特許第6202619号(P6202619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202619
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】鉄道車両の床下カバー
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/00 20060101AFI20170914BHJP
   B61D 49/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B61D17/00 B
   B61D49/00 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-245138(P2013-245138)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-101289(P2015-101289A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴之
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−148602(JP,U)
【文献】 実開平02−034689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/00
B61D 49/00
B61C 17/00
B62D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車体側面に沿って装着される床下カバーであって、
開口部が形成されたベース部と、前記開口部にはめ込み可能な外形を有する複数種類の機能部とを含み、前記ベース部及び前記機能部の一方又は双方には、車体の上下方向の寸法が共通でかつ車体の長手方向の寸法が異なるものが含まれ、前記複数種類の機能部から必要な機能部を選択して、前記ベース部の前記開口部に対し嵌め込み、固定してなることを特徴とする鉄道車両の床下カバー。
【請求項2】
前記機能部には、パネル部、ルーバー部、点検蓋部、格納式ステップ部のいずれかが含まれることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両の床下カバー。
【請求項3】
鉄道車両の車体側面に沿って装着される床下カバーの製造方法であって、
開口部が形成されたベース部を製作する工程と、
前記開口部に嵌め込み可能な外形を有する複数種類の機能部を製作する工程と、
前記ベース部の前記開口部に対し、前記複数種類の機能部から必要な機能部を選択して、前記ベース部に嵌め込み、固定する工程とを含み、
前記ベース部及び前記機能部を製作する工程の一方又は双方において、車体の上下方向の寸法が共通でかつ車体の長手方向の寸法が異なるものを製作することを特徴とする鉄道車両の床下カバーの製造方法。
【請求項4】
前記機能部には、パネル部、ルーバー部、点検蓋部、格納式ステップ部のいずれかを含むことを特徴とする請求項記載の鉄道車両の床下カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の床下カバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車体側面に沿って床下カバーが装着された鉄道車両が実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。その多くは、新幹線車両や特急用車両であるが、近年では、一般車両においても、騒音対策や外観向上の観点から床下カバーを設置した事例がある。
【0003】
図2には、床下カバーが装着された鉄道車両10の一例が示されている。床下カバー12は、鉄道車両10の車体側面の、装着される場所に応じて、図3(a)〜(d)に例示されるような、様々な形状、機能を有する複数のパネルに分割されている。図3(a)は基本カバー12Aであり、図3(b)〜(d)は、多目的カバー12B〜12Dである。
基本カバー12Aは、主に床下機器の目隠し機能を有するものであり、全体として一体のパネルからなるものである。一方、多目的カバー12B〜12Dは、床下機器の目隠し機能のみならず、その他の機能を有するものである。具体的には、図3(b)の多目的カバー12Bは、床下機器の点検蓋14を備えるものである。又、図3(c)の多目的カバー12Cは、床下機器の冷却等を円滑に行うためのルーバー16を備えるものである。又、図2(d)の多目的カバー12Dは、点検蓋14及びルーバー16の双方を備えるものである。更に、図示は省略するが、主に乗員の乗り降りに利用される格納式ステップを備えるものや、その他必要な機能部を有する多目的カバーもある。又、基本カバー12Aには特に高い遮音機能を持たせたものもあり、その他の多目的カバー12B〜12Dについても、遮音性に考慮した構造としたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−290054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら複数種類の床下カバーは、鉄道車両の側面の必要な個所に装着され、所定の機能を発揮するものであるが、各々異なる形状を有するために、開発時の設計・解析作業や、車両製造時の取り付け作業を煩雑にする一因となっている。特に、鉄道車両の床下カバーは、車体側面形状に倣って、車体の長手方向に渡る広い範囲に設置されるものであり、多数の床下カバーを必要とすることから、その設計・解析作業や、車両製造時の取り付け作業の簡略化が望まれているところである。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、床下カバーに求められる機能を確保しつつ、開発及び製造時の工数を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0007】
