(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダイクロイックミラーは、前記第1の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より長い第1の波長以上の光を透過し、前記第1の波長未満の光を反射する第1の特性と、前記第1の直線偏光と直交する第2の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より短い第2の波長以上の光を透過し、該第2の波長未満の光を反射する第2の特性を備え、前記反射領域から前記1/4波長板を介して入射する前記第2の直線偏光の一部を前記偏光分離素子側へ反射し、
前記偏光分離素子は、前記第1の直線偏光を反射し、前記第2の直線偏光を透過する特性を備え、前記ダイクロイックミラーからの前記第2の直線偏光を透過させる、請求項1に記載の光源装置。
前記ダイクロイックミラーは、前記第1の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より長い第1の波長以下の光を透過し、前記第1の波長より長い光を反射する第1の特性と、前記第1の直線偏光と直交する第2の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より短い第2の波長以下の光を透過し、該第2の波長より長い波長の光を反射する第2の特性を備え、前記反射領域から前記1/4波長板を介して入射する前記第2の直線偏光の一部を前記偏光分離素子側へ透過させ、
前記偏光分離素子は、前記第1の直線偏光を透過し、前記第2の直線偏光を反射する特性を備え、前記ダイクロイックミラーからの前記第2の直線偏光を反射させる、請求項1に記載の光源装置。
黄色透過フィルター、赤色透過フィルター、緑色透過フィルター及び拡散領域を有し、前記蛍光体ユニットからの光が前記ダイクロイックミラーを介して前記黄色透過フィルター、赤色透過フィルター、緑色透過フィルター及び拡散領域に順次入射するように可動するカラーフィルターユニットを、さらに有し、
前記蛍光体領域は、黄色蛍光を発する蛍光体が設けられた黄色蛍光体領域と、緑色蛍光を発する蛍光体が設けられた緑色蛍光体領域と、を有し、
前記黄色蛍光体領域からの前記黄色蛍光が前記黄色透過フィルター及び赤色透過フィルターに順次入射し、前記緑色蛍光体領域からの緑色蛍光が前記緑色透過フィルターに入射し、前記反射領域からの青色光が前記拡散領域に入射する、請求項1から7のいずれか1項に記載の光源装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0022】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態による光源装置の構成を示す。
【0023】
図3を参照すると、光源装置1は、光源1a、コリメータレンズ1b、レンズ1c〜1e、1j、1k、1m、偏光分離素子1f、拡散板1g、ダイクロイックミラー1h、1/4波長板1i、蛍光体ユニット1l及びカラーフィルターユニット1nを有する。
【0024】
光源1aは、青色の波長域にピーク波長を有する青色光を出力する青色レーザーダイオード(LD)よりなる。例えば、光源1aは、6×4の行列状に配置された青色LDよりなる。ただし、青色LDの数は24個に限定されない。青色LDの数は、必要に応じて増減してもよい。
【0025】
コリメータレンズ1bは、青色LD毎に設けられ、青色LDより出力された青色光を平行光束に変換する。
【0026】
レンズ1c〜1eは、光源1aからコリメータレンズ1bを介して入射する各青色光(入射光束)を、光束径を縮小した平行光束に変換する。出射光束の径を入射光束よりも小さくすることで、レンズ1c〜1e以降に配置される部材のサイズを小さくすることができる。ここでは、3つのレンズ1c〜1eが用いられているが、レンズの数は3つに限定されない。レンズの数は、必要に応じて増減してもよい。
【0027】
