特許第6202620号(P6202620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202620トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202620
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/426 20060101AFI20170914BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20170914BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20170914BHJP
   C07D 277/46 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
   A61K31/426ZMD
   A61P43/00 111
   A61P7/04
   A61P1/16
   !C07D277/46
【請求項の数】19
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-542707(P2013-542707)
(86)(22)【出願日】2013年6月28日
(86)【国際出願番号】JP2013067769
(87)【国際公開番号】WO2014003155
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2012-146230(P2012-146230)
(32)【優先日】2012年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108970
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 秀晃
(74)【代理人】
【識別番号】100113789
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】加納 武
(72)【発明者】
【氏名】福原 章浩
(72)【発明者】
【氏名】勝部 孝行
【審査官】 菊池 美香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2000/044398(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02184279(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/426
A61P 1/16
A61P 7/04
A61P 43/00
C07D 277/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)-3-[2,6-ジクロロ-4-[4-[3-[(S)-1-ヘキシルオキシエチル]-2-メトキシフェニル]-チアゾール-2-イルカルバモイル]-フェニル]-2-メチルアクリル酸またはその塩を含有し、
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板増加のための医薬組成物。
【請求項2】
血小板減少患者に対して投与される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、5万/μL未満である、請求項1または2記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、請求項2または3記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記の侵襲術が待機的侵襲術である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、請求項4または5記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記の肝癌が、原発性肝癌である、請求項7記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
経口投与することを特徴とする、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項12】
(E)-3-[2,6-ジクロロ-4-[4-[3-[(S)-1-ヘキシルオキシエチル]-2-メトキシフェニル]-チアゾール-2-イルカルバモイル]-フェニル]-2-メチルアクリル酸またはその塩の量として2.0〜4.0mg/日を投与されることを特徴とする、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項15】
血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項16】
原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項17】
原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項18】
血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項19】
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、血小板を増加させる医薬を製造するための、(E)-3-[2,6-ジクロロ-4-[4-[3-[(S)-1-ヘキシルオキシエチル]-2-メトキシフェニル]-チアゾール-2-イルカルバモイル]-フェニル]-2-メチルアクリル酸またはその塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板減少症は、血小板破壊の亢進や不十分な血小板産生により血小板が減少し出血傾向を引き起こす疾患である。出血症状には、脳出血、内出血、点状出血、紫斑、粘膜出血 (鼻出血、消化管出血、性器出血) などが挙げられ、手術後に過度な出血がみられることもある。
【0003】
血小板減少の原因の一つとして、慢性肝疾患が知られる。慢性肝疾患患者では、その病期の進展による肝予備能の低下及び脾機能の亢進に伴い血小板数の低下が認められる。また、慢性肝炎の原因の多くはB型あるいはC型肝炎ウイルス感染であり、中でもC型肝炎が多い。C型肝炎は慢性化しやすく、肝硬変、更には肝細胞癌へと進行し年間約34000人が死亡している。肝炎又は肝癌の治療に際して、血小板減少患者では、インターフェロンを用いた抗ウイルス療法が受けられない場合や、開腹術及び局所療法などの侵襲処置を施行する際に脾臓摘出、部分的脾動脈塞栓術(PSE)や血小板の輸血が必要となる場合がある。
しかしながら、脾臓摘出は侵襲性が高く門脈血栓、免疫能の低下が報告されていること、PSEでは脾膿瘍や敗血症を引き起こすことが報告されていること、血小板輸血には輸血に伴う副作用 (輸血関連急性肺障害や感染症)のリスクを有することや血小板製剤自体の有効期限が短いこと(採血後4日間) 等の問題点があり、必ずしも安全かつ簡便な処置ではない。また、血小板を輸血する場合、繰り返し輸血を実施することにより抗体の産生を促し、血小板輸血不応症を引き起こす可能性があることも知られている。
このような状況の下、副作用が無く、簡便に投与可能な血小板減少症治療薬が望まれている。
【0004】
トロンボポエチン(TPO)は、造血幹細胞・巨核球前駆細胞に働いて、巨核球への増殖・分化を促進し、血小板造血に作用するサイトカインである。過去、遺伝子組み換え型ヒトTPOの臨床試験が行われたが、内因性TPOに対する中和抗体が誘導され、抗原性の問題で開発が中止された。巨核球造血に作用するサイトカインの中で、唯一インターロイキン11の注射剤が米国で臨床応用されているが、体液貯留、心悸亢進、浮腫等の副作用もあるため、化学療法後の骨髄抑制による血小板減少を改善する目的に限定して承認されている。
【0005】
トロンボポエチン受容体をコードする遺伝子の塩基配列は、非特許文献1に記載されている。
【0006】
このような状況の下、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物は、血小板輸血を含む既存の治療法及び処置に替わりうる各種血小板減少症治療薬として期待されている。現在、慢性型免疫性血小板減少症 (慢性型ITP) に対する治療薬として、注射剤のトロンボポエチンmimetic ペプチドであるromiplostimや、低分子TPO受容体アゴニストであるeltrombopagが米国及び欧州で承認されている。
【0007】
特許文献1には、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物として、(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidが記載されている。
【0008】
低分子トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物であるeltrombopagについては、侵襲術を予定している血小板数が5万/μL未満でChild-Pughスコアが12点以下の慢性肝疾患患者を対象に、侵襲術施行前に治験薬を2週間投与するデザインの臨床試験が海外で実施された。その結果、有効性評価項目である血小板輸血回避率はプラセボ投与群と比較して実薬投与群で高いもの(プラセボ群19%、実薬群72%)であったが、実薬投与群では門脈血栓症の発現率の増加が認められた(プラセボ群1%、実薬群4%)。門脈血栓症の発症時期は殆どの被験者で治験薬投与終了後に実施された各種侵襲術の施術後であり、発症時の血小板数は実薬投与群で6例中5例が20万/μL以上であったことが、非特許文献2で公表されている。更にその発症リスクと血小板数との関係をみると、治験期間中の血小板数が20万/μL以上となった集団は20万/μL未満である集団に比べてリスクが約9倍 (10.6%対1.2%) に高まっていた。このように、慢性肝炎の進展により血小板数減少が認められる患者の血小板数を20万/μL以上に増加することは、門脈血栓発現のリスクを上昇させることが示唆された。
【0009】
トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物である、eltrombopagや romiplostimが「慢性特発性血小板減少性紫斑病」を適応症として既に販売されているが、これらの添付文書(非特許文献3および4)では、血小板数が過剰に増加した際の投与の中止基準はいずれも「血小板数が400,000/μLを超えた場合には本剤を休薬すること。」となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2009/017098号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】プロシーディング オブ ザ ナショナル アカデミィ オブ サイエンス オブ ザ ユナイテッドステイト オブ アメリカ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA) 1992年、第89巻、p. 5640−5644
