(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
まず、本実施形態で使用される基板処理装置について説明する。この基板処理装置は、具体的には半導体装置の製造装置であり、半導体装置の製造工程の一工程で使用される。
【0014】
下記の説明では、基板処理装置の一例として、一度に1枚の基板に対し成膜処理等を行う枚葉式の基板処理装置を使用した場合について述べる。
【0015】
(1)基板処理装置の構成
まず、本実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。
【0016】
<処理室>
図1に示すとおり、本実施形態にかかる基板処理装置は処理容器102を備えている。処理容器102は、例えば上面視が円形を呈する扁平な密閉容器として構成される。また、処理容器102は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料、または、石英(SiO
2)等により構成される。処理容器102内には処理室101が形成される。処理室101では、基板としてのシリコンウェハ等のウェハ100が処理される。
【0017】
<支持台>
処理容器102内には、ウェハ100を支持する支持台103が設けられる。支持台103は、例えば、石英(SiO
2)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、又は窒化アルミニウム(AlN)により構成される。支持台103の上面には、例えば、石英(SiO
2)、カーボン、セラミックス、炭化ケイ素(SiC)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、又は窒化アルミニウム(AlN)により構成された支持板としてのサセプタ117が設けられ、このサセプタ117にウェハ100が載置される。支持台103には、ウェハ100を加熱する加熱手段(加熱源)としてのヒータ106が内蔵される。また、支持台103の下端部(支柱)は、処理容器102の底部を貫通している。
【0018】
<昇降機構>
処理容器102の外部には、支持台103の下端部に接続された昇降機構107bが設けられる。この昇降機構107bを作動させることにより、支持台103を昇降させ、サセプタ117上に支持されるウェハ100を昇降させる。支持台103(サセプタ117)は、ウェハ100の搬送時には後述のウェハ搬送口150の高さまで下降し、ウェハ100の処理時にはウェハ処理位置(図示の位置)まで上昇する。なお、支持台103の下端部の周囲は、ベローズ103aにより覆われており、処理容器102内は気密に保持されている。
【0019】
<リフトピン>
また、処理容器102の底面(床面)には、複数本、例えば3本のリフトピン108bが設けられる。また、支持台103(サセプタ117も含む)には、かかるリフトピン108bを貫通させる貫通孔108aが、リフトピン108bに対応する位置にそれぞれ設けられる。そして、支持台103をウェハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン108bの上端が貫通孔108aを介してサセプタ117の上面から突出して、リフトピン108bがウェハ100を下方から支持する。また、支持台103をウェハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン108bはサセプタ117の上面から埋没して、サセプタ117がウェハ100を下方から支持する。なお、リフトピン108bは、ウェハ100と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。
【0020】
<ウェハ搬送口>
処理容器102の内壁側面には、処理容器102の内外にウェハ100を搬送するためのウェハ搬送口150が設けられる。ウェハ搬送口150にはゲートバルブ151が設けられ、このゲートバルブ151を開くことにより、処理容器102内と搬送室(予備室)171内とが連通する。搬送室171は搬送容器(密閉容器)172内に形成されており、搬送室171内にはウェハ100を搬送する搬送ロボット173が設けられている。搬送ロボット173には、ウェハ100を搬送する際にウェハ100を支持する搬送アーム173aが備えられている。支持台103をウェハ搬送位置まで下降させた状態で、ゲートバルブ151を開くことにより、搬送ロボット173により処理室101内と搬送室171内との間でウェハ100を搬送することが可能とされる。処理室101内に搬送されたウェハ100は、上述したようにリフトピン108b上に一時的に載置される。なお、搬送容器172においてウェハ搬送口150が設けられた側と反対側には、図示しないロードロック室が設けられており、搬送ロボット173によりロードロック室内と搬送室171内との間でウェハ100を搬送することが可能とされる。なお、ロードロック室は、未処理もしくは処理済のウェハ100を一時的に収容する予備室として機能する。
【0021】
<排気系>
処理容器102の内壁側面であって、ウェハ搬送口150の反対側には、処理容器102内の雰囲気を排気する排気口160が設けられる。排気口160には排気チャンバ160aを介して排気管161が接続され、排気管161には、処理室101内を所定の圧力に制御する圧力制御装置としてのAPC(Auto Pressure Controller)等の圧力調整器162、原料回収トラップ163、及び真空ポンプ164が順に直列に接続されている。主に、排気口160、排気管161、圧力調整器162によって、排気系(排気ライン)が構成される。なお、原料回収トラップ163、真空ポンプ164は、基板処理装置が設置される半導体製造工場側に設けられるが、基板処理装置に設けても良い。
【0022】
<ガス導入口>
処理容器102の上部(後述のシャワーヘッド140の上面(天井壁))には、処理容器102内に各種ガスを供給するガス導入口110が設けられている。ガス導入口110には、ガス供給系(後述)が接続される。
【0023】
<シャワーヘッド>
処理容器202においてガス導入口110と処理室101との間には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド140が設けられる。シャワーヘッド140は、ガス導入口110から導入されるガスを分散させる分散板140aと、分散板140aを通過したガスをさらに均一に分散させて支持台103上のウェハ100の表面に供給するシャワー板140bと、を備えている。分散板140aおよびシャワー板140bには、複数の通気孔が設けられている。分散板140aは、シャワーヘッド140の上面及びシャワー板140bと対向するように配置されており、シャワー板140bは、支持台103上のウェハ100と対向するように配置されている。なお、シャワーヘッド140の上面と分散板140aとの間、および分散板140aとシャワー板140bとの間には、それぞれ空間が設けられており、かかる空間は、ガス導入口110から供給されるガスを拡散させる第1バッファ空間140c、および分散板140aを通過したガスを拡散させる第2バッファ空間140dとしてそれぞれ機能する。