レンズ1c〜1eより出射した青色光は、偏光分離素子1fを介してダイクロイックミラー1hに入射する。偏光分離素子1fとダイクロイックミラー1hの間の光路上には、拡散板1gが配置されている。拡散板1gは、偏光分離素子1fからの青色光を拡散する。拡散角は、例えば3°程度である。ここで、拡散角は、光束の中心を通る光線(中心光線)と光束の最も外側を通る光線とのなす角度である。
【0028】
偏光分離素子1fは、S偏光とP偏光を分離する特性を有する。ここでは、偏光分離素子1fは、S偏光を反射し、P偏光を透過する特性を有し、光源1aは、その出力光(青色光)がS偏光で分離素子1fに入射するように配置されている。偏光分離素子1fとして、偏光板やダイクロイックミラーを用いることができる。
【0029】
偏光分離素子1fで反射された青色光(S偏光)は、ダイクロイックミラー1hに入射する。ダイクロイックミラー1hは、S偏光で入射する光に対して、光源1aの波長(青色光の波長)よりも長い第1の波長以上の光を透過し、第1の波長未満の光を反射する特性を有する。また、ダイクロイックミラー1hは、P偏光で入射する光に対して、光源1aの波長(青色光の波長)よりも短い第2の波長以上の光を透過し、第2の波長未満の光を反射する特性を有する。このような特性を有するダイクロイックミラー1hは、誘電体多層膜より実現できる。
【0030】
ダイクロイックミラー1hは、偏光分離素子1fからの青色光(S偏光)を蛍光体ユニット1lに導く。ダイクロイックミラー1hと蛍光体ユニット1lの間の光路上に、1/4波長板1i及びレンズ1j、1kが配置されている。
【0031】
蛍光体ユニット1lは、励起光によって励起されて蛍光を発する蛍光体が設けた蛍光体領域と反射領域とが円周方向に順に配置された蛍光体ホイールと、蛍光体ホイールを回転する駆動部(モーター)とを有する。
【0032】
図4に、蛍光体ホイールの一例を示す。
図2を参照すると、蛍光体ホイールは、黄色蛍光体領域10Y、緑色蛍光体領域10G及び反射領域10Bを有する。黄色蛍光体領域10Y、緑色蛍光体領域10G及び反射領域10Bは、円周方向に並ぶように形成されている。
【0033】
反射領域10Bは、光源1aからの青色光を反射する。黄色蛍光体領域10Yは、励起光により励起されることで黄色の蛍光を発光する蛍光体を含む。緑色蛍光体領域10Gは、励起光により励起されることで緑色の蛍光を発光する蛍光体を含む。黄色蛍光体及び緑色蛍光体はいずれも、光源1aからの青色光で励起することができる。なお、黄色蛍光は、緑色から赤色の波長範囲の光を含む。
【0034】
黄色蛍光体領域10Y、緑色蛍光体領域10G及び反射領域10Bそれぞれの円周方向における面積の割合(円周方向の分割比)は、光源装置1の出力光に含まれる黄色光、赤色光、緑色光及び青色光それぞれの光強度のバランスに応じて適宜に設定される。
【0035】
ダイクロイックミラー1hからの青色光(S偏光)は、1/4波長板1iを通過して円偏光となる。レンズ1j、1kは、1/4波長板1iを通過した青色光(円偏光)を蛍光体ユニット1lの蛍光体ホイール上に集光する。
【0036】
蛍光体ホイールを回転することで、レンズ1kからの青色光(円偏光)が、黄色蛍光体領域10Y、緑色蛍光体領域10G及び反射領域10Bに順次照射される。黄色蛍光体領域10Yでは、青色光により励起された黄色蛍光体が黄色蛍光を発する。緑色蛍光体領域10Gでは、青色光により励起された緑色蛍光体が緑色蛍光を発する。反射領域10Bは、レンズ1kからの青色光をレンズ1kの方向に反射する。
【0037】
黄色蛍光体領域10Yからの黄色蛍光(非偏光)、緑色蛍光体領域10Gからの緑色蛍光(非偏光)、及び反射領域10Bからの青色光(円偏光)はそれぞれ、レンズ1k、レンズ1j、1/4波長板1iを順次通過してダイクロイックミラー1hに入射する。ここで、反射領域10Bからの青色光(円偏光)は、1/4波長板1iを通過してP偏光になる。この青色光(P偏光)が、ダイクロイックミラー1hに入射する。
【0038】
1/4波長板1iを通過した黄色蛍光(非偏光)、緑色蛍光(非偏光)及び青色光(P偏光)は、ダイクロイックミラー1hを透過する。ダイクロイックミラー1hを透過した黄色蛍光、緑色蛍光及び青色光は、レンズ1mによって集光される。
