(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202635
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】運転者支援システムのためのレーン相対位置推定の方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20170914BHJP
B60W 30/12 20060101ALI20170914BHJP
B60W 50/14 20120101ALI20170914BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20170914BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60W30/12
B60W50/14
B60W40/06
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-4851(P2015-4851)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2015-138552(P2015-138552A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2015年4月20日
(31)【優先権主張番号】14152164.1
(32)【優先日】2014年1月22日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503113186
【氏名又は名称】ホンダ リサーチ インスティテュート ヨーロッパ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Honda Research Institute Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャニック フリッチ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス キューンル
【審査官】
田中 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−073620(JP,A)
【文献】
特表2010−536632(JP,A)
【文献】
特開2011−118889(JP,A)
【文献】
特開2010−072807(JP,A)
【文献】
特開2010−221909(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/128940(WO,A1)
【文献】
特開2009−104224(JP,A)
【文献】
特開平05−205198(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/007484(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 − 99/00
B60W 10/00 − 10/30
B60W 30/00 − 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーン内の自車両の道路位置のレーン相対位置を推定する方法であって、
少なくとも一つのセンサ手段(1)により自車両の環境を検知するステップと、
前記センサ手段(1)から取得された情報から空間特徴を抽出するステップと、
前記抽出された空間特徴から直接的にレーン相対位置を分類するステップと、
を有し、
前記空間特徴は、該レーン内の横方向位置を捕捉するものであり、
前記直接的にレーン相対位置を分類するステップは、該レーン内の前記自車両の相対的な横方向位置を表す値であると共に該自車両の横方向位置により異なる値であって該レーンの両側の各々を最大値及び最小値とした範囲内の連続値で規定される値であるレーン相対位置値P1を含んだ出力信号を生成する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記分類を実行する分類器(3)が、特定のレーン内において横方向に隣接する複数の位置に対し異なるレーン相対位置値を持つ訓練信号を用いて訓練される、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空間特徴に含まれる情報は、少なくとも一つの道路物体に対する道路位置の空間的関係を、それに関連付けられた2次元道路環境内の領域と共に表すものである、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
道路物体に対する前記空間的関係は、道路物体に対する相対的な道路位置の幾何学的特性を捕捉するものである、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
道路物体に対する前記空間的関係は、シーン要素によってカバーされる領域内に定められた道路位置の幾何学的特性を捕捉するものである、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
