【文献】
Aust. J. Chem.,2012年,Vol.65,p.1349-1358
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の態様]
本発明の第1の態様に係るペプチドは、2,3−ジヒドロキシフェニル基又は3,4−ジヒドロキシフェニル基を有するアミノ酸の残基からなる接着性部位と、塩基性アミノ酸残基が3以上連続している塩基性部位とを、アミノ酸配列中に有するペプチドである。以下、本出願の明細書において、当該ペプチドを「接着性ペプチド」とも記す。かかる接着性ペプチドは、接着性部位で組織修復用のスキャフォールドの表面と結合でき、塩基性部位でグリコサミノグリカンと結合できる。以下、本出願の明細書において、「組織修復用のスキャフォールド」を単に「スキャフォールド」とも記す。
【0011】
第1の態様に係るペプチドは、組織修復用のスキャフォールドの表面処理に好適に使用される。表面処理された組織修復用のスキャフォールドを用いて修復される組織は、特に限定されない。表面処理された組織修復用のスキャフォールドを用いて修復される好ましい組織としては、血管、皮膚、筋肉、軟骨、骨、消化管、乳房、心臓弁、歯周組織及び眼周囲組織等が挙げられる。
【0012】
第1の態様に係るペプチドを構成するアミノ酸残基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。典型的には、接着性ペプチドを構成するアミノ酸残基の数は、4以上100以下が好ましく、5以上50以下がより好ましく、10以上30以下が特に好ましい。
【0013】
接着性ペプチドが有する接着性部位は2,3−ジヒドロキシフェニル基又は3,4−ジヒドロキシフェニル基を有するアミノ酸の残基からなる。接着性部位は、2つの水酸基が隣接するジヒドロキシフェニル基を有するため、スキャフォールドの表面と結合できる。スキャフォールドが金属材料からなる場合、スキャフォールドの表面に存在する金属原子とジヒドロキシフェニル基とのキレーションによって、接着性ペプチドが接着性部位を介してスキャフォールドの表面に結合する。スキャフォールドが、水酸基やアミノ基のような活性水素を含む官能基を有する有機高分子やセラミック等の材料からなる場合、ジヒドロキシフェニル基が酸化されて生成するキノンと、水酸基やアミノ基のような活性水素を含む官能基とが反応することで、接着性ペプチドが接着性部位を介してスキャフォールドの表面に結合する。
【0014】
2,3−ジヒドロキシフェニル基及び3,4−ジヒドロキシフェニル基とでは、スキャフォールドの表面との反応しやすさから3,4−ジヒドロキシフェニル基が好ましい。3,4−ジヒドロキシフェニル基を有するアミノ酸の具体例としては、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン(L−ドーパ)、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−メチル−L−アラニン(メチルドーパ)、及び(3R)−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−セリン(DOPS)等が挙げられる。これらの中では、実際に、イガイのような生物中でペプチドを構成するアミノ酸として利用されていることや、ペプチドを調製する際に入手が容易であること等から、3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−L−アラニン(L−ドーパ)が好ましい。
【0015】
接着性ペプチドは塩基性部位でグリコサミノグリカンと結合するが、第1の態様に係る接着性ペプチドは、塩基性アミノ酸残基が3以上連続している塩基性部位を有するため、接着性ペプチドとグリコサミノグリカンとを接触させる際に、効率よく塩基性部位にグリコサミノグリカンを結合させることができる。塩基性部位を構成する連続する塩基性アミノ酸の残基の数は、3以上30以下が好ましく、3以上10以下がより好ましい。塩基性部位を構成する塩基性アミノ酸の残基は、リシン残基(Lys)、アルギニン残基(Arg)、ヒスチジン残基(His)の他、5−ヒドロキシリシン、オルチニン、キヌレニン及び修飾されたこれらのアミノ酸残基から選択される。なお、アミノ酸残基の修飾は、修飾後のアミノ酸残基が塩基性であれば特に限定されず、種々の公知のアミノ酸残基の修飾から選択し得る。
【0016】
接着性ペプチド中で、接着性部位と塩基性部位とはスペーサー部位を介して結合しているのが好ましい。スペーサー部位を構成するアミノ酸残基の数は特に限定されないが、1以上50以下が好ましく、3以上30以下がより好ましい。接着性部位と塩基性部位とが、このような数のアミノ酸残基から構成されるスペーサー部位を介して結合する場合、接着性部位を起点としてスキャフォールドの表面から伸びるペプチド鎖が比較的自由に運動可能であるため、塩基性部位によるグリコサミノグリカンの捕捉や、塩基性部位に結合したグリコサミノグリカンによる細胞増殖因子の捕捉が容易である。
【0017】