【0039】
カラーフィルターユニット1nは、カラーホイールを備える。このカラーホイールは、レンズ1mの焦点位置よりもレンズ1m側に配置されている。
【0040】
図5に、カラーホイールの一例を示す。
図5を参照すると、カラーホイールは、黄色透過フィルター11Y、赤色透過フィルター11R、緑色透過フィルター11G及び拡散板11Bを有する。黄色透過フィルター11Y、赤色透過フィルター11R、緑色透過フィルター11G及び拡散板11Bは、円周方向に並ぶように形成されている。
【0041】
黄色透過フィルター11Y及び赤色透過フィルター11Rの領域は、
図4に示した蛍光体ホイールの黄色蛍光体領域10Yに対応し、緑色透過フィルター11G及び拡散板11Bはそれぞれ、
図4に示した蛍光体ホイールの緑色蛍光体領域10G及び反射領域10Bに対応する。黄色透過フィルター11Y、赤色透過フィルター11R、緑色透過フィルター11G及び拡散板11Bの円周方向における面積の割合は、
図4に示した蛍光体ホイールのそれぞれ対応する領域の割合と同じである。
【0042】
なお、黄色透過フィルター11Y及び赤色透過フィルター11Rの円周方向における面積の割合は、光源装置1の出力光に含まれる黄色光、赤色光、緑色光及び青色光それぞれの光強度のバランスに応じて適宜に設定される。
【0043】
カラーフィルターユニット1nと蛍光体ユニット1lは、互いに同期して回転するように構成されている。黄色蛍光体領域10Yからの黄色蛍光は黄色成分の光及び赤色成分の光を含み、黄色成分の光は黄色透過フィルター11を透過し、赤色成分の光は赤色透過フィルター11Rを透過する。
【0044】
緑色蛍光体領域10Gからの緑色蛍光は、緑色透過フィルター11Gを透過する。反射領域10Bからの青色光は、拡散板11Bを通過する。拡散板11Bからは青色光の拡散光が出射される。拡散角は、例えば10°程度であるが、必要に応じて適宜に変更することができる。
【0045】
カラーフィルターユニット1nを通過した黄色光、赤色光、緑色光及び青色光が、光源装置1の出力光である。
【0046】
本実施形態では、ダイクロイックミラー1hの入射角依存性を利用し、反射領域10Bからの青色光の中心光線の入射角θが45°より大きくなるようダイクロイックミラー1hを配置することで、S偏光とP偏光との分離が可能な波長域を広げている。例えば、ダイクロイックミラー1hは、入射角θが55°になるように配置されている。これにより、個体差や温度依存性によるLDの発光波長のばらつきの影響を抑制する。なお、入射角は、入射光線と入射点に立てた法線とのなす角度である。
【0047】
図6に、反射領域10Bからの青色光の中心光線の入射角θが55°の場合のダイクロイックミラー1hの分光透過特性を示す。
図6において、縦軸は透過率を示し、横軸は波長(nm)を示す。破線はP偏光の光に対する特性を示し、実線はS偏光の光に対する特性を示す。
【0048】
なお、反射領域10Bからの青色光は拡散光であり、その拡散角は3°である。このため、中心光線の入射角θが55°の場合、ダイクロイックミラー1hに入射する青色拡散光の入射角範囲は52°〜58°である。
図6では、52°、55°、58°のそれぞれの入射角についての特性が示されている。
【0049】
カットオフ波長を透過率が50%になる波長と定義する。入射角55°の特性において、P偏光の光に対するカットオフ波長は429nmであり、S偏光の光に対するカットオフ波長は470nmである。この場合、ダイクロイックミラー1hは、波長が429nm以上のP偏光の光を概ね透過し、波長が429nmより短いP偏光の光を概ね反射する。また、ダイクロイックミラー1hは、波長が470nm以上のS偏光の光を概ね透過し、波長が470nmより短いS偏光の光を概ね反射する。
【0050】
入射角52°の特性において、P偏光の光に対するカットオフ波長は435nmであり、S偏光の光に対するカットオフ波長は473nmである。この場合、ダイクロイックミラー1hは、波長が435nm以上のP偏光の光を概ね透過し、波長が435nmより短いP偏光の光を概ね反射する。また、ダイクロイックミラー1hは、波長が473nm以上のS偏光の光を概ね透過し、波長が473nmより短いS偏光の光を概ね反射する。
