(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
小児に対する心臓カテーテル検査では、小児の鼠蹊部からカテーテルが挿入される。このため、この検査後、カテーテル挿入部を止血し、さらにカテーテル挿入部からの再出血を予防する必要がある。そこで、心臓カテーテル検査後、小児の体動を抑制する抑制具が利用される。この抑制具は、心臓カテーテル検査後の他に、各種検査中にも利用される。
【0005】
このように、小児用の抑制具では、以上のように、カテーテル挿入部の止血や再出血の予防が求められることがある。さらに、小児では、抑制具の使用中に失禁することがあるため、その洗浄性の向上も求められる。すなわち、医療現場では、小児用の抑制具の利便性の向上が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、利便性を高めることができる小児用の抑制具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための発明の一態様としての抑制具は、
仰臥位の小児を支える支持体と、前記支持体に取り付けられ、小児の胸部の動きを抑制する胸部抑制帯と、前記支持体に取り付けられ、小児の2本の下肢のそれぞれの動きを抑制する下肢抑制帯と、を備え、前記支持体は、複数の空孔が形成されて仰臥位の小児が載る弾性部材と、前記弾性部材で前記小児が載る上面と反対側の下面と対向し、前記弾性部材に小児が載った際の前記下面の変形を抑える剛性板と、前記弾性部材及び前記弾性部材が載っている前記剛性板を出し入れ可能に覆う被覆部材と、を有し、
帯状を成し、第一端部及び第二端部のそれぞれが前記被覆部材中の互いに異なる位置に取り付けられている抱き帯をさらに備え、前記胸部抑制帯及び前記下肢抑制帯は、前記被覆部材に取り付けられている。
【0008】
当該抑制具では、小児の上半身のみならず、小児の2本の下肢の動きを抑制することができる。このため、例えば、小児の鼠蹊部からカテーテルが挿入される心臓カテーテル検査後、当該抑制具を用いることで、このカテーテル挿入部の止血及びカテーテル挿入部からの再出血を予防することができる。
【0009】
当該抑制具では、支持体を構成する被覆部材の収納物として、弾性部材を有するので、仰臥位の小児に苦痛を与えることなく、仰臥位の小児を支持することができる。しかも、この被覆部材の収納物として、剛性板を有するので、抑制具で体動が抑制されている小児を抑制具ごと移動させるにあたり、支持体の変形を抑えることができる。このため、この移動に伴なう小児の再出血等を防ぐことができる。
【0010】
小児は、抑制具の使用中に失禁することがある。当該抑制具では、被覆部材からその収納物を出し入れできるため、被覆部材、被覆部材に取り付けられている抑制帯、さらに被覆部材の収容物を容易に洗浄することができる。また、例えば、被覆部材のみが汚れた場合、収納物を取り出した被覆部材及び抑制帯のみを洗浄することもできる。さらに、被覆部材のみを新たな被覆部材に交換することもできる。
【0012】
この抑制具は、抱き帯を備えているので、看護師等がこの抱き帯を首にまわして肩にかけることで、看護師等が抑制具で体動が抑制されている小児を抑制具ごと容易に抱き上げることができる。
【0013】
前記抱き帯は、前記被覆部材に取り付けられている前記第一端部を含む第一取付部と、前記被覆部材に取り付けられている前記第二端部を含む第二取付部と、帯状を成し、前記第一取付部及び前記第二取付部に対して端部が着脱自在な帯部と、を有してもよい。
【0014】
当該抑制具では、抑制具をベッドや検査台等の上に置いている際には、帯部を被覆部材から外しておくことができる。
【0015】
