特許第6202630号(P6202630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202630
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20170914BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20170914BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01M10/0565
   H01M10/052
   H01M10/058
【請求項の数】1
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-534359(P2014-534359)
(86)(22)【出願日】2013年9月3日
(86)【国際出願番号】JP2013073638
(87)【国際公開番号】WO2014038535
(87)【国際公開日】20140313
【審査請求日】2016年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-198566(P2012-198566)
(32)【優先日】2012年9月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】金子 志奈子
(72)【発明者】
【氏名】河野 安孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆之
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/102453(WO,A1)
【文献】 特開2008−071624(JP,A)
【文献】 特開2008−287932(JP,A)
【文献】 特開2001−338690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00− 4/62
Japio−GPG/FX
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極及びセパレータを含む電極群を外装体に収容する工程(A)と、
ポリマーゲル電解質の前駆体であるプレゲル溶液を前記外装体内部へ注入し、該プレゲル溶液を前記電極群に含浸してプレ電池を形成する工程(B)と、
前記プレ電池を、前記プレゲル溶液のまま充電する工程(C)と、
前記プレ電池内の前記プレゲル溶液を前記電極群に再含浸する工程(D)と、
前記プレ電池を充電状態で加温下に保持し、前記プレゲル溶液をゲル化してポリマーゲル電解質を形成する工程(E)と、を含むリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーゲル電解質、ポリマーゲル電解質を用いたリチウムイオン電池およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、高いエネルギー密度を実現できることから携帯電話やノートパソコン等の小型電子機器の電源として広く使用されているが、近年、大型の電力貯蔵用電源や自動車用電源としても注目されている。
【0003】
リチウムイオン電池は、大型化するとエネルギー密度は膨大となり、より高い安全性が求められる。たとえば、大型の電力貯蔵用電源や自動車用電源においては特に高い安全性が求められる。そのため、セルやパッケージなどの構造設計、保護回路、電極材料、過充電防止機能を有する添加剤、セパレータのシャットダウン機能の強化などの安全対策が施され、二次電池の安全性が確保されている。
【0004】
リチウムイオン電池は、電解液溶媒として環状カーボネートや鎖状カーボネートなどの非プロトン性溶媒を用いている。このような非プロトン性溶媒は、誘電率が高くリチウムイオンのイオン伝導度は高いが、引火点が低い傾向がある。
【0005】
リチウムイオン電池の安全性をさらに向上させる手段の一つとして、電解液の流動性を低下させることが検討されている。例えば、架橋型ポリマーの架橋分子間に電解液を保持させたポリマーゲル電解質や、無機のゲル化材、例えばシリカゲルなどに電解液を保持させた無機系のゲル電解質が検討されている。
【0006】
架橋型ポリマーを用いたポリマーゲル電解質には、物理ゲルと呼ばれるものと化学ゲルと呼ばれるものがある。物理ゲルは、ポリマーシートを正極・負極間に配置し、電解液を注入し膨潤させることでゲルを形成し、電解液の流動性を抑制している。化学ゲルは、架橋型ポリマー前駆体および重合開始剤を電解液とともに電極間へ注液し、架橋反応を行ってゲルを形成し、このゲル内の架橋分子間に電解液を保持させることにより流動性を抑制している。
【0007】
一方、電極表面にSEI(Solid Electrolyte Interface:固体電解質界面)と呼ばれる保護膜を生成する物質を添加剤として使用する技術が知られている。この添加剤は、電解液溶媒として用いているカーボネート類よりも高い電位で還元分解してSEIを形成する。このSEIは、リチウムイオン透過性が高いが、電池の充放電効率、サイクル特性、安全性に大きな影響を及ぼす。また、SEIは、電極の炭素材料や酸化物材料の不可逆容量を低減できる。
【0008】
特許文献1には、ゲル電解質電池の製造において、重合開始剤に過酸化物を使用し、加熱により、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート系化合物の重合を行ってゲル電質(化学ゲル)を形成することが記載されている。
【0009】
特許文献2には、リチウムポリマー電池の製造において、開環重合性官能基を有する架橋性材料を電池容器内でカチオン重合により架橋して固体電解質(化学ゲル)を形成することが記載されている。
【0010】
特許文献3には、リチウムイオン二次電池の製造において、カチオン重合性を有するモノマーユニットを含むポリマーを電池容器内でカチオン重合により架橋して電解液をゲル化(化学ゲルを形成)することが記載されている。
【0011】
特許文献4には、電気化学電池の製造において、カチオン重合性の官能基を有する重合体を、充電および放電の実施によりカチオン重合してゲル電解質を形成することが記載されている。また、その際、SEIが形成されることが記載されている。
【0012】
特許文献5には、電解質塩を含む非水電解液により膨潤されたマトリックスポリマー(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)からなるゲル状電解質を備えるゲル状電解質電池が記載されている。
【0013】
特許文献6には、電解質、非水有機溶媒および疎水性無機酸化物微粒子(シリカ又はチタニア)からなるゲル状電解質を用いたリチウム電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−338690号公報
【特許文献2】特開2009−70605号公報
【特許文献3】特許第4822726号
【特許文献4】特表2011−519116号公報
【特許文献5】特開2002−216848号公報
