(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202579
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】冷間圧延による平鋼製品及びそれを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20170914BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20170914BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
C22C38/00 301T
C21D9/46 H
C22C38/58
C22C38/00 301U
C21D9/46 F
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-523569(P2015-523569)
(86)(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公表番号】特表2015-528065(P2015-528065A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】EP2013065838
(87)【国際公開番号】WO2014016421
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】12178332.8
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514309479
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】THYSSENKRUPP STEEL EUROPE AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ハメル,ブリギッテ
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヒスケル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】カヴァラ,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】コルパラ,グルツェゴルツ
【審査官】
川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−065273(JP,A)
【文献】
特開2010−065272(JP,A)
【文献】
特開2010−180446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00−38/60
C21D 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷間圧延による平鋼製品であって、
少なくとも1400MPaの引張強さRm及び少なくとも5%の伸びA80を有しており、
少なくとも炭素、ケイ素、アルミニウム、マンガン、銅、クロム、チタン及びバナジウムを含んでおり、重量%で、
炭素(C): 0.10乃至0.60%、
ケイ素(Si): 0.4乃至2.5%、
アルミニウム(Al):3.0%以下、
マンガン(Mn): 0.4乃至3.0%、
ニッケル(Ni): 1.0%以下、
銅(Cu): 2.0%以下、
モリブデン(Mo): 0.4%以下、
クロム(Cr): 2%以下、
コバルト(Co): 1.5%以下、
チタン(Ti): 0.2%以下、
ニオブ(Nb): 0.2%以下、
バナジウム(V): 0.5%以下、
残部:鉄及び不可避の不純物からなり、前記平鋼製品の微細構造が、
少なくとも20体積%のベイナイトと、
10乃至35体積%の残留オーステナイトと、
残りのマルテンサイトとから成り、
前記残留オーステナイトが、主に、5μm未満の結晶粒径を有する残留オーステナイト群の小さな、球状の島を具えた膜形式で前記冷間圧延による平鋼製品に存在することを特徴とする平鋼製品。
【請求項2】
炭素含有量が、少なくとも0.25重量%であることを特徴とする請求項1に記載の平鋼製品。
【請求項3】
炭素含有量が、少なくとも0.27重量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の平鋼製品。
【請求項4】
