特許第6202581号(P6202581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202581ハイブリッドカーカスプライを有するランフラット走行可能に設計されたタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202581
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ハイブリッドカーカスプライを有するランフラット走行可能に設計されたタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 17/00 20060101AFI20170914BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20170914BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20170914BHJP
   D02G 3/26 20060101ALI20170914BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B60C17/00 B
   B60C9/00 G
   B60C9/00 D
   B60C9/00 B
   D02G3/04
   D02G3/26
   D02G3/48
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-536145(P2015-536145)
(86)(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公表番号】特表2015-536269(P2015-536269A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2013071260
(87)【国際公開番号】WO2014057082
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年7月7日
(31)【優先権主張番号】1259756
(32)【優先日】2012年10月12日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ ソレンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヌエ ジャン−イヴ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨマン ジェレミー
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−030868(JP,A)
【文献】 特開2012−148661(JP,A)
【文献】 特開2012−030737(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063913(WO,A1)
【文献】 特開平06−016005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 17/00
B60C 9/00
D02G 1/00−3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランフラット走行することができるよう設計されたタイヤ(10)において、前記タイヤは、アラミドで作られた少なくとも1本のマルチフィラメント諸撚りストランド(54)及びポリエステルで作られていて撚り合わされた少なくとも1本のマルチフィラメント諸撚りストランド(56)を含む少なくとも1本の補強要素(36)を有するカーカス補強材(32)と、前記カーカス補強材(32)の軸方向内側に配置されたサイドウォールインサート(44)と、を備え、
前記補強要素(36)は、アラミドで作られた単一のマルチフィラメント諸撚りストランド(54)及びポリエステルで作られた単一のマルチフィラメント諸撚りストランド(56)を有する、タイヤ。
【請求項2】
前記カーカス補強材(32)は、1枚の単一カーカスプライ(34)を含む、請求項1記載のタイヤ(10)。
【請求項3】
各々が少なくとも1つの環状補強構造体(26)を有する2つのビード(24)を有し、前記カーカス補強材(32)は、前記環状補強構造体(26)周りに折り返されることによって前記ビード(24)の各々内に繋留されている、請求項1又は2記載のタイヤ(10)。
【請求項4】
アラミドで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(54)の番手は、100〜400テックス(端の値を含む)である、請求項1〜のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項5】
アラミドで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(54)の番手は、140〜210テックス(端の値を含む)である、請求項に記載のタイヤ(10)。
【請求項6】
ポリエステルで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(56)の番手は、100〜500テックス(端の値を含む)である、請求項1〜のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項7】