【0024】
<排気ダクト>
処理室101の内壁側面には、段差部101aが設けられる。この段差部101aは、コンダクタンスプレート104を保持する。コンダクタンスプレート104は、内周部にウェハ100を収容する孔が設けられたリング状の板材として構成される。コンダクタンスプレート104の外周部には、所定間隔で周方向に配列された複数の排出口104aが設けられている。
【0025】
処理容器102において支持台103の外周部には、ロワープレート105が係止される。ロワープレート105は、リング状の凹部105bと、凹部105bの内周側上部に一体的に設けられたフランジ部105aとを備えている。凹部105bは、支持台103の外周部と、処理室101の内壁側面との隙間を塞ぐように設けられている。凹部105bの底部のうち排気口160付近の一部には、凹部105b内から排気口160側へガスを排出(流通)させるプレート排気口105cが設けられている。フランジ部105aは、支持台103の上部外周縁上に係止する係止部として機能する。フランジ部105aが支持台103の上部外周縁上に係止することにより、支持台103の昇降に伴い、ロワープレート105が支持台103と共に昇降される。
【0026】
支持台103がウェハ処理位置まで上昇すると、コンダクタンスプレート104がロワープレート105の凹部105bの上部開口面を塞ぎ、凹部105bの内部をガス流路領域とする排気ダクト159が形成される。なお、コンダクタンスプレート104およびロワープレート105は、排気ダクト159の内壁に堆積する反応生成物をエッチングする場合(セルフクリーニングする場合)を考慮して、高温保持が可能な材料、例えば、耐高温高負荷用石英で構成することが好ましい。
【0027】
ここで、ウェハ処理時における処理室101内のガスの流れについて説明する。まず、ガス導入口110からシャワーヘッド140の供給されたガスは、第1バッファ空間140cを経て分散板140aの孔から第2バッファ空間140dへと入り、さらにシャワー板140bの孔を通過して処理室101内に供給され、ウェハ100上に均一に供給される。そして、ウェハ100上に供給されたガスは、ウェハ100の径方向外側に向かって放射状に流れる。そして、ウェハ100に接触した後の余剰なガスは、ウェハ100外周部に位置する排気ダクト159上、すなわち、コンダクタンスプレート104上を、ウェハ100の径方向外側に向かって放射状に流れ、コンダクタンスプレート104に設けられた排出口104aから、排気ダクト159内のガス流路領域内(凹部105b内)へと排出される。その後、ガスは排気ダクト159内を流れ、プレート排気口105cを経由して排気口160へと排気される。このようにガスを流すことで、処理室下部、すなわち、支持台103の裏面や処理室101の底面側へのガスの回り込みが抑制される。
【0028】
<ガス供給系>
続いて、上述したガス導入口110に接続されるガス供給系の構成について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の実施形態にかかる基板処理装置のガス供給系の構成図である。
【0029】
(不活性ガス供給系)
ガス供給管232aには、上流側から順に、流量制御器としてのMFC(マスフローコントローラ)235aおよびバルブ233aがそれぞれ設けられ、例えば不活性ガスである窒素(N
2)ガスがガス供給管232aを通ってガス導入口110へ供給される。主に、ガス供給管232a、MFC235a、バルブ233aにより第1の不活性ガス供給系が構成される。
【0030】
ガス供給管232gには、上流側から順に、MFC235gおよびバルブ233gがそれぞれ設けられており、例えば不活性ガスであるN
2ガスがガス供給管232gを通ってガス導入口110へ供給される。主に、ガス供給管232g、MFC235g、バルブ233gにより第2の不活性ガス供給系が構成される。
【0031】
不活性ガス供給系は、第1の不活性ガス供給系と第2の不活性ガス供給系のいずれかまたは両方で構成される。なお、ウェハ100への処理に応じて2つの不活性ガス供給系を使い分けても良い。
【0032】
(原料供給系)
ガス供給管232dには、気化器270dが設けられる。この気化器270dよりも上流には、原料タンク291d、液体流量制御器としてのLMFC(リキッドマスフローコントローラ)295d、バルブ293dが上流側から順に設けられている。気化器270d内への液体原料の供給量(すなわち、気化器270d内で気化されて処理室101内へ供給される気化ガスの供給流量)は、LMFC295dによって制御される。主に、ガス供給管232d、LMFC295d、バルブ293dにより第1原料供給系が構成される。また、液体原料タンク291dを第1原料供給系に含めても良い。なお、後述するように、第1原料供給系は第3原料供給系としても機能する。
【0033】
ガス供給管232eは気化器270eが設けられる。この気化器270eよりも上流には、原料タンク291e、LMFC295e、バルブ293eが上流側から順に設けられている。気化器270e内への液体原料の供給量(すなわち、気化器270e内で気化されて処理室101内へ供給される気化ガスの供給流量)は、LMFC295eによって制御される。主に、ガス供給管232e、LMFC295e、バルブ293eにより第2原料供給系が構成される。また、液体原料タンク291eを第2原料供給系に含めても良い。
【0034】
気化器270dには、キャリアガスとしての不活性ガスがガス供給管271dから供給される。ガス供給管271dには、MFC273dとバルブ272dとが設けられている。気化器270dで生成された気化ガスをキャリアガスで希釈することにより、サセプタ117に載置されるウェハ100面内の膜厚均一性等のウェハ100におけるウェハ100の処理の均一性を調整することができる。主に、ガス供給管271d、MFC273d、バルブ272dにより第1キャリアガス供給系が構成される。不活性ガスとしては、例えば窒素(N
2)ガスが用いられる。なお、不活性ガスは、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスであっても良い。
【0035】
気化器270eには、キャリアガスとしての不活性ガス(N
2ガス)がガス供給管271eから供給される。ガス供給管271eには、MFC273eとバルブ272eとが設けられている。気化器270eで生成された気化ガスをキャリアガスで希釈することにより、サセプタ117に載置されるウェハ100面内の膜厚均一性等のウェハ100におけるウェハ100の処理の均一性を調整することができる。主に、ガス供給管271e、MFC273e、バルブ272eにより第2キャリアガス供給系が構成される。
【0036】
