【文献】
Ryong Ryoo, Sang Hoon Joo, and Ji Man Kim,Energetically Favored Formation of MCM-48 from Cationic-Neutral Surfactant Mixtures,J. Phys. Chem.,米国,American Chemical Society,1999年 8月14日,B/103,pp.7435-7440
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各集団における前記粒子を形成するシリカを、HS5シリカ、M4シリカ、LM130シリカ、A90シリカ、L90シリカ、A200シリカおよびA380シリカからなる群から選択する請求項10に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、発展しうる代替エネルギー源として多くの注目を集めている。一般に、燃料電池は、環境的にクリーンでかつ効率のよい方法で電気化学的エネルギーを電気エネルギーに転換する。燃料電池は、小型の電子機器から車や家を対象とするあらゆるものの潜在的なエネルギー源として考えることができる。異なるエネルギー条件に対処できるように、現在多数の異なるタイプの燃料電池が存在し、それぞれ異なる化学的作用、条件および用途を備えている。
【0003】
一例として、ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)の場合、メタノールが電気触媒層の上で酸化し、二酸化炭素を形成することを利用している。陽極で水が費消され、陰極で水が生成する。陽イオン(H+)がプロトン交換膜を横断して陰極に移動し、ここで酸素と反応して水を形成する。次に、電子が陽極から外部回路を介して陰極に移動し、電力を外部源に与える。
【0004】
もう一つの例として、ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池(プロトン交換膜燃料電池とも呼ばれている)があり、この電池の場合燃料として(例えば水素タンクから供給される)純粋な水素を使用する。膜−電極体(MEA)の陽極側に水素を流し、ここでこれをプロトンと電子に接触分解する。DMFCと同様に、陽イオンはプロトン交換膜を横断して陰極に運ばれ、ここで酸素と反応し、水を形成する。
【0005】
現在、PEMおよびDMFC燃料電池の大規模な商業化を阻んでいるファクターの一つは、貴金属に関係するコストである。PEMおよびDMFC燃料電池の場合、いずれも電極触媒として白金を使用する。白金などの貴金属は、陰極における遅い酸素還元反応(ORR)に対して触媒作用を発揮する必要がある。この制限を取り除く主要な方法の一つは、貴金属系電極触媒において白金の利用度を増すことである。もう一つの実行可能な方法は、コストが低いが、活性度が十分にある触媒を多量に使用することである。いくつかのクラスの非白金系電極触媒が、十分な酸素還元活性をもつことが確認され、商業的な燃料電池における潜在的な電極触媒として考えられている。
【0006】
一般に、現在公知な非白金電極触媒は高表面積カーボンブラックに担持されている。この担持は、触媒層の分散を強め、活性表面積を広げ、そして伝導度を高くするために行っている。合成法としては、通常担持担体に前駆体分子を析出し、担持された前駆体(precursor)を熱分解する方法を採用している。
【0007】
M−N−C触媒は、燃料電池膜電極体(MEA)、燃料電池膜電極積層体および燃料電池システムにおける電気化学酸素還元にとってきわめて有望であることがわかっている。材料から見て臨界的なファクターには、金属粒子、共役炭素−窒素−酸素−金属網、および窒素結合炭素の存在がある。金属相としては金属相、酸化物相、炭化物相、窒化物相、およびこれらの混合相がある。N/C/M網およびN/C網の化学的状態および結合は性能に影響し、例えば全体の窒素含有率が高くなると、ORR性能が向上する。ただし、これらシステムにはいくつかの無視できない欠陥がある。例示すると、酸性環境における低い安定性、酸環境およびアルカリ環境における低い耐久性、窒素前駆体の高コスト、および白金と比較した場合ORRにおいて活性が低いことなどである。酸中における低い安定性の問題は、炭素−窒素網からの金属の漏出につながる。酸溶液およびアルカリ溶液における低い耐久性は、これら環境においてかなりの量のH
2O
2が発生することによって説明できる。なお、H
2O
2は金属および炭素−窒素網の両者に対して腐食性である。この低い活性の理由としては、金属の低い担持率が考えられ、この結果として、外部炭素源(Vulcan、KetjenBlackなどの高面積炭素)の使用によってこのような触媒の活性サイトの濃度が低くなると考えられる。
【0008】
上記のような多数の問題を解決できる非担持M−N−C触媒
(unsupported M-N-C catalysts)を合成する従来の熱分解系方法の場合、シリカなどの犠牲的な担体に相当な触媒活性をもつことが知られているポルフィリンを含有する窒素および炭素をテンプレート化し、このテンプレート化担体を熱分解し、そしてエッチングなどによってこの担体を取り出す。この点に関しては、2010年3月15日に発行されたUSP7,678,728を参照。なお、この公報の内容は本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って製造したFe−M−C触媒のX線回折図である。
【
図2】本発明方法を使用して製造したFe−AAPyr触媒のSEM像である。
【
図3】本発明方法を使用して製造したFe−AAPyr触媒の酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラム(electro−voltamogram)である。
【
図4】熱処理温度を変更して製造したFe−AAPyr触媒の酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図5】本発明方法で製造した各種Fe−AAPyr触媒についてORRに関与した電子の数に関するグラフである。
【
図6】本発明方法で製造した各種Fe−AAPyr触媒に関して過酸化水素収率を示すグラフである。
【
図7】本発明方法で製造したFe−AAPyr触媒についてORRに関与した電子の数に関するグラフである。
【
図8】本発明方法で製造したFe−AAPyr触媒に関して過酸化水素収率を示すグラフである。
【
図9】多モード孔サイズ分布をもつ触媒を製造する本発明方法を示す概略図である。