本発明の他の態様の抑制具は、仰臥位の小児を支える支持体と、前記支持体に取り付けられ、小児の胸部の動きを抑制する胸部抑制帯と、前記支持体に取り付けられ、小児の2本の下肢のそれぞれの動きを抑制する下肢抑制帯とを備え、前記支持体は、複数の空孔が形成されて仰臥位の小児が載る弾性部材と、前記弾性部材で前記小児が載る上面と反対側の下面と対向し、前記弾性部材に小児が載った際の前記下面の変形を抑える剛性板と、前記弾性部材及び前記弾性部材が載っている前記剛性板を出し入れ可能に覆う被覆部材とを有し、弾性材を含み、前記被覆部材中で前記胸部抑制帯が取り付けられる位置に沿って着脱自在に取り付けられ、小児の胸部の背面から側面にかけて接する胸部フィッテイング具をさらに備え、前記胸部抑制帯及び前記下肢抑制帯は、前記被覆部材に取り付けられている。この抑制具は、胸部サイズが異なる複数の小児に適用することができる。
さらに、本発明の他の態様の抑制具は、仰臥位の小児を支える支持体と、前記支持体に取り付けられ、小児の胸部の動きを抑制する胸部抑制帯と、前記支持体に取り付けられ、小児の2本の下肢のそれぞれの動きを抑制する下肢抑制帯とを備え、前記支持体は、複数の空孔が形成されて仰臥位の小児が載る弾性部材と、前記弾性部材で前記小児が載る上面と反対側の下面と対向し、前記弾性部材に小児が載った際の前記下面の変形を抑える剛性板と、前記弾性部材及び前記弾性部材が載っている前記剛性板を出し入れ可能に覆う被覆部材とを有し、弾性材を含み、前記被覆部材中で前記下肢抑制帯が取り付けられる位置に沿って着脱自在に取り付けられ、小児の下肢の背面から側面にかけて接する下肢フィッテイング具をさらに備え、前記胸部抑制帯及び前記下肢抑制帯は、前記被覆部材に取り付けられている。この抑制具は、下肢サイズが異なる複数の小児に適用することができる。
上記したいずれかの前記抑制具において、前記被覆部材は、一層以上のシート材が積層されて形成され、前記シート材のうち、前記被覆部材の最外層を成すシート材は、メッシュ地であってもよい。
【0016】
当該抑制具では、被覆部材の通気性を高めることができる。
【0023】
また、以上のいずれかの前記抑制具において、前記被覆部材は、前記弾性部材及び前記剛性板が入り、前記弾性部材及び前記剛性板が出し入れ可能な開口が形成されている被覆袋と、前記開口を閉状態に維持する閉じ具と、を有してもよい。
【0024】
当該抑制具では、被覆部材からその収納物の出し入れを容易に行うことができると共に、被覆部材から収納物のはみ出しを抑えることができる。
【0025】
また、以上のいずれかの前記抑制具において、前記支持体は、小児の胴体を支持する胴体支持部と、小児の左下肢を支持する左下肢支持部と、小児の右下肢を支持する右下肢支持部と、を有し、前記左下肢支持部と右下肢支持部とは、互いに離間して前記胴体支持部に接続されていてもよい。
【0026】
当該抑制具では、抑制具で体動が抑制されている小児を抑制具ごと移動させるにあたり、看護師等が左下肢支持部と右下肢支持部との間から胴体支持部の下側に片腕を入れることで、容易に小児を抑制具ごと移動させることができる。
【0027】
また、以上のいずれかの前記抑制具において、前記下肢抑制帯は、小児の左下肢の動きを抑制する左下肢抑制帯と、小児の右下肢の動きを抑制する右下肢抑制帯と、を有し、前記左下肢抑制帯及び前記右下肢抑制帯は、前記被覆部材中で、小児の二本の下肢の各膝が互いに離間した状態で各下肢の動きを抑制できる位置に取り付けられていてもよい。
【0028】
当該抑制具では、二本の下肢の各膝が互いに離間した状態で二本の下肢の動きを抑制できるので、おしめ交換を容易に行うことができる。
【0029】
前記下肢抑制帯が左下肢抑制帯と右下肢抑制帯とを有する前記抑制具において、前記左下肢抑制帯及び前記右下肢抑制帯は、いずれも、小児の大腿中の膝寄りの部分の動きを抑制する大腿抑制帯と、小児の下腿中の膝寄りの部分の動きを抑制する下腿抑制帯と、を有してもよい。
【0030】
