特許第6202631号(P6202631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6202631電極ロール体及び電極ロール体の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202631
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電極ロール体及び電極ロール体の使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20170914BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01M4/139
   H01M4/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-535448(P2014-535448)
(86)(22)【出願日】2013年8月7日
(86)【国際出願番号】JP2013071336
(87)【国際公開番号】WO2014041928
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-200371(P2012-200371)
(32)【優先日】2012年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(72)【発明者】
【氏名】安島 成雄
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−228565(JP,A)
【文献】 特開2009−259747(JP,A)
【文献】 特開2009−224235(JP,A)
【文献】 特開2003−073036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質又は負極活物質を備えたシート状電極母材が巻き取られる電極ロール体であって、
所定幅の周面を有する樹脂製の円筒状部材と、
前記周面に着脱可能に配された可撓性フィルムと、
前記可撓性フィルム上に巻回される前記シート状電極母材と、からなる電極ロール体。
【請求項2】
前記可撓性フィルムは、両面テープにより前記周面に固定される請求項1記載の電極ロール体。
【請求項3】
前記両面テープの表裏の粘着層で粘着力が異なり、粘着力の弱い粘着層が前記周面に当接される請求項2記載の電極ロール体。
【請求項4】
正極活物質又は負極活物質を備えたシート状電極母材が巻き取られ、所定幅の周面を有する樹脂製の円筒状部材と、前記周面に着脱可能に配される可撓性フィルムと、前記可撓性フィルム上に巻回される前記シート状電極母材と、からなる電極ロール体の使用方法であって、
前記円筒状部材の前記周面に可撓性フィルムを1周以上巻き付けておき、活物質が付着していない可撓性フィルム面を新たに露出させるか、又は、前記円筒状部材の前記周面に新品の可撓性フィルムを着脱可能に装着する第1工程と、
前記可撓性フィルム上に前記シート状電極母材を巻回する第2工程と、を有する電極ロール体の使用方法。
【請求項5】
前記第1工程では、前記可撓性フィルムは両面テープにより前記周面に固定される請求項4に記載の電極ロール体の使用方法。
【請求項6】
前記両面テープの表裏の粘着層で粘着力が異なり、粘着力の弱い粘着層が前記周面に当接される請求項5に記載の電極ロール体の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池などの二次単位電池の製造に用いる電極ロール体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題から、戸建て住宅などの家庭用途や、輸送機器、建設機器等の産業用途に用いることが可能な、風力発電、太陽光発電等から得られるクリーンエネルギーが注目されている。しかし、クリーンエネルギーは状況に応じた出力の変動が大きいという問題を有している。例えば、太陽光発電によるエネルギーは、太陽が昇っている日中には得られるが、太陽が沈んだ後の夜間には得られない。
【0003】
クリーンエネルギーの出力を安定化するために、クリーンエネルギーを一時的に電池に蓄える技術が用いられる。例えば、電池に蓄えられた太陽光エネルギーは、太陽が沈んだ後の夜間にも利用可能となる。このようなクリーンエネルギーを蓄えるための電池としては、一般的に鉛電池が使用されていたが、鉛蓄電池は一般的に大型であり、エネルギー密度が低い、という欠点がある。
【0004】
そこで、近年では、常温で作動可能であり、エネルギー密度も高いリチウムイオン二次電池が注目されている。リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いという特性に加えて、インピーダンスが低いため応答性に優れている、という特徴も有する。