【
図10A】Fe−AAPyrおよびHS5シリカから誘導した単一モード触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図10B】Fe−AAPyrおよびHS5シリカから誘導した単一モード触媒の、スケールバーを300nmに設定したSEM像である。
【
図11A】Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した2つのモードからなる触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図11B】Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した2つのモードからなる触媒の、スケールバーを300nmに設定したSEM像である。
【
図12A】Fe−AAPyrおよびLM130シリカから誘導した2つのモードからなる触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図12B】Fe−AAPyrおよびLM130シリカから誘導した2つのモードからなる触媒の、スケールバーを300nmに設定したSEM像である。
【
図13A】Fe−AAPyrおよびA90シリカから誘導した触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図13B】Fe−AAPyrおよびA90シリカから誘導した触媒の、スケールバーを300nmに設定したSEM像である。
【
図14】Fe−AAPyrおよびL90シリカ/A90シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。
【
図15A】Fe−AAPyrおよびL90シリカ/EH5シリカ混合体から誘導した3つのモードからなる触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図15B】Fe−AAPyrおよびL90シリカ/EH5シリカ混合体から誘導した3つのモードからなる触媒の、スケールバーを400nmに設定したSEM像である。
【
図15C】Fe−AAPyrおよびL90シリカ/EH5シリカ混合体から誘導した3つのモードからなる触媒の、スケールバーを300nmに設定したSEM像である。
【
図16】Fe−AAPyrおよびL90シリカ/M5シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図17】Fe−AAPyrおよびL90シリカ/LM130シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図18】Fe−AAPyrおよびL90シリカ/A200シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。
【
図19】Fe−AAPyおよびL90シリカ/A380シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。
【
図20A】Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した球状触媒のSEM像である。
【
図20B】Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した球状触媒のもう一つのSEM像である。
【
図20C】Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した球状触媒のさらに別なSEM像である。
【
図20D】Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した球状触媒のさらに別なSEM像である。
【
図21】Fe−AAPyrとHS5、L90シリカおよびL90シリカ+EH5シリカとから製造した触媒のRDEデータに関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタノグラムである。
【
図22】Fe−AAPyrとL90シリカ、LM130シリカおよびL90シリカ+LM130シリカとから製造した触媒のRDEデータに関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図23】Fe−AAPyrとL90シリカ、L90シリカ+A90シリカおよびA90シリカとから製造した触媒のRDEデータに関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図24】Fe−AAPyrとL90シリカおよびL90シリカ+EH5シリカとから製造した触媒のRDEデータに関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図25】Fe−AAPyrとL90シリカ、M5シリカおよびL90シリカ+M5シリカとから製造した触媒のRDEデータに関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図26】本発明方法を使用して製造したFe
3Co−AAPyr触媒のSEM像である。
【
図27】本発明方法を使用して製造したFeCo−AAPyr触媒のSEM像である。
【
図28】本発明方法を使用して製造したFeCo
3−AAPyr触媒のSEM像である。
【
図29A】本発明方法を使用して製造したFeCu
3−AAPyrバイメタル触媒のSEM像である。
【
図29B】本発明方法を使用して製造したFeCu
3−AAPyrバイメタル触媒のもう一つのSEM像である。
【
図30A】本発明方法を使用して製造したFeMn
3−AAPyrバイメタル触媒のSEM像である。
【
図30B】本発明方法を使用して製造したFeMn
3−AAPyrバイメタル触媒のもう一つのSEM像である。
【
図31A】本発明方法を使用して製造したFeNi
3−AAPyrバイメタル触媒のSEM像である。
【
図31B】本発明方法を使用して製造したFeNi
3−AAPyrバイメタル触媒のもう一つのSEM像である。
【
図32A】本発明方法を使用して製造したFeCoCu−AAPyrトリメタル触媒のSEM像である。
【
図32B】本発明方法を使用して製造したFeCoCu−AAPyrトリメタル触媒のもう一つのSEM像である。
【
図33A】本発明方法を使用して製造したFeCoMn−AAPyrトリメタル触媒のSEM像である。
【