当該抑制具では、各下肢の股関節及び膝関節の屈曲を抑制することができる。このため、例えば、小児の鼠蹊部からカテーテルが挿入される心臓カテーテル検査後、当該抑制具を用いることで、極めて効果的に、カテーテル挿入部の止血及びカテーテル挿入部からの再出血を予防することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様では、小児用の抑制具の利便性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る抑制具の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
抑制具は、
図1、
図4及び
図5に示すように、仰臥位の小児Cを支える支持体10と、小児Cの胸部の動きを抑制する胸部抑制帯30と、小児Cの2本の下肢Lのそれぞれの動きを抑制する下肢抑制帯50と、を備える。なお、以下の説明の都合上、抑制具で小児Cが載る側を上側Sa、その反対側を下側Sbとする。また、小児Cの頭が載る側を頭側Sh、その反対側を足側Sfとする。
【0035】
支持体10は、
図1〜
図3に示すように、仰臥位の小児Cが載る弾性部材11と、弾性部材11を支える剛性板15と、弾性部材11及び剛性板15を覆う被覆部材21と、を有する。
【0036】
弾性部材11は、樹脂発泡体で形成されている。樹脂発泡体を形成する樹脂としては、例えば、ポリウレタンやポリエチレン等がある。ポリウレタンやポリエチレンを材料とした樹脂発泡体は、いずれも、X線の透過性が高い、言い換えるとCT値の低いものである。このため、ポリウレタンやポリエチレンを材料とした樹脂発泡体で弾性部材を形成すると、抑制具で体動が抑制されている小児に対して、そのままX線を利用した検査等を行うことができる。また、この弾性部材11を形成する樹脂発砲体は、セルに膜が無く骨格構造を成し、通気性及び通水性の高い無膜構造のものが好ましい。無膜構造の樹脂発泡体として、例えば、「ムマックス(アキレス株式会社の登録商標)」等がある。
【0037】
弾性部材11は、
図1、
図2、
図5及び
図6に示すように、小児Cの左下肢LLを支持する左下肢支持部12Lと、右下肢LRを支持する右下肢支持部12Rと、胴体を支持する胴体支持部12と、を有する。胴体支持部12は、矩形板状を成し、その一辺である足側Sfの辺に、互いの間隔をあけて左下肢支持部12Lと右下肢支持部12Rとが接続されている。胴体支持部12、左下肢支持部12L及び右下肢支持部12Rのそれぞれには、小児Cが載る上面121,121L,121Rと、その反対側の下面122,122L,122Rとが形成されている。胴体支持部12、左下肢支持部12L及び右下肢支持部12Rは、一体成型されて、弾性部材11を成している。胴体支持部12、左下肢支持部12L及び右下肢支持部12Rの上面121,121L,121Rは相互に面一であり、同様に、各部の下面122,122L,122Rも相互に面一である。
【0038】
剛性板15は、各種樹脂や木材で形成されている。特に、剛性板15は、炭素繊維強化樹脂で形成されていることが好ましい。炭素繊維強化樹脂は、強化材として炭素繊維が用いられ、母材(マトリックス)として樹脂が用いられている。母材を形成する樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS樹脂(アクリロニトリルとブタジエンとスチレンとの共重合合成樹脂)、ポリアミド系樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等がある。この炭素繊維強化樹脂は、剛性が高い上に軽量である。このため、炭素繊維強化樹脂で剛性板15を形成すると、抑制具で体動が抑制されている小児Cを抑制具ごと容易に移動させることができる上に、この移動に伴なう支持体10の変形を抑えることができる。また、炭素繊維強化樹脂は、X線の透過性が高い、言い換えるとCT値の低い材料である。このため、炭素繊維強化樹脂で剛性板15を形成すると、抑制具で体動が抑制されている小児Cに対して、そのままX線を利用した検査等を行うことができる。なお、炭素繊維強化樹脂中の炭素繊維含有率を高めることで、この炭素繊維強化樹脂のX線の透過性を高めることができる。また、剛性板11は、木材、例えば、合板で形成してもよい。木材も、X線の透過性が高い材料である。このため、木材で剛性板15を形成しても、抑制具で体動が抑制されている小児Cに対して、そのままX線を利用した検査等を行うことができる。