【非特許文献2】Ligand Pharmaceuticals社、“Eltrombopag in Chronic Liver Disease Patients with Thrombocytopenia Undergoing an Elective Invasive Procedure: Results from ELEVATE, a Randomised Clinical Trial. ”インターネット<URL:http://phx.corporate-ir.net/External.File?item=UGFyZW50SUQ9NDMxMzY4fENoaWxkSUQ9NDQ5NjIwfFR5cGU9MQ==&t=1>
【非特許文献3】販売名:ロミプレート皮下注250 μg調製用(一般名:romiplostim)の添付文書(2011年 4月作成 第1版)、協和発酵キリン株式会社
【非特許文献4】販売名:レボレード錠(12.5 mg、25 mg):(一般名:eltrombopag)の添付文書(2010年10月作成 第1 版)、グラクソ・スミスクライン株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来のトロンボポエチン受容体アゴニストを含有する医薬組成物は、十分な血小板数の増加効果を得ることと、血小板数を過剰に増加させないことを両方満たすことが困難である。
従って、本発明の目的は、十分な血小板数の増加効果を得ることと、血小板数を過剰に増加させないことの両方を満たす、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物の投与中に一定値以上の血小板数の増加が見られかつ、十分な血小板数が確保できている場合、以後の投与を中止することにより、血小板数の増加効果を確保しつつ、血小板数の過剰な増加を防止できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1)トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有し、
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板増加のための医薬組成物。
(2)血小板減少患者に対して投与される、(1)記載の医薬組成物。
(3)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、5万/μL未満である、(1)または(2)記載の医薬組成物。
(4)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2)または(3)記載の医薬組成物。
(5)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4)記載の医薬組成物。
(6)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4)または(5)記載の医薬組成物。
(7)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6)記載の医薬組成物。
(8)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7)記載の医薬組成物。
(9)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1)〜(8)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9)記載の医薬組成物。
(11)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1)〜(10)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12)経口投与することを特徴とする、(11)記載の医薬組成物。
(13)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12)記載の医薬組成物。
(14)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13)記載の医薬組成物。
(15)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1)記載の医薬組成物。
(16)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1)記載の医薬組成物。
(17)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1)記載の医薬組成物。
(18)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1)記載の医薬組成物。
(19)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1)記載の医薬組成物。
(20)トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物を投与し、
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させる方法。
(21)投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、血小板を増加させるためのトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物の使用。
【0015】
(1A)トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物を投与し、
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させる方法。
(2A)血小板減少患者に対して投与される、(1A)記載の血小板を増加させる方法。
(3A)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、5万/μL未満である、(1A)または(2A)記載の血小板を増加させる方法。
(4A)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2A)または(3A)記載の血小板を増加させる方法。
(5A)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4A)記載の血小板を増加させる方法。
(6A)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4A)または(5A)記載の血小板を増加させる方法。
(7A)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6A)記載の血小板を増加させる方法。
(8A)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7A)記載の血小板を増加させる方法。
(9A)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1A)〜(8A)のいずれかに記載の血小板を増加させる方法。
(10A)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9A)記載の血小板を増加させる方法。
(11A)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1A)〜(10A)のいずれかに記載の血小板を増加させる方法。
(12A)経口投与することを特徴とする、(11A)記載の血小板を増加させる方法。
(13A)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12A)記載の血小板を増加させる方法。
(14A)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13A)記載の血小板を増加させる方法。
(15A)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1A)記載の血小板を増加させる方法。
(16A)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1A)記載の血小板を増加させる方法。
(17A)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1A)記載の血小板を増加させる方法。
(18A)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1A)記載の血小板を増加させる方法。
(19A)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1A)記載の血小板を増加させる方法。
【0016】
(1B)投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させるためのトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物。
(2B)血小板減少患者に対して投与される、(1B)記載の化合物。
(3B)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、5万/μL未満である、(1B)または(2B)記載の化合物。
(4B)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2B)または(3B)記載の化合物。
(5B)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4B)記載の化合物。
(6B)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4B)または(5B)記載の化合物。
(7B)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6B)記載の化合物。
(8B)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7B)記載の化合物。
(9B)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1B)〜(8B)のいずれかに記載の化合物。
(10B)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9B)記載の化合物。
(11B)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1B)〜(10B)のいずれかに記載の化合物。
(12B)経口投与することを特徴とする、(11B)記載の化合物。
(13B)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12B)記載の化合物。
(14B)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13B)記載の化合物。
(15B)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1B)記載の化合物。
(16B)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1B)記載の化合物。