ケイ素含有量が、少なくとも1.0重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の平鋼製品。
【請求項5】
アルミニウム含有量が、少なくとも0.01重量%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の平鋼製品。
【請求項6】
銅含有量が、少なくとも0.2重量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の平鋼製品。
【請求項7】
銅含有量が、少なくとも0.55重量%であることを特徴とする請求項5に記載の平鋼製品。
【請求項8】
クロム含有量が、少なくとも0.3重量%であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の平鋼製品。
【請求項9】
マンガン、クロム、ニッケル、銅及び炭素の含有量が、
%Mnを各マンガン含有量の重量%、
%Crを各クロム含有量の重量%、
%Niを各ニッケル含有量の重量%、
%Cuを各銅含有量の重量%、
%Cを各炭素含有量の重量%、
とするとき、
1<0.5%Mn+0.167%Cr+0.125%Ni+0.125%Cu+1.334%C<2
の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の平鋼製品。
【請求項10】
前記微細構造が、少なくとも50体積%のベイナイトを具えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の平鋼製品。
【請求項11】
前記微細構造が、10乃至25体積%の残留オーステナイトを具えることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の平鋼製品。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の平鋼製品を製造するための方法であって、当該方法が、
スラブ、薄スラブ又は鋳造片の形態の予製品を提供するステップであって、前記スラブ、薄スラブ又は鋳造片が、少なくとも炭素、ケイ素、アルミニウム、マンガン、銅、クロム、チタン及びバナジウムを含んでおり、重量%で、炭素(C):0.10乃至0.60%、ケイ素(Si):0.4乃至2.5%、アルミニウム(Al):3.0%以下、マンガン(Mn):0.4乃至3.0%、ニッケル(Ni):1.0%以下、銅(Cu):2.0%以下、モリブデン(Mo):0.4%以下、クロム(Cr):2%以下、コバルト(Co):1.5%以下、チタン(Ti):0.2%以下、ニオブ(Nb):0.2%以下、バナジウム(V):0.5%以下、残部:鉄及び不可避の不純物からなる、ステップと、
前記予製品を熱間圧延して、1又はそれ以上の圧延ロールで熱延鋼板を形成するステップであって、得られた前記熱延鋼板が、最後の圧延ロールを出る際に、少なくとも830℃の熱間圧延終了温度を有する、ステップと、
前記得られた熱延鋼板を、前記熱間圧延終了温度と560℃との間のコイリング温度でコイリングするステップと、
前記熱延鋼板を冷間圧延して、少なくとも30%の冷間圧延度で冷延鋼板を形成するステップと、
得られる前記冷延鋼板を熱処理するステップと、
を具えており、
前記熱処理の工程において前記冷延鋼板が、
少なくとも800℃に達する焼鈍温度に加熱され、
前記焼鈍温度から開始され、470℃の上限を有し前記冷延鋼板の微細構造にマルテンサイトが形成するマルテンサイト開始温度MSよりも高い下限を有する保持温度範囲の保持温度まで、少なくとも8℃/sに達する冷却速度で冷却され、
前記冷延鋼板の微細構造に少なくとも20体積%のベイナイト形成をするのに十分な時間、前記保持温度で保持されることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記熱間圧延終了温度が、850乃至950℃であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記保持温度が、300乃至420℃であることを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記冷延鋼板が、前記熱処理の後に金属保護層でコーティングされることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1400MPaの引張強さRm及び少なくとも5%の伸びA80を有する冷間圧延による平鋼製品に関する。このタイプの製品は、良好な伸び特性と組み合わさった非常に高い強度によって際立っており、特に自動車の車体の部品の製造に適している。