(1)鉄道車両の車体側面に沿って装着される床下カバーであって、開口部が形成されたベース部と、前記開口部に嵌め込み可能な外形を有する複数種類の機能部とを含み、該複数種類の機能部から必要な機能部を選択して、前記ベース部の前記開口部に対し嵌め込み、固定してなる鉄道車両の床下カバー。
【0008】
本項に記載の鉄道車両の床下カバーは、ベース部と、ベース部の開口部に嵌め込まれる機能部とによって構成されるものである。すなわち、ベース部に機能部を組み合わせて床下カバーを構成可能となるように、ベース部と機能部とをユニット化して、適宜、基本カバー又は様々な多目的カバーを構成するものである。かかる床下カバーが、車体側面に装着されることによって、鉄道車両の騒音対策や外観向上を図るものである。又、必要な機能を有する機能部をベース部に装着することで、床下カバーに必要な機能を与えるものである。ここで、複数種類の機能部は、いずれも、共通のベース部の開口部に嵌め込み可能な、共通の外形を有するものである。本構成にかかる床下カバーは、機能部の選択の如何にかかわらず、一つの床下カバーが単一の機能を有するものとなる。
【0009】
)上記()項において、前記ベース部及び前記機能部の一方又は双方には、車体の上下方向の寸法が共通でかつ車体の長手方向の寸法が異なるものが含まれる鉄道車両の床下カバー(請求項)。
本項に記載の鉄道車両の床下カバーは、車体側設備機器の配置等に応じて、車体の上下方向の寸法が共通でかつ車体の長手方向の寸法が異なる床下カバーを、適宜用いることで、ベース部及び機能部の長手方向寸法以外の構造を共通化するものである。そして、床下カバーの長手方向寸法の如何にかかわらず、ベース部及び機能部の強度解析において、想定し得る最大寸法のものが基準を満たすように設計することで、強度を保証しつつ設計作業の共通化を図るものである。
【0010】
)上記()項において、前記機能部には、パネル部、ルーバー部、点検蓋部、格納式ステップ部のいずれかが含まれる鉄道車両の床下カバー(請求項2)。
本項に記載の鉄道車両の床下カバーは、機能部に、パネル部、ルーバー部、点検蓋部、格納式ステップ部のいずれかが含まれ、これら異なる機能部をベース部に適宜組み合わせることで、床下カバーを構成するものである。機能部としてパネル部を選択する場合には、床下カバーは、床下機器を鉄道車両の側面から覆い隠し、鉄道車両の床下から発する騒音対策や、鉄道車両の外観向上に寄与するものとなる。又、機能部として、ルーバー部、点検蓋部又は格納式ステップ部を選択する場合には、床下カバーは、これら各機能部の機能を具備する多目的カバーとして構成されるものとなる。
【0011】
(4)鉄道車両の車体側面に沿って装着される床下カバーの製造方法であって、開口部が形成されたベース部を製作する工程と、前記開口部に嵌め込み可能な外形を有する複数種類の機能部を製作する工程と、前記ベース部の前記開口部に対し、前記複数種類の機能部から必要な機能部を選択して、前記ベース部に嵌め込み、固定する工程とを含む鉄道車両の床下カバーの製造方法。
)上記(4)項において、前記ベース部及び前記機能部を製作する工程の一方又は双方において、車体の上下方向の寸法が共通でかつ車体の長手方向の寸法が異なるものを製造する鉄道車両の床下カバーの製造方法(請求項3)
)上記()項において、前記機能部には、パネル部、ルーバー部、点検蓋部、格納式ステップ部のいずれかを含む鉄道車両の床下カバーの製造方法(請求項4)
そして、上記(4)(5)項記載の床下カバーの製造方法により、上記(1)(2)項記載の床下カバーを得ることで、上記(1)(2)項記載の作用を得るものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明はこのように構成したので、床下カバーに求められる機能を確保しつつ、開発及び製造時の工数を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る鉄道車両の床下カバーを示す模式図であり、(a)はベース部にパネル部が固定されてなる基本カバーを示すものであり、(b)はベース部点検蓋部が固定されてなる多目的カバーを示すものであり、(c)はベース部にルーバー部が固定されてなる多目的カバーを示すものである。
図2】従来の鉄道車両の一例を示す模式図であり、(a)は先頭車両及び二両目の車両の側面図、(b)は先頭車両の正面図である。
図3】従来の鉄道車両の床下カバーを例示す模式図であり、(a)は基本カバーを、(b)から(d)は、多目的カバーを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
【0015】
本発明の実施の形態に係る鉄道車両の床下カバー12は、図1(a)に示される基本カバー12Aと、図1(b)(c)に例示される多目的カバー12E、12Fとを含むものである。本実施の形態に係る基本カバー12Aは、図3(a)に示される基本カバー12Aと同様の機能を有するものであるが、その成り立ちは異なり、ベース部20と機能部としてのパネル部22とを組み合わせてなるものである。ベース部20は、床下カバー12に必要とされる外形を有し、かつ、開口部20aが形成されたものである。又、パネル部22は、ベース部20の開口部20aに嵌め込み可能な外形を有し、開口部20aを覆い隠すものである。そして、ベース部20及びパネル部22は、別工程で制作された後、ベース部20の開口部20aに、パネル部22が嵌め込まれ固定されることで、基本カバー12Aを構成するものである。
