特許第6202616号(P6202616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202616
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】遮水体設置構造と遮水体設置方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/22 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   E02B7/22
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-217546(P2013-217546)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78571(P2015-78571A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129632
【弁理士】
【氏名又は名称】仲 晃一
(74)【代理人】
【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 純人
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−062533(JP,U)
【文献】 特開昭64−021111(JP,A)
【文献】 特開2001−090042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/22
E02B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と一対の立ち上がり部を有する建造物の開口部への浸水を、水を充填した袋状の遮水体で阻止する遮水体設置構造であって、
遮水体は、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置され、遮水体の側面形状が斜辺を有しており、
遮水体を、一対の立ち上がり部の下端部に密着させる密着手段と、
密着手段を開口部の近傍に固定する固定手段とを備え
上記密着手段が、上記側面形状の斜辺を形成する遮水体の斜面に、立ち上がり部の下端部の方に向う力を加えることができるものであることを特徴とする遮水体設置構造。
【請求項2】
上記遮水体の側面形状が略直角三角形であり、略直角三角形の直角を形成する二面が、立ち上がり部及び底部にそれぞれ対面するように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の遮水体設置構造。
【請求項3】
上記密着手段が、遮水体の斜面に、斜面を覆うシート体を添設し、シート体の両端を一対の立ち上がり部の下端部の方に引っ張るものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遮水体設置構造。
【請求項4】
上記シート体がネット状のものであり、上記固定手段として、開口部の近傍の遮水体設置面、立ち上がり部、建造物の外壁面のいずれか1つ又は2つ以上に、該シート体を係止させる係止部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の遮水体設置構造。
【請求項5】
底部と一対の立ち上がり部を有する建造物の開口部への浸水を、水を充填した袋状の遮水体で阻止する遮水体設置方法であって、
側面形状が斜辺を有する遮水体を、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置して、遮水体を一対の立ち上がり部の下端部に密着させる密着手段を配置するか、又は、該密着手段を配置した遮水体を、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置する第1の工程と、
固定手段により密着手段を開口部の近傍に固定する第2の工程と、