【0002】
また、本発明は、本発明に係る平鋼製品を製造するための方法に関する。
【0003】
「平鋼製品」という用語は、ここでは、圧延プロセスによって製造される鋼板又は鋼帯及びそれらから分けられる鋼片(シートバー)等を意味するものとして理解される。
【0004】
ここで合金の含有量が単に「%」と記載される場合、それ以外を明示的に記載しない限り、これは常に「重量%」を意味する。
【背景技術】
【0005】
EP1466024B1(DE60315129T2)は、1000MPaをはるかに超える引張強さを有することを目的とした平鋼製品を製造するための方法を開示している。これを実現するために、(重量%で、)0.0005乃至1%の炭素、0.5乃至10%の銅、2%以下のマンガン、5%以下のケイ素、0.5%以下のチタン、0.5%以下のニオブ、5%以下のニッケル、2%以下のアルミニウム及び残りの鉄と製造に関する理由で不可避の不純物とを具える鋼の溶解物が製造されている。この溶解物は鋳込まれて最大でも10mmの厚さの鋼帯を形成し、水又は水と空気との混合物を吹き付けることによって、最大でも1000℃の温度に急冷される。その後、鋳造された鋼帯は、従来の圧延比で熱間圧延される。熱間圧延が、全ての銅がフェライト及び/又はオーステナイト母相の固溶体で静止する終了温度で終了する。その後、鋼帯は、フェライト及び/又はオーステナイト固溶体の過飽和固溶体中で銅を維持するために、急冷工程を受ける。コイルを形成するためのコイリングの後、冷延鋼板が、熱延鋼板から40乃至80%に達する冷間圧延度で圧延して得られる。その後、冷延鋼板が再結晶化焼鈍を施され、その間に、できる限り迅速に840℃の範囲にある焼鈍温度に加熱され、鋼に存在する可能な限り最大限の割合の銅を固溶させるために、その温度で保持される。これに続いて、400乃至700℃の温度に急冷され、その温度で銅の析出が再び形成する。このような方法により、析出硬化は、所望の強度レベルの鋼を実現することを目的とする。同時に、銅の含有は、酸化保護層の形成を通して鋼の耐食性及び耐脆化性を増加させることを目的とする。
【0006】
極度に強い冷延鋼板を製造するためのさらなる方法が、US7,591,977B2によって知られている。この方法によれば、(重量%で、)0.1乃至0.25%の炭素、1.0乃至2.0%のケイ素及び1.5乃至3.0%のマンガンを具える熱延鋼板が、30乃至70%の冷間圧延度で圧延されて冷延鋼板を形成し、その後、連続式の圧延孔型で行われる熱処理が施される。この熱処理では、冷延鋼板が、冷延鋼板に存在する炭化物を固溶させるために、第1の焼鈍段階で、そのAr3温度よりも高い第1の焼鈍温度に加熱される。これに続いて、第1の焼鈍温度から少なくとも10℃/sの冷却速度で、第2の焼鈍温度に冷却される。この温度は、ベイナイトが冷延鋼板に形成するように選択され、一般に300乃至450℃の範囲内にある。ベイナイトを形成するよう実施されるこの第2の焼鈍段階は、冷延鋼板の微細構造が、少なくとも60%の程度のベイナイト及び少なくとも5%の程度の残留オーステナイト及び残りとして多角形フェライトで構成されるまで行われる。ここでの目的は、微細構造を可能な限り最大限ベイナイト化するためであり、他の構成要素の微細構造の存在を多くても微量にするためである。このようにして提供される冷延鋼板は、少なくとも9%の伸びが組み合わさって最大で1180MPaの引張強さを達成し、必要に応じて、腐食に対する保護を与える金属層でコーティングされ得る。
【0007】
上述の従来技術の背景に対して、簡易且つ操作的に信頼性があり、強度及び変形能をさらに増加させる最適な組み合わせを有する方法で冷間圧延による平鋼製品を提供することが本発明の目的であった。さらに、本発明は、このような冷間圧延による平鋼製品を製造するための方法を提供することであった。
【発明の概要】
【0008】
冷間圧延による平鋼製品に関して、本発明に係る請求項1に記載の平鋼製品により、この目的は達成された。
【0009】
本方法に関して、上述の目的は、本発明により達成され、そこでは、請求項12に記載の工程が、本発明に係る冷間圧延による平鋼製品を製造するよう実施される。
【0010】
本発明の有利な構成が従属請求項に示されており、本発明の一般的概念として以下で詳細に説明されている。
【0011】
本発明に係る冷間圧延による平鋼製品は、鉄及び不可避な不純物に加えて、(重量%で、)
炭素(C): 0.10乃至0.60%、
ケイ素(Si): 0.4乃至2.5%、
アルミニウム(Al):3.0%以下、
