特許第6202678号(P6202678)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202678
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/20 20060101AFI20170914BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20170914BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20170914BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20170914BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20170914BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20170914BHJP
   C23G 1/20 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C11D3/20
   C11D1/72
   C11D3/43
   C11D3/30
   B08B3/08 Z
   B08B3/02 A
   C23G1/20
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-18695(P2014-18695)
(22)【出願日】2014年2月3日
(65)【公開番号】特開2015-145476(P2015-145476A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2016年12月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀巳
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−073893(JP,A)
【文献】 特開平08−157887(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/020199(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0180917(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/024141(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0094545(US,A1)
【文献】 特開2009−298940(JP,A)
【文献】 特開平07−195044(JP,A)
【文献】 特開平08−127798(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/081071(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/027673(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0090646(US,A1)
【文献】 特開平05−287300(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/119392(WO,A1)
【文献】 特開2009−041094(JP,A)
【文献】 特開2015−113379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/20
B08B 3/02
B08B 3/08
C11D 1/72
C11D 3/30
C11D 3/43
C23G 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A−1)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(成分A−2)、下記式(I)で表される化合物(成分B)、ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分C)、及び、水(成分D)を含有し、
成分A−1の含有量が、40.0質量%以上54.6質量%以下、成分A−2の含有量が、40.0質量%以上54.6質量%以下であり、
成分Bの含有量が、0.3質量%以上5.0質量%以下であり、及び、
成分Cの含有量が、0.1質量%以上5.0質量%以下である、
半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物。
【化1】
[上記式(I)において、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、炭素数1〜7の炭化水素基又はアミノエチル基、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基又は炭素数1〜7の炭化水素基、Rはヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【請求項2】
成分Dの含有量が、5.0質量%以上10.0質量%以下である、請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分A−1と成分A−2の合計の含有量が、80.0質量%以上94.6質量%以下である、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
さらに、炭化水素及び/又は炭素数8〜18の炭化水素基を有するポリアルキレングリコールエーテル型非イオン界面活性剤を含む請求項1から3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
リフローされた半田を有する被洗浄物を請求項1から4のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する、半田フラックス残渣の洗浄方法。
【請求項6】
被洗浄物が、部品が半田で半田付けされた電子部品の製造中間物である、請求項5記載の洗浄方法。
【請求項7】
半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付けにより回路基板上に搭載する工程、及び、前記搭載物を請求項5又は6記載のフラックス残渣の洗浄方法により洗浄する工程を含む、電子部品の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれかに記載の洗浄剤組成物の電子部品の洗浄への使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物、半田フラックス残渣の洗浄方法及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板やセラミック基板への電子部品の実装に関しては、低消費電力、高速処理といった観点から、部品が小型化し、半田フラックスの洗浄においては洗浄すべき隙間が狭くなってきている。また、環境安全面から鉛フリー半田が用いられるようになってきており、これに伴いロジン系フラックスが用いられている。
【0003】
特許文献1には、半田付けした部品の隙間に残存するフラックス残渣の洗浄に好適なフラックス用洗浄剤組成物として、特定のグリコールエーテルと、アルカノールアミン、及び、炭素数1〜6のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩及び水を含有するフラックス用洗浄剤組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2には、鉛フリーはんだフラックスを用いて得られた被洗浄物を洗浄した場合でも、十分な洗浄力を有し、かつ、プレリンス水から容易に分離できる洗浄剤組成物として、水に対する溶解度と比重が異なる3種のグリコールエーテル類と、ポリオキシアルキレンアミン類と、キレート剤とを含有する鉛フリーはんだフラックス用洗浄剤組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、狭い隙間に存在するフラックス残渣に対する洗浄性が高いだけでなく、水によるすすぎ性が良好であり、泡立ちが抑制された、フラックス残渣が付着した被洗浄物の洗浄方法として、水を2質量%以上10質量%以下、グリコールエーテルを50質量%以上97.75質量%未満及び、アミン化合物を0.05質量%以上5質量%以下含む洗浄剤を用いて、特定の洗浄条件及び洗浄装置で洗浄する方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、電子部品又は精密部品類を洗浄剤で洗浄する洗浄方法において、非イオン性界面活性剤等の活性成分と性質を有する洗浄剤の水希釈液を用いて20〜100℃の温度で相分離しない状態にて洗浄する工程、および洗浄後の洗浄液を20℃以上に保温しながら洗浄液中の有機物を分離する工程を有することを特徴とする電子部品又は精密部品類の洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−298940号公報