【0051】
入射角58°の特性において、P偏光の光に対するカットオフ波長は423nmであり、S偏光の光に対するカットオフ波長は467nmである。この場合、ダイクロイックミラー1hは、波長が423nm以上のP偏光の光を概ね透過し、波長が423nmより短いP偏光の光を概ね反射する。また、ダイクロイックミラー1hは、波長が467nm以上のS偏光の光を概ね透過し、波長が467nmより短いS偏光の光を概ね反射する。
【0052】
図6に示す分光透過特性によれば、入射角52°の特性におけるP偏光のカットオフ波長435nmから入射角58°の特性におけるS偏光のカットオフ波長467nmまでの波長域において、青色拡散光に対するS偏光とP偏光の分離を確実に行うことができる。すなわち、偏光分離可能な波長域は435nm〜467nmであり、その上限と下限の差は32nmである。これは、LDの発光波長のばらつき範囲の上限と下限の差である30nmよりも広い。よって、LDの発光スペクトルのピーク波長が偏光分離可能な波長域の中心の波長付近になるように設計すれば、LDの発光波長のばらつきによる影響を抑制することができる。
【0053】
例えば、発光スペクトルのピーク波長が450nmとなるように設計したLDにおける発光波長のバラつき範囲は、435nm〜465nm程度であり、偏光分離可能な波長域内である。よって、LDの発光波長のばらつきによる影響を抑制することができる。
【0054】
図7に、比較例として、中心光線の入射角が45°の場合のダイクロイックミラーの分光透過特性を示す。
図7において、縦軸は透過率を示し、横軸は波長(nm)を示す。破線はP偏光の光に対する特性を示し、実線はS偏光の光に対する特性を示す。
図6と同様、拡散角3°の青色拡散光がダイクロイックミラーに入射する。青色拡散光の入射角範囲は42°〜48°である。
図7では、42°、45°、48°のそれぞれの入射角についての特性が示されている。
【0055】
入射角45°の特性において、P偏光の光に対するカットオフ波長は437nmであり、S偏光の光に対するカットオフ波長は465nmである。この場合、ダイクロイックミラーは、波長が437nm以上のP偏光の光を概ね透過し、波長が437nmより短いP偏光の光を概ね反射する。また、ダイクロイックミラーは、波長が465nm以上のS偏光の光を概ね透過し、波長が465nmより短いS偏光の光を概ね反射する。
【0056】
入射角42°の特性において、P偏光の光に対するカットオフ波長は443nmであり、S偏光の光に対するカットオフ波長は468nmである。この場合、ダイクロイックミラーは、波長が443nm以上のP偏光の光を概ね透過し、波長が443nmより短いP偏光の光を概ね反射する。また、ダイクロイックミラーは、波長が468nm以上のS偏光の光を概ね透過し、波長が468nmより短いS偏光の光を概ね反射する。
【0057】
入射角48°の特性において、P偏光の光に対するカットオフ波長は431nmであり、S偏光の光に対するカットオフ波長は462nmである。この場合、ダイクロイックミラーは、波長が431nm以上のP偏光の光を概ね透過し、波長が431nmより短いP偏光の光を概ね反射する。また、ダイクロイックミラーは、波長が462nm以上のS偏光の光を概ね透過し、波長が462nmより短いS偏光の光を概ね反射する。
【0058】
図7に示す比較例の分光透過特性によれば、入射角42°の特性におけるP偏光のカットオフ波長443nmから入射角48°の特性におけるS偏光のカットオフ波長462nmまでの波長域において、青色拡散光をS偏光とP偏光の分離を行うことができる。しかし、この偏光分離可能な波長域443nm〜462nmの上限と下限の差は19nmである。これは、LDの発光波長のばらつき範囲の上限と下限の差である30nmよりも狭い。よって、LDの発光波長のばらつきによる影響を受ける。
【0059】
上記のように、本実施形態では、反射領域10Bからの青色光の中心光線の入射角θが45°より大きい角度、具体的には、55°になるようダイクロイックミラー1hを配置することで、LDの発光波長のばらつきによる影響を抑制することができる。