マンガン(Mn): 0.4乃至3.0%、
ニッケル(Ni): 1.0%以下、
銅(Cu): 2.0%以下、
モリブデン(Mo): 0.4%以下、
クロム(Cr): 2%以下、
コバルト(Co): 1.5%以下、
チタン(Ti): 0.2%以下、
ニオブ(Nb): 0.2%以下、
バナジウム(V): 0.5%以下
を具えるという事実により際立っている。
【0012】
ここで、冷間圧延状態では、本発明に係る平鋼製品の微細構造が、少なくとも20体積%の程度のベイナイトと、10乃至35体積%の程度の残留オーステナイトと、残りのマルテンサイトから成り、技術的に不可避な微量の他の微細構造の構成要素が、平鋼製品の微細構造に存在することが言うまでもなく明らかである。このような方法で提供される本発明に係る冷間圧延による平鋼製品は、通常、少なくとも1400MPaの引張強さRm及び少なくとも5%の伸びA80を達成する。残留オーステナイトの炭素含有量は、一般に、1.0重量%よりも高い。
【0013】
本発明にしたがって提供又は構成される平鋼製品を製造するための本発明に係る方法は、スラブ、薄スラブ又は鋳造片の形態の予製品を提供するステップであって、スラブ、薄スラブ又は鋳造片が、鉄及び不可避の不純物に加えて、重量%で、炭素(C):0.10乃至0.60%、ケイ素(Si):0.4乃至2.5%、アルミニウム(Al):3.0%以下、マンガン(Mn):0.4乃至3.0%、ニッケル(Ni):1.0%以下、銅(Cu):2.0%以下、モリブデン(Mo):0.4%以下、クロム(Cr):2%以下、コバルト(Co):1.5%以下、チタン(Ti):0.2%以下、ニオブ(Nb):0.2%以下、バナジウム(V):0.5%以下を具える、ステップと、
予製品を熱間圧延して、1又はそれ以上の圧延孔型で熱延鋼板を形成するステップであって、得られた熱延鋼板が、最後の圧延孔型を出る際に、少なくとも830℃の熱間圧延終了温度を有する、ステップと、
得られた熱延鋼板を、熱間圧延終了温度と560℃との間のコイリング温度でコイリングするステップと、
熱延鋼板を冷間圧延して、少なくとも30%の冷間圧延度で冷延鋼板を形成するステップと、
得られる冷延鋼板を熱処理するステップと、
を具えており、
熱処理の工程において冷延鋼板が、
少なくとも800℃に達する焼鈍温度に加熱され、
50乃至150秒の焼鈍時間の間、焼鈍温度で任意に保持され、
焼鈍温度から開始され、470℃の上限を有し冷延鋼板の微細構造にマルテンサイトが形成するマルテンサイト開始温度MSよりも高い下限を有する保持温度範囲の保持温度まで、少なくともに達する8℃/sの冷却速度で冷却され、
冷延鋼板の微細構造に少なくとも20体積%のベイナイト形成をするのに十分な時間、保持温度で保持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1では、達成する引張強さRmが、各焼鈍温度T2に対してプロットされている。
【
図2】
図2では、鋼S4から製造される冷延鋼板の試料の引張強さが、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対してプロットされている。
【
図3】
図3では、鋼S5から製造される冷延鋼板の試料の引張強さが、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対して同様にプロットされている。
【
図4】
図4では、鋼S4から製造される冷延鋼板の試料の伸びA80が、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対して同様にプロットされている。
【
図5】
図5では、鋼S5から製造される冷延鋼板の試料の伸びA80が、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対してプロットされている。
【
図6】
図6は、本発明に係る冷延鋼板の断面のある範囲での拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る鋼帯は、3相の微細構造を有しており、その主要な構成要素はベイナイトであり、さらには残留オーステナイト及び残りとしてマルテンサイトから成る。ベイナイトの割合は少なくとも50体積%であり、特に少なくとも60体積%であり、残留オーステナイトの割合は10乃至25体積%の範囲内にあり、微細構造の残りがいずれのケースにおいてもマルテンサイトから成ることが、ここでは最適である。最適なマルテンサイトの割合は、少なくとも10体積%である。このような組成を有する微細構造は、Rm*A80と所要の引張強さとの最良な組み合わせをもたらす。