【特許文献2】WO2010/24141
【特許文献3】WO2011/081071
【特許文献4】特開平7−195044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の鉛フリー化に伴い、1)リフロー温度の高温化、2)半田金属中のスズ含有量増加が原因で除去困難なロジン酸等のスズ塩がフラックス残渣中に増えたため、既存の洗浄剤では残存してしまうという問題がある。一方で、洗浄性の良いものは電極に用いる銅を腐食してしまうという問題が生じる。さらに、低消費電力、高速処理といった観点から、部品が小型化し洗浄すべき隙間が狭くなってきている。表面張力の低い洗浄剤は浸透力が高く、狭い隙間のフラックス残渣を溶解できるものの、すすぎ工程で使用する水は表面張力が高いため、隙間への浸透速度が遅く十分にすすげないといった問題が起こってきている。特許文献1や特許文献2の洗浄剤でも更なる洗浄性とすすぎ性の向上が望まれる。
【0009】
また、いわゆる水系、準水系洗浄剤の場合、すすぎに水を使用するため排水中に有機物が多い状態で排水処理を行うと処理後のCOD値を下げるために非常に労力がかかり、河川などに排出される排水処理水中のCOD値を十分に下げられない可能性があり、排水処理負荷を低減できる効率的な処理方法が必要とされる。さらに、電子部品の性能向上並びに高機能化に伴い、極めて高い清浄度を求められるようになったため、すすぎ回数の増加、即ちすすぎ水の使用量が増加したため排水処理負荷が大きくなってきており、効率的にすすげる洗浄剤が必要とされている。
【0010】
そこで、本開示は、一又は複数の実施形態において、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対する洗浄性が優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物を提供する。また、本開示は、一又は複数の実施形態において、すすぎ水の良好な油水分離性及び安全性(引火性の低減)を示しつつ、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対する洗浄性、並びに、狭い隙間への浸透性及びすすぎ性に優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、一又は複数の実施形態において、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A−1)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(成分A−2)、下記式(I)で表される化合物(成分B)、ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分C)、及び、水(成分D)を含有し、
成分A−1の含有量が、40.0質量%以上54.6質量%以下であり、成分A−2の含有量が、40.0質量%以上54.6質量%以下であり、
成分Bの含有量が、0.3質量%以上5.0質量%以下であり、及び、
成分Cの含有量が、0.1質量%以上5.0質量%以下である、
半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物に関する。
【化1】
[上記式(I)において、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、炭素数1〜7の炭化水素基又はアミノエチル基、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基又は炭素数1〜7の炭化水素基、Rはヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【0012】
本開示は、その他の一又は複数の実施形態において、リフローされた半田を有する被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する、半田フラックス残渣の洗浄方法に関する。
【0013】
本開示は、その他の一又は複数の実施形態において、半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付けにより回路基板上に搭載する工程、及び、前記搭載物を本開示に係るフラックス残渣の洗浄方法により洗浄する工程を含む電子部品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対する洗浄性が優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物、それを用いた洗浄方法、及び、それを用いた電子部品の製造方法を提供できる。また、本開示によれば、一又は複数の実施形態において、すすぎ水の良好な油水分離性及び安全性(引火性の低減)を示しつつ、半田フラックスを用いてリフローされた基板に対する洗浄性、並びに、狭い隙間への浸透性及びすすぎ性に優れる半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物、それを用いた洗浄方法、及び、それを用いた電子部品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを主成分とするグリコールエーテルが多量に配合された洗浄剤組成物は、従来よりも洗浄性が向上するという知見に基づく。また、本開示は、該洗浄剤組成物は、すすぎ水の油水分離性、及び安全性(引火性の低減)が良好でありながら、洗浄性に加え、狭い隙間への浸透性及びすすぎ性が向上しうるという知見に基づく。
【0016】
すなわち、本開示は一態様において、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A−1)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(成分A−2)、上記式(I)で表される化合物(成分B)、ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分C)、及び、水(成分D)を含有し、成分A−1の含有量が40.0質量%以上54.6質量%以下、成分A−2の含有量が40.0質量%以上54.6質量%以下であり、成分Bの含有量が0.3質量%以上5.0質量%以下であり、及び、成分Cの含有量が0.1質量%以上5.0質量%以下である、半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物(以下、「本開示に係る洗浄剤組成物」ともいう。)に関する。
【0017】
本開示に係る洗浄剤組成物における効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。まず、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A−1)は半田フラックスとの親和性が極めて高い。また、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(成分A−2)は半田フラックスとの親和性と希釈された洗浄剤の油水分離性を兼ね備えている。成分A−1だけでは油水分離性するまでの疎水性が得られない。本開示に係る洗浄剤組成物は、40質量%以上の成分A−1と成分A−1よりも疎水性が高く分子構造が類似している成分A−2を40質量%以上含有する。成分A−1と成分A−2の混合物においては、成分A−2が水から油相として分離した際に成分A−1も油相に移るため、油水分離性が発揮されると考えられる。また、成分A−1により溶解した半田フラックスは成分A−2にも容易に溶解及び拡散するため、成分A−1と成分A−2の混合物において狭い隙間の半田フラックス残渣を溶解する洗浄性が発揮されると考えられる。そして、特定のアルカノールアミン(成分B)及びポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分C)が半田フラックス残渣中へ浸透することによる膨潤作用が、成分A−1及び成分A−2による半田フラックス残渣の溶解性を向上すると考えられる。また、水によるすすぎの際には、本開示に係る洗浄剤組成物中の特定のアルカノールアミン(成分B)とポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分C)により、成分A−1及び成分A−2の油水分離性を維持しつつ適度な水への溶解性が付与され、すすぎ水との親和性が高められすすぎ性に優れると考えられる。さらに、水(成分D)を含有することで引火点が高くなり安全性が確保される。但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0018】