ポリエステルで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(56)の番手は、100〜170テックス(端の値を含む)である、請求項に記載のタイヤ(10)。
【請求項8】
アラミドで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(54)の番手とポリエステルで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(56)の番手の比は、0.2〜4である、請求項1〜のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項9】
アラミドで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(54)の番手とポリエステルで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(56)の番手の比は、1〜1.3である、請求項に記載のタイヤ(10)。
【請求項10】
アラミドで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(54)の撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)である、請求項1〜のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項11】
アラミドで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(54)の撚り数は、1m当たり340〜420回(端の値を含む)である、請求項10に記載のタイヤ(10)。
【請求項12】
ポリエステルで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(56)の撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)である、請求項1〜11のうちいずれか一に記載のタイヤ(10)。
【請求項13】
ポリエステルで作られた前記マルチフィラメント諸撚りストランド(56)の撚り数は、1m当たり340〜420回(端の値を含む)である、請求項12に記載のタイヤ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットな(パンクした)状態で走行(以下、「ランフラット走行」という)することができるよう設計されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
数年間、タイヤ製造業者は、車両に搭載するスペアホイール(スペアタイヤ)の存在を不要にすると同時に、車両がタイヤのうちの1本又は2本以上から圧力が著しく失われ又は完全に失われているにもかかわらず、その走行を続けることができるようにすることを保証しようとした。それにより、例えば、スペアホイールを取り付ける上で危険な場合の多い環境下において、停車させる必要なくサービスセンタまでたどり着くことができる。
【0003】
1つの想定される解決手段は、ランフラット走行することができるよう設計されると共に自立型サイドウォール(「ゼロ圧力(zero pressure)」について英語の商品表示“ZP”又は「自立型タイヤ(self supporting tyre)」について英語の商品表示“SST”と呼ばれる場合がある)を備えたタイヤを用いることである。
【0004】
ランフラット走行することができるよう設計されていると共に補強要素の2枚のクラウンプライで作られたクラウン補強材を有すると共にトレッドを載せたクラウンを有するタイヤが先行技術から知られている。2つのサイドウォールは、クラウンの半径方向内方への延長部をなしている。これらサイドウォールは、圧力が減少した状態で又はそれどころか圧力がゼロの状態で荷重を支持することができるゴムインサートによって補強されている。
【0005】
タイヤは、各々がビードワイヤ及びビードワイヤからサイドウォールを通ってクラウンまで延び且つ補強要素の2枚のカーカスプライを有するカーカス補強材を含む2つのビードを更に有している。カーカスプライのうちの一方は、ビードワイヤの周りに折り返されることによってビードの各々に繋留され(anchored)、他方のカーカスプライは、ビードワイヤの半径方向内側で終端している。2枚のカーカスプライは、レーヨンで作られた繊維補強要素から成る。
【0006】
インフレーション圧力が使用圧力と比較して著しく減少し又はそれどころかゼロである(これは、この場合、「ランフラット」モードと呼ばれる)である場合、タイヤは、所与の距離を所与の速度で走行することができるようにする必要がある。“EM”(extended mobility:延長移動性)走行性能と呼ばれているこの性能は、法律によって要求され又は自動車製造業者がタイヤをランフラット走行できるものとして宣伝することができるようにすることを目的として自動車製造業者によって要求されている。
【0007】
