(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリル以外の香料が、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、エステル類、カーボネート類、ラクトン類、オキシム類、ニトリル類、シッフ塩基類、含窒素化合物、含硫黄化合物、天然精油および天然抽出物のうち1種以上を含有する、請求項3に記載の香料組成物。
4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムを脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得る脱水工程を有する、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルである。
【0015】
[4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法]
本発明の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルは、一般的な有機化学反応を用いて合成することができ、その製造方法に制限はない。本発明の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを製造する方法としては、例えば、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(以下、本文中で「オキシム中間体」と呼ぶことがある)を脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得る脱水工程を有する方法が好ましい。
【0017】
前記オキシム中間体は、例えば、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールをオキシム化することによって4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(オキシム中間体)を得る工程により、製造することが好ましい。
【0019】
なお、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールは、公知文献に基づき、製造することができる。4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールは、市販品としては、IFF社製、商品名「フローラルスーパー」等を入手することができる。
【0020】
<脱水工程>
前記のように、本発明の製造方法においては、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(オキシム中間体)を脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得る工程を有する。
【0022】
本工程においては、無水酢酸を用いる無水酢酸法、アルカリを用いるアルカリ触媒法等が好ましく、収率と得られる生成物の純度を高める観点から、無水酢酸法がより好ましい。
【0023】
[無水酢酸法]
無水酢酸法は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(オキシム中間体)を無水酢酸存在下、加熱により脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得る工程を有する。
【0024】
無水酢酸法において、無水酢酸の使用量は、高収率化と反応後処理の簡便さの観点から、オキシム中間体に対して1.0〜10モル倍が好ましく、1.0〜5モル倍がより好ましく、1.0〜1.5モル倍がさらに好ましい。
【0025】
反応温度は、反応を効率的に完結させる観点から、未反応の無水酢酸や副生した酢酸が十分に還流する120〜200℃が好ましく、120〜180℃がより好ましく、120〜160℃がさらに好ましい。
【0026】
反応は無溶媒でも実施できるが、徐熱の観点から、好ましい反応温度近辺に沸点を持つ溶媒を適量用いて還流下実施することもできる。
【0027】
反応生成物である4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルと過剰分の無水酢酸や副生した酢酸は、反応後に蒸留や、アルカリ水による中和で酢酸塩とした後、水層と一緒に除去する方法で分離できる。
【0028】
[アルカリ触媒法]
アルカリ触媒法は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(オキシム中間体)をアルカリ触媒存在下、加熱により脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得る工程を有する。
【0029】
アルカリ触媒法においては、アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく用いられる。
【0030】
アルカリ触媒の使用量は、収率を高める観点から、オキシム中間体に対して0.1〜20質量%が好ましく、反応操作性の観点から、1〜15質量%がより好ましい。
【0031】
アルカリ触媒法においては、副生する水を系外に除去しながら反応を行うことが好ましく、溶媒還流下での共沸脱水法、生成物も反応系外へ除去する連続脱水法が挙げられ、なかでも生成物として得られる4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの熱分解や熱重合を抑制する観点から、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルも同様に反応系外へ除去する連続脱水法が好ましい。
【0032】
連続脱水法における反応温度は、反応を効率的に完結させ、オキシム中間体や4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの熱分解や熱重合を抑制する観点から、80〜250℃が好ましく、高収率化の観点から、150〜200℃がより好ましい。この場合、好ましい温度範囲下で4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを効率良く留出させ、生成物の熱分解や熱重合を抑制する観点から、減圧下で行うことが好ましく、10kPa以下で行うことがより好ましい。
【0033】
また、オキシム中間体の滞留時間を短縮して副反応を抑制する観点から、オキシム中間体を反応系内に連続的に滴下する方法が好ましい。
【0034】
いずれかの方法によって得られた4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルは、香料素材としてより好ましい品質に改善する観点から、さらに蒸留やシリカゲルカラムクロマトグラフィー精製を行うことが好ましい。
【0035】
以下は、本発明の製造方法における前記オキシム中間体を得る、製造方法の例示である。
【0036】
<オキシム化工程>
前記のように、例えば、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールと、ヒドロキシルアミンとを用いてオキシム化反応を行い、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(オキシム中間体)を得ることができる。