本開示において「フラックス」とは半田付けに使用されるロジン又はロジン誘導体を含有するロジン系フラックスをいい、本開示において「半田付け」はリフロー方式及びフロー方式の半田付けを含む。本開示において「半田フラックス」とは、半田とフラックスとの混合物をいう。回路基板上に他の部品(例えば、半導体チップ、チップ型コンデンサ、他の回路基板など)が積層して搭載されると前記回路基板と前記他の部品との間に空間(隙間)が形成される。前記搭載のために使用されるフラックスは、リフローなどにより半田付けされた後に、フラックス残渣としてこの隙間にも残存しうる。本開示において「半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物」とは、フラックス又は半田フラックスを用いて半田付けした後のフラックス残渣を洗浄するための洗浄剤組成物をいう。本開示に係る洗浄剤組成物による洗浄性及び狭い隙間への浸透性の顕著な効果発現の点から、半田は鉛(Pb)フリー半田であることが好ましい。
【0019】
[成分A−1及び成分A−2]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分A−1は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(以下、「BDG」とも表す。)であり、成分A−2はジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(以下、「HeDG」とも表す。)である。
【0020】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分A−1の含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、40.0質量%以上であり、好ましくは41.0質量%以上、より好ましくは42.0質量%以上、さらに好ましくは43.0質量%以上である。また、成分A−1の含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、54.6質量%以下であり、好ましくは47.3質量%以下、より好ましくは46.5質量%以下、さらに好ましくは45.5質量%以下、さらにより好ましくは45.0質量%以下である。
【0021】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分A−2の含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上及びすすぎ水の良好な油水分離性の観点から、40.0質量%以上であり、好ましくは41.0質量%以上、より好ましくは42.0質量%以上、さらに好ましくは43.0質量%以上である。また、成分A−2の含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、54.6質量%以下であり、好ましくは47.3質量%以下、より好ましくは46.5質量%以下、さらに好ましくは45.5質量%以下、さらにより好ましくは45.0質量%以下である。
【0022】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分A−1と成分A−2との含有量比(A−1/A−2、質量比)は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上及びすすぎ性向上の観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。また、本開示に係る洗浄剤組成物における成分A−1と成分A−2との含有量比(A−1/A−2、質量比)は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上及びすすぎ性向上の観点から、好ましくは0.7以上1.4以下、より好ましくは0.9以上1.2以下、さらに好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0023】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分A−1及び成分A−2の洗浄剤組成物中の合計の含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは82.0質量%以上、さらに好ましくは84.0質量%以上、よりさらに好ましくは86.0質量%以上、よりさらに好ましくは87.0質量%以上である。また、成分A−1及び成分A−2の洗浄剤組成物中の合計の含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは94.6質量%以下、より好ましくは93.0質量%以下、さらに好ましくは91.0質量%以下、よりさらに好ましくは90.0質量%以下、よりさらに好ましくは89.0質量%以下である。また、成分A−1及び成分A−2の洗浄剤組成物中の合計の含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは80.0質量%以上94.6質量%以下、より好ましくは82.0質量%以上93.0質量%以下、さらに好ましくは84.0質量%以上91.0質量%以下、よりさらに好ましくは86.0質量%以上90.0質量%以下、よりさらに好ましくは87.0質量%以上89.0質量%以下である。
【0024】
[成分A]
本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、下記式(II)で表される(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル(成分A)のうち、成分A−1及び成分A−2以外の成分Aをさらに含有してもよい。なお、本開示において単に「成分A」という場合、特に言及のない場合、成分A−1及び成分A−2を含むものとする。
【化2】
[式(II)において、Rは炭素数3〜7の炭化水素基を示し、nは1〜5である。]
【0025】
上記式(II)において、Rは、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性の向上の観点から、炭素数3〜7の炭化水素基であり、好ましくは炭素数3〜6の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数4〜6の炭化水素基である。Rは、一又は複数の実施形態において、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を含む。平均付加モル数nは、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、1〜5であり、好ましくは1〜3、より好ましくは2又は3である。炭化水素基は、好ましくはアルキル基、アルケニル基及びアリール基であり、より好ましくはアルキル基である。
【0026】
式(II)においてRがブチル基及びn=2の場合に成分A−1となり、式(II)においてRがヘキシル基及びn=2の場合に成分A−2となる。なお、本開示において、ブチル基は、特に言及がない場合、n−ブチル基をいい、ヘキシル基は、特に言及がない場合、n−ヘキシル基をいう。
【0027】
成分A−1及び成分A−2以外の成分Aとしては、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル;ジエチレングリコールモノアリルエーテル等のジエチレングリコールモノアルケニルエーテル;ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等のジエチレングリコールモノアリールエーテル;トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル等のトリエチレングリコールモノアルキルエーテル;トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のトリエチレングリコールモノアルケニルエーテルが好ましい。これらの中でも、同様の観点から、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソプロピルエーテルがより好ましい。