【0016】
主要な成分である「ベイナイト」、「オーステナイト」及び「マルテンサイト」に加えて、他の微細構造の構成要素を含めることが可能であるが、これらの割合は低過ぎて、本発明の冷間鋼板の特性に影響しない。残留オーステナイトは、5μm未満の結晶粒径を有する残留オーステナイト群の小さな、球状の島を具えた膜形式で本発明の冷間鋼板中に存在しており、残留オーステナイトは初期段階で高い安定性を有し、これに関連して、望ましくないマルテンサイト変態の傾向が低い。変形の程度が高い場合には、このような残留オーステナイトからマルテンサイトが形成され(TRIP効果)、これは破断時の伸びを増加させる。
【0017】
本発明によって製造される冷間鋼板は、通常は同様に5%を超える伸びA80とともに、通常は1400MPaを超える引張強さRmを実現する。したがって、本発明の平鋼製品の品質Rm*A80は、通常、約7000MPa*%を超え、一般的には少なくとも13500MPa*%の品質Rm*A80を実現する。このような本発明の冷間鋼板は、極めて大きな強さ及び十分な変形能との最適な組み合わせを有する。
【0018】
マルテンサイト開始温度、すなわち、本発明のプロセスによりマルテンサイトが鋼中に形成する温度は、Metal Science 15(1981),pages 178−180に開示されたH.BhadeshiaによるThermodynamic Extrapolation and Martensite−Start−Temperature of Substitutionally Alloyed Steels」と題される論文で説明されている手順に基づいて計算できる。
【0019】
本発明の鋼では、炭素がフェライト/パーライト変態を遅らせ、マルテンサイト開始温度MSを低下させ、硬さの増加に貢献する。これらの好ましい効果を利用するために、本発明の平鋼製品の炭素含有量を、少なくとも0.25重量%、特に少なくとも0.27重量%又は少なくとも0.28重量%に設定でき、炭素含有量が、>0.25乃至0.5重量%の範囲、特に0.27乃至0.4重量%又は0.28乃至0.4重量%である場合に、特に確実に利用される比較的高い炭素含有量により上記の効果を実現可能である。
【0020】
また、銅の強度増加作用も、本発明の冷間圧延平鋼製品で利用できる。この点において、少なくとも0.15重量%、特に0.2重量%の最小含有量の銅が本発明の平鋼製品に存在する。銅は、少なくとも0.55重量%の含有量で本発明の平鋼製品に存在する場合、銅含有量が最大でも1.5重量%に制限されるという事実のため銅の存在による悪影響を制限でき、強度に特に効果的な寄与をする。
【0021】
本発明によって処理される鋼では、少なくとも0.4重量%で最大で3重量%特に最大で2.5重量%のマンガン含有量がベイナイトの形成を促進し、任意に追加される銅、クロム及びニッケル含有量がベイナイトの形成に同様に寄与する。本発明によって処理される鋼の他のそれぞれの構成要素に応じて、最大で2重量%にマンガン含有量を制限し、又は1.5重量%にマンガンの最小含有量を増加させるのがここでは好適である。
【0022】
また、クロムの任意の追加がマルテンサイト開始温度を低下させ、ベイナイトからパーライト又はセメンタイトへの変態の傾向を抑える。さらに、本発明で規定されているように最大で2重量%の上限までの含有量では、クロムの含有量が1.5重量%に限定される場合に生じる本発明の冷間圧延平鋼製品でのクロムの存在による任意の効果によって、クロムがフェライト変態を促進する。クロムの好ましい影響は、少なくとも0.3重量%のクロムが本発明の平鋼製品に存在する場合に、特に効果的に利用され得る。
【0023】
追加のチタン、バナジウム及びニオブは同様に任意であり、微細子の微細構造の形成を助け、ベイナイト変態を促進する。さらに、これらのマイクロ合金元素は、析出の形成を通して硬さの増加に寄与する。チタン、バナジウム及びニオブの好ましい効果を、これらの元素の各含有量が0.002乃至0.15重量%の範囲にあり、特に0.1重量%を超えない場合に、本発明の冷間圧延平鋼製品の特に効果的な方法で利用できる。
【0024】
本発明の平鋼製品では、0.40乃至2.5重量%の含有量のケイ素が存在しており、顕著な固溶をもたらす。特に確実な方法でこの効果を利用するために、少なくとも1.0重量%にケイ素含有量を設定できる。同様に、悪影響を避けるために、ケイ素の含有量を最大でも2重量%に制限することが好ましい。
【0025】
