノズル孔43Aは、複数の吐出チャネル45Aに対してそれぞれ対向する位置に形成されており、対向する吐出チャネル45A内に連通する。吐出チャネル45Aにはインクが充填されるため、ノズル孔43Aでのインクの圧力Pが所定の圧力の閾値P
th以上になると、ノズル孔43Aからインクが吐出される。ノズル孔43Aでのインクの圧力Pが、閾値P
thよりも低い場合には、ノズル孔43Aにおいてインクが吐出されずメニスカスが保たれる。
【0038】
アクチュエータプレート40の一方の主面40C(カバープレート41側に位置する面、
図5参照)には、その長手方向(Y方向)に所定の間隔をあけて並んだ複数のチャネル45が形成されている。これら複数のチャネル45は、Z方向に沿って直線状に延びる溝部である。Z方向の一端のうち、これら複数のチャネル45の間には、断面矩形状でZ方向に延びる駆動壁46が形成され、この駆動壁46によって各チャネル45はそれぞれ区分けされている。
【0039】
また、複数のチャネル45は、インクが充填される吐出チャネル45A(いわゆる、コモン溝)と、インクが充填されないダミーチャネル45B(いわゆる、駆動溝)と、に大別される。そして、これら吐出チャネル45Aとダミーチャネル45Bとは、Y方向に交互に並んで配置されている。なお、図示の例において、ダミーチャネル45B内は、空気で満たされている。複数の吐出チャネル45Aの構造、つまり、大きさ、形成される部材は互いに同一である。
【0040】
複数のチャネル45のうち、吐出チャネル45Aは、それぞれアクチュエータプレート40の一方の主面40C(
図5参照、
図4ではX方向)に向けて開口され、インク導入孔41Aを介してインクが充填される。吐出チャネル45Aは、アクチュエータプレート40の後端面40E側に開口することなく、前端面40D側にだけ開口した状態で形成されている。なお、図示の例において、吐出チャネル45Aの後端面40E側は、後端面40Eに向かうに従い漸次浅くなっている。一方、ダミーチャネル45Bについては、アクチュエータプレート40の前端面40D側だけでなく、後端面40E側にも開口するように形成されている。
【0041】
図5は、本実施形態に係るヘッドチップ26の拡大斜視図である。
図5は、
図4に示すヘッドチップ26から、フレキシブル基板37とカバープレート41とが取り外された状態を拡大して示す。
【0042】
フレキシブル基板37には、各コモン端子51、駆動端子53、及び検出端子57(図示せず)がそれぞれ電気的に独立するようにパターン形成されている。
カバープレート41は、アクチュエータプレート40の一方の主面40C上に重ね合されている。このカバープレート41には、上述したようにY方向を長手方向とする平面視矩形状のインク導入孔41Aが形成されている。
インク導入孔41Aには、上述した流路部材31(
図2、
図3参照)を介して供給されてきたインクを吐出チャネル45A内に導入させ、かつダミーチャネル45B内への導入を規制する複数のスリット55Aが形成されたインク導入板55が形成されている。つまり、複数のスリット55Aは、吐出チャネル45Aに対応する位置に形成され、各吐出チャネル45A内にのみインクを充填することが可能とされる。
【0043】
駆動端子53は、アクチュエータプレート40の一方の主面40C上における後端面40E側に形成されており、吐出チャネル45Aを挟んだ両側に位置する駆動電極52Aと52B(
図6参照、異なるダミーチャネル45B内に形成された駆動電極52同士)を電気的に接続するように形成されている。この際、駆動端子53は、一方の主面40C上において、コモン端子51よりも後端面40E側に離間した位置でY方向に延びることで、駆動電極52Aと52Bをブリッジ状に接続している。
検出端子57は、吐出チャネル45Aを挟んだ両側に位置する検出電極56Aと56B(
図6参照、異なるダミーチャネル45B内に形成され検出電極56同士)を電気的に接続するように形成されている。例えば、検出端子57は、アクチュエータプレート40の後端面40E上に形成されている。ただし、本発明はこれに限らず、検出電極56同士は接続されなくてもよい。
【0044】
(各電極の配置)
次に、コモン電極50、駆動電極52及び検出電極56の配置についてより詳細に説明する。
図6は、本実施形態に係る吐出チャネル45Aの断面図であり、
図5のC−C’線に沿う断面の一部分である。
側壁40G、40Hは、それぞれアクチュエータプレート40の一部をなしている。
【0045】
駆動電極52Aと検出電極56Aは、側壁40Gのダミーチャネル45B側の一面に設けられており、コモン電極50Aと50Cは、側壁40Gの吐出チャネル45A側の一面に設けられている。コモン電極50Bと50Dは、側壁40Hの吐出チャネル45A側の一面に設けられており、駆動電極52Bと検出電極56Bは、側壁40Hのダミーチャネル45B側の一面に設けられている。
駆動電極52Aとコモン電極50Aの対、及び、検出電極56Aとコモン電極50Cの対は、側壁40Gを挟んで設けられている。駆動電極52Bとコモン電極50Bの対、及び、検出電極56Bとコモン電極50Dの対は、側壁40Hを挟んで設けられている。
また、コモン電極50A又は50Bを第1コモン電極50と、コモン電極50Cならびに50Dを第2コモン電極50と総称することがある。駆動電極52A、52Bを駆動電極52と、検出電極56A、56Bを検出電極56と総称することがある。
【0046】
コモン電極50A〜50Dは、吐出チャネル45Aの側壁面全体に一旦形成された後、レーザ加工やダイシング加工等によって分断されることで、それぞれ電気的に切り離された状態で形成されてもよい。また、駆動電極52A、52B及び検出電極56A、56Bも同様にして、それぞれ、ダミーチャネル45Bの側壁面全体に一旦形成された後に分断されることで、ダミーチャネル45Bの一対の側壁面にそれぞれ電気的に切り離された状態で形成されてもよい。
【0047】
(側壁の変形)
次に、側壁40G、40Hの変形について説明する。
駆動壁46を構成する側壁40Gには、コモン電極50A、駆動電極52Aとの間に印加される電圧により、厚み滑り変形が生じる。コモン電極50A、駆動電極52Aには、コモン端子51、駆動端子53をそれぞれ介して電圧が印加される。
駆動壁46を構成する側壁40Hには、コモン電極50B、駆動電極52Bとの間に印加される電圧により、厚み滑り変形が生じる。コモン電極50B、駆動電極52Bには、コモン端子51、駆動端子53をそれぞれ介して電圧が印加される。
【0048】
コモン電極50Aと駆動電極52Aとの間、コモン電極50Bと駆動電極52Bとの間に、それぞれ電圧が印加されると、側壁40G、40Hは、厚み方向(X方向)に対して平行な状態(
図6(A))からそれぞれダミーチャネル45B側に突出するように変形する(
図6(B))。もしくは、側壁40G、40Hは、厚み方向(X方向)に平行な状態(
図6(A))からそれぞれダミーチャネル45Bから陥入、つまり側壁40G、40Hの厚み方向中心位置が互いに近接するように変形する。すなわち、アクチュエータプレート40は、厚さ方向(X方向)に分極処理された2枚のアクチュエータプレート40A、40Bが積層されているため、例えば、0Vよりも高い正の駆動電圧が印加されることで、側壁40G、40HのZ方向のほぼ中間であるアクチュエータプレート40A、40Bが接合されている位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。