【0028】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、80.0質量%以上であり、好ましくは82.0質量%以上、より好ましくは84.0質量%以上、さらに好ましくは86.0質量%以上である。また、成分Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは94.6質量%以下であり、より好ましくは93.0質量%以下、さらに好ましくは91.0質量%以下、よりさらに好ましくは90.0質量%以下である。また、成分Aの含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、好ましくは80.0質量%以上94.6質量%以下であって、より好ましくは82.0質量%以上93.0質量%以下、さらに好ましくは84.0質量%以上91.0質量%以下、よりさらに好ましくは86.0質量%以上90.0質量%以下である。上述のとおり、成分Aは、成分A−1及び成分A−2を含むが、成分A−1及び成分A−2からなるものであってもよく、成分A−1及び成分A−2と、成分A−1及び成分A−2以外の上記式(II)で表される1又は複数種類の化合物とからなるものであってもよい。
【0029】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分A−1及び成分A−2の成分A中の合計の含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは90.0質量%以上であり、より好ましくは93.0質量%以上、さらに好ましくは94.0質量%以上、よりさらに好ましくは96.0質量%以上、よりさらに好ましくは98.0質量%以上である。また、成分A−1及び成分A−2の成分A中の合計の含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、100.0質量%以下である。
【0030】
本開示に係る洗浄剤組成物に成分A−1及び成分A−2以外の成分Aが含まれる場合、成分Aに対するその含有量(複数種類の場合は合計の含有量)は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上を阻害しない観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下、よりさらに好ましくは4.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下である。
【0031】
本開示に係る洗浄剤組成物に成分A−1及び成分A−2以外の成分Aが含まれる場合、洗浄剤組成物中のその含有量(複数種類の場合は合計の含有量)は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上を阻害しない観点から、好ましくは14.6質量%以下、より好ましくは13.0質量%以下、さらに好ましくは11.0質量%以下、さらにより好ましくは10.0質量%以下である。また、本開示に係る洗浄剤組成物に成分A−1及び成分A−2以外の成分Aが含まれる場合、洗浄剤組成物中のその含有量(複数種類の場合は合計の含有量)は、一又は複数の実施形態において、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、さらにより好ましくは3.0質量%以上である。
【0032】
[成分B]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Bは、下記式(I)で表される1又は複数種類のアルカノールアミンである。
【化3】
[上記式(I)において、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、炭素数1〜7の炭化水素基又はアミノエチル基、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基又は炭素数1〜7の炭化水素基、Rはヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【0033】
成分Bのアルカノールアミンとしては、一又は複数の実施形態において、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、並びに、これらのアルキル化物及びアミノアルキル化物が挙げられ、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノエチルモノエタノールアミン、モノエチルジエタノールアミン及びモノアミノエチルイソプロパノールアミンが好ましく、ジエタノールアミン、モノエチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン及びモノアミノエチルイソプロパノールアミンがより好ましく、モノメチルジエタノールアミンがより好ましい。
【0034】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Bの含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、0.3質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。また、成分Bの含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、5.0質量%以下であり、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以下である。また、成分Bの含有量は、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、0.3質量%以上5.0質量%以下であって、好ましくは0.5質量%以上4.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上4.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上3.5質量%以下である。上述のとおり、成分Bは、上記式(I)で表される単独の化合物であってもよく、上記式(I)で表される複数種類の化合物からなるものであってもよい。
【0035】
[成分C]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Cは、1又は複数種類のポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤である。ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤としては、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上及びすすぎ性向上の観点から、下記式(III)で表されるものが挙げられる。
【化4】
[式(III)において、Rは炭素数8から18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、n及びmは、それぞれ、EOの平均付加モル数を示す。]
【0036】
上記式(III)において、Rは、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上及びすすぎ性向上の観点から、炭素数8以上、好ましくは炭素数10以上の炭化水素基であり、炭素数18以下、好ましくは炭素数14以下の炭化水素基である。n+mは、同様の観点から、好ましくは2以上10以下、より好ましくは3以上6以下である。
【0037】
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Cの含有量は、一又は複数の実施形態において、0.1質量%以上5.0質量%以下であり、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力及びすすぎ性を向上させる観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上、そして、同様の観点から、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