ガス供給管232dからは、金属元素(第1金属元素)とハロゲン元素とを含む第1原料が、LMFC295d、気化器270d、ガスフィルタ281d等を介して処理室101内へ供給される。本実施形態においては、金属元素として遷移金属元素であるチタン(Ti)を選択し、ハロゲン元素として塩素(Cl)を選択した。ここでは、TiとClとを含む原料として、四塩化チタニウム(TiCl
4)を用いる。TiCl
4は、常温常圧で液体である。液体のTiCl
4は、原料供給タンク291d内に貯留される。
なお、ここでは、金属元素として遷移金属元素であるTiを例示したが、これに限らず、遷移金属であるタングステン(W)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)からなる群から選択してもよい。これら遷移金属元素とハロゲン元素を含む原料としては、例えば、フッ化タングステン(WF
6),塩化タンタル(TaCl
5),塩化ジルコニウム(ZrCl
4),塩化ハフニウム(HfCl
4),塩化タングステン(WCl
6)などを用いることができる。また、遷移金属以外の金属元素を用いるようにしてもよい。
なお、後述するように、第1原料は第3原料としても使用される。
【0037】
ガス供給管232eからは、金属元素(第2金属元素)とエチルリガンドとを含む原料が、MFC295e、気化器270e、ガスフィルタ281e等を介して処理室101内へ供給される。第2金属元素は、第1金属元素とは異なる元素が選択される。本実施形態においては、第2金属元素として、遷移金属元素であるハフニウム(Hf)を選択した。ここでは、Hfとエチルリガンドとを含む原料として、TDEAHf(テトラキスジエチルアミノハフニウム。Hf[N(C
2H
5)
2]
4)を用いる。TDEAHfは、常温常圧で液体である。液体のTDEAHfは、原料供給タンク291e内に貯留される。
【0038】
また、第2金属元素として遷移金属元素であるHfを例示したが、これに限らず、遷移金属であるタングステン(W)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)からなる群から選択してもよい。また、遷移金属以外の金属元素を用いるようにしてもよい。ただし、第1金属元素とは異なる金属元素を選択し、エチルリガンドを有する原料とする。金属元素とエチルリガンドを有する原料としては、例えば、テトラキスジエチルアミノジルコニウム(Zr[N(C
2H
5)
2]
4)、トリスジエチルアミノターシャリーブチルイミノタンタル(TBTDET)などを用いることができる。
【0039】
ガス供給管232bには、上流方向から順に、MFC235bおよびバルブ233bがそれぞれ設けられている。主に、ガス供給管232b、MFC235b、バルブ233bにより反応ガス供給系が構成される。ガス供給管232bからは、MFC235bおよびバルブ233bを介して窒素を含む第4原料が処理室101内へ供給される。ここでは、窒素を含む原料として、アンモニア(NH
3)を用いる。なお、NH
3に限らず、N
2、亜酸化窒素(NO)、酸化窒素(N
2O)などを用いてもよい。
【0040】
(制御部)
図1に示すように、基板処理装置は制御部としてのコントローラ300を備える。
図3に、本実施形態に係る制御部と各構成の接続例を示す。制御部(制御手段)であるコントローラ300は、CPU(Central Processing Unit)380a、RAM(Random Access Memory)380b、記憶装置380c、I/Oポート380dを備えたコンピュータとして構成される。RAM380b、記憶装置380c、I/Oポート380dは、内部バス380eを介して、CPU380aとデータ交換可能なように構成される。コントローラ300には、マン−マシンインタフェースとして、例えばタッチパネル等として構成された入力装置382や、表示装置(ディスプレイ)372が接続される。
【0041】
記憶装置380cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成される。記憶装置380c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納される。なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ300に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM380bは、CPU380aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0042】
I/Oポート380dは、ヒータ106、昇降機構107b、ゲートバルブ151、搬送ロボット173、圧力調整器162、真空ポンプ164、原料回収トラップ163、MFC235a,235b、235g、273d、273e、バルブ233a、233d、233e、233g、293d、293e、272d、272e、気化器270d、270e、LMFC295d、295e、液体原料タンク291d、291e等に接続されている。
【0043】
CPU380aは、記憶装置380cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置382からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置380cからプロセスレシピを読み出す。そして、CPU380aは、読み出した制御プログラムおよびプロセスレシピの内容に沿うように、MFC235a,235b、235g、273d、273eによる各種ガスの流量調整動作、LMFC295d、295eによる液体原料の流量制御、バルブ233a、233d、233e、233g、293d、293e、272d、272eの開閉動作、圧力調整器162の圧力調整動作、ヒータ106の温度調整動作、真空ポンプ164の起動および停止、昇降機構107bによる支持台103の昇降動作、等を制御する。
【0044】
なお、コントローラ300は、専用のコンピュータとして構成されている場合に限らず、汎用のコンピュータとして構成されていてもよい。例えば、上述のプログラムを格納した、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)383を用意し、外部記憶装置383を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本実施形態に係るコントローラ300を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置383を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置383を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶装置380cや外部記憶装置383は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置380c単体のみを含む場合、外部記憶装置383単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0045】