このとき、吐出チャネル45AがY方向に膨らむように変形し、吐出チャネル45Aの容積が増大する。これにより、吐出チャネル45A内の圧力が低くなる。また、0Vよりも低い負の駆動電圧が印加されることで、正の駆動電圧が印加される場合とは逆方向に側壁40G、40Hが変形する。このとき、吐出チャネル45AがY方向に縮むように変形し、吐出チャネル45Aの容積が減少する。これにより、吐出チャネル45A内の圧力が高くなる。
【0049】
なお、ダミーチャネル45Bに突出するように変形した場合の凸部、又はダミーチャネル45Bから陥入されるように変形した場合の凹部を、屈曲部とも称する。
図6(B)では、側壁40G、40Hは、厚み方向(X方向)の中央部分が屈曲部となる。そして、駆動電極52Aと検出電極56A、コモン電極50Aと50C、コモン電極50Bと50D、及び、駆動電極52Bと検出電極56Bは、屈曲部を挟んで設けられている。
ここで、駆動電極52A、52B、検出電極56A、56B、及び、コモン電極50A〜50Dは、側壁40G及び40Hにおいて、変形前後で、平面又は略平面に保たれる一面、つまり、屈曲部以外の部分に設けられている。
【0050】
(圧力の検出)
側壁40Gに厚み滑り変形が生じると、逆圧電効果によりコモン電極50Cと検出電極56Aとの間に電圧が生じる。 側壁40Hに厚み滑り変形が生じると、逆圧電効果によりコモン電極50Dと検出電極56Bとの間に電圧が生じる。
側壁40G、40Hの変形は、上述したコモン電極50Aと駆動電極52Aとの間、コモン電極50Bと駆動電極52Bとの間に、それぞれ印加される電圧によっても生じるが、吐出チャネル45Aに充填されたインクの圧力波の伝搬によっても生じる。従って、コモン電極50Cに接続されているコモン端子51と検出電極56Aに接続されている検出端子57との間に生じた電圧や、コモン電極50Dに接続されているコモン端子51と検出電極56Bに接続されている検出端子57との間に生じた電圧を検出することによって、インクの圧力波の伝搬挙動、即ち吐出チャネル45A内の圧力の時間的な変動を検出することができる。
【0051】
図7は、本実施形態に係るヘッドチップ26の断面図である。
この図は、
図3のB−B’ 線に沿う断面を示す。流路部材31の内部に付された破線、流路部材31とカバープレート41との間に付された破線及びカバープレート41とアクチュエータプレート40との間に付された破線は、供給流路39及びインク導入孔41Aの外延を示すために付されたものであって、いかなる部材を示すものではない。なお、符号F1を付した矢印は、ヘッドチップ26内でのインクの通流方向を表す。つまり、ヘッドチップ26内では、流路は、複数回曲げられ、インクはこの曲がった流路を通流する。
【0052】
図7は、駆動電極52B、検出電極56BのY方向視した配置を重ね合わせて示す。駆動電極52B及び検出電極56Bは、それぞれZ方向に沿って延在するように設けられている。駆動電極52Bは、側壁40HのX方向における中間部よりもカバープレート側において形成されている。
検出電極56Bは、側壁40HのX方向における中間部を挟んで駆動電極52Bとは反対側において、駆動電極よりも短くなるように形成されている。検出電極56Bの一方側の端部は、駆動電極52Bの一方側の端部よりもノズル孔43A側に配置されている。
駆動電極52Bは、側壁40H(
図6参照)の長手方向(Z方向)のほぼ全面に形成されている。これにより、吐出チャネル45Aの全体にわたり充填されたインクに対して圧力を変化させることができる。
検出電極56Bは、側壁40H(
図6参照)のうちノズル孔43Aから予め定めた範囲内に形成されている。これにより、ノズル孔43Aの近傍におけるインクの圧力の変化を検出することができる。なお、検出電極56Bは、側壁40H(
図6参照)の長手方向(Z方向)のほぼ全面に形成されてもよい。その場合には、吐出チャネル45A全体を総合したインクの圧力の変化を検出することができる。
【0053】
なお、駆動電極52A、検出電極56A(
図6参照)も、それぞれ一方の方向が他方の方向よりも長い細長い平板の形状を有し、それぞれの長手方向が吐出チャネル45Aの長手方向(Z方向)に向けられている。駆動電極52Aは、側壁40G(
図6参照)の長手方向(Z方向)のほぼ全面に形成されている。検出電極56Aは、側壁40H(
図6参照)のうちノズル孔43Aから予め定めた範囲内に形成されている。検出電極56Aは、側壁40Hの長手方向(Z方向)のほぼ全面に形成されてもよい。
一方、短手方向については、駆動電極52Aは、側壁40Gの上側(X方向、吐出チャネル45Aの開口側)の半面に設けられている。検出電極56Aは、側壁40Gの下側(X方向、吐出チャネル45Aの底部側)の半面に設けられている。
なお、駆動電極52A、検出電極56Aは、側壁40Gに形成されているため、
図7には表れていない。
【0054】
駆動壁46(側壁40G、40H、
図6参照)、コモン電極50Aや、50B、コモン端子51(
図5参照)、駆動電極52A、52B(
図6参照)及び駆動端子53(
図5参照)は、印加された駆動電圧による信号で吐出チャネル45A内のインクの圧力を変化させるスイッチング部62(
図5参照)を形成している。以下の説明では、コモン電極50Aに接続されているコモン端子51(
図5参照)と駆動端子53(
図5参照)との間、又は、コモン電極50Bに接続されているコモン端子51(
図5参照)と駆動端子53(
図5参照)との間に駆動電圧を印加することを、「スイッチング部62に駆動電圧を印加する」と呼ぶことがある。
つまり、スイッチング部62(
図5参照)は、吐出チャネル45A内に充填されたインクの吐出の有無を、印加された駆動電圧に基づいて生じるインクの振動、つまり圧力の変化によって制御する。
【0055】
また、コモン電極50C(
図6参照)、コモン電極50Cに接続されているコモン端子51(
図5参照)、検出電極56A(
図6参照)、及び、検出電極56Aに接続されている検出端子57A(図示せず)は、吐出チャネル45A内に充填されたインクの圧力によって生じた電圧を検出する電圧検出部63A(図示せず)を形成している。コモン電極50D(
図6参照)、コモン電極50Dに接続されているコモン端子51D(
図5参照)、検出電極56B(
図6参照)、及び、検出電極56Bに接続されている検出端子57B(図示せず)は、吐出チャネル45A内に充填されたインクの圧力によって生じた電圧を検出する電圧検出部63B(図示せず)を形成している。以下の説明では、電圧検出部63A、63Bを電圧検出部63(
図8)と総称する。以下の説明では、吐出チャネル45A内に充填されたインクの圧力によって生じた電圧を検出することを、「電圧検出部63で電圧を検出する」と呼ぶことがある。
【0056】
(プリンタの機能)
次に、本実施形態に係るプリンタ1の機能について、被記録媒体Sに文字や図形等を記録する場合を例にとって説明する。