【特許文献6】特開2001−229966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1〜4に記載のような化学ゲルを形成する技術では、SEI形成時に電極表面に架橋したポリマー層が存在し、また特許文献1の技術では過酸化物の反応残渣や未反応物が残存する。電極表面にポリマー層が存在していると、電極活物質界面での抵抗が上昇したり、電極表面のSEIが不均一となったりする。SEIが不均一であると、電解液成分のカーボネートの分解が電極表面(例えば電極活物質表面や導電助剤表面)で起きやすくなり、ガス発生量や抵抗が増大したり、サイクル特性やレート特性が低下したりする問題が生じる。また、過酸化物の反応残渣や未反応物が残存していると、充放電効率の低下やガス発生量の増加、サイクル特性の低下などの問題が生じる。
【0016】
特許文献4には、ゲル電解質の形成の際に形成されたSEIが充放電工程において重合体の重合性官能基の反応(架橋反応)を促進させることが記載されている。しかしながら、ポリマーゲル電解質を形成する際にSEIを形成するため、SEIが不均一となり、依然、ガス発生量や抵抗が増大したり、サイクル特性やレート特性が低下したりする問題があった。本文献には、形成されたポリマーゲル電解質のポリマー結晶性に関する記載はない。
【0017】
特許文献5や6に記載のような物理ゲルを用いる技術においても、SEI形成時に電極表面にポリマー層が存在していることでSEIが不均一となり、そのため、ガス発生量や抵抗が増大したり、サイクル特性やレート特性が低下したりする問題があった。代表的な物理ゲルのポリフッ化ビニリデン(PVDF)は結晶性のポリマーであることが知られており、PVDFを主剤として用いた物理ゲルを用いたリチウムイオン電池は良好なレート特性が得られないという課題があった。
【0018】
本発明者の検討の結果、電極活物質表面に結晶性の高いポリマーが存在することでレート特性が低下すること、さらにSEI形成前に電極活物質表面に結晶性の高いポリマーを形成してしまうと、その後に形成されるSEIが不均一になることで、サイクル特性も低下することが明らかとなり、これらの検討結果に基づいて鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0019】
そこで、本発明は、レート特性が良好な、またはレート特性とサイクル特性が良好な、ポリマーゲル電解質を用いたリチウムイオン電池およびその製造方法、並びにポリマーゲル電解質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一態様によれば、
リチウム塩と非プロトン性溶媒を少なくとも含有するポリマーゲル電解質において、電極活物質の表面に非晶質ポリマー層が形成されていることを特徴とするポリマーゲル電解質が提供される。
【0021】
本発明の他の態様によれば、正極、負極、セパレータおよび該ポリマーゲル電解質を含むリチウムイオン電池が提供される。
【0022】
本発明の他の態様によれば、
正極、負極及びセパレータを含む電極群を外装体に収容する工程(A)と、
ポリマーゲル電解質の前駆体であるプレゲル溶液を前記外装体内部へ注入し、該プレゲル溶液を前記電極群に含浸してプレ電池を形成する工程(B)と、
前記プレ電池を、前記プレゲル溶液のまま充電する工程(C)と、
前記プレ電池を充電状態で加温下に保持し、前記プレゲル溶液をゲル化してポリマーゲル電解質を形成する工程(E)と、を含むリチウムイオン電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の実施形態によれば、レート特性が良好な、またはレート特性とサイクル特性が良好な、ポリマーゲル電解質を用いたリチウムイオン電池およびその製造方法を提供できる。また、本発明の実施形態によれば、このようなリチウムイオン電池に好適なポリマーゲル電解質を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1におけるリチウムイオン二次電池の正極の構成を説明する図であり、図1(a)は正極の平面図、図1(b)は正極の側面図である。
図2】実施例1におけるリチウムイオン二次電池の負極の構成を説明する図であり、図2(a)は負極の平面図、図2(b)は負極の側面図である。
図3】実施例1におけるリチウムイオン二次電池の捲回後の電極群の構成を説明する図である。
図4】実施例4におけるポリマーゲル電解質形成後の電極表面像(SIM像)である。
図5】実施例4における電極活物質上に形成されたポリマーを示すTEM像である。
図6】比較例1におけるポリマーゲル電解質形成後の電極表面像(SIM像)である。
図7】比較例1における電極活物質上に形成されたポリマーを示すTEM像である。
図8】比較例1における電極活物質上(電極活物質粒子間の空隙)に形成されたポリマーを示すTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
リチウム塩と非プロトン性溶媒を少なくとも含有するポリマーゲル電解質を用いたリチウムイオン電池において、正極または/および負極の活物質表面に非晶質ポリマー層を形成することにより、良好なレート特性が得られることが研究の結果判明し、本発明に至った。
【0026】
また、電池の充電初期に電解質溶媒由来もしくはSEI形成剤由来のSEIを形成し、さらに充電状態にした後に、ポリマーゲル電解質を形成することで、良好なレート特性とサイクル特性が得られることが研究の結果判明し、本発明に至った。さらに、再含浸処理を実施することで、プレゲル溶液が均一化またはプレゲル溶液内の残留SEI形成剤が均一化し、そのため長期にわたり安定なSEIを形成することができ、サイクル特性が改善できる。また再含浸処理を行うことにより、プレゲル溶液の細孔内への含浸がさらに十分に行えるとともに、細孔内部まで均一なSEIを形成できる。
【0027】
電極活物質の表面に形成する非晶質ポリマー層は、ポリマーゲル電解質に由来するポリマー層であることが好ましい。この非晶質ポリマー層は、本発明の実施形態による製造方法において、ポリマーゲル電解質の形成とともに、このポリマーゲル電解質を形成するための架橋前ポリマーが原料成分として作用して電極活物質表面に形成することができる。
【0028】
本発明の実施形態による製造方法において、電極活物質表面に非晶質ポリマーが形成される理由については、詳細は不明であるが、以下の一因があると考える。まず、充電状態にした電極表面には、SEIが形成され、その後、ポリマーゲル電解質が電極活物質表面に形成される。そうした際に、電解液中のイオンの存在状態や、電極活物質表面の電荷、化学組成等の状態が、充電前とは異なるため、電極活物質表面と架橋前のポリマーとの親和性が良好となる。またポリマーゲル電解質が電極活物質表面で形成されることにより、ポリマー分子鎖間の立体障害が影響する。これらにより、電極活物質表面において優先的に薄膜非晶質ポリマー層が形成され、その結果、非晶質ポリマー層が均一に形成されると推測される。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0030】