(17B)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1B)記載の化合物。
(18B)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1B)記載の化合物。
(19B)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1B)記載の化合物。
【0017】
(1C)投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、
5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させるための医薬を製造するための、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物の使用。
(2C)血小板減少患者に対して投与される、(1C)記載の使用。
(3C)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、5万/μL未満である、(1C)または(2C)記載の使用。
(4C)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2C)または(3C)記載の使用。
(5C)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4C)記載の使用。
(6C)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4C)または(5C)記載の使用。
(7C)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6C)記載の使用。
(8C)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7C)記載の使用。
(9C)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1C)〜(8C)のいずれかに記載の使用。
(10C)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9C)記載の使用。
(11C)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1C)〜(10C)のいずれかに記載の使用。
(12C)経口投与することを特徴とする、(11C)記載の使用。
(13C)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12C)記載の使用。
(14C)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13C)記載の使用。
(15C)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1C)記載の使用。
(16C)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1C)記載の使用。
(17C)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1C)記載の使用。
(18C)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1C)記載の使用。
(19C)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1C)記載の使用。
【0018】
さらに、本発明は、前記の(1)〜(21)、(1A)〜(19A)、(1B)〜(19B)および(1C)〜(19C)にかかる発明における「2万/μL」および「5万/μL」をそれぞれ「基準血小板数増加値」および「基準血小板数」とした態様の以下の発明を包含する。
(1’)トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有し、
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して基準血小板数増加値以上増加し、かつ、
基準血小板数以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板増加のための医薬組成物。
(2’)血小板減少患者に対して投与される、(1’)記載の医薬組成物。
(3’)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、基準血小板数未満である、(1’)または(2’)記載の医薬組成物。
(4’)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2’)または(3’)記載の医薬組成物。
(5’)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4’)記載の医薬組成物。
(6’)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4’)または(5’)記載の医薬組成物。
(7’)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6’)記載の医薬組成物。
(8’)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7’)記載の医薬組成物。
(9’)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1’)〜(8’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(10’)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9’)記載の医薬組成物。
(11’)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1’)〜(10’)のいずれかに記載の医薬組成物。
(12’)経口投与することを特徴とする、(11’)記載の医薬組成物。
(13’)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12’)記載の医薬組成物。
(14’)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13’)記載の医薬組成物。
(15’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1’)記載の医薬組成物。
(16’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1’)記載の医薬組成物。
(17’)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1’)記載の医薬組成物。
(18’)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1’)記載の医薬組成物。
(19’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1’)記載の医薬組成物。
(20’)トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物を投与し、
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して基準血小板数増加値以上増加し、かつ、
基準血小板数以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させる方法。
(21’)投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して基準血小板数増加値以上増加し、かつ、
基準血小板数以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、血小板を増加させるためのトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物の使用。
【0019】
(1A’)トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する医薬組成物を投与し、
投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して基準血小板数増加値以上増加し、かつ、
基準血小板数以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させる方法。
(2A’)血小板減少患者に対して投与される、(1A’)記載の血小板を増加させる方法。
(3A’)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、基準血小板数未満である、(1A’)または(2A’)記載の血小板を増加させる方法。
(4A’)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2A’)または(3A’)記載の血小板を増加させる方法。
(5A’)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4A’)記載の血小板を増加させる方法。
(6A’)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4A’)または(5A’)記載の血小板を増加させる方法。
(7A’)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6A’)記載の血小板を増加させる方法。
(8A’)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7A’)記載の血小板を増加させる方法。
(9A’)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1A’)〜(8A’)のいずれかに記載の血小板を増加させる方法。
(10A’)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9A’)記載の血小板を増加させる方法。
(11A’)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1A’)〜(10A’)のいずれかに記載の血小板を増加させる方法。
(12A’)経口投与することを特徴とする、(11A’)記載の血小板を増加させる方法。
(13A’)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12A’)記載の血小板を増加させる方法。
(14A’)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13A)記載の血小板を増加させる方法。
(15A’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1A’)記載の血小板を増加させる方法。
(16A’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1A’)記載の血小板を増加させる方法。