【0038】
本工程における好適な方法としては、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールにヒドロキシルアミン水溶液を滴下する方法、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールとヒドロキシルアミンの無機酸塩の水溶液を混合したところに、塩基を滴下する方法が挙げられ、なかでも、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールとヒドロキシルアミンの無機酸塩の水溶液を混合したところに、塩基を滴下する方法が好ましい。この方法によれば、塩基を滴下することで、反応系内でヒドロキシルアミンを発生させることができ、副反応を抑制し、反応を安全に行うことができるという利点がある。
【0039】
本工程に用いられるヒドロキシルアミンの無機酸塩としては、副反応の抑制と経済性の観点から、ヒドロキシルアミン硫酸塩を用いるのが好ましい。
【0040】
ヒドロキシルアミン又はその無機酸塩の使用量は、反応後処理の簡便さと経済性の観点から、ヒドロキシルアミン換算で4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールに対して1.0〜3.0モル倍が好ましく、1.0〜2.0モル倍がより好ましく、1.0〜1.5モル倍がさらに好ましい。
【0041】
前記塩基を滴下する好適な方法に用いられる塩基としては、ヒドロキシルアミンより強塩基であるものが用いられ、なかでも水溶性であることが好ましい。経済的観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましい。操作性と作業効率の観点から、アルカリ金属の水酸化物の20〜40質量%水溶液を用いることが好ましい。
【0042】
反応は無溶媒で行ってもよいが、徐熱と反応の進行に伴う反応液の粘度上昇を抑制する観点から、溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、原料であるアルデヒド中間体とヒドロキシルアミンを溶解し易い脂肪族アルコール、水等が好ましい。前記脂肪族アルコールとしては、炭素数1〜3の脂肪族アルコールが好ましく、炭素数1〜3の直鎖脂肪族アルコールがより好ましく、エタノール、イソプロピルアルコール等がさらに好ましい。前記溶媒としては、脂肪族アルコールと水の混合物がより好ましい。
【0043】
反応温度は、反応を効率的に完結させ、ヒドロキシルアミンの発熱的分解を抑制する観点から、30〜50℃に保つことが好ましい。
【0044】
反応生成物であるオキシム中間体は、水層を分離した後、そのまま次の反応に用いることができるが、蒸留精製等で溶媒や高沸点の副生物を除去してから用いることが好ましい。
【0045】
[香料組成物]
本発明の香料組成物は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを含有する。4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの含有量は、香料組成物中、好ましくは0.01〜99質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、更に好ましくは0.3〜3質量%である。4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを0.01〜99質量%含むことにより、香料組成物へ新鮮さや拡散性を強調することができる。
【0046】
本発明の香料組成物は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを含むため、ミューゲ、フローラルおよびグリーン香気を有し、かつ、他の香料と調合され、新鮮さや拡散性が強調される。また、本発明の香料組成物は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリル以外に、その他の香料として、通常用いられる他の香料成分や、所望組成の調合香料を含有させ、例えば、シトラス調、フローラル調、フルーティ調、ハーバル調、スパイシー調、グリーン調、ウッディ調、バルサム香気等の香気を付与することができる。
【0047】
本発明の香料組成物において、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルと組み合わせて用いることができるその他の香料としては、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、エステル類、カーボネート類、ラクトン類、オキシム類、ニトリル類、シッフ塩基類、含窒素化合物、含硫黄化合物、天然精油および天然抽出物のうち1種以上が好ましく、中でも、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、エステル類、カーボネート類、ラクトン類および天然精油のうち1種以上が、他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、より好ましい。
【0048】
以下、各香料の「類」には単一の化合物、あるいは2つ以上の化合物の混合物を意味する。
【0049】
炭化水素類としては、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、テルピネン、p−サイメン、セドレン、ロンギフォレン、バレンセン、カンフェン、ミルセン等が挙げられる。
【0050】
アルコール類としては、脂肪族アルコール、テルペン系アルコール、芳香族アルコール等が挙げられる。
【0051】
脂肪族アルコールとしては、プレノール、trans−2−ヘキセノール、cis−3−ヘキセノール、2,6−ジメチルヘプタノール、1−オクテン−3−オール、3,6−ノナジエン−1−オール、ウンデカベルトール(ジボダン社商品名、4−メチル−3−デセン−5−オール)、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−メタノール、イソシクロゲラニオール、2−tert−ブチルシクロヘキサノール、4−tert−ブチルシクロヘキサノール、マイヨール(フィルメニッヒ社商品名、4−(1−メチルエチル)−シクロヘキサンメタノール)、アンバーコア(花王株式会社商品名)、チンベロール(シムライズ社商品名、1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン−3−オール)、サンダルマイソールコア(花王株式会社商品名、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール)、バクダノール(IFF社商品名、2−エチル‐4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール)、フロローサ(ジボダン社商品名、4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール)等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、cis−3−ヘキセノール、ウンデカベルトール、マイヨール、またはフロローサが好ましい。