遮水体の内部に水を充填することで、上記密着手段により、上記側面形状の斜辺を形成する遮水体の斜面に立ち上がり部の下端部の方に向う力を加えて遮水体を立ち上がり部の下端部に密着させる第3の工程とを有することを特徴とする遮水体設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲリラ豪雨等による建造物の開口部からの浸水を阻止する遮水体設置構造と遮水体設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化が要因の一つとされる異常気象に伴い、各地で短時間の記録的なゲリラ豪雨が頻発している。周知のように、都市部では道路の舗装化が進んでおり、降雨した雨水は殆ど地面に浸透することなく、下水道施設から河川へと一気に流入するので、短時間で河川が氾濫したり下水道施設から雨水が噴き出したりして、床下浸水や床上浸水の被害を出して社会問題となっている。
【0003】
従来、河川の氾濫などの水害時は、土嚢を建造物の出入口に積み上げて遮水壁を作り、建造物内部への浸水を防いでいたが、土嚢は非常に重いため、積み上げ作業には大変な時間と労力を要し、また、嵩張るので保管場所を確保するのも困難であった。しかも、上記のように、昨今の水害は短時間の内に被害が出ることが多く、土嚢を保管場所から建造物の出入口に積み上げる作業に時間を要すると、遮水壁を作るまでに建造物が浸水してしまうことも珍しくない。
【0004】
かかる事情に鑑みて、防潮堤と防潮堤の間に、折り畳みが可能な筒状の防水袋体を配置すると共に、津波や高潮などの進入側と反対側(陸側)に支持具を並設し、支持具に防水袋体を支持させて浮き上がりや流出を防止し、防潮堤間からの海水の進入を阻止する防水用具のように、土嚢以外のもので、水害を防止することも提案されている(特許文献1)。
【0005】
上記特許文献1の防水用具は、支持具に防水袋体を支持させて、防水袋体の内部に給水するという作業で設置することができるので、従来のように、土嚢を保管場所から運び出して積み上げるといった労力や時間から解放され、また、防水袋体は折り畳みが可能なので、保管場所の確保も容易であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−171917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の防水用具は、防水袋体及び支持具を津波や高潮などの進入側と反対側、即ち、防潮堤よりも陸側に設置するので、津波や高潮などが押し寄せて防水用具に衝突すると、防水袋体は後方に並設された支持具の方へと追いやられ、防潮堤と防水袋体との間に隙間が生じて、そこから海水が進入してくるという問題があった。特に、防水袋体は注水すると球状に変形するので、防水袋体の下端部と防潮堤の下端部との間の隙間が最も大きくなって、その隙間から相当量の海水が防潮堤の内部へと進入してしまう。防潮堤では、多少の海水の進入は問題にならないが、建造物の場合は到底無視することのできない問題である。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題は、保管場所の確保が容易で、短時間の簡易な作業で確実に建造物の内部への浸水を阻止することのできる遮水体設置構造と遮水体設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る遮水体設置構造は、底部と一対の立ち上がり部を有する建造物の開口部への浸水を、水を充填した袋状の遮水体で阻止する遮水体設置構造であって、遮水体は、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置され、遮水体の側面形状が斜辺を有しており、遮水体を、一対の立ち上がり部の下端部に密着させる密着手段と、密着手段を開口部の近傍に固定する固定手段とを備え上記密着手段が、上記側面形状の斜辺を形成する遮水体の斜面に、立ち上がり部の下端部の方に向う力を加えることができるものであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の遮水体設置構造においては、上記遮水体の側面形状が略直角三角形であり、略直角三角形の直角を形成する二面が、立ち上がり部及び底部にそれぞれ対面するように設置されていることが好ましい。また、上記密着手段が、遮水体の斜面に、斜面を覆うシート体を添設し、シート体の両端を一対の立ち上がり部の下端部の方に引っ張るものであることが好ましく、上記シート体がネット状のものであり、上記固定手段として、開口部の近傍の遮水体設置面、立ち上がり部、建造物の外壁面のいずれか1つ又は2つ以上に、該シート体を係止させる係止部が設けられているとより好ましい。