【0060】
ただし、ダイクロイックミラー1hの透過率は入射角θの増大に伴って低下する。例えば、
図7に示した分光透過特性では、偏光分離可能な波長域におけるP偏光の透過率は略100%であるのに対して、
図6に示した分光透過特性では、偏光分離可能な波長域におけるP偏光の透過率は95%である。このため、反射領域10Bからの青色光(P偏光)の一部はダイクロイックミラー1hによって反射される。
【0061】
ダイクロイックミラー1hで反射された青色光(P偏光)が光源1aまで戻ってしまうと、LDの発振動作が不安定になり、LDの出力が低下する。特に、反射領域10Bと光源1a(LDの発光点)が結像関係にある場合は、反射領域10Bからの青色光が光源1aの発光点へ戻るため、LDの出力低下の問題はより顕著なものとなる。
【0062】
本実施形態では、ダイクロイックミラー1hから光源1a側に戻る青色光を除去するために、ダイクロイックミラー1hと光源1aの間の光路上に偏光分離素子1fが配置されている。ダイクロイックミラー1hで反射された青色光(P偏光)は、偏光分離素子1fを透過する。偏光分離素子1fを透過した青色光(P偏光)は、光源1aの方向とは異なる方向に進み、光源1aの発光点へは戻らない。よって、LDの発振動作が不安定になることはない。
【0063】
以上のように、本実施形態の光源装置によれば、個体差や温度依存性によるLDの発光波長のばらつきの影響を抑制し、かつ、戻り光による光源の出力低下を防止することができる。
【0064】
なお、反射領域10Bからの青色光の中心光線の入射角θは55°に限定されない。入射角θが45°より大きければ、S偏光とP偏光との分離が可能な波長域を広げることができ、その結果、個体差や温度依存性によるLDの発光波長のばらつきの影響を抑制することができる。
【0065】
ただし、入射角θが45°より大きく、55°未満の場合は、ダイクロイックミラー1hの偏光分離が可能な波長域の一部がLDの発光波長のばらつきの範囲と重なる場合がある。
【0066】
例えば、偏光分離が可能な波長域の上限側がLDの発光波長のばらつきの範囲と重なった場合は、光源1aとして使用するLDによっては、LDからの励起光(S偏光)の一部がダイクロイックミラー1hを透過してしまい、その結果、蛍光体ユニット1lに照射される励起光の強度が低下する。この場合、カラーフィルターユニット1nから出射した黄色光、赤色光、緑色光及び青色光の全ての光強度が低下する。
【0067】
一方、偏光分離が可能な波長域の下限側がLDの発光波長のばらつきの範囲と重なった場合は、光源1aとして使用するLDによっては、蛍光体ユニット1lの反射領域10Bからの青色光(P偏光)の一部がダイクロイックミラー1hによって光源1a側に反射される。この場合、カラーフィルターユニット1nから出射した黄色光、赤色光、緑色光及び青色光のうち、青色光の光強度が低下する。この場合の投射画像の輝度への影響は、上記の偏光分離が可能な波長域の上限側がLDの発光波長のばらつきの範囲と重なった場合のそれよりも十分に小さい。
【0068】
したがって、入射角θが45°より大きく、55°未満の場合は、偏光分離が可能な波長域の上限の波長がLDの発光波長のばらつきの範囲の上限の波長よりも長くなるように設定することが望ましい。
【0069】
より望ましくは、偏光分離が可能な波長域の上限の波長がLDの発光波長のばらつきの範囲の上限の波長よりも長く、かつ、偏光分離が可能な波長域の下限の波長がLDの発光波長のばらつきの範囲の下限の波長よりも短くなるように設定する。例えば、LDの発光波長のばらつきの範囲の上限と下限の差は30nmであるので、S偏光の分光透過特性のカットオフ波長とP偏光の分光透過特性のカットオフ波長の差が少なくとも30nmになるように設定する。これにより、LDの発光波長のばらつきの影響を確実に抑制することができる。
【0070】