図33B】本発明方法を使用して製造したFeCoMn−AAPyrトリメタル触媒のもう一つのSEM像である。
【
図34A】本発明方法を使用して製造したFeCuMn−AAPyrトリメタル触媒のSEM像である。
【
図34B】本発明方法を使用して製造したFeCuMn−AAPyrトリメタル触媒のもう一つのSEM像である。
【
図35】Co−AAPyrに匹敵するFe
xCo
y−AAPyrバイメタル触媒に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図36】Ni−AAPyrに匹敵するFe
xNi
y−AAPyrバイメタル触媒に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図37】Cu−AAPyrに匹敵するFe
xCu
y−AAPyrバイメタル触媒に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図38】Cr−AAPyrに匹敵するFe
xCr
y−AAPyrバイメタル触媒に関する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図39】Mn−AAPyrに匹敵するFe
xMn
y−AAPyrバイメタル触媒に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図40】FeM
IM
II−AAPyrトリメタル触媒に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【
図41】本発明に従ってM−N−C触媒を製造するバッチ方法を示す概略図である。
【
図42A】低表面積シリカ上に製造した多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを10μmに設定したSEM像である。
【
図42B】低表面積シリカ上に製造した多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを2μmに設定したSEM像である。
【
図42C】低表面積シリカ上に製造した多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを1μmに設定したSEM像である。
【
図42D】低表面積シリカ上に製造した多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図43A】高表面積シリカ上に製造した第1バッチの多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを5μmに設定したSEM像である。
【
図43B】高表面積シリカ上に製造した第1バッチの多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを2μmに設定したSEM像である。
【
図43C】高表面積シリカ上に製造した第1バッチの多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを500nmに設定したSEM像である。
【
図44A】高表面積シリカ上に製造した第2バッチの多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを3μmに設定したSEM像である。
【
図44B】高表面積シリカ上に製造した第2バッチの多孔度の高い球状Fe−N−C触媒の、スケールバーを2μmに設定したSEM像である。
【
図45】O
2で飽和した0.5MのH
2SO
4環境で本発明方法によって製造した球状F−N−C触媒に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである(触媒担持率:600μgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一つの実施態様は、新規な触媒およびこの触媒の製造方法に関する。既述のM−N−C触媒の形成方法の場合、窒素/炭素源は、例えば初期触媒活性をもつポルフィリン前駆体である。この初期触媒活性は、金属粒子との錯体化によって向上する。本発明は、初期触媒活性をもたない非ポルフィリン前駆体を上記の窒素/炭素源として使用することによってM−N−C触媒を合成できるという予期されていなかった驚くべき発見に基づくものである。好適な非触媒性非ポルフィリン前駆体の実例として、4−アミノアンチピリン(4−aminoantipirine)、フェニレンジアミン、ヒドロキシスクシンイミド、エタノールアミンなどの鉄錯体を形成する低分子量前駆体を挙げることができるが、本発明は必ずしもこれに制限されない。本発明の一部の実施態様の場合、非触媒性前駆体は、鉄と錯体を形成できる能力によって選択することができる。また、別な実施態様の場合、非触媒性前駆体も、初期触媒活性をもつ前駆体における活性サイトと同じか同様な部位を含有し、その結晶構造が高温熱処理によって安定化できるため、利用することが可能である。
【0013】
一つの実施態様の場合、本発明のM−N−C触媒は硝酸鉄としての鉄前駆体、および4−アミノアンチピリン(AAPyr)としてのC−N前駆体をフュームドシリカの犠牲的な担体の表面に湿式含侵処理することによって製造することができる。また、他の好適な鉄前駆体を挙げると、硫酸鉄、酢酸鉄、塩化鉄などがあるが、本発明はこれらに制限されない。
【0014】
なお、鉄の代わりにCe、Cr、Cu、Mo、Ni、Ru、Ta、Ti、V、W、Zrなどの他の遷移金属を使用してもよく、この場合これら金属の前駆体を使用するだけでよい。遷移金属前駆体の実例を挙げると、制限するわけではないが、硝酸セリウム、硝酸クロム、硝酸銅、モリブデン酸アンモニウム、硝酸ニッケル、塩化ルテニウム、タンタルイソプロポキシド、チタンエトキシド、硫酸バナジウム、タングステン酸アンモニウム(ammonium tunstanate)、硝酸ジルコニウムがある。さらに、一部の実施態様の場合、そして以下に詳細に説明するように、本発明の方法には複数の金属からなる触媒を製造するために、2つかそれ以上の金属の前駆体を利用することが可能である。
【0015】
好適な犠牲的な担体としては、制限するものではないが、シリカ類、ゼオライト類、アルミナ類などを挙げることができる。担体形状としては、球状でもよく、粒子状でもよく、あるいは他の二次元、三次元の規則的な、不規則的な、あるいは不定形の形状でもよい。球状体、粒子体、あるいは他の形状体は単分散系でもよく、あるいは不規則サイズ系でもよい。球状体、粒子状体、あるいは他の形状体は多孔質でもよく、孔サイズおよび孔形状は同一でもよく、あるいは異なっていてもよい。