<半導体装置の構成>
次に、上述した基板処理装置を用いて形成されるトランジスタ(半導体装置)のゲートの構成例について説明する。ここでは、NMOSタイプのトランジスタを例に挙げる。
【0046】
図4は、上述した基板処理装置を用いて形成されるトランジスタのゲート構成例を示す図であり、具体的には、NMOSタイプのトランジスタのゲートの構成例を示す図である。図示のように、ゲートは、シリコン基板(Si sub.)の上に形成された酸化シリコン(SiO
2)からなるシリコン系絶縁膜と、このSiO
2の上に形成された酸化ハフニウム(HfO
2)からなる高誘電率膜(High-k膜)と、このHfO
2の上に形成された複合金属窒化膜(TiHfN)からなるゲート電極とを積層したスタック構造とされる。また、TiHfNの上には、金属窒化膜(TiN)からなるcap膜が形成される。また、シリコン基板の裏面には、アルミニウム(Al)膜が形成される。
【0047】
<半導体装置のゲート製造工程>
次いで、
図4に示すトランジスタのゲートの製造工程例について説明する。
図5は、
図4に示すトランジスタのゲート製造工程例を示す処理フロー図である。
【0048】
まず、シリコン基板を、例えば1%HF水溶液で処理して、シリコン基板の犠牲酸化膜を除去する(「HF treatment」工程)。次いで、シリコン基板の表面に、酸化シリコン(SiO
2)を熱酸化により成膜する(「SiO
2 formation」工程)。SiO
2は、シリコン基板と、この後に形成するHfO
2との界面における界面層として形成される。
【0049】
次に、SiO
2の上に、高誘電率膜として酸化ハフニウム(HfO
2)を成膜する(「High-k formation」工程)。SiO
2とHfO
2により、ゲート絶縁膜が構成される。次に、HfO
2の上に、ゲート電極として複合金属窒化膜を成膜する(「N-side WFM deposition」工程)。本実施形態では、複合金属窒化膜としてチタンハフニウム窒化膜(TiHfN)を成膜する。図示のように、この工程では、上述した第1原料(TiCl
4)と第2原料(TDEAHf)とを交互にXサイクル供給する。
【0050】
次いで、TiHfNの上に、cap層としてインサイチュにて窒化チタン(TiN)を成膜し(「in−situ cap TiN deposition」工程)、さらに、例えばPVD(Physical Vapor Deposition:物理気相成長)により窒化チタン(TiN)を成膜する(「TiN deposition」工程)。そして、このTiNの上にレジストをマスクにして、フォトリソグラフィ技術を用いたパターニング(「Gate patterning」工程)と行うと共に、ドライエッチング技術を用いたパターンエッチング(「Gate etching」工程)を行う。その後、当該レジストを除去する(「Resist remove」工程))。そして、水素ガスアニーリング等のFGA(Forming gas annealing)処理を行う(「FGA」工程)。その後、シリコン基板の裏面にアルミニウム層を形成する(「Backside Al deposition」工程)。
【0051】
<TiHfN膜およびTiN膜の成膜工程>
次に、上記したゲート電極を構成する複合金属窒化膜(TiHfN)の成膜工程と、cap膜を構成する金属窒化膜(TiN膜)の成膜工程について説明する。それぞれの成膜工程は、上述した基板処理装置の処理室101で実行される。
【0052】
図6は、
図5に示す処理フローにおける複合金属窒化膜(TiHfN)の成膜工程と金属窒化膜(TiN膜)の成膜工程の例を示す処理フロー図である。
図7は、
図6に示す成膜工程におけるガス供給のタイミングを示す図である。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ300により制御される。
【0053】
なお、本明細書において「ウェハ」という言葉を用いた場合は、「ウェハそのもの」を意味する場合や、「ウェハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウェハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウェハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウェハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウェハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウェハの最表面」を意味する場合がある。
【0054】
従って、本明細書において「ウェハに対して所定のガスを供給する」と記載した場合は、「ウェハそのものの表面(露出面)に対して所定のガスを直接供給する」ことを意味する場合や、「ウェハ上に形成されている層や膜等に対して、すなわち、積層体としてのウェハの最表面に対して所定のガスを供給する」ことを意味する場合がある。また、本明細書において「ウェハ上に所定の層(又は膜)を形成する」と記載した場合は、「ウェハそのものの表面(露出面)上に所定の層(又は膜)を直接形成する」ことを意味する場合や、「ウェハ上に形成されている層や膜等の上、すなわち、積層体としてのウェハの最表面の上に所定の層(又は膜)を形成する」ことを意味する場合がある。
【0055】
なお、本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も「ウェハ」という言葉を用いた場合と同様であり、その場合、上記説明において、「ウェハ」を「基板」に置き換えて考えればよい。
【0056】
(基板搬入工程S101)
まず、ウェハ搬送口150に設けられたゲートバルブ151が開放され、搬送ロボット173によって搬送室171から処理容器102内にウェハ100が搬送される。ウェハ100には、上記した高誘電率膜(HfO
2)が形成されている。なお、高誘電率膜として、HfO
2の他、酸化アルミニウム(AlO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ランタン(LaO)、酸化イットリウム(YO)、酸化タンタル(TaO)、酸化セリウム(CeO)、酸化チタン(TiO)、チタン酸ストロンチウム(STO)、チタン酸バリウム(BTO)のいずれか又はそれらを2つ以上組み合わせた膜を用いてもよい。また、これらの膜に、酸化シリコン(SiO)や窒化シリコン(SiN)を含む膜であってもよい。
【0057】
(基板載置工程S102)
処理容器102内に搬送されたウェハ100は、リフトピン108bに載置される。そして、支持台103をウェハ処理位置まで上昇させることにより、ウェハ100はサセプタ117に載置される。
【0058】
(圧力調整工程S103)