(17A’)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1A’)記載の血小板を増加させる方法。
(18A’)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1A’)記載の血小板を増加させる方法。
(19A’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1A’)記載の血小板を増加させる方法。
【0020】
(1B’)投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して基準血小板数増加値以上増加し、かつ、
基準血小板数以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させるためのトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物。
(2B’)血小板減少患者に対して投与される、(1B’)記載の化合物。
(3B’)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、基準血小板数未満である、(1B’)または(2B’)記載の化合物。
(4B’)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2B’)または(3B’)記載の化合物。
(5B’)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4B’)記載の化合物。
(6B’)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4B’)または(5B’)記載の化合物。
(7B’)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6B’)記載の化合物。
(8B’)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7B’)記載の化合物。
(9B’)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1B’)〜(8B’)のいずれかに記載の化合物。
(10B’)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9B’)記載の化合物。
(11B’)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1B’)〜(10B’)のいずれかに記載の化合物。
(12B’)経口投与することを特徴とする、(11B’)記載の化合物。
(13B’)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12B’)記載の化合物。
(14B’)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13B’)記載の化合物。
(15B’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1B’)記載の化合物。
(16B’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1B’)記載の化合物。
(17B’)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1B’)記載の化合物。
(18B’)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1B’)記載の化合物。
(19B’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1B’)記載の化合物。
【0021】
(1C’)投与される患者の血小板数が、
投与開始前と比較して基準血小板数増加値以上増加し、かつ、
基準血小板数以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする、
血小板を増加させるための医薬を製造するための、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物の使用。
(2C’)血小板減少患者に対して投与される、(1C’)記載の使用。
(3C’)当該医薬組成物が投与される患者の投与前の血小板数が、基準血小板数未満である、(1C’)または(2C’)記載の使用。
(4C’)前記の投与される患者が、侵襲術の実施前の患者である、(2C’)または(3C’)記載の使用。
(5C’)前記の侵襲術が待機的侵襲術である、(4C’)記載の使用。
(6C’)前記の侵襲術がラジオ波焼灼療法の施術である、(4C’)または(5C’)記載の使用。
(7C’)前記のラジオ波焼灼療法が、肝癌に対するものである、(6C’)記載の使用。
(8C’)前記の肝癌が、原発性肝癌である、(7C’)記載の使用。
(9C’)前記の投与される患者が慢性肝疾患の患者である、(1C’)〜(8C’)のいずれかに記載の使用。
(10C’)前記の慢性肝疾患がB型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患である、(9C’)記載の使用。
(11C’)前記のトロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩である、(1C’)〜(10C’)のいずれかに記載の使用。
(12C’)経口投与することを特徴とする、(11C’)記載の使用。
(13C’)(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol-2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acidまたはその塩の量として2.0〜4.0 mg/日を投与されることを特徴とする、(12C’)記載の使用。
(14C’)1日1回投与で最大投与期間が14日間以下の期間であることを特徴とする(13C’)記載の使用。
(15C’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1C’)記載の使用。
(16C’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における待機的侵襲術実施前の血小板産生促進のための、(1C’)記載の使用。
(17C’)原発性肝癌に対する局所療法の施術前の血小板産生促進のための、(1C’)記載の使用。
(18C’)原発性肝癌に対するラジオ波焼灼療法の施術前の血小板産生促進のための、(1C’)記載の使用。
(19C’)血小板減少症を伴う慢性肝疾患における各種低侵襲性観血的治療前の血小板産生促進のための、(1C’)記載の使用。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るトロンボポエチン受容体アゴニスト活性を含有する医薬組成物は、血小板数の過剰な増加に伴う血栓のリスクを回避しつつ、血小板の増加作用を有する点で、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1はPK/PDモデルの模式図をその物質収支式とともに示した説明図である。
図2】2mg/一日のlusutrombopagを投与した場合の個々の被験者の血小板数の推移を示す図である(n=12)。縦軸は血小板数(×10/μL)、横軸は投与開始からの日数を表す。Preは投与開始1日目を意味し、たとえば、D3は投与開始3日目を意味する。実線部分はlusutrombopagの投与中の血小板数、点線は投与終了後の血小板数の推移を示す。たとえば、投与3日目の投与前の血小板数測定で投与中止基準を満たすことから以後の投薬を中止した場合は、D3までを実線、D3以降を点線で示し、投与後7日目まで投与中止基準に満たなかった場合は、D8まで実線、D8以降を点線で示す。×はこの時点で血小板輸血を行い、以後の試験を中止したことを意味する(実施例2)。
図3】2.5mg/1日のlusutrombopagを投与した場合の個々の被験者の血小板数の推移を示す図である(n=6)。縦軸は血小板数(×10/μL)、横軸は投与開始からの日数を表す。Preは投与開始1日目を意味し、たとえば、D3は投与開始3日目を意味する。実線部分はlusutrombopagの投与中の血小板数、点線は投与終了後の血小板数の推移を示す。たとえば、投与3日目の投与前の血小板数測定で投与中止基準を満たすことから以後の投与を中止した場合は、D3までを実線、D3以降を点線で示し、投与後7日目まで投与中止基準に満たなかった場合は、D8まで実線、D8以降を点線で示す。×はこの時点で血小板輸血を行い、以後の試験を中止したことを意味する(実施例2)。
図4】3mg/1日のlusutrombopagを投与した場合の個々の被験者の血小板数の推移を示す図である(n=7)。縦軸は血小板数(×10/μL)、横軸は投与開始からの日数を表す。Preは投与開始1日目を意味し、たとえば、D3は投与開始3日目を意味する。実線部分はlusutrombopagの投与中の血小板数、点線は投与終了後の血小板数の推移を示す。たとえば、投与3日目の投与前の血小板数測定で投与中止基準を満たすことから以後の投与を中止した場合は、D3までを実線、D3以降を点線で示し、投与後7日目まで投与中止基準に満たなかった場合は、D8まで実線、D8以降を点線で示す。×はこの時点で血小板輸血を行い、以後の試験を中止したことを意味する(実施例2)。
図5】4mg/1日のlusutrombopagを投与した場合の個々の被験者の血小板数の推移を示す図である(n=8)。縦軸は血小板数(×10/μL)、横軸は投与開始からの日数を表す。Preは投与開始1日目を意味し、たとえば、D3は投与開始3日目を意味する。実線部分はlusutrombopagの投与中の血小板数、点線は投与終了後の血小板数の推移を示す。たとえば、投与3日目の投与前の血小板数測定で投与中止基準を満たすことから以後の投与を中止した場合は、D3までを実線、D3以降を点線で示し、投与後7日目まで投与中止基準に満たなかった場合は、D8まで実線、D8以降を点線で示す。×はこの時点で血小板輸血を行い、以後の試験を中止したことを意味する(実施例2)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
【0025】
トロンボポエチン受容体アゴニスト作用とは、トロンボポエチン受容体に親和性を有しトロンボポエチンと同様の機能を示す作用を意味する。
【0026】
トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物とは、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する低分子化合物および蛋白質を包含する。トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物であれば、広く使用することができる。例えば、これらに限定されるものではないが、特開平10−72492号、国際公開第96/40750号、特開平11−1477号、特開平11−152276号、国際公開第00/35446号、特開平10−287634号、国際公開第01/07423号、国際公開第01/53267号、国際公開第02/059099号、国際公開第02/059100号、国際公開第02/062775号、国際公開第2003/062233号、国際公開第2004/029049号、国際公開第2005/007651号、国際公開第2005/014561号、特開2005−47905号、特開2006−219480号公報、特開2006−219481号、国際公開第2007/004038号、国際公開第2007/036709号、国際公開第2007/054783号、国際公開第2009/017098号等に記載の化合物などが挙げられる。さらに具体的には、lusutrombopag、eltrombopag、avatrombopag、totrombopagおよびromiplostimを包含する。特に好ましくは、lusutrombopag、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物であり、さらに好ましくは、lusutrombopagである。
【0027】
lusutrombopagとは、低分子ヒトトロンボポエチン受容体アゴニストであり、その化学式は、「(E)-3-[2,6-Dichloro-4-[4-[3-[(S)-1-hexyloxyethyl]-2-methoxyphenyl]-thiazol- 2-ylcarbamoyl]-phenyl]-2-methylacrylic acid」である。lusutrombopagは以下の化学構造式で示される。
【0028】
【化1】
【0029】
eltrombopagは以下の化学構造式で示される。
【化2】
【0030】
avatrombopagは以下の化学構造式で示される。
【化3】

【0031】
totrombopag cholineは以下の化学構造式で示される。
【化4】
【0032】
romiplostimは、遺伝子組換えFc-ペプチド融合たん白質であり、そのアミノ酸配列の2〜228番目はヒトIgG1のFc領域であり、229〜269番目はヒトトロンボポエチン受容体結合配列を含むペプチドからなるが、内在性のトロンボポエチンとは相同性は無い。romiplostimは、全長269個のアミノ酸残基からなるサブユニット2分子から構成される蛋白質である。
【0033】
血小板減少症とは、血小板の数が少なくなった状態を意味し、血小板減少患者とは、血小板減少症の患者を意味する。
【0034】
本発明にかかる医薬組成物は、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物を含有する血小板増加のための医薬であり、投与される患者の血小板数が、投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、5万/μL以上となった場合は、以後の投与を中止することを特徴とする。
【0035】
本発明の医薬組成物の投与を行う前に、血小板数を測定し、さらに、投与開始後も経時的に血小板数を測定する。
「投与される患者の血小板数が、投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、5万/μL以上となった場合」とは、投与開始後のある時点での血小板数が、前記の投与開始前の血小板数と比較して2万/μL以上増加し、かつ、その時点での血小板数が5万/μL以上となった場合を意味する。
【0036】
「投与開始前の血小板数」とは、本発明の医薬組成物の一回目の投与前の血小板数を意味する。「投与開始前の血小板数」の測定は投与開始の前の短い期間内に行うことが望ましく、たとえば7日以内の測定が好ましく、投与の直前がさらに好ましい。
【0037】
投与開始後は、投与から一定期間経過後以降に経時的に血小板数を測定する。たとえば、投与から3日目経過後以降に経時的に血小板数を測定しても良い。
【0038】
「以後の投与を中止する」とは、投与開始後の血小板数の測定において、「投与される患者の血小板数が、投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ、5万/μL以上となった」ことを確認した場合は、本発明にかかる医薬組成物の投与を止めることを意味する。
【0039】
「最大投与期間」とは、本発明にかかる医薬組成物を投与する最大の期間を意味する。たとえば、最大投与期間が7日間である場合は、前記の投与中止基準に従って投与が中止されない患者は7日間投与され、その途中で投与中止基準を満たした患者はその時点で投与は中止される。最大投与期間は、14日間以下が好ましく、6〜10日間がより好ましく、7日間が最も好ましい。
【0040】
本明細書において、基準血小板数とは、侵襲術の実施前に必要とされる血小板数の基準値であり、血小板数が基準血小板数未満である場合、出血リスクを回避するために侵襲術を実施する前に血小板輸血等により血小板を増加させるための措置が必要となる。本明細書の投薬中止基準における「5万/μL」は、「基準血小板数」の一態様である。基準血小板数としては、4万〜6万/μLから選択される任意の数を挙げることが出来る。好ましくは、4万5千〜5万5千/μLから選択される数であり、より好ましくは4万8千〜5万2千/μLから選択される数であり、さらに好ましくは4万9千〜5万1千/μLから選択される数であり、もっとも好ましくは5万/μLである。
【0041】
本明細書において、基準血小板数増加値とは、侵襲術の実施前に血小板数が基準血小板数未満であった患者に対して、トロンボポエチン受容体アゴニスト作用を有する化合物が投与された場合に、投与前に比べてどの程度の血小板数の増加があれば、血小板数が増加傾向にあるかを見極める基準値である。本明細書の投与中止基準における「2万/μL」は「基準血小板数増加値」の一態様である。基準血小板数増加値は、1万5千〜2万5千/μLから選択される任意の数であり、好ましくは1万8千〜2万2千/μLから選択される任意の数であり、より好ましくは1万9千〜2万1千/μLから選択される任意の数であり、さらに好ましくは2万/μLである。
【0042】
侵襲術とは、出血を伴う観血的な処置を意味する。
【0043】
待機的侵襲術とは、病状の経過中、治療に適したタイミングを待って侵襲術を行うことである。待機的侵襲術は、各種侵襲性観血的治療、特に各種低侵襲性観血的治療を包含する。例えば、各種低侵襲性観血的治療としては、局所療法施術、経皮的針生検、膿瘍穿刺、肝動脈塞栓術(TAE)、肝動脈化学療法(Lip-TAI)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、腹腔鏡検査、内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)、内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)、組織生検が予定される内視鏡検査、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的ポリープ切除術(Polypectomy)、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ/メタリックステント留置術(ERBD/EMS)、内視鏡的乳頭切開術(EST)、臓器への経皮的針生検(超音波内視鏡下穿刺生検法(EUS-FNA)含む)、各種穿刺術、抜歯、経尿道的前立腺切除術(TURP)、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)、経尿道的尿管結石破砕術(TUL)、関節鏡手術等が挙げられる。
【0044】
ラジオ波焼灼治療(Radiofrequency Ablation:RFA)とはラジオ波(約500kHz前後の周波数)により発生する高熱により病変部を凝固壊死させる治療法である。
【0045】
慢性肝疾患とは、肝細胞が長期間にわたり持続する炎症によって壊れる病気であり、次第に肝硬変へ進展し、肝がんを発症する場合もある。慢性肝疾患としては、B型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患、C型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患、アルコール性慢性肝疾患、および非アルコール性脂肪性慢性肝疾患(NASH)が挙げられる。日本国内において慢性肝炎の約70%はC型肝炎、約20%がB型肝炎によるものである。
【0046】
局所療法施術としては、ラジオ波焼灼治療(Radiofrequency Ablation:RFA)、経皮的エタノール局注療法(Percutaneous Ethanol Injection Therapy:PEIT)およびマイクロ波凝固療法(Microwave Coagulation Therapy:MCT)などの治療法が挙げられる。
【0047】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0048】
実施例1 モンテカルロシュミレーションによる血小板数の推移の予測
血小板数の過度の増加は、血栓の発現リスクを高めると考えられることから、投与患者の安全性を確保するために、血小板数による投与中止基準を設定することにした。健康成人を対象として実施したlusutrombopagの単回投与試験及び反復投与試験の薬物動態及び血小板数推移データを用いて、lusutrombopagを慢性肝疾患患者に7日間反復投与したときの血小板数の推移をモンテカルロシミュレーションで予測した。シミュレーションにあたっては、まず、健康成人のデータから、健康成人におけるPK/PDモデルの各種パラメータを推定し(試験例1)、さらに、健康成人におけるPK/PDモデルを基に、慢性肝疾患患者におけるモデルパラメータを算出した(試験例2)。そのパラメータを基に、lusutrombopagの投与期間中に血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加しかつ5万/μL以上となった時点で以後のlusutrombopagの投与を中止する基準についての検証(試験例3)を行った。
【0049】
(試験例1)
健康成人男性を対象とした国内第1相試験において得られた54例の血漿中濃度データ及び血小板データを用いて、薬物動態及び血小板数推移を説明するPK/PDモデルを構築した。薬物動態を説明するPKモデルには3-コンパートメントモデルを用い、吸収の遅れを説明するために吸収過程に3つのコンパートメントを組み込んだモデルを採用した。また血漿中濃度と血小板推移の関係を説明するPDモデルには、血小板の成熟プロセスを説明する5-コンパートメントを用いたモデルを採用した。図1にPK/PDモデルの模式図をその物質収支式とともに示す。表1に健康成人のデータから推定したPK/PDモデルパラメータを示す。なお、各モデルパラメータの分布及びモデルの残差誤差の分布は対数正規分布に従うと仮定した。パラメータの推定にはソフトウェアNONMEM (version VI, level 2.0) のfirst order conditional estimation method with interactionを用いた。
【0050】
【表1】
【0051】
(表1の説明)
CL/F: 見かけの全身クリアランス.V2/F: 中央コンパートメントの分布容積.V3/F,V4/F: 抹消コンパートメントの分布容積.Q3/F,Q4/F: コンパートメント間のクリアランス.ktr: 吸収コンパートメント間の移行速度定数.
ka:吸収コンパートメントから中央コンパートメントへの移行速度定数.