【0005】
このようなリチウムイオン二次電池の内部構造の一例としては、複数のシート状正極と複数のシート状負極とがセパレータを介して積層された電極積層体、および電解液が、平面視で矩形のラミネートフィルム外装材内に収容された構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2012−54198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン二次電池に用いられるシート状正極やシート状負極は、より広い面積を有するそれぞれの母材となる所定幅を有する長尺状のシート部材(シート状電極母材)より切り出されるようになっている。
【0007】
上記のようなシート状電極母材は、切り出し工程に投入される際には、円筒状部材に巻き取られた状態で準備される。
【0008】
例えば正極用のシート状電極母材は、アルミニウム製の基材の表裏にマンガン酸リチウムなどからなる正極活物質が塗布されてなるものであるが、円筒状部材に円筒状部材の幅よりも小さい幅のシート状電極母材を巻き取ったり、或いは、円筒状部材からシート状電極母材を繰り出したりしている間に、シート状電極母材から脱落した正極活物質の粒子が上記のような円筒状部材に付着してしまうようなことがある。
【0009】
円筒状部材については、繰り返し利用するものであるので、次回、円筒状部材にシート状電極母材を巻回する際には、円筒状部材に付着した活物質粒子が静電気や振動などでシート状母材に巻き込まれる場合があり、シート状電極母材が活物質粒子を押圧しながら巻回されることにより、シート状電極母材に活物質粒子の形状が転写されてしまったり、脱落した活物質を付着したまま電池に積層されたり、或いはシート状電極母材が活物質粒子により損傷してしまったりする、という事象が発生し、シート状電極母材から切り出せる電極の良品の数が減少し、生産効率が低下してしまう、という可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明に係る電極ロール体は、正極活物質又は負極活物質を備えたシート状電極母材が巻き取られる電極ロール体であって、所定幅の周面を有する樹脂製の円筒状部材と、前記周面に着脱可能に配された可撓性フィルムと、前記可撓性フィルム上に巻回される前記シート状電極母材と、からなる。
【0011】
また、本発明に係る電極ロール体は、前記可撓性フィルムは、両面テープにより前記周面に固定される。
【0012】
また、本発明に係る電極ロール体は、前記両面テープの表裏の粘着層で粘着力が異なり、粘着力の弱い粘着層が前記周面に当接される。
【0013】
また、本発明に係る電極ロール体の使用方法は、正極活物質又は負極活物質を備えたシート状電極母材が巻き取られ、所定幅の周面を有する樹脂製の円筒状部材と、前記周面に着脱可能に配される可撓性フィルムと、前記可撓性フィルム上に巻回される前記シート状電極母材と、からなる電極ロール体の使用方法であって、前記円筒状部材の前記周面に可撓性フィルムを1周以上巻き付けておき、活物質が付着していない可撓性フィルム面を新たに露出させるか、又は、前記円筒状部材の前記周面に新品の可撓性フィルムを着脱可能に装着する第1工程と、前記可撓性フィルム上に前記シート状電極母材を巻回する第2工程と、を有する。
【0014】
また、本発明に係る電極ロール体の使用方法は、前記第1工程では、前記可撓性フィルムは両面テープにより前記周面に固定される。
【0015】
また、本発明に係る電極ロール体の使用方法は、前記両面テープの表裏の粘着層で粘着力が異なり、粘着力の弱い粘着層が前記周面に当接される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る電極ロール体によれば、円筒状部材の周面には着脱可能な可撓性フィルムが設けられているので、シート状電極母材から活物質粒子が脱落しても、可撓性フィルムを新品交換することで、円筒状部材にシート状電極母材が巻回される際に、脱落した活物質粒子により、シート状電極母材に活物質粒子の形状が転写されてしまったり、或いはシート状電極母材が活物質粒子により損傷してしまったりすることがなく、生産効率が向上する。
【0017】
また、本発明に係る電極ロール体の製造方法によれば、脱落した活物質粒子により、シート状電極母材に活物質粒子の形状が転写されてしまったり、或いはシート状電極母材が活物質粒子により損傷してしまったりすることがなく、安定した電気特性を有し、信頼性に優れた電池を製造することが可能な電極ロール体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る電極ロール体600により製造される単位電池100の内部構造を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る電極ロール体600に用いる円筒状部材200を説明する図である。