一の道路位置におけるレーンの進路に関する情報を抽出するため、当該一の道路位置についての前記レーン相対位置値が抽出される、
ことを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
多車線の進路又は道路全体の進路を抽出するため、複数の道路位置が分析される、
ことを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ヒューマン・マシン・インタフェースが、自車両の横方向位置が危険であることを警告すべく、当該車両の予測される将来位置のレーン相対位置を当該自車両の運転者に伝える、
ことを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
運転者の運転スキルを向上させるため、ヒューマン・マシン・インタフェースが、レーン内における横方向位置に関するフィードバックを当該運転者に提供する、
ことを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
深さセンサが、付加的な深さ情報を提供する、
ことを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
レーン内の自車両の道路位置のレーン相対位置を推定するシステムであって、
自車両の環境を検知するセンサ手段(1)と、
前記センサ手段(1)から取得された情報から空間特徴を抽出するための空間特徴生成ブロック(2)と、
前記抽出された空間特徴から直接的にレーン相対位置を分類するための分類器(3)と、
を備え、
前記空間特徴生成ブロック(2)は、該レーン内の横方向位置を捕捉する空間特徴を生成するよう構成されており、前記分類器(3)は、該レーン内の前記自車両の相対的な横方向位置を表す値であると共に該自車両の横方向位置により異なる値であって該レーンの両側の各々を最大値及び最小値とした範囲内の連続値で規定される値であるレーン相対位置値P1を含んだ出力信号を生成するよう構成されている、
ことを特徴とする、システム。
【請求項12】
前記分類器(3)は、特定のレーン内の横方向に隣接する複数の位置に対して異なる値を持つ訓練信号を用いて訓練される、
ことを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記空間特徴に含まれる情報は、少なくとも一つの道路物体に対する道路位置の空間的関係を、それに関連付けられた2次元道路環境内の対応する領域と共に表すものである、
ことを特徴とする、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
道路物体に対する前記空間的関係は、道路物体に対する相対的な道路位置の幾何学的特性を捕捉するものである、
ことを特徴とする、請求項11ないし13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
道路物体に対する前記空間的関係は、シーン要素によってカバーされる領域内に定められた道路位置の幾何学的特性を捕捉するものである、
ことを特徴とする、請求項11ないし13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記分類器(3)は、一の道路位置でのレーンの進路に関する情報を抽出するため、当該道路位置についての前記レーン相対位置値P1を抽出するよう構成されている、
ことを特徴とする、請求項11ないし15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記分類器は、多車線の進路又は道路全体の進路を抽出するため、複数の道路位置を分析するよう構成されている、
ことを特徴とする、請求項11ないし16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムは、ヒューマン・マシン・インタフェースを備え、当該ヒューマン・マシン・インタフェースは、自車両の横方向位置が危険であることを警告すべく、当該車両の予測される将来位置のレーン相対位置を当該自車両の運転者に伝える、
ことを特徴とする、請求項11ないし17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記システムは、ヒューマン・マシン・インタフェースを備え、当該ヒューマン・マシン・インタフェースは、運転者の運転スキルを向上させるため、レーン内における横方向位置に関するフィードバックを当該運転者に提供する、
ことを特徴とする、請求項11ないし18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムは、付加的な深さ情報を提供する深さセンサを備える、
ことを特徴とする、請求項11ないし19のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者支援システム又は自律運転のためのレーン相対位置推定のための方法及びシステムを開示する。運転者支援システムは、自動車、バイク、スクータ、又はその他の道路用乗り物の一部であり得る。
【背景技術】
【0002】
〔発明の技術分野及び最新技術〕