【0016】
なお、以下詳細に説明するように、シリカ粒子のサイズおよび形状は
電極触媒材料(electrocatalyst material)内に存在する空孔の目的とする形状およびサイズに応じて選択することができる。従って、シリカ粒子のサイズおよび形状を具体的に選択することによって、サイズおよび形状が予測可能な空孔をもつ
電極触媒を製造できる。例えば、シリカ粒子が球状体の場合には、
電極触媒は複数の球状空孔をもつことになる。当業者ならば、複数の白金‐ルテニウム合金球状体からなる
電極触媒Pt−Ruブラックに知悉しているはずである。シリカ球状体を使用して上記方法によって形成した
電極触媒はPt−Ruブラックの反転像のように見える。即ち、Pt−Ruブラック内に空孔として存在する空間が金属
電極触媒によって充填され、Pt−Ruブラック内に金属
電極触媒として存在する空間が空孔である。
【0017】
上記のように、一部の実施態様の場合、任意の直径のシリカ球状体を使用することができる。一部の好適な実施態様では、長さが1nm〜100nmであることを特徴とするシリカ粒子、より好ましくは長さが100nm〜1,000nmであることを特徴とするシリカ粒子を使用することができ、また他の好適な実施例では、長さが1mm〜10mmであることを特徴とするシリカ粒子を使用することができる。さらに、テンプレート合成方法では、メソ多孔質シリカも使用できる。この場合、テンプレート化時に、シリカのメソ孔を層間に挿入するため、多孔度が2〜20nmの範囲にある自立式
電極触媒(self-supported electrocatalysts:自己担持電極触媒)が得られる。一つの具体的な実施態様では、シリカテンプレートはCabosil無定形フュームドシリカ(325m
2/g)である。既に説明したように、球状体は
電極触媒を形成するためのテンプレートとして作用するため、平均径が20nmのシリカ粒子を使用する実施態様では、
電極触媒中の球形空孔は径が例えば20nmになる。当業者ならば、市場から入手できる各種のシリカ粒子について知悉しているはずであり、このような粒子も使用可能である。あるいは、シリカ粒子を形成する公知方法を用いて、目的の形状および/またはサイズの粒子を得ることも可能である。
【0018】
犠牲的な担体上にC−Nおよび金属前駆体を析出処理および/または含侵処理後、N
2、ArまたはHeなどの不活性雰囲気中か、あるいはNH
3またはアセトニトリルなどの反応性雰囲気中において触媒を熱処理する。C−N前駆体が窒素リッチの場合には、不活性雰囲気を使用する。この不活性雰囲気によってFe(または他の金属)N4中心をもつ多数の活性サイトを形成できるからである。ただし、C−N前駆体が炭素リッチで窒素欠乏の場合には、窒素リッチ雰囲気を使用することが望ましい場合もある。窒素リッチ雰囲気によってFe(または他の金属)N4中心を形成できるからである。
【0019】
一つの実施態様の場合、熱処理の最適温度は500〜1,100℃である。また一部の実施態様の場合、800〜900℃の熱処理が好ましい。というのは、この温度はシリカ材料を熱分解するほど高いが、活性サイトを破壊するほど高くないからである。
【0020】
熱処理後、適当な手段を使用して、犠牲的な担体を取り除く。例えば、化学エッチングによってこの犠牲的な担体を除去できる。好適なエッチャントの例はNaOH、KOH、HFなどである。一部の実施態様の場合、KOHを使用することが望ましい。というのは、触媒中にすべての金属および金属酸化物を保存できるからであり、またこれら種に触媒活性がある場合、KOHを使用すると、現実に触媒活性が向上するからである。あるいは、一部の実施態様ではHFが好ましい場合がある。というのは、HFは攻撃性が非常に強く、触媒の表面から一部の有毒種を除去するためにこれを使用できるからである。従って、当業者ならば、形成すべき具体的な触媒作用物質の具体的な必要条件に基づいて目的のエッチャントを選択できるはずである。
【0021】
一つの明確で具体的な実施態様に従って、フュームドシリカ(Cab−O−Sil
TMEH−5、表面積:〜400m
2g
−1)の表面に鉄/アミノアンチピリン前駆体を湿式含侵処理することによってFe−AAPyr触媒を製造した。まず、ソノバス(sonobath)を使用して水に1gのシリカを分散処理し、シリカに1gのAAPyrの水溶液を添加し、20分間音波処理した。次にSiO
2−AAPyr溶液に1gの硝酸鉄(Fe(NO
3)
3●9H
2O、Sigma−Aldrich)の水溶液を添加し、ソノバス内で8時間音波処理した。音波処理後、T=85℃において一夜シリカ/Fe−AAPyrの粘稠溶液を乾燥した。メノウ乳鉢で固形物を微粉末に粉砕してから、熱処理(HT)を行った。HT条件は下記のように設定した。
UHPN
2雰囲気流量:100ccmin
−1
HT温度:800℃
HT昇温率:10℃min
−1
HT時間:1時間
【0022】
図1および
図2に、本発明方法で製造した所定のM−N−C触媒の構造データおよび形態データを示す。
【0023】
図1は、金属源としての硝酸鉄および窒素/炭素源としてのAAPyrから製造したFe−M−C触媒が主に炭素マトリックスに埋設された鉄のナノ粒子(2nm未満)からなることを示すX線回折図である。
【0024】
図2は本発明方法によって製造したFe−AAPyr触媒のSEM像であり、この触媒が、孔径が約50〜70nmの高度に成長した多孔質構造をもつことを示す。この多孔性によって、触媒活性が向上し、酸素還元に資すると考えられる。
【0025】
図3および
図4は、酸素還元試験の結果を示し、本発明触媒の有用性を証明するものである。
【0026】
図3は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4において異なる量のアミノアンチピリン前駆体を使用して製造したFe−AAPyr触媒(触媒担持量:160mgcm
−2、1,600RPM、走査速度:20mVs
−1)の酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0027】
図4は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4において異なる熱処理温度を適用して製造したFe−AAPyr(触媒担持量:160mgcm
−2、1,600RPM、走査速度:20mVs
−1)の酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0028】