図1に示すように、制御ユニット8は、例えば、一対の搬送手段2、3により被記録媒体SをY方向に搬送させながら、走査手段6によりキャリッジ16を介して各インクジェットヘッド4をX方向に往復移動させる。この間に、制御ユニット8は、各インクジェットヘッド4より4色のインクを被記録媒体Sに向けて吐出させ、被記録媒体Sにインクが付着した領域の形状をその文字や画像等の形状になるように形成させる。これにより、文字や図形等の記録が行われる。
【0057】
次に、各インクジェットヘッド4による文字や図形等の記録に係る機能について説明する。
図8は、本実施形態に係るプリンタ1の機能ブロック図である。
プリンタ1は、制御ユニット8、制御回路35A、複数のスイッチング部62、及び複数の電圧検出部63を含んで構成される。スイッチング部62、電圧検出部63は、それぞれ吐出チャネル45Aに対応付けられている。
制御回路35A、スイッチング部62及び電圧検出部63の構成は、複数のインクジェットヘッド4間で同一である。制御回路35Aは、上述した液体吐出制御回路28を形成する。
【0058】
制御ユニット8は、2個のI/F部81−1、81−2、及びデータバッファ82を含んで構成される。I/F部81−1、81−2は、それぞれデータを送信又は受信する入出力インタフェースである。
制御ユニット8は、記録すべき文字や図形等を示す画像データを外部機器からI/F部81−1を介して受信し、受信した画像データをデータバッファ82に記憶する。画像データは、印刷領域に分布した画素のそれぞれにおける表示の有無(ON/OFF)を示すデータである。カラー画像を示す画像データでは、表示の有無は色成分毎に指定される。
【0059】
制御ユニット8は、データバッファ82から画像データを読み出し、読み出した画像データが示す、インクジェットヘッド4(つまり、キャリッジ16)の位置に応じた画素毎の表示の有無を示す印字データを色成分毎に生成する。
制御ユニット8には、電圧検出部63で検出された電圧を有する検出信号がI/F部81−2を介して入力され、入力された検出信号の電圧に基づいて制御回路35Aの動作を制御する。制御例については、後述する。
制御ユニット8は、色成分毎に生成した印字データをI/F部81−2を介して色成分に対応した制御回路35Aに出力する。
【0060】
制御回路35Aは、制御ユニット8から入力された印字データに基づいて、各画素に対応した吐出チャネル45Aからのインクの吐出の有無に応じて駆動電圧を制御し、制御した駆動電圧を吐出チャネル45Aに係るスイッチング部62に印加する。これにより、吐出チャネル45Aからインクを吐出させるか否かを制御する。以下、この制御(吐出制御とも呼ぶ)について説明する。
【0061】
図9は、本実施形態におけるインクの吐出制御を説明するための図である。
図9の上段は、圧力波による吐出圧力の時間変化を示す。縦軸、横軸は、それぞれ圧力、時刻を示す。
図9の下段は、スイッチング部62に印加される駆動電圧の例を示す。
縦軸、横軸は、それぞれ圧力、時刻を示す。駆動電圧の制御を開始した時点での時刻、圧力をそれぞれ0とする。
【0062】
制御回路35Aは、例えば、吐出チャネル45Aを駆動する場合、スイッチング部62に印加する駆動電圧を時刻0において0Vから駆動電圧値V
sに変化させる。駆動電圧値V
sは、予め定めた正の電圧値である。スイッチング部62にこの駆動電圧が印加されることで、駆動壁46がダミーチャネル45Bへ突出するように変形される(
図6(B)参照)。この変形により、吐出チャネル45Aの容積が拡大して、ノズル孔43Aでのインクの圧力Pが急峻に低下する。そして、吐出チャネル45Aの容積が増大したことにより、インク導入孔41Aまで導かれているインクが吐出チャネル45A内に誘導され、ノズル孔43Aでの圧力Pが次第に高くなる。このとき、吐出チャネル45A内に誘導されたインクの動きが圧力波として発生する。ノズル孔43Aでの圧力Pは、発生した圧力波がノズル孔43Aに到達することで0を超える。圧力波のピークがノズル孔に到達したとき、ノズル孔43Aでの圧力PがP
wに達する。つまり、圧力P
wは、吐出チャネル45Aの変形により容積が拡大して生ずる圧力波による圧力のピーク値である。以下の説明では、この時刻をΔT
1と表す。
【0063】
時刻ΔT
1において、制御回路35Aは、スイッチング部62に印加する駆動電圧をV
sから0Vに戻す。このとき、駆動壁46の変形が元に戻るので、一旦増大した吐出チャネル45Aの元の容積に戻る。この動作によって、ノズル孔43Aでの圧力PがP
wからさらに急激に増加し、極大値P
maxに達する。ここで、圧力P
wがP
th未満となり、極大値P
maxがP
th以上となるように駆動電圧値V
sを予め設定しておく。ノズル孔43Aでの圧力PがP
th以上になることでインクがノズル孔43Aから吐出する。 このように、吐出チャネル45Aの容積を一旦拡大して元に戻すことで、インクを吐出させる制御を「引き打ち」と呼ぶことがある。
【0064】
他方、駆動電圧を駆動電圧値V
sと制御する制御時間ΔT
1は、吐出チャネル45A内で圧力波がその長手方向(Y方向)に往復する時間、つまり吐出チャネル45A内で圧力波振動が共振する共振周期ΔTに相当する。従って、共振周期ΔTは吐出制御において重要なパラメータである。
共振周期ΔTは、吐出チャネル45Aのインクの音速と吐出チャネル45Aの長さによって決まるが、インクの種類、温度、吐出チャネル45A内に形成された気泡の有無、等の要因で変化する。なお、共振周期ΔTは、音響周期(AP:acoustic period)とも呼ばれ、共振周期ΔTの逆数は、共振周波数に相当する。
【0065】
そこで、制御ユニット8は、電圧検出部63から入力された検出信号が示す電圧の時間変化に基づいて共振周期ΔTを定める。次に、共振周期の検出例について説明する。
図10は、本実施形態における共振周期の検出例を説明するための図である。
縦軸、横軸は、それぞれ電圧、時刻を示す。検出信号が示す電圧Vは、吐出チャネル45A内での圧力波振動に応じて変化する。
図10に示す例では、電圧Vは、時刻T
1、T
2において、それぞれ極大値V
1、V
2をとる。制御ユニット8は、互いに隣接する極大値間の時間、例えば、T
2−T
1を共振周期ΔTと定め、この共振周期ΔTを駆動時間ΔT
1と定める。そして、制御ユニット8は、定めた駆動時間ΔT
1を制御回路35Aに設定する。制御回路35Aは、設定された駆動時間ΔT
1を上述した駆動電圧の制御に用いる。
【0066】
なお、制御ユニット8は、複数の電圧Vの極大値間の時間を平均して共振周期ΔTを定めてもよい。また、制御ユニット8は、電圧Vの極大値に代えて電圧Vの極小値間の時間に基づいて共振周期ΔTを定めてもよい。また、制御ユニット8は、電圧Vの周波数領域でのパワーを示すスペクトルを算出し、パワーが極大となる周波数を共振周波数と判定し、判定した共振周波数に基づいて共振周期ΔTを定めてもよい。