図3】本発明の実施形態に係る電極ロール体600の製造工程を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る電極ロール体600に用いる両面テープ300の断面の模式図である。
図5】本発明の実施形態に係る電極ロール体600の製造工程を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る電極ロール体600の製造工程を示す図である。
図7】本発明の実施形態に係る電極ロール体600を示す図である。
図8】本発明の実施形態に係る電極ロール体600からシート状電極を切り出す工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る電極ロール体により製造される単位電池100の内部構造を説明する図である。本実施形態においては、単位電池100として、リチウムイオンが負極と正極とを移動することにより充放電が行われる、電気化学素子の1種であるリチウムイオン二次単位電池を例に説明する。
【0020】
図1は単位電池100を透過的に示す斜視図である。単位電池100の電池本体部110は、複数のシート状正極と複数のシート状負極とがセパレータを介して積層された電極積層体60、および電解液(いずれも図示しない)が、平面視で矩形のラミネートフィルム外装材90内に収容された構造となっている。
【0021】
それぞれのシート状正極は、不図示の集電体を介して正極引き出しタブ120に導電接続される。同様に、それぞれのシート状負極も、不図示の集電体を介して負極引き出しタブ130に導電接続されている。
【0022】
そして、電池本体部110の一方の端部(辺)からは正極引き出しタブ120が、また、前記一方の端部と対向する他方の端部(辺)からは負極引き出しタブ130が引き出されている。
【0023】
正極引き出しタブ120及び負極引き出しタブ130は、いずれも平面状で、ラミネートフィルム外装材90内において、前記したようにそれぞれシート状正極、シート状負極と直接または集電体などを介して接続されている。
【0024】
ラミネートフィルム外装材90は、熱融着樹脂層を有する金属ラミネートフィルムにより構成されている。より具体的には、例えば2枚の金属ラミネートフィルムが、熱融着樹脂層同士を相対して重ねられてラミネートフィルム外装材90を構成し、シート状正極、シート状負極およびセパレータを有する電極積層体60や電解液を、内部に収容した状態でラミネートフィルム外装材90の外周辺が熱シールされることで、その内部が密閉されている。
【0025】
ここで、ラミネートフィルム外装材90よりなる電池本体部110から引き出される正極引き出しタブ120や負極引き出しタブ130などの金属片は、「引き出しタブ」と称することとし、ラミネートフィルム外装材90の内側でセパレータや電解液などを介して積層されているシート状正極やシート状負極を「電極」と称する。
【0026】
なお、電極積層体60には、上記のように複数のシート状正極と複数のシート状負極とがセパレータを介して積層したものの他に、シート状正極とシート状負極とがセパレータを介し積層したものを巻回し、これが圧縮されることにより積層体をなすものも含まれる。
【0027】
上記のような単位電池100においては、正極引き出しタブ120の材質としてはアルミニウムまたはアルミニウム合金が、また、負極引き出しタブ130の材質としては、ニッケル、他の金属にニッケルメッキを施した材料(ニッケルメッキ材。例えば、ニッケルメッキをした銅など)、ニッケルと他の金属のクラッド(ニッケルクラッド材。例えば、ニッケル−銅クラッドなど)が一般的に用いられている。本実施形態においては、アルミニウム製の正極引き出しタブ120が、また、ニッケルメッキをした銅からなる負極引き出しタブ130がそれぞれ用いられている。
【0028】
次に以上のような単位電池100を製造する工程で用いられる電極ロール体600について説明する。
【0029】
電極ロール体600は、単位電池100に用いられるシート状正極やシート状負極を切り出す際の母材となる、所定幅を有し長尺状で、個々のシート状電極より広い面積を有するシート状電極母材500を巻き取ったものである。このようなシート状電極母材500を巻き取るためには、円筒状部材200が用いられる。本発明における電極ロール体とは、シート状電極だけでなく、円筒状部材を含めたものをいう。
【0030】
図2は本発明の実施形態に係る電極ロール体600に用いる円筒状部材200を説明する図である。
【0031】