インフレーション圧力が使用圧力に近い場合(これは、この場合、「通常走行」モードと呼ばれる)、タイヤが“IM”(inflated mode:インフレートされたモード)走行性能と呼ばれるできるだけ良好な性能を示すことが望ましい。このIM走行性能は、とりわけ、質量、転がり抵抗又は更に快適さを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、自立型サイドウォールは、特に自立型サイドウォールを備えていない標準型のタイヤと比較してIM走行性能に相当大きな低下を生じさせる。特に、これらインサートの質量により、タイヤの全質量が増大する。さらに、これらインサートの追加により、不可避的に、ヒステリシスの増大が生じ、従って転がり抵抗の増大が生じる。加うるに、これらインサートは、タイヤのサイドウォールの剛性を高め、かくしてタイヤの快適さを損なう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、ランフラット走行することができるよう設計されていて所要のEM走行性能をもたらすと共に自立型サイドウォールを備えていない標準型タイヤにできるだけ近いIM走行性能を提供するタイヤにある。
【0010】
この目的のため、本発明の要旨は、ランフラット走行することができるよう設計されたタイヤにおいて、タイヤがアラミドで作られた少なくとも1本(即ち、1本又は2本以上)のマルチフィラメント諸撚りストランド及びポリエステルで作られていて撚り合わされた少なくとも1本(即ち、1本又は2本以上)のマルチフィラメント諸撚りストランドを含む少なくとも1本の補強要素を有するカーカス補強材を備えていることを特徴とするタイヤにある。
【0011】
アラミド‐ポリエステルハイブリッド補強要素は、各材料の互いに異なるが補足し合う性能を利用できることを意味している。具体的に説明すると、補強要素は、僅かな変形率で比較的低いモジュラスを有し(通常走行モード)、この場合、ポリエステルの補強要素であり、これは、IM走行性能を提供するのに足るほどのものであることが判明している。補強要素は、高い変形率で比較的高いモジュラスを有する(ランフラットモード)、この場合、アラミドの補強要素であり、これは、EM走行性能を提供するのにそれ自体について十分であることが判明している。
【0012】
アラミドとポリエステルの使用の組み合わせにより、補強要素の直径を減少させることができる。というのは、アラミド/ポリエステルの組み合わせのテナシティが、同等であるが高い撚り向き、従って比較的大きな直径向きの破断時力を有するレーヨン単独のテナシティよりも良好だからである。かくして、レーヨンで作られた補強要素と比較してアラミド/ポリエステルハイブリッド補強要素を圧延するのに必要なゴムの量は少ない。ゴムの質量を減少させることにより、コスト、質量及び更にヒステリシスを減少させることができ、従って、タイヤの転がり抵抗を減少させることができる。
【0013】
さらに、本発明により、レーヨンの使用なしで済ますことができ、このことは、環境上及びコスト上の理由で望ましい。
【0014】
具体的に説明すると、好ましくは、補強要素の直径は、1.1mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下である。
【0015】
補強要素は、諸撚り糸(又は諸撚りヤーン)とも呼ばれる。各マルチフィラメント諸撚りストランドは、撚り強(よりつよ)糸とも呼ばれ、かかるマルチフィラメント諸撚りストランドは、潜在的に互いに織り交ぜられる場合のある複数本の要素フィラメント又はモノフィラメントから成る。各諸撚りストランドは、50〜2000本のモノフィラメントから成る。
【0016】
思い起こされるように、周知のことであるが、アラミドフィラメントは、アラミド結合により互いに接合された芳香族で作られている線状高分子のフィラメントであり、アラミド結合部のうちの少なくとも85%は、芳香環及び特にポリ(p‐フェニレンテレフタルアミド)(即ち、PPTA)繊維に直接結合され、かかるPPTA繊維は、光学的に異方性の紡糸組成物から極めて長い時間をかけて製造される。
【0017】
思い起こされるように、周知のことであるが、ポリエステルフィラメントは、エステル結合により互いに結合された基で形成された線状高分子のフィラメントを意味している。ポリエステルは、カルボン二価酸(carboxylic diacid)又はその誘導体とジオールとのエステル化反応として重縮合によって製造される。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸及びエチレングリコールの重縮合によって製造できる。
【0018】
好ましくは、タイヤは、乗用車である4×4“SUV”(スポーツユーティリティビークル)型の自動車両用であるのが良い。
【0019】
有利には、カーカス補強材は、1枚の単一カーカスプライから成る。
【0020】
アラミドとポリエステルの使用の組み合わせにより、レーヨンで作られた2枚のカーカスプライの機械的強度、特に破断時力、特性と同等又はそれどころかこれよりも高い機械的強度、特に破断時力、特性を有するカーカスプライを得ることができる。加うるに、カーカスプライの枚数を減らすことにより、タイヤのコスト、質量、更にヒステリシス、及びかくして転がり抵抗が減少する。
【0021】
単一カーカスプライの存在により、カーカス補強材が、カーカス補強材が2枚のカーカスプライから成るタイヤよりも柔軟であるタイヤを得ることができる。かくして、タイヤの垂直剛性が減少し、タイヤの快適さが向上し、かくしてこの快適さが自立型サイドウォールを備えていない標準型タイヤの快適さのレベルに近づけられる。
【0022】
オプションとして、タイヤは、各々が少なくとも1つの環状補強構造体を有する2つのビードを有し、カーカス補強材は、環状補強構造体回りに折り返されることによってビードの各々内に繋留される。
【0023】
有利には、カーカス補強材の軸方向内側に配置されたサイドウォールインサートを有する。
【0024】
タイヤの或る特定のオプションとしての特徴によれば、
