【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨は、ランフラット走行することができるよう設計されていて所要のEM走行性能をもたらすと共に自立型サイドウォールを備えていない標準型タイヤにできるだけ近いIM走行性能を提供するタイヤにある。
【0010】
この目的のため、本発明の要旨は、ランフラット走行することができるよう設計されたタイヤにおいて、タイヤがアラミドで作られた少なくとも1本(即ち、1本又は2本以上)のマルチフィラメント諸撚りストランド及びポリエステルで作られていて撚り合わされた少なくとも1本(即ち、1本又は2本以上)のマルチフィラメント諸撚りストランドを含む少なくとも1本の補強要素を有するカーカス補強材を備えていることを特徴とするタイヤにある。
【0011】
アラミド‐ポリエステルハイブリッド補強要素は、各材料の互いに異なるが補足し合う性能を利用できることを意味している。具体的に説明すると、補強要素は、僅かな変形率で比較的低いモジュラスを有し(通常走行モード)、この場合、ポリエステルの補強要素であり、これは、IM走行性能を提供するのに足るほどのものであることが判明している。補強要素は、高い変形率で比較的高いモジュラスを有する(ランフラットモード)、この場合、アラミドの補強要素であり、これは、EM走行性能を提供するのにそれ自体について十分であることが判明している。
【0012】
アラミドとポリエステルの使用の組み合わせにより、補強要素の直径を減少させることができる。というのは、アラミド/ポリエステルの組み合わせのテナシティが、同等であるが高い撚り向き、従って比較的大きな直径向きの破断時力を有するレーヨン単独のテナシティよりも良好だからである。かくして、レーヨンで作られた補強要素と比較してアラミド/ポリエステルハイブリッド補強要素を圧延するのに必要なゴムの量は少ない。ゴムの質量を減少させることにより、コスト、質量及び更にヒステリシスを減少させることができ、従って、タイヤの転がり抵抗を減少させることができる。
【0013】
さらに、本発明により、レーヨンの使用なしで済ますことができ、このことは、環境上及びコスト上の理由で望ましい。
【0014】
具体的に説明すると、好ましくは、補強要素の直径は、1.1mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下である。
【0015】
補強要素は、諸撚り糸(又は諸撚りヤーン)とも呼ばれる。各マルチフィラメント諸撚りストランドは、撚り強(よりつよ)糸とも呼ばれ、かかるマルチフィラメント諸撚りストランドは、潜在的に互いに織り交ぜられる場合のある複数本の要素フィラメント又はモノフィラメントから成る。各諸撚りストランドは、50〜2000本のモノフィラメントから成る。
【0016】
思い起こされるように、周知のことであるが、アラミドフィラメントは、アラミド結合により互いに接合された芳香族で作られている線状高分子のフィラメントであり、アラミド結合部のうちの少なくとも85%は、芳香環及び特にポリ(p‐フェニレンテレフタルアミド)(即ち、PPTA)繊維に直接結合され、かかるPPTA繊維は、光学的に異方性の紡糸組成物から極めて長い時間をかけて製造される。
【0017】
思い起こされるように、周知のことであるが、ポリエステルフィラメントは、エステル結合により互いに結合された基で形成された線状高分子のフィラメントを意味している。ポリエステルは、カルボン二価酸(carboxylic diacid)又はその誘導体とジオールとのエステル化反応として重縮合によって製造される。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸及びエチレングリコールの重縮合によって製造できる。
【0018】
好ましくは、タイヤは、乗用車である4×4“SUV”(スポーツユーティリティビークル)型の自動車両用であるのが良い。
【0019】
有利には、カーカス補強材は、1枚の単一カーカスプライから成る。
【0020】
アラミドとポリエステルの使用の組み合わせにより、レーヨンで作られた2枚のカーカスプライの機械的強度、特に破断時力、特性と同等又はそれどころかこれよりも高い機械的強度、特に破断時力、特性を有するカーカスプライを得ることができる。加うるに、カーカスプライの枚数を減らすことにより、タイヤのコスト、質量、更にヒステリシス、及びかくして転がり抵抗が減少する。
【0021】
単一カーカスプライの存在により、カーカス補強材が、カーカス補強材が2枚のカーカスプライから成るタイヤよりも柔軟であるタイヤを得ることができる。かくして、タイヤの垂直剛性が減少し、タイヤの快適さが向上し、かくしてこの快適さが自立型サイドウォールを備えていない標準型タイヤの快適さのレベルに近づけられる。
【0022】
オプションとして、タイヤは、各々が少なくとも1つの環状補強構造体を有する2つのビードを有し、カーカス補強材は、環状補強構造体回りに折り返されることによってビードの各々内に繋留される。
【0023】
有利には、カーカス補強材の軸方向内側に配置されたサイドウォールインサートを有する。
【0024】
タイヤの或る特定のオプションとしての特徴によれば、
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手は、100〜400テックス(端の値を含む)、好ましくは140〜210テックス(端の値を含む)である。
‐ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手は、100〜500テックス(端の値を含む)、好ましくは100〜170テックス(端の値を含む)である。
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手とポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの番手の比は、0.2〜4、好ましくは1〜1.3である。
【0025】