【0052】
テルペン系アルコールとしては、シトロネロール、ヒドロキシシトロネロール、リナロール、ジヒドロリナロール、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、ゲラニオール、ネロール、テトラヒドロゲラニオール、ミルセノール、ジヒドロミルセノール、テトラヒドロミルセノール、オシメノール、テルピネオール、メントール、ボルネオール、フェンキルアルコール、ファルネソール、ネロリドール、セドロール、テルピネオール等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、シトロネロール、テトラヒドロリナロール、エチルリナロール、ゲラニオール、ジヒドロミルセノール、ボルネオールまたはテルピネオールが好ましい。
【0053】
芳香族アルコールとしては、ベンジルアルコール、スチラリルアルコール、フェネチルアルコール、クミンアルコール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、シンナミックアルコール、フェニルヘキサノール(花王株式会社商品名)、パンプルフルール(IFF社商品名、4−フェニルペンタノール)、マジャントール(シムライズ社商品名、2,2−ジメチル−3−(3−メチルフェニル)プロパノール)等が挙げられる。
【0054】
フェノール類としては、アネトール、グアヤコール、オイゲノール、イソオイゲノール、モスシンス等が挙げられる。
【0055】
アルデヒド類としては、上記アルコール類と同様に脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、芳香族アルデヒド等が挙げられ、アルコール類香料成分の官能基のみを変換したアルデヒド類はいずれも香料成分として挙げられる。
【0056】
その他のアルデヒド類としては、アルデヒド C−6(花王株式会社商品名、1−ヘキサナール)、アルデヒド C−8(花王株式会社商品名、1−オクタナール)、アルデヒド C−9(花王株式会社商品名、1−ノナナール)、アルデヒドC−10(花王株式会社商品名、1−デカナール)、アルデヒドC−11 UNDECYL(花王株式会社商品名、ウンデカナール)、アルデヒド C−111 LEN(花王株式会社商品名、10−ウンデセナール)、アルデヒド C−12 LAURYL(花王株式会社商品名、1−ドデカナール)、アルデヒドC−12MNA(花王株式会社商品名、2−メチルウンデカナール)、cis−4−デセナール、trans−4−デセナール、フローラルスーパー(IFF社商品名、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール)、ポレナールII(花王株式会社商品名、2−シクロヘキシルプロパナール)、マイラックアルデヒド(IFF社商品名、4(3)−(4−メチル−3−ペンテン−1−イル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド)、リラール(IFF社商品名、4(3)−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド)、セトナール(ジボダン社商品名、トリメチルシクロヘキセンメチルブタナール)、ベルンアルデヒド(ジボダン社商品名、1−メチル−4−(4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセンカルボキシアルデヒド)、メロゾン(IFF社商品名、オクタヒドロ‐4,7−メタノインデンカルボキシアルデヒド)、センテナール(フィルメニッヒ社商品名、メトキシジシクロペンタジエンカルボキシアルデヒド)、デュピカール(ジボダン社商品名、4−トリシクロデシリデンブタナール)、ベルガマール(IFF社商品名、3,7−ジメチル−2−メチレン−6−オクテナール)、カンホレンアルデヒド、ブルゲオナール(ジボダン社商品名、3−(4−tert−ブチルフェニル)プロパナール)、シクラメンアルデヒド(ジボダン社商品名、3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド)、フロラロゾン(IFF社商品名、3−(4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロピオンアルデヒド)、スザラール(高砂香料工業株式会社商品名、3−(4−イソブチルフェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド)、リリアール(ジボダン社商品名、3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド)、アミルシンナミックアルデヒド(花王株式会社商品名)、ヘキシルシンナミックアルデヒド(花王株式会社商品名、2−n−ヘキシル−3−フェニル−2−プロペナール)、カントキサール(IFF社商品名、2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)プロパナール)、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン(高砂香料工業社商品名、3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド)、ヘリオナール(IFF社商品名、α−メチル−1,3−ベンゾジオキソール−5−プロパナール)、トリプラール(IFF社商品名、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシアルデヒド)、2,6−ノナジエナール等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、デュピカール、シクラメンアルデヒド、フロラロゾン、リリアール、ヘキシルシンナミックアルデヒド、カントキサール、ヘリオトロピン、ヘリオナール、cis−4−デセナールまたは2,6−ノナジエナールが好ましい。
【0057】
ケトン類としては、メチルヘプテノン、ジメチルオクテノン、3−オクタノン、ヘキシルシクロペンタノン、ジヒドロジャスモン、ベルートン(フィルメニッヒ社商品名、2,2,5−トリメチル−5−ペンチルシクロペンタノン)、ネクタリル(ジボダン社商品名、2−(2−(4−メチル−3−シクロヘキセン−1−イル)プロピル)シクロペンタノン)、イオノン、メチルイオノン、γ−メチルイオノン、ダマスコン、α−ダマスコン、δ−ダマスコン、イソダマスコン(シムライズ社商品名、1−(2,4,4−トリメチル−2−シクロヘキシル)−trans−2−ブタノン)、ダマセノン、ダイナスコン(フィルメニッヒ社商品名、1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン)、イロン、カシュメラン(IFF社商品名、1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,1,2,3,3−ペンタメチル−4H−インデン−4−オン)、イソ・イー・スーパー(IFF社商品名、1−(1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−エタン−1−オン)、カロン(フィルメニッヒ社商品名、7−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾジオキセピン−3−オン)、カルボン、メントン、アセチルセドレン、イソロンギフォラノン、ヌートカトン、ベンジルアセトン、ラズベリーケトン、ベンゾフェノン、トナリド(PFW社商品名、6−アセチル−1,1,2,4,4,7−ヘキサメチルテトラヒドロナフタレン)、β−メチルナフチルケトン、エチルマルトール、カンファー、ムスコン、ムセノン(フィルメニッヒ社商品名、3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン)、シベトン、グロバノン(シムライズ社商品名、8−シクロヘキサデセノン)、メチルノニルケトン等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、α−ダマスコン、イソ・イー・スーパーまたはカンファーが好ましい。