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手は、100〜400テックス(端の値を含む)、好ましくは140〜210テックス(端の値を含む)である。
‐ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手は、100〜500テックス(端の値を含む)、好ましくは100〜170テックス(端の値を含む)である。
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手とポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手の比は、0.2〜4、好ましくは1〜1.3である。
【0025】
タイヤの他のオプションとしての特徴によれば、
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)、好ましくは1m当たり340〜420回(端の値を含む)である。
‐ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)、好ましくは1m当たり340〜420回(端の値を含む)である。
【0026】
各諸撚りストランドの撚り数は、補強要素が十分な耐久性を備えるに足るほど高い。撚りは又、高いモジュラスを得、かくしてタイヤのEM走行性能を向上させるのに足るほど低い。
【0027】
マルチフィラメント諸撚りストランドの撚りは、補強要素を構成する諸撚り糸を形成するために少なくとも2本のマルチフィラメント諸撚りストランドの最終の相互集成ステップ中に各マルチフィラメント諸撚りストランドに加えられる撚りを意味している。
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドを構成する要素フィラメントは、65〜240(端の値を含む)、好ましくは105〜160(端の値を含む)の撚りファクタで撚り合わされる。
‐ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドを構成する要素フィラメントは、65〜240(端の値を含む)、好ましくは90〜150(端の値を含む)の撚りファクタで撚り合わされる。
【0028】
ここで思い起こされることとして、補強要素では、マルチフィラメント諸撚りストランドの撚りファクタ(又は撚り正確に言えば、上述の諸撚りストランドを構成する要素フィラメントの撚りファクタ)は、以下の関係式に従って表現できる。
K=(回数/メートルで表される撚り数)×[(諸撚りストランドの番手(テックスで表される))/(1000.ρ)]1/2
【0029】
上式において、マルチフィラメント諸撚りストランドの撚り数は、補強要素の1メートル当たりの撚り回数で表され、諸撚りストランドの番手は、テックス(諸撚りストランドの1000メートルのグラムで表された重量)で表され、最後にρは、諸撚りストランドの構成材料の単位体積当たりの密度又は質量(g/cm3)である(アラミドについては約1.44、ポリエステルについては1.25〜1.40、PETについては1.38である)。
【0030】
タイヤの他のオプションとしての特徴によれば、
‐20℃で測定された補強要素の初期引張りモジュラスは、5.5cN/テックス以上であり、好ましくは6.5〜7.9cN/テックス(端の値を含む)である。かかる初期モジュラスにより、変形率が最も小さい通常の走行モードでは、高い機械強度を提供する補強要素、この場合、ポリエステルの補強要素を得ることが可能である。加うるに、タイヤの挙動、特にタイヤかじ取り性能が向上する。また、かかるモジュラスにより、生の状態のタイヤが硬化前にモールド内に配置されたとき、生の状態のタイヤの変形を制限することができる。
‐20℃で測定された補強要素の最終の引張りモジュラスは、10cN/テックス以上であり、好ましくは、13.5〜16.5cN/テックス(端の値を含む)である。かかるモジュラスにより、変形率が最も高いランフラットモードでは、高い機械的強度を提供する補強要素、この場合、アラミドの補強要素を得ることができる。また、この最終のモジュラスにより、ポリエステルの劣化により生じる機械的強度の低下を補償することができ、これら変形率は、一般に高い温度で生じる。
‐補強要素の最終引張りモジュラスと補強要素の初期引張りモジュラスの比(両方とも、20℃で測定されている)は、3以下であり、好ましくは1.7〜2.5(端の値を含む)である。
‐180℃で測定された補強要素の初期引張りモジュラスは、1.5cN/テックス以上であり、好ましくは1.9〜2.3cN/テックス(端の値を含む)である。
‐補強要素の破断時力は、20daN以上であり、好ましくは25daN以上であり、より好ましくは30daN以上である。破断時力が大きければ大きいほど、特にポットホール及び縁石を含む「ロードハザード」型のその耐攻撃性がそれだけ一層良好になる。したがって、かかる破断時力により、「ロードハザード」型の高い耐攻撃性を有するタイヤを得ることができる。
‐0.5cN/テックスの引張り予備荷重下において185℃で2分後の補強要素の熱収縮率は、1.2%以下である。かかる熱収縮率により、アラミド/ポリエステル補強要素について比較的高い破断時伸び率の値を得ることができる。したがって、タイヤは、「ロードハザード」型の攻撃に対する敏感性が低い。
‐変形例として、0.5cN/テックスの引張り予備荷重下において、185℃における2分後の補強要素の熱収縮率は、1.2%を超える。かかる熱収縮率により、高い初期モジュラス、及びかくして軽い加重に対する高い機械的耐性を得ることができる。