接着性ペプチドでは、N末端又はC末端が、末端又はその近傍に塩基性部位を有する塩基性末端であるのが好ましい。末端又はその近傍に塩基性部位を有するとは、当該塩基性部位より塩基性末端側に、アミノ酸残基が存在しないか、1以上5以下のアミノ酸残基からなり接着性部位を含まない部位が存在する状態である。塩基性部位より塩基性末端側にある程度長いペプチド鎖が存在する場合、塩基性部位よりも塩基性末端側のペプチド鎖の立体障害により、塩基性部位によりグリコサミノグリカンを捕捉しにくい場合がある。しかし、塩基性部位が接着性ペプチドの末端又はその近傍にあれば、このような不具合が生じにくい。
【0018】
また、接着性ペプチドは、塩基性末端の他端が、末端又はその近傍に接着性部位を有する接着性末端であるものが好ましい。末端又はその近傍に接着性部位を有するとは、接着性末端から5アミノ酸残基以内に、接着性部位を含み、且つ塩基性部位を含まない状態である。接着性ペプチドが接着性末端を有すると、接着性ペプチドのほぼ全長が、スキャフォールドの表面で自由に運動可能な状態となるため、塩基性末端によりグリコサミノグリカンを捕捉しやすい。
【0019】
このような塩基性末端と接着性末端とを有する接着性ペプチドとしては、C末端から9残基のアミノ酸配列が、下記配列番号1で示されるアミノ酸配列であるものが好ましい。下記配列番号1で示されるアミノ酸配列は、イガイが産生する接着性ペプチドのアミノ酸配列中に繰り返し存在する配列である。イガイが産生する接着性ペプチドは、このような繰り返し配列からなる部位を有するため、種々の基質に対して強く結合することができる。
Ala−Lys−Pro−Ser−Tyr−Hyp−Thr−Xaa−Lys・・・(1))
(配列番号(1)中、XaaはL−ドーパの残基である。)
【0020】
接着性ペプチドは、設計されたアミノ酸配列に従って、公知の手法により取得することができる。好適な方法としてはFmoc法やBoc法のような固相合成方法が挙げられる。このような固相合成方法で得られる粗製の接着性ペプチドは、必要に応じて逆相HPLC等の方法を用いて精製することができる。取得される接着性ペプチドが所望の配列であるか否かは、公知の手段で確認することができる。このような手段としては、MALDI−TOF/MSで測定される接着性ペプチドの分子量と、アミノ酸配列から算出される接着性ペプチドの理論上の分子量とを比較する方法が挙げられる。
【0021】
以上説明した接着性ペプチドは、接着性部位で種々のスキャフォールドの表面に結合することができ、塩基性部位にグリコサミノグリカンを結合することができる。また、グリコサミノグリカンは、種々の細胞増殖因子と結合することができる。このため、スキャフォールドを第1の態様に係る接着性ペプチドで表面処理した後、さらに、グリコサミノグリカンや、グリコサミノグリカンと細胞増殖因子とを用いて表面処理すると、スキャフォールドを用いることによる組織の修復を著しく促進させることができる。
【0022】
[第2の態様]
本発明の第2の態様は、前述の接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンとからなる複合体である。当該複合体では、接着性ペプチドの塩基性部位にグリコサミノグリカンが結合している。当該複合体は、例えば、水中で、接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンとを混合することで形成される。
【0023】
グリコサミノグリカンの種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。グリコサミノグリカンの具体例としては、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケタラン硫酸、ヒアルロン酸が挙げられる。これらのグリコサミノグリカンの中では、入手が容易で安価であることや、細胞増殖因子との結合性に優れることからヘパリンが好ましい。
【0024】
第2の態様に係る複合体を、組織修復用のスキャフォールドの表面に接触させると、複合体が、複合体中の接着性ペプチドが有する接着性部位で、スキャフォールドの表面に結合する。第2の態様に係る複合体が表面に結合したスキャフォールドは、複合体に含まれるグリコサミノグリカンに細胞増殖因子を結合させることができる。このため、このようなスキャフォールドを修復対象の組織内に載置すると、組織の種類によっては、組織内に存在する細胞増殖因子をスキャフォールド周辺に集中させて、組織の修復を促進させることができる。
【0025】
また、スキャフォールドの表面に担持される第2の態様に係る複合体に、予め、細胞増殖因子を結合させておくのも好ましい。そうすると、修復される組織内にスキャフォールドを載置することで、スキャフォールド周辺に細胞増殖因子を徐放させることができ、組織の修復の促進効果をより高めることができる。
【0026】
グリコサミノグリカンの分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。グリコサミノグリカンの分子量は、通常、3,000〜1,000,000ダルトンが好ましく、3,000〜100,000ダルトンがより好ましく、5,000〜30,000ダルトンが特に好ましい。このような範囲の分子量のヘパリンを用いる場合、接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンと、細胞増殖因子との複合体の形成が容易である。