【0039】
剛性板15は、弾性部材11の左下肢支持部12Lの下面122Lに接する左下肢支持部16Lと、弾性部材11の右下肢支持部12Rの下面122Rに接する右下肢支持部16Rと、弾性部材11の胴体支持部12の下面122に接する胴体支持部16と、を有する。剛性板15の胴体支持部16は、矩形板状を成し、その一辺である足側Sfの辺に、互いに左右方向に間隔をあけて剛性板15の左下肢支持部16Lと剛性板15の右下肢支持部16Rとが接続されている。胴体支持部16、左下肢支持部16L及び右下肢支持部16Rは、一体成型されて、剛性板15を成している。
【0040】
被覆部材21は、
図1、
図3、
図5及び
図6に示すように、収納物である弾性部材11及び剛性板15が入り、弾性部材11及び剛性板15が出し入れ可能な開口26が形成されている被覆袋22と、開口26を閉状態に維持しておくための閉じ具29と、を有する。
【0041】
被覆袋22は、一層以上のシート材が積層されて形成されている。シート材としては、木綿、麻、羊毛等の天然繊維を織ったもの、ポリエチレンやポリエステル等の合成繊維を織ったもの、さらに、天然繊維及び合成繊維を合せて織ったもの等がある。被覆袋22の最外層を形成するシート材は、メッシュ地であることが好ましい。メッシュ地とは、表から裏に向かって貫通する複数の開口が形成され、伸縮性を有するシート材のことである。被覆袋22の最外層を形成するシート材として、メッシュ地のシート材を用いると、吸汗性や速乾性を高めることができる。また、被覆袋22の少なくとも最外層を形成するシート材には、撥水加工、抗菌加工が施されていることが好ましい。
【0042】
被覆袋22は、弾性部材11及び剛性板15の左下肢支持部12L,16Lが入る左足側収納部23Lと、弾性部材11及び剛性板15の右下肢支持部12R,16Rが入る右足側収納部23Rと、弾性部材11及び剛性板15の胴体支持部12,16が入る胴収納部23と、を有する。左足側収納部23L、右足側収納部23R及び胴収納部23は、一体である。
【0043】
左足側収納部23L及び右足側収納部23Rは、いずれも、それらの収納物の上面を被覆する上面被覆片231L,231Rと、それらの収納物の下面を被覆する下面被覆片232L,232Rと、それらの収納物の足側端面を被覆する端面被覆片233L,233Rと、それらの収納物の左側面を被覆する左側面被覆片235L,235Rと、それらの収納物の右側面を被覆する右側面被覆片234L,234Rと、を有する。また、胴収納部23は、その収納物の上面を被覆する上面被覆片231と、その収納物の下面を被覆する下面被覆片232と、その収納物の左側面を被覆する左側面被覆片235と、その収納物の右側面を被覆する右側面被覆片234と、を有する。
【0044】
右足側収納部23Rと胴収納部23とは、上面被覆片231R,231相互、下面被覆片232R,232相互、右側面被覆片234R,234相互がつながっている。左足側収納部23Lと胴収納部23とは、上面被覆片231L,231相互、下面被覆片232L,232相互、左側面被覆片235L,235相互がつながっている。
【0045】