本発明の実施形態によるポリマーゲル電解質は、リチウム塩と非プロトン性溶媒を少なくとも含有し、電極(正極または/および負極)の活物質の表面に非晶質ポリマー層が形成されている。
【0031】
このポリマーゲル電解質において、前記非晶質ポリマー層の厚みが3〜30nmの範囲にあることが好ましい。この非晶質ポリマー層は、このポリマーゲル電解質に由来して形成されることが好ましい。このポリマーゲル電解質は、カチオン重合性官能基を有するポリマーから形成されることが好ましい。
【0032】
また、このポリマーゲル電解質において、前記電極活物質表面と前記非晶質ポリマー層の間には、電極表面皮膜形成剤(SEI形成剤)由来の皮膜成分または電解質溶媒(プレゲル溶液の溶媒)由来の皮膜成分を含有することが好ましい。前記SEI形成剤は、環状不飽和スルトン化合物類、カーボネート類、環状ジスルホン酸エステル類、鎖状ジスルホン酸エステル類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
本発明の他の実施形態によるリチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータおよび前記ポリマーゲル電解質を含む。
【0034】
非晶質ポリマーは、ゲル電解質として十分溶媒を保持することができ、イオン伝導に対して抵抗となりにくい。それに対し、結晶性ポリマーは溶媒を保持しにくく、さらにポリマー鎖間にイオンがトラップされることからイオン伝導に対する抵抗となる。本発明の実施形態では、活物質表面が非晶質ポリマーで均一に薄く被覆されていることから、活物質界面のリチウムイオンの移動を妨げないため、抵抗増加が抑制され、十分なレート特性が得られる。さらに長期的にサイクル特性が良好なリチウムイオン電池を提供することが可能となる。電極活物質表面に形成される非晶質ポリマー層の厚みは、均一性等の観点から、3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、また、イオン伝導性等の観点から、30nm以下好ましく、20nm以下がより好ましく、15nm以下がさらに好ましい。ここでいう非晶質層ポリマー層の厚みは、電極表面の活物質上に形成されたポリマー層の厚みを意味する。
【0035】
本実施形態において、ポリマーゲル電解質を形成するポリマーは、非晶質ポリマーを形成できるものであれば、ポリマー種は限定されない。
【0036】
本発明の実施形態によるリチウムイオン電池の製造方法は、以下の工程:
正極、負極及びセパレータを含む電極群を外装体に収容する工程(A)、
ポリマーゲル電解質の前駆体であるプレゲル溶液を前記外装体内部へ注入し、該プレゲル溶液を前記電極群に含浸してプレ電池を形成する工程(B)、
前記プレ電池を、前記プレゲル溶液のまま(ゲル化しないように)充電する工程(C)、
前記プレ電池を充電状態で加温下に保持し、前記プレゲル溶液をゲル化してポリマーゲル電解質を形成する工程(E)を含む。
【0037】
この製造方法は、さらに、工程(C)と工程(E)の間に、前記プレ電池内の前記プレゲル溶液を前記電極群に再含浸する工程(D)を含むことが好ましい。また、この製造方法において、製造されるリチウムイオン電池に含まれるポリマーゲル電解質は、前述の電極活物質表面に非晶質ポリマー層が形成されたポリマーゲル電解質であることが好ましい。プレゲル溶液は、リチウム塩、非プロトン性溶媒、重合性官能基を有するポリマーを含むことができる。また、プレゲル溶液は、SEI形成剤を含むこともできる。重合性官能基を有するポリマーは、カチオン重合性官能基を有するポリマーであることが好ましい。
【0038】
一般に、電池を充電する際に、電解液成分もしくは添加剤などが電極上で分解し、電極表面にSEIを形成することが知られている。ポリマーゲル電解質を用いたリチウムイオン電池においては、電極表面上に存在する架橋したポリマー層が、均一なSEIの形成を妨げる場合がある。ポリマーの架橋反応を行ってポリマーゲル電解質を形成する場合、充電前に架橋反応を行うことになるため、SEI形成時には、既に電極表面上に架橋したポリマー層が存在する。また、物理ゲルタイプのポリマーゲル電解質を用いる場合でも、SEI形成時には、既に電極表面上に架橋ポリマー層が存在する。これらの場合、電極表面上の架橋したポリマー層が均一なSEIの形成の妨げになる。
【0039】
これに対し、本実施形態によれば、最初の充電によるSEI形成時においては電極表面上に架橋したポリマー層は存在せず、電極表面において均一なSEIの形成が可能となる。
【0040】
さらに、SEI形成後に、再含浸処理を行った場合は、細孔内へのプレゲル溶液の含浸が促進され、含浸されたプレゲル溶液と外装体内の余剰部分に存在するプレゲル溶液の均一化が行われ、さらに均一なSEIの追加形成が可能となる。つまり、再含浸によるプレゲル溶液の均一化により、後の工程(E)において(好ましくはSOC80%以上SOC100%以下で6時間以上21日以下放置する間に)さらに均一なSEIが形成される。
【0041】
また工程(E)では、プレゲル溶液に含まれるポリマーの架橋反応(例えばポリマーの重合性官能基の重合による架橋)が生じ、プレゲル溶液がゲル化してポリマーゲル電解質が形成される。その結果、流動性が抑制されたポリマーゲル電解質による安全性を確保しつつ、抵抗やレート特性が改善され、長期的にサイクル特性が良好なリチウムイオン電池を提供することが可能となる。
【0042】
工程(E)においては、前記プレ電池をSOC80%以上SOC100%以下の充電状態で6時間以上21日以下保持することが好ましい。また、工程(E)においては、前記プレ電池の充電状態を35℃以上60℃以下の温度条件下で保持することが好ましい。
【0043】
ここで、SOCは、下記式:
SOC(%)=100×残容量(Ah)/満充電容量(Ah)
で示される電池の充電状態(State Of Charge)を意味する。
【0044】
工程(B)の含浸は、減圧処理により行うことができる。この減圧処理時の圧力は、含浸を十分に行う点及び処理効率の点から、0.01kPa(abs)以上50kPa(abs)以下に設定することが好ましく、0.01kPa(abs)以上20kPa(abs)以下に設定することがより好ましい。減圧処理時間は、後述の再含浸と同様に設定することができる。
【0045】
工程(C)の充電は、プレゲル溶液中のSEI形成剤は反応するがポリマーの架橋反応が進行しにくい条件下で行うことが好ましい。プレゲル溶液の粘度は充電時に上昇してもよいが、後の再含浸処理において十分な処理効果を得る点から、充電前後の粘度の比率として、充電前の粘度を1としたときに充電後の粘度は2以下であることが好ましい。また、充電後の粘度(20℃)は60cP(6cPa・s)以下であることが好ましい。
【0046】
工程(C)の充電電圧は、十分なSEIを形成する点、充電効率の点から、2.5V以上4.2V以下に設定することが好ましい。
【0047】
工程(C)の充電時の温度は、架橋反応を抑える点およびエネルギーコストの点から、例えば5℃〜40℃の範囲に設定することができ、10℃〜30℃の範囲が好ましく、15℃〜25℃の範囲がより好ましい。
【0048】
工程(C)の充電後のSOCは、80〜100%の範囲にあることが好ましい。
【0049】