また、制御ユニット8は、吐出制御を行う前に予め検出信号に基づいて共振周期ΔTを定めてもよいし、吐出制御が行われているときに入力された検出信号に基づいて共振周期ΔTを定めてもよい。これにより、定められた共振周期ΔTが吐出制御に用いられるので様々な状況において安定した吐出制御を実現することができる。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係るプリンタ1では、吐出チャネル45Aは、圧電体である側壁40G、40Hの少なくとも一部が変形する。第1電極(駆動電極52A、コモン電極50A、駆動電極52B、又はコモン電極50B)は、側壁40G、40Hに電圧を印加して側壁40G、40Hを変形させる。第2電極(検出電極56A、コモン電極50C、検出電極56B、又はコモン電極50D)は、側壁40G、40Hへの圧力によって側壁40G、40Hに生じる電圧を検出する。例えば、駆動電極52Aと検出電極56A、又は、コモン電極50Aとコモン電極50Cは、側壁40Gの一面に設けられている。駆動電極52Bと検出電極56B、又は、コモン電極50Bとコモン電極50Dは、側壁40Hの一面に設けられている。
この構成によれば、プリンタ1は、第1電極は側壁40G、40Hに印加し、第2電極はその側壁40G、40Hに生じる電圧を検出するので、別個に圧電体を設ける場合と比較して、製造コストを下げることができる。また、第1電極と第2電極は、側壁40G又は40Hの一面に設けられているので、プリンタ1は、圧力波の伝搬損失が大きくなることを防止でき、吐出効率を向上できることがある。このように、プリンタ1は、経済的かつ効率よく吐出チャネル45A内の圧力を検出できる
【0068】
また、プリンタ1において、側壁40G、40Hは圧電体であり、第1電極(駆動電極52Aとコモン電極50A、又は、駆動電極52Bとコモン電極50B)は、側壁40G、40Hを挟んで対になって設けられており、第2電極(検出電極56Aとコモン電極50C、又は、検出電極56Bとコモン電極50D)は、それぞれ、側壁40G、40Hを挟んで対になって設けられている。
この構成によれば、プリンタ1は、側壁40G、40Hを変形でき、当該変形によって液体を吐出できるとともに、当該側壁40G、40Hへの圧力によって圧電体に生じる圧力を検出できる。
【0069】
また、プリンタ1において、第2電極は、側壁40G、40Hの変形前後で、略平面に保たれる一面に設けられている。この構成によれば、プリンタ1は、第2電極が略平面に保たれる一面にあるので、吐出チャネル45Aの側壁40G、40Hが変化した場合でも、圧力波の伝搬挙動が、第2電極が設置されていない場合と大きく異なってしまうことを防止できる。
【0070】
また、プリンタ1において、側壁40G、40Hは、変形後又は変形前に、凸部又凹部となる屈曲部を有し、第1電極と第2電極は、側壁40G、40Hの一面において、屈曲部を挟んで設けられている。この構成によれば、プリンタ1は、第2電極が屈曲部以外の面に設けられて屈曲の少ない面にあるので、吐出チャネル45Aの側壁40G、40Hが変化した場合でも、圧力波の伝搬挙動が、第2電極が設置されていない場合と大きく異なってしまうことを防止できる。
【0071】
また、プリンタ1において、第1電極は、側壁40G(又は側壁40H)の一面のうち一方の半面の少なくとも一部に設けられており、第2電極は、その側壁40G(又は側壁40H)の一面のうち他方の半面の少なくとも一部に設けられている。この構成によれば、プリンタ1は、半面の境界を屈曲部にでき、第2電極を屈曲の少ない面に設けることができるので、吐出チャネル45Aの側壁40G(又は側壁40H)が変化した場合でも、圧力波の伝搬挙動が、第2電極が設置されていない場合と大きく異なってしまうことを防止できる。
【0072】
また、プリンタ1において、第2電極で検出された電圧に基づいて、第1電極に印加する電圧を制御する制御部(制御ユニット8)をさらに備える。この構成によれば、プリンタ1は、第2電極で検出された電圧、つまり、吐出チャネル45A内の圧力波変動に応じて、液体の吐出を制御することができる。
【0073】
また、プリンタ1において、制御部は、第2電極で検出された電圧の変動周期に基づいて、第1電極に印加する電圧を制御する。この構成によれば、プリンタ1は、第2電極で検出された電圧の変動周期、つまり、吐出チャネル45A内の圧力波変動の周期に応じて、液体の吐出を制御することができる。
【0074】
また、プリンタ1において、制御部は、第2電極で検出された電圧の変動周期に基づいて、第1電極への電圧の印加時間を定める。この構成によれば、プリンタ1は、第2電極で検出された電圧の変動周期、つまり、吐出チャネル45A内の圧力波変動の周期に応じて、液体の吐出を制御することができる。
【0075】
なお、駆動電極52Aとコモン電極50Aの配置は互いに逆であってもよく、また、駆動電極52Bとコモン電極50Bの配置は互いに逆であってもよい。検出電極56Aとコモン電極50Cの配置は互いに逆であってもよく、また、検出電極56Bとコモン電極50Dの配置は互いに逆であってもよい。駆動電極52Aとコモン電極50Aの対と、駆動電極52Bとコモン電極50Bの対と、の配置は互いに逆であってもよく、また、検出電極56Aとコモン電極50Cの対と、検出電極56Bとコモン電極50Dの対と、の配置は互いに逆であってもよい。駆動電極52Aとコモン電極50Aの対と、検出電極56Aとコモン電極50Cの対と、の配置は互いに逆であってもよく、また、駆動電極52Bとコモン電極50Bの対と、検出電極56Bとコモン電極50Dの対と、の配置は互いに逆であってもよい。
【0076】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上述した実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を援用する。
本実施形態に係るプリンタ1は、上述した実施形態に係るプリンタ1(
図1)にさらに外部振動子61を含んで構成される。
【0077】
図11は、本実施形態に係るヘッドチップ26の斜視図である。
外部振動子61は、駆動電圧が印加されることにより、その電圧に応じた振幅で主面(YZ方向)の法線方向(X方向)に振動して、流路部材31内のインクの圧力波を発生させる。発生した圧力波は、各吐出チャネル45Aのインクへ伝搬する。伝搬した圧力波は、各吐出チャネル45A内で往復することで、圧力波振動が共振される。なお、本実施形態では、単一の外部振動子61は複数の吐出チャネル45A間で共有される構成としているが、本発明はこれに限らず、各吐出チャネル45Aに、それぞれ対応する外部振動子61が設けられてもよい。
【0078】
図12は、本実施形態に係るヘッドチップ26の断面図である。
外部振動子61は、供給流路39の内壁面のうちインク導入孔41Aに対向している対向面に設けられている。外部振動子61の主面は、流路部材31の対向面の表面と相対し、その一部が外部電極(図示せず)を形成している。外部電極に駆動電圧が印加されると、駆動電圧に応じて振動する。外部振動子61が振動すると、流路部材31内のインクの圧力波が発生し、発生した圧力波は、インク導入孔41Aを介して各吐出チャネル45Aのインクへ伝搬する。以下の説明では、特に断らない限り、外部電極に駆動電圧を印加することを、「外部振動子61に駆動電圧を印加する」と呼ぶことがある。外部振動子61は、厚さ方向(X方向)に分極された圧電基板、例えば、PZT(lead zirconate titanate、チタン酸ジルコン酸鉛)セラミックス基板で形成されている。