右足側収納部23Rの上面被覆片231Rに対して、右足側収納部23Rの右側面被覆片234R、左側面被覆片235R及び端面被覆片233Rがつながっている。また、右足側収納部23Rの下面被覆片232Rに対して、右足側収納部23Rの右側面被覆片234Rがつながっている。一方、右足側収納部23Rの端面被覆片233Rに対して、右足側収納部23Rの右側面被覆片234R、左側面被覆片235R、及び下面被覆片232Rはつながっていない。また、右足側収納部23Rの左側面被覆片235Rに対して、端面被覆片233R、下面被覆片232Rはつながっていない。このため、右足側収納部23Rは、その足側端面を足側端面開口236Rにすることができる一方で、この足側端面開口236Rを端面被覆片233Rで塞ぐことができる。端面被覆片233Rで足側端面開口236Rを塞いでいる状態を維持するために、端面被覆片233Rには、一対の面ファスナー291R,291Rのうちの一方の面ファスナー291Rが張り付けられ、下面被覆片232Rには、他方の面ファスナー291Rが張り付けられている。また、右足側収納部23Rは、その左側面を左側面開口237Rにすることができる一方で、この左側面開口237Rを左側面被覆片235Rで塞ぐことができる。左側面被覆片235Rで左側面開口237Rを塞いでいる状態を維持するために、左側面被覆片235Rには、一対の面ファスナー292R,292Rのうちの一方の面ファスナー292Rが張り付けられ、下面被覆片232Rには、他方の面ファスナー292Rが張り付けられている。
【0046】
左足側収納部23Lの上面被覆片231Lに対して、左足側収納部23Lの左側面被覆片235L、右側面被覆片234L及び端面被覆片233Lがつながっている。また、左足側収納部23Lの下面被覆片232Lに対して、左足側収納部23Lの左側面被覆片235Lがつながっている。一方、左足側収納部23Lの端面被覆片233Lに対して、左足側収納部23Lの左側面被覆片235L、右側面被覆片234L、及び下面被覆片232Lはつながっていない。また、左足側収納部23Lの右側面被覆片234Lに対して、端面被覆片233L、下面被覆片232Lはつながっていない。このため、左足側収納部23Lは、その足側端面を足側端面開口236Lにすることができる一方で、この足側端面開口236Lを端面被覆片233Lで塞ぐことができる。端面被覆片233Lで足側端面開口236Lを塞いでいる状態を維持するために、端面被覆片233Lには、一対の面ファスナー291L,291Lのうちの一方の面ファスナー291Lが張り付けられ、下面被覆片232Lには、他方の面ファスナー291Lが張り付けられている。また、左足側収納部23Lは、その右側面を右側面開口237Lにすることができる一方で、この右側面開口237Lを右側面被覆片234Lで塞ぐことができる。右側面被覆片234Lで右側面開口237Lを塞いでいる状態を維持するために、右側面被覆片234Lには、一対の面ファスナー292L,292Lのうちの一方の面ファスナー292Lが張り付けられ、下面被覆片232Lには、他方の面ファスナー292Lが張り付けられている。
【0047】
胴収納部23の上面被覆片231の足側縁であって、右足側収納部23Rと左足側収納部23Lとの間における足側縁と、胴収納部23の下面被覆片232の足側縁であって、右足側収納部23Rと左足側収納部23Lとの間における足側縁との間は、足側開口236を成している。
【0048】
右足側収納部23Rの足側端面開口236Rとその左側面開口237R、左足側収納部23Lの足側端面開口236Lとその右側面開口237L、さらに、胴収納部23の足側開口236とは、互いに連なっており、前述した被覆袋22の開口26を形成している。
【0049】
胴収納部23の上面被覆片231の足側Sfであって、右足側収納部23Rと左足側収納部23Lとの間には、閉じ帯293の一端がつながっている。胴収納部23の下面被覆片232の足側Sfであって、右足側収納部23Rと左足側収納部23Lとの間には、一対の面ファスナー291,291のうち一方の面ファスナー291が張り付けられ、閉じ帯293の他端には、他方の面ファスナー291が張り付けられている。
【0050】
閉じ帯293、この閉じ帯293に張り付けられている面ファスナー291、被覆袋22の各被覆片に張り付けられている面ファスナー291R,291L,292R,292Lは、被覆袋22の開口26を閉状態に維持しておくための前述の閉じ具29を構成する。
