特許第6202612号(P6202612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202612
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】無線通信システムおよび無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/10 20090101AFI20170914BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20170914BHJP
   H04W 4/00 20090101ALI20170914BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20170914BHJP
【FI】
   H04W24/10
   H04W4/06 113
   H04W4/00 110
   H04W88/06
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-185175(P2013-185175)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-53592(P2015-53592A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】木本 亨尚
(72)【発明者】
【氏名】田中 総一
【審査官】 相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−188442(JP,A)
【文献】 特開2001−275101(JP,A)
【文献】 特開2002−232478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局と、前記親局に接続された第1の基地局及び第2の基地局と、前記第1の基地局及び前記第2の基地局と無線通信を行う無線通信装置とを備え、
前記親局は前記第1の基地局を介して前記無線通信装置に音声放送を送信し、
前記無線通信装置は、
前記第1の基地局から送信された音声放送を第1の通信方式で受信する第1の受信部と、
前記第2の基地局を介して第2の通信方式で前記親局に情報を送信する第1の送信部とを備え、
前記第1の受信部にて音声放送を受信すると、当該音声放送の受信品質に関する情報を前記第1の送信部から前記親局に送信するとともに、
前記親局は、前記第2の基地局が前記受信品質に関する情報として前記音声放送を正常に受信できなかったことを示す情報を前記無線通信装置から受信すると、当該音声放送の音声データを文字情報に変換し、前記無線通信装置へ前記第2の基地局を介して前記第2の通信方式で前記文字情報を送信することを特徴とする、無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信システムにおいて、
前記親局は、前記第1の基地局を介して音声放送を送信する前に、これから放送を行うことを示す放送開始情報を前記第2の基地局を介して前記無線通信装置に送信し、
前記無線通信装置は、前記第2の基地局から前記放送開始情報を前記第2の通信方式で受信する第2の受信部を備え、当該第2の受信部が前記放送開始情報を受信すると、その後前記第1の受信部が受信した音声放送の前記受信品質に関する情報を前記第1の送信部から前記親局に送信することを特徴とする、無線通信システム。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信システムにおいて、
前記無線通信装置は、前記第2の受信部が前記放送開始情報を受信してから所定時間経過しても、前記第1の受信部が前記音声放送を受信しない場合には、前記受信品質に関する情報として前記音声放送を受信できなかったことを示す情報を前記第1の送信部から前記親局に送信することを特徴とする、無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムおよび無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
親局と子局間の通信を無線で行う無線通信システムが知られており、例えば、親局から送信する送信波は、固定の子局や移動可能な子局で受信する。
【0003】
従来、無線通信システムでは、回線品質の判定を受信側で行い、その判定結果の情報を送信側へ送信していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、市町村などにおける同報無線システムとして、社団法人電波産業会が策定したARIB STD−T86(非特許文献1)にて定められた市町村デジタル同報通信システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−206759号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】市町村デジタル同報通信システム、ARIB STD−T86、社団法人電波産業会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、同報通信システムでは、親局が子局の受信品質を収集することができなかった。
