【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0036】
(1)平均ポアサイズ
バブルポイント法を用いた細孔径分布評価装置(PMI社製、商品名「パームポロメーター」)を用いて孔径分布を測定し、その平均値を平均ポアサイズとした。
(2)吸着材の粒子径と割合
レーザー回析散乱法によって測定した。また、吸着材の粒子径が不織布の平均ポアサイズを下回る割合は、レーザー回析散乱法による吸着材の粒子径分布により算出した。
(3)脱落の評価
吸着シートを10cm角に断裁したもの10枚重ねて100mLのポリ容器に密封し、10分間垂直振とう撹拌した後、脱落した粉の量を目視にて評価し、△以上を合格とした。
◎:吸着材が全く脱落しない
○:吸着材がほとんど脱落しない
△:吸着材が僅かに脱落するが、実使用に問題ない程度
×:吸着材の脱落があり、実使用に問題がある
(4)放射性物質吸着率の評価
133Cs(非放射性物質)を
134Cs及び
137Cs(放射性物質)と化学的性能は同じものとして、
133Csの吸着度効率を試験した。吸着シートを2cm角に断裁したもの5枚を100ppmの塩化セシウム溶液に入れ、30分間振とう撹拌した後、溶液中のCs濃度を測定した。以下の式に従って吸着率を算出し、下記において○以上を合格とした。
吸着率(%)={処理前の
133Cs濃度(mg/L) − 処理後の
133Cs濃度(mg/L)} / {処理前の
133Cs濃度(ppm)}×100
◎:吸着率が98%以上
〇:吸着率が90%以上98%未満
×:吸着率が90%未満
(5)湿潤引張強さ残存率
吸収シートの引張強さをJIS−P8113(2006)に基づいて測定した。さらに、JIS−P8135(1998)に基づいて測定した湿潤引張強さを測定し、同規格の「湿潤引張強さ残留率の算出方法」に従って残存率を算出した。
(6)接触角
23℃、50%RH雰囲気下で、動的表面接触角測定装置(ダイナミックアブソープションテスタ DAT1100、Fibro社製)を用い、水滴3mLを滴下後0.05秒後および1.00秒後の表面接触角を測定した。
(7)浸水試験
吸着シートを10cm角に断裁したものを用意し、これを23℃の雰囲気下で室温の水に浸漬させ、3分間静置した後にシートを取り出して、10秒後のシートの状態を目視にて観察した。○を合格とした。
〇:シートが水を十分に含んでいる。
×:シート表面が撥水しているか、または水をほとんど含んでいない。
(8)耐水圧試験
15cm角の吸着シートを用意し、
図2に示す耐水圧試験装置6に供する。水が接する面の反対面に緩衝材5がくるように設置し、3.7MPaの水圧にて室温の水を1分間流し続けた後、吸着シート4を取り出して、目視評価および前記(3)と同じ脱落評価を行った。○を合格とした。
○:吸着材の脱落がない、または、僅かに脱落するが実使用で問題のない程度である
×:吸着材の容易に脱落する、または、水圧箇所のシートが破損している
【0037】
[実施例1]
ポリエステル繊維とポリプロピレン繊維からなり、親水化処理が施されている厚み0.115mmの不織布(平均ポアサイズ32μm)を2枚用意した。放射性物質吸着材として合成ゼオライト(平均粒子径30μm)100部に対して、40部の熱接着材(エチレン酢酸ビニル共重合体)を10分以上攪拌機に掛けて混合した後、ローラー型散布機にて前記不織布の上に前記ゼオライトが100g/m
2となるように散布した。さらに、この上から前記不織布で挟み込むように積層して不織布Aの二層構造とし、ロール温度250℃、線圧6.0kgf/cm
2にて熱圧着した。これにより吸着シートを得た。
【0038】
[実施例2]
放射性物質吸着材として平均粒子径が43μmの合成ゼオライトを使用した以外は実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0039】
[実施例3]
放射性物質吸着材として平均粒子径が16μmの合成ゼオライトを使用した以外は実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0040】
[実施例4]
不織布として、ポリプロピレン繊維からなり、親水化処理がなされている厚み0.124mmの不織布(平均ポアサイズ50μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0041】
[実施例5]
不織布として、ポリプロピレン繊維からなり、親水化処理がなされている厚さ0.120mmの不織布(平均ポアサイズ53μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0042】
[実施例6]
不織布として、セルロース繊維とポリエチレンテレフタレート繊維とが30:70の割合からなり、親水化処理がなされている厚さ0.130mmの不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0043】
[実施例7]
不織布として、ポリエチレンテレフタレート繊維からなり親水化処理がなされている0.125mmの不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0044】
[比較例1]
放射性物質吸着材として平均粒子径が57μmの合成ゼオライトを使用した以外は実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0045】
[比較例2]
放射性物質吸着材として平均粒子径が11μmの合成ゼオライトを使用した以外は実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0046】
[比較例3]
不織布として、レーヨン繊維:PET繊維=70:30の混合繊維からなる厚み0.135mmの不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0047】
[比較例4]
不織布として、綿繊維100%からなる厚み0.143mmの不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0048】
[比較例5]
不織布として、ナイロン繊維100%からなる厚み0.137mmの不織布を用いた以外は、実施例1と同様にして吸着シートを得た。
【0049】
[比較例6]
実施例7の不織布を作製する過程で親水化処理を施さずに作製した厚さ0.125mmの不織布を用いた以外は実施例7と同様にして吸着シートを得た。
【0050】
実施例1〜5及び比較例1〜2で作成した吸着シートの脱落評価と放射性物質吸着率の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1、4、6、7及び比較例3〜6で作成した吸着シートの湿潤引張強さ残存率、浸水評価、耐水圧評価の結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
表1の結果を見ると、実施例1〜5は吸着材の粒子径が不織布の平均ポアサイズを下回る割合が40〜70%の範囲にあり、吸着材の脱落に問題がなく、また放射性物質吸着率も良好であった。前記割合が75%の比較例2は、吸着材の脱落が多く、実使用が困難な程度であった。また、前記割合が35%の比較例1では吸着材の脱落は全く見られなかったが、放射性物質の吸着率が劣っていた。なお、実施例5は不織布の平均ポアサイズが50μmを超えており、やや吸着材の脱落が観察された。このように、
【0055】
表2の結果を見ると、各実施例は浸水評価と耐水圧評価がともに良好であった。一方、親水性の繊維からなる不織布を用いた比較例3と比較例4は、湿潤引張強さ残存率が80%未満であり、耐水圧試験の結果シート強度が保てず不合格であった。また、シート表面と水との接触角が水滴下後0.05秒後で100°を超えた比較例5と比較例6は、撥水性が認められ吸水性が悪く使用できなかった。また、シート表面と水との接触角が水滴下後1秒後で80°まで下がらなかった比較例6は、吸着シートとして使用を続けても吸水性が改善されず実使用できるレベルではなかった。
【0056】
以上のように、本発明の吸着シートは、水系での放射性物質の除染に好適に使用できる。