【0051】
閉じ帯293は、被覆袋22の形成材料として例示したものと同様の材料で形成されている。面ファスナー291,291R,291L,292R,292Lは、一般的に、「マジックテープ(株式会社クラレの登録商標)」と呼ばれ、雄側の面ファスナーと雌側の面ファスナーとで対を成す。この面ファスナーは、基本的に、ポリエステル等の合成樹脂で形成されている。
【0052】
胸部抑制帯30は、
図1、
図4及び
図8に示すように、第一胸部抑制帯31と第二胸部抑制帯32とを有する。第一胸部抑制帯31及び第二胸部抑制帯32は、いずれも、抑制帯部35と、抑制帯部35に取り付けられている面ファスナー36とを有する。各抑制帯部35の一方の端部は、左右方向に互いに間隔をあけて、被覆袋22における胴収納部23の上面被覆片231に取り付けられている。第一胸部抑制帯31の面ファスナー36は、抑制帯部35の互いに相反する方向を向く面のうち、一方の面側に取り付けられ、第二胸部抑制帯32の面ファスナー36は、抑制帯部35の互いに相反する方向を向く面のうち、他方の面側に取り付けられている。
【0053】
下肢抑制帯50は、
図1、
図4及び
図9に示すように、小児Cの左下肢LLの動きを抑制する左下肢抑制帯50Lと、右下肢LRの動きを抑制する右下肢抑制帯50Rと、を有する。左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rは、被覆袋22の表面中で、小児Cの左下肢LLの膝と右下肢LRの膝とが互いに離間した状態で各下肢LL,LRの動きを抑制できる位置に取り付けられている。具体的に、左下肢抑制帯50Lは、被覆袋22における左足側収納部23Lの上面被覆片231Lに取り付けられ、右下肢抑制帯50Rは、被覆袋22における右足側収納部23Rの上面被覆片231Rに取り付けられている。
【0054】
左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rは、いずれも、小児Cの大腿中の膝寄りの部分の動きを抑制する大腿抑制帯51と、小児Cの下腿中の膝寄りの部分の動きを抑制する下腿抑制帯61と、を有する。
【0055】
左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rの大腿抑制帯51は、いずれも、
図4及び
図9に示すように、第一大腿抑制帯52と第二大腿抑制帯53とを有する。第一大腿抑制帯52及び第二大腿抑制帯53は、いずれも、胸部抑制帯30と同様、抑制帯部55と、抑制帯部55に取り付けられている面ファスナー56とを有する。各抑制帯部55の一方の端部は、左右方向に互いの間隔をあけて、被覆袋22に取り付けられている。第一大腿抑制帯52の面ファスナー56と第二大腿抑制帯53の面ファスナー56とは、対を成す面ファスナーで、両者を貼り合せると、小児Cの大腿中の膝寄りの部分の動きを抑制することができる。
【0056】
左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rの下腿抑制帯61は、いずれも、第一下腿抑制帯62と第二下腿抑制帯63とを有する。第一下腿抑制帯62及び第二下腿抑制帯63は、いずれも、胸部抑制帯30や大腿抑制帯51と同様、抑制帯部65と、抑制帯部65に取り付けられている面ファスナー66とを有する。各抑制帯部65の一方の端部は、左右方向に互いの間隔をあけて、被覆袋22に取り付けられている。第一下腿抑制帯62の面ファスナー66と第二下腿抑制帯63の面ファスナー66とは、対を成す面ファスナーで、両者を貼り合せると、小児Cの下腿中の膝寄りの部分の動きを抑制することができる。
【0057】
左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rは、以上のように、いずれも、大腿抑制帯51及び下腿抑制帯61を有することにより、各下肢の股関節及び膝関節の屈曲を抑制することができる。