【0038】
[成分D]
本開示に係る洗浄剤組成物における成分Dは、水である。水は、蒸留水、イオン交換水、又は超純水等が使用され得る。本開示に係る洗浄剤組成物における成分Dの含有量は、一又は複数の実施形態において、引火性を低減する観点から、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは5.5質量%以上、さらに好ましくは6.5質量%以上である。また、成分Dの含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力を向上させる観点から、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下である。成分Dの含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力を向上させる点及び引火性を低減する観点から、好ましくは5.0質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは5.5質量%以上9.0質量%以下、さらに好ましくは6.5質量%以上8.0質量%以下である。
【0039】
成分Aと成分Dの質量比〔A/D〕は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点から、好ましくは10.0以上、より好ましくは11.0以上、さらに好ましくは12.0以上である。成分Aと成分Dの質量比〔A/D〕は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄性向上の観点及び引火点を下げて安全性を向上する観点から、好ましくは19.0以下、より好ましくは17.0以下、さらに好ましくは14.0以下である。
【0040】
本開示に係る洗浄剤組成物において成分A、B及びCの質量比(成分A/成分B/成分C、ただし、成分A、成分B及び成分Cの合計は100.0)は、一又は複数の実施形態において、フラックス残渣に対する洗浄力の向上の点から、好ましくは89.0〜99.6/0.3〜5.5/0.1〜5.5、より好ましくは90.0〜99.3/0.5〜5.0/0.2〜5.0、さらに好ましくは91.0〜98.7/1.0〜4.5/0.3〜4.5、特に好ましくは93.0〜97.9/1.6〜3.8/0.5〜3.2である。
【0041】
[洗浄剤組成物のその他の成分]
本開示に係る洗浄剤組成物において成分A、B、C及びDの総含有量は、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力を向上させる点から、98.0質量%以上100質量%以下であることが好ましく、より好ましくは99.0質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以上100質量%以下、さらにより好ましくは99.7質量%以上100質量%以下である。したがって、本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、成分A、B、C及びD以外のその他の成分の含有量は、好ましくは0質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0質量%以上1.0質量%以下、さらに好ましくは0質量%以上0.3質量%以下、さらにより好ましくは0質量%以上0.1質量%以下である。
【0042】
本開示に係る洗浄剤組成物におけるその他の成分としては、その他の一又は複数の実施形態において、発泡性の抑制の観点から、炭素数が10〜18である不飽和結合を有する又は有さない炭化水素が挙げられる。炭化水素としては、一又は複数の実施形態において、同様の観点から、ドデセン、テトラデセンが挙げられる。
【0043】
本開示に係る洗浄剤組成物におけるその他の成分としては、その他の一又は複数の実施形態において、炭素数8〜18の炭化水素基を有するポリアルキレングリコールエーテル型非イオン界面活性剤が挙げられる。具体的には下記式(IV)で表される非イオン界面活性剤が挙げられる。炭化水素基は、好ましくはアルキル基及びアルケニル基、より好ましくはアルキル基である。
【化5】
[式(IV)において、Rは炭素数8から18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。p、q、及びrは、それぞれ、EO、POの平均付加モル数を示し、それぞれ、0〜15の数であって、p及びrは同時に0とならず、かつ、q>0の場合はq≦p+r≦30、q=0の場合はr=0である。]
【0044】
さらなるその他の成分として、本開示に係る洗浄剤組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常洗浄剤に用いられる、ヒドロキシエチルアミノ酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸等のアミノカルボン酸塩等のキレート力を持つ化合物、防腐剤、防錆剤、殺菌剤、抗菌剤、シリコーン系消泡剤、酸化防止剤、ヤシ脂肪酸メチルや酢酸ベンジル等のエステルあるいはアルコール類等を適宜併用することができる。
【0045】
[洗浄剤組成物の調製方法]
本開示における洗浄剤組成物の調製方法は、何ら制限されず、成分A、成分B、成分C及び成分Dを混合することによって調製できる。
【0046】
[洗浄剤組成物のpH]
本開示に係る洗浄剤組成物のpHは、一又は複数の実施形態において、隙間に残存するフラックス残渣に対する洗浄力を向上させる点から、pH8以上pH14以下が好ましい。pHは、必要により、硝酸、硫酸等の無機酸、オキシカルボン酸、多価カルボン酸、アミノポリカルボン酸、アミノ酸等の有機酸、及びそれらの金属塩やアンモニウム塩、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アミン等の成分B以外の塩基性物質を適宜、所望量で配合することで調整することができる。
【0047】
[フラックス残渣の洗浄方法]
本開示は、その他の態様において、リフローされた半田を有する被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物に接触させることを含む、半田フラックス残渣の洗浄方法に関する(以下、本開示に係る洗浄方法ともいう)。本開示に係る洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、リフローされた半田を有する被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する。被洗浄物に本開示に係る洗浄剤組成物を接触させる方法、又は、被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する方法としては、一又は複数の実施形態において、超音波洗浄装置の浴槽内で接触させる方法や、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)などが挙げられる。本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。本開示の洗浄方法は、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。本開示の洗浄方法であれば、半田付けした部品の隙間に残存するフラックス残渣を効率よく洗浄できる。本開示の洗浄方法による洗浄性及び狭い隙間への浸透性の顕著な効果発現の点から、半田は鉛(Pb)フリー半田であることが好ましい。本開示の洗浄方法は、一又は複数の実施形態において、本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示に係る洗浄剤組成物と被洗浄物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的強いものであることがより好ましい。前記超音波としては、一又は複数の実施形態において、26〜72Hz、80〜1500Wが好ましく、36〜72Hz、80〜1500Wがより好ましい。
【0048】
[被洗浄物]