【0031】
上述の機械的性質は全て、当業者にとって周知であり、ほとんどは荷重(力)‐伸び(伸び率)曲線から導き出される。
【0032】
好ましくは、補強要素は、アラミドで作られた単一のマルチフィラメント諸撚りストランド及びポリエステルで作られた単一のマルチフィラメント諸撚りストランドを有する。かかる補強要素により、タイヤに優れたEM及びIM走行性能を与えることができる。これは、補強要素のサイズ及びかくしてタイヤの重量及び転がり抵抗が補強要素の2本のマルチフィラメント諸撚りストランドにより制限されるからである。
【0033】
好ましくは、各諸撚りストランドは、他方のストランドの周りに螺旋巻きされる。
【0034】
有利には、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)又はポリプロピレンナフタレート(PPN)から選択され、ポリエステルは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0035】
本発明は、非限定的な例として与えられているに過ぎず、添付の図面を参照して行われる以下の説明を読むと良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の実施形態に従ってランフラット走行できるよう設計されたタイヤの半径方向横断面図である。
図2図1のタイヤの補強要素の細部を示す図である。
図3】第2の実施形態としてのタイヤの図1に類似した図である。
図4】種々の補強要素についての荷重‐伸び曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
「半径方向」という用語を用いる際、当業者によるこの言葉の数種類の互いに異なる使い方を区別することが重要である。第1に、この表現は、タイヤの半径を意味している。この意味では、点又は箇所(本明細書では、「点」と「箇所」は区別なく用いられる)PAが点Bよりもタイヤの回転軸線の近くに位置する場合、点Aは、点Bの「半径方向内側」(又は点PBの「内側に半径方向」)に位置すると呼ばれる。これとは逆に、点Cがタイヤの回転軸線から見て点Dよりも遠くに位置する場合、点PCは、点Dの「半径方向外側」(又は点PDの「外側に半径方向」)に位置すると呼ばれる。前進方向が小さな半径(大きな半径)に向かう方向である場合、前進方向は、「半径方向内方(又は外方)」と呼ばれる。半径方向距離について言及している場合にも当てはまるのは、この用語の意味である。
【0038】
これに対して、補強要素又はレインフォーサは、補強要素又はレインフォーサが円周方向と65°以上且つ90°以下の角度をなす場合に「半径方向」であると呼ばれる。
【0039】
最後に、「半径方向断面」又は「半径方向横断面」はこの場合、タイヤの回転軸線を含む平面で取った断面を意味している。
【0040】
「軸方向」は、タイヤの回転軸線に平行な方向である。点Eが点Fよりもタイヤの中間平面の近くに位置する場合、点Eは、点Fの「軸方向内側」(又は点Fの「内側に軸方向」)に位置すると呼ばれる。これとは逆に、点Gが点Hよりもタイヤの中間平面から見て遠くに位置する場合、点Gは、点Hの「軸方向外側」(又は点Hの「外側に軸方向」)に位置すると呼ばれる。
【0041】
タイヤの「中間平面」は、タイヤの回転軸線に垂直であり且つ各ビードの環状補強構造体から等距離のところに位置する平面である。
【0042】
「円周方向」は、タイヤの半径と軸方向の両方に対して垂直な方向である。
【0043】
図1は、本発明の第1の実施形態としての全体符号10で示されたタイヤを半径方向断面で概略的に示している。タイヤ10は、ランフラット型のものである。タイヤ10は、乗用車用のものである。
【0044】
このタイヤ10は、補強要素16,18の2枚のクラウンプライ及びたが掛けプライ19で形成されたクラウン補強材14を含むクラウン12を有している。クラウン補強材14の上にはトレッド20が載せられている。この場合、たが掛けプライ19は、プラウ16,18とトレッド20との間でプライ16,18の半径方向外側に配置されている。クラウン12の半径方向内側寄りの延長部として、2つの自立型サイドウォール22が設けられている。
【0045】
タイヤ10は、サイドウォール22の半径方向内側に位置し且つ各々がビードエイペックスゴムの塊30を載せた環状補強構造体26、この場合ビードワイヤ28を有する2つのビード24と、半径方向カーカス補強材32とを更に有している。
【0046】
カーカス補強材32は、好ましくは、補強要素36の単一のカーカスプライ34を有し、プライ34は、各ビード24内にビードからサイドウォールを通ってクラウンに向かって延びるメインストランド38及び折り返し部(巻き上げ部とも称される)40を形成するようビードワイヤ28周りの折り返し部によってビード24の各々に繋留され、折り返し部40の半径方向外端42は、タイヤの高さの実質的に中間に位置している。カーカス補強材32は、ビード24からサイドウォール22を通ってクラウン12に向かって延びている。
【0047】
クラウンプライ16,18及びカーカスプライ34について用いられるゴム配合物は、代表的には天然ゴム、カーボンブラック、加硫系及び通常の添加剤を主成分とする補強要素の圧延のための従来型配合物である。補強要素、特にこの場合カーカス補強材中の補強要素が繊維(テキスタイル)で作られている場合、繊維補強要素とこれを被覆したゴム配合物との接着は、例えば、RFL型の通常のグルーによって保証される。
【0048】