本発明は、車両の周囲、特に道路用乗り物の周囲を知覚し及びセンサ入力を処理してシステムに関連する情報を生成するコンピュータ・ビジョン又はその他のセンシング技術に基づく、運転者支援システムの分野に属する。
【0003】
本発明は、特に、自動車、モータバイク、又はその他の任意の陸上ベースの乗り物の一部であり得るセンサベースのコンピューティング・モジュールに、実装することができる。本発明は、例えば自動車を中心市街地の道路で運転する際に遭遇するような、現実的な実世界の交通環境に適用することができる。
【0004】
最新の車両では、人間である運転者は、“能動的安全システム(アクティブ・セーフティ・システム、active safety systems)”の支援を受けることが多い。そのようなアクティブ・セーフティ・システム(以下では、“運転者支援システム”とも称する)は、例えば特許文献1(US 6,212,453 B1)に記載されているようなレーン維持支援システムであり得る。そのようなシステムは、車両環境を物理的に検知して、運転者支援機能を実行するために用いることのできる情報を抽出する。このセンサ信号処理に基づき、運転者支援システムは、視覚的及び/音響的な表現手段に出力することのできる信号を出力する。あるいは、当該信号は、車両状態を警告するための動作を実行するアクチュエータに出力される。そのような動作は、例えば、車両の操舵、減速、又は加速に影響を与え得る。更に、そのような信号に含まれた情報に基づいて、安全ベルトにプリテンションが付与されたり、エアバッグの展開が行われ得る。
【0005】
最新のレーン維持システムは、レーン区分要素(lane delimiting elements)の検出に焦点を当てている。このため、これらのシステムは、特許文献2、3、4(US 20070198146 A1, JP 2007004669 A, or US 2011044503 A1)に記載されているように、通常は、レーンマーキングの位置を検出する。あるいは、特許文献5(US 20110063097 A1)に示されているように、縁石を検出するものとすることもできる。ただし、レーン区分要素に基づくレーン領域特定は、特許文献6(US 2011187863 A1)から知られているように、防護壁(barriers)のような、他のレーン区分要素に基づいて行うこともできる。レーン領域特定は、センサから得られる信号を処理することで行われる。
【0006】
そのようなシステムを構成し、且つそのための交通状況の分析や評価が行われる車両を自車両(ego-vehicle)と称し、自車両が現在置かれているレーンを自レーン(ego-lane)と称する。これらのシステムは、検出した区分要素の位置と進路(コース、course)を用いて、自レーンについてパラメータ化された表現(例えば、自レーン前方の曲率、幅、長さ)を抽出する。これを行うため、特許文献7US 7151996 B2に記載されているような特定のレーンモデルを用い、区切り要素(delimiter)位置の検出された進路に基づいてモデルパラメータの抽出や追跡を行うことができる。その後、レーンモデルパラメータに基づいて、そのレーン内における自車両の現在の(又は将来の)横方向位置が取得され得る。
【0007】
非特許文献1には、区分要素を直接的に検出する代わりに、部分ベース表現を用いてレーン/道路検出を行ったことが記載されている。部分は、幅及び高さを持ち、且つ左右両側方に区切り要素(delimiter)を持つ、2次元レーン領域として定義される。明示的な2値検出の代わりに、エッジマーキングやレーンマーキングの検出についての確率値を用いることが許容される。2次元基礎領域(位置、方位、幅、高さ)のバリエーションを用いることにより、画像におけるレーン構成パーツ(lane parts)の確率分布を得る。これらのレーン構成パーツは、融合されて階層表現となり、1)レーン構成要素の連結としてのレーン全体形状、2)複数のレーンで構成される道路の全体、が検出される。また、その後に、この道路モデルにより、他車両及び自車両の横方向位置の算出が可能となる。
【0008】
横方向位置は、レーン維持支援システムにとって大きな意味を持ち、本発明においてはレーン相対位置と称される。一般に、レーン相対位置は、そのレーン内の或る特定の道路位置の横方向位置(すなわち、そのレーンの境界に対する相対的な横方向位置)を表現する連続値で定義され得る。
【0009】
例えば、道路上の或る位置についてのレーン相対位置の特定は、現在において自車両がどの程度良好にそのレーンの横方向中央を占めているかを示すのに用いられたり(特許文献8WO 2012/126650 A1)、又は現在において自車両がレーン区切り要素に接近して走行しているか否かを示すのに用いられ得る。このレーン相対位置は、安全な中央走行を支援するための情報を運転者に提供するのに用いられ得る。そのような支援された中央走行は、重要性を増している。新しい車両は、レイアウトがあまり明確でないことが多く、運転者は、自身のレーンにおける車両の相対位置を認識する際に困難を覚えるためである。
【0010】
このレーン相対位置は、その他の運転者支援システム(レーン維持支援システムやレーン逸脱警告支援システムなど)や、自律走行用に、直接的にも用いられ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,212,453(B1)号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第20070198146(A1)号明細書