工程(B)のプレゲル溶液の注入から工程(C)を終了するまでの時間は、30℃以下の範囲(例えば5〜30℃の範囲)の温度条件下では10日以内が好ましく、30℃を超え45℃以下の範囲の温度条件下では6日以内が好ましい。
【0050】
工程(D)は、前記プレ電池内を減圧すること(減圧処理)により再含浸する工程を含むことができる。また、工程(D)は、前記プレ電池に超音波振動体を接触させること(超音波振動処理)により再含浸する工程を含むことができる。また、工程(D)は、前記プレゲル電池を加圧すること(圧力の印加開放処理、又は圧力印加の連続的移動処理)により再含浸する工程を含むことができる。
【0051】
工程(D)の再含浸は、前記プレ電池内を減圧する減圧処理により行うことができる。
【0052】
再含浸のための減圧処理時の圧力は、含浸を十分に行う点及び処理効率の点から、0.1kPa(abs)以上10kPa(abs)以下に設定することが好ましい。一回の減圧処理の時間(所定の圧力の減圧状態の連続した時間)は、1分以上30分以下に設定できる。減圧処理の回数(減圧および常圧に開放の一組)は1回でもよいが、より十分に含浸を行う点から2回以上行ってもよく、一方、処理効率の点から5回以下が好ましい。
【0053】
工程(D)の再含浸は、超音波振動体をプレ電池(の外装体)に接触させること(超音波振動処理)により行うことができる。
【0054】
この超音波振動体の周波数は、含浸を十分に行う点及び処理効率の点から、10KHz以上2MHz以下に設定することが好ましい。この超音波振動体による超音波の印加時間(連続した印加時間)は、10秒以上30分以下に設定できる。この超音波振動体による超音波の印加(連続した印加を一回とする)の回数は1回でもよいが、より十分に含浸を行う点から2回以上行ってもよく、一方、処理効率の点から5回以下が好ましい。
【0055】
工程(D)の再含浸は、プレ電池(の外装体)への外部からの物理的な圧力の印加と開放を行うことにより、あるいは印加と開放を繰り返すことにより行なうことができる(圧力印加開放処理)。例えば、平板を介してプレ電池の外装平面(及び電極平面)に圧力を印加することができる。
【0056】
この圧力は、含浸を十分に行う点、処理効率の点から、0.5kgf/cm2(4.9Pa)以上5kgf/cm2(49Pa)以下に設定することが好ましい。この圧力の1回の印加保持時間は0.1秒以上5秒以下に設定でき、この圧力の印加開放処理(印加と開放の一組)の回数は1回でもよいが、より十分に含浸を行う点から2回以上行ってもよく、一方、処理効率の点から50回以下が好ましい。
【0057】
工程(D)の再含浸は、プレ電池(の外装体)への外部からの物理的な圧力を、電極平面に沿った一方向へ当該電極平面の一端から他端へ連続的に印加を移動することにより行うことができる(圧力印加の連続的移動処理)。例えば、ローラーを用いてプレ電池の外装平面(及び電極平面)に圧力を印加することができる。
【0058】
この圧力は、含浸を十分に行う点、処理効率の点から、0.5kgf/cm2(4.9Pa)以上5kgf/cm2(49Pa)以下に設定することが好ましい。この圧力印加の移動速度は5mm/s以上100mm/s以下に設定できる。この圧力の印加処理(一方向への連続的な印加の移動)の回数は1回でもよいが、より十分に含浸を行う点から2回以上行ってもよく、一方、処理効率の点から20回以下が好ましい。
【0059】
工程(D)の再含浸においては、上記の減圧処理、超音波振動処理、圧力の印加開放処理、圧力印加の連続的移動処理から選ばれる少なくとも2つ以上を併用してもよく、2種以上の処理を順に行う場合は、順序は限定されない。超音波振動処理と減圧処理を同時に行うこともできる。
【0060】
プレゲル溶液の粘度は、含浸を十分に且つ効率よく行う点、所望のポリマーゲル電解質を得る点から、20℃において、15cP(1.5cPa・s)以上60cP(6cPa・s)以下の範囲にあることが好ましい。また、プレゲル溶液の粘度は、工程(C)の充電後においても、工程(D)の再含浸を十分に且つ効率よく行う点から、この粘度範囲にあることが好ましい。
【0061】
工程(E)は、十分な処理効果を得る点から、35℃以上60℃以下で、前記充電状態を保持することが好ましく、40℃以上がより好ましく、また55℃以下がより好ましい。
【0062】
本発明の実施形態におけるポリマーゲル電解質に含まれる非プロトン性溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)等の環状カーボネート類、およびそのハロゲン化物;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類;1,2−ジエトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)等の鎖状エーテル類、およびそのハロゲン化物が挙げられる。さらに、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステルなどのリン酸エステル類およびそのハロゲン化物、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、アニソール、N−メチルピロリドン、フッ素化カルボン酸エステルなどが挙げられる。これらの非プロトン性有機溶媒は、一種を単独で又は二種以上を混合して使用できる。本発明に用いられる非プロトン性溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0063】
本発明の実施形態におけるポリマーゲル電解質に含まれる電解質は、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiClO、LiAlCl、LiN(C2n+1SO2)(C2m+1SO2)(n、mは0、1、2)、LiCFSO、ビス(オキサラト)ホウ酸塩、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸塩、トリス(オキサラト)リン酸塩、ジフルオロ(ビスオキサラト)リン酸塩、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
本発明の実施形態におけるポリマーゲル電解質を形成するポリマーの例として、カチオン重合性官能基を有するポリマーが挙げられる。カチオン重合性官能基としては、アリル基等の末端二重結合を有する基;エポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基などの環状エーテル基などが挙げられる。このようなポリマーとしては、カチオン重合性官能基を側鎖にポリマー1分子あたり1個以上有する(メタ)アクリレート系重合体が挙げられる。主鎖の(メタ)アクリレート系重合体としては、アクリレートもしくはメタクリレート、ウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートの単独重合体もしくは共重合体などが挙げられる。このポリマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、その他重合可能な成分を混合して用いてもよい。ポリマーゲル電解質にはこのようなポリマーの架橋物が含まれる。その他、非晶質ポリマー種として、非晶質ポリマーであるポリメチルメタクリレート(PMMA)などの(メタ)クリレート系重合体でもよく、これらに限定されない。この場合は、製法は本発明の製法とは限らない。