反応試験では、コストの低いヘテロ原子アミン前駆体および本発明方法を使用して製造したM−N−C触媒はアルカリ媒体および酸媒体の両者において高い活性を示し、従って中性pHにおいても活性を示すはずであることを証明するものである。
【0029】
図5〜8は、本発明に従って製造した触媒の機構的研究を示し、かつH
2O
2収率が低いことを示し、従ってより効率的な4電子機構によって進行する反応経路を示す図である。
【0030】
図5は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4において異なる量のアミノアンチピリン前駆体を使用して製造したFe−AAPyr触媒(触媒担持量:160mgcm
−2、1,600RPM、20mVs
−1)についてORRに関与した電子の数に関するグラフである。
【0031】
図6は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4において異なる量のアミノアンチピリン前駆体を使用して製造したFe−AAPyr触媒(触媒担持量:160mgcm
−2、1,600RPM、20mVs
−1)に関して過酸化水素収率を示すグラフである。
【0032】
図7は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4において異なる熱処理温度を適用して製造したFe−AAPyr触媒(触媒担持量:160mgcm
−2、1,600RPM、20mVs
−1)についてORRに関与した電子の数に関するグラフである。
【0033】
図8は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4において異なる熱処理温度を適用して製造したFe−AAPyr触媒(触媒担持量:160mgcm
−2、1,600RPM、20mVs
−1)に関して過酸化水素収率を示すグラフである。
【0034】
上述したように、酸素還元の機構は、好ましい4電子経路によって酸素を水に直接還元することを示す。従って、腐食性過酸化物の形成がなく、得られた触媒の安定性および耐久性が向上する。
【0035】
図3、
図5および
図6から理解できるように、得られた触媒の特性については、本発明の製造方法に使用する窒素含有前駆体の量を選択することによって変更できる。一般的には、触媒の窒素濃度が高くなればなるほど、ORRにおける活性が高くなる。さらに、
図4、
図7および
図8から理解できるように、触媒の特性は熱処理温度を変えることによっても変更できる。なお、遷移金属とC−N前駆体との組み合わせに応じて熱処理温度を最適化することが望ましい。というのは、温度が低すぎると、活性サイトが生成せず、また温度が高すぎると、触媒物質が分解するからである。
【0036】
既に説明したように、本発明方法は、Co、Ni、Cu、Cr、Mnなどの非鉄系金属から触媒を製造するために使用できる。
【0037】
具体的で明確な上に非制限的な実施例として、フュームドシリカ(Cab−O−Sil
TMEH−5、表面積:〜400m
2g
−1)の表面に鉄/アミノアンチピリン前駆体を湿式含侵処理することによってFe−AAPyr触媒を製造した。まず、ソノバスを使用して水に1gのシリカを分散処理し、シリカに1gのAAPyrの水溶液を添加し、20分間音波処理した。次にSiO
2−AAPyr溶液に1gの硝酸鉄(Fe(NO
3)
3●9H
2O、Sigma−Aldrich)の水溶液を添加し、ソノバス内で8時間音波処理した。音波処理後、T=85℃において一夜シリカ/Fe−AAPyrの粘稠溶液を乾燥した。メノウ乳鉢で固形物を微粉末に粉砕してから、熱処理(HT)を行った。HT条件は下記のように設定した。
UHPN
2雰囲気流量:100ccmin
−1
HT温度:800℃
HT昇温率:10℃min
−1
HT時間:1時間
【0038】
さらに別な非制限的な実施例として、フュームドシリカ(Cab−O−Sil
TMEH−5、表面積:〜400m
2g
−1)の表面に鉄/マンガン/アミノアンチピリン前駆体を湿式含侵処理することによってFe−Mn−AAPyr触媒を製造した。まず、ソノバスを使用して水に3gのシリカを分散処理し、次に1.98gのAAPyrの水溶液をシリカに添加し、20分間音波処理した。次に、SiO
2−AAPyr溶液に1.4gの硝酸鉄(Fe(NO
3)
3●9H
2O、Sigma−Aldrich)および3.2gの硝酸マンガンの水溶液を添加し、ソノバス内で8時間音波処理した。音波処理後、T=85℃において一夜シリカ/Fe−Mn−AAPyrの粘稠溶液を乾燥した。メノウ乳鉢で固形物を微粉末に粉砕してから、熱処理(HT)を行った。HT条件は下記のように設定した。
UHPN
2雰囲気流量:100ccmin
−1
HT温度:800℃
HT昇温率:10℃min
−1
HT時間:1時間
【0039】
さらに別な非制限的な実施例として、フュームドシリカ(Cab−O−Sil
TMEH−5、表面積:〜400m
2g
−1)の表面に鉄/アミノアンチピリン前駆体を湿式含侵処理することによってFe−Cr−AAPyr触媒を製造した。まず、ソノバスを使用して水に2gのシリカを分散処理し、3.5gのAAPyrの水溶液をシリカに添加し、20分間音波処理した。次にSiO
2−AAPyr溶液に1gの硝酸鉄(Fe(NO
3)
3●9H
2O、Sigma−Aldrich)および1.25gの硝酸クロムの水溶液を添加し、ソノバス内で8時間音波処理した。音波処理後、T=85℃において一夜シリカ/Fe−AAPyrの粘稠溶液を乾燥した。メノウ乳鉢で固形物を微粉末に粉砕してから、熱処理(HT)を行った。HT条件は下記のように設定した。
UHPN
2雰囲気流量:100ccmin
−1
HT温度:850℃
HT昇温率:10℃min
−1
HT時間:4時間
【0040】
一つの実施態様の場合、本発明のM−N−C触媒は、ヘテロ原子および担体の電荷移動を容易にする方法で、(炭素系および非炭素系両者の)導電性分散担体に担持できる。一部の実施態様の場合、導電性Mo酸化物またはW酸化物などの非炭素系担体を使用すると、過酸化水素の発生量を抑制でき、酸媒体およびアルカリ媒体中において触媒の耐久性および安定性を改良できる。
【0041】
既述のように、異なるサイズおよび異なる形状の犠牲的担体を併用して、異なる形態の触媒を製造することができる。例えば、一部の実施態様の場合、多モードの多孔性をもつ触媒、即ち2つかそれ以上の異なる集団の孔からなり、各集団が、平均径が他の集団から区別できる孔からなる触媒を製造することが望ましい。例えば、第1集団の孔がほぼ10nmの平均径をもち、第2集団の孔がほぼ50nmの平均径をもち、そして第3集団の孔が150〜200nmの平均径をもつ触媒の場合、多モード孔サイズ分布をもつものと考えられる。