【特許文献3】特開2007−004669号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2011044503(A1)号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第20110063097(A1)号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2011187863(A1)号明細書
【特許文献7】米国特許第7151996(B2)号明細書
【特許文献8】国際公開第2012/126650(A1)号パンフレット
【特許文献9】欧州特許出願公開2574958(A1)号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】“Efficient Scene Understanding for Intelligent Vehicles Using a Part-Based Road Representation”, D. Toepfer, J. Spehr, J. Effertz, C. Stiller, Intelligent Transportation Systems Conference 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
〔発明の目的〕
【0014】
レーン相対位置推定のための本方法及び本システムの目的は、視覚的又は音響的な情報の生成や自律車両制御の基礎となり得る、レーン上の相対位置についての情報を含んだ信号を提供することにより、車両運転者の運転タスクを支援することである。
【0015】
既知のシステムが抱える問題は、そのような相対位置の推定が間接的に行われるということにある。最初のステップにおいてレーンの区切り要素が検出され、その後においてのみ、この情報を用いて、場所についての何らかの位置情報を導出することができる。したがって、目的は、環境(例えば車両環境)の現実の状況を捕捉するセンサ手段から得られた信号に基づいて、道路位置の推定を改善することである。
【0016】
したがって、本発明は、センサデータ(センサ手段から得られる少なくとも一つの信号を意味する)から生成される空間特徴を処理することでレーン相対位置を直接的に特定して、特定の道路位置のレーン相対位置を推定すること提案する。重要な点は、空間特徴が、例えばレーンマーキングや縁石、あるいは完全な2次元レーン構成パーツといった境界要素の、明示的な検出を必要とせず、したがって、公知のシステムに比べて演算量が低減されることである。
【0017】
本発明は、特に、次の2つの側面を備える:
1)レーン相対位置分類器を用い、空間特徴に基づいて、望ましくは連続的な、レーン相対位置を直接的に特定すること
2)レーン相対位置を出力信号として直接的に生成する分類器のための、訓練信号
【課題を解決するための手段】
【0018】
〔本発明の概要〕
上記の問題は、独立請求項に従うシステム及び方法により解決される。
【0019】
本発明に係る方法及びシステムは、レーン相対位置値を抽出することにより、そのレーン内における道路位置の横方向配置を推定する。この抽出の基礎を為すのは、道路環境におけるレーンの幾何学的側面を捕捉する空間特徴であり、当該空間特徴は、センサ手段から取得される信号に含まれる情報から抽出される。そのようなセンサ手段は、車両のフロントガラスに配されて当該車両の前方の環境を検知する画像取得用のカメラとすることができる。本発明の重要な点は、センサ手段の情報から抽出される空間特徴が、レーン上の或る特定の位置についての、道路/レーン区切り要素に対する横方向位置を捕捉する(捉える)ものであること、即ち、横方向位置が変われば、異なる空間特徴値が与えられるという点である。
【0020】
レーン上の或る特定の位置から、検出したレーンまでの距離値は、ありふれた空間特徴の一つである。しかしながら、この空間特徴は、レーン境界又は2次元レーン構成パーツ(2D lane part)の明示的な検出に必ず必要なものである。これとは異なり、本発明は、最初のステップにおいてそのようなレーン区切り要素の明示的な検出を行うことなく、他の空間特徴からレーン相対位置の直接的な分類を行うことを提案する。したがって、本発明では、空間特徴は、距離値以外の、レーン上の或る特定の場所との相関関係を持つ何らかの情報を含み得る。
【0021】
そのような空間特徴がどのような方法で生成されるのかは、本発明ではそれほど重要ではなく、最新技術から公知の、複数の方法が存在する。ただし、さらなる説明を目的として、詳細には、特許文献9に記載された方法で、空間特徴の生成が行われるものとする。したがって、当該文献に記載された内容及び全ての特徴は、当該空間特徴の生成に関して明示的に参照されるものとする。そのような特徴抽出プロセスは、視覚的かつ空間的な特徴を結合することで実現される。この特徴算出方法は、例えば道路上の又は或る特定のレーン内において定義された位置についての空間特徴を提供する。そのような空間特徴は、例えば全ての種類の道路及びレーンの区切り要素、又は道路領域の広がりのような、多数のシーン要素(scene elements)についての空間的特徴を、全体論的な方法で捕捉するものである。