【0058】
胸部抑制帯30の各抑制帯部35、左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rの各抑制帯部55,65は、閉じ帯293や被覆袋22の形成材料として例示したものと同様の材料で形成されている。左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rの面ファスナー56,66は、前述した被覆袋22に設けられている面ファスナー291,291R,291Lと基本的に同一である。
【0059】
本実施形態の抑制具は、さらに、
図7に示すように、抱き帯70を備えている。この抱き帯70は、帯状を成し、第一端部71及び第二端部74のそれぞれが被覆袋22の表面中で互いに異なる位置に取り付けられている。具体的に、第一端部71は、被覆袋22における左足側収納部23Lの左側面被覆片235Lに取り付けられている。また、第二端部74は、被覆袋22における胴収納部23の右側面被覆片234中で小児Cの右肩の側部に該当する位置に取り付けられている。また、この抱き帯70は、被覆袋22に取り付けられている第一端部71を含む第一取付部73と、被覆袋22に取り付けられている第二端部74を含む第二取付部76と、帯状を成す抱き帯部77と、を有している。抱き帯部77は、各端部が第一取付部73及び第二取付部76に対して着脱自在である。このため、抱き帯部77の各端部には、例えば、バックルを構成する対を成す部品のうちの一方の部品が取り付けられ、第一取付部73及び第二取付部76には、バックルの他方の部品が取り付けられている。抱き帯部77は、被覆袋22の形成材料として例示したものと同様の材料で形成されている。
【0060】
本実施形態の抑制具は、さらに、
図8及び
図9に示すように、胸部フィッテイング具80及び下肢フィッテイング具85を備えている。
【0061】
胸部フィッテイング具80は、弾性材で形成され、小児Cの胸部の背面から側面にかけて接する胸部フィッテイング本体81と、胸部フィッテイング本体81に張り付けられている面ファスナー82と、を有する。この面ファスナー82と対を成す面ファスナー82は、被覆袋22の表面中で胸部抑制帯30が取り付けられる位置に沿って張り付けられている。このため、胸部フィッテイング具80は、被覆袋22の表面中で胸部抑制帯30が取り付けられる位置に沿った位置に対して着脱自在である。
【0062】
下肢フィッテイング具85は、弾性材で形成され、小児Cの下肢Lの背面から側面にかけて接する下肢フィッテイング本体86と、下肢フィッテイング本体86に張り付けられている面ファスナー87と、を有する。この面ファスナー87と対を成す面ファスナー87は、被覆袋22の表面中で下肢抑制帯50が取り付けられる位置に沿って張り付けられている。このため、下肢フィッテイング具85は、被覆袋22の表面中で下肢抑制帯50が取り付けられる位置に沿った位置に対して着脱自在である。
【0063】
胸部フィッテイング本体81及び下肢フィッテイング本体86は、例えば、前述の弾性部材11と同様の材料で形成されている。
【0064】
以上のように、本実施形態では、小児Cの上半身のみならず、小児Cの2本の下肢の動きを抑制することができる。このため、例えば、小児Cの鼠蹊部からカテーテルが挿入される心臓カテーテル検査後、本実施形態の抑制具を用いることで、このカテーテル挿入部の止血及びカテーテル挿入部から再出血を予防することができる。特に、本実施形態では、左下肢抑制帯50L及び右下肢抑制帯50Rのいずれもが大腿抑制帯51及び下腿抑制帯61を有するため、各下肢LL,LRの股関節及び膝関節の屈曲を抑制することができ、結果として、極めて効果的に、カテーテル挿入部の止血及びカテーテル挿入部からの再出血を予防することができる。
【0065】