【0011】
次に、本発明の遮水体設置方法は、底部と一対の立ち上がり部を有する建造物の開口部への浸水を、水を充填した袋状の遮水体で阻止する遮水体設置方法であって、側面形状が斜辺を有する遮水体を、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置して、遮水体を一対の立ち上がり部の下端部に密着させる密着手段を配置するか、又は、該密着手段を配置した遮水体を、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置する第1の工程と、固定手段により密着手段を開口部の近傍に固定する第2の工程と、遮水体の内部に水を充填することで、上記密着手段により、上記側面形状の斜辺を形成する遮水体の斜面に立ち上がり部の下端部の方に向う力を加えて遮水体を立ち上がり部の下端部に密着させる第3の工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遮水体設置構造は、遮水体に水が充填されることで、遮水体はその自重によって、開口部の底部と隙間なく密着する、また、保管場所の確保や設置作業を容易にするため、遮水体は、折り畳みが可能な柔軟な袋状のものを採用しているので、遮水体に水を充填すると遮水体は膨れて、遮水体内の水による水圧や重力で球状に変形しようとし、特に、立ち上がり部の下端部付近において、遮水体との間に隙間が生じてしまうが、本発明は、遮水体の側面形状が斜辺を有し、密着手段によって、側面形状の斜辺を形成する遮水体の斜面に、立ち上がり部の下端部の方に向かう力が加えられて、遮水体開口部の一対の立ち上がり部の下端部に密着されるので、底部と立ち上がり部の下端部付近においても、遮水体と開口部との隙間がなくなり、そこから浸水してくることもない。更に、遮水体は密着手段によって立ち上がり部の下端部に押し当てられているので、遮水体全体が立ち上がり部の方に引っ張られて、立ち上がり部の下端部よりも上側でも、遮水体と開口部との隙間がなくなり遮水される。従って、開口部の底部から立ち上がり部の所定の高さ(遮水体の高さ)までが確実に遮水されることになり、建造物の開口部への浸水を確実に阻止することができる。しかも、遮水体は袋状のものなので、それ自体が軽量で柔軟性を有し、水を充填しなければ持ち運びや保管場所を確保するのも容易であり、短時間で設置することができる。
【0013】
また、上記遮水体の側面形状が略直角三角形であり、略直角三角形の直角を形成する二面が、立ち上がり部及び底部にそれぞれ対面するように設置されている遮水体設置構造は、開口部から浸水しようとする水位が上昇すると、遮水体の斜面に対して鉛直方向と水平方向の力(浸水による水圧)が加わるため、密着手段により遮水体の斜面に立ち上がり部の下端部の方に向う力が加えられていることと相俟って、遮水体の二面は底部及び立ち上がり部に押し付けられて、より確実に遮水することができる。
【0014】
更に、上記密着手段が、遮水体の斜面に、斜面を覆うシート体を添設し、シート体の両端を一対の立ち上がり部の下端部の方に引っ張るものである遮水体設置構造は、シート体の両端を一対の立ち上がり部の下端部の方に引っ張ることで、遮水体の斜面に対して鉛直方向と水平方向の力を確実に加えることができ、密着度が上がって遮水性能が向上する。
【0015】
特に、上記シート体がネット状のものであり、上記固定手段として、開口部の近傍の遮水体設置面、立ち上がり部、建造物の外壁面のいずれか1つ又は2つ以上に、該シート体を係止させる係止部が設けられている遮水体設置構造のように、シート体がネット状のものであると、立ち上がり部の下端部の方に引っ張る力が強いので、斜面に対して十分な鉛直方向と水平方向の力を加えることができ、開口部の近傍の遮水体設置面、立ち上がり部、建造物の外壁面のいずれか1つ又は2つ以上に設けられた係止部との係止も、簡単に行えるので好ましい。
【0016】