ウェハ100がサセプタ117に載置されると、ゲートバルブ151が閉じられ、処理室101内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ164によって真空排気される。この際、処理室101内の圧力は、圧力センサ(不図示)により測定され、APCバルブ162でフィードバック制御される。
【0059】
(温度調整工程S104)
また、サセプタ117に載置されたウェハ100は、支持台103に内蔵されたヒータ106によって所定の温度に加熱される。この際、ウェハ100が所定の温度分布となるように、温度センサ(不図示)が検出した温度情報に基づいてヒータ106への通電量がフィードバック制御される。
【0060】
なお、上記した圧力調整および温度調整は、後述する第1成膜工程および第2成膜工程が終了するまでの間、常に実行される。
【0061】
次に、TiCl
4とTDEAHfをウェハ100に交互に供給することにより複合金属窒化膜であるTiHfN膜を成膜する第1成膜工程を行う。第1成膜工程では次の4つのステップを順次実行する。
【0062】
<第1成膜工程(TiHfN成膜工程)>
(ステップS105)
ステップS105では、処理室101にTiCl
4(第1原料)を供給する。具体的には、ガス供給管232dのバルブ293dを開き、TiCl
4を気化器270dに供給する。このとき、気化器270dに供給されるTiCl
4は、マスフローコントローラ295dにより流量調整される。同時に、ガス供給管271dのバルブ272dを開き、N
2ガスを気化器270dに供給する。気化器270dに供給されるN
2ガスは、マスフローコントローラ273dにより流量調整される。気化器270dで気化されたTiCl
4ガスは、気化器270dに供給されたキャリアガスとしてのN
2ガスと共にガスフィルタ281dおよびガス導入口110を介して処理室101に供給される。なお、この工程において、バルブ233aを開いて、ガス供給管232a(第1の不活性ガス供給系)からN
2ガスを流しても良い。また、バルブ233gを開いて、ガス供給管232g(第2の不活性ガス供給系)からN
2ガスを流しても良い。
【0063】
また、この工程では、APCバルブ162を適正に調整して処理室101内の圧力を、例えば20〜1330Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ295dによって制御されるTiCl
4ガスの供給流量は、例えば10ccm〜100ccmの範囲内の流量とする。また、TiCl
4ガスと同時に供給するN
2ガスの流量は、例えば0ccm〜200ccmの範囲内の流量とする。ウェハ100をTiCl
4ガスに曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.01秒〜300秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ106の温度は、ウェハ100の温度(処理温度)が、例えば300〜350℃、より好ましくは330〜350℃の範囲内のとなるように設定される。TiCl
4ガスの供給により、ウェハ100上には、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのTi含有層が形成される。
【0064】
(ステップS106)
ステップS106では、バルブ233dを閉じ、処理室101内へのTiCl
4ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ162は開いたままとして、真空ポンプ164により処理室101内を真空排気し、処理室101内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl
4ガスを処理室101内から排除する。なお、このとき、バルブ233a又はバルブ233gを開き(あるいは開いたままとして)、N
2ガスを処理室101内へ供給する。N
2ガスはパージガスとして作用し、処理室101内に残留する未反応もしくはTi含有層形成に寄与した後のTiCl
4ガスを処理室101内から排除する効果を更に高めることができる。パージは、N
2ガスが、例えば200ccmの流量で、例えば、1秒〜60秒供給されることによって行われる。
【0065】
また、このとき、処理室101内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室101内を完全にパージしなくてもよい。処理室101内に残留するガスが微量であれば、その後に行われるステップS107において悪影響が生じることはない。このとき処理室101内に供給するN
2ガスの流量も大流量とする必要はなく、例えば、処理室201の容積と同程度の量を供給することで、ステップS107において悪影響が生じない程度のパージを行うことができる。このように、処理室101内を完全にパージしないことで、パージ時間を短縮し、スループットを向上させることができる。また、N
2ガスの消費も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0066】
(ステップS107)
ステップS107では、処理室101にTDEAHf(第2原料)を供給する。具体的には、ガス供給管232eのバルブ293eを開き、TDEAHfを気化器270eに供給する。このとき、気化器270eに供給されるTDEAHfは、マスフローコントローラ295eにより流量調整される。同時に、ガス供給管271eのバルブ272eを開き、N
2ガスを気化器270dに供給する。気化器270eに供給されるN
2ガスは、マスフローコントローラ273eにより流量調整される。気化器270eで気化されたTDEAHfガスは、気化器270eに供給されたキャリアガスとしてのN
2ガスと共にガスフィルタ281eおよびガス導入口110を介して処理室101に供給される。なお、この工程においても、上述のS105と同様に、バルブ233aを開いて、ガス供給管232aからN
2ガスを流しても良い。また、バルブ233gを開いて、ガス供給管232gからN
2ガスを流しても良い。
【0067】
このとき、APCバルブ162を適正に調整して処理室101内の圧力を、例えば20〜1330Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ295eで制御されるTDEAHfガスの供給流量は、例えば10ccm〜100ccmの範囲内の流量とする。また、TDEAHfガスと同時に供給するN
2ガスの流量は、例えば0ccm〜200ccmの範囲内の流量とする。ウェハ100をTDEAHfガスに曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.01秒〜300秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ106の温度は、ウェハ100の温度が、例えば300℃〜400℃、好ましくは330〜400℃、より好ましくは330〜350℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。なお、ウェハ100の温度が400℃以上を超えると、TDEAHfガスの熱分解により成膜レートが上がり制御性が低下するため、ウェハ100の上限温度は上記した範囲が好ましい。