【0027】
[第3の態様]
本発明の第3の態様は、前述の接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンと、細胞増殖因子との複合体である。当該複合体では、接着性ペプチドの塩基性部位にグリコサミノグリカンが結合しており、接着性ペプチドに結合しているグリコサミノグリカンに細胞増殖因子が結合している。当該複合体は、例えば水中で、接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンと、細胞増殖因子とを混合することで形成される。
【0028】
第3の態様に係る複合体を、組織修復用のスキャフォールドの表面に接触させると、複合体が、複合体中の接着性ペプチドが有する接着性部位で、スキャフォールドの表面に結合する。第3の態様に係る複合体が表面に結合したスキャフォールドを修復対象の組織内に載置すると、スキャフォールドの表面で複合体に含まれる細胞増殖因子が徐放され、組織の修復が顕著に促進される。
【0029】
細胞増殖因子の種類は特に限定されず、スキャフォールドを用いる修復の対象組織の種類に応じて適宜選択される。細胞増殖因子の例としては、上皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経成長因子(BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、血小板由来成長因子(PDGF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク(BMP)、インターロイキン1(IL−1),インターロイキン(IL−2)、インターフェロンγ(IFN−γ)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、シュワン細胞種由来増殖因子(SDGF)及び肝細胞増殖因子(HGF)等が挙げられる。
【0030】
[第4の態様]
本発明の第4の態様は、前述の接着性ペプチドが、接着性ペプチドが有する接着性部位で組織修復用のスキャフォールドの表面に結合している組織修復用のスキャフォールドである。第4の態様の組織修復用のスキャフォールドは、表面に結合している接着性ペプチドが塩基性部位を有するため、さらにヘパリンを結合させることや、ヘパリンを介して細胞増殖因子を結合させることができる。
【0031】
スキャフォールドを構成する材料は特に限定されず、従来からの組織修復用のスキャフォールドの材料として使用されている材料から適宜選択される。スキャフォールドの材料としては、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、アルギン酸、セルロース及びキチン等の天然高分子;ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメチレンカーボネート、ポリジオキサノン及びこれらの共重合体、等の合成高分子;アルミナ、ジルコニア、アパタイト等のセラミック;ステンレス、コバルト合金、チタン、チタン合金等の金属材料;炭酸カルシウムやリン酸カルシウム等の無機材料が挙げられる。
【0032】
スキャフォールドの形態は、特に限定されず、再生される組織の種類や、再生される部位の形状に応じて適宜選択される。スキャフォールドの形態の例としては、多孔質、シート、メッシュ、及び粉末等が挙げられる。スキャフォールドが多孔質材料である場合、多孔質材料の具体的な形状としては、円柱、角柱、平板、球、及び楕円球等が挙げ有られる。
【0033】
[第5の態様]
本発明の第5の態様は、表面にグリコサミノグリカンを有する組織修復用のスキャフォールドであって、前述の接着性ペプチドが、接着性ペプチドが有する接着性部位でスキャフォールドの表面に結合しており、グリコサミノグリカンが、接着性ペプチドが有する塩基性部位に結合している組織修復用のスキャフォールドである。このようなスキャフォールドを用いることで、第二の態様について説明した効果と同様の効果を得られる。
【0034】
[第6の態様]
本発明の第6の態様は、表面に細胞増殖因子を有する組織修復用のスキャフォールドであって、前述の接着性ペプチドが、接着性ペプチドが有する接着性部位でスキャフォールドの表面に結合しており、細胞増殖因子が、グリコサミノグリカンと結合しており、且つ、グリコサミノグリカンを介して接着性ペプチドが有する塩基性部位と結合している組織修復用のスキャフォールドである。このようなスキャフォールドを用いることで、第三の態様について説明した効果と同様の効果を得られる。
【0035】
[第7の態様]
本発明の第7の態様は、前述の接着性ペプチドを組織修復用のスキャフォールドの表面に接触させる、組織修復用のスキャフォールドの表面処理方法である。接着性ペプチドを組織修復用のスキャフォールドの表面に接触させることで、接着性ペプチドが、接着性部位で組織修復用のスキャフォールドの表面に結合する。そうすることで、スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位に、グリコサミノグリカンを結合させることが可能となる。塩基性部位に結合するグリコサミノグリカンは、さらに種々の細胞増殖因子と結合可能である。このため、スキャフォールドの表面に接着性ペプチドを介してグリコサミノグリカンを結合させ、このようなスキャフォールドを修復される組織内に載置すると、組織の種類によっては、組織内に存在する細胞増殖因子をスキャフォールド周辺に集中させて、組織の修復を促進させることができる。