本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、電子部品の洗浄に使用される。被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、リフローされた半田を有する被洗浄物が挙げられ、その他の一又は複数の実施形態において、部品が半田付けされた電子部品の製造中間物が挙げられ、或いは、半田付けされた部品の隙間にフラックス残渣を含む製造中間物が挙げられる。前記製造中間物は、半導体パッケージや半導体装置を含む電子部品の製造工程における中間製造物であって、例えば、回路基板上にフラックスを使用した半田付けにより半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板などが搭載された物を含む。被洗浄物における隙間とは、例えば、回路基板とその回路基板に半田付けされて搭載された部品(半導体チップ、チップ型コンデンサ、回路基板など)との間に形成される空間であって、その高さ(部品間の距離)が、例えば、5〜500μm、10〜250μm、或いは20〜100μmの空間をいう。隙間の幅及び奥行きは、搭載される部品や回路基板上の電極(ランド)の大きさや間隔に依存する。
【0049】
[電子部品の製造方法]
本開示の電子部品の製造方法は、半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付により回路基板上に搭載する工程、及び、本開示の洗浄方法により前記搭載物を洗浄する工程を含む。フラックスを使用した半田付けは、一又は複数の実施形態において、鉛(Pb)フリー半田で行われるものであり、リフロー方式でもよく、フロー方式でもよい。電子部品は、半導体チップが未搭載の半導体パッケージ、半導体チップが搭載された半導体パッケージ、及び、半導体装置を含む。本開示の電子部品の製造方法は、本開示の洗浄方法を行うことにより、半田付けされた部品の隙間に残存するフラックス残渣が低減され、フラックス残渣が残留することに起因する電極間でのショートや接着不良が抑制されるから、信頼性の高い電子部品の製造が可能になる。また、本開示の洗浄方法を行うことにより、半田付けされた部品の隙間に残存するフラックス残渣の洗浄が容易になることから、洗浄時間が短縮化でき、電子部品の製造効率を向上できる。
【0050】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0051】
<1> ジエチレングリコールモノブチルエーテル(成分A−1)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(成分A−2)、下記式(I)で表される化合物(成分B)、ポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤(成分C)、及び、水(成分D)を含有し、成分A−1の含有量が、40.0質量%以上54.6質量%以下、成分A−2の含有量が、40.0質量%以上54.6質量%以下であり、成分Bの含有量が、0.3質量%以上5.0質量%以下であり、及び、成分Cの含有量が、0.1質量%以上5.0質量%以下である、半田フラックス残渣除去用洗浄剤組成物。
【化6】
[上記式(I)において、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、炭素数1〜7の炭化水素基又はアミノエチル基、Rは水素原子、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基又は炭素数1〜7の炭化水素基、Rはヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基である。]
【0052】
<2> 前記洗浄剤組成物における成分A−1の含有量が、好ましくは40.0質量%以上、より好ましくは41.0質量%以上、さらに好ましくは42.0質量%以上、さらにより好ましくは43.0質量%以上である、<1>記載の洗浄剤組成物。
<3> 前記洗浄剤組成物における成分A−1の含有量が、好ましくは54.6質量%以下、より好ましくは47.3質量%以下、さらに好ましくは46.5質量%以下、さらにより好ましくは45.5質量%以下、さらにより好ましくは45.0質量%以下である、<1>又は<2>に記載の洗浄剤組成物。
<4> 前記洗浄剤組成物における成分A−1の含有量が、好ましくは40.0質量%以上47.3質量%以下、より好ましくは41.0質量%以上46.5質量%以下、さらに好ましくは42.0質量%以上45.5質量%以下、さらにより好ましくは43.0質量%以上45.0質量%以下である、<1>から<3>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<5> 前記洗浄剤組成物における成分A−2の含有量が、好ましくは40.0質量%以上、より好ましくは41.0質量%以上、さらに好ましくは42.0質量%以上、さらにより好ましくは43.0質量%以上である、<1>から<4>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<6> 前記洗浄剤組成物における成分A−2の含有量が、好ましくは54.6質量%以下、より好ましくは47.3質量%以下、さらに好ましくは46.5質量%以下、さらにより好ましくは45.5質量%以下、さらにより好ましくは45.0質量%以下である、<1>から<5>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<7> 前記洗浄剤組成物における成分A−2の含有量が、好ましくは40.0質量%以上47.3質量%以下、より好ましくは41.0質量%以上46.5質量%以下、さらに好ましくは42.0質量%以上45.5質量%以下、さらにより好ましくは43.0質量%以上45.0質量%以下である、<1>から<6>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<8> 前記洗浄剤組成物における成分A−1と成分A−2との含有量比(A−1/A−2、質量比)が、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上である、<1>から<7>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<9> 前記洗浄剤組成物における成分A−1と成分A−2との含有量比(A−1/A−2、質量比)が、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である、<1>から<8>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<10> 前記洗浄剤組成物における成分A−1と成分A−2との含有量比が、好ましくは0.7以上1.4以下、より好ましくは0.9以上1.2以下、さらに好ましくは0.9以上1.1以下である、<1>から<8>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<11> 前記洗浄剤組成物における成分A−1及び成分A−2の含有量が、好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは82.0質量%以上、さらに好ましくは84.0質量%以上、よりさらに好ましくは86.0質量%以上、よりさらに好ましくは87.0質量%以上である、<1>から<10>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<12> 前記洗浄剤組成物における成分A−1及び成分A−2の含有量が、好ましくは94.6質量%以下、より好ましくは93.0質量%以下、さらに好ましくは91.0質量%以下、よりさらに好ましくは90.0質量%以下、よりさらに好ましくは89.0質量%以下である、<1>から<11>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<13> 前記洗浄剤組成物における成分A−1及び成分A−2の含有量が、好ましくは82.0質量%以上93.0質量%以下、より好ましくは84.0質量%以上91.0質量%以下、さらに好ましくは86.0質量%以上90.0質量%以下、よりさらに好ましくは87.0質量%以上89.0質量%以下である、<1>から<12>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<14> 前記洗浄剤組成物が、成分A−1及び成分A−2を含む下記式(II)で表される(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテル(成分A)を含有する、<1>から<13>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【化7】
[式(II)において、Rは炭素数3〜7の炭化水素基を示し、nは1〜5である。]