【0042】
次に
図9について説明すると、一つの実施態様の場合、このような多モード孔サイズ分布は上記前駆体を異なる径をもつ球状体(あるいはこれ以外の成形粒子)から形成した犠牲的な担体上にテンプレート化することによって実現することができる。図示のように、径がd1の大きな球状体10と径がd2の小さな球状体12を混合すると、前駆体物質が担持され、熱分解した犠牲的な担体が形成する。この担体を除去すると、得られた触媒16は、異なる粒子径に対応する異なるサイズの孔18、20をもつことになる。
【0043】
なお、得られた触媒物質の形態全体を完全に制御するためには、既知の形状およびサイズをもつ犠牲的な担体に前駆体をテンプレート化することが望ましい。この犠牲的な担体をシリカ粒子から形成した一つの具体的な実施態様の場合、異なる形状および異なるサイズの犠牲的な担体は、異なる種類のシリカを使用して異なるサイズのシリカ粒子を信頼性よくかつ再現性よく形成することによって製造することができる。この場合得られる触媒は、多モード孔分布をもつことになるが、これら孔の具体的なサイズおよび形状はいずれも既知である。
【0044】
一つの具体的で明確な実施態様の場合、EH5シリカおよびLM130シリカに上記のようにして形成した触媒を、異なるフュームドシリカおよびこれらの混合体(Cab−O−Sil
TM、表面積:90〜400m
2g
−1)の表面に鉄/アミノアンチピリン前駆体を湿式含侵処理することによって製造した。まず、ソノバスを使用して水に1gのシリカEH5および1gのシリカLM130を分散処理し、次に1gのAAPyrの水溶液をシリカに添加し、20分間音波処理した。次に、SiO
2−AAPyr溶液に1gの硝酸鉄(Fe(NO
3)
3●9H
2O、Sigma−Aldrich)の水溶液を添加し、ソノバス内で8時間音波処理した。音波処理後、T=85℃において一夜シリカ/Fe−AAPyrの粘稠溶液を乾燥した。メノウ乳鉢で固形物を微粉末に粉砕してから、熱処理(HT)を行った。HT条件は下記のように設定した。
UHPN
2雰囲気流量:100ccmin
−1
HT温度:800℃
HT昇温率:10℃min
−1
HT時間:1時間
【0045】
もう一つの具体的で明確な実施態様の場合、M5DシリカおよびA90シリカに上記のようにして形成した触媒を、異なるフュームドシリカおよびこれらの混合体(Cab−O−Sil
TM、表面積:90〜400m
2g
−1)の表面に鉄/アミノアンチピリン前駆体を湿式含侵処理することによって製造した。まず、ソノバスを使用して水に2gのシリカM5Dおよび0.25gのシリカA90を分散処理し、次に1.3gのAAPyrの水溶液をシリカに添加し、20分間音波処理した。次に、SiO
2−AAPyr溶液に4gの硝酸鉄(Fe(NO
3)
3●9H
2O、Sigma−Aldrich)の水溶液を添加し、ソノバス内で8時間音波処理した。音波処理後、T=85℃において一夜シリカ/Fe−AAPyrの粘稠溶液を乾燥した。メノウ乳鉢で固形物を微粉末に粉砕してから、熱処理(HT)を行った。HT条件は下記のように設定した。
UHPN
2雰囲気流量:100ccmin
−1
HT温度:800℃
HT昇温率:10℃min
−1
HT時間:1時間
【0046】
図10〜20に、多モード多孔度をもち、本発明に従って製造した各種のM−N−C触媒の形態データを示す。
【0047】
図10は、Fe−AAPyrおよびHS5シリカから誘導した単一モード触媒のSEM像である。図からわかるように、孔サイズは40〜60nmの範囲にある。
【0048】
図11は、Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は40〜60nmであり、一方第2の孔の径は<10nmである。
【0049】
図12は、Fe−AAPyrおよびLM130シリカから誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は〜100nmであり、一方第2の孔の径は〜30nmである。
【0050】
図13は、Fe−AAPyrおよびA90シリカから誘導した触媒のSEM像である。図からわかるように、孔の径は〜30nmであり、一方で径が40〜60nmのナノチャネルもある。
【0051】
図14は、Fe−AAPyrおよびL90/A90シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は〜150nmであり、一方第2の孔の径は〜20nmである。
【0052】
図15は、Fe−AAPyrおよびL90/EH5シリカ混合体から誘導した3つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は〜150〜200nmであり、第2の孔の径は〜40−60nmであり、そして第3の孔の径は約20nmである。
【0053】
図16は、Fe−AAPyrおよびL90/M5シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は〜100nmであり、一方第2の孔の径は〜25nmである。
【0054】
図17は、Fe−AAPyrおよびL90/LM130シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は〜150−200nmであり、一方第2の孔の径は〜30nmである。
【0055】
図18は、Fe−AAPyrおよびL90/A200シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は〜100−200nmであり、一方第2の孔の径は〜50nmである。
【0056】
図19は、Fe−AAPyおよびL90/A380シリカ混合体から誘導した2つのモードからなる触媒のSEM像である。図からわかるように、第1の孔の径は〜100nmであり、一方第2の孔の径は<20nmである。
【0057】
図20は、Fe−AAPyrおよびM5シリカから誘導した球状触媒のSEM像である。図からわかるように、触媒を構成する球状体は1〜3μmであり、孔径は約50〜70nmである。
【0058】
図21〜25に、
図10〜20の多モード触媒の選択に関する酸素還元試験の結果を示すが、これら図は本発明の触媒物質の有用性を証明するものである。
