(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
屋外において、建物の壁面や屋根の表面に丈夫な皮膜を造ることで建物自体を保護するため、または、カラーリングを施すことで建物を美しく仕上げるため、さらには、遮熱や断熱等の特殊な機能をもたせるため等の種々の目的で、各種の塗料を用いた塗装作業が行われている。
特に、近年、省エネルギー対策として、一般的に、工場・倉庫・事務所・住宅等の屋根や外壁に、遮熱性塗料を塗装することで、屋根や室内への熱の影響を少なくすることで、空調負荷を低減する試みが行われている。
該遮熱性塗料を塗装する手段は、遮熱効果に優れた均一な塗装膜を形成するために、通常、施工対象面に下地処理をしてから、3時間以上の塗装間隔を必要とする本塗り工程を2回に分けて行っている。
【0003】
また、特許文献1に示すように、シート本体と、前記シート本体の少なくとも一方の面に遮熱塗料を塗布することによって形成された遮熱性塗膜と、前記シート本体の前記遮熱性塗膜が形成された面上に配置され、前記遮熱性塗膜の面前に赤外線透過性の三次元領域を確保するスペーサとを有している屋外用塗装シート及びそれを備える遮熱板を利用することで、遮熱効果を得るための手段も知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塗料を塗装する手段は、本塗り工程を2回に分けて行う必要があるため、天候が安定していない状況下では施工できず、天候に対する影響が大きかった。
また、塗装後は、塗料が乾燥するまで施工現場を踏むことができず、施工性に影響を及ぼすことがあった。
この際、塗料の匂いが周辺に影響を及ぼすことがあり、住宅地での施工では問題が生じる場合もあった。
さらに、作業員の技量に影響されやすいので、品質にバラツキが生じる可能性があった。
【0005】
特許文献1に記載の手段は、段落[0018]に「本発明の遮熱シートによれば、断熱性又は遮熱性を持たせたい部材の裏側、すなわち、熱源とは反対側に、スペーサの側を前記裏側に向けて本発明の遮熱シートを取り付けるという極めて簡単な作業で、当該部材に優れた断熱性又は遮熱性を付与することができる。・・・・・・・・・。さらに、本発明の遮熱シートは、断熱又は遮熱したい材料の裏側に取り付けて使用されるので、遮熱性塗膜が直接表面に露出することがなく、風雨による劣化や、汚れや摩耗による赤外線反射率の低下といった経年変化を被ることが少なく、優れた耐久性を有しているという利点を備えている。」と記載されているように、熱源となる屋根等の裏側に施工するものであるため、表側に塗装する場合と比較すると、施工性が容易であるとは考え難いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。
【0007】
第1に、
塗料が、通気性を有する芯材シートの内部に
通気性部分の一部を残して浸透し、表面側から裏面側にまで存在していることを特徴とする、屋外用塗装シート。
第2に、
通気性を有する芯材シートが、通気量40〜70(cc/cm
2・S)のポリエステル製不織布であ
り、
塗料が、0.2μm以上で0.6μm以下の真球無孔質セラミックスを原料とした遮熱性塗料であることを特徴とする、上記第1に記載の屋外用塗装シート。
第3に、
施工対象面に下地処理を施して、接着剤として機能する下地材を塗布した後に、
塗料が、通気性を有する芯材シートの内部に
通気性部分の一部を残して浸透し、表面側から裏面側にまで存在している屋外用塗装シートを、貼り付けて施工することを特徴とする、塗装方法。
【0008】
塗料としては、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、シリコン系塗料、ナノ系塗料、無機系塗料、フッ素系塗料、光触媒系塗料等による各種性能のものを用いることができる。
ここで、遮熱性塗料としては、遮熱性や断熱性を有する塗料を用いることができ、粒子径20〜300μmの中空バルーンセラミックによる塗料等を用いることができるが、0.2μm以上で0.6μm以下の真球無孔質セラミックスを原料とした塗料を用いることが好ましい。
また、通気性を有する芯材シートとしては、ポリエステル製によるもの、ポリエチレン製によるもの等を採用することができる。
該通気性を有する芯材シートとしては、通気量を、試験片について単位面積1平方センチメートルあたり、1秒間に通過する空気量とすると、20〜300ccであって、特に40〜70ccのものが好ましい。
該芯材シートは、ポリエステル製不織布によるものが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0010】
予め工場等の天候に左右されない箇所で塗装し、乾燥させることで屋外用塗装シートを製造するので、現場の天候が安定していない状況下でも、短時間で施工が可能であり、天候に対する影響を少なくすることが可能となり、塗料の匂いによる問題も解消することができる。
また、施工後は、直ちに施工現場を踏むことができ、塗料が乾燥する時間を無駄にすることがないので、施工性に影響を及ぼすことがない。
さらに、従来の下塗塗料を接着剤として利用することで、追加工程の発生を防ぐことが可能となる。
すなわち、本発明によれば、作業性を画期的に向上させることが可能となる。
加えて、工場等で、均一化された生産が可能なので、作業員の技量に影響されず、一定の品質を保つことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は該当形態に限定されるものではない。