【0079】
外部振動子61は、流路部材31内で曲がった後のインクの通流方向(Z方向)に交差する面に設置されている。外部振動子61は、その面に垂直に振動するので、曲がった後の通流方向へ、効率的に圧力波を生成できる。また、外部振動子61は、曲がる前のインクの通流を妨げることを防止できる。
なお、外部振動子61が生成した圧力波は、吐出チャネル45Aにおいて、その方向が、X方向からZ方向へ曲げられる。また、供給流路39の主面(YZ平面)の面積は、インク導入孔41Aの開口面の面積や各吐出チャネル45Aの開口面の面積の合計よりも大きい。これにより、各吐出チャネル45Aへ外部振動子61が発生させた圧力波を集中させることができ、吐出チャネル45A内のインクの圧力波振動を効率的に共振させることができる。
【0080】
外部振動子61は、駆動周波数で振動し、振動により発生させた圧力波によって、吐出チャネル45A内のインクの圧力波振動を共振させる。この駆動周波数は、吐出チャネル45A内に充填されたインクの共振周波数又はその共振周波数から予め定めた範囲(例えば、半値幅)内の周波数である。これにより、外部振動子61は、吐出チャネル45A内に充填されたインクの圧力波振動を共振させることができるので、圧力波を効率よく発生させることができる。
【0081】
吐出チャネル45Aの長手方向の一端では、その大部分がノズルプレート43で覆われているので、外部振動子61による圧力波は、通流方向とは逆方向へ反射する(反射した圧力波を反射波と呼ぶ)。一方、吐出チャネル45Aの長手方向の他端では、流路が曲げられる構造となっているので、当該他端で反射波は、さらに反射され、通流方向へ戻される。つまり、吐出チャネル45Aでは、その内部で、外部振動子61による圧力波が反射して往復し、これにより、圧力波振動が共振する。換言すれば、ヘッドチップ26は、流路において外部振動子61より下流側(ノズル孔43A側)に、反射波をさらに反射させ、外部振動子61による圧力波を往復させる構造を有する。その構造の一例として、ヘッドチップ26は、流路において外部振動子61より下流側に、流路が曲げられる構造を有する。
【0082】
また、外部振動子61と吐出チャネル45Aを形成する駆動壁46では、圧力を変化させるための変位方向が異なる。例えば、外部振動子61は、主にX方向に変位するのに対し、駆動壁46は、Y方向に変位する。また、流路に関して、外部振動子61は、通流方向に変位するのに対し、駆動壁46は、通流方向とは垂直方向に変位する。
【0083】
ここで、吐出チャネル45Aは、外部振動子61が共振させた圧力波振動のピークに基づいて、吐出チャネル45Aのインクの圧力をさらに変化させる。具体的には、吐出チャネル45Aには、圧力波振動のピークのタイミング、又は、ピーク値(圧力の極大値、以下同じ)に応じた駆動電圧が印加される。これにより、吐出チャネル45Aは、圧力波振動の時間若しくは圧力のピーク又はこれらのピークの近傍において、圧力波振動の圧力をさらに増減させることができる。これにより、プリンタ1は、吐出制御を行うことができる。以下、吐出制御について、詳細に説明する。
【0084】
(プリンタの機能)
図13は、本実施形態に係るプリンタ1の機能ブロック図である。
図13は、吐出制御に関する機能を示すが、プリンタ1は他の機能を備えてもよい。
プリンタ1は、制御ユニット8と、制御回路35A、35Bと、外部振動子61、複数のスイッチング部62及び複数の電圧検出部63とを含んで構成される。制御回路35A、35Bは、液体吐出制御回路28を形成する。
【0085】
制御ユニット8は、共振周期ΔTに応じた共振周波数を定め、定めた共振周波数で外部振動子61を振動させることを指示する外部振動データを生成し、生成した外部振動データを、各色成分に対応した制御回路35Bに出力する。
制御回路35Bは、制御ユニット8から外部振動データが入力されたことに応じて共振周波数及び所定の振幅で電圧が振動する駆動電圧を生成し、生成した駆動電圧を外部振動子61に印加する。制御回路35Bが生成する駆動電圧の波形は、例えば、正弦波である。これにより、外部振動子61はその駆動周波数で振動し、この振動により吐出チャネル45A内で圧力波振動が共振される。換言すれば、駆動電圧の波形(又は、外部振動子61の振動)は、共振させることを目的とするため、変化の急激な矩形波ではなく、変化の緩やかな正弦波又は余弦波とする。
【0086】
制御回路35Aは、ノズル孔43Aにおける圧力波振動の圧力の時間変化と同期するように、印刷制御データが指示する画素に対応するスイッチング部62に印加する駆動電圧を制御する。これにより、制御回路35Aは、外部振動子61による圧力波振動の共振に同期して、スイッチング部62に吐出チャネル45A(
図12参照)内に充填されたインクの圧力を変化させるか否かを制御する。
また、制御回路35Aは、ノズル孔43Aにおける圧力波振動の圧力に応じて、スイッチング部62に印加する駆動電圧の大きさを制御する。これにより、制御回路35Aは、外部振動子61による圧力波振動の圧力を利用して、スイッチング部62に吐出チャネル45A(
図12参照)内に充填されたインクを吐出させるか否かを制御する。
【0087】
なお、制御回路35Aは、スイッチング部62に駆動電圧を印加するタイミング、つまり、吐出チャネル45A(
図12参照)の圧力を変化させるタイミングを、制御回路35Bが外部振動子61に駆動電圧を印加するタイミングから、所定の時間τだけ調整してもよい。この時間τは、例えば、スイッチング部62に駆動電圧を印加してから、そのスイッチング圧力波がノズル孔43A(
図12参照)に到達するまでの遅延時間τ1である。ただし、時間τは、外部振動子61に駆動電圧を印加してから、その圧力波振動がノズル孔43Aに到達するまでの遅延時間τ2を考慮したものであってもよいし、圧力波振動の共振が安定するまでの遅延時間τ2を考慮したものであってもよい。また、遅延時間τは、遅延時間τ1とτ2の両方を考慮したものであってもよく、例えば、τ2からτ1を差し引いた値であってもよい。
【0088】
そこで、制御ユニット8は、電圧検出部63から入力された検出信号が示す電圧の時間変化に基づいて遅延時間τ1、τ2を定めてもよい。次に、遅延時間τ1、τ2の検出例について説明する。
図14は、本実施形態における遅延時間τ1、τ2の検出例を説明するための図である。縦軸、横軸は、それぞれ電圧、時刻を示す。駆動電圧の制御を開始した時点での時刻、圧力をそれぞれ0とする。
図14は、検出電圧、駆動電圧をそれぞれ曲線a1,a2で示す。検出電圧a1は、電圧検出部63から入力された検出信号が示す電圧であり、ノズル孔43Aにおける圧力に対応する値を示す。駆動電圧a2は、外部振動子61(
図13参照)に印加する電圧であり、外部振動子61が供給流路39(
図12参照)内に充填されたインクに加える圧力に対応する値を有する。検出電圧a1、駆動電圧a2の周波数は、上述した共振周波数である。
【0089】