次に、本発明の遮水体設置方法は、底部と一対の立ち上がり部を有する建造物の開口部への浸水を、水を充填した袋状の遮水体で阻止する遮水体設置方法であって、側面形状が斜辺を有する遮水体を、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置して、遮水体を一対の立ち上がり部の下端部に密着させる密着手段を配置するか、又は、該密着手段を配置した遮水体を、開口部の水の進入側の底部に沿って、一対の立ち上がり部の間を跨ぐように設置する第1の工程と、固定手段により密着手段を開口部の近傍に固定する第2の工程と、遮水体の内部に水を充填することで、上記密着手段により、上記側面形状の斜辺を形成する遮水体の斜面に立ち上がり部の下端部の方に向う力を加えて遮水体を立ち上がり部の下端部に密着させる第3の工程とによって、短時間の簡単な作業で、上記のような優れた作用効果を奏する遮水体設置構造を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る遮水体設置構造を示す斜視図である。
図2】同設置構造の概略平面図である。
図3】同設置構造に用いる遮水体の斜視図である。
図4】同遮水体に水を充填した状態を示す側面図である。
図5】同設置構造を説明する側面図である。
図6】同設置構造を説明する側面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る遮水体設置構造を示す部分側面図である。
図8】本発明の更に他の実施形態に係る遮水体設置構造を示す部分側面図である。
図9】本発明の更に他の実施形態に係る遮水体設置構造を示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は更に他の実施形態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0019】
図1に示す本発明の遮水体設置構造は、底部1と一対の立ち上がり部2,2を有する建造物Bの開口部3への浸水を、水を充填した袋状の遮水体4で阻止するものであって、短時間の簡易な作業で構築することができ、確実に建造物Bの内部への浸水を阻止できるように開発されたものである。この遮水体設置構造を実施する建造物Bの開口部3は、底部1と一対の立ち上がり部2,2を有するものであれば特に限定されないが、例えば、個人宅の玄関戸、門柱間、マンションエントランス、店舗入口など開口部3に扉等がある場合の他にも、階段入口、塀と塀の間や地下施設(地下街、駐車場、駐輪場など)の入口など開口部3に扉等がない場合にも施工可能で、比較的小規模の開口部3に好適に施工される。
【0020】
図1図2に示すように、遮水体4は、開口部3の屋外側(水の進入側)の底部1に沿って、一対の立ち上がり部2,2の間を跨ぐように設置されており、該遮水体4は、密着手段5によって、一対の立ち上がり部2,2の下端部に密着されている。そして、その密着手段5は、固定手段6により、建造物Bの開口部3の近傍に固定されている。この遮水体4は、少なくとも一方の立ち上がり部2の内側面から他方の立ち上がり部2の内側面までをカバーするように設置しなければ意味のないことは言うまでもないが、本実施形態では、遮水体4と立ち上がり部2の密着面積を大きくして遮水性能をより向上させるため、一方の立ち上がり部2の外側面から他方の立ち上がり部2の外側面までの全てをカバーできる、一対の立ち上がり部2,2間の距離よりも若干長い遮水体4が設置されている。
尚、上記の立ち上がり部2は、開口部3の開口縁に立設された柱(丸柱や角柱)、開口部3を形成する塀(平面状)の端部など、形状は特に限定されるものではない。
【0021】
上記遮水体4は、図3に示すように、底面4aと立ち上がり面4bと斜面4cからなり、底面4aと立ち上がり面4bとの夾角が略90°の側面形状が略直角三角形をしたものであって、図5図6に示すように、略直角三角形の直角を形成する二面、即ち、底面4aと立ち上がり面4bが、建造物Bの底部1及び立ち上がり部2にそれぞれ対面(密着)するように設置されている。このように遮水体4の側面形状が略直角三角形であると、雨量が増して水位が上昇した際、斜面4cに対して、鉛直方向(設置面に向う方向)と水平方向(開口部3に向う方向)の力が加わるため、遮水体4の底面4aと立ち上がり面4bが、建造物Bの底部1及び立ち上がり部2に押し付けられて密着し、確実に遮水することができるようになる。
【0022】