タイヤ10は、カーカス補強材32の軸方向内側に位置した2つのサイドウォールインサート44を更に有している。特徴的な三日月形の半径方向断面を備えたこれらインサート44は、サイドウォールを補強するようになっている。これらインサートは、少なくとも1種類のポリマー配合物、好ましくはゴム配合物を含む。国際公開第02/096677号パンフレットは、かかるインサートを作るために使用できるゴム配合物の多くの例を提供している。各サイドウォールインサート44は、ランフラット状況における車両の重量の一部に相当する荷重の支持に寄与する可能性を備えている。
【0049】
タイヤは、サイドウォール22の軸方向内側に且つクラウン補強材14の半径方向内側に位置すると共に2つのビード24相互間に延びる好ましくはブチルで作られた気密内側層46を更に有している。サイドウォールインサート44は、内側層46の軸方向外側に位置している。かくして、サイドウォールインサート44は、カーカス補強材32と内側層46との間に軸方向に配置されている。
【0050】
カーカスプライ34は、繊維補強要素36から成り、これら繊維補強要素のうちの1つが図2に示されている。補強要素36は、相互に平行である。各補強要素36は、半径方向である。換言すると、各補強要素36は、タイヤ10の軸方向に実質的に平行な平面内に延びている。
【0051】
各補強要素36は、アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド54、この場合、単一の諸撚りストランド及びポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド56、この場合単一の諸撚りストランドから成り、これらストランドは、380回/メートルで個々に過剰加撚(overtwisted)され(過剰加撚とは、所定の撚り数よりも多く撚ること)、次に380回/メートルで撚り合わされている。2本の諸撚りストランドは、互いに対して螺旋に巻かれている。
【0052】
ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート又はポリプロピレンナフタレートから選択される。この場合、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0053】
アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド54の番手は、100〜400テックス(端の値を含む)、好ましくは140〜210テックス(端の値を含む)である。この場合、アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド54の番手は、167テックスに等しい。
【0054】
ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド56の番手は、100〜500テックス(端の値を含む)、好ましくは100〜170テックス(端の値を含む)である。この場合、ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド56の番手は、144テックスに等しい。
【0055】
アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド54の番手とポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド56の番手の比は、0.2〜4、好ましくは1〜1.3であり、この場合、1.16に等しい。
【0056】
アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド54の撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)、好ましくは1m当たり340〜420回(端の値を含む)である。この場合、アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド54の撚り数は、1m当たり380回である。
【0057】
ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド56の撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)、好ましくは1m当たり340〜420回(端の値を含む)である。この場合、ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド56の撚り数は、1m当たり380回である。
【0058】
したがって、補強要素は、実質的に同一の撚りを有する諸撚りストランドを有する。この場合、これは、撚り平衡(twist-balanced)型諸撚りストランドである。
【0059】
アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド54を構成する要素フィラメントは、65〜240(端の値を含む)、好ましくは105〜160(端の値を含む)の撚りファクタK1で撚られる。この場合、K1=129である。
【0060】
ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランド56を構成する要素フィラメントは、105〜160(端の値を含む)、好ましくは90〜150(端の値を含む)の撚りファクタK2で撚られる。この場合、K2=123である。
【0061】
撚りファクタ相互の比K1/K2は、有利には、0.9〜1.10(端の値を含む)である。