【0058】
アセタール類としては、アントキサン(花王株式会社商品名)、ボアザンブレンフォルテ(花王株式会社商品名)、トロエナン(花王株式会社商品名)、メチルパンプルムース(ジボダン社商品名、1,1−ジメトキシ−2,2,5−トリメチル−4−ヘキセン)、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、シトラールジメチルアセタール、ヒドラトロプアルデヒドジメチルアセタール、ベルドキサン(花王株式会社商品名)、フロロパール(シムライズ社商品名、2,4,6−トリメチル−4−フェニル−1,3−ジオキサン)等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタールが好ましい。
【0059】
エーテル類としては、ハーバベール(花王株式会社商品名、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル)、セドリルメチルエーテル、アンブロキサン(花王株式会社商品名、[3aR−(3aα,5aβ,9aα,9bβ)]ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2,1−b]フラン)、アンブロテック(花王株式会社商品名、ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2,1−b]フラン)、メチルイソオイゲノール、シトロネリルエチルエーテル、ゲラニルエチルエーテル、1,8−シネオール、ローズオキサイド、ジヒドロローズオキサイド、リナロールオキサイド、エストラゴール、アネトール、ヒノキチオール、ジフェニルオキサイド、β−ナフトールメチルエーテル、β−ナフトールエチルエーテル、ガラクソリド(IFF社商品名、1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−4,6,6,7,8,8−ヘキサメチルシクロペンタ−γ−2−ベンゾピラン)等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、ハーバベールまたはアンブロテックが好ましい。
【0060】
香料素材として用いられるエステル類としては、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル、その他のカルボン酸エステルが挙げられる。
【0061】
脂肪族カルボン酸エステルを形成する脂肪族カルボン酸としては、炭素数1〜18の直鎖及び分岐鎖カルボン酸が挙げられるが、中でもギ酸、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1〜6のカルボン酸、特に酢酸が重要である。芳香族カルボン酸エステルを形成する芳香族カルボン酸としては、安息香酸、アニス酸、フェニル酢酸、桂皮酸、サリチル酸、アントラニル酸等が挙げられる。脂肪族及び芳香族エステルを形成するアルコールとしては、炭素数1〜5の直鎖及び分岐鎖脂肪族アルコール及び上記の香料成分アルコール類が挙げられる。
【0062】
その他のカルボン酸エステルとしては、エチルサフラネート(ジボダン社商品名、ジヒドロシクロゲラン酸エチル)、ポワレネート(花王株式会社商品名、エチル−2−シクロヘキシルプロピオネート)、フルテート(花王株式会社商品名、エチルトリシクロ[5.2.1.0
2.6]デカン−2−カルボキシレート)、ジャスモン酸メチル、MDJ(花王株式会社商品名、ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル (2−ペンチル−3−オキソシクロペンチル)アセテート)、シクロヘキシルサリシレート(花王株式会社商品名)等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、ポワレネートまたはMDJが好ましい。
【0063】
カーボネート類としては、リファローム(IFF社商品名、cis−3−ヘキセニルメチルカーボネート)、ジャスマシクラット(花王株式会社商品名)、フロラマット(花王株式会社商品名)等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、ジャスマシクラットが好ましい。
【0064】
ラクトン類としては、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、ジャスモラクトン(フィルメニッヒ社商品名、テトラヒドロ−6−(3−ペンテニル)−2H−ピラン−2−オン)、γ−ウンデカラクトン、クマリン、オクタヒドロクマリン、フロレックス(フィルメニッヒ社商品名、6−エチリデンオクタヒドロ−5,8−メタノ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン)、シクロペンタデカノリド、ハバノライド(フィルメニッヒ社商品名、12(11)−オキサシクロヘキサデセン−2−オン)、アンブレットライド(IFF社商品名、10−オクタシクロヘプタデセン−2−オン)、エチレンブラシレート等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、γ−デカラクトン、クマリンまたはエチレンブラシレートが好ましい。
【0065】
オキシム類としては、ブッコキシム(シムライズ社商品名、1,5−ジメチル−ビシクロ[3,2,1]オクタン−8−オンオキシム)、ラビエノキシム(ジボダン社商品名、2,4,4,7−テトラメチル−6,8−ノナジエン−3−オンオキシム)、5−メチル−3−ヘプタノンオキシム等が挙げられる。
【0066】
ニトリル類としては、ドデカンニトリル、シトロネリルニトリル、クミニルニトリル、シンナミルニトリル、ピオニル(ジボダン社商品名、2−シクロヘキシリデン−2−フェニルアセトニトリル)等が挙げられる。
【0067】
シッフ塩基類としては、オーランチオール(ジボダン社商品名、N−(3,7−ジメチル−7−ヒドロキシオクチリデン)−アントラニル酸メチル)、リガントラール(ジボダン社商品名、3,5−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−イル−メチレンアントラニル酸メチル)、2−[(2−メチルウンデシリデン)アミノ]安息香酸メチル等が挙げられる。
【0068】