本実施形態の遮水体4は、持ち運びや保管場所の確保が容易となるように、軽量で折り畳みが可能なポリエステル系の織布に塩化ビニル樹脂を含浸コーティングした防水シートが用いられているが、その他にも合成繊維糸や天然繊維糸の織布を用いて、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴムなどでコーティングしたものを用いることもできる。図3に示すように、この遮水体4には、水を充填するための注水口4dが設けられており、水道等を利用して注水口4dから水を注水することで、簡単に遮水体4の内部に水が充填されるようになっている。この際、水の充填をよりスムーズに行うために、別途遮水体4の上部に空気抜きの孔(不図示)を設けることが好ましく、遮水体4内部に過剰な水圧がかかっても遮水体4が破損しないように、圧力調整バルブ(不図示)を設けることも好ましい。
【0023】
尚、上記のように、遮水体4の側面形状が略直角三角形であると、水位が上昇した際、遮水体4の底面4aと立ち上がり面4bが、建造物Bの底部1及び立ち上がり部2に押し付けられて密着するので好ましいが、底部1から立ち上がり部2に沿って密着するのであれば直角三角形状に限定されるものではなく、例えば直方体等の形状であってもよい。
また、遮水体4の寸法は、設置される建造物Bの開口部3の大きさや、遮水したい水位に合わせて変化するものであるが、通常、長さLが2m程度、立ち上がり部2の高さHが50〜60cm程度のものが好適に用いられる。
【0024】
上記のように、建造物Bの開口部3を遮水する遮水体4は、軽量で持ち運びや設置作業が容易で、折り畳みが可能なので保管場所の確保にも困らないという顕著なメリットがある反面、折り畳みを可能とした、換言すれば、柔軟な素材で形成したため、注水口4dより水を充填すると、図4に示すように、遮水体4内の水による水圧や重力によって斜面4cや立ち上がり面4bが丸くなろうと変形し、遮水体4の下端部と立ち上がり部2の下端部の間に隙間Sができて、その隙間Sより浸水してしまう恐れが生じる。また、立ち上がり部2と遮水体4の上端部の間にも隙間Sができて、本来であれば水位が遮水体4の高さHに達するまで遮水が可能であるにも拘わらず、遮水体4の高さHまで水位が達していなくとも、立ち上がり部2と遮水体4の上端部の間に隙間Sができることにより、遮水体4の側面方向から浸水する恐れも生じる。そこで、本発明の遮水体設置構造は、次に説明する密着手段5によって、遮水体4と立ち上がり部2との間に隙間Sができないようにしている。
【0025】
即ち、遮水体4を一対の立ち上がり部2,2の下端部に密着させる密着手段5は、図5に示すように、遮水体4の斜面4cを覆うように添設されたシート体5であって、図2図6に示すように、このシート体5の両端を開口部3の近傍の遮水体設置面に固定することで、遮水体4の斜面4cに、立ち上がり部2の下端部Pの方に向う力を加えている。このように遮水体4の斜面4cに立ち上がり部2の下端部Pの方に向う力が加わると、丸くなろうとしていた遮水体4が再び元の略直角三角形状に戻って上記の隙間Sが押し潰されてなくなると共に、遮水体4全体が立ち上がり部2の方に引っ張られて、立ち上がり部2の下端部Pより上側でも強固に密着して、そこから浸水してしまうといった不具合がなくなる。
【0026】
本実施形態のシート体5は伸縮可能なネットであり、このシート体5を開口部3の近傍の遮水体設置面に固定する固定手段6として、開口部3の近傍の遮水体設置面に、該シート体5を係止させる係止部6が設けられている。シート体5を係止させる係止部6は、図1図2図6に示すように、開口部3の両側の遮水体設置面に設けられたコンクリートアンカーであって、この2つの係止部6,6にシート体5の両端の網目を係止させることで、シート体5を開口部3の近傍の遮水体設置面に固定していると共に、シート体5の両端を一対の立ち上がり部2,2の下端部Pの方に引っ張って、遮水体4の斜面4cに立ち上がり部2の下端部Pの方に向う力を加えている。この係止部6は、遮水体4の斜面4cに立ち上がり部2の下端部Pの方に向う力が加わるように、遮水体4の前端(底面4aの前端)よりも立ち上がり部2側に設ける必要があるもので、本実施形態では、より立ち上がり部2の下端部Pの方に強い力が加わるよう、立ち上がり部2の前面よりも屋内側に設けられている。そして、遮水体4の頂部(斜面4cの頂部)に位置するシート体5の網目と遮水体4の前端(斜面4cの前端)に位置するシート体5の網目を係止部6に係止させて、立ち上がり部2の下端部Pの方に強い力を加えている。
【0027】