Emax,EC50,r: シグモイドEmaxモデルのパラメータ.km: PDコンパートメント間の移行速度定数.kdeg: 血小板コンパートメントからの消失速度定数.PLT0: 血小板数のベースライン.γ: フィードバック係数.
BW: 体重 (kg).
−: 推定せず.
ka, ktr: 食事条件と剤形の組み合わせで分けて推定した。
EC50: 投与量50 mg/回未満と50 mg/回で分けて推定した。
【0052】
(試験例2)
モンテカルロシミュレーションにおけるPK/PDパラメータの設定
(試験例1)で述べた健康成人におけるPK/PDモデルを基本に、以下の仮定に基づき、慢性肝疾患患者におけるモデルパラメータを設定した。設定した慢性肝疾患患者における血小板数予測に用いたPK/PDモデルパラメータを表2に示す。
(設定における仮定)
PK パラメータ (CL,V2/F,Q2/F,V3/F,Q3/F,V4/F,Q4/F,ktr,ka):
Lusutrombopag 0.75 mg投与後のChild-Pugh 分類A及びBの肝障害患者を対象とした第1相単回投与臨床試験の結果から、肝障害患者におけるlusutrombopagの薬物動態は健康成人と同様であったことから、PKパラメータは健康成人の値を用いた。なお、ka及びktr は臨床使用条件に合わせて食後と錠剤における推定値を用いた。
血小板数のベースライン (PLT0):
慢性肝疾患患者で想定される血小板数のベースラインを基に、PLT0の平均を3 万/μL、範囲を2 ~ 4.9 万/μLに設定した。
血小板コンパートメントからの消失速度定数 (kdeg):
慢性肝疾患患者の生体内における血小板の分解は亢進しており(参照文献1)、血小板の生存期間は健康成人の約2/3倍であるという報告から(参照文献2,3)、血小板の消失速度を表すkdegを健康成人の約1.5倍の値、すなわち0.009 hr-1に設定した。また、ベースラインにおいては血小板の産生速度と消失速度が一致するという関係に基づいて、血小板産生速度を表すkprを式PLT0 × kdegから算出した結果、0.027 万/μL/hrと健康成人の値 (0.116 万/μL/hr) よりも低い値であった。この設定は、慢性肝疾患患者において血小板の産生速度は低下しているという報告と一致している(参照文献1)。
PDコンパートメント間の移行速度定数 (km):
血小板の成熟速度を表すkm は、慢性肝疾患患者と健康成人との間で同様と仮定し、健康
成人の推定値を用いた。
シグモイドEmaxモデルのパラメータ (Emax, EC50, r):
血漿中濃度がEC50に対し十分に低いとき (EC50 >> C) のlusutrombopagの薬効はEmax/EC50 で近似することができる。本試験対象患者におけるEmax/EC50は、同効薬であるeltrombopagの臨床成績を基に(参照文献4,5)、健康成人の約3倍であると仮定した。さらに、本モデルにおける血小板の上限 (PLT0×(1+Emax)) は慢性肝疾患患者と健康成人とで同じと仮定し、Emaxを29.3、EC50を180 ng/mLに設定した。一方、rは患者と健康成人とで同様と仮定し、健康成人の値を用いた。
フィードバック係数 (γ):
式(PLT0/PLT)γで表される、血小板の増加に伴う血小板産生速度の低下 (負のフィードバック現象) は、血小板数が正常レベルである健康被験者特有の現象で、血小板のベースラインが低下した慢性肝疾患患者においては負のフィードバック現象は起こらないと仮定した。そのため、本シミュレーションにおいて負のフィードバック現象は考慮しなかった。
体重:
体重の分布は正規分布に従うと仮定し、平均を60 kg,変動係数を20%,範囲を40 から100 kg に設定した。
PD モデルパラメータの個体間変動:
各PD パラメータの個体間変動は、健康成人の値を用いた。
血漿中濃度及び血小板数の個体内変動:
血漿中濃度の個体内変動は、本シミュレーションでは考慮しなかった。血小板数の個体内変動は、健康成人の値を用いた。
【0053】
参照文献
(参照文献1) Witters P, Freson K, Verslype C et al. Review article: blood platelet number and function in chronic liver disease and cirrhosis. Aliment Pharmacol Ther 2008; 27: 1017-1029.
(参照文献2) Harker LA, Finch CA. Thrombokinetics in man. J Clin Invest 1969; 48: 963-974.
(参照文献3) Aoki Y, Hirai K, Tanikawa K. Mechanism of thrombocytopenia in liver cirrhosis: kinetics of indium-111 tropolone labelled platelets. Eur J Nucl Med 1993; 20: 123-9.
(参照文献4) FDA 申請資料(application No.: NDA 22-291).
(参照文献5) GlaxoSimithKline 社資料(GSK study ID: 111913).