含窒素化合物としては、アミド類、ピロール類、インドール類、チアゾール類等が挙げられる。
アミド類としては、ガルダマイド(ジボダン社商品名、N,2−ジメチル−N−フェニルブチルアミド)、パラダイスアミド(ジボダン社商品名、2−エチル−N−メチル−N−(3−メチルフェニル)ブタンアミド)等が挙げられる。
含硫黄化合物としては、チオール類、スルフィド類、チオフェン類、チオカルボン酸類等が挙げられる。
【0069】
天然精油や天然抽出物としては、オレンジ、レモン、ライム、ベルガモット、ペチグレン、バニラ、マンダリン、ペパーミント、スペアミント、ラベンダー、カモミル、ローズマリー、ユーカリ、セージ、バジル、ローズ、ロックローズ、ゼラニウム、ジャスミン、イランイラン、アニス、クローブ、ジンジャー、ナツメグ、カルダモン、セダー、ヒノキ、ベチバー、パチュリ、レモングラス、ラブダナム、ガルバナム、オリバナム等が挙げられる。なかでも他の香料と調合することで新鮮さや拡散性を強調する観点から、レモン、ラベンダー、ユーカリまたはパチュリが好ましい。
【0070】
これらのその他の香料は、調合香料の種類、目的とする香気の種類及び香気の強さ等により適宜選択することができるが、香料組成物中、それぞれの含有量は、好ましくは0.0001〜99.99質量%、より好ましくは0.001〜80質量%であり、香料組成物中、合計の含有量は、好ましくは5〜99.99質量%、より好ましくは50〜99.9質量%である。
【0071】
本発明の香料組成物は、本発明の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリル及びその他の香料素材を含有させるベースとして、それ自身は匂いを持たない油剤を含有させることができる。このような油剤は、香料成分を均一に混合させ、製品に配合しやすく、適度な強度の香りを賦香しやすくすることができる。前記油剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジエチル等のエステル、流動パラフィン、スクワラン等の炭化水素、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等の界面活性剤等が挙げられる。
【0072】
これらのなかでも、全ての香料成分の溶解性の観点から、前記油剤としては多価アルコールおよびエステルが好ましく、ジプロピレングリコールおよびミリスチン酸イソプロピルがより好ましい。かかる油剤の含有量は、香料組成物中、好ましくは0.01〜95質量%、より好ましくは1〜90質量%、さらに好ましくは5〜80質量%である。
【0073】
本発明の香料組成物は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの香気に加え、さらに新鮮さや拡散性が強調されるという効果も奏する。このような香料組成物は、例えば、洗浄剤組成物や柔軟剤組成物、化粧料等の賦香に好適に使用することができる。
【0074】
〔賦香成分としての使用〕
本発明の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを含有する香料組成物は、ミューゲ、フローラル、およびグリーン香気が付与され、さらに新鮮さおよび拡散性が強調された好ましい香調を有する調合香料として、各種製品の賦香成分として使用することができる。従って、本発明は、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを賦香成分として使用する方法、好ましくは、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを香料組成物、柔軟剤組成物、毛髪化粧料または洗浄剤組成物の賦香成分として使用する方法である。当該化合物の使用方法としては、単独で又は他の成分と組み合わせて、石鹸、化粧品、毛髪化粧料、洗剤、柔軟剤、スプレー製品、芳香剤、香水、入浴剤等のトイレタリー製品のベースに含有させることができる。
【0075】
なかでも、本発明の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルは、水性媒体中で安定であること、ならびに新鮮さおよび拡散性が強調された香調が好ましく用いられる用途であることから、繊維処理組成物に用いることが好ましく、なかでも洗浄剤組成物、及び柔軟剤組成物に用いることがより好ましく、洗浄剤組成物に用いることが更に好ましい。
【0076】
したがって、本発明は、本発明の香料組成物を含有する繊維処理組成物、詳細には、本発明の香料組成物を含有する洗浄剤組成物、および本発明の香料組成物を含有する柔軟剤組成物も提供する。
【0077】
本発明の柔軟剤組成物は、例えば、エステル基、アミド基もしくはエーテル基で分断されていてもよい総炭素数14〜26の炭化水素基を少なくとも一つ有する3級アミンもしくはその塩、もしくはその4級化物またはカチオン系柔軟基剤および本発明の香料組成物を含む。前記柔軟剤組成物は、さらに、ノニオン界面活性剤、殺菌剤、粘度調整剤、pH調整剤、金属封鎖剤、貯蔵安定性向上剤、溶剤等を含んでもよい。
【0078】
前記カチオン系柔軟基剤としては、従来公知のものであれば、用いることができる。例えば、陽イオン性界面活性剤等が挙げられる。前記陽イオン性界面活性剤としては、4級アンモニウム塩型界面活性剤および/または3級アミン型界面活性剤の無機酸塩もしくは有機酸塩を挙げることができる。
【0079】
前記ノニオン界面活性剤としては、アルキルエトキシレート、オレイルエトキシレート、グリセリルエトキシレート、ジアルキルジエーテル等が挙げられる。前記アルキルエトキシレートとしては、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(1.5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(8)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5.5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ラウリルエーテル等が挙げられる。
【0080】
前記殺菌剤としては、例えば炭素数1〜8のアルコール、安息香酸類、フェノール類などが挙げられ、具体的には、エタノール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、サリチル酸、パラオキシ安息香酸メチル、クレゾール等が挙げられる。
【0081】
前記粘度調整剤としては、無機又は有機の塩類〔第四級アンモニウム塩を除く〕を用いることができる。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、グリコール酸カリウム、乳酸ナトリウムなどがあげられる。好ましくは、塩化カルシウム、塩化マグネシウムである。
【0082】
前記貯蔵安定性向上剤としては、炭素数2〜6の多価アルコールの脂肪酸(炭素数8〜22)エステルが挙げられる。
【0083】
本発明の柔軟剤は溶剤として水を含有し、通常、組成物の残部は水である。水としてはイオン交換水および蒸留水が好ましい。より好ましいpHは、1.5〜5であり、さらに好ましくは2〜4.5である。
【0084】