【0065】
SEI形成剤としては、電極にSEIを形成することが知られている通常の添加剤を使用できる。負極上にSEIを形成する添加剤や、正極にSEIを形成する添加剤、もしくはその両方の機能を有する添加剤を使用できる。SEI形成剤としては、例えば、1,3−プロパンスルトン、1,3−プロペンスルトンなどの環状不飽和スルトン化合物;ビニレンカーボネート等のカーボネート類;環状ジスルホン酸エステル類、鎖状ジスルホン酸エステル類などのジスルホン酸エステル類;ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムなどのオキサラト錯体のLi塩;環状カーボネートや鎖状カーボネートのフッ化物、エーテル化合物のフッ化物、リン酸エステルのフッ化物などのフッ化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのなかでも、環状不飽和スルトン化合物類、カーボネート類、環状ジスルホン酸エステル類、鎖状ジスルホン酸エステル類から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0066】
本発明の実施形態における電池の負極活物質としては、たとえばリチウム金属、リチウム合金、およびリチウムを吸蔵、放出できる材料、からなる群から選択される一または二以上の物質を用いることができる。リチウムイオンを吸蔵、放出する材料としては、炭素材料または酸化物を用いることができる。
【0067】
リチウムイオンを吸蔵、放出する炭素材料としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブのいずれか、あるいはこれらの複合物を用いることができる。特に、黒鉛材料は、電子伝導性が高く、銅などの金属からなる集電体との接着性と電圧平坦性が優れており、高い処理温度によって形成されるため含有不純物が少なく、負極性能の向上に有利であるため、好ましい。さらに、結晶性の高い黒鉛材料と結晶性の低い非晶質炭素との複合材料なども用いることができる。
【0068】
リチウムイオンを吸蔵、放出する酸化物としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、リン酸、ホウ酸のいずれか、あるいはこれらの複合物を用いることができる。特に酸化シリコンが好ましく、負極活物質は酸化シリコンを含むことが好ましい。酸化シリコンの構造としてはアモルファス状態であることが好ましい。これは、酸化シリコンが安定で他の化合物と反応しにくく、またアモルファス構造が結晶粒界、欠陥といった不均一性に起因する劣化を導かないためである。酸化物の成膜方法としては、蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの方法を用いることができる。
【0069】
リチウム合金は、リチウム、およびリチウムと合金形成可能な金属により構成されるものを用いることができる。例えば、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、Laなどの金属とリチウムとの2元または3元以上の合金が挙げられる。リチウム金属やリチウム合金としては、特にアモルファス状のものが好ましい。これは、アモルファス構造により結晶粒界、欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくいためである。
【0070】
リチウム金属またはリチウム合金は、融液冷却方式、液体急冷方式、アトマイズ方式、真空蒸着方式、スパッタリング方式、プラズマCVD方式、光CVD方式、熱CVD方式、ゾルーゲル方式などの種々の方法から適宜選択した方法で形成することができる。
【0071】
本発明の実施形態による電池の正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnなどのリチウム含有複合酸化物があげられる。また、これらのリチウム含有複合酸化物の遷移金属部分を他元素で置き換えたものでもよい。
【0072】
また、金属リチウム対極電位で4.5V以上にプラトーを有するリチウム含有複合酸化物を用いることもできる。このようなリチウム含有複合酸化物としては、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物、オリビン型リチウム含有複合酸化物、逆スピネル型リチウム含有複合酸化物等が挙げられ、例えばLi(MMn2−x)O4(式中、xは0<x<2を満たし、aは0<a<1.2を満たし、Mは、Ni、Co、Fe、CrおよびCuよりなる群から選ばれる少なくとも一種である。)で表される化合物を挙げることができる。
【0073】
また、本発明の実施形態による電池は、構成要素として、正極、負極及びセパレータを含む電極群と、電解質と、これらを収容する外装体を含む。電極群として積層体や捲回体を使用でき、外装体としてはアルミラミネート外装体や金属外装体を使用できる。電池容量は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0074】
この電極群は、少なくとも一組の正極および負極と、これらの電極間のセパレータを含むことができる。シート形状の正極、負極及びセパレータを積層してこれらの平面形状を維持した積層体としてもよいし、長尺の積層体を形成し、捲回して捲回体としてもよい。
【0075】
正極及び負極はそれぞれ、通常の方法にしたがって、活物質およびバインダー、必要により導電助剤を含む活物質層を集電体上に形成したものを使用することができる。
【0076】
本実施形態にて得られたポリマーゲル電解質のポリマーの結晶性は、透過型電子顕微鏡(TEM)、ラマン散乱測定、X線回折(XRD)、示差走査熱量測定(DSC)等を用いて判別できる。本実施形態にて得られたポリマーの結晶性は、特に、TEMにより、100〜250万倍の倍率で観測した際の、画像から判断ができる。規則正しく配列されたポリマー部分が結晶性ポリマー、ランダムに分子が存在する部分が非晶質ポリマーとして判別できる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
図1は、リチウムイオン電池の正極の構成を説明する図であり、図1(a)は正極の平面図、図1(b)は正極の側面図である。図2は、リチウムイオン電池の負極の構成を説明する図であり、図2(a)は負極の平面図、図2(b)は負極の側面図である。図3は、リチウムイオン電池の捲回後の電極群の構成を説明する断面図である。
【0079】