処理室101に供給されたTDEAHfガスは、ステップS105でウェハ100上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と反応する。これによりTi、HfおよびNを含むTiHfN層が形成される。具体的には、Ti含有層のCl(ハロゲン元素)が、TDEAHfガスに含まれるアミンの配位子であるエチルと反応して除去されると共に、Clが除去されたTiにTDEAHfガスに含まれるHfおよびNが結合することで、TiHfN層が形成される。
【0068】
(ステップS108)
ステップS108では、バルブ233eを閉じ、処理室101内へのTDEAHfガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ162は開いたままとして、真空ポンプ164により処理室101内を真空排気し、処理室101内に残留する未反応もしくはHfN含有層形成に寄与した後のTDEAHfガスを処理室101内から排除する。なお、このとき、バルブ233a又はバルブ233gを開き(あるいは開いたままとして)、N
2ガスの処理室101内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室101内に残留する未反応もしくはHfN含有層形成に寄与した後のTDEAHfガスを処理室101内から排除する効果を更に高めることができる。パージは、N
2ガスが、例えば200ccmの流量で、例えば、1秒〜60秒供給されることによって行われる。
【0069】
また、このときも前述のS106同様、処理室101内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室101内を完全にパージしなくてもよい。
【0070】
(ステップS109)
上述したステップS105〜S108を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う(ステップS109)。これにより、チタン、ハフニウムおよび窒素を含む複合金属窒化膜、すなわち、TiHfN膜が形成される。尚、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。これにより、ウェハ100の高誘電率膜の上に、所定膜厚のTiHfN膜が形成される。また、上記ではTiCl
4ガスをTDEAHfガスよりも先に供給するようにしたが、TDEAHfガスをTiCl
4ガスよりも先に供給するようにしてもよい。
【0071】
TiHfN膜を形成した後、不活性ガス供給管232aのバルブ233aまたは不活性ガス供給管232gのバルブ233gを開き(あるいは開いたままとして)、処理室101内にN
2ガスを流す。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室101内がパージされ、処理室101内に残留するガスが処理室101内から除去される。その後、TiHfN膜の上にcap膜としてTiN膜を形成する第2成膜工程が行われる。第2成膜工程は、第1成膜工程に続き、処理室101で実行される。
【0072】
<第2成膜工程(TiN成膜工程)>
(ステップS205)
ステップS205では、処理室101にTiCl
4(第3原料)を供給する。バルブの開閉等、具体的な処理手順は上述したS105と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
このとき、APCバルブ162を適正に調整して処理室101内の圧力を、例えば20〜1330Paの範囲内の圧力とする。液体マスフローコントローラ295dで制御するTiCl
4ガスの供給流量は、例えば10ccm〜100ccmの範囲内の流量とする。また、TiCl
4ガスと同時に供給するN
2ガス等の不活性ガスの流量は、例えば0ccm〜200ccmの範囲内の流量とする。ウェハ100をTiCl
4に曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.01秒〜300秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ106の温度は、ウェハ100の温度が、例えば100〜400℃、好ましくは200〜400℃、より好ましくは240〜350℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。TiCl
4ガスの供給により、第1成膜工程で形成したTiHfN膜の上に、例えば1原子層未満から数原子層程度の厚さのTi含有層が形成される。
【0074】
(ステップS206)
次いで、ステップS206において、TiCl
4ガスのパージ工程を行う。バルブの開閉等、具体的な処理手順は上述のS106と同様であるため、説明を省略する。なお、このパージ工程も、N
2ガスが、例えば200ccmの流量で、例えば、1秒〜60秒供給されることによって行われる。
【0075】
(ステップS207)
ステップS207では、処理室101にNH
3(第4原料)を供給する。具体的には、ガス供給管232bのバルブ233bを開き、NH
3ガスをガス供給管232bに流す。ガス供給管232bを流れるNH
3ガスは、マスフローコントローラ235bにより流量調整される。流量調整されたNH
3ガスは、ガス導入口110を介して処理室101に供給される。なお、この工程において、バルブ233aを開いて、ガス供給管232aからN
2ガスを流しても良い。また、バルブ233gを開いて、ガス供給管232gからN
2ガスを流しても良い。
【0076】
このとき、APCバルブ162を適正に調整して処理室101内の圧力を、例えば20〜1330Paの範囲内の圧力とする。マスフローコントローラ235bで制御されるNH
3ガスの供給流量は、例えば10ccm〜200ccm好ましくは100ccm〜200cmmの範囲内の流量とする。ウェハ100をNH
3に曝す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば0.01秒〜300秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ106の温度は、ウェハ100の温度が、例えば100〜400℃、好ましくは200〜400℃、より好ましくは240〜350℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。処理室101に供給されたNH
3ガスは、ステップS205でウェハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と反応する。これによりTi含有層は窒化されて、窒化チタン層(TiN層)が形成される。
【0077】
(ステップS208)