本発明の目的は、同報通信システムの親局が子局の受信品質を収集できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の無線通信システムは、親局と、親局に接続された第1の基地局及び第2の基地局と、第1の基地局及び第2の基地局と無線通信を行う無線通信装置とを備え、親局は第1の基地局を介して無線通信装置に放送を送信し、無線通信装置は、第1の基地局から送信された放送を第1の通信方式で受信する第1の受信部と、第2の基地局を介して第2の通信方式で親局に情報を送信する第1の送信部とを備え、第1の受信部にて放送を受信すると、当該放送の受信品質に関する情報を第1の送信部から親局に送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は上述の無線通信システムにおいて、親局は、第1の基地局を介して放送を送信する前に、これから放送を行うことを示す放送開始情報を第2の基地局を介して無線通信装置に送信し、無線通信装置は、第2の基地局から放送開始情報を第2の通信方式で受信する第2の受信部を備え、当該第2の受信部が放送開始情報を受信すると、その後第1の受信部が受信した放送の受信品質に関する情報を第1の送信部から親局に送信することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明は上述の無線通信システムにおいて、無線通信装置は、第2の受信部が放送開始情報を受信してから所定時間経過しても、第1の受信部が前記放送を受信しない場合には、受信品質に関する情報として放送を受信できなかったことを示す情報を第1の送信部から親局に送信することを特徴とする。
【0011】
本発明は上述の無線通信システムにおいて、親局は、第2の基地局が受信品質に関する情報として放送を正常に受信できなかったことを示す情報を無線通信装置から受信すると、無線通信装置へ第2の基地局を介して第2の通信方式で放送を再放送することを特徴とする。
【0012】
本発明の無線通信装置は、親局に接続された第1の基地局及び第2の基地局と無線通信を行う無線通信装置であって、第1の基地局から送信された放送を第1の通信方式で受信する第1の受信部と、第2の基地局を介して第2の通信方式で親局に情報を送信する第1の送信部とを備え、第1の受信部にて放送を受信すると、当該放送の受信品質に関する情報を第1の送信部から親局に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、同報通信システムの親局が子局の受信品質を収集することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例に係る無線通信システムのブロック図である。
図2】本発明の一実施例に係る無線通信システムの屋外子局と双方向型戸別受信機のブロック図である。
図3】ARIB STD−T86の一括通報のシーケンス図である。
図4】本発明の一実施例に係る無線通信システムのシーケンス図である。
図5】本発明の他の一実施例に係る無線通信システムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例に係る無線通信システムのブロック図である。
図1において、同報系システムは、例えば、災害時に行政機関から住民に対して災害関連情報を報知する等の用途として用いられ、親局100が放送波無線基地局110を介して放送波(同報無線)C11で送信した報知情報を所定の場所に設置された複数の無線通信装置(子局)である屋外子局111および双方向型戸別受信機112などで受信する。
屋外子局111は受信した報知情報をトランペット型スピーカ等から音声出力する。
【0016】
具体例として、60MHz帯(54〜70MHz)における市町村デジタル防災無線通信方式であるTDMA−TDD方式による防災行政用のデジタル同報無線システムにおいて、同報無線回線を利用して放送波無線基地局110と、無線通信装置(子局)である屋外子局111や双方向型戸別受信機112などとの間で音声情報や他の符号情報等による通報を行う機能を備える。
【0017】
また、親局100は、屋外子局111および双方向型戸別受信機112の放送波C11の受信品質を収集するため、無線基地局120から放送波C11と異なる周波数の電波C21を用いる。例えば、放送波C11と異なる周波数と通信方式は、920MHz帯(915〜930MHz)で複信方式を用いる。