このように、シート体5としてネットを用いると、別途ロープ等を用いなくとも係止部6に係止させることができ、その伸縮機能を利用することによって、ネットの網目を広げて係止部6に係止させるだけで、立ち上がり部2の下端部Pの方に引っ張る力を加えることができるので好ましいが、勿論、別途ロープ等でシート体5の両端を、係止部6の方に引っ張って、遮水体4の斜面4cに立ち上がり部2の下端部Pの方に向う力を加えてもよい。また、シート体5は、遮水体4の斜面4cを覆う全ての箇所で固定してもよいし、幅方向に数箇所固定するだけでもよい。
【0028】
本実施形態の係止部6は、上記のように、開口部3の近傍の遮水体設置面に設けられているが、遮水体4の斜面4cに立ち上がり部2の下端部Pの方に向う力を加えることができる箇所であればこれに限定されるものではなく、この他にも立ち上がり部2や建造物Bの外壁面にフックなどの係止部6を設けてもよい。
また、必ずしも遮水体4の斜面4c全体をシート体5で覆う必要はなく、幅狭のシート体5であってもよい。更にネットではなく、板体、ロープ(バンド)などのシート体5を遮水体4の斜面4cに添設してもよく、ロープを利用する場合は、斜面4cの斜面4cに筒状のロープ通し孔を設けることが好ましい。
【0029】
次に、上記のような遮水体設置構造を構築する、本発明の遮水体設置方法について説明する。
【0030】
即ち、上記遮水体設置構造は第1から第3の工程により構築される。まず、第1の工程は、上記のような袋状の遮水体4を保管場所から取り出して、建造物Bの開口部3の屋外側の底部1に沿って、一対の立ち上がり部2,2の間を跨ぐように設置し、該遮水体4を一対の立ち上がり部2,2の下端部Pに密着させる密着手段5(シート体5)を配置する。勿論、予め密着手段5を配置した遮水体4を、開口部3の屋外側の底部1に沿って、一対の立ち上がり部2,2の間を跨ぐように設置してもよく、前述したように、遮水体4や密着手段5は軽量なため、持ち運びや設置作業が非常に簡単で、老人や女性、子供でも短時間で問題なく行うことができる。
【0031】
上記第1の工程が完了すると、次に、密着手段5を、開口部3の近傍に設けられた固定手段6(係止部6)に固定する第2の工程を行う。この際も、密着手段5としてネット状のシート体5を用いているので、別途ロープ等を用いなくとも、その網目を利用することで、簡単に密着手段5を開口部3の近傍に固定することができる。
【0032】
上記のように、第2の工程が終わると、最後に水道等を利用して遮水体4の注水口4dより水を注水し、遮水体4の内部を水で充填することで、密着手段により、上記側面形状の斜辺を形成する遮水体の斜面に立ち上がり部の下端部の方に向う力を加えて遮水体を立ち上がり部の下端部に密着させる第3の工程を行えば、前述した優れた作用効果を奏する遮水体設置構造が完成する。
【0033】
以上の説明から明らかなように、本発明の遮水体設置構造は、老若男女を問わず短時間で簡単に構築することができるので、短時間の豪雨にも迅速に対応することができる。しかも、このような簡易な作業で施工することができるにも拘わらず、遮水体4の底面4aと立ち上がり面4bが、開口部3の底部1と立ち上がり部2に隙間Sなく密着するので、遮水体4の高さHまでの水位であれば、建造物Bへの浸水の心配が殆どない。
【0034】
図7は本発明の他の実施形態に係る遮水体設置構造を示す部分側面図である。
【0035】
図7に示す遮水体設置構造は、前述した実施形態と同様に、底部1と一対の立ち上がり部2,2を有する建造物Bの開口部3への浸水を、水を充填した袋状の遮水体4で阻止するものであって、遮水体4は、開口部3の屋外側の底部1に沿って、一対の立ち上がり部2,2の間を跨ぐように設置されており、遮水体4の一対の立ち上がり部2,2に当接する箇所(立ち上がり面4b)、及び、底部1と当接する箇所(底面4a)に補強部7が形成され、補強部7と立ち上がり部2との間、及び、補強部7と底部1との間に止水部材8が設けられたものである。
【0036】
この遮水体設置構造に用いる遮水体4は、前述した実施形態と同様の、側面形状が略直角三角形をした袋状のものであり、その遮水体4の底面4a及び立ち上がり面4bに、略L型の補強部7が形成されている。
【0037】