ステップS208では、バルブ233bを閉じ、処理室101内へのNH
3ガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ162は開いたままとして、真空ポンプ164により処理室101内を真空排気し、処理室101内に残留する未反応もしくは窒素含有層形成に寄与した後のNH
3ガスを処理室101内から排除する。なお、このとき、バルブ233a又はバルブ233gを開き(あるいは開いたままとして)、N
2ガスの処理室101内への供給を維持する。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室101内に残留する未反応もしくは窒素含有層形成に寄与した後のNH
3ガスを処理室101内から排除する効果を更に高めることができる。パージは、N
2ガスが、例えば200ccmの流量で、例えば、1秒〜60秒供給されることによって行われる。
【0078】
また、このとき、他のパージ工程と同様に、処理室101内に残留するガスを完全に排除しなくてもよく、処理室101内を完全にパージしなくてもよい。
【0079】
(ステップS209)
上述したステップS205〜S208を1サイクルとして、このサイクルを少なくとも1回以上行う(ステップS209)ことにより、チタンおよび窒素を含む金属窒化膜、すなわち、TiN膜を成膜することができる。尚、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。これにより、ウェハ100に形成されたTiHfN膜の上に所定膜厚(例えば4nm)のTiN膜が形成される。また、上記ではTiCl
4ガスをNH
3ガスよりも先に供給するようにしたが、NH
3ガスをTiCl
4ガスよりも先に供給するようにしてもよい。
【0080】
TiN膜を形成後、不活性ガス供給管232aのバルブ233aまたは不活性ガス供給管232gのバルブ233gを開き(あるいは開いたままとして)、処理室101内にN
2ガスを流す。N
2ガスはパージガスとして作用し、これにより、処理室101内が不活性ガスでパージされ、処理室101内に残留するガスが処理室101内から除去される。その後、処理室101内の雰囲気が不活性ガスに置換され、処理室101内の圧力が搬送室171の圧力に調圧される。
【0081】
(ステップS210)
その後、支持台103が下降されて、ゲートバルブ151が開くとともに、処理済のウェハ100が搬送ロボット173によって処理容器102の外部に搬出される。
【0082】
図8は、TDEAHfを用いてTiHfN膜を形成したときの処理温度と結晶性の関係を示す図であり、処理温度を300℃、330℃、350℃としたときのTiHfN膜のXRD(X―ray diffraction)回析結果を示す。図示のように、処理温度(成膜温度)が300℃のときにHfNに由来する結晶ピークが現れ始め、処理温度が330℃以上のときはさらにその結晶ピークがより強くなる。このように、処理温度が300℃から350℃において、TDEAHfを用いてTiHfN膜を形成することにより、HfNの結晶性を有する膜が得られることが確認された。ここで、「HfNの結晶性を有する膜」とは、規則的に配列された結晶構造のHf−N結合を有する膜を意味し、すなわち、HfとNとの結合が結晶性を有する膜を意味する。
【0083】
図9は、上述のゲート製造工程で形成したゲートの仕事関数と処理温度の関係を示す図である。同図において、「Ethyl ligand」と示す特性がTDEAHfを用いてTiHfN膜を形成した場合の仕事関数と処理温度の関係である。図示のように、成膜にエチルリガンドを含むTDEAHfを用いた場合、HfNに由来する結晶性(結晶構造)が確認され始める300℃を超えると仕事関数が大きく低下し、鋭い結晶ピークが確認される330℃以上では極めて低い仕事関数が得られている。これは、結晶性を有するHfN(窒化ハフニウム)の仕事関数がTiNのそれよりも低いことに起因するもので、HfNの結晶性を制御することで、仕事関数を広範囲な値に変調することが可能であることを示している。なお、図示の仕事関数は具体的には実効仕事関数(Effective Workfunction)であり、高誘電率膜としてHfO
2を用いたときのHfO
2/SiO
2界面のダイポール込みの値である。また、図示の仕事関数を得たときの1サイクルあたりのTiCl
4の供給時間は2[sec]、TDEAHfの供給時間は10[sec]である。
【0084】
TiN膜の仕事関数(実行仕事関数)は、高誘電率膜としてHfO
2を用いた場合、4.8[eV]から4.9[eV]程度である。これに対し、本実施形態に係るTiHfN膜は、HfNの結晶性が確認される処理温度帯においてTiN膜よりも十分に低い仕事関数が得られている。この処理温度帯の中でも、300℃から330℃の温度帯は仕事関数が大きく変化し、TiN膜の仕事関数よりも低い数値の範囲で仕事関数を任意の値に変調するのに好適である。また、330℃から350℃の温度帯は、TiN膜に対し、仕事関数を大きく変調させて極めて低い仕事関数を得るのに好適である。
【0085】
また、NMOSタイプのトランジスタでは、一般に、4.5[eV]よりも低い仕事関数が要求される。本実施形態に係るTiHfN膜は、図示のように、HfNの結晶性が確認される処理温度帯、特に、330℃から350℃の温度帯において、上記要求を十分に満たす仕事関数が得られている。なお、高誘電率膜としてHfO
2以外の膜を使用した場合も、本実施形態に係るTiHfN膜の仕事関数はTiN膜のそれよりも十分に低い値を示し、NMOSタイプのトランジスタのメタルゲート電極として好適である。
【0086】
ここで、エチルリガンドを含まない原料を用いて形成したTiHfN膜の結晶性と仕事関数について説明する。
【0087】
図10は、メチルリガンドを有するTDMAHf(テトラキスジメチルアミノハフニウム。Hf[N(CH
3)
2]
4)を用いてTiHfN膜を成膜したときの処理温度と結晶性の関係を示す図である。なお、ガス流量や圧力等の処理条件は、TDEAHfを用いて
図8に示す特性を得たときの条件と共通である。
図10に示すように、メチルリガンドを有するTDMAHfを用いてTiHfN膜を形成した場合、HfNに由来する明確な結晶ピークは現れない。
【0088】
図11は、エチルメチルリガンドを有するTEMAHf(テトラキスエチルメチルアミノハフニウム。Hf[N(C
2H
5)CH
3]
4)を用いてTiHfN膜を成膜したときの処理温度と結晶性の関係を示す図である。なお、ガス流量や圧力等の処理条件は、TDEAHfを用いて
図8に示す特性を得たときの条件と共通である。
図11に示すように、エチルメチルリガンドを有するTEMAHfを用いてTiHfN膜を形成した場合、HfNに由来する明確な結晶ピークは現れない。
【0089】
リガンドによってHfNの結晶性の出現に相違が現れるのは、以下の理由によるものと考えられる。エチルリガンド(C
2H
5)は、メチルリガンド(CH
3)やエチルメチルリガンド((C
2H
5)CH