本発明の柔軟剤のpH調整には、任意の無機または有機の酸およびアルカリを使用することができる。
【0085】
前記金属封鎖剤としては、ホスホン酸またはその塩、アミノポリ酢酸またはその塩等が挙げられ、中でも、エタン−1−ヒドロキシ−1,1−ジホスホン酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。
【0086】
更に、本発明の柔軟剤には上記成分以外にその他の任意成分として、通常柔軟剤に配合される公知の成分を、発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。任意成分としては例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの高級脂肪酸又はそれらの低級アルコールとのエステル等を、ステアリン酸とグリセリンなどのエステルである脂肪酸グリセリンエステルなどの非イオン界面活性剤を、ステアリルアルコール、パルミチルアルコール、オレイルアルコールなどの高級アルコールを、エチレングリコールやグリセリンなどの低温安定化剤を配合でき、その他、尿素、顔料、セルロース誘導体、紫外線吸収剤、蛍光増白剤などを配合することができる。
【0087】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルおよび4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法を開示する。
【0088】
<1> 4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリル。
【0089】
<2> 4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを含有する香料組成物。
【0090】
<3> 4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの含有量が、香料組成物中、好ましくは0.01〜99質量%、より好ましくは0.1〜15質量%、さらに好ましくは0.3〜3質量%である<2>に記載の香料組成物。
【0091】
<4> 4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリル以外の香料を更に含有する<2>または<3>に記載の香料組成物。
【0092】
<5> 前記4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリル以外の香料が、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、エステル類、カーボネート類、ラクトン類、オキシム類、ニトリル類、シッフ塩基類、含窒素化合物、含硫黄化合物、天然精油および天然抽出物のうち1種以上を含有する、<4>に記載の香料組成物。
【0093】
<6> <2>〜<5>のいずれかに記載の香料組成物を含有する繊維処理組成物。
【0094】
<7> <2>〜<5>のいずれかに記載の香料組成物を含有する洗浄剤組成物。
【0095】
<8> <2>〜<5>のいずれかに記載の香料組成物を含有する柔軟剤組成物。
【0096】
<9> 4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを香料組成物、柔軟剤組成物、毛髪化粧料または洗浄剤組成物の賦香成分として使用する方法。
【0097】
<10> 4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムを脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得る脱水工程を有する、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0098】
<11> 前記脱水工程が、無水酢酸を用いる無水酢酸法、またはアルカリを用いるアルカリ触媒法により行われる<10>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0099】
<12> 前記脱水工程が、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(オキシム中間体)を無水酢酸存在下、加熱により脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得る無水酢酸法により行われる<11>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0100】
<13> 無水酢酸の使用量が、オキシム中間体に対して好ましくは1.0〜10モル倍、より好ましくは1.0〜5モル倍、さらに好ましくは1.0〜1.5モル倍である<12>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0101】
<14> 前記脱水工程が、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム(オキシム中間体)をアルカリ触媒(好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物)存在下、加熱により脱水して4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを得るアルカリ触媒法により行われる<11>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0102】
<15> 前記アルカリ触媒の使用量が、前記オキシム中間体に対して好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%である<14>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0103】
<16> アルカリ触媒法が、副生する水を系外に除去しながら反応を行われ、好ましくは溶媒還流下での共沸脱水法、または生成物も反応系外へ除去する連続脱水法により行われる<14>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0104】
<17> 4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムが、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールをオキシム化することにより得られる<10>〜<16>のいずれかに記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0105】
<18> 前記オキシム化が、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールにヒドロキシルアミン水溶液を滴下する方法、または4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールとヒドロキシルアミンの無機酸塩(好ましくはヒドロキシルアミン硫酸塩)の水溶液を混合したところに、塩基(好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物)を滴下する方法により行われる<17>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【0106】