先ず、図1を参照して正極の作製について説明する。LiMn24を91質量%、導電補助材としてアセチレンブラックを5質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン4質量%とを混合したものに、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して正極スラリーを作製した。これをドクターブレード法により集電体となる厚さ20μmのAl箔2の両面にロールプレス処理後の厚さが160μmになるように塗布し、120℃で5分間の乾燥を行い、プレス工程を経て正極活物質塗布部3、4(正極活物質層14)を形成した。その際、両端部にはいずれの面にも正極活物質が塗布されていない正極活物質非塗布部5を設け、一方の正極活物質非塗布部5に正極導電タブ6を設けた。なお、正極活物質塗布部3、4のうち、タブ6を設けた正極活物質非塗布部5に隣り合う部分は、片面のみ塗布されている(正極活物質片面塗布部4)。以上のプロセスを経て正極1を得た。
【0080】
次に、図2を参照して負極の作製について説明する。黒鉛94質量%、導電補助剤としてアセチレンブラックを1質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン5質量%とを混合し、N−メチルピロリドンを加えてさらに混合して負極スラリーを作製した。これを集電体となる厚さ10μmのCu箔8の両面にロールプレス処理後の厚さが120μmとなるように塗布し、120℃で5分間の乾燥を行い、プレス工程を経て負極活物質塗布部9、10(負極活物質層15)を形成した。その際、両端部にはいずれの面にも負極極活物質が塗布されていない負極活物質非塗布部11を設け、一方の負極活物質非塗布部11に負極導電タブ12を設けた。なお、負極活物質塗布部9、10のうち、タブ12を設けた負極活物質非塗布部11に隣り合う部分は、片面のみ塗布されている(負極活物質片面塗布部10)。以上のプロセスを経て負極7を得た。
【0081】
次に、図3を参照して電極群の作製について説明する。膜厚25μm、気孔率55%の親水処理を施したポリプロピレン微多孔膜からなるセパレータ13を二枚重ねて端部を溶着して切断加工した部分を捲回装置の巻き芯に固定し巻きとり、その際、正極1(図1)、及び負極7(図2)の先端を導入した。正極1は、正極導電タブ6側の端部とは反対側の端部を先端として導入し、負極7は、負極導電タブ12側の端部を先端として導入した。負極は二枚のセパレータの間に配置し、正極は一方のセパレータの外側上面にそれぞれ配置して巻き芯を回転させ捲回し、電極群(ジェリーロール)を形成した。
【0082】
次に、上記の電極群を、エンボス加工したラミネート外装体に収容し、正極導電タブ6と負極導電タブ12を引き出し、ラミネート外装体の1辺を折り返し、注液用の部分を残して熱融着を行った。
【0083】
ゲル電解質用ポリマーAは、次のようにして形成した。エチルアクリレート74質量部、及び(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート26質量部を反応容器へ仕込み、反応溶剤としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合液(EC/DEC=30/70(体積比))、及び重合開始剤としてN,N’−アゾビスイソブチロニトリルをモノマー重量に対して2500ppm加え、ドライ窒素ガスを導入しながら65〜70℃で加熱し、反応後、室温まで冷却した。その後、希釈溶剤としてECとDECの混合液(EC/DEC=30/70(体積比))を加え、全体が均一になるまで撹拌して、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)(標準試料:標準ポリスチレン)による重量平均分子量20万の濃度4.0質量%のポリマー溶液を得た。
【0084】
上記のポリマー濃度が2.0質量%、SEI形成剤として1,3−プロパンスルトン(化合物a)の濃度が3.0質量%、LiPFの濃度が1.0mol/Lとなるように上記の希釈溶剤を用いて配合して、プレゲル溶液を作製した。このプレゲル溶液の粘度は30cP(3cPa・s)であった。
【0085】
次に、このプレゲル溶液を、前記ラミネート外装体の注液部分から注入し、チャンバー内にて真空含浸(圧力:10kPa(abs))を行い、注液部分を真空封止することでプレ電池を得た。
【0086】
得られたプレ電池を、定電流定電圧充電(CC−CV充電、上限電圧3.0V、電流0.2C、CV時間0.5時間)を行った。
【0087】
続いて、次のようにして再含浸処理を行った。プレ電池のラミネートの融着部分の一部を開放し、チャンバー内で10kPa(abs)に到達した後1分間保持し大気開放を行うことを3回繰り返し(減圧再含浸)、その後、開放部分を再度真空封止(再封止)した。
【0088】
続いて、CC−CV充電(上限電圧4.2V、電流0.2C、CV時間1.5時間)にて充電を行った。
【0089】
続いて、45℃恒温槽内にて7日間静置(エージング)させることで、プレゲル溶液中のポリマーの架橋反応を行ってポリマーゲル電解質を形成し、目的のポリマー電池を得た。
【0090】
得られた電池のレート特性として、20℃での0.2C容量に対する3C容量の割合を表1に示した。
【0091】
得られた電池のサイクル試験を次のようにして行った。CC−CV充電(上限電圧4.2V、電流1C、CV時間1.5時間)と、CC放電(下限電圧3.0V、電流1C)を、いずれも45℃で1000サイクル実施した。1000サイクル後の容量維持率として、1サイクル目の放電容量に対する1000サイクル目の放電容量の割合を表1に示した。
【0092】
本実施例並びに以下の実施例および比較例により得られた電池について、TEM(transmission electron microscope)により、電極活物質上に形成されたポリマー層の観察を次の通り行った。前記プレ電池の充電後に45℃恒温槽内にて7日間静置させてポリマーの架橋反応を行って得た電池を1V以下まで放電処理を行い、その後、Arガス中にてこの電池を分解し、電極を所定の大きさに切り出した。この電極片をジエチルカーボネート(DEC)に1分間浸漬させて支持電解質および溶媒成分を洗浄し、その後、1時間以上乾燥させた。この電極片を、FIB(focused ion beam)法により薄片化処理を行い、得られた薄片試料についてTEM観察を行った。
【0093】
また、SIM(scanning ion microscope)により、電極表面の観察を次の通り行った。上記と同様にして得た電極片をジエチルカーボネート(DEC)に1分間浸漬させて支持電解質および溶媒成分を洗浄し、その後、1時間以上乾燥させた。得られた電極片についてSIM観察を行った。
【0094】
(実施例2)
再含浸処理として、チャンバー内で0.5kPa(abs)に到達した後1分間保持し大気開放を行うことを3回繰り返すこと(減圧再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0095】
(実施例3)
再含浸処理として、チャンバー内で0.5kPa(abs)に到達した後1分間保持し大気開放を行うことを1回行うこと(減圧再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0096】
(実施例4)
再含浸処理として、チャンバー内で0.2kPa(abs)に到達した後1分間保持し大気開放を行うことを3回繰り返すこと(減圧再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0097】