また、入射角θの増大は、ダイクロイックミラー1hの偏光分離可能な波長域におけるP偏光の透過率が低下し、光源装置1の出力光強度が低下する場合がある。加えて、入射角θの増大は、ダイクロイックミラー1hの大型化やコスト増大、光源装置の大型化を招く場合もある。
【0071】
具体的に説明すると、光源1aからの青色光や蛍光体ホイールからの蛍光及び青色光はいずれも平行光束としてダイクロイックミラー1hに入射する。この場合、入射角θが増大すると、ダイクロイックミラー1hの光入射領域が広がる。光入射領域が広がると、ダイクロイックミラー1hのサイズを大きくする必要があり、ダイクロイックミラー1h自体のコストが増大する。
【0072】
また、ダイクロイックミラー1hのサイズが大きくなると、1/4波長板1iとレンズ1mの間隔を大きくする必要があり、その結果、光源装置1の大型化を招く。
【0073】
さらに、蛍光体ホイールからの青色光の光軸とダイクロイックミラー1hとのなす角度が小さいほど、1/4波長板1iとレンズ1mの間隔は大きくなる。入射角θが増大すると、蛍光体ホイールからの青色光の光軸とダイクロイックミラー1hとのなす角度が小さくなるため、1/4波長板1iとレンズ1mの間隔が大きくなり、その結果、光源装置1の大型化を招く。
【0074】
上記各問題を考慮すると、入射角θは50°〜60°の範囲に設定することが望ましい。
【0075】
また、拡散角が3°拡散板1gを用いた場合は、入射角θは55°に設定することが望ましい。この場合は、LDの発光波長のばらつきの影響を確実に抑制することができ、かつ、ダイクロイックミラー1hの大型化やコスト増大及び光源装置の大型化やコスト増大を抑制することができる。
【0076】
(プロジェクタ)
図8に、
図3に示した光源装置1を備えるプロジェクタの構成を示す。
【0077】
図8を参照すると、プロジェクタは、光源装置1、照明光学系2、投射光学系3及び表示素子4を有する。
【0078】
照明光学系2は、光源装置1の出力光を表示素子4に導くとともに、矩形かつ均一な光を表示素子4に供給する。照明光学系2は、ライトトンネル2a、レンズ2b、2c、2e及びミラー2dを有する。
【0079】
ライトトンネル2aは、直方体形状のものであって、光源装置1の出力光が一方の端部より内部に入射し、入射した光が内部を伝搬して他方の端部より出射される。ライトトンネル2aの一方の端部の面(入射面)は、
図3に示した光源装置1のレンズ1mの焦点位置に配置されている。蛍光体ユニット1lの蛍光体ホイールの照射面とライトトンネル2aの入射面とは結像関係にある。
【0080】
ライトトンネル2aの他方の端部より出射した光は、レンズ2b、2c、ミラー2d及びレンズ2eを介して表示素子4に照射される。レンズ2b、2c、2eは集光レンズである。
【0081】
表示素子4は、映像信号に応じて照明光学系2からの光束を空間的に変調して画像を形成する。表示素子4は、例えば、ディジタルマイクロミラーデバイス(DMD)である。DMDは、複数の微小ミラーを有し、各微小ミラーは、駆動電圧に応じて角度が変化するように構成されており、オン状態を示す駆動電圧が供給された場合とオフ状態を示す駆動電圧が供給された場合とで反射角度が異なる。映像信号に応じて各微小ミラーをオンオフ制御することで、入射光束を空間的に変調して画像を形成する。なお、表示素子4として、DMDの他、液晶パネルなどを用いることもできる。
【0082】
投射光学系3は、表示素子4に形成された画像を投射面上に拡大投射する。投射面は、スクリーンや壁など、画像を投射できるものであればよい。
【0083】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態の光源装置について説明する。
【0084】
本実施形態の光源装置は、
図3に示した光源装置1において、S偏光及びP偏光の関係が逆になるように構成したものである。具体的には、
図3において、偏光分離素子1f、拡散板1g、ダイクロイックミラー1h、レンズ1m及びカラーフィルターユニット1nはそのままの配置とする。光源1a、コリメータレンズ1b及びレンズ1c〜1eを、偏光分離素子1fの拡散板1g側とは反対側に配置する。1/4波長板1、レンズ1j、1k及び蛍光体ユニット1lを、ダイクロイックミラー1hの偏光分離素子1f側とは反対側に配置する。