タイヤの他のオプションとしての特徴によれば、
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)、好ましくは1m当たり340〜420回(端の値を含む)である。
‐ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドの撚り数は、1m当たり250〜450回(端の値を含む)、好ましくは1m当たり340〜420回(端の値を含む)である。
【0026】
各諸撚りストランドの撚り数は、補強要素が十分な耐久性を備えるに足るほど高い。撚りは又、高いモジュラスを得、かくしてタイヤのEM走行性能を向上させるのに足るほど低い。
【0027】
マルチフィラメント諸撚りストランドの撚りは、補強要素を構成する諸撚り糸を形成するために少なくとも2本のマルチフィラメント諸撚りストランドの最終の相互集成ステップ中に各マルチフィラメント諸撚りストランドに加えられる撚りを意味している。
‐アラミドで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドを構成する要素フィラメントは、65〜240(端の値を含む)、好ましくは105〜160(端の値を含む)の撚りファクタで撚り合わされる。
‐ポリエステルで作られたマルチフィラメント諸撚りストランドを構成する要素フィラメントは、65〜240(端の値を含む)、好ましくは90〜150(端の値を含む)の撚りファクタで撚り合わされる。
【0028】
ここで思い起こされることとして、補強要素では、マルチフィラメント諸撚りストランドの撚りファクタ(又は撚り正確に言えば、上述の諸撚りストランドを構成する要素フィラメントの撚りファクタ)は、以下の関係式に従って表現できる。
K=(回数/メートルで表される撚り数)×[(諸撚りストランドの番手(テックスで表される))/(1000.ρ)]
1/2
【0029】
上式において、マルチフィラメント諸撚りストランドの撚り数は、補強要素の1メートル当たりの撚り回数で表され、諸撚りストランドの番手は、テックス(諸撚りストランドの1000メートルのグラムで表された重量)で表され、最後にρは、諸撚りストランドの構成材料の単位体積当たりの密度又は質量(g/cm
3)である(アラミドについては約1.44、ポリエステルについては1.25〜1.40、PETについては1.38である)。
【0030】
タイヤの他のオプションとしての特徴によれば、
‐20℃で測定された補強要素の初期引張りモジュラスは、5.5cN/テックス以上であり、好ましくは6.5〜7.9cN/テックス(端の値を含む)である。かかる初期モジュラスにより、変形率が最も小さい通常の走行モードでは、高い機械強度を提供する補強要素、この場合、ポリエステルの補強要素を得ることが可能である。加うるに、タイヤの挙動、特にタイヤかじ取り性能が向上する。また、かかるモジュラスにより、生の状態のタイヤが硬化前にモールド内に配置されたとき、生の状態のタイヤの変形を制限することができる。
‐20℃で測定された補強要素の最終の引張りモジュラスは、10cN/テックス以上であり、好ましくは、13.5〜16.5cN/テックス(端の値を含む)である。かかるモジュラスにより、変形率が最も高いランフラットモードでは、高い機械的強度を提供する補強要素、この場合、アラミドの補強要素を得ることができる。また、この最終のモジュラスにより、ポリエステルの劣化により生じる機械的強度の低下を補償することができ、これら変形率は、一般に高い温度で生じる。
‐補強要素の最終引張りモジュラスと補強要素の初期引張りモジュラスの比(両方とも、20℃で測定されている)は、3以下であり、好ましくは1.7〜2.5(端の値を含む)である。
‐180℃で測定された補強要素の初期引張りモジュラスは、1.5cN/テックス以上であり、好ましくは1.9〜2.3cN/テックス(端の値を含む)である。
‐補強要素の破断時力は、20daN以上であり、好ましくは25daN以上であり、より好ましくは30daN以上である。破断時力が大きければ大きいほど、特にポットホール及び縁石を含む「ロードハザード」型のその耐攻撃性がそれだけ一層良好になる。したがって、かかる破断時力により、「ロードハザード」型の高い耐攻撃性を有するタイヤを得ることができる。
‐0.5cN/テックスの引張り予備荷重下において185℃で2分後の補強要素の熱収縮率は、1.2%以下である。かかる熱収縮率により、アラミド/ポリエステル補強要素について比較的高い破断時伸び率の値を得ることができる。したがって、タイヤは、「ロードハザード」型の攻撃に対する敏感性が低い。
‐変形例として、0.5cN/テックスの引張り予備荷重下において、185℃における2分後の補強要素の熱収縮率は、1.2%を超える。かかる熱収縮率により、高い初期モジュラス、及びかくして軽い加重に対する高い機械的耐性を得ることができる。
【0031】
上述の機械的性質は全て、当業者にとって周知であり、ほとんどは荷重(力)‐伸び(伸び率)曲線から導き出される。
【0032】
好ましくは、補強要素は、アラミドで作られた単一のマルチフィラメント諸撚りストランド及びポリエステルで作られた単一のマルチフィラメント諸撚りストランドを有する。かかる補強要素により、タイヤに優れたEM及びIM走行性能を与えることができる。これは、補強要素のサイズ及びかくしてタイヤの重量及び転がり抵抗が補強要素の2本のマルチフィラメント諸撚りストランドにより制限されるからである。
【0033】
好ましくは、各諸撚りストランドは、他方のストランドの周りに螺旋巻きされる。
【0034】
有利には、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)又はポリプロピレンナフタレート(PPN)から選択され、ポリエステルは、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。
【0035】
本発明は、非限定的な例として与えられているに過ぎず、添付の図面を参照して行われる以下の説明を読むと良好に理解されよう。