【0036】
また、スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドに結合するグリコサミノグリカンには、予め、細胞増殖因子を結合させておくのが好ましい。そうすると、修復される組織内にスキャフォールドを載置することで、スキャフォールド周辺に細胞増殖因子を徐放させることができ、組織の修復の促進効果をより高めることができる。
【0037】
以上の理由から、スキャフォールドの表面には、以下の(1)及び(2)の処理か、(1)、(2)、及び(3)の処理が施される。
(1)スキャフォールドの表面に接着性ペプチドを接触させる処理。
(2)スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位にグリコサミノグリカンを結合させる処理。
(3)スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドに結合したグリコサミノグリカンに細胞増殖因子を結合させる処理。
【0038】
また、上記の(1)の処理を行った後、(2)及び(3)の処理に変えて、以下の(4)の処理を施すこともできる。(4)の処理を行う場合、グリコサミノグリカンと細胞増殖因子との複合体中のグリコサミノグリカンが、接着性ペプチドが有する塩基性部位とが結合する。
(4)スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位にグリコサミノグリカンと細胞増殖因子との複合体を結合させる処理。
【0039】
組織修復用のスキャフォールドに対して、(1)及び(2)の処理を施すことで、第5の態様に係るスキャフォールドを形成することができる。また、組織修復用のスキャフォールドに対して(1)、(2)及び(3)の処理か、(1)及び(4)の処理を施すことで、第6の態様に係るスキャフォールドを形成することができる。以下、上記の工程(1)〜(4)について順に説明する。
【0040】
〔工程(1)〕
組織修復用のスキャフォールドの表面と接着性ペプチドとを接触させる方法は特に限定されない。組織修復用のスキャフォールドの表面と接着性ペプチドとを接触させる際、組織修復用のスキャフォールドの表面と接着性ペプチドとの均一な接触が容易であることから、通常、接着性ペプチドは溶液の形態で使用される。接着性ペプチドの溶液をスキャフォールドの表面に接触させる方法としては、塗布、噴霧、及び浸漬のようは方法が挙げられる。これらの方法の中では浸漬が好ましい。スキャフォールドが多孔質材料からなる場合もあるが、多孔質材料が有する細孔の内部表面にも接着性ペプチドを接触させることができることができるからである。
【0041】
浸漬により、スキャフォールドの表面に接着性ペプチドを接触させる際の温度や時間は、接着性ペプチドのスキャフォールドの表面への結合が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、浸漬は、5〜90℃、好ましくは20〜70℃で行われる。また、浸漬時間は、0.1〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0042】
スキャフォールドの表面に接着性ペプチドを接触させる際の接着性ペプチドの使用量は、スキャフォールドの表面積に対して、0.1〜50mg/m
2が好ましく、1.0〜10mg/m
2がより好ましい。
【0043】
表面処理時に用いる接着性ペプチドの溶液の濃度は特に限定されない。典型的には、接着性ペプチドの溶液の濃度は、0.1〜10mg/mLが好ましく、0.5〜5mg/mLがより好ましい。
【0044】
スキャフォールドと、接着性ペプチドの溶液とを接触させた後は、そのまま工程(2)又は(4)を行ってもよく、スキャフォールドを乾燥させた後、工程(2)又は(4)を行ってもよい。
【0045】
〔工程(2)〕
工程(2)では、スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位にグリコサミノグリカンを結合させる。スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位にグリコサミノグリカンを結合させるためには、通常、接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドと、グリコサミノグリカンの溶液とを接触させる。グリコサミノグリカンは酸性の官能基である、スルホン酸基やカルボン酸基を有するが、これらの酸性基は、グリコサミノグリカンの溶液中で、ナトリウム塩やカリウム塩のような塩を形成していてもよい。
【0046】