【0022】
本発明に係る提案されたレーン相対位置分類においては、特許文献9の一部に記載されているような特徴算出方法の、出力すなわち空間特徴が、入力として用いられる。既に上述したように、一般に、相異なるレーン相対位置(即ち、レーン内において横方向に隣接する複数の位置)を区別して特定することを可能にし得る空間特徴が生成されるものであれば、任意の特徴算出方法を用いることができる。重要な点は、その特徴算出が、何らかの道路物体の領域(例えば、アスファルト領域、縁石、車両のようなもの)を考慮するものであることである。
【0023】
空間特徴に基づいて、レーン相対位置分類器が、レーン内におおえる或る道路位置の横方向位置を推定する。すなわち、レーン相対位置値が生成される。
【0024】
レーン相対位置分類器は、例えば、標準的な機械学習アルゴリズムを適用することにより実現し得る。例えば、サポートベクターマシン(Support Vector Machine)、ニューラルネットワーク(神経回路網、Neuronal Network)、又はエイダブースト(AdaBoost)アルゴリズムを、レーン相対位置分類器として用いることができる。分類器の出力として、レーン相対位置についての情報を含む信号が生成される。その後、当該信号は、更なる評価や作動のために用いられ得る。
【0025】
本発明の有利な態様及び特徴は、従属請求項において主張される。
【0026】
レーン相対位置は、望ましくは連続値で表現されるが、技術的その他の実施上の理由から離散値として実現されるものとすることもできる。
【0027】
機械学習を用いて分類器がそのようなレーン相対位置値を出力することができるようになるためには、当該分類器は、十分な訓練信号を用いて訓練される必要がある。望ましくは、レーン相対位置分類器のための空間訓練信号が用いられる。例えば特許文献9などの先行技術では、2値訓練信号を用いて、道路と非道路などの、2つのクラスの識別が行えるように分類器が訓練される。通常、複数のクラス(例えば、複数のレーン)を識別できるように分類器を訓練するため、個別の訓練信号が用いられる。すなわち、当該訓練信号は、特定のクラス(例えば、特定のレーン)毎に、定数値を持つ。先行技術とは異なり、本発明では、レーン相対位置の特性を表す訓練信号、すなわち、或る特定のレーン内における横方向に隣接する複数の位置についてそれぞれ異なる数値を有する訓練信号を用いることを提案する。
【0028】
例えば、或る特定のレーン内において0(ゼロ)から1までの連続範囲を持つ複数のサンプルt
iを含む訓練信号Tを考える。例えば、
・訓練サンプルt
iが左レーンの区切り要素に近い道路位置に対応するものであるときは、その値は0に近い。
・訓練サンプルt
iがレーンの中心に近い道路位置に対応するものであるときは、その値は0.5に近い。
・訓練サンプルt
iが右レーンの区切り要素に近い道路位置に対応するものであるときは、その値は1に近い。
【0029】
上述した訓練ストラテジの結果として、レーン相対位置分類器は、少なくとも一つの道路位置について、連続値であるレーン相対位置値P
1で表されるレーン相対位置を生成する。この例では、レーン相対位置値は0から1の範囲の値である:P
1=0は、現在の道路位置が、そのレーンの最も左側に相当する横方向位置であることを示し、P
1=1は、現在の位置が、そのレーンの最も右側に相当する横方向位置であることを示している。
【0030】
すなわち、レーン相対位置値は、レーン上の任意の位置について、その位置が例えばレーンの中心やレーン区切り要素にどの程度近いかを表している。したがって、本レーン相対位置推定方法は、運転者支援システムに用いることができる。自車両の将来位置のレーン相対位置値は、当該車両の走行経路の、レーン中心からのずれ量や、レーンからの逸脱を表すからである。自車両の将来位置は、例えば、速度や操舵角などの車両状態パラメータから取得することができる。
【0031】
道路物体との空間的な関係は、本質的又は非本質的であり得る。すなわち、当該空間的関係は、道路物体に対する相対的な道路位置の幾何学的特性を捕捉するものであるか、又は、シーン要素(scene element)によりカバーされるエリアの範囲内にある道路位置の、幾何学的特性を捕捉するものである。
【0032】
望ましい実施形態では、一の道路位置におけるレーンの進路に関する情報を抽出するため、当該道路位置についてのレーン相対位置値が抽出される。その利点は、運転者の車両を現在のレーンの中央に置くように、当該運転者を簡単に支援することができることにある。
【0033】
他の望ましい実施形態では、多車線の進路又は道路全体の進路を抽出するため、複数の道路位置が分析される。これは、自レーンに加えてより広いエリアや他の交通参加者の挙動を加えて運転者支援を行うべきときに、特に有利である。これは、レーン変更操縦の支援のための軌道計画や任意の種類の走行経路検出にとって有用となり得る。
【0034】