【0013】
図1の概略図に示すように、本発明の屋外用塗装シートは、遮熱性塗料1を、通気性を有するポリエステル製不織布である芯材シート2に塗布することで構成されている。
該図面では、芯材シート2の上面側に、遮熱性塗料1が塗布された状態が模式的に図示されているが、実際は、芯材シート2の通気部分に遮熱性塗料1が表面側から入り込み、裏面側に回り込んで漏れ出るように塗布されている。
すなわち、本発明の屋外用塗装シートは、遮熱性塗料1が芯材シート2の通気性部分の一部を残して浸透し、遮熱性塗料1と芯材シート2とが一体となって形成されているものである。
【0014】
遮熱性塗料1としては、0.2μm以上で0.6μm以下の真球無孔質セラミックスを原料とした、日本中央研究所株式会社のアドグリーンコートを用いた。
該遮熱性塗料1として、粒子径20〜300μmの中空バルーンセラミックによる塗料を用いることもできる。
【0015】
ポリエステル製不織布による芯材シート2は、坪量が50g/m
2ものと、70/m
2のものを用いた。
該芯材シート2は、現場での施工性を考慮し、幅が100cm、長さ180cm程度のものを用いた。
【0016】
該屋外用塗装シートは、熟練した者が、屋内において、芯材シート2の表面側に1回目及び2回目の塗布量を各々0.15kg/m
2(ウェット膜厚が120μm)に調整し、3時間の時間をおいて、ローラ及び刷毛を用いて遮熱性塗料1を塗布することで製造した。
ここで、1回目の塗布は、遮熱性塗料1を芯材シート2の裏側にまで浸透して回り込むように、押し付けるように塗布することが必要である。
このように製造することで、本発明の屋外用塗装シートは、遮熱性塗料1が芯材シート2の通気性部分の一部を残して大部分に浸透し、遮熱性塗料1と芯材シート2とが一体となって形成される。
ここで、通気性部分の一部が残されることで、小さな空間が保持されることになるので、断熱効果が期待できるようになる。
【0018】
遮熱処理を施す塗装面に対して、下地調整として、ミルスケール、ほこり、水分、さび、付着物を除去する等のクリーニングをする。
その後、充分清掃又は乾燥させた後、あるいは清掃及び乾燥させた後に、接着剤として機能する下地材として、施工対象の素材に応じたものを使用する。
【0019】
例えば、鋼板・トタン・ステンレス面等の金属系の場合には、アドマイルドコートを塗布し、塗布後、完全に乾く前に屋外用塗装シートを設置する。
すると、屋外用塗装シートの芯材シート2が、アドマイルドコートによって接着され、短時間で施工が完了する。
ここで、下地材が接着剤として有効に機能することを確認した。
【0020】
施工直後、屋外用塗装シートを踏みつけても、塗装面に影響はないため、施工性を高めることが可能となる。
【0021】
通常、遮熱塗装の塗装作業を行う場合には、半日程度先の天候を見越し、今後の天候を予測しながら作業を行うことが必要であり、例えば2時間後に降雨があると予測される場合には作業を行うことができなかった。
これに対し、本発明による塗装方法によると、下地材の塗布が終了すれば、直ちに屋外用塗装シートの貼付作業を行うことでき、貼付後は雨が降っても問題ないので、天候の影響を少なくすることが可能となる。
【0022】
[試験例1](各種芯材シートによる特性試験)
【0023】
材質等が異なる13種類の品番の不織布シートを用意し、芯材シート2としての特性を試験した。
ここで、品番4,7,12,13は株式会社ツジトミ製のものであり、品番1,2,3,5,6,8,9,10,11は東レ株式会社製のものである。
【0024】
遮熱効果は、芯材シート2として適性がある品番5〜11について、遮熱性塗料1としてアドグリーンコートを用い、試験用の鉄板に、そのまま塗装した場合と、単位面積当たり同量のアドグリーンコートを各品番の不織布シートに塗布して得た屋外用塗装シートを貼り付けた場合とで比較した。
この際、同一光源下において、10分経過後の内側空間の温度を各々測定し、1度以上低いものを遮熱効果が高いと判断して○で表示した。
【0025】
また、施工性は、ロール状の屋外用塗装シートについて、展開性等の現場での扱い易さを基準として判断した。
【0028】
上記の結果を考察すると、芯材シートの材質としては、密着性の貼り合わせや耐候性において、ポリプロピレンより、ポリエステルが優れていることが確認できる。
また、坪量が40g/m
2以下のものは、引裂テストの結果から、強度の点で適切でないことが確認された。
さらに、通気量については、試験片について単位面積1平方センチメートルあたり、1秒間に通過する空気量が200cc以上となると、製造の際における遮熱性塗料のロスが大きく、適切でないことが確認された。
【0030】
品番1〜11のポリエステル製不織布による芯材シートに、遮熱性塗料としてアドグリーンコートを2回塗りした本発明に係る屋外用塗装シートを、JIS K 5600−5−6:1999(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準拠した方法で、単一刃切り込み工具によって、カット間隔2mmで試験体を作成して、付着性について試験を行った。
その結果、カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがないことが確認された。
【0031】
[試験例3](中空バルーンセラミックによる遮熱塗料試験)
【0032】