接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドと、グリコサミノグリカンの溶液との接触は、工程(1)における、スキャフォールドと、接着性ペプチドの溶液との接触と同様の方法で行われる。接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドを、グリコサミノグリカンの溶液に浸漬して処理する場合、浸漬時の温度や時間は、グリコサミノグリカンの接着性ペプチドへの結合が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、浸漬は、5〜90℃、好ましくは20〜70℃で行われる。また、浸漬時間は、0.1〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0047】
表面処理時に用いるグリコサミノグリカンの溶液の濃度は特に限定されない。典型的には、グリコサミノグリカンの溶液の濃度は、0.1〜10mg/mL(ヘパリンの場合、力価として20〜2000単位/mL)が好ましく、0.5〜5mg/mL(ヘパリンの場合、力価として100〜1000単位/mLがより好ましい。
【0048】
表面処理時のグリコサミノグリカンの使用量は特に限定されず、接着性ペプチドに十分な量のグリコサミノグリカンが結合できるように適宜選択される。
【0049】
〔工程(3)〕
工程(3)では、スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位に結合するグリコサミノグリカンに細胞増殖因子を結合させる。スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位に結合するグリコサミノグリカンに細胞増殖因子を結合させるためには、通常、塩基性部位にグリコサミノグリカンが結合している接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドと、グリコサミノグリカンの溶液とを接触させる。塩基性部位にグリコサミノグリカンが結合している接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドと、グリコサミノグリカンの溶液との接触は、工程(1)における、スキャフォールドと、接着性ペプチドの溶液との接触と同様の方法で行われる。
【0050】
塩基性部位にグリコサミノグリカンが結合している接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドを、細胞増殖因子の溶液に浸漬して処理する場合、浸漬時の温度や時間は、細胞増殖因子のグリコサミノグリカンへの結合が良好に進行する限り特に限定されない。典型的には、浸漬は、5〜70℃、好ましくは5〜30℃で行われる。また、浸漬時間は、0.1〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0051】
表面処理時に用いる細胞増殖因子の溶液の濃度は特に限定されない。典型的には、細胞増殖因子の溶液の濃度は、1〜1,000μg/mLが好ましく、10〜500μg/mLがより好ましい。
【0052】
表面処理時の細胞増殖因子の使用量は特に限定されず、接着性ペプチドに結合するグリコサミノグリカンに、十分な量の細胞増殖因子が結合できるように適宜選択される。
【0053】
〔工程(4)〕
工程(4)では、工程(1)に次いで、接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドと、グリコサミノグリカンと細胞増殖因子との複合体とを接触させて、スキャフォールドの表面に担持される接着性ペプチドが有する塩基性部位にグリコサミノグリカンと細胞増殖因子との複合体を結合させる。グリコサミノグリカンと細胞増殖因子との複合体は、グリコサミノグリカンと細胞増殖因子とを、水のような溶媒中で混合することで形成される。
【0054】
接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドと、グリコサミノグリカンと細胞増殖因子との複合体との接触は、グリコサミノグリカンと細胞増殖因子との複合体の溶液中に、接着性ペプチドを表面に担持するスキャフォールドを浸漬して行うのが好ましい。この浸漬は、工程(3)と同様に行われる。
【0055】
[第8の態様]
本発明の第8の態様は、第2の態様に係る、接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンとからなる複合体を、組織修復用のスキャフォールドに接触させる、組織修復用のスキャフォールドの表面処理方法である。第2の態様に係る複合体と、スキャフォールドとの接触は、第2の態様に係る複合体の溶液を用いて、第7の態様に係る表面処理方法について説明した工程(1)と同様に行われる。
【0056】
第2の態様に係る複合体と、スキャフォールドとの接触させた後、必要に応じて、第2の態様に係る複合体を表面に担持するスキャフォールドと、細胞増殖因子とを接触させてもよい。そうすることで、スキャフォールドの表面に担持された第2の態様に係る複合体中のグリコサミノグリカンに、細胞増殖因子が結合する。
【0057】
[第9の態様]
本発明の第9の態様は、第3の態様に係る、接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンと、細胞増殖因子とからなる複合体を、組織修復用のスキャフォールドに接触させる、組織修復用のスキャフォールドの表面処理方法である。第3の態様に係る複合体と、スキャフォールドとの接触は、第3の態様に係る複合体の溶液を用いて、第7の態様に係る表面処理方法について説明した工程(3)と同様に行われる。