本発明によって処理される鋼では、アルミニウムが、ケイ素含有量に部分的に代わり得る。同時に、ケイ素と同様にアルミニウムは、製鋼の際に脱酸作用を有する。この目的のために、0.01重量%の最小アルミニウム含有量を提供できる。例えば、アルミニウムの追加が、変形能の改善のために比較的低い値に鋼の硬さ又は引張強さを設定することを意図する場合に、より高いアルミニウム含有量が好ましいことが分かっている。
【0026】
ケイ素及びアルミニウムのさらなる作用は、炭素の固溶を低い温度まで下げることによって、ベイナイトにおける炭化物形成を抑えることで残留オーステナイトを安定化させることである。
【0027】
このため、アルミニウム及びケイ素が同時に存在することの好ましい影響を、本発明によって規定された制限内のケイ素及びアルミニウム含有量が、%Si+0.8%Al>1.2重量%(%Siをそれぞれのケイ素含有量の重量%で、%Alをそれぞれのアルミニウム含有量の重量%とする)の条件を満足する場合に、特に効果的に利用できる。
【0028】
本発明の所定の微細構造の形成は、本発明によって処理される鋼中のマンガン、クロム、ニッケル、銅及び炭素の含有量が、したがって、本発明の平鋼製品のマンガン、クロム、ニッケル、銅及び炭素の含有量が、
1<0.5%Mn+0.167%Cr+0.125%Ni+0.125%Cu+1.334%C<2
という条件を満足するという事実により、特に確実にすることができる。ここで、%Mnは、それぞれのマンガン含有量の重量%を示し、%Crは、それぞれのクロム含有量の重量%を示し、%Niは、それぞれのニッケル含有量の重量%を示し、%Cuは、それぞれの銅含有量の重量%を示し、%Cは、それぞれの炭素含有量の重量%を示す。
【0029】
本発明の平鋼製品を製造するために、本発明の組成を有する鋼から鋳造される一次製品又は予製品が、最初に、830℃乃至1000℃の範囲にある熱間圧延終了温度で熱間圧延を終了するのに十分なある温度にされ又はある温度で保持され、この温度から熱間圧延が実施される。鋳物が熱間圧延のために使用される最後の圧延機スタンドを出ると、熱延鋼板がその圧延機スタンドに隣接する圧延テーブル上で冷却される。圧延テーブルの後で、熱延鋼板がコイリング装置の中を通過し、そこで巻かれてコイルを形成する。
【0030】
コイリング温度は、フェライト及びパーライトから成る比較的軟らかい熱延鋼板の微細構造が形成されるように、少なくとも560℃である必要がある。このような目的のために最適な温度プロファイルは、熱間圧延終了温度が850℃乃至950℃の範囲、特に880℃乃至950℃の範囲にある場合に生じる。この目的を達成するために、一般に、予製品が1100℃乃至1300℃の範囲にある温度に加熱され、又は熱間圧延の前にこの温度で保持される。このため、得られる熱延鋼板の微細構造は、主として、フェライト及びパーライトから成る。生じる結晶粒径の酸化のリスクを、コイリング温度が最大でも750℃に制限されるという事実により最小限にできる。
【0031】
コイリングの後、熱延鋼板が冷間圧延されるが、熱延鋼板が、冷間圧延の前に化学的又は機械的手段によって脱スケールできることはいうまでもない。
【0032】
冷間圧延は、これに続く焼鈍の間の再結晶化及び変態を加速させるために、少なくとも30%、特に少なくとも45%の冷間圧延度で効果的である。一般に、より良好な表面の品質も、冷間圧延の高い程度に対応して得られる。この目的のために少なくとも50%の冷間圧延度が特に好適であることが分かっている。
【0033】
冷間圧延の後に、本発明によって得られる冷延鋼板が、連続圧延孔型で焼鈍サイクルを完了するが、そのサイクルの際には、冷延鋼板が少なくとも800℃、好適には少なくとも830℃の温度に第1の焼鈍段階で加熱される。この第1の焼鈍段階は、少なくとも冷延鋼板が完全にオーステナイト化するような期間、継続する。一般に50乃至150秒が、これに要する。
【0034】
第1の焼鈍段落の最後に、少なくとも8℃/s、特に10℃/sの冷却速度で、製品が急冷される。この急冷のための目標温度は、最大でも470℃の保持温度であり、マルテンサイトが冷延鋼板の微細構造に形成するマルテンサイト開始温度MSよりも高い。実際には、300乃至420℃、特に330乃至420℃の範囲を、保持温度が存在する範囲の指標として使用できる。
【0035】
各保持温度から進んで、冷延鋼板が、第2の焼鈍段階の保持温度範囲で、正確には、少なくとも20体積%の微細構造の冷延鋼板がベイナイトに変態するまで保持される。ここでは、保持は、冷却の際に達する保持温度での等温保持として、又は保持温度範囲内での徐冷として実施できる。