【0016】
又、多目的カバー12E、12Fは、図1(a)の基本カバー12と共通のベース部20を用い、機能部としての点検蓋部26及びルーバー部28が、開口部20aに嵌め込み可能な外形を有し、開口部20aを覆い隠すものである。ここで、点検蓋部26は点検蓋26aを具備し、ルーバー部28はルーバー28aを具備しているが、いずれの外形も、パネル部22の外形と同一となっている。そして、ベース部20の開口部20aに、点検蓋部26及びルーバー部28が嵌め込まれ固定されることで、多目的カバー12E、12Fを構成するものである。
【0017】
ここで、床下カバー12の「外形」とは、床下カバー12が鉄道車両10の車体に装着された状態において、図2に示されるように車体を側面視したときの、床下カバー12の外縁により定まる形状、すなわち、床下カバー12の単体を平面視したときの、床下カバー12の外形形状を意味するものである。
又、パネル部22、点検蓋部26及びルーバー部28の「外形」についても同様に、図2に示されるように車体を側面視したときの、これらの外縁により定まる形状、すなわち、パネル部22、点検蓋部26及びルーバー部28の単体を平面視したときの、外形形状を意味するものである。
【0018】
なお、パネル部22、点検蓋部26及びルーバー部28は、ボルト止め、リベット止め、溶接、接着等の適切な固定方法によって、ベース部20に一体に固定されてなるものであり、一体に固定された状態で、基本カバー12Aと同様に、多目的カバー12E、12Fを一単位として、鉄道車両10の車体側面に対し着脱されるものである。
更に、図示は省略するが、多目的カバー12E、12Fの例に限定されることなく、例えば格納式ステップ部の別の機能を有する機能部を、ベース部20の開口部20aに嵌め込み可能な外形に形成することで、格納式ステップ機能を有する機能部を構成することも可能であり、様々な機能を有する多目的カバーを構成することも可能である。
なお、基本カバー12Aと、多目的カバー12E、12Fとの、鉄道車両10の車体に対する取付け構造部については、ベース部20が共通であることにより、同一形状とすることが可能である。
【0019】
又、ベース部20及び機能部としてのパネル部22、点検蓋部26及びルーバー部28を製作する工程において、鉄道車両10の構成や、床下機器の配置に応じて、車体の上下方向の寸法H20、H22、H26及びH28が共通で、かつ、車体の長手方向の寸法L20、L22、L26及びL28が異なるものが製造される。この場合、各部品の製作図面上では、L20、L22、L26及びL28を空欄として、他の寸法は全て明記しておくことで、作図工数の削減を図るものとなる。又、ベース部20、パネル部22、点検蓋部26及びルーバー部28強度解析においても、想定し得る最大寸法のものが、基準を満たすように設計する。
【0020】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能となる。
本発明の実施の形態に係る鉄道車両10の床下カバー12は、ベース部20と、ベース部20の開口部20aに嵌め込まれる機能部22、26、28とによって構成されるものである。すなわち、ベース部20に機能部22、26、28を組み合わせて床下カバー12を構成可能となるように、ベース部20と機能部22、26、28とをユニット化して、適宜、基本カバー12A又は様々な多目的カバー12E、12Fを構成するものである。かかる床下カバー12が、車体側面に装着されることによって、鉄道車両10の騒音対策や外観向上を図ることが可能となる。又、必要な機能を有する機能部22、26、28をベース部20に装着することで、床下カバー12に必要な機能を与えることが可能となる。
【0021】
又、機能部として、パネル部22、点検蓋部26、ルーバー部28又は格納式ステップ部(図示量略)のいずれかが含まれ、これら異なる機能部をベース部20に適宜組み合わせることで、床下カバー12を構成することが可能となる。そして、機能部としてパネル部22を選択する場合には、床下カバー12Aは、床下機器を鉄道車両10の側面から覆い隠し、鉄道車両10の床下から発する騒音対策や、鉄道車両10の外観向上に寄与するものとなる。又、機能部として、点検蓋部26、ルーバー部28又は格納式ステップ部を選択する場合には、床下カバー12E、12Fは、これら各機能部の機能を具備する多目的カバーとして構成されるものとなる。
【0022】
又、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の床下カバー12は、車体側設備機器の配置等に応じて、車体の上下方向の寸法H20、H22、H26及びH28が共通でかつ車体の長手方向の寸法L20、L22、L26及びL28が異なる床下カバーを、適宜用いることで、ベース部20及び機能部22、26、28の長手方向寸法以外の構造を共通化するものである。そして、床下カバー12の長手方向寸法の如何にかかわらず、ベース部20及び機能部22、26、28の強度解析において、想定し得る最大寸法のものが基準を満たすように設計することで、強度を保証しつつ設計作業の共通化を図ることが可能となる。
なお、本発明の実施の形態に係る床下カバー12は、特に、鉄道車両10の台車間の床下側部への設置に適したものであるが、適宜、台車を覆う部分や、車体端部近傍等、その他の場所への設置にも対応可能である。
【符号の説明】
【0023】
10:鉄道車両、 12:床下カバー、 12A:基本カバー、 20:ベース部、 20a:開口部、 22:機能部(パネル部)、 26:機能部(点検蓋部)、 26a:点検蓋、 28:機能部(ルーバー部)、 28a:ルーバー
図1
図2
図3