この例では、駆動電圧a2の極大値は時間経過によらず一定であるのに対し、検出電圧a1の極大値は振動開始直後において増加する傾向を示し、時刻が0.105msを経過した後、ほぼ一定となる。これは、吐出チャネル45A(
図12参照)で圧力波振動が共振し、その共振が時間経過に伴って安定することを示す。
そこで、制御ユニット8(
図13参照)は、駆動電圧の制御を開始してから検出電圧a1の極大値が安定するまでの時間を遅延時間τ2と定める。具体的には、制御ユニット8は、直近に検出した検出電圧a1の極大値の絶対値が、その直前に検出した検出電圧a1の極大値の絶対値に対する増加率が、予め定めた増加率の閾値よりも小さくなる、極大値に対応する時刻を遅延時間τ2と定めることができる。
【0090】
また、検出電圧a1の極大値は、駆動電圧a2の極大値よりも一定時間遅延する。これは、外部振動子61(
図13参照)に駆動電圧が印加されてから、外部振動子61が発生させた圧力波がノズル孔43A(
図12参照)に到達するまでの遅れを示す。
そこで、制御ユニット8(
図13参照)は、直近に検出された検出電圧a1の極大値に対応する時刻から直近の駆動電圧a2の極大値に対応する時刻を差し引いて遅延時間τ1を定めることができる。制御ユニット8は、定めた遅延時間τ1、τ2、又はτ1とτ2の両者に基づいて時間τを定め、定めた時間τで制御回路35B(
図13参照)が外部振動子61に駆動電圧を印加するタイミングを調整することができる。
なお、制御ユニット8は、検出電圧a1の極大値に代えて検出電圧a1の極小値に基づいて、遅延時間τ1、τ2を定めてもよい。
【0091】
(吐出制御の例)
次に、本実施形態における吐出チャネル45A(
図12参照)からのインクの吐出制御の例について説明する。
図15は、本実施形態におけるインクの吐出制御の一例を説明するための図である。
図15の上段は、圧力波振動による吐出圧力の時間変化、スイッチング圧力波による吐出圧力の時間変化を、それぞれ実線P
j1,P
c1で示す。スイッチング圧力波とは、スイッチング部62(
図13参照)により吐出チャネル45Aに生じた圧力波である。縦軸、横軸は、それぞれ圧力、時刻を示す。また、限界値P
1は、閾値P
thから圧力波振動による圧力の極大値P
maxを差し引いた差分である。
【0092】
圧力波振動の振動周波数は、制御ユニット8(
図13参照)が定めた共振周波数である。圧力波振動により吐出チャネル45A(
図12参照)内のインクの圧力波振動が共振することで、吐出チャネル45A内で周期的な圧力波振動が発生する。圧力波振動による吐出圧力は、時刻t
1,t
2,t
3のそれぞれにおいて極大値P
maxをとる。極大値P
maxは、閾値P
thよりも限界値P
1だけ低い。これに対して、スイッチング圧力波による吐出圧力は、時刻t
1,t
3のそれぞれにおいて限界値P
1となり、時刻t
1,t
3及びその近傍以外の時刻において0となる。そのため、P
j1とP
c1を重ね合わせたノズル孔43Aにおける圧力は、時刻t
1,t
3のそれぞれにおいてP
thを越えるので、インクが吐出される。これに対し、ノズル孔43A(
図12参照)における圧力は時刻t
2においてP
thを下回るので、インクが吐出されない。このスイッチング圧力波は、印刷制御データに基づく制御回路35A(
図13参照)の制御により、駆動電圧の印加されたスイッチング部62(
図13)が振動することによって生じたものである。
【0093】
図15の下段は、吐出チャネル45A(
図12参照)に対して制御ユニット8(
図13参照)で生成された印刷制御データが表示を行うか否かを示す。表示を行うこと(ON)が上向きの矢印で示され、表示を行わないこと(OFF)が黒丸で示される。時刻t
1−τ,t
2−τ,t
3−τにおいて、印刷制御データは、それぞれON,OFF,ONを指示する。これに基づいて、制御回路35A(
図13参照)は、時刻t
1−τ,t
3−τのそれぞれにおいて、スイッチング部62に印加する駆動電圧を第1電圧値(V1)に制御し、それ以外の時刻において駆動電圧を0Vに制御する。第1電圧値(V1)は、予め定めた正の電圧値である。スイッチング部62(
図13参照)に正の電圧値を印加された場合、本実施形態では、駆動壁46(
図6参照)がダミーチャネル45B(
図6参照)から陥入されるように変形される。この変形により、吐出チャネル45A(
図12参照)の容積が縮小して、圧力を高くするスイッチング圧力波が発生する。時刻t
1−τ,t
3−τは、それぞれ時刻t
1,t
3を遅延時間τだけ先行した時刻である。時刻t
1,t
3において、このスイッチング圧力波による吐出圧力の最大値が限界値P
1となり、ノズル孔43A(
図12参照)における圧力がP
thを越えるのでインクが吐出される。それ以外の時刻、例えば、時刻t
2では、ノズル孔43Aにおける圧力がP
thを下回るのでインクが吐出されない。これにより、制御ユニット8、制御回路35A及びスイッチング部62(
図13)は、印刷制御データに応じてインクの吐出の有無を制御することができる。
【0094】
このように、表示を行う画素(表示画素、つまり印刷が行われる画素)について圧力波振動の圧力に、スイッチング圧力波の圧力を同期して重畳して圧力波振動の圧力を強める動作態様(モード)を、ノーマリー(normaly)OFFモード(第1のモード)と呼ぶことがある。言い換えれば、ノーマリーOFFモードは、圧力波振動のピーク値P
maxは、ノズル孔43Aからのインクの吐出を可能にする圧力の閾値P
thを下回る動作モードである。また、ノーマリーOFFモードは、インクを吐出させる場合に、スイッチング圧力波の加える圧力が限界値P
1以上の値を有する動作モードである。
ノーマリーOFFモードでは、インクを吐出する場合、制御回路35A(
図13参照)は、例えば、ノズル孔43A(
図12参照)における圧力波振動の圧力が極大値P
maxとなったとき、スイッチング圧力波が到達するように、スイッチング部62(
図13参照)に印加する駆動電圧を第1電圧値(V1)に制御する。これにより、圧力波振動による圧力P
maxにスイッチング圧力波によるP
1以上の圧力が加わって強め合い、ノズル孔43Aにおける圧力が閾値P
thを超えるので、インクが吐出される。
なお、インクを吐出しない場合、制御回路35Aは、スイッチング部62に印加する駆動電圧を0Vに制御する。
【0095】
図16は、本実施形態におけるインクの吐出制御の他の例を説明するための図である。
図16の上段は、圧力波振動による吐出圧力の時間変化、スイッチング圧力波による吐出圧力の時間変化を、それぞれ実線P
j2、P
c2で示す。縦軸、横軸は、それぞれ圧力、時刻を示す。また、限界値P
2は、圧力波振動による圧力の極大値P
maxから閾値P
thを差し引いた差分である。
【0096】
圧力波振動の振動周波数は、制御ユニット8(
図13参照)が定めた共振周波数である。圧力波振動による吐出圧力は、時刻t
1,t
2,t
3のそれぞれにおいて極大値P
maxをとる。極大値P
maxは、閾値P
thよりも限界値P
2だけ高い。そのため、P
j2で示すノズル孔43A(
図12参照)における圧力は時刻t
1を含む時間(t
11〜t
12)おいてP
thを越えるので、インクが吐出される。これに対して、P