【0062】
20℃で測定された補強要素36の初期引張りモジュラスMi20は、5.5cN/テックス以上であり、好ましくは6.5〜7.9cN/テックス(端の値を含む)である。この場合、Mi20=7.2cN/テックスである。
【0063】
20℃で測定された補強要素36の最終引張りモジュラスMf20は、10cN/テックス以上であり、好ましくは13.5〜16.5cN/テックス(端の値を含む)である。この場合、Mf20=15cN/テックスである。
【0064】
最終モジュラスMf20と初期モジュラスMi20(両方とも、20℃で測定されている)の比は、3以下であり、好ましくは1.7〜2.5(端の値を含む)である。この場合、Mf20/Mi20=2.1である。
【0065】
180℃で測定された補強要素の初期引張りモジュラスMi180は、1.5cN/テックス以上であり、好ましくは1.9〜2.3cN/テックス(端の値を含む)である。この場合、Mi180=2.1cN/テックスである。
【0066】
補強要素36の破断時力Frは、20daN以上、好ましくは25daN以上、より好ましくは30daN以上である。この場合、Fr=34daNである。
【0067】
0.5cN/テックスの引張り予荷重下において185℃で2分後の補強要素の熱収縮率CTは、1.2%以下である。この場合、CT=0.8%である。
【0068】
上述の値は、製造されたままの補強要素について測定され、或いは、変形例として、補強プライから取られた補強要素について測定される。代替手段として、上述の値は、タイヤから取られた補強要素について測定される。
【0069】
撚ることによって補強要素36を製造するために、ここで簡単に思い起こされるように、当業者には周知であるが、最終補強要素の構成材料である各諸撚りストランドは、まず最初に、第1ステップの際に所与の方向(例えば、諸撚りストランドの1メートル当たり380回のZ‐撚り)にそれ自体個々に撚られて過剰撚りを形成し、次に、このようにしてこれら自体撚られた諸撚りストランドを次に逆方向(例えば、補強要素の1メートル当たり380回のX‐撚り)に撚り合わせて諸撚り糸を、この場合最終補強要素36を形成する。
【0070】
図3は、本発明の第2の実施形態としてのタイヤを示している。第1の実施形態の要素に類似した要素は、同一の参照符号で示されている。
【0071】
第1の実施形態のタイヤ10とは異なり、第2の実施形態としてのタイヤ10は、折り返し部が短くなった形式のものである。折り返し部40の半径方向外端42は、リムフランジに圧接するようになったビード24の部分50の端48(ビード24の外側に向かって半径方向最も遠くに位置する)の半径方向内側に位置する。
【0072】
比較試験及び測定
【0073】
本発明のタイヤ10の補強要素36及び他のタイヤの補強要素の特性が表1において比較されている。
【0074】
タイヤ10は、本発明に従って構成されたものであって上述したものである。
【0075】
タイヤIは、自立型サイドウォールを備えていない標準型形式のものであり、このタイヤは、単一のカーカスプライから成るカーカス補強材を有している。カーカスプライは、繊維補強要素から成っている。各補強要素は、PETで作られていて、撚り合わされた2本のマルチフィラメント諸撚りストランドから成っている。
【0076】
タイヤIIは、ランフラット走行することができるよう設計され、このタイヤは、2枚のカーカスプライから成るカーカス補強材を有している。各カーカスプライは、繊維補強要素から成っている。各補強要素は、レーヨンで作られていて、撚り合わされた2本のマルチフィラメント諸撚りストランドから成っている。
【0077】
指示した機械的性質の全ては、コード(乾燥後)が事前状態調節を受けた繊維補強要素(即ち、いつでも使用できる状態にある補強要素又はこれら補強要素が補強するタイヤから取り出された補強要素)について測定され、「事前状態調節」という用語は、欧州規格DIN EN 20139(20±2℃の温度、65±2%の相対湿度)に準拠して標準雰囲気中での測定に先立って少なくとも24時間にわたって保管されていることを意味している。
【0078】
要素諸撚りストランド又は補強要素の番手(又は直線密度)は、各々が少なくとも5mの長さを重み付けすることによって少なくとも5mの長さに相当する少なくとも2つの試験体について求められ、番手は、テックスで与えられている(製品の1000mのグラム当たりの重量、0.111テックスが1デニールに等しいことを思い起こされたい)。
【0079】
機械的性質は、“4D”グリッパを備えた“INSTRON”引張り試験装置を用いて種々の仕方で測定される。試験した試験体は、0.5cN/テックスの標準引張り予荷重下において、200mm/minの公称速度で400mmの初期長さにわたり張力を受ける。与えられた結果の全ては、5つの測定値の平均値である。
【0080】
破断時力及び破断時伸び率の測定値(%で表された全伸び率)は、ISO6892:1984に準拠して張力下で行われ、これらによっても、荷重‐伸び曲線を得ることができる。
【0081】
初期モジュラスは、0.5cN/テックスの標準引張り予荷重の直後に生じる荷重‐伸び曲線の直線部分の原点のところの勾配として定義される。最終モジュラスは、荷重‐伸び曲線の破断時力の80%に相当する箇所における勾配として定義される。
【0082】
先行技術の種々のタイヤI,II及び本発明のタイヤ10に関する荷重‐伸び曲線CI,CII及びC10が図4に示されている。
表1
【0083】
記号NA(該当なし)は、値が存在せず又は有意性を備えていないことを意味している。