【0058】
[第10の態様]
本発明の第10の態様は、前述の接着性ペプチドを含有する組織修復用のスキャフォールドの表面処理液である。第10の態様に係る表面処理液に含まれる溶媒の種類は、接着性ペプチドを溶解させることができれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。接着性ペプチドの溶解性や、スキャフォールドを用いて修復される組織に対する悪影響がないこと等から、通常、表面処理液に含まれる溶媒としては水が使用される。
【0059】
表面処理液の調製方法は特に限定されない。接着性ペプチドが溶液の状態である場合、接着性ペプチドを含む溶液を、接着性ペプチドの濃度が所望する濃度となるように、希釈又は濃縮することで表面処理液が得られる。接着性ペプチドがフリーズドライ等の方法で粉末化されている場合、接着性ペプチドの粉末と水等の溶媒とを所定の比率で混合して、接着性ペプチドを溶媒に溶解させることで表面処理液が得られる。
【0060】
表面処理液中の接着性ペプチドの濃度は、特に限定されない。表面処理液中の接着性ペプチドの好ましい濃度は、第7の態様に係る表面処理方法について説明した工程(1)で使用される接着性ペプチドの溶液と同様である。
【0061】
第10の態様に係る表面処理液は、本発明の目的を阻害しない範囲で、接着性ペプチドが有する接着性部位と塩基性部位とに結合しない種々の添加剤を含んでいてもよい。表面処理液に配合される添加剤としては、pH調整剤、浸透圧調整剤、界面活性剤、粘度調整剤、安定剤、着色剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、及び紫外線吸収剤等が挙げられる。これらの添加剤は、通常、これらの添加剤が種々の薬液に対して配合される量に従って、表面処理液に添加される。
【0062】
[第11の態様]
本発明の第11の態様は、第10の態様に係る、接着性ペプチドを含有する表面処理液と、グリコサミノグリカンを含有する表面処理液とを含む、組織修復用のスキャフォールドの表面処理用の処理液のセットである。グリコサミノグリカンを含有する表面処理液に含まれる溶媒の種類は、グリコサミノグリカンを溶解させることができれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。グリコサミノグリカンの溶解性や、スキャフォールドを用いて修復される組織に対する悪影響がないこと等から、通常、グリコサミノグリカンを含有する表面処理液に含まれる溶媒としては水が使用される。
【0063】
グリコサミノグリカンを含有する表面処理液中のグリコサミノグリカンの濃度は、特に限定されない。表面処理液中のグリコサミノグリカンの好ましい濃度は、第7の態様に係る表面処理方法について説明した工程(2)で使用されるグリコサミノグリカンの溶液と同様である。グリコサミノグリカンを含有する表面処理液は、接着性ペプチドを含む表面処理液と同様に、種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0064】
第11の態様に係る、組織修復用のスキャフォールドの表面処理用の処理液のセットは、さらに細胞増殖因子を含有する表面処理液を含んでいてもよい。表面処理液中の細胞増殖因子の好ましい濃度は、第7の態様に係る表面処理方法について説明した工程(3)で使用される細胞増殖因子の溶液と同様である。細胞増殖因子を含有する表面処理液は、接着性ペプチドを含む表面処理液と同様に、種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0065】
[第12の態様]
本発明の第12の態様は、第2の態様に係る接着性ペプチドとグリコサミノグリカンとの複合体を含有する表面処理液である。第12の態様に係る表面処理液に含まれる溶媒の種類は、複合体を溶解させることができれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。複合体の溶解性や、スキャフォールドを用いて修復される組織に対する悪影響がないこと等から、通常、表面処理液に含まれる溶媒としては水が使用される。
【0066】
第2の態様に係る複合体を含む表面処理液の調製方法は、第10の態様に係る表面処理液の調製方法と同様である。表面処理液中の複合体の濃度は、特に限定されない。表面処理液中の複合体の濃度は、表面処理液中の複合体に含まれる接着性ペプチドの濃度が、第7の態様に係る表面処理方法について説明した工程(1)で使用される接着性ペプチドの溶液の好適な濃度と同様となるのが好ましい。接着性ペプチドとグリコサミノグリカンとの複合体を含有する表面処理液は、第10の態様に係る表面処理液と同様に、種々の添加剤を含んでいてもよい。
【0067】
[第13の態様]
本発明の第13の態様は、第12の態様に係る、接着性ペプチドとグリコサミノグリカンとの複合体を含有する表面処理液と、細胞増殖因子を含有する表面処理液とを含む、組織修復用のスキャフォールドの表面処理用の処理液のセットである。細胞増殖因子を含有する表面処理液は、第11の態様について説明したものと同様である。
