【実施例】
【0019】
この発明に係る静電容量型荷重計の一実施例を
図1、
図2に示し、この静電容量型荷重計Gは、前記グランドアンカー工法における緊張材の他端側固定部に設置される。
この荷重計Gは、ステンレス鋼(例えば、SUS630)からなるほぼ円環状プレート10と、そのプレート10に組み込まれる静電容量検出用プローブ(測定子)20とからなる。
【0020】
そのプレート10の内外径や厚みは測定対象に応じて適宜に設定すれば良いが、例えば、外径:128mm、内径:65mm,厚さ:38mmとし、上下に受圧面11、12を有する。また、プレート10の周囲に、60度の等間隔で直径:20mmの円形孔13を形成し、各円形孔13はその軸心c
1がプレート10の径方向となってその内外周面に開口している。この円形孔13によってプレート10の厚み方向の剛性を弱めて両受圧面11、12への荷重によって厚み方向に変形し(撓み)易くなっている。この円形孔13の数及び直径は、その変形特性を考慮して、適宜に決定すれば良い。
【0021】
静電容量検出用プローブ20は全ての円形孔13に設けることができるが、
図1において左右対称に設けることが好ましい。この実施例では、4個のプローブ20を左右対称に設けた。
【0022】
各円形孔13の周りに、この発明の特徴であるスリット14が形成されている。このスリット14は、前記プローブ20を組み込む円形孔13には必ず形成する。すなわち、プローブ20を組み込まない円形孔13にはスリット14を設ける必要はない。
スリット14は円形孔13と同心の円弧状をしてプレート10の内外周面に開口しており(
図1参照)、その内周面は直径:25mmの円周上に位置し、その径方向の幅t:0.3mmとなっている。また、その弧状部分16bの中心角度θは120度である。幅tは下記パイプ状部分16bを形成し得れば任意であるが、パイプ状部分16bの変位(撓み)特性を考慮して適宜に設定する。
スリット14は、例えば、その両端に3mm径の孔15を形成し、その両孔15、15間をワイヤーカットによって形成したが、他の手段、例えば、ドリル等によって形成し得る。
【0023】
このように円形孔13の周りにその内周に沿ってスリット14が形成されると、スリット14によって、円形孔13周囲のプレート壁がプレート10の他の部分16aと上下で連結され、他が切り離された弧状部分16bがパイプ状となる。このパイプ状部分16bは、上下から力を受けると(荷重を受けると)、その軸心c
1方向全長に亘って均等にかつ容易に撓むとともに上下方向に容易に撓む。このため、パイプ状部分16bの変位でもってその荷重を測定する場合、スリット14が無い場合に比べて圧縮力による変位量が大きくなり、感度が良くなる。
【0024】
このようなスリット14を形成したプレート10において、上下の受圧面11、12に荷重をかけて、円形孔13の軸心内周側(in)、同中央部(mid)、同外周側(out)の上下間(Z方向)及び左右間(Y方向)の径変化を応力解析により求めた。その荷重(横軸:kN)と変形量(縦軸:nm)の関係を
図3に示す。また、前記プレート10において、スリット14を形成しないものにおいても同様な解析を行い、その結果を
図3に示し、同図において、(a)はZ方向、(b)はY方向のそれぞれ関係図である。
【0025】
この解析結果から、スリット14を形成すれば、パイプ状部分16bの内周側、中央部、外周側における変位量の差が小さくなるとともに、Z方向の変位量が大きくなる一方、Y方向の変位量が小さくなっていることが理解できる。このことから、スリット14を形成すれば、パイプ状部分16bが容易に変形して、荷重Pに対する感度及び精度が向上することが理解できる。
【0026】
以上の試験結果に基づき、
図1に示すように、円形孔13に静電容量検出用プローブ20を設けて静電容量型荷重計Gを得る。そのプローブ20は、特許文献1記載のものでも良いが、
図1に示すものとすることができる。このプローブ20は、プレート10と同一材からなる円筒体21の表面に絶縁層を介して銀ペースト等の金属からなる一方の電極を形成し、その両端部にOリング24等のシール材を嵌め、そのシール材間に窒素ガス等を封入して防錆を行い、後端に取付片25を固定したものである。プレート10と円筒体21を同一材で構成すれば、温度変化による測定誤差を極力抑えることができる。
【0027】
取付片25は、その上端部にねじ26を通し、そのねじ26をねじ孔26aにねじ込むことによってプレート10に固定し、取付片25の下端部の孔27をプレート10のピン28に上下左右に動き得るように嵌める(バカ孔27にピン28を嵌める)。このとき、円形孔13と円筒体21の軸心は一致させる。この取付態様は、プレート10が上下方向の荷重Pを受けても、プローブ20にはその荷重が殆ど加わらないため、ねじ26を弛めることによって、負荷状態においてもブローブ20を取り替えることができる。
なお、このプローブ20の取付態様は、スリット14を設けない、例えば、特許文献1の取付態様等においても採用でき、また、そのプローブは、静電容量型以外でも良い。
【0028】
円形孔13の内面には、従来と同様に、前記プローブ20に形成された一の電極に対向するように他の電極を形成する。この他の電極は、円形孔13の内面を研磨して形成しても良いが、プローブ20に形成された電極と同様に、金属ペーストを塗布して形成しても良い。
このように、パイプ状部分16bの内面とプローブ20外面に対向する対の電極が位置することによって、プレート10の受圧面11、12に荷重がかかると、円形孔13外周のパイプ状部分16bが上下左右方向に変形(変位)し、前記両電極間の静電容量が変化する。その変化を、従来と同様に、リード線29等を介して電気的に外部のIC等からなる検出器に導き、その検出器において、静電容量変化測定値を、前もって測定したプレート10への荷重と静電容量の変形量の関係を示すデータベースとの比較によって測定(算出)する。
【0029】
この実施例において、スリット14の長さ(角度θ)、同幅t等は、実験などによって適宜に決定する。スリット14の形状は、この発明の作用効果を発揮し得る限りにおいて任意であり、例えば、弧状ではなく、上下方向の直線状としても良く(
図4(c)参照)、円形孔13の軸心c
1に対して上下対称であったり(同図(a)〜(d)参照)、その幅も変化したりしても良い(同図(a)、(b)参照)。さらに、左右のスリット14のどちらか一方のみとしたり(同図(d)参照)、左右が対称で上下を非対称としたり(同図(e)参照)、上下が対称で左右を非対称としたりとすることができる。また、円形孔13の内周面とスリット14の内周面の間隙は上下方向で異なっても良い(同図(b)、同(c)参照)。
いずれの態様においても、プローブ20の電極はパイプ状部分16bに対向させる。
【0030】
前記実施例は、グランドアンカー工法における緊張材の他端側固定部に設置されるものであったが、この発明の荷重計は、他の種々の態様における荷重を測定する場所に採用し得ることは勿論である。
また、この発明は、受圧面を有するプレートにおいて、その受圧面への荷重をプレート内に形成したパイプ状部分16bの変位として捉え、その変位の測定でもって前記荷重を測定し得るものであるため、そのパイプ状部分16bの変位を捉え得る変位計であれば、静電容量型センサに限らず、他の変位計、例えば、電気抵抗歪みセンサ、レーザ式変位センサ等を採用できる。
【0031】
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。