本試験例用の屋外用塗装シートは、品番7の不織布シートを芯材シート2として用い、遮熱塗料1として中空バルーンセラミックによる遮熱塗料である株式会社ミラクール製のミラクールS100を規定量(200g/m
2)となるように2回塗りして製造したものである。
該屋外用塗装シートを、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として株式会社ミラクール製のミラクールSIIプライマーを塗布し、乾燥する前に施工した。
また、比較例用に、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として株式会社ミラクール製のミラクールSIIプライマーを塗布して完全に乾燥させた後に、株式会社ミラクール製のミラクールS100を規定量(200g/m
2)となるように2回塗りした。
同一条件下で、光源下に放置し、経過時間における内側空間の温度を、1分間隔で約1時間まで各々測定した。
その結果、比較例より本試験例の方が、試験開始後5分後から終了まで、温度が2〜3℃程度低くなることを確認した。
【0033】
[試験例4](真球無孔質セラミックスによる遮熱塗料試験1)
【0034】
本試験例用の屋外用塗装シートは、品番7の不織布シートを芯材シート2として用い、遮熱塗料1として真球無孔質セラミックスによる遮熱塗料である日本中央研究所株式会社製のアドグリーンコートを規定量(300g/m
2)となるように2回塗りして製造したものである。
該屋外用塗装シートを、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として日本中央研究所株式会社製のアドマイルドコートを塗布し、乾燥する前に施工した。
また、比較例用に、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として日本中央研究所株式会社製のアドマイルドコートを塗布して完全に乾燥させた後に、日本中央研究所株式会社製のアドグリーンコートを規定量(300g/m
2)となるように2回塗りした。
同一条件下で、光源下に放置し、経過時間における内側空間の温度を、1分間隔で約1時間まで各々測定した。
その結果、比較例より本試験例の方が、試験開始後5分後から終了まで、温度が1〜3℃程度低くなることを確認した。
【0035】
[試験例5](真球無孔質セラミックスによる遮熱塗料試験2)
【0036】
本試験例用の屋外用塗装シートは、品番7の不織布シートを芯材シート2として用い、遮熱塗料1として真球無孔質セラミックスによる遮熱塗料である日本中央研究所株式会社製のアドグリーンコートを規定量(240g/m
2)となるように2回塗りして製造したものである。
該屋外用塗装シートを、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として日本中央研究所株式会社製のアドマイルドコートを塗布し、乾燥する前に施工した。
また、比較例用に、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として日本中央研究所株式会社製のアドマイルドコートを塗布して完全に乾燥させた後に、日本中央研究所株式会社製のアドグリーンコートを規定量(300g/m
2)となるように2回塗りした。
同一条件下で、光源下に放置し、経過時間における内側空間の温度を、1分間隔で約1時間まで各々測定した。
その結果、この場合であっても、比較例より本試験例の方が、試験開始後5分後から終了まで、温度が1〜3℃程度低くなることを確認した。
【0037】
[試験例6](真球無孔質セラミックスによる遮熱塗料試験3)
【0038】
本試験例用の屋外用塗装シートは、品番7の不織布シートを芯材シート2として用い、遮熱塗料1として真球無孔質セラミックスによる遮熱塗料である日本中央研究所株式会社製のアドグリーンコートを規定量(210g/m
2)となるように2回塗りして製造したものである。
該屋外用塗装シートを、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として日本中央研究所株式会社製のアドマイルドコートを塗布し、乾燥する前に施工した。
なお、該規定量では、遮熱塗料1が、芯材シート2の表面側から入り込み、裏面側に回り込んで漏れ出ることを確認したが、これより少なくなると、該品番の芯材シート2に対しては裏面側に漏れ出る量が充分でないと推測された。
また、比較例用に、厚さ0.27mmのトタン板に下地材として日本中央研究所株式会社製のアドマイルドコートを塗布して完全に乾燥させた後に、日本中央研究所株式会社製のアドグリーンコートを規定量(300g/m
2)となるように2回塗りした。
同一条件下で、光源下に放置し、経過時間における内側空間の温度を、1分間隔で約1時まで各々測定した。
その結果、この場合であっても、比較例より本試験例の方が、試験開始後5分後から終了まで、温度が約1〜3℃程度低くなることを確認した。
【課題】 天候が安定していない状況下でも施工可能であって、天候に対する影響が小さく、また、塗装後、下地材による下塗り完了及び屋外用塗装シートを貼り付け直後であっても施工現場を踏むことができて施工性に影響を及ぼすことが無く、作業員の技量に影響されず、品質にバラツキが生じる可能性を少なくする手段を提供する。
【解決手段】 通気性を有するポリエステル製不織布による芯材シート2に、無孔質セラミックスを原料とした遮熱性塗料1を塗布することで、該遮熱性塗料1が、通気性を有する芯材シート2の内部に浸透し、表面側から裏面側にまで存在する屋外用塗装シートを得る。