<15> 前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは82.0質量%以上、さらに好ましくは84.0質量%以上、さらにより好ましくは86.0質量%以上である、<14>に記載の洗浄剤組成物。
<16> 前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、好ましくは94.6質量%以下、より好ましくは93.0質量%以下、さらに好ましくは91.0質量%以下、さらにより好ましくは90.0質量%以下である、<14>又は<15>に記載の洗浄剤組成物。
<17> 前記洗浄剤組成物における成分Aの含有量が、好ましくは82.0質量%以上93.0質量%以下、より好ましくは84.0質量%以上91.0質量%以下、さらに好ましくは86.0質量%以上90.0質量%以下である、<14>から<16>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<18> 前記成分Aに対する成分A−1及び成分A−2の合計の含有量が、好ましくは90.0質量%以上、より好ましくは93.0質量%以上、さらに好ましくは94.0質量%以上、さらにより好ましくは96.0質量%以上、さらにより好ましくは98.0質量%以上である、<14>から<17>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<19> 前記成分Aに対する成分A−1及び成分A−2以外の成分Aの合計の含有量が、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、さらに好ましくは6.0質量%以下、よりさらに好ましくは4.0質量%以下、よりさらに好ましくは2.0質量%以下である、<14>から<18>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<20> 前記洗浄剤組成物における成分A−1及び成分A−2以外の成分Aの合計の含有量が、好ましくは14.6質量%以下、より好ましくは13.0質量%以下、さらに好ましくは11.0質量%以下、さらにより好ましくは10.0質量%以下である、<14>から<19>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<21> 前記洗浄剤組成物における成分A−1及び成分A−2以外の成分Aの合計の含有量が、好ましくは0質量%を超え、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、さらにより好ましくは3.0質量%以上である、<14>から<20>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<22> 成分Bの含有量が、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上、さらにより好ましくは1.5質量%以上である、<1>から<21>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<23> 成分Bの含有量が、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下、さらにより好ましくは3.5質量%以下である、<1>から<22>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<24> 成分Bの含有量が、好ましくは0.5質量%以上4.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上4.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以上3.5質量%以下である、<1>から<23>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<25> 成分Cが、好ましくは下記式(III)で表される、<1>から<24>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【化8】
[式(III)において、Rは炭素数8から18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、n及びmは、それぞれ、EOの平均付加モル数を示す。]
<26> 式(III)において、n+mが、好ましくは2以上10以下、より好ましくは3以上6以下である、<25>記載の洗浄剤組成物。
<27> 成分Cの含有量が、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である、<1>から<26>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<28> 成分Cの含有量が、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下である、<1>から<27>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<29> 成分Dの含有量が、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは5.5質量%以上、さらに好ましくは6.5質量%以上である、<1>から<28>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<30> 成分Dの含有量が、好ましくは10.0質量%以下、より好ましくは9.0質量%以下、さらに好ましくは8.0質量%以下である、<1>から<29>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<31> 成分Dの含有量が、好ましくは5.0質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは5.5質量%以上9.0質量%以下、さらに好ましくは6.5質量%以上8.0質量%以下である、<1>から<30>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<32> 成分Aと成分Dの質量比〔成分A/成分D〕が、好ましくは10.0以上、より好ましくは11.0以上、さらに好ましくは12.0以上である、<1>から<31>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<33> 成分Aと成分Dの質量比〔成分A/成分D〕が、好ましくは19.0以下、より好ましくは17.0以下、さらに好ましくは14.0以下である、<1>から<32>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<34> 成分A、B及びCの質量比(成分A/成分B/成分C、ただし、成分A、成分B及び成分Cの合計は100.0)が、好ましくは89.0〜99.6/0.3〜5.5/0.1〜5.5、より好ましくは90.0〜99.3/0.5〜5.0/0.2〜5.0、さらに好ましくは91.0〜98.7/1.0〜4.5/0.3〜4.5、さらにより好ましくは93.0〜97.9/1.6〜3.8/0.5〜3.2であり、成分Aと成分Bと成分Cの合計が100.0である、<1>から<33>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<35> さらに、炭化水素及び/又は炭素数8〜18の炭化水素基を有するポリアルキレングリコールエーテル型非イオン界面活性剤を含む、<1>から<34>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<36> 前記非イオン界面活性剤が、下記式(IV)で表される<35>に記載の洗浄剤組成物。
【化9】
[式(IV)において、Rは炭素数8から18の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。p、q、及びrは、それぞれ、EO、POの平均付加モル数を示し、それぞれ、0〜15の数であって、p及びrは同時に0とならず、かつ、q>0の場合はq≦p+r≦30、q=0の場合はr=0である。]
<37> 半田が、鉛(Pb)フリー半田である、<1>から<36>のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
<38> リフローされた半田を有する被洗浄物を<1>から<37>のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する、半田フラックス残渣の洗浄方法。