(実施例5)
再含浸処理として、プレ電池に周波数10kHzの超音波振動を30秒間与えること(超音波再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0098】
(実施例6)
再含浸処理として、プレ電池に周波数10kHzの超音波振動を3分間与えること(超音波再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0099】
(実施例7)
再含浸処理として、プレ電池に周波数100kHzの超音波振動を3分間与えること(超音波再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0100】
(実施例8)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放することなく、プレ電池に周波数100kHzの超音波振動を3分間与えること(超音波再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0101】
(実施例9)
再含浸処理として、プレ電池に周波数100kHzの超音波振動を与えながら減圧して0.2kPa(abs)に到達した後1分間保持し大気開放を行うことを3回繰り返すこと(超音波減圧再含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0102】
(実施例10)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放することなく、プレ電池の平面に対し、板を設置して0.5kgf/cm2(49kPa)の圧力を1秒間印加することを30回繰り返すこと(加圧含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0103】
(実施例11)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放することなく、プレ電池の平面に対し、板を設置して2kgf/cm2(196kPa)の圧力を1秒間印加することを30回繰り返すこと(加圧含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0104】
(実施例12)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放し、プレ電池の平面に対し、板を設置して2kgf/cm2(196kPa)の圧力を1秒間印加することを30回繰り返すこと(加圧含浸)を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0105】
(実施例13)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放し、プレ電池の平面に対し、板を設置して2kgf/cm2(196kPa)の圧力を1秒間印加することを30回繰り返し(加圧含浸)、その後、実施例4と同様にして減圧再含浸処理を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0106】
(実施例14)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放することなく、プレ電池の平面に対し、ローラーを用いて0.5kgf/cm2(49kPa)の圧力をかけながら10mm/sの速度でローラーをプレ電池の平面全体にわたって移動させることを10回行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0107】
(実施例15)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放することなく、プレ電池の平面に対し、ローラーを用いて2kgf/cm2(196kPa)の圧力をかけながら10mm/sの速度でローラーをプレ電池の平面全体にわたって移動させることを10回行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0108】
(実施例16)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放することなく、プレ電池の平面に対し、ローラーを用いて2kgf/cm2(196kPa)の圧力をかけながら50mm/sの速度でローラーをプレ電池の平面全体にわたって移動させることを10回行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0109】
(実施例17)
再含浸処理として、プレ電池の融着部分を開放し、プレ電池の平面に対し、ローラーを用いて2kgf/cm2(196kPa)の圧力をかけながら10mm/sの速度で移動させることを10回行い、その後、実施例4と同様にして減圧再含浸処理を行った以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0110】
(実施例18)
恒温槽内での静置(エージング)の期間を14日とした以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0111】
(実施例19)
恒温槽内での静置(エージング)の期間を21日とした以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0112】
(実施例20)
恒温槽内の温度を55℃とした以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0113】
(実施例21)
恒温槽内での静置(エージング)時のSOCを80%とした以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0114】
(実施例22)
プレゲル溶液のSEI形成剤として、1,3−プロパンスルトンに代えて、エチレンメタンジスルホネート(1,5,2,4−ジオキサジチエパン−2,2,4,4−テトラオキシド)(化合物b)を2.0質量%添加した以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0115】
(実施例23)
プレゲル溶液のSEI形成剤として、エチレンメタンジスルホネート(1,5,2,4−ジオキサジチエパン−2,2,4,4−テトラオキシド)(化合物b)を1.5質量%および1,3−プロパンスルトン(化合物a)を1.0質量%添加した以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0116】
(実施例24)
プレゲル溶液のSEI形成剤として、1,3−プロパンスルトン(化合物a)に代えて、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(化合物c)を1.0質量%およびビニレンカーボネート(化合物d)を0.5質量%添加した以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表1に示した。