円筒状部材200は、図示するような貫通孔210を有する円筒形状をなした部材であり、材質は電極に張力をかけながら巻いた際に変形しない程度の所定の強度あれば特に限定されるものではなく、アルミやステンレスなどの金属製、ABSやポリカーボネートなどの樹脂製、プラスチック製、紙製、あるいはこれらを複合したり、その他の繊維などを混ぜ込んだものを選択することが出来る。なかでも重量や強度の観点からすると、樹脂製か強化プラスチック製が好ましく、例えばABS樹脂により構成することができる。円筒状部材200において、シート状電極母材500を巻き取る周面220の幅Aは任意に定めれば良い。
【0032】
1つの例として、周面220の幅Aを800mmとし、円筒状部材200の外径はφ180mm、また、貫通孔210の内径はφ150mmとすることができる。
【0033】
以上のような円筒状部材200に、周面220の幅Aよりも小さい幅のシート状電極母材500を巻き取っていくことで電極ロール体を得ることになる。
【0034】
円筒状部材200については、繰り返し利用するものであるので、円筒状部材に活物質粒子が付着したままにして、次回、円筒状部材200にシート状電極母材500を巻回する際に、円筒状部材からシート状母材に活物質が巻き込まれ、シート状電極母材500が活物質粒子を押圧しながら巻回されることにより、シート状電極母材500に活物質粒子の形状が転写されてしまったり、付着したり、或いはシート状電極母材500が活物質粒子により損傷してしまったりすることが無いようにしている。
【0035】
そこで、本発明に係る電極ロール体600においては、円筒状部材200の周面220には、着脱可能な可撓性フィルム400を配した上で、シート状電極母材500を巻き取るようにしている。
【0036】
このように、本発明においては、円筒状部材200を繰り返し利用している間に、可撓性フィルム400に活物質粒子が付着してしまった場合には、活物質が付着した箇所の可撓性フィルムを取り除き活物質が付着していない可撓性フィルム面をあらたに露出させるか、新品の可撓性フィルム400に交換することで、従来の問題を解消している。
【0037】
図3は本発明の実施形態に係る電極ロール体600の製造工程を示す図である。円筒状部材200の周面220に、着脱可能な可撓性フィルム400を配する上では、まず、図3に示すように、円筒状部材200の幅方向に、円筒状部材に可撓性フィルム400を固定するための粘着部を設ける。粘着部には、ペースト状の部材を塗布したり、両面テープを適用したりすることができるが、後述する取扱いの観点から両面テープ300を用いるのが好ましい。このとき、両面テープ300の寸法は、可撓性フィルムを固定することができれば特に限定されるものではないが、例えば円筒状部材の幅Aに沿った長さを500mm〜600mm、円周方向に沿ったテープ幅を20mm程度とすることできる。
【0038】
電極ロール体600の製造に用いる両面テープ300には、表裏の粘着層で粘着力が異なるものを利用することが好ましい。図4は本発明の実施形態に係る電極ロール体600に用いる両面テープ300の断面の模式図である。
【0039】
両面テープ300は、PETなどからなる基材310と、基材310の表裏に塗布されたアクリル系粘着剤よりなる第1粘着層311、第2粘着層312とから構成されている。ここで、第1粘着層311と第2粘着層312とは、粘着力が異なるようにされている。例えば、第2粘着層312の粘着力より第1粘着層311の粘着力が弱くされているとすると、粘着力が弱い方の第1粘着層311が円筒状部材200の周面220に当接し、粘着力の強い方の第2粘着層312が可撓性フィルム400に当接するようにして、円筒状部材200の周囲に可撓性フィルム400を配するようにする。
【0040】
上記のように構成することで、両面テープ300を円筒状部材200の周面220から剥がしやすくして、可撓性フィルム400の交換容易性を高めることが可能となる。また、両面テープ300を円筒状部材200の周面220から剥がしたときに、円筒状部材200の周面220上に第1粘着層311の成分が残ってしまう、というデメリットも解消することができる。
【0041】
可撓性フィルム400としては、厚さが5μm〜1mm程度のシート状であればよく、例えば、紙製、金属製、樹脂製、プラスチック製などを用いることができるが、可撓性フィルム自体の無塵性や取扱い安さを考量すると、PETなどのフィルムを用いることが好ましく、その厚さは、50μm〜250μm程度のものが好適である。寸法としては、円筒状部材の幅方向に沿った長さは、円筒状部材の幅Aと同じかそれよりも狭く、円筒状部材の円周に沿った長さは、円周長と同じか、それよりも長いことが好ましい。円筒状部材の周面220の幅Aが800mmで、外径がφ180mmであれば、可撓性フィルムの寸法は、例えば700mm×700mmのものを用いることができる。
【0042】
両面テープ300の第1粘着層311を円筒状部材200の周面220に貼着し、第2粘着層312を可撓性フィルム400に貼着した上で、可撓性フィルム400を図5に示すように、円筒状部材200に1周以上巻き付けることによって、図6に示すような状態となり、これでシート状電極母材500を円筒状部材200に巻き取る準備が完了する。