【0068】
[第14の態様]
本発明の第14の態様は、第3の態様に係る、接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンと、細胞増殖因子との複合体を含有する表面処理液である。第14の態様に係る表面処理液に含まれる溶媒の種類は、複合体を溶解させることができれば、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。複合体の溶解性や、スキャフォールドを用いて修復される組織に対する悪影響がないこと等から、通常、表面処理液に含まれる溶媒としては水が使用される。
【0069】
第3の態様に係る複合体を含む表面処理液の調製方法は、第10の態様に係る表面処理液の調製方法と同様である。表面処理液中の複合体の濃度は、特に限定されない。表面処理液中の複合体の濃度は、表面処理液中の複合体に含まれる接着性ペプチドの濃度が、第7の態様に係る表面処理方法について説明した工程(1)で使用される接着性ペプチドの溶液の好適な濃度と同様となるのが好ましい。接着性ペプチドと、グリコサミノグリカンと、細胞増殖因子との複合体を含有する表面処理液は、第10の態様に係る表面処理液と同様に、種々の添加剤を含んでいてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
Fmoc固相合成方法により、C末端から9残基の配列が、下記配列番号(1)のアミノ酸配列である、下記配列番号(2)のアミノ酸配列からなる接着性ペプチドを合成した。
Ala−Lys−Pro−Ser−Tyr−Hyp−Thr−Xaa−Lys・・・(1))
Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Gly−Gly−Gly−Ala−Lys−Pro−Ser−Tyr−Hyp−Thr−Xaa−Lys・・・(2)
(配列番号(1)及び(2)中、XaaはL−ドーパの残基である。)
【0072】
得られた粗製の接着性ペプチドを逆相HPLCで精製した後、精製された接着性ペプチドの分子量をMALDI−TOF/MSにより測定した。MALDI−TOF/MSにより測定されたペプチドの分子量は2011.7であり、配列番号(3)のアミノ酸配列からなる接着性ペプチドの計算上の分子量2011.3とほぼ一致していた。
【0073】
[実施例2]
実施例1で得られた接着性ペプチドを蒸留水に溶解させて、濃度1.0mg/mLの接着性ペプチドの水溶液を調製した。α−TCP(α型リン酸三カルシウム)の多孔体(多孔体の体積に占める細孔の体積は約70%)からなる直径5mm、高さ2mmの円柱型の組織修復用スキャフォールドの基体を、50℃で24時間、接着性ペプチドの水溶液0.1mLに浸漬して、接着性ペプチドを基体の表面に結合させた。その後、接着性ペプチドの水溶液から基体を取り出し、基体を蒸留水20mLで洗浄した後に乾燥させた。乾燥後の基体の表面をX線光電子分光法(XPS)により分析したところ、ペプチドに含まれる窒素原子に由来するN1sのピークが確認された。
【0074】
[実施例3]
接着性ペプチドの水溶液の濃度を1.0mg/mLから2.0mg/mLに変えることの他は、実施例2と同様にして、組織修復用スキャフォールドの基体を、接着性ペプチド水溶液で処理した。処理後の組織修復用のスキャフォールドの基体の表面を、実施例2と同様にしてXPSにより分析したところ、ペプチドに含まれる窒素原子に由来するN1sのピークが確認された。
【0075】
[実施例4]
実施例2で得られた、接着性ペプチドにより処理された組織修復用スキャフォールドの基体を、ノボ・ヘパリン注(1万単位/10mL、持田製薬株式会社製)に、室温で、8時間浸漬して、スキャフォールドの基体に担持される接着性ペプチドの塩基性部位にヘパリンを結合させた。その後、ノボ・ヘパリン注から基体を取り出し、基体を蒸留水20mLで洗浄した後に乾燥させた。
【0076】
[実施例5]
実施例2で得られた、接着性ペプチドにより処理された組織修復用スキャフォールドの基体を、実施例3で得られた基体に変えることの他は、実施例4と同様にして、組織修復用スキャフォールドの基体を、ノボ・ヘパリン注で処理した。
【0077】
[実施例6]
フィブラスト(登録商標)スプレー250(科研製薬株式会社製)に付属の、細胞増殖因子としてヒトリコンビナントFGFの凍結乾燥品を含むガラス瓶と、溶解液とを用いて細胞増殖因子の水溶液を調製した。具体的には、ガラス瓶に溶解液を加えてヒトリコンビナントFGFの凍結乾燥品を溶解液に溶解させて、濃度100μg/mLの細胞増殖因子の水溶液を調製した。実施例4で得られた、ヘパリン及び接着性ペプチドで処理された組織修復用スキャフォールドの基体を、調製した細胞増殖因子の水溶液0.5mLに浸漬して、基体の表面で接着性ペプチドに結合するヘパリンに細胞増殖因子を結合させた。その後、細胞増殖因子の水溶液から基体を取り出し、基体を蒸留水20mLで洗浄した後に乾燥させた。細胞増殖因子を用いて処理される前の基体の表面と、処理後の基体の表面と、をXPSにより分析したところ、細胞増殖因子を用いる処理によりC2sのピークの強度が著しく強くなったことが確認された。これは、基体表面の接着性ペプチドに結合するヘパリンに細胞増殖因子が結合することによる、基体表面の炭素原子数の増加によると考えられる。