【0036】
本発明で製造される平鋼製品を、金属保護層による従来の方法でコーティングできる。金属コーティングの適用の前に焼鈍を要する場合、本発明で提供される熱処理をこの焼鈍の過程で実施できる。
【0037】
本発明は、典型的な実施例に基づいて以下でより詳細に説明できる。
【0038】
5種類の鋼S1乃至S5を溶解した。その組成を表1に示す。
【0039】
対応する組成の鋼の溶解物が従来の方法で鋳込まれてストランドを形成し、そこからスラブが分けられた。その後、このスラブは、再加熱温度に同じような従来の方法で加熱された。
【0040】
加熱スラブが、同じような従来の圧延機スタンド群で熱間圧延され、2mmの厚さを有する熱延鋼板を形成した。
【0041】
熱間圧延終了温度は、各ケースにおいて830乃至900℃の範囲であった。熱延鋼板が冷却され、その温度から560℃を超えるコイリング温度に進み、その後、コイルを形成するためにコイリングされた。
【0042】
このようにして得られた熱延鋼板は、コイリングの後に脱スケールされ、脱スケールの後、50%の冷間圧延度で冷間圧延され冷延鋼板を形成した。
【0043】
その後、これらの比較的大量の冷延鋼板の試料が熱処理を施され、そこでは、830乃至850℃の範囲の第1の焼鈍温度に少なくとも1.9℃/sの加熱速度で第1の焼鈍段階で加熱された。冷延鋼板が、完全に加熱されるまで、120秒の間この温度で保持された。
【0044】
続いて急冷が行われ、その間に冷延鋼板が、350乃至420℃の範囲の保持温度T2に少なくとも8℃/sに達する冷却速度で急冷された。特に、試験の第1のバッチの保持温度T2は、300℃、310℃、330℃、340℃、375℃、390℃及び410℃であった。冷延鋼板の試料は、焼鈍期間t2の間、各保持温度T2で保持された。
【0045】
図1では、達成する引張強さRmが、各焼鈍温度T2に対してプロットされている。鋼S5から製造される冷延鋼板の試料が、それぞれ特定の焼鈍条件の下でのみ、1400MPaの所要の最小引張強さを達成し、他の鋼から製造される冷延鋼板の試料の引張強さが、常に1400MPaの最小限よりも確実に高いことが見られる。本発明の所定の含有量の範囲の下限にある比較的低い炭素含有量の鋼S5は、この理由により特定された。
【0046】
図2では、鋼S4から製造される冷延鋼板の試料の引張強さが、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対してプロットされている。310℃、330℃及び350℃の保持温度、すなわち、310乃至350℃の範囲の保持温度で保持された冷延鋼板が、それぞれの焼鈍期間t2に関わりなく、1400MPaの所要の引張強さRmを達成したことが見られる。
【0047】
図3では、鋼S5から製造される冷延鋼板の試料の引張強さが、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対して同様にプロットされている。ここでは、350℃及び390℃の保持温度、すなわち350℃乃至390℃の範囲の保持温度で保持される冷延鋼板の試料が、焼鈍期間t2が145秒よりも短い場合に、1400MPaの所要の引張強さRmを達成することが見られる。
【0048】
図4では、鋼S4から製造される冷延鋼板の試料の伸びA80が、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対して同様にプロットされている。310℃、330℃及び350℃の保持温度、すなわち310℃乃至350℃の範囲の保持温度で保持される冷延鋼板の試料が、それぞれの焼鈍期間t2に関わりなく、所要の最小伸びA80を達成した。
【0049】
図5では、鋼S5から製造される冷延鋼板の試料の伸びA80が、第2の焼鈍段階の焼鈍期間t2に対してプロットされている。ここでも、冷延鋼板の試料が、それぞれのその保持温度T2に関わりなく、及びそれぞれの焼鈍期間t2に関わりなく、少なくとも5%の所要の伸びA80を達成することが見られる。したがって、短い焼鈍期間及び適切に低い保持温度T2が観察される場合、比較的低い炭素含有量にも関わらず、鋼S5から製造される高抗張力Rmが十分な伸びA80と組み合わさった本発明に係る冷間圧延による平鋼製品も可能である。
【0050】
図6は、本発明に係る冷延鋼板の断面のある範囲での拡大図を示す。本図では、例として、残留オーステナイトの塊RA−bに印が付され、薄膜状の残留オーステナイトRA−fがラメラー層で存在するポイントが丸く囲むことによって強調されている。