<19> ヒドロキシルアミン又はその無機酸塩の使用量が、ヒドロキシルアミン換算で4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールに対して好ましくは1.0〜3.0モル倍、より好ましくは1.0〜2.0モル倍、さらに好ましくは1.0〜1.5モル倍である<18>に記載の4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造方法。
【実施例】
【0107】
以下の実施例及び比較例等において行った測定法の詳細を以下にまとめて示す。
【0108】
以下の製造例において行った測定法の詳細を以下にまとめて示す。
〔転化率および反応収率〕
以下の製造例に示した転化率および反応収率は、内部標準法ガスクロマトグラフィー(GC)定量分析によって求めた。
<ガスクロマトグラフィーの装置及び分析条件>
GC装置:HEWLETT PACKARD社製、型式:HP6850
カラム:J&W社製、DB−1(内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm)
キャリアガス:He、1.5mL/min
注入条件:280℃、スプリット比1/100
検出条件:FID方式、280℃
カラム温度条件:100℃→6℃/分昇温→300℃10分間保持
内部標準化合物:n−ドデカン
【0109】
〔化合物の同定〕
以下の製造例で得られた各化合物は、核磁気共鳴スペクトル(Varian社製、型式:Mercury 400)(
1H−NMR、
13C−NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(堀場製作所社製、型式:FT−710)、およびガスクロマトグラフ質量(GC−MS)分析計(島津製作所社製、型式:GC−2010)のスペクトル分析により同定した。測定条件等は各測定結果に記載した。
【0110】
〔香気評価〕
調香・香料評価業務の経験が5年以上10年未満の熟練者2名、および25年以上の熟練者3名により、におい紙法により香調と強度を判定した。におい紙(幅6mm長さ150mmの香料試験紙)の先端約5mmを、試料に浸漬し、評価した。
【0111】
香気は、主として感じられる香り(主香気)を、より強く感じられるものから順に列挙し、さらに、副次的に感じられる香り(副香気)を付記した。
匂い強度は、無臭を0、きわめて強いものを5とする相対評価で表した。
【0112】
[製造例1] (4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムの製造)
【0113】
【化6】
【0114】
2Lフラスコに、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール287g(IFF社商品名フローラルスーパー、1.59モル)、イソプロピルアルコール300g、硫酸ヒドロキシルアミン144g(0.88モル、アルデヒドに対し0.55モル倍、ヒドロキシルアミン換算で1.10モル倍)、イオン交換水272gを順に加え、窒素雰囲気下で撹拌しながら45℃に加熱した。反応温度を40〜50℃に保ちながら33質量%水酸化ナトリウム水溶液212g(1.75モル)を2時間かけて滴下し、さらに1時間加熱撹拌を続けた。反応液を室温まで冷却後、静置分層で水層を抜き出し、有機層を10質量%硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、さらにイソプロピルアルコールを留去して薄黄色液体の粗生成物338gを得た。粗生成物のガスクロマトグラフィー定量分析の結果、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールの転化率は100%、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムの純度は84%、粗収率は91%であった。
【0115】
この粗生成物30gを減圧蒸留精製し、96〜100℃/27Paで留出する無色液体を得た。4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムの純度は95%であった。
【0116】
各スペクトル分析及び香気評価の測定結果を以下に示す。
(1)MS(EI法);m/z:195(M
+)、178、162、121、108、95、81、67、55、41。
(2)FT−IR(neat);cm
-1:3261(br)、2958、2912、2364、1639、1450、995、908、681。
(3)香気:(主香気)グリーン、(副香気)シトラス。
(4)匂い強度:2。
【0117】
[実施例1] (4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの製造)
【0118】
【化7】
【0119】
1Lフラスコに、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシム300g(製造例1の粗生成物、純分252g、1.29モル)、トルエン70gを加え、窒素雰囲気下で撹拌した。ここに無水酢酸144g(1.41モル、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムに対し1.09モル倍)を30分かけて滴下し、次いで副生した酢酸を還流させながら2時間還流させた(125℃)。反応液を室温まで冷却後、水100gを加え、さらに希水酸化ナトリウム水溶液で中和した。そこへ酢酸エチル300gを追加した後に静置分層で水層を抜き出した。有機層を10質量%硫酸ナトリウム水溶液でさらに2回洗浄し、その有機層から酢酸エチルを留去して濃褐色液体の粗生成物287gを得た。粗生成物のガスクロマトグラフィー定量分析の結果、4,8−ジメチル−4,9−デカジエナールオキシムの転化率は100%、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの純度は64%、粗収率は80%であった。
【0120】
この粗生成物200gを減圧蒸留精製し、104〜107℃/133Paで留出する薄黄色液体を得た。4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの純度は97%であった。
【0121】
各スペクトル分析及び香気評価の測定結果を以下に示す。
(1)MS(EI法);m/z:177(M
+),162,121,95,81,67,55,41。
(2)
1H−NMR(CDCl
3,400MHz);δ(ppm):0.99(3H,d,J=7.2Hz),1.34(2H,dt,J=7.6,7.5Hz),1.62(3H,s),2.00(2H,dt,7.5,6.6Hz),2.13(1H,dtq,J=10.0,7.6,7.2Hz),2.30(2H,t,J=7.2Hz),2.43(2H,t,J=7.2Hz),4.92(1H,d,J=7.6Hz),4.95(1H,d,J=17.2Hz),5.25(1H,t,J=6.6Hz),5.67(1H,ddd,J=17.2,10.0,7.6Hz)。
(3)
13C−NMR(CDCl