【0084】
PETは、1×50という名称でパフォーマンス・ファイバーズ(Performance Fibers)社によって市販されている。レーヨンは、Super 3-T700という名称でコーデンカ(Cordenka)社によって市販されている。最後に、アラミドは、Twaron 1000 という名称で帝人(Teijin)社によって市販されている。
【0085】
PETは、熱感度をほとんど備えておらず又は全く備えていないレーヨン又はアラミドとは異なり、PETに貧弱な熱的安定性を与える比較的低い融点を有する。かくして、ランフラットモードでは、即ち、温度が高い場合(圧力の低下により生じる発熱に起因して)、PETは、極めて迅速に分解し、もはやその補強機能を果たさない。これとは対照的に、アラミドは、その高い熱的安定性に起因して、高い温度でもその補強機能を果たす。
【0086】
図4は、補強要素36(曲線C10)がレーヨンで作られた補強要素(曲線CII)の破断時力及び高い変形率に対する剛性よりも優れた破断時力及び高い変形率に対する剛性を有していることを示している。加うるに、補強要素36(曲線C10)がPETで作られた補強要素(曲線CI)の破断時力及び高い変形率に対する剛性よりも優れた破断時力及び高い変形率に対する剛性を有していることを示している。かくして、ランフラットモードでは、補強要素36は、特にショルダーゾーンと呼ばれているタイヤのクラウンとサイドウォールを接合している領域及び底部ゾーンと呼ばれているビードの近くのサイドウォールのゾーンではPET及びレーヨンで作られたレインフォーサの構造剛性よりも優れた構造剛性を提供することができる。かくして、レーヨンで作られた補強要素は、タイヤ10にタイヤIIよりも良好なIM走行性能を与える。
【0087】
タイヤI、タイヤII及びタイヤ10のIM走行性能及びEM走行性能が表2において比較されている。
【0088】
タイヤの質量
【0089】
質量の値は、先行技術のタイヤIの質量に対して相対的単位(ベース100)で示されている。先行技術のタイヤIの質量と比較して質量が大きければ大きいほど、この値が100よりも低い程度がそれだけ一層大きくなる。
【0090】
転がり抵抗
【0091】
転がり抵抗は、熱安定化ステップ後、試験転動路面に圧接された試験対象のタイヤを備えたホイールの減速度の測定から求められる。加えられる荷重は、ETRTO(欧州タイヤ・リム技術協会)荷重の85%に等しい。
【0092】
転がり抵抗の値は、先行技術のタイヤIの転がり抵抗に対して相対的単位(ベース100)で示されている。先行技術のタイヤIの転がり抵抗と比較して転がり抵抗が大きければ大きいほど、この値が100よりも低い程度がそれだけ一層大きくなる。
【0093】
快適さ
【0094】
快適さは、垂直堅さ測定から求められる。垂直堅さ測定は、試験対象のタイヤが取り付けられたダイナモメトリックハブを有するホイールについて実施される。ホイールをETRTO荷重の80%に等しい荷重下で試験転動路面に圧接させる。転動路面は、障害物として働くバーを有する。タイヤの垂直堅さは、ダイナモメトリックハブにより測定された力から求められる。この力は大きければ大きいほど、垂直堅さがそれだけ一層高くなると共に快適さの知覚がそれだけ一層低くなる。
【0095】
垂直堅さの値は、先行技術のタイヤIの垂直堅さに対して相対的単位(ベース100)で示されている。先行技術のタイヤIの垂直堅さと比較して垂直堅さが低ければ低いほど、従って快適さが良好であればあるほど、この値が100にそれだけ一層近くなる。
【0096】
ランフラット試験
【0097】
ランフラット試験は、UNECE規則30に準拠して実施される。0という値は、試験対象のタイヤがランフラット試験に不合格であったことを示す。1という値は、試験対象のタイヤがランフラット試験を首尾良く合格したことを示している。
表2
【0098】
表2の結果は、本発明のタイヤ10が所要のEM走行性能(ランフラット試験について1の値)を提供し、ランフラット走行することができるよう設計されたタイヤ(タイヤII及び10)が標準タイヤIに最も近いIM走行性能を有することを示している。本発明のタイヤ10は、そのIM走行性能が標準タイヤIのIM走行性能よりも劣っているが、タイヤIIのIM走行性能よりも優れたIM走行性能を有する。
【0099】
本発明は、上述の実施形態には限定されない。
【0100】
具体的に言えば、タイヤのカーカス補強材32は、2枚のカーカスプライ34から成っていても良い。
【0101】
折り返し部40がクラウンプライ18とメインストランド38との間で上方に延びる実施形態も又想到できる。
【0102】
カーカス補強材がタイヤのビード24とクラウン12との間に延びる補助補強要素を有する実施形態も又想定できる。この補助補強要素は、メインストランド38と織り返し部40との間に介在して設けられ、この補助補強要素は、クラウンプライ18とメインストランド38との間で上方に延びる。
【0103】
上述のこれら2つの実施形態は、タイヤが単一のカーカスプライを有し、折り返し部40又は補助補強要素がタイヤのショルダー領域中に追加の補強材をもたらす場合に特に有利である。
【0104】
さらに、各マルチフィラメント諸撚りストランドは、撚り平衡が取られていない補強要素を得るよう他の1本又は複数本のマルチフィラメント諸撚りストランドの撚りとは異なる撚りを有しても良い。
【0105】
上述の又は上記において提供された種々の実施形態の特徴は又、組み合わせ可能であり、但し、これら特徴は、相互に適合性のあることを条件とする。
図1
図2
図3
図4