【0018】
図2は本発明の一実施例に係る無線通信システムの屋外子局と双方向型戸別受信機のブロック図である。
無線通信装置(子局)である屋外子局111および双方向型戸別受信機112は、放送波受信部201と、無線部202と、CPU(Central Processing Unit)部203を有している。
放送波受信部201は、放送波無線基地局110から送信される放送波C11を受信する。
無線部202は、親局100へのアンサーバック用として、無線基地局120と電波C21で送受信を行う。屋外子局111と双方向型戸別受信機112が、無線基地局120の通信エリア外の場合は、中継局121を介して無線基地局120と送受信を行う。
このように、屋外子局111や双方向型戸別受信機112は、放送波無線基地局110及び無線基地局120のそれぞれと、異なるチャネルで異なる通信方式で通信する2つの無線部を有している。
CPU部203は、放送波受信部201および無線部202の制御を行う。
【0019】
(受信品質の説明)
図3はARIB STD−T86の一括通報のシーケンス図である。図3を用いて子局の受信品質の詳細について説明する。
受信品質としては、「正常受信」、「後追い」、「受信中に同期外れ」、「受信できず」等がある。
デジタル無線の場合、受信側で無線フレームの同期をとる必要があり、無線フレームの同期がとれないと正常受信することができない。
【0020】
子局は図3のシーケンス中、まったく無線フレームの同期がとれなかった場合には、一切音声を受信することができないので、スピーカから放送が出力されることがない。このケースは、「受信できず」となる。
【0021】
子局は図3のシーケンス中に、無線フレームの同期が外れてしまうこともある。この場合、音声が途中から断や、音が途切れ途切れになる。これは「受信中に同期外れ」であり、放送内容が正確に伝わっていない可能性が高い。
【0022】
また、子局は放送が開始されてから、ある程度の時間経過後に無線フレームの同期がとれることもある。子局は図3のシーケンスで、PCH通話開始指示(301)(302)とFACCH番号通知(303)が受信できず、その後のTCH音声部分で無線フレームの同期がかかった場合、PCH通話開始指示(301)(302)とFACCH番号通知(303)が受信できていないので、その後のTCH(音声)(305)が誰宛てのものかが不明となり、TCH(音声)(305)がスピーカから出力されることはない。このようなケースは「後追い」であり、放送内容が伝わらない。
【0023】
子局は図3のシーケンスのPCH通話開始指示(301)からPCH強制切断指示(306)まですべて受信できた場合、「正常受信」と判定することができる。
また、親局100と放送波用基地局110間、あるいは、放送波用基地局110の内部に故障等の問題があり、放送波そのものが送信されない状況もあり得る。このケースは、「受信できず」となる。
【0024】
(子局の受信品質収集)
図4は本発明の一実施例に係る無線通信システムのシーケンス図である。
親局100は、放送波C11で報知情報を屋外子局111と双方向型戸別受信機112に送信するため、放送波無線基地局110に通報起動の指示を出す(401)。
放送波無線基地局110は、屋外子局111と双方向型戸別受信機112に通報起動の指示を出す(402)。
【0025】
親局100は、報知情報である音声データを放送波無線基地局110に送話する(403)。
放送波無線基地局110は、屋外子局111と双方向型戸別受信機112に報知情報である音声データを送話する(404)。
親局100は、報知情報である音声データの送話を終了後、放送波無線基地局110に終話の指示を出す(405)。
放送波無線基地局110は、屋外子局111と双方向型戸別受信機112に終話の指示を出す(406)。
【0026】
次に、親局100は、屋外子局111と双方向型戸別受信機112の受信品質を収集するため、放送波と異なる周波数の電波C21を使用する無線基地局120に受信品質収集の指示を出す(407)。
無線基地局120は、中継局121に対して子局の受信品質を収集のため、受信品質の送信の指示を出す(408)。
【0027】
中継局121は屋外子局111に対して受信品質の送信の指示を出す(408)。屋外子局111は中継局121に対して受信品質を送信する(410)。中継局121は無線基地局120に対して屋外子局111の受信品質を送信する(411)。無線基地局120は親局100に対して屋外子局111の受信品質を送信する(412)。
【0028】
中継局121は双方向型戸別受信機112に対して受信品質の送信指示を出す(413)。双方向型戸別受信機112は中継局121に対して受信品質を送信する(414)。中継局121は無線基地局120に対して双方向型戸別受信機112の受信品質を送信する(415)。無線基地局120は親局100に対して双方向型戸別受信機112の受信品質を送信する(417)。