さらに、望ましくは、ヒューマン・マシン・インタフェース(Human Machine Interface、HMI)が、車両の横方向位置が危険であることを警告すべく、当該車両の予測される将来位置のレーン相対位置を当該車両の運転者に伝える。
【0035】
これに代えて又はこれに加えて、運転者の運転スキルを向上させるため、ヒューマン・マシン・インタフェースが、レーン内における横方向位置に関するフィードバックを当該運転者に提供するものとすることができる。
【0036】
システムが深さセンサ(depth sensor)を備え、当該システムが特定したレーン相対位置に加えて、そのような深さセンサにより測定された深さが用いられると、特に利点がある。“深さセンサ”は、ステレオカメラを用いて実現されるものとすることもできる。この場合には、当該ステレオカメラにより取得されたステレオ画像についての画像処理により、深さが推定される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本発明の態様及び特徴は、以下の図面を参照して説明される。
【
図1】自動車の運転支援に用いられる本発明の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】HMIの一例として、5つの異なる段階でのディスプレイ表示を示す図である
【
図3】レーン相対位置値が危険な値である場合と危険な値でない場合の状況を例示する図である。
【
図4】4車線道路についてのレーン相対位置を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、本発明が実施され得る運転者支援システムのブロック図である。また、各ブロックは、それぞれ本発明の方法を実行する異なるステップを表している。
【0039】
最初のステップでは、自車両の環境が検知される。この環境検知は、検知された現実の状況に関する空間的関係についての知識の導出を可能とする情報の生成に適した、任意のセンサ手段によって実行されるものとすることができる。この検知にはカメラを用いることが望ましいが、当該カメラのほか、レーザやソナーセンサを検知手段として用いて、この検知を行うものとすることができる。勿論、それらのユニットを組み合わせて検知手段を構成することもできる。
【0040】
検知手段1により出力された信号は、特徴生成ブロック2へ渡される。当該ブロック2は、上述したように、特許文献9に記載された如く作用するものとすることができる。特徴生成ブロック2では、空間特徴が抽出される。検知手段1から出力される信号を特徴生成ユニット2へ渡す前に、当該信号を処理することもできる。このような処理は、特に、複数の信号が、複数の異なる検知ユニットから取得されて、空間特徴抽出の基礎として用いられる場合に有用である。
【0041】
空間特徴生成ブロック2で生成された空間特徴は、次に、分類器3へ与えられる。分類器3では、分類が実行されて、レーン相対位置値が出力されるか、又はレーン相対位置に関する情報を含む信号が出力される。上述したように、このレーン相対位置値又は信号は、レーン幅の方向における当該レーンに対する相対的な横方向位置を表す連続値であることが望ましい。
【0042】
最後に、このレーン相対位置値が出力され、更なる分析が行われ得る。分類器出力の更なる利用についての一例として、
図1にはインタフェース4が示されている。分析に代えて、そのようなレーン相対位置値に基づき、運転者警報が生成されるようにすることもできる。ディスプレイ/スピーカ4.1により示すように、上記出力信号に基づいて生成される警報は、視覚的警報、又は音響的警報とすることができる。レーン相対位置に応じた視覚的な警報の一例を、
図2を参照して説明する。これに代えて、操舵角を修正したり、車両の状態の変化に影響を与えるために設けられた当該車両の他の任意のアクチュエータを作動させるような、直接的な相互作用動作を実行してもよい。利用可能なアクチュエータを、車両制御4.2としてまとめて示す。
【0043】
視覚的な運転者警報の生成の一例を、
図2に示す。自車両について予想される将来の一の道路位置のレーン相対位置に基づいて、HMIは、自レーン内での予想される横方向配置を図示して、運転者が最適な横方向レーン位置を選択するのを助ける。これは、例えば運転者にとってレーン中央への調整が難しい狭い高速道路において、有用である。出力されたレーン相対位置により、自車両がレーンの中央からどの程度離れているかを特定することができる。理想的な相対位置から右側へ向かって大きなオフセットが生じている場合、運転者には、
図2a)に示すような2重の矢印で警報が与えられる。上記理想的な相対位置は、必ずしもレーン中央である必要はない。相対的なオフセットが小さいと認識された場合、
図2b)に示すように、必要とされる修正方向を示す一つの小さな矢印だけが表示される。
【0044】
車両が既にレーンの中央にある場合(または、当該レーン内の理想的な相対位置が中央でない場合には、当該理想的な相対位置にある場合)、例えば
図2c)に示すような楕円又は緑色の点のような表示が示される。当然ながら、
図2d)、2e)に示すように、左方向への偏差がある場合には、
図2a)、2b)と同様の表示が実行され得る。
【0045】