【0085】
偏光分離素子1fは、S偏光を反射し、P偏光を透過する特性を有する。光源1aは、その出力光がP偏光として偏光分離素子1fに入射するように配置されている。
【0086】
光源1aからの青色光(P偏光)は、コリメータレンズ1b及びレンズ1c〜1eを介して偏光分離素子1fに入射する。青色光(P偏光)は、偏光分離素子1fを透過し、拡散板1gを介してダイクロイックミラー1hに入射する。
【0087】
ダイクロイックミラー1hは、P偏光で入射する光に対して、青色光の波長より長い第1の波長以下の光を透過し、第1の波長より長い波長の光を反射する第1の特性を有する。また、ダイクロイックミラー1hは、S偏光で入射する光に対して、青色光の波長より短い第2の波長以下の光を透過し、該第2の波長より長い波長の光を反射する第2の特性を有する。ここで、第1の波長は第1の特性のカットオフ波長であり、第2の波長は第2の特性のカットオフ波長である。このような特性を有するダイクロイックミラー1hは、誘電体多層膜より実現できる。
【0088】
偏光分離素子1fからの青色光(P偏光)は、ダイクロイックミラー1hを透過し、1/4波長板1i及びレンズ1j、1kを介して蛍光体ユニット1lに照射される。青色光(P偏光)は、1/4波長板1iを通過すると円偏光となる。青色光(円偏光)が、黄色蛍光体領域10Y、緑色蛍光体領域10G及び反射領域10Bに順次照射される。
【0089】
黄色蛍光体領域10Yでは、青色光により励起された黄色蛍光体が黄色蛍光を発する。緑色蛍光体領域10Gでは、青色光により励起された緑色蛍光体が緑色蛍光を発する。反射領域10Bは、レンズ1kからの青色光をレンズ1kの方向に反射する。
【0090】
黄色蛍光体領域10Yからの黄色蛍光(非偏光)、緑色蛍光体領域10Gからの緑色蛍光(非偏光)、及び反射領域10Bからの青色光(円偏光)はそれぞれ、レンズ1k、レンズ1j、1/4波長板1iを順次通過してダイクロイックミラー1hに入射する。ここで、反射領域10Bからの青色光(円偏光)は、1/4波長板1iを通過してS偏光になる。この青色光(S偏光)が、ダイクロイックミラー1hに入射する。
【0091】
1/4波長板1iを通過した黄色蛍光(非偏光)、緑色蛍光(非偏光)及び青色光(P偏光)は、ダイクロイックミラー1hで反射される。ダイクロイックミラー1hで反射された黄色蛍光、緑色蛍光及び青色光は、レンズ1mを介してカラーフィルターユニット1nのカラーホールに入射する。
【0092】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、ダイクロイックミラー1hは、反射領域10Bからの青色光の中心光線の入射角が45°より大きくなるように配置され、ダイクロイックミラー1hから光源1a側に戻る青色光(S偏光)は偏光分離素子1fによって除去される。これにより、第1の実施形態と同様の作用効果を得る。
【0093】
本実施形態においても、第1の実施形態で説明した変形や望ましい入射角の範囲を適用することができる。
【0094】
また、本実施形態の光源装置は、
図8に示したプロジェクタに適用することができる。具体的には、
図8に示したプロジェクタにおいて、光源装置1を本実施形態の光源装置に置き換える。
【0095】
以上説明した各実施形態の光源装置及びプロジェクタは本発明の一例であり、その構成や動作は適宜に変更することができる。
【0096】
例えば、第1の実施形態において、カラーフィルターユニット1nを削除し、
図4に示した蛍光体ユニット1lの蛍光体ホイールにおいて、反射領域10B上に拡散層を設け、黄色蛍光体領域10Yの一部または全部を赤色蛍光体領域で置き換えてもよい。この変形は、第2の実施形態にも適用することができる。
【0097】
また、本発明は、以下の付記1〜9のような形態をとり得るが、これら形態に限定されない。
[付記1]
青色の波長域にピーク波長を有する青色光を出力する光源と、
第1の直線偏光を反射又は透過させるために設けられ、前記青色光の前記第1の直線偏光を反射又は透過させる偏光分離素子と、