3,100MHz);δ(ppm):16.4,16.8
,20.7,26.1,36.7,37.1,37.8,113.0,119.7,127.9,131.1,144.6。
(4)FT−IR(neat);cm
-1:2962,2912,2862,2247,1452,1425,995,910。
(5)香気:(主香気)ミューゲ、(副香気)フローラル、グリーン。
(6)匂い強度:4。
【0122】
[実施例2及び比較例1及び2] (全身洗浄剤用香料組成物)
実施例1で得られた4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを用いて、表1に記載の配合組成になるように、香料を調合し、香料組成物を得た(実施例2)。また、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを用いない以外は実施例2と同様にして香料組成物を得(比較例1)、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの代わりに4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール(IFF社商品名フローラルスーパー)を用いた以外は実施例2と同様にして香料組成物を得た(比較例2)。
【0123】
【表1】
【0124】
1)ジボダン社商品名:4−トリシクロデシリデンブタナール
2)IFF社商品名:3−(4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロピオンアルデヒド
3)ジボダン社商品名:4−メチル−2−(2−メチルプロピル)テトラヒドロ−2H−4−ピラノール
4)高砂香料工業社商品名:3,4−メチレンジオキシベンズアルデヒド
5)フィルメニッヒ社商品名:4−(1−メチルエチル)−シクロヘキサンメタノール
6)花王株式会社商品名:ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル (2−ペンチル−3−
オソシクロペンチル)アセテート
7)IFF社商品名:4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール
【0125】
評価は前記香気評価と同様にして行った。実施例2の香料組成物は、比較例1の香料組成物に比べ、新鮮なミューゲ香気が付与され、かつ組成物全体の香り立ち、拡散性が増強された。また、比較例2の香料組成物と実施例2の香料組成物を比較すると、比較例2の香料組成物は、やや生臭く、香りが暗くなるのに対して、実施例2の香料組成物は、香り立ち、瑞々しさが増していた。前記の傾向は特にシトラス−アクアティックな部分で強く見られた。
【0126】
[実施例3、比較例3及び4] (柔軟剤用香料組成物及び柔軟剤組成物)
実施例1で得られた4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを用いて、表2に記載の配合組成になるように、香料を調合し、香料組成物を得た(実施例3)。また、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを用いない以外は実施例3と同様にして香料組成物を得(比較例3)、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの代わりに4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール(IFF社商品名フローラルスーパー)を用いた以外は実施例3と同様にして香料組成物を得た(比較例4)。さらに、表3に記載の配合組成になるよう、未賦香液体柔軟剤Aを調合した。その未賦香液体柔軟剤Aに対し、0.5質量%に対応する本柔軟剤用香料組成物を加え、柔軟剤組成物を調製した。
【0127】
【表2】
【0128】
1)花王株式会社商品名:ドデカヒドロ−3a,6,6,9a−テトラメチルナフト[2,1−b]フラン
2)花王株式会社商品名:3,3,5−トリメチルシクロヘキシルエチルエーテル
3)花王株式会社商品名:2−n−ヘキシル−3−フェニル−2−プロペナール
4)IFF社商品名:1−(1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−エタン−1−オン
5)ジボダン社商品名:3−(4−t−ブチルフェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド
6)花王株式会社商品名:ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル (2−ペンチル−3−オソシクロペンチル)アセテート
7)花王株式会社商品名:エチル−2−シクロヘキシルプロピオネート
8)IFF社商品名:4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール
【0129】
【表3】
【0130】
評価は前記香気評価と同様にして行った。実施例3の香料組成物を用いた柔軟剤は、比較例3を用いた場合に比べ、甘いラベンダー香気が顕著に増強され、香り全体に新鮮さが付与された。また、比較例4の香料組成物を用いた柔軟剤と実施例3の香料組成物を用いた柔軟剤を比較すると、比較例4の香料組成物を用いた柔軟剤は、ラベンダーの特徴が弱まり、ミューゲ的な要素が強く出過ぎるのに対して、実施例3の香料組成物を用いた柔軟剤は、ラベンダーの特徴を損なうことなく、フレッシュ感を増強させた。
【0131】
[実施例4、比較例5及び6] (シャンプー用香料組成物)
実施例1で得られた4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを用いて、表4に記載の配合組成になるように、香料を調合し、香料組成物を得た(実施例4)。また、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルを用いない以外は実施例4と同様にして香料組成物を得(比較例5)、4,8−ジメチル−4,9−デカジエンニトリルの代わりに4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール(IFF社商品名フローラルスーパー)を用いた以外は実施例4と同様にして香料組成物を得た(比較例6)。
【0132】
【表4】
【0133】
1)IFF社商品名:2−メチル−3−(4−メトキシフェニル)プロパナール
2)ジボダン社商品名:3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロピオンアルデヒド
3)花王株式会社商品名:ジヒドロジャスモン酸メチル、メチル (2−ペンチル−3−オソシクロペンチル)アセテート
4)ジボダン社商品名:4−メチル−3−デセン−5−オール
5)IFF社商品名:4,8−ジメチル−4,9−デカジエナール
【0134】
評価は前記香気評価と同様にして行った。実施例4の香料組成物は、比較例5に比べ、香り全体に新鮮さと拡散性が付与された。また、比較例6の香料組成物と実施例4の香料組成物を比較すると、比較例6の香料組成物は、香りが沈み暗くなるのに対して、実施例4の香料組成物は、新鮮な瑞々しさが増していた。前記の傾向は特にグリーン−アクアティックな部分で強く見られた。