図2に示した例は、これらに限られるものではなく、運転者に対し良好なレーン位置に車両を戻すために必要な修正を示すべく、他の任意の視覚的な方法を用いることができることは、自明である。
【0046】
図3は、3つの状況を示している。第1は、車両が正しく中央に置かれている状況である(左図)。第2は、右側へ向かって僅かなオフセットが認識され得る状況であり(中央の図)、最後は、車両が危険なレーン位置にあると認識され得る状況である(右図)。
【0047】
図2を参照して示したように、危険なレーン相対位置であると推定される場合、HMIを用いて当該車両の運転者に警告を与えることができる。そのような危険なレーン相対位置は、2つの閾値T
1及びT
2により定義することができる。P
1≦T
1の場合、レーン相対位置は、(左側に対して)危険な状態であり、P
1≧T
2の場合、レーン相対位置は、(右側に対して)危険な状態である。その結果として行われる警告は、それぞれ、
図2e)及び
図2a)に示すようなものとなる。レーン相対位置値がT
1>P
1≧T
2であるときは、車両は危険状態ではない。ただし、当該車両は、なおも中央から僅かにずれている場合もあり得る。
図3の中央の図に示すような状況において運転者を更に支援すべく、各側方に対する比較的小さなオフセットについての更なる閾値を導入し、これを用いて
図2d)に示すような警報を発出するものとすることができる。もちろん、右側に対する危険でないオフセットの場合も、同様とすることができる。各側方に対してそのような第2の閾値を更に設定することで、中央からの僅かな不定のオフセットによって運転者に対する警告が発出されないようにすることができる。これにより、運転者が過剰に反応することを防止することができる。
【0048】
自車両が走行するレーン上での位置特定という側面を超えて、隣接するレーン上の道路位置のレーン相対位置も、有用な情報である。例えば、レーン相対位置を用いて、他のレーンでの当該レーンの中央の位置(P
i=0.5)を見出すことができる。
【0049】
これにより、複数の道路位置に対して本発明の提案方法を適用して、多車線の進路の特定を支援することができる。これは、例えば、道路環境における複数レーンのレーン相対位置の特徴的なパターンを、次のように特定することにより行うことができる。
・同一のレーンに属する横方向に隣接する複数の位置は、レーン相対位置値の直線的な勾配で表現される(
図4参照)
・2つのレーン間での横方向に隣接する複数の位置は、レーン相対位置値の不連続によって表現される(
図4参照)
【0050】
図4では、白色は、小さなレーン相対位置値P1を示している。黒色は、大きなレーン相対位置値P1を示している。
図4から解るように、一のレーンから次のレーンへの遷移部分の、互いに隣接する道路位置は、黒から白への又は白から黒への変化に対応する。したがって、対応するレーン相対位置値P
iの不連続は、一方のレーン又は他方のレーンに属する位置を明確に示している。
【0051】
したがって、例えば横方向に隣接する位置に対して線形モデルフィッティングを行うことにより、多車線を検出して分離することができる。
【0052】
既存の最新技術との重要な相違点は、本発明の提案手法においては、レーン形状が特定の形状である必要はなく、従って当該レーンの区切り要素を明示的に特定することなく各位置についての値P1を得るという点である。換言すれば、駐車中の自動車や付加的なレーンの開始又は市街道路の開始によってレーンが標準的なレーンサイズより狭くなっている場合や広くなっている場合でも、このクラス分け処理(分類処理)は、その基礎となる特徴が、レーン形状が特定形状であるという期待に基づいているものでなくても、適切な値を出力する。これは、明示的なモデルや暗示的なレーン部分モデルにおいて距離を算出する最新の位置推定と異なる点である。
【0053】
分類器を訓練するための基本的な手法(ストラテジ)について上述した。このストラテジは、次のように有利に拡張することができる:レーン相対位置は、個々のレーンの合成として道路領域の全体を捕捉することを可能とする。当該道路の境界は、外側のレーンの外側の境界で構成される。道路と道路外の周辺部分とを良好に分離すべく、訓練信号は、例えば道路内の横方向位置(複数)を当該道路の外側周辺部と明確に区分できるように、道路の横方向外側にあるサンプル(複数)も含むものとすることができる。
【0054】
内側周辺部(I領域)は、道路区切り要素に近い道路領域の部分を表し、外側周辺部(O領域)は当該道路区切り要素に近い道路領域の外側の領域を表す。これは、例えば道路逸脱警報等の、ADAS(先進運転者支援システム、Advanced Driver Assistance Systems)における利用の際に重要となり得る。危険なレーン相対位置であるか否かを評価するためには、レーン相対位置を、I領域、O領域、及びその他の道路領域から区別することが重要となり得る。
【0055】
本発明の構成及びその詳細の説明のため、先進運転者システム(Advanced Driver Assistance System)を用いた。しかしながら、本発明は、自律車両にも用いることができる。このことは、分類器から出力されるレーン相対位置信号を用いて、車両の操舵システムを直接的に作動させる制御信号を生成する場合には、特に明らかである。