前記第1の直線偏光を反射又は透過させるために設けられ、前記偏光分離素子からの反射光又は透過光を反射又は透過させるダイクロイックミラーと、
蛍光体が設けられた蛍光体領域と入射光を反射する反射領域とを備え、前記ダイクロイックミラーからの反射光又は透過光が前記蛍光体領域及び反射領域に順次照射されるように可動する蛍光体ユニットと、
前記ダイクロイックミラーと前記蛍光体ユニットとの間の光路上に設けられた1/4波長板と、を有し、
前記ダイクロイックミラーは、前記反射領域で反射された青色光の中心光線の入射角度が45°より大きくなるように配置された光源装置。
[付記2]
前記ダイクロイックミラーは、前記第1の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より長い第1の波長以上の光を透過し、前記第1の波長未満の光を反射する第1の特性と、前記第1の直線偏光と直交する第2の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より短い第2の波長以上の光を透過し、該第2の波長未満の光を反射する第2の特性を備え、前記反射領域から前記1/4波長板を介して入射する前記第2の直線偏光の一部を前記偏光分離素子側へ反射し、
前記偏光分離素子は、前記第1の直線偏光を反射し、前記第2の直線偏光を透過する特性を備え、前記ダイクロイックミラーからの前記第2の直線偏光を透過させる、付記1に記載の光源装置。
[付記3]
前記ダイクロイックミラーは、前記第1の波長と前記第2の波長との差が30nmより大きくなるように構成されている、付記2に記載の光源装置。
[付記4]
前記ダイクロイックミラーは、前記第1の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より長い第1の波長以下の光を透過し、前記第1の波長より長い光を反射する第1の特性と、前記第1の直線偏光と直交する第2の直線偏光の光に対して、前記青色光の波長より短い第2の波長以下の光を透過し、該第2の波長より長い波長の光を反射する第2の特性を備え、前記反射領域から前記1/4波長板を介して入射する前記第2の直線偏光の一部を前記偏光分離素子側へ透過させ、
前記偏光分離素子は、前記第1の直線偏光を透過し、前記第2の直線偏光を反射する特性を備え、前記ダイクロイックミラーからの前記第2の直線偏光を反射させる、付記1に記載の光源装置。
[付記5]
前記ダイクロイックミラーは、前記第1の波長と前記第2の波長との差が30nmより大きくなるように構成されている、付記4に記載の光源装置。
[付記6]
前記ダイクロイックミラーは、前記青色光の中心光線の入射角度が50°〜60°になるように配置されている、付記1から5のいずれか1つに記載の光源装置。
[付記7]
前記ダイクロイックミラーと前記偏光分離素子との間の光路上に設けられ、入射光を拡散する拡散板を、さらに有し、
前記拡散板の拡散角が3°であり、前記ダイクロイックミラーは、前記青色光の中心光線の入射角度が55°になるように配置されている、付記1から6のいずれか1つに記載の光源装置。
[付記8]
黄色透過フィルター、赤色透過フィルター、緑色透過フィルター及び拡散領域を有し、前記蛍光体ユニットからの光が前記ダイクロイックミラーを介して前記黄色透過フィルター、赤色透過フィルター、緑色透過フィルター及び拡散領域に順次入射するように可動するカラーフィルターユニットを、さらに有し、
前記蛍光体領域は、黄色蛍光を発する蛍光体が設けられた黄色蛍光体領域と、緑色蛍光を発する蛍光体が設けられた緑色蛍光体領域と、を有し、
前記黄色蛍光体領域からの前記黄色蛍光が前記黄色透過フィルター及び赤色透過フィルターに順次入射し、前記緑色蛍光体領域からの緑色蛍光が前記緑色透過フィルターに入射し、前記反射領域からの青色光が前記拡散領域に入射する、付記1から7のいずれか1つに記載の光源装置。
[付記9]
付記1から8のいずれか1項に記載の光源装置と、
前記光源装置から出力された光を空間的に変調して画像を形成する表示素子と、
前記表示素子により形成された画像を拡大投射する投射光学系と、を有するプロジェクタ。