<39> 被洗浄物が、部品が半田で半田付けされた電子部品の製造中間物である、<38>記載の洗浄方法。
<40> 半導体チップ、チップ型コンデンサ、及び回路基板からなる群から選択される少なくとも1つの部品を、フラックスを使用した半田付けにより回路基板上に搭載する工程、及び、前記搭載物を<38>又は<39>記載のフラックス残渣の洗浄方法により洗浄する工程を含む、電子部品の製造方法。
<41> <1>から<37>のいずれかに記載の洗浄剤組成物の電子部品の洗浄への使用。
【実施例】
【0053】
1.洗浄剤組成物の調製(実施例1〜11、比較例1〜13)
下記表1に示す成分A〜D、及び必要に応じてその他の成分(表1)を混合し、実施例1〜11、比較例1〜13の洗浄剤組成物を調製した。下記表1の成分A〜D及びその他の成分の数値は、調製した洗浄剤組成物における含有量(質量%)を示す。
【0054】
その他の成分として表1において「*1」「*2」「*3」及び「*4」で示されるのは、下記の化合物である。
成分*1:下記式(III)で表されるポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤であって、Rが炭素数12の炭化水素基であり、n+mが4のものを使用した。
成分*2:下記式(III)で表されるポリアルキレングリコールアルキルアミン型非イオン界面活性剤であって、Rが炭素数12の炭化水素基であり、n+mが10のものを使用した。
【化10】
[式(III)において、EOはエチレンオキシ基、n及びmは、それぞれ、EOの平均付加モル数を示す。]
【0055】
成分*3:下記式(IV)で表されるポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤であって、Rが炭素数12の第2級炭化水素基であり、p=7、q=r=0のものを使用した。
成分*4:下記式(IV)で表されるポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤であって、Rが炭素数12又は14の炭化水素基であり、p=5、q=2、r=5のものを使用した。
【化11】
[式(IV)において、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。p、q、及びrは、それぞれ、EO、POの平均付加モル数を示す。]
【0056】
2.洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1〜11、比較例1〜13の洗浄剤組成物を用いてテスト基板の洗浄性(洗浄性1及び2)、ガラス毛細管試験、すすぎ性、プレリンスの油水分離性、並びに安全性(引火点)について試験を行い、評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
[洗浄性試験(洗浄性1)]
以下の条件でテスト基板を洗浄する洗浄性試験を行った。
〔テスト基板〕
チップコンデンサ(0816)を10個搭載したテスト基板(50mm×50mm、チップコンデンサと基板の隙間は約50μm)を用いた。ソルダーペーストには鉛フリーのエコソルダーM705−BPS(千住金属工業(株)製)、リフロー炉にはエコリフローSNR825(千住金属工業(株)製)を用い、リフローピーク温度240℃、半田溶融時間45秒、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で半田接続した。
〔洗浄方法〕
60℃水浴内で加温した(i)各洗浄剤組成物を満たした1Lビーカー、(ii)プレリンス用のイオン交換水を満たした1Lビーカー、(iii)仕上げリンス用のイオン交換水を満たした1Lビーカーを用意する。(i)にテスト基板を浸漬し超音波(40kHz、600W)を5分間照射して洗浄、次いで(ii)にテスト基板を浸漬し、超音波(40kHz、600W)を5分間照射してプレリンス、次いで(iii)にテスト基板を浸漬し、超音波(40kHz、600W)を5分間照射して仕上げリンスを行い、送風乾燥機(85℃、15分)で乾燥した。
なお、使用する各洗浄剤組成物及びリンス用イオン交換水は60℃に加温した。
〔洗浄性の評価〕
乾燥後のテスト基板からチップコンデンサを剥離し、光学顕微鏡にてフラックス残渣の残存有無を確認した。評価基準は以下の通り。その結果を表1の「洗浄性1」の欄に示す。
A:10個中残渣あるものゼロ
B:10個中残渣あるもの1個
C:10個中残渣あるもの2個以上
【0058】
[洗浄性試験(洗浄性2)]
上記洗浄性試験(洗浄性1)と同様の方法で、洗浄時間、プレリンス時間及び仕上げリンス時間をそれぞれ1分間に短くして評価した。その結果を表1の「洗浄性2」の欄に示す。
【0059】
[ガラス毛細管試験]
窒素雰囲気下にて銅板上でエコソルダーM705−BPS(千住金属工業(株)製)を250℃、30分間加熱して、液状のフラックス残渣を分離採取する。DRUMMOND製ガラスキャップ(ガラス毛細管)(長さ32mm、内径140μm)に上記方法にて作成したフラックス残渣を充填し一方の開口部を封止して試験片を作成した。100mLビーカーに各洗浄剤組成物及びすすぎ用イオン交換水を各100g加え60℃に加温する。試験片を各洗浄剤組成物に浸漬し超音波(40kHz、200W)を5分間照射後、すすぎ用イオン交換水に移し超音波(40kHz、200W)を5分間照射後取り出した。取り出した試験片を光学顕微鏡にて観察し、開口部から溶解したフラックス残渣の距離を測定し、5点の平均値を算出した。フラックス残渣が溶解した距離が長いほど溶解速度が速く洗浄性が良いと評価できる。その結果を表1に示す。
【0060】
[すすぎ性]
窒素雰囲気下にて銅板上でエコソルダーM705−BPS(千住金属工業(株)製)を250℃、30分間加熱して、液状のフラックス残渣を分離採取する。このフラックス残渣を各洗浄剤組成物と混合し1質量%の混合液を作成した。角カバーグラス(18mm×18mm、松浪硝子工業(株)製)に上記方法にて作成した混合液を約0.1g滴下し、その上にもう一枚の角カバーグラスを重ね、クリップ(口幅19mm、コクヨ(株)製)で一辺を挟み固定し試験片を作成した。100mLビーカーにすすぎ用イオン交換水を100g加え60℃に加温する。試験片をピンセットで保持してすすぎ用イオン交換水に上下に10回揺動しながら1分間浸漬し、取り出す。取り出した試験片を真空乾燥機(120℃、15分)で乾燥した。試験片を観察し、角カバーグラス間に残存物がなくなるまでのすすぎ回数を数えた。すすぎ回数が少ないほどすすぎ性が良いと評価できる。その結果を表1に示す。なお、5回ですすげないものは「>5」とした。
【0061】
[プレリンスの油水分離性]
洗浄剤組成物で洗浄した後の水によるリンス工程で生じる、洗浄剤組成物を含むリンス廃液を想定し各洗浄剤組成物をイオン交換水で10倍希釈した。分離処理する温度での油水分離性を確認するために、この希釈液の60℃で1時間静置後の相分離の状態を観察した。各洗浄剤組成物の相分離の状態により、以下のように評価した。2相分離が良好であれば、プレリンスに用いた廃液を油相と水相を分離することで、水相を再び洗浄剤の希釈用に使用して、洗浄剤の希釈に使用する新たな水の量とプレリンス液の廃液の量とを低減できる。
A:2相に分離し、下相が透明
B:2相に分離し、下相が白濁
C:2相に分離しない
【0062】
[安全性]
各洗浄剤組成物の引火点により、以下のように評価した。なお、水の沸点の100℃において引火すると火災となる危険性が高くなる。水の沸点より10℃高い110℃を基準に引火点により安全性を評価した。その結果を表1に示す。
A:引火点が110℃以上
B:引火点が110℃未満
【0063】
【表1】
【0064】
上記表1に示すとおり、実施例1〜11の洗浄剤組成物は、比較例1〜4、6、8〜13の洗浄剤組成物と比べて優れた洗浄性を示し、かつ、ガラス毛細管試験の結果(浸透性)及びすすぎ性も概ね優れた結果を示した。また、実施例1〜11の洗浄剤組成物は、比較例5及び7の洗浄剤組成物よりも油水分離性の点が優れていた。また、比較例9は、実施例1〜11と比べて洗浄性、ガラス毛細管試験及びすすぎ性で劣る結果となったが、比較例9でトリエタノールアミンをジエタノールアミンに置き換えても、評価結果はほとんど変わらないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本開示を用いることにより、半田付けされた部品の隙間に残存するフラックス残渣の洗浄が良好に行えることから、例えば、電子部品の製造プロセスにおけるフラックス残渣の洗浄工程の短縮化及び製造される電子部品の性能・信頼性の向上が可能となり、半導体装置の生産性を向上できる。