【0078】
[実施例7]
実施例4で得られた、ヘパリン及び接着性ペプチドで処理された組織修復用スキャフォールドの基体を、実施例5で得られた基体に変更することの他は、実施例6と同様にして、組織修復用スキャフォールドの基体を、細胞増殖因子の水溶液で処理した。細胞増殖因子を用いて処理される前の基体の表面と、処理後の基体の表面と、をXPSにより分析したところ、細胞増殖因子を用いる処理によりC2sのピークの強度が著しく強くなったことが確認された。
【0079】
[実施例8、実施例9、及び比較例1]
基体表面の接着性ペプチドに結合するヘパリンに細胞増殖因子が結合している組織修復用スキャフォールド、又は表面処理されていない組織修復用スキャフォールドを、6週齢のオスのICRマウスの皮下に埋入した後に、埋入後7日目のスキャフォールド周辺の組織を観察した。実施例8では、実施例6で得られた組織修復用スキャフォールドを用いた。実施例9では、実施例7で得られた組織修復用スキャフォールドを用いた。比較例1では、表面処理されていない組織修復用スキャフォールドを用いた。実施例8、実施例9、及び比較例1の、スキャフォールド埋入後7日目のICRマウスの皮下組織の写真を、
図1(実施例8)、
図2(実施例9)、及び
図3(比較例1)として示す。
【0080】
図1及び
図2によれば、基体表面の接着性ペプチドに結合するヘパリンに細胞増殖因子が結合している組織修復用スキャフォールドを用いた場合、ICRマウスの皮下組織における血管新生が良好に進行していることが分かる。他方、
図3によれば、表面処理されていない組織修復用スキャフォールドを用いた場合、血管新生の速度が遅いことが分かる。
【0081】
[参考例1〜4]
基体表面に接着性ペプチドが結合している組織修復用スキャフォールド又は、基体表面の接着性ペプチドにヘパリンが結合している組織修復用スキャフォールドを用いることの他は、実施例8と同様にして、スキャフォールド埋入後7日目のICRマウスの皮下組織を観察した。参考例1では、実施例2で得られた組織修復用スキャフォールドを用いた。参考例2では、実施例3で得られた組織修復用スキャフォールドを用いた。参考例3では、実施例4で得られた組織修復用スキャフォールドを用いた。参考例4では、実施例5で得られた組織修復用スキャフォールドを用いた。参考例1〜4のスキャフォールド埋入後7日目のICRマウスの皮下組織の写真を、
図4(参考例1)、
図5(参考例2)、
図6(参考例3)、及び
図7(参考例4)として示す。
【0082】
図4及び
図5によれば、接着性ペプチドのみを用いて表面処理された組織修復用スキャフォールドを用いる場合、ICRマウスの皮下組織では、血管新生の速度が遅いことが分かる。
図5及び
図6によれば、接着性ペプチドとヘパリンとで表面処理された組織修復用スキャフォールドを用いる場合も、ICRマウスの皮下組織では、血管新生の速度が遅いことが分かる。
【0083】
[実施例10]
実施例8に続いて、実施例6で得られたスキャフォールド埋入後28日目のICRマウスの皮下組織について組織学的評価を行った。組織学的評価は、HE染色と、抗CD31抗体免疫染色とにより行った。HE染色及び抗CD31抗体免疫染色後の皮下組織の断面の像を、
図8に示す。
図8に示す像では、多くの浸潤細胞と、血管構造とが認められた。つまり、接着性ペプチドと、ヘパリンと、細胞増殖因子とで表面処理されたスキャフォールドを用いることで、ICRマウスの皮下組織の修復が良好に進行している。
【0084】
[実施例11及び比較例2]
(マウス頭蓋骨の骨再生試験)
α−TCP(α型リン酸三カルシウム)の粉末を、実施例1で得られた接着性ペプチドと、ヘパリンとを用いて表面処理した。具体的には、α−TCP(α型リン酸三カルシウム)の粉末28.7mgを、濃度1.0mg/mLの実施例1で得られた接着性ペプチドの水溶液0.1mLに24時間、50℃、遮光下で浸漬後、インキュベーター内で一晩風乾した。得られたペプチド修飾α−TCP粉末を、ノボ・ヘパリン注(1万単位/10mL、持田製薬株式会社製)0.1mLに常温で8時間浸漬し、インキュベーター内での風乾を経て、表面処理されたα−TCPの粉末を得た。実施例11では、得られた表面処理されたα−TCPの粉末をスキャフォールドとして用いた。比較例2では、未処理のα−TCPの粉末をスキャフォールドとして用いた。
【0085】
マウスの頭蓋骨に、トレフィンバーを用いて直径4mm、深さ0.3mmの骨欠損部を形成した。形成された骨欠損部に、粉末状のスキャフォールドを充填した。スキャフォールドの充填後、骨欠損部位をePTFE膜で被覆した。スキャフォールド充填後4週目に、骨欠損部をX線CTで撮影した。実施例11のX線CT画像を
図9に示し、比較例2のX線CT画像を
図10に示す。
図9及び
図10の比較によれば、
図9では、画像上で、骨欠損部内の白化がより進行していることが分かる。つまり、実施例11では、比較例2よりも骨再生がより進行している。接着性ペプチドと、ヘパリンとを用いて表面処理されたスキャフォールドを用いた場合、マウス頭部に内在する細胞増殖因子がスキャフォールドの表面に捕捉され、骨再生が促進されたと考えられる。