上記補強部7は、遮水体4に水を充填した際、遮水体4内の水による水圧や重力によって斜面4cや立ち上がり面4bが丸くなろうと変形するのを防止するため形成されたもので、遮水体4より柔軟性の小さい樹脂、硬質プラスチックや金属などを溶着や融着などで遮水体4と一体化している。この補強部7は、遮水体4の立ち上がり面4bの少なくとも立ち上がり部2との当接箇所に形成すれば、遮水性能を発揮できるが、より確実に遮水体4の形状を略直角三角形に維持するため、遮水体4の立ち上がり面4bの全面と、底面4aにも補強部7を形成している。
尚、遮水体4の底面4aと立ち上がり面4bの厚みを厚くすることで、補強部7としてもよい。
【0038】
上記補強部7の外面(底部1及び立ち上がり部2と当接する箇所)には、止水部材8が設けられている。この止水部材8は、柔軟なゴムや独立発泡樹脂成形体であって、この止水部材8を設けることにより、底部1及び立ち上がり部2との僅かな隙間(凹凸)も塞がれて、遮水性能がより一層向上するようになっている。
尚、止水部材8は、補強部7を覆うように遮水体4と一体化してもよい。
【0039】
上記のような遮水体設置構造も、前述した実施形態と同様に、保管場所の確保が容易で、短時間の簡易な作業で確実に建造物Bの開口部3からの浸水を阻止することのできる優れたものである。
【0040】
図8は本発明の更に他の実施形態に係る遮水体設置構造を示す部分側面図である。
【0041】
図8に示す遮水体設置構造は、遮水体4の立ち上がり面4bの下端を、ロープ等の密着手段5により、屋外側から屋内側に向って引っ張ることで、遮水体4の立ち上がり面4bの下端を立ち上がり部2に押し付けて、遮水体4を立ち上がり部2の下端部Pに密着させたものである。
尚、ここでは図示しないが、密着手段5は固定手段6によって開口部3の近傍に固定されている。
【0042】
このように、斜面4cにシート体5を添設せずに、遮水体4の立ち上がり面4bの下端を屋外側から屋内側に向って引っ張ることでも、立ち上がり部2の下端部Pの方に力を加えることができる。勿論、遮水体4の立ち上がり面4bの下端よりも上側は、水圧(遮水体4内の水による水圧と浸水による水圧の双方)や重力によって立ち上がり部2に密着されるので、そこから浸水の心配はない。
尚、本実施形態のように、ロープ等の密着手段5により、遮水体4の立ち上がり面4bの下端を立ち上がり部2の下端部Pに密着させたような場合でも、斜面4cにシート体5を添設してもよいことは言うまでもない。
【0043】
図9は本発明の更に他の実施形態に係る遮水体設置構造を示すものであって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は更に他の実施形態の正面図である。
【0044】
本実施形態の遮水体設置構造は、前述した図1図8に示す遮水体設置構造とは異なり、開口部3に自動扉等がない場合の形態である。遮水体4は、上記のように、略直角三角形状をしているので、遮水体4に浸水による水圧が加わると、回転方向のモーメントが作用し、開口部3に遮水体4が当接する(受け止める)扉等がないと、開口部3側に倒れるような変形が発生してしまう。このように開口部3に扉等がない場合は、本実施形態のように、一対の立ち上がり部2,2間に補強材9を設けることで対応することができる。
【0045】
上記補強材9は、図9の(a)に示すように、一対の立ち上がり部2,2に取付けられる略L型の金具9a,9aと、その金具9a,9a間に設置される板体9bからなるもので、この補強材9を一対の立ち上がり部2,2間に設けることにより、遮水体4に浸水による水圧が加わって回転方向のモーメントが作用しても、補強材9が遮水体4を受け止めて、遮水体4が変形するのを防止している。
尚、補強材9の金具9aは、立ち上がり部2に取付けられるものであれば略L型の形状に限定されるものではなく、例えば、略コ字型の金具9aであってもよい。また、遮水体4を受け止める板体9bの代わりに、図9の(c)に示すように、複数のパイプ9c(本実施形態では3本)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0046】
B 建造物
1 底部
2 立ち上がり部
P 立ち上がり部の下端部
3 開口部
4 遮水体
4a 底面
4b 立ち上がり面
4c 斜面
4d 注水口
L 遮水体の長さ
H 遮水体の高さ
5 密着手段(シート体)
6 固定手段(係止部)
7 補強部
8 止水部材
9 補強材
9a 略L型の金具
9b 板体
9c パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9