(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る分割ブラインドナットの実施形態について図面を用いて説明する。
【0011】
図1から
図3に示すように、本実施形態の分割ブラインドナット1は、主として、複数の分割ナット片2と、これら分割ナット片2を一つの分割ブラインドナット1としてまとめる弾性部材3とから構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0012】
各分割ナット片2は、円周方向に沿って等分割された形状に形成されており、その内周面に設けられた雌ネジ部21と、この雌ネジ部21の軸線に平行な外周面を有する小径部22と、この小径部22の先端部からテーパ状に拡径されたテーパ部23と、前記小径部22の基端部に設けられたフランジ部24とを有している。なお、本実施形態では、略二等分された二つの分割ナット片2,2から構成されているが、この構成に限定されるものではなく、三つ以上に分割された複数の分割ナット片2から構成されていてもよい。また、本実施形態において、各分割ナット片2は鋼製であるが、アルミニウム製や樹脂製、その他の材質で構成されてもよい。
【0013】
雌ネジ部21は、
図2および
図3に示すように、各分割ナット片2の内周面に形成されており、各分割ナット片2が円周方向に配置された状態で一つの雌ネジとして機能するようになっている。また、本実施形態では、
図2に示すように、雌ネジ部21の基端部が、基端部側に向けて拡径するテーパ状に形成されているとともに雌ネジがないネジ無し部21aを備えている。このネジ無し部21aにより、ボルトやビス等の雄ネジ部材をねじ込む際のねじ込み抵抗が低減されるためボルト等を容易に挿入でき、分割ブラインドナット1が確実に拡開されて速やかに締結作業を行えるようになっている。
【0014】
小径部22は、
図1(b)および
図2(b)に示すように、雌ネジ部21の軸線に平行な外周面を有しており、その外径が締結物4等の下穴径よりも若干小径に形成されている。また、本実施形態では、
図3(b)に示すように、小径部22の外周面の一部が平坦面状に形成された平坦部22aを有している。このため、ボルトやビス等をねじ込むことによって分割ブラインドナット1が拡開された際、平坦部22aが下穴6の内周面を押圧して摩擦抵抗を発生させ、共回りを防止する機能を備えている。
【0015】
テーパ部23は、分割ブラインドナット1が拡開された際、下穴径よりも大径となり、締結物4の裏面に確実に係合するものである。本実施形態において、テーパ部23は、
図1に示すように、小径部22の先端部から分割ナット片2の先端部に向けてテーパ状に拡径されている。また、本実施形態において、テーパ部23の外周面には、
図2に示すように、弾性部材3を巻き付けるための凹溝23aが周方向に沿って形成されている。
【0016】
フランジ部24は、被締結物5の表面における下穴6の外周縁に当接するものであり、分割ナット片2の基端部に設けられている。本実施形態において、フランジ部24は、
図1(b)および
図3(a)に示すように、略円柱形状に形成されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、スパナ等で押さえ易いように六角形状であってもよく、締結物4および被締結物5に埋め込み可能な皿頭形状に形成されていてもよい。
【0017】
弾性部材3は、各分割ナット片2を一つの分割ブラインドナット1として組み立てるとともに、分割ブラインドナット1の縮径と拡径とを自在に行えるように構成されている。具体的には、弾性部材3は縮径方向の復元力を有しており、当該復元力を各分割ナット片2の先端部に付与するようになっている。このため、締結物4等の下穴6に挿入する際には容易に縮径し、ボルト等をねじ込んだ際には拡開しつつ各分割ナット片2の雌ネジ部21をボルト等の雄ネジ部に押圧して締結状態を保持するようになっている。
【0018】
なお、本実施形態では、
図1および
図2に示すように、弾性部材3はゴムリングで構成されており、テーパ部23の外周面に設けられた凹溝23aに嵌め合わされている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、各分割ナット片2の先端部に縮径方向の復元力を付与しうるものであればよい。例えば、弾性部材3として引張バネを採用し、この引張バネの一端と他端をそれぞれ各分割ナット片2の対向する分断面に固定してもよい。
【0019】
また、本実施形態において、弾性部材3の内周面には、
図2および
図3に示すように、弾性変形可能な脱落防止突起31が設けられている。この脱落防止突起31は、通常の状態では、各分割ナット片2の間に狭持されてテーパ部23の先端部を下穴径よりも大径に保持するサイズに形成されている。また、縮径方向の外力により圧縮された状態では、弾性変形することによってテーパ部23の先端部を下穴径よりも小径に縮径させるようになっている。
【0020】
つぎに、以上のような構成を備えた本実施形態の分割ブラインドナット1の作用について、
図4を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、分割ブラインドナット1を用いて、内部や裏面に手が届かない締結物4に被締結物5を締結する場合の作業を例として説明する。