3)に比べ、Nとの結合エネルギーが小さい。そのため、TDEAHfにおいては、上記した300℃から350℃程度の温度領域でエチルリガンドの脱離が促進され、HfNに由来する結晶性が現れたものと考えられる。また、処理温度を上昇させると結晶ピークの鋭さが増すのは、エチルリガンドの脱離がより促進されると考えられることに加え、成膜時に与えられるエネルギーが大きくなり、Hf−N結合の結晶成長が促進されることも一因と考えられる。
【0090】
TDMAHfまたはTEMAHfを用いてTiHfN膜を形成した場合の仕事関数と処理温度の関係は、
図9に示す通りである。同図において、「Methyl ligand」と示す特性がTDMAHfを用いた場合の特性であり、「Ethyl Methyl ligand」と示す特性がTEMAHfを用いた場合の特性である。TDEAHfやTEMAHfを用いた場合も、300℃から330℃の範囲で仕事関数の比較的大きな変調が確認されるが、TDEAHfを用いた場合に比して仕事関数の値は高いし、変調範囲も小さい。また、いずれの場合も、処理温度を330℃以上に上昇させても、TDEAHfのような仕事関数の低下は見られない。以上から、仕事関数を低下方向に大きく変調させる上で、TDEAHfを用いることが好適であることがわかる。
【0091】
図12は、上記の各Hf含有原料を用いてTiHfN膜を形成したときの組成比を示す図である。同図において、「Ethyl」と示す組成比がTDEAHfを用いてTiHfN膜を形成した場合の組成比であり、「EthylMethyl」と示す組成比がTEMAHfを用いてTiHfN膜を成膜したときの組成比であり、「Methyl」と示す組成比がTDMAHfを用いてTiHfN膜を成膜したときの組成比である。なお、図示の組成比は、いずれもウェハ100の処理温度が330℃であるときの例であり、ガス流量や圧力等の処理条件は、
図8、
図10および
図11に示す特性を得たときのそれと同じである。
図12に示すように、仕事関数を下げる方向に作用するHfやCの含有量は、TDEAHfを用いた場合が最も低い。しかしながら、
図12に示すように、仕事関数はTDEAHfを用いた場合が最も低くなっており、HfNの結晶性が仕事関数の低下に大きく寄与していることがわかる。なお、同図においてTDMAHfやTEMAHfを用いたときのHf含有割合が高いのは、それらの熱分解温度が低いためと考えられる。
【0092】
次いで、上述したTiHfN膜を形成する処理(第1成膜工程)における各処理ガスの反応形態について説明する。
図13は、上述の第1成膜工程におけるTiCl
4の供給時間と成膜レートの関係を示すグラフである。
図14は、上述の第1成膜工程におけるTDEAHfの供給時間と成膜レートの関係を示すグラフである。
【0093】
図13に示すように、TiCl
4ガスを上述したウェハ100の処理温度範囲内(図示の例では330℃)で供給したとき、TiCl
4ガスの供給時間を延ばしても成膜レートは頭打ちとなる。すなわち、上述したウェハ100の温度範囲内において、TiCl
4ガスの反応には飽和特性が確認される。これに対し、TDEAHfガスは、
図14に示すように、上述したウェハ100の処理温度範囲内においては、供給時間を延ばすにしたがって成膜レートも大きくなる。すなわち、上述したウェハ100の温度範囲内において、TDEAHfガスの反応には飽和特性は確認されない。このことから、上述のTiHfN膜を形成する処理において、TiCl
4は化学吸着反応の挙動を示しているのに対し、TDEAHfは化学気相成長反応の挙動を示していることがわかる。したがって、TDEAHfガスの供給時間を調整することにより、TiHfN膜中のHfN含有量(膜厚)を調整し、仕事関数をより効果的に変調することも可能である。
【0094】
このように、本実施形態によれば、ウェハ100を加熱しつつ、ウェハ100に対して第1金属元素を含む第1原料と第1金属元素とは異なる第2金属元素とエチルリガンドとを含む第2原料とを交互に供給してウェハ100に第2金属元素と窒素元素との結合が結晶性を有する複合金属窒化膜を形成することで、仕事関数の変調幅が大きい金属膜を形成することができる。
また、新規な材料を既存の生産ラインで採用するには、インテグレーションの問題(加工、熱安定性、拡散安定性)が生じるが、本実施形態の成膜プロセスは既存の金属窒化膜であるTiN膜の成膜プロセスをベースとしているため、インテグレーションの問題も回避できる。
また、TiHfN膜の上にインサイチュにてcap膜としてTiN膜を形成したため、TiHfN膜の耐酸化性を向上させることができ、酸化による仕事関数の上昇も防止できる。
【0095】
なお、本発明は、例えば、半導体装置の製造工場に存在する既存の基板処理装置のガス供給系を改造し、プロセスレシピを変更することでも実現できる。プロセスレシピを変更する場合は、本発明に係るプロセスレシピを電気通信回線や当該プロセスレシピを記録した記録媒体を介して既存の基板処理装置にインストールしたり、また、既存の基板処理装置の入出力装置を操作し、そのプロセスレシピ自体を本発明に係るプロセスレシピに変更したりすることも可能である。
【0096】
また、上記では仕事関数をTiN膜のそれよりも低下方向に変調する例を示したが、エチルリガンドを有する他の原料を用いて、TiN膜に対して仕事関数を上昇方向に変調させてもよい。要するに、エチルリガンドが離脱しやすいことを利用し、膜中の他の元素間の結合に結晶性を与え、その結晶構造が有する特性によって仕事関数を上昇させるようにしてもよい。
【0097】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態として成膜技術について説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。例えば、本実施形態では、基板処理装置の例として枚葉装置を記載したが、一度に複数枚の基板を処理する縦型処理装置等についても同様に適用することができる。
【0098】
(本発明の好ましい態様)
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0099】
〔付記1〕
基板を収容する処理室と、
前記処理室に第1金属元素を含む第1原料を供給する第1原料供給系と、
前記処理室に前記第1金属元素とは異なる第2金属元素とエチルリガンドとを含む第2原料を供給する第2原料供給系と、
前記処理室に前記第1原料と前記第2原料とを交互に供給して前記基板に複合金属窒化膜を形成する処理を前記第1原料供給系および前記第2原料供給系を制御して実行させるように構成された制御部と、
を備え、前記基板に形成された複合金属窒化膜は前記第2金属元素と窒素元素との結合が結晶性を有する基板処理装置。
【0100】
〔付記2〕
前記第1金属元素は遷移金属元素である付記1に記載の基板処理装置。
【0101】
〔付記3〕
前記第2金属元素は遷移金属元素である付記1または2に記載の基板処理装置。
【0102】
〔付記4〕
前記第1金属元素はTiであり、前記第2金属元素はHfである付記1