小児Cは、抑制具の使用中に失禁することがある。本実施形態の抑制具では、被覆部材21からその収納物を容易に出し入れできるため、被覆部材21、被覆部材21に取り付けられている抑制帯30,50、さらに被覆部材21の収容物を容易に洗浄することができる。また、例えば、被覆部材21のみが汚れた場合、収納物を取り出した被覆部材21及び抑制帯30,50のみを洗浄することもできる。さらに、被覆部材21のみを新たな被覆部材21に交換することもできる。また、本実施形態の抑制具は、閉じ具29を備えているための被覆部材21の開口26からその収容物のはみ出しを抑えることができる。
【0066】
本実施形態の支持体10を構成する被覆部材21の収納物として、弾性部材11を有するので、仰臥位の小児Cに苦痛を与えることなく、仰臥位の小児Cを支持することができる。しかも、この被覆部材21の収納物として、剛性板15を有するので、抑制具で体動が抑制されている小児Cを抑制具ごと移動させるにあたり、支持体10の変形を抑えることができる。このため、この移動に伴なう小児Cの再出血等を防ぐことができる。特に、本実施形態の剛性板15は、前述したように、軽量且つ剛性の高い炭素繊維強化樹脂で形成されているので、抑制具で体動が抑制されている小児Cを抑制具ごと容易に移動させることができる上に、この移動に伴なう支持体10の変形をより抑えることができる。また、本実施形態では、抑制具で体動が抑制されている小児Cを抑制具ごと移動させるにあたり、看護師等が支持体10の左下肢支持部と右下肢支持部との間から支持体10の胴体支持部の下側に片腕を入れることで、容易に小児Cを抑制具ごと移動させることができる。なお、支持体10の左下肢支持部は、弾性部材11の左下肢支持部12Lと、剛性板15の左下肢支持部16Lと、被覆袋22の左足側収納部23Lとを有して構成される。支持体10の右下肢支持部は、弾性部材11の右下肢支持部12Rと、剛性板15の右下肢支持部16Rと、被覆袋22の右足側収納部23Rとを有して構成される。また、支持体10の胴体支持部は、弾性部材11の胴体支持部12と、剛性板15の胴体支持部16と、被覆袋22の胴収納部23とを有して構成される。
【0067】
本実施形態において、被覆部材21の最外層を形成するシート材をメッシュ地で形成することにより、被覆部材21の通気性を高めることができる。
【0068】
本実施形態の抑制具は、抱き帯70を備えているので、看護師等がこの抱き帯70を首にまわして肩にかけることで、看護師等が抑制具で体動が抑制されている小児Cを抑制具ごと容易に抱き上げることができる。さらに、看護師等が抑制具で体動が抑制されている小児Cを抑制具ごと抱き上げていない際には、つまり、抑制具をベッドや検査台等の上に置いている際には、抱き帯部77を被覆部材21から外しておくことができる。
【0069】
本実施形態の抑制具は、胸部フィッテイング具80及び下肢フィッテイング具85を備えているでは、胸部サイズが異なる複数の小児Cに適用することができると共に、下肢サイズが異なる複数の小児Cに適用することができる。
【0070】
なお、以上の実施形態における被覆袋22は、足側Sfに開口26が形成されている。しかしながら、被覆袋の開口は、頭側Shに形成されてもよい。
【0071】
また、以上の実施形態における支持体10は、胴支持部と、互いに離間して胴支持部に接続されている右下肢支持部及び左下肢支持部と、を有する。しかしながら、支持体の製作コストを抑える観点から、右下肢支持部と左下肢支持部とが互いに離間しておらず、支持体全体で矩形状を成すように構成してもよい。この場合、被覆袋の開口は、その側面に形成されてもよい。
【0072】
また、以上の実施形態の抑制具は、抱き帯70、胸部フィッテイング具80、下肢フィッテイング具85を備えているが、これらを省略してもよい。
【0073】
以上では、抑制具を構成する各要素の形成材料について説明したが、各要素の形成材料は、以上で説明した材料であってもよいが、他の材料であってもよい。