なお、屋外子局111と双方向型戸別受信機112が、無線基地局120の通信エリア内の場合は、中継局121を介さずに無線基地局120と直接、送受信を行ってもよい。
【0029】
親局100は、上述の処理を実行することにより、放送波用無線基地局110から送信した報知情報(音声データ)の受信状況である受信品質を収集することができる。
【0030】
なお、無線基地局120は、複数の子局の受信品質を収集後、まとめて親局100に送信してもよい。
また、親局100は、屋外子局111や双方向型戸別受信機112等の子局が放送波C11を“正常受信”以外の受信品質で受信した場合、無線基地局120から中継局121を介して、屋外子局111や双方向型戸別受信機112等の子局に対して放送波C11で送信した内容を無線基地局120から再送信してもよい。
【0031】
(親局は予め子局に報知情報を送信する旨を連絡)
次に本発明の他の一実施例の動作について説明する。
親局100は、報知情報を放送波用無線基地局110から送信する前、または、並行して、屋外子局111や双方向型戸別受信機112等の子局に対して、無線基地局120および中継局121を介して放送波用無線基地局110から報知情報を送信する旨を連絡し、放送波用無線基地局110からの報知情報の受信状況である受信品質の送信を指示する。
【0032】
屋外子局111や双方向型戸別受信機112等の子局は、放送波用無線基地局110からの報知情報を受信後または放送開始時刻から所定時間経過後、受信品質を中継局121および無線基地局120を介して親局100に送信する。
【0033】
このことにより、屋外子局111や双方向型戸別受信機112等の子局は、親局100から放送が行われることを放送波用無線基地局110から放送を受信できない状況でも知ることができ、「受信できず」をより確実に判断することができる。その結果、親局100は、より確実に正確に子局の受信品質を収集することができる。
【0034】
(再送信は文字情報)
さらに本発明の他の一実施例の動作について図1図5を用いて説明する。
図5は本発明の他の一実施例に係る無線通信システムのフローチャートの一例である。
親局100は、屋外子局111や双方向型戸別受信機112等の子局に対して同報通報で音声送話を開始し(S501)、音声送話終了後に同報通報を終了する(S502)。
【0035】
親局100は、同報通報の通信記録を記憶し(S503)、収集する子局の受信情報の有無を判定する(S504)。
親局100は、収集する子局の受信情報がある場合(YES)にはS505の処理に進み、収集する子局の受信情報がない場合(NO)には処理を終了する。
【0036】
親局100は、子局の受信品質の収集するため、ポーリング信号を無線基地局120と中継局121を介して送信する(S505)。
【0037】
子局は、報知情報の受信品質を親局100に中継局121、無線基地局120を介して送信する(S506)。
【0038】
親局100は、子局からの受信情報を受信し(S507)、図示していない表示部に受信品質を表示する(S508)。
親局100は、ポーリングによる子局の受信品質の収集が終了したかを判定し(S509)、受信品質の収集が終了した場合(YES)または予め設定した所定時間経過後にはS510の処理に進み、受信品質の収集が終了していない場合(NO)にはS506の処理に戻る。
【0039】
親局100は、収集した子局の受信品質を基に報知情報の受信失敗の有無を判定し(S510)、子局の一部でも受信を失敗している場合(YES)にはS511の処理に進み、子局の全部が受信を失敗していない場合(NO)には処理を終了する。
【0040】
親局100は、子局が受信を失敗した報知情報(音声データ)を文字情報に変換し(S510)、無線基地局120から中継局121を介して子局に送信する(S512)。
【0041】
子局は、無線基地局120から送信された文字情報を受信し(S513)、文字情報を音声信号に変換し(S414)、図示していないスピーカから拡声出力する(S515)。
そして、図5の処理を終了する。
【0042】
図5の処理を実行することにより、子局が同報無線の報知情報受信に失敗しても、親局は子局の受信状況に応じて同報無線と別系統の無線通信系で文字情報を再放送するため、子局は報知情報を確実に正常受信することができる。
【0043】
以上本発明について詳細に説明したが、本発明は、ここに記載された無線通信システムおよび無線通信装置に限定されるものではなく、上記以外の無線通信システムおよび無線通信装置に広く適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
100:親局、110:放送波用無線基地局、111:屋外子局、112:双方法型戸別受信機、120:無線基地局、121:中継局。
図1
図2
図3
図4
図5