【0059】
図21は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてFe−AAPyrとHS5シリカ、L90シリカおよびL90シリカ+EH5シリカとから製造した触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)のRDEデータに関する酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0060】
図22は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてFe−AAPyrとL90シリカ、LM130シリカおよびL90シリカ+LM130シリカとから製造した触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)のRDEデータに関する酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0061】
図23は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてFe−AAPyrとL90シリカ、L90シリカ+A90シリカおよびA90シリカとから製造した触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)のRDEデータに関する酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0062】
図24は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてFe−AAPyrとL90シリカおよびL90シリカ+EH5シリカとから製造した触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)のRDEデータに関する酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0063】
図25は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてFe−AAPyrとL90シリカ、M5シリカおよびL90シリカ+M5シリカとから製造した触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)のRDEデータに関する酸素還元を説明する回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0064】
なお、一部の用途では、単一の金属からなる触媒は安定性や活性が十分でないため、従来の白金系や白金合金系の触媒の代替物とはならない。従って、既述のように、本発明方法の一部の実施態様では、複数の金属の前駆体を利用して、目的の安定性および/または活性を実現する。
【0065】
いくつかの具体的で明確な実施態様に従って、フュームドシリカ(Cab−O−Sil
TMEH−5、表面積:〜400m
2g
−1)の表面に鉄および第2の遷移金属の前駆体、あるいは鉄、第2の遷移金属および第3の遷移金属(遷移金属=Co、Ni、Cu、Cr、Mn)およびアミノアンチピリン前駆体を湿式含侵処理することによってFe−AAPyr触媒を製造した。まず、ソノバスを使用して水に1gのシリカを分散処理し、1gのAAPyrの水溶液をシリカに添加し、20分間音波処理した。次にSiO
2−AAPyr溶液に1gの硝酸鉄(Fe(NO
3)
3●9H
2O、Sigma−Aldrich)および1gの硝酸マンガンの水溶液を添加し、ソノバス内で8時間音波処理した。音波処理後、T=85℃において一夜シリカ/Fe−Mn−AAPyrの粘稠溶液を乾燥した。メノウ乳鉢で固形物を微粉末に粉砕してから、熱処理(HT)を行った。HT条件は下記のように設定した。
UHPN
2雰囲気流量:100ccmin
−1
HT温度:800℃
HT昇温率:10℃min
−1
HT時間:1時間
【0066】
図26〜34に、上記方法によって製造した複数の金属からなる所定のM−N−C触媒の構造データおよび形態データを示す。
【0067】
図26〜28に、本発明方法で製造した3つの異なる触媒Fe
3Co−AAPyr、FeCo−AAPyrおよびFeCo
3−AAPyrをそれぞれ示す。これら触媒は孔径が約100nmの高度に成長した多孔構造をもっている。
【0068】
図29Aおよび
図29Bは、バイメタルFeCu
3−AAPyr触媒(FeCu
3-AAPyr bi-metallic catalyst)のSEM像であり、この触媒が、孔径が約70nmの高度に成長した多孔構造をもっていることを示す。
【0069】
図30Aおよび
図30Bは、バイメタルFeMn
3−AAPyr触媒のSEM像であり、この触媒が、孔径が約50nmの高度に成長した多孔構造をもっていることを示す。
【0070】
図31Aおよび
図31Bは、バイメタルFeNi
3−AAPyr触媒のSEM像であり、この触媒が、孔径が約200nmの高度に成長した多孔構造をもっていることを示す。
【0071】
図32Aおよび
図32Bは、トリメタルFeCoCu−AAPyr触媒(FeCoCu-AAPyr tri-metallic catalyst)のSEM像であり、この触媒が、孔径が約150nmの高度に成長した多孔構造をもっていることを示す。
【0072】
図33Aおよび
図33Bは、トリメタルFeCoMn−AAPyr触媒のSEM像であり、この触媒が、孔径が約100nmの高度に成長した多孔構造をもっていることを示す。
【0073】
図34Aおよび
図34Bは、トリメタルFeCuMn−AAPyr触媒のSEM像であり、この触媒が、孔径が約100nmの高度に成長した多孔構造をもっていることを示す。
【0074】
これら複数の金属からなる本発明触媒の有用性は、
図35〜40に示す酸素還元試験の結果によって証明されている。
【0075】
図35は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてCo−AAPyrに匹敵するFe
xCo
y−AAPyrバイメタル触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0076】
図36は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてNi−AAPyrに匹敵するFe
xNi
y−AAPyrバイメタル触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0077】