【0021】
まず、本実施形態の分割ブラインドナット1によって、締結物4に被締結物5を締結する場合、
図4(a)に示すように、分割ブラインドナット1の先端部に縮径方向の外力を付与する。これにより、脱落防止突起31が圧縮されて弾性変形し、分割ブラインドナット1の先端部の径が下穴径よりも小さくなるため、下穴6に簡単に差し込まれる。
【0022】
つぎに、下穴6を通過した後は、分割ブラインドナット1の先端部に付与されていた縮径方向の力が解除される。このため、脱落防止突起31が元の形状に復元し、
図4(b)に示すように、分割ブラインドナット1の先端部を下穴径よりも大径に保持する。これにより、天井面等に設けられた下穴6に対しても、分割ブラインドナット1を差し込むだけで取り付けられ、脱落しないため作業がし易い。
【0023】
下穴6に分割ブラインドナット1を差し込んだ後、
図4(b)に示すように、雌ネジ部21にボルト7をねじ込む。このとき、本実施形態では、ネジ無し部21aがボルト7をねじ込む際のねじ込み抵抗を低減するため、軽い力でボルト7が簡単にねじ込まれる。また、本実施形態では、小径部22の外周面に設けられた平坦部22aが、下穴6の内周面に押圧されて摩擦抵抗を発生させ、ボルト7のねじ込みに伴う分割ブラインドナット1の共回りを防止する。
【0024】
つづいて、雌ネジ部21にねじ込まれたボルト7は、
図4(c)に示すように、分割ブラインドナット1を拡開する。このとき、弾性部材3が各分割ナット片2に縮径方向の復元力を付与して、各雌ネジ部21をボルト7の雄ネジ部に押圧する。このため、各雌ネジ部21によって構成される雌ネジがボルト7との螺合状態を保持する。
【0025】
そして、ボルト7をフランジ部24に当接するまで強固に締め付けると、テーパ部23が締結物4の裏面に係止し締結状態となる。この締結状態では、雌ネジ部21が完全に分断されているため、通常のナット等に存在するクリアランスを小さくすることができる。このため、締結後の緩みが最小限に抑制され、強固な締結状態が長期間に渡って保持される。なお、
図4(a),(b)に示すように、締結物4と被締結物5との間に隙間がある場合でも、テーパ部23が締結物4の下穴6の内周面に当接し被締結物5側へ引き寄せる。このため、締結物4と被締結物5とが一緒に締め付けられることとなる。
【0026】
以上のような本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1.パイプ、薄板、合板等のように、内部や裏面に手が届かない締結物4に片側からの操作で締結することができる。
2.締結後の緩みを抑制し、強固な締結状態を長期間に渡って保持することができる。
3.下穴6に差し込むだけで締結物4に取り付けられ、脱落しないため作業がし易い。
4.ボルト7等をねじ込む際の共回りを防止することができる。
5.ボルト7のねじ込み抵抗を低減し、分割ブラインドナット1を確実に拡開することができる。
6.専用工具を用いることなく下穴6への取り付けや、ボルト7の締め付けを行うことができる。
【0027】
なお、本発明に係る分割ブラインドナット1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0028】
例えば、上述した本実施形態では、テーパ部23の外周面が一定の傾斜角度で拡径されているが、この構成に限定されるものではなく、分割ブラインドナット1が拡開された際、下穴径よりも大径となる形状であればよい。例えば、
図5(a)に示すように、急傾斜する第1テーパ部25と、緩やかに傾斜する第2テーパ部26とから構成されていてもよい。この構成によれば、
図5(b)に示すように、急傾斜された第1テーパ部25が締結物4の裏面にしっかりと係合し、高い締結力が得られる。
【0029】
また、上述した本実施形態では、各分割ナット片2の内側の分断面が先端部に向けて拡開するテーパ状に形成されている。このため、分割ブラインドナット1の先端部の径が、ボルト7等による拡開の前後で大きく変化するとともに、基端部側の雌ネジ部21が多めに残されて締め付け強度を確保するようになっている。しかしながら、この構成に限定されるものではなく、分割ブラインドナット1の先端部が下穴6を通過でき、かつ、拡開された後は下穴6よりも大きくなるのであれば、どのような形状でもよい。
【0030】
さらに、上述した本実施形態では、下穴6に差し込んだ分割ブラインドナット1が脱落するのを防止するため、弾性部材3の内周面に脱落防止突起31を設けているが、この構成に限定されるものではない。例えば、上記と同様、弾性部材3がゴムリングであれば、当該ゴムリングの外径が通常状態で下穴径よりも大きく形成されていればよい。これにより、ゴムリングを圧縮すれば下穴6を通過でき、通過したあとはゴムリングが通常状態に拡径して脱落を防止する。なお、分割ブラインドナット1が脱落しない向きで使用する場合は、脱落防止突起31等を設ける必要はない。
【0031】
また、上述した本実施形態では、共回りを防止するため、各分割ナット片2に小径部22を設けて平坦部22aを形成しているが、この構成に限定されるものではなく、小径部22を設けなくてもよい。すなわち、各分割ナット片2の基端部に設けられたフランジ部24の首下から、先端部に向けてテーパ状に拡径されたテーパ部23を直接設けるようにしてもよい。