【0043】
円筒状部材200に巻き取るシート状電極母材500として、正極を例にとると、シート状電極母材500は以下のように製造される。
【0044】
まず、正極活物質としてのマンガン酸リチウムとニッケル酸リチウムの複合材料と、導電剤としてのカーボンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液とを混合して正極用スラリーを調製する。
【0045】
このように調整した正極用スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔(厚み:20um)の両面に、間欠的または連続的に塗布し、加熱することにより溶剤を除去し、さらにローラーで加圧し、最終的に正極用のシート状電極母材500の厚みが200um前後となるようにしている。
【0046】
なお、負極用のシート状電極母材500は、負極活物質としての黒鉛粉末と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンと、溶剤としてのNMP溶液とを混合して負極用スラリーを調製した後、この負極用スラリーを負極集電体としての銅箔の両面に、間欠的または連続的に塗布し、加熱することにより溶剤を除去し、ローラーで加圧することで得ることができる。
【0047】
本発明の電極ロール体600で巻回されているシート状電極母材500としては、正極用のもの、負極用のもののいずれも用いることができる。
【0048】
図7は、上記のようなシート状電極母材500を円筒状部材200に巻き取って、本発明に係る電極ロール体600となしたものである。
【0049】
上記のような電極ロール体600は、不図示の繰り出し装置、及び裁断装置に取り付けられて、例えば、図8に示すように、シート状電極母材500を矢印の方向に引き出しつつ、A−A’に示すようにカットを行い、続いて、B−B’ に示すようにカットを行い、単位電池100の電極積層体60に用いる複数のシート状正極と複数のシート状負極とを得ることができる。なお、複数のシート状正極と複数のシート状負極とを得るために、シート状母材500の長手方向にそって最初にB−B’方向のカットを行い、後からA−A’に示す方向のカットを行うようにしてもよい。
【0050】
本発明に係る電極ロール体600によれば、円筒状部材200の周面220には着脱可能な可撓性フィルム400が設けられているので、シート状電極母材500から活物質粒子が脱落しても、活物質が付着した箇所の可撓性フィルム400を取り除き活物質が付着していない可撓性フィルム面をあらたに露出させるか、可撓性フィルム400を新品のものに交換することで、円筒状部材200にシート状電極母材500が巻回される際に、脱落した活物質粒子により、シート状電極母材500に活物質粒子の形状が転写されてしまって活物質に凹凸を形成したり、そのまま付着したままの状態となったり、或いはシート状電極母材500が活物質粒子により損傷してしまったりすることがなく、生産効率が向上した電極ロール体の製造方法を提供することができる。
【0051】
なお、本発明においては、両面テープ300や可撓性フィルム400を円筒状部材200に貼り付けることで、段差が生じることになるが、この段差は、シート状母材の幅方向と長さ方向の一定の段差になるため、異物などによる局所的な段差とは異なり、電極ロール体の最内周側に電極活物質を塗布していない部分の集電箔を1周以上巻くなどすれば緩和することができ、電池特性や信頼性などへの影響を与えないようにすることができる。
【0052】
また、本発明に係る電極ロール体600の製造方法によれば、脱落した活物質粒子により、シート状電極母材500に活物質粒子の形状が転写されてしまったり、或いはシート状電極母材500が活物質粒子により損傷してしまったりすることがなく、安定した電気特性を有し、信頼性に優れた電池を製造することが可能な電極ロール体600を提供することができる。
【産業上の利用性】
【0053】
本発明に係る電極ロール体によれば、シート状電極母材から活物質粒子が脱落しても、着脱可能な可撓性フィルムを交換することで、前記粒子の影響を排除することが可能となり、生産効率が向上するなど、産業上の利用性が非常に大きい。
【符号の説明】
【0054】
60・・・電極積層体、90・・・ラミネートフィルム外装材、100・・・単位電池、
110・・・電池本体部、120・・・正極引き出しタブ、130・・・負極引き出しタブ、200・・・円筒状部材、210・・・貫通孔、220・・・周面、300・・・両面テープ、310・・・基材、311・・・第1粘着層、312・・・第2粘着層、400・・・可撓性フィルム、500・・・シート状電極母材、600・・・電極ロール体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8