c2で示すスイッチング圧力波による吐出圧力は、時刻t
2,t
3において−P
2となり、また、時間(t
21〜t
22)、(t
31〜t
32)以外の時刻において0となる。P
j2とP
c2を重ね合わせたノズル孔43Aにおける圧力は時刻t
2,t
3のそれぞれを含む時間(t
21〜t
22)、(t
31〜t
32)においてP
thを下回るので、インクが吐出されない。このスイッチング圧力波は、印刷制御データに基づいて制御回路35A(
図13参照)が制御した駆動電圧が印加されたスイッチング部62(
図13参照)が振動することによって生じたものである。
【0097】
図16の下段は、吐出チャネル45A(
図12参照)に対して画像データに基づいて制御ユニット8で生成された印刷制御データが表示を行うか否かを示す。時刻t
1−τ,t
2−τ,t
3−τにおいて、印刷制御データは、それぞれON,OFF,OFFを指示する。これに基づいて、制御回路35A(
図13参照)は、時刻t
2−τ,t
3−τのそれぞれにおいて、スイッチング部62(
図13参照)に印加する駆動電圧を第2電圧値(V2)に制御し、それ以外の時刻において駆動電圧を0Vに制御する。第2電圧値(V2)は、予め定めた負の電圧値である。スイッチング部62に負の電圧値が印加された場合、駆動壁46(
図6参照)がダミーチャネル45B(
図6参照)へ突出するように変形される。この変形により、吐出チャネル45Aの容積が拡大して、圧力を低くするスイッチング圧力波が発生する。時刻t
2,t
3において、このスイッチング圧力波による吐出圧力の最小値が限界値−P
2となり、ノズル孔43A(
図12参照)における圧力がP
thを下回るのでインクが吐出されない。他方、時刻t
1では、ノズル孔43Aにおける圧力がP
thを越えるのでインクが吐出される。
【0098】
これにより、制御回路35A(
図13参照)及びスイッチング部62(
図13参照)は、印刷制御データに応じてインクの吐出の有無を制御することができる。なお、ノーマリーOFFモードの場合の第1電圧値(V1)とノーマリーONモードの場合の第2電圧値(V2)の絶対値は、同じであってもよいし、また、当該絶対値は異なっていてもよく、例えば第1電圧値(V1)の絶対値は第2電圧値(V2)の絶対値よりも低くても高くてもよい。
【0099】
つまり、ノーマリーONモードの場合、制御回路35A(
図13参照)には、第2電圧値(V2)が予め設定される。この第2電圧値(V2)は、圧力波振動の共振がない状態でスイッチング部62(
図13参照)に印加された場合、スイッチング圧力波の減ずる圧力が、限界値P
2以上になるものである。
ノーマリーONモードでは、インクを吐出する場合、制御回路35Aは、スイッチング部62に印加する駆動電圧を0Vに制御する。圧力波振動による圧力P
maxは閾値P
thを超えるので、インクが吐出される。
一方、インクを吐出しない場合、制御回路35Aは、例えば、ノズル孔43A(
図12参照)における圧力波振動の圧力が閾値P
thを超えるとき、スイッチング圧力波が到達するように、スイッチング部62に印加する駆動電圧を第2電圧値(V2)に制御する。これにより、圧力波振動による圧力からスイッチング圧力波による圧力が減ざれて弱め合い、ノズル孔43Aにおける圧力が閾値P
thより低くなるので、インクが吐出されなくなる。
【0100】
以上に説明したように、プリンタ1は、振動により、吐出チャネル45Aの液体中の圧力波を振動させる圧力変化部(外部振動子61)をさらに備え、制御部(制御ユニット8)は、第2電極(検出電極56A、コモン電極50C、検出電極56B、又はコモン電極50D)で検出された電圧の変動周期に基づいて圧力変化部を振動させ、第2電極で検出された電圧のピークに基づいて第1電極(駆動電極52A、コモン電極50A、駆動電極52B、又はコモン電極50B)に印加する電圧を制御する。
この構成によれば、圧力変化部は吐出チャネル45A内の圧力波振動を共振させることができ、制御部は共振した圧力波振動による圧力のピークに基づいて吐出チャネル45A内の圧力を変化させることができる。そのため、吐出孔(ノズル孔43A)からの液体の吐出の有無を効率よく制御することができる。
【0101】
また、プリンタ1では、制御部は、圧力波が吐出孔に到達するまでの時間に基づいて、吐出チャネル45Aの液体の圧力を変化させるタイミングを制御する。
この構成により、制御部は、圧力変化部が発生させた圧力波が吐出孔に到達するまでの時間を考慮して、吐出チャネル内の圧力を変化させることができる。そのため、吐出孔からの液体の吐出の有無の制御を確実に行うことができる。
【0102】
(変形例)
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1の実施形態では、制御ユニット8は、電圧検出部63から入力された検出電圧が示す電圧値が0Vから予め定めた閾値の範囲内に収束したと判定したときに、駆動電圧を0Vから駆動電圧値V
sに制御してもよい。これにより、吐出チャネル45Aに生じた残響の影響を避けることができる。
例えば、第2の実施形態では、制御ユニット8は、ノーマリーOFFモードとノーマリーONモードを切り替えてもよい。例えば、制御ユニット8は、ユーザの設定に基づいて、これらのモードを切り替える。また、制御ユニット8は、画像データ又は印刷制御データに基づいて、次の情報を算出し、算出した情報に基づいて、これらのモードを切り替えてもよい。
(1)予め定められた範囲での吐出回数を示す情報
(2)予め定められた範囲での吐出回数と吐出可能回数の割合を示す情報
なお、予め定められた範囲とは、ジョブ毎、画像データ毎、操作毎、時間毎、又は、これらのグループ毎であってもよい。
【0103】
例えば、上述した実施形態では、2枚のアクチュエータプレート40A,40Bを積層した、いわゆるシェブロン方式のアクチュエータプレート40を用いる場合について説明したが、これに限られない。例えば、分極方向が厚さ方向に一方向のアクチュエータプレートを用いてもよい。この場合には、駆動壁46の高さ方向中央部までコモン電極を形成することで、駆動壁46を屈曲変形させることができる。
さらに、上述した実施形態では、吐出チャネル45Aとダミーチャネル45Bとが交互に並んだ、いわゆるアイソレートタイプのヘッドチップ26について説明したが、これに限られない。例えば、吐出チャネル45Aが連続的に配列された、いわゆるシェアードウォールタイプのヘッドチップ26を採用することもできる。
【0104】
第2の実施形態では、外部振動子61を供給流路39の内壁面のうちインク導入孔41Aに対向する対向面上に設置する場合を例にとって説明したが、これには限られない。外部振動子61の配置は、振動することによってインク導入孔41Aに充填されたインクに外部圧力波を発生させることができ、各吐出チャネル45Aに外部圧力波を均しく伝搬させることができる位置に配置されていればよい。そのような位置は、例えば、インク導入孔41Aのうち吐出チャネル45Aの配列方向(Z方向)に平行な面上における任意の位置、圧力緩衝器32の貯留室の内壁面上における任意の位置、インク連結管33の内壁面