【0054】
【表2】
【0055】
(表2の説明)
−: 設定せず。
BW (体重): 体重の分布は正規分布に従うと仮定し、平均を60 kg、変動係数を20%、範囲を40 ~ 100 kg に設定した。
PLT0: シミュレーションでは範囲を2.0 ~ 4.9 万/μLに設定した。
【0056】
(試験例3)
門脈血栓発現リスクを軽減する投与方法を検討することを目的として、上記(試験例2)で設定したパラメータを基に、lusutrombopagを1日1回2 mgを慢性肝疾患患者に7日間反復投与したときの血小板数の推移および、lusutrombopagを1日1回2 mgを慢性肝疾患患者に7日間反復投与するが、その投与期間中に血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加しかつ5万/μL以上となった場合はそれ以降のlusutrombopagの投与を中止する基準を設けた場合の血小板数の推移を、それぞれモンテカルロシミュレーションで予測した。モンテカルロシミュレーションにはソフトウェアTrial Simulator (version 2.2.1) を用いた。その予測で算出された投与開始8日目の血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加しかつ5万/μL以上となる患者の割合 (有効性) 及び観察期間中に血小板数が20万/μLを超える患者の割合 (血栓高リスク群の割合)を、表3に示す。
【0057】
【表3】

(表3の説明)
投与方法:2 mg 1日1回7日間投与。
a) モンテカルロシミュレーションによる有効性及び安全性の予測は、モンテカルロシミュレーションにより仮想患者1000人の経時的な血小板数を予測し、投与8日目の血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上となる患者の割合及び観察期間中(投与開始より投与開始30日目まで)の血小板数が20万μLを超える患者の割合を算出した。
b) 投与中止基準:lusutrombopagの投与期間中に血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上となった時点でlusutrombopagの投与を中止。
【0058】
投与中止基準を設けなかった場合、投与開始8日目の血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加しかつ5万/μL以上となる患者の割合は、92.4%と予測された。また、投与期間中に血小板数が20万/μLを超える患者の割合は35.8%であった。一方、投与中止基準を設けた場合、投与開始8日目の血小板数が2万/μL以上増加しかつ5万/μL以上となる患者の割合は92.5%と、中止基準を設けなかった場合と変らないのに対し、観察期間中に血小板数が20万/μLを超える患者の割合は、11.7%と、中止基準を設定しない場合に比べて低いものであった。本シミュレーションより、投与中止基準「lusutrombopagの投与期間中に血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上となった時点でlusutrombopagの薬の投与を中止」を設けることにより、有効性を殆ど減ずること無く、血小板数が20万/μLを超える患者の割合を抑制でき、結果として門脈血栓リスクを軽減することが可能であることが分かった。
【0059】
実施例2
【0060】
(試験例1)
慢性肝疾患による血小板減少患者を対象に、経皮的肝癌焼灼術の前処置としてlusutrombopagを、上記実施例1で設定した中止基準を適用しつつ、7日間反復経口投与し、血小板数がどのように推移するかを調べた。なお、本実施例で焼灼術とはラジオ波焼灼療法を意味する。
【0061】
(対象疾患)
経皮的肝癌焼灼術を予定している慢性肝疾患による血小板減少患者
【0062】
(選択基準)
下記の選択基準を満足する患者を対象とする。
1) 年齢:20歳以上 (同意取得時)
2) 本人から文書にて同意取得が可能な患者
3) B型又はC型肝炎ウイルスによる慢性肝疾患の合併又は既往がある患者
4) 原発性肝癌に対し、経皮的肝癌焼灼術を予定している患者
5) スクリーニング時の血小板数が、5万/μL未満の患者
6) ECOG*のPerformance StatusがGrade 0〜1の患者
7) 登録以降、後観察終了時まで避妊が可能な患者
【0063】
(除外基準)
下記の基準に該当する患者は除外する。
1) 脾臓摘出術を受けた患者
2) 血小板減少を呈する合併症を有している患者
3) 肝移植を受けた患者
4) 肝障害の程度が、Child-Pugh分類のC
5) 薬剤コントロールが不可能な肝性脳症を有する
6) 薬剤コントロールが不可能な腹水を有する
7) 原発性肝癌以外の悪性腫瘍を合併している患者
8) 血栓症または血栓性疾患の合併又は既往がある患者
9) 門脈血流方向が求肝性でないことが判明した患者
10) 出血のリスクを有する疾患の合併又は既往のある患者
11) 登録前90日以内に、血小板数に影響を及ぼす治療薬の投与または療法を受けた患者
のいずれかを受けた患者
12) 登録前14日以内に、血液製剤 (赤血球製剤は除く) を投与された患者
13) 過去にTPO受容体アゴニストを投与されたことがある患者
【0064】
(治験実施中に併用を禁止、制限あるいは可能とする薬)
治験実施中に併用を禁止、制限あるいは可能とする薬 (療法) は下記のとおりとする。
【0065】
(併用禁止薬)
登録以降、後観察終了時まで、以下の薬剤の使用を禁止する。
1)血小板及び赤血球製剤以外の血液製剤
全血製剤、ヒト免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤、フィブリノゲン、アンチトロンビンIII、新鮮凍結血漿等
2)抗癌剤
3)インターフェロン製剤
4)コロニー刺激因子 (G-CSF,M-CSF) 製剤
5)エリスロポエチン
6)TPO受容体アゴニスト
7)抗血栓薬
8)止血剤
カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム等
9)ビタミンK
10)他の治験薬
【0066】
(スケジュール)
それぞれ割付けられた用量群で、lusutrombopagを1日1回7日間反復経口投与し、投与開始8日目の観察終了後、投与開始13日目までの間に経皮的肝癌焼灼術を実施し、投与開始から約30日間観察する。
【0067】
(投与方法)
lusutrombopagを1日1回7日間反復経口投与する。投与開始1日目は来院時に投与する。なお、投与開始3〜7日目(2.0 mg投与群は5〜7日目)は、当日測定した血小板数を確認してから投与すること。また、治験薬投与後の臨床検査で以下の基準(投与中止基準)に該当する場合は、以後のlusutrombopagの投与を中止すること。
投与中止基準:血小板数が投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ血小板数が5万/μL以上となる場合
なお、投与開始前の血小板数としては、投与開始前7日以内に測定した血小板数を用いた。
【0068】
(用量)
一日あたりlusutrombopagとして2.0,2.5,3.0及び4.0 mgのいずれかを投与した。
【0069】
(評価項目)
評価項目1
投与開始8日目の血小板数が、投与開始前より2万/μL以上増加、かつ5万/μL以上となる患者の割合
評価項目2
1)血小板輸血した患者の割合とその回数及び用量 (単位)
2)観察期間中の血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加、かつ5万/μL以上となる患者の割合
3)血小板数