【0117】
(実施例25)
プレゲル溶液のSEI形成剤として、1,3−プロパンスルトン(化合物a)を添加しない以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0118】
(実施例26)
再含浸処理をしない以外は実施例1と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0119】
(実施例27)
再含浸処理をしない以外は実施例22と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0120】
(実施例28)
再含浸処理をしない以外は実施例24と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0121】
(実施例29)
本実施例では、電極上に形成するポリマーとして、ポリメチルメタクリレート(PMMA)(ポリマーB)を用い、予め電極表面に非晶質ポリマー層を形成した。具体的には、DMF(ジメチルホルムアミド)にPMMAを溶解したPMMA濃度が10質量%の溶液を調製し、この溶液を、電極群の作製前に、正極および負極上に均一に塗布し、乾燥させた。このようにして作製した正極および負極を用いた以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0122】
(比較例1)
実施例1と同様にしてプレ電池を得た後、定電流定電圧充電を行う前に、60℃恒温槽内で24時間静置することでポリマーを架橋させ、その後、定電流定電圧充電(CC−CV充電、上限電圧3.0V、電流0.2C、CV時間0.5時間)を行った。以降は、実施例9と同様にして電池を作製した(45℃恒温槽内にて7日静置も実施)。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0123】
(比較例2)
再含浸処理を実施しない以外は比較例1と同様にて電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0124】
(比較例3)
本比較例では、電極上に形成する結晶性ポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(ポリマーC)を用いた。具体的には、DMF(ジメチルホルムアミド)にPVDFを溶解したPVDF濃度が10質量%の溶液を調製し、この溶液を、電極群の作製前に、正極および負極上に均一に塗布し、乾燥させた。このようにして作製した正極および負極を用いた以外は、実施例9と同様にして電池を作製した。得られた電池について実施例1と同様にしてレート特性とサイクル特性を評価し、結果を表2に示した。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
実施例4の図4および図5と比較例1の図6図7および図8が示すように、本実施例においては、電極活物質上に薄い(5nm程度の)非晶質ポリマー層が形成されており、リチウムイオンのイオン伝導を阻害しないためレート特性が良好であることがわかる。これに対し、比較例1では、電極活物質上に結晶性ポリマーを含む厚い(数十nmの)ポリマー層が存在し、また電極表面側の活物質粒子間の空隙にも結晶性ポリマーが多量に存在する。そのため、レート特性が低く、十分なサイクル特性が得られないことがわかる。
【0128】
図4(実施例4のSIM像)は、電極活物質上に均一に非晶質ポリマーが形成されていることを示している(電極活物質粒子の輪郭が比較的よく見える)。これに対して、図6(比較例1のSIM像)は、電極活物質上に結晶性ポリマーが多量に存在し、空隙には鱗片上の結晶性ポリマーが存在することを示している。
【0129】
また、図5(実施例4のTEM像)は、電極活物質上に薄い非晶質ポリマー層(5nm程度)が形成されていることを示している。これに対して、図7(比較例1のTEM像)は、電極活物質上に厚い結晶性ポリマー層(数十nm)が存在することを示している。さらに、図8(比較例1のTEM像)は、電極表面側の活物質粒子間の空隙内の電極活物質上にも結晶性ポリマーが存在することを示している。
【0130】
比較例1から3においては、電極活物質表面に結晶性ポリマーや結晶性/非晶質ポリマー混在の状態からなる40nmから80nm程度の厚いポリマー層が存在したのに対し、本実施例のすべてにおいて、図5に示すような、電極活物質表面に薄い非晶質ポリマー層が形成されることがわかった。
【0131】
実施例4および29と、比較例3との対比より、ポリマー種が変わっても非晶質ポリマー層が電極活物質表面に存在することが、結晶性ポリマー層が存在する場合に対して、レート特性に大きく影響することがわかった。
【0132】
実施例25が示すように、SEI形成剤を添加しなくても、電解質の溶媒成分であるカーボネートがSEIを形成し、良好なレート特性が得られることがわかった。
【0133】
実施例1〜24から明らかなように、SEIをさらに強固にするために、減圧再含浸、超音波再含浸、平板やローラーを用いた加圧再含浸、もしくはこれらを組み合わせることにより、良好なレート特性およびサイクル特性が得られることが分かる。また、再含浸処理において、プレ電池の融着部分の開放・再封止を実施することによりさらにレート特性およびサイクル特性が改善したことが分かる。
【0134】
このように、プレゲル溶液がゲル化しないようにプレ電池の充電を行って電極表面にSEIを形成し、その後、充電しポリマーゲル電解質を形成することで、良好なレート特性とサイクル特性が得られる。
【0135】
また、プレゲル溶液がゲル化しないようにプレ電池の充電を行って電極表面にSEIを形成し、その後、再含浸処理を行い、プレゲル溶液を均一化する(SEI形成剤を用いている場合は残留SEI形成剤も均一化する)ことができる。その後、充電し充電状態で加温静置処理(エージング)を行うことにより、ポリマーゲル電解質を形成するとともに、プレゲル溶液の細孔内への含浸が十分に行われ、均一で長期にわたり安定なSEIを形成でき、電池のレート特性およびサイクル特性が改善できる。
【0136】
以上、発明の実施の形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0137】
この出願は、2012年9月10日に出願された日本出願特願2012−198566を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明は、二次電池の他、電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタなどエネルギー貯蔵デバイスの製造に適用できる。
【符号の説明】
【0139】
1:正極
2:Al箔
3、4:正極活物質塗布部
5:正極活物質非塗布部
6:正極導電タブ
7:負極
8:Cu箔
9、10:負極活物質塗布部
11:負極活物質非塗布部
12:負極導電タブ
13:セパレータ
14:正極活物質層
15:負極活物質層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8