図37は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてCu−AAPyrに匹敵するFe
xCu
y−AAPyrバイメタル触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0078】
図38は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてCr−AAPyrに匹敵するFe
xCr
y−AAPyrバイメタル触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0079】
図39は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてMn−AAPyrに匹敵するFe
xMn
y−AAPyrバイメタル触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0080】
図40は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4においてFeM
IM
II−AAPyrトリメタル触媒(触媒担持量:600mgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)に関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0081】
これら反応試験が証明するように、本発明方法を使用して低コストのC−N前駆体から製造した多金属M−N−C触媒は、単金属触媒よりも活性がかなり高い。このような高い活性をもつため、これら電極触媒は燃料電池における陰極触媒として好適に使用できる。即ち、これら電極触媒はアルカリ環境、中性環境および酸環境のORRにおいて高い活性を示す。
【0082】
一部の実施態様の場合、本発明の触媒を例えばバッチ法によって大量に製造することが望ましい。即ち、本発明は本発明触媒を大規模製造する方法を提供するものでもある。一つの実施態様による本発明方法では、犠牲的な担持方法をスプレー式熱分解と併用して、自立式触媒
(self- supported catalysts:自己坦持触媒)を製造する。この方法の場合、スプレー式熱分解は犠牲的な担持方法をバッチ式で行う連続方法である。
図41から理解できるように、上記の前駆体物質をシリカ担体と混合し、噴霧し、そして管炉で乾燥する。得られた粉末を次にフィルターによって回収する。次に回収した粉末を、触媒の用途に応じて適宜熱処理する。最後に、犠牲的な担体を例えばHFまたはKOH浸出方法によって取り除く。
【0083】
なお、上記の大規模製造方法は広い範囲の各種前駆体および触媒物質に好適に使用できるため、必ずしも本発明の触媒に制限されない。
図42〜44に、上記方法によって製造した所定の自立式金属−窒素−炭素(M−N−C)触媒
(self- supported metal-nitrogen-carbon (M-N-C) catalyst:自己坦持金属−窒素−炭素触媒)に関する形態データを示す。
【0084】
図42A〜Dは、低表面積シリカ上に製造した多孔度の高い球状Fe−N−C触媒のSEM像である。
【0085】
図43A〜Cは、高表面積シリカ上に製造した多孔度の高い球状Fe−N−C触媒のSEM像である(バッチ1)。
【0086】
図44は、高表面積シリカ上に製造した多孔度の高い球状Fe−N−C触媒のSEM像である(バッチ2)。
【0087】
図45は、O
2で飽和処理した0.5MのH
2SO
4において本発明方法によって製造した球状F−N−C触媒(触媒担持量:600μgcm
−2、1,200RPM、5mVs
−1)RDEデータに関する酸素還元を示す回転ディスク電極エレクトロボルタモグラムである。
【0088】
図から理解できるように、本発明触媒の形態特性はバッチ間においてバラツキが全く認められない。一つの実施例を
図5に示す酸素還元試験から証明されるように、これら触媒は有用である。
【0089】
本明細書に記載した具体的で明確な方法および組成(物)は好適な実施態様を示すもので、例示に過ぎず、本発明の範囲を制限する意図はない。当業者にとっては、本明細書に関する限り、他の目的、態様および実施態様も可能であり、いずれも特許請求の範囲によって定義される発明の精神に包含されるものである。また当業者にとっては、本発明の範囲および精神から逸脱しなくても本発明を種々変更できることは自明なはずである。また、本明細書において説明してきた本発明は、本明細書に具体的に明確に本質的なものとして説明していない要素または限定事項がなくても好適に実施可能である。本明細書において説明してきた方法およびプロセスは異なるステップ順でも実施することができ、本発明は必ずしも記載したステップ順に制限されない。特許請求の範囲を含む本明細書では、文脈が反対なことを示していない限り、単数表現は複数表現を含意する。即ち、触媒を単数で表現している場合も、複数を含意している。
【0090】
どんな状況であっても本願発明は、本明細書において具体的に説明してきた実施例、実施態様および方法に制限を受けず、またどんな状況であっても本願発明は、特許/商標庁の審査官またはその他の役人や雇員によってなされた意見に制限を受けないものである。ただし、このような意見が出願人の意見書において具体的に明確に、かつ留保条件なしに明記されている場合にはこの限りではない。
【0091】
本明細書で使用した用語および表現は説明を目的とし、制限を意図するものではなく、またこのような用語および表現を使用した場合、図に示し、かつ説明してきた特徴およびその一部の等価物を排除するものではないが、特許請求の範囲に記載した本発明の範囲内で各種の変更は可能である。即ち、本発明を好適な実施態様および適宜選択する特徴によって具体的に明確に示してきたが、本明細書に開示した技術思想の変更や改変は当業者にとって自明なものと考えられ、これらはいずれも特許請求の範囲に記載した本発明の範囲内にあるものと考えられる。
【0092】
以下に示し、および/または本明細書で言及した特許公報御および刊行物はいずれも本発明が関係する技術分野の当業者の技術レベルを示すもので、これら特許公報および刊行物については、個々に全体を援用するかのように、また全体を開示するかのように同じ範囲本明細書に援用するものである。出願人は、本明細書にこのような特許公報および刊行物からの引用および情報を物理的に援用できる権利をもつものである。