4)出血に関連する有害事象の発現頻度
5)血栓に関連する有害事象の発現頻度
6)有害事象及び副作用の発現頻度
7)血漿中未変化体濃度
【0070】
(結果)
各用量における有効性に関するデータを表4に示す。一日あたりlusutrombopagとして2.0、2.5、3.0 mg及び4.0 mgの用量での試験の個々の被験者での血小板数の推移を図2〜5にそれぞれ示す。いずれの用量においても有効性が確認された。また、血小板数が観察期間中に20 万/μL を超える患者は何れの試験においても皆無であった。特に一日あたり2 mg、2.5 mg及び4.0 mg投与群においては、本発明にかかる投与中止基準に従って投与を中止した患者において、投与中止後においても一定期間血小板数の増加が見られたが、その最大値は7日間投与を受けた患者の最大値に比べ小さいものであった。本発明にかかる投薬中止基準に従って投薬を中止したことにより、過剰な血小板の増加を防止できたと考えられる。本試験の結果から、十分な血小板数が確保しつつ、過剰な血小板数の上昇は起こらず、本発明にかかる投与中止基準が優れていることが実証された。
【表4】

(表4の説明)
a) 投与中止基準:lusutrombopagの投与期間中に血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上となった時点でlusutrombopagの投与を中止。
【0071】
(試験例2)
慢性肝疾患による血小板減少患者を対象に、経皮的肝癌焼灼術の前処置としてlusutrombopagを、上記実施例1で設定した中止基準を適用しつつ、7日間反復経口投与し、血小板数がどのように推移するかを調べた。なお、本実施例で焼灼術とはラジオ波焼灼療法を意味する。
【0072】
(対象疾患)
経皮的肝癌焼灼術を予定している慢性肝疾患による血小板減少患者
【0073】
(選択基準)
下記の選択基準を満足する患者を対象とする。
1) 年齢:20歳以上 (同意取得時)
2) 本人から文書にて同意取得が可能な患者
3) 慢性肝疾患による血小板減少患者
4) 原発性肝癌に対し、経皮的肝癌焼灼術を予定している患者
5) スクリーニング時の血小板数が、5万/μL未満の患者
6) ECOG*のPerformance StatusがGrade 0〜1の患者
7) 登録以降、後観察終了時まで避妊が可能な患者
【0074】
(除外基準)
下記の基準に該当する患者は除外する。
1) 脾臓摘出術を受けた患者
2) 血小板減少を呈する合併症を有している患者
3) 肝移植を受けた患者
4) 肝障害の程度が、Child-Pugh分類のC
5) 薬剤コントロールが不可能な肝性脳症を有する
6) 薬剤コントロールが不可能な腹水を有する
7) 原発性肝癌以外の悪性腫瘍を合併している患者
8) 血栓症または血栓性疾患の合併又は既往がある患者
9) 門脈血流方向が求肝性でないことが判明した患者
10) 出血のリスクを有する疾患の合併又は既往のある患者
11) 登録前90日以内に、血小板数に影響を及ぼす治療薬の投与または療法を受けた患者
のいずれかを受けた患者
12) 登録前14日以内に、血液製剤 (赤血球製剤は除く) を投与された患者
13) 過去にTPO受容体アゴニストを投与されたことがある患者
【0075】
(治験実施中に併用を禁止、制限あるいは可能とする薬)
治験実施中に併用を禁止、制限あるいは可能とする薬 (療法) は下記のとおりとする。
【0076】
(併用禁止薬)
登録以降、後観察終了時まで、以下の薬剤の使用を禁止する。
1)血小板及び赤血球製剤以外の血液製剤
全血製剤、ヒト免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤、フィブリノゲン、アンチトロンビンIII、新鮮凍結血漿等
2)抗癌剤
3)インターフェロン製剤
4)コロニー刺激因子 (G-CSF,M-CSF) 製剤
5)エリスロポエチン
6)TPO受容体アゴニスト
7)抗血栓薬
8)止血剤
カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム等
9)ビタミンK
10)他の治験薬
【0077】
(スケジュール)
それぞれ割付けられた用量群で、lusutrombopagを1日1回7日間反復経口投与し、投与開始8日目の観察終了後、投与開始14日目までの間に経皮的肝癌焼灼術を実施し、投与開始から約30日間観察する。
【0078】
(投与方法)
lusutrombopagを1日1回7日間反復経口投与する。投与開始1日目は来院時に投与する。なお、投与開始5〜7日目は、当日測定した血小板数を確認してから投与すること。また、治験薬投与後の臨床検査で以下の基準(投与中止基準)に該当する場合は、以後のlusutrombopagの投与を中止すること。
投与中止基準:血小板数が投与開始前と比較して2万/μL以上増加し、かつ血小板数が5万/μL以上となる場合
なお、投与開始前の血小板数としては、投与開始前7日以内に測定した血小板数を用いた。
【0079】
(用量)
一日あたりlusutrombopagとして2.0,3.0及び4.0 mgのいずれかを投与した。
【0080】
(評価項目)
評価項目1
投与開始8日目の血小板数が、投与開始前より2万/μL以上増加、かつ5万/μL以上となる患者の割合
評価項目2
1)血小板輸血した患者の割合とその回数及び用量 (単位)
2)観察期間中の血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加、かつ5万/μL以上となる患者の割合
3)血小板数
4)出血に関連する有害事象の発現頻度
5)血栓に関連する有害事象の発現頻度
6)有害事象及び副作用の発現頻度
7)血漿中未変化体濃度
【0081】
(結果)
各用量における有効性に関するデータを表5に示す。いずれの用量においても有効性が確認された。また、血小板数が観察期間中に20 万/μL を超える患者は何れの試験においても皆無であった。本試験の結果から、十分な血小板数が確保しつつ、過剰な血小板数の上昇は起こらず、本発明にかかる投与中止基準が優れていることが実証された。
























【表5】

(表5の説明)
a) 投与中止基準:lusutrombopagの投与期間中に血小板数が投与開始前より2万/μL以上増加し、かつ5万/μL以上となった時点でlusutrombopagの投与を中止。
【0082】
製剤例
以下に示す製剤例は例示にすぎないものであり、発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。
製剤例1 錠剤
本発明化合物 15mg
乳糖 15mg
ステアリン酸カルシウム 3mg
ステアリン酸カルシウム以外の成分を均一に混合し、破砕造粒して乾燥し、適当な大きさの顆粒剤とする。次にステアリン酸カルシウムを添加して圧縮成形して錠剤とする。
【0083】
製剤例2 カプセル剤
本発明化合物 10mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
乳糖 80mg
を均一に混合して粉末又は細粒状として散剤をつくる。それをカプセル容器に充填してカプセル剤とする。
【0084】
製剤例3 顆粒剤
本発明化合物 30g
乳糖 265g
ステアリン酸マグネシウム 5g
をよく混合し、圧縮成型した後、粉砕、整粒し、篩別して適当な大きさの顆粒剤とする。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係るトロンボポエチン受容体アゴニスト活性を含有する医薬組成物は、血小板数の過剰な増加に伴う血栓のリスクを回避しつつ、血小板の増加作用を有する点で、有用であると考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5