上における任意の位置、インク配管11の内壁面上における任意の位置、等である。それらの位置では、外部振動子61によりインクの通流が妨げられない。
また、外部振動子61は、各吐出チャネル45A内に定常的な圧力波振動を発生させることができれば、各吐出チャネル45Aの側壁40G、40Hに設置されてもよい。
また、上述した実施形態では、液体吐出制御回路28は、プリンタ1に装着されずに独立した回路部品として実施されてもよい。
【0105】
上述した実施形態では、インクジェットヘッド4が各吐出チャネル45Aの終端部にノズル孔43Aが設けられたエッジシュート型のインクジェットヘッドである場合を例にとって説明したが、これには限られない。プリンタ1は、インクジェットヘッド4に代え、各吐出チャネル45Aに供給されたインクを圧力緩衝器32の貯留室に還流させるサイドシュート型循環ヘッドが備えられてもよい。インクが循環することにより温度が低い領域でインクが冷却されるので、放熱が効率的に行われる。以下では、第2の実施形態の変形例に係るインクジェットヘッドを例にとって説明する。以下に説明する例において外部振動子61を省略することによって、第1の実施形態の変形例に係るインクジェットヘッドを構成することができる。
【0106】
図17は、本変形例に係るインクジェットヘッドの断面図である。
図17には、駆動電極52B、検出電極56BのY方向視した配置が重ね合わされている。
図17(A)に示すインクジェットヘッド4Iは、サイドシュート型循環ヘッドの一例である。インクジェットヘッド4Xは、圧力緩衝器32と流路部材31との間を接続する2本のインク連結管33A,33Bを備える。流路部材31の内部には、供給流路39Aと排出流路39Bが互いに独立に形成され、供給流路39Aと排出流路39Bは、それぞれインク連結管33A,33Bが接続されている。
【0107】
カバープレート41には、各吐出チャネル45Aにインクを供給するための供給口41Cと各吐出チャネル45Aからインクを排出するための排出口41Dとが互いに独立に形成されている。供給口41Cと排出口41Dは、各吐出チャネル45Aに設けられた2つの開口面の一方と他方のそれぞれに対向している。2つの開口面の一方は、それぞれ吐出チャネル45Aの長手方向(X方向)他端よりも一端に近い位置に配置され、アクチュエータプレート40の主面の一方(Zの負方向)に向けられている。2つの開口面の他方は、それぞれ吐出チャネル45Aの長手方向一端よりも他端に近い位置に配置され、アクチュエータプレート40の主面の一方(Zの負方向)に向けられている。
【0108】
インクは、インク連結管33Aから供給流路39A、供給口41Cを介して吐出チャネル45Aに導かれ、吐出チャネル45Aに導かれたインクは、排出口41D、排出流路39Bを介してインク連結管33Bに排出される。
吐出チャネル45Aのアクチュエータプレート40の主面の他方(Z方向)の側にはノズルプレート43が配置され、ノズルプレート43に形成されたノズル孔43Aは、吐出チャネル45Aの長手方向の両端のほぼ中間に配置されている。
【0109】
この例では、外部振動子61は、排出流路39Bの内壁面上に設置される。本変形例でも、外部振動子61の振動により発生した圧力波振動と、吐出チャネル45Aの容積変化によって発生したスイッチング圧力波とを干渉させてノズル孔43Aからのインクの吐出の有無を制御することができる。上述したように、ノーマリーOFFモード、ノーマリーONモードともに実現することができる。なお、外部振動子61は、供給流路39Aの内壁面上に設置されてもよい。
【0110】
図17(B)に示すインクジェットヘッド4Jは、サイドシュート型循環ヘッドの他の例である。
図17(B)では、流路部材31、インク連結管33A, 33Bの図示が省略されている。
図17(B)に示す例は、吐出チャネル45Aの長手方向の両端部の側壁のうち供給口41C、排出口41Dにそれぞれ対向している部分が丸みを帯びて湾曲している第1凹部47、第2凹部48を形成している点、コモン電極50が吐出チャネル45Aとノズルプレート43との間に形成されている点が、
図17(A)に示す例とは異なる。第1凹部47、第2凹部48が形成されていることにより、供給流路39Aと供給口41Cとの間や、排出流路39Bと排出口41Dとの間でのインクの循環を円滑に行うことができる。
【0111】
この例では、外部振動子61は、排出口41Dの内壁面上に設置される。本変形例でも、外部振動子61の振動により発生した圧力波振動と、吐出チャネル45Aの容積変化によって発生したスイッチング圧力波とを干渉させてノズル孔43Aからのインクの吐出の有無を制御することができる。上述したように、ノーマリーOFFモード、ノーマリーONモードともに実現することができる。なお、外部振動子61は、供給口41Cの内壁面上に設置されてもよい。
また、
図17(C)に示すように、インクジェットヘッド4Kは、2個の外部振動子61C,61Dを、それぞれ供給口41C、排出口41Dの内壁面上に備えてもよい。
【0112】
インクジェットヘッドとしてサイドシュート型循環ヘッドが用いられる場合、プリンタ1は、インクを循環するための循環ポンプを備える。循環ポンプは、ヘッドチップ26、カバープレート41、流路部材31から離れた部位、例えば、インクタンク10の近傍に配置される。循環ポンプには、所定の周期で圧力が振動する圧力波を発生させてインクを循環させるものがある。そこで、外部振動子61は、その循環ポンプで形成されていてもよい。即ち、循環ポンプが発生する圧力波の振動周波数を、吐出チャネル45Aの共振周波数又はその共振周波数から予め定めた範囲内の周波数に設定する。これにより吐出チャネル45A内に充填されたインクを共振させることができ、圧力波を発生させる際のエネルギー効率を向上させることができる。
【0113】
また、上述した実施形態では、液体吐出装置の一例として、プリンタ1を例に挙げて説明したが、インクジェットプリンタに限られるものではない。本実施形態に係る液体吐出装置は、例えば、ファクシミリ装置やオンデマンド印刷機等であっても構わない。
また、上述した実施形態では、インクジェットヘッド4が複数搭載された複数色用のプリンタ1について説明したが、これには限られない。例えば、インクジェットヘッドが、1つの単色用のプリンタ1としても構わない。
【0114】
また、本発明の実施形態で用いられるインクとしては、水性インクや油性インク、UVインク、微細金属粒子インク、炭素インク(カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、グラフェン)等、種々の材料を用いることができる。なお、上述したインクのうち、水性インクや油性インク、UVインクは複数色用のプリンタ1に好適に用いられ、微細金属粒子インク、炭素インクは単色用のプリンタ1に好適に用いられる。
【0115】
なお、上述した実施形態におけるプリンタ1が備える各部の機能全体あるいはその一部、例えば、制御ユニット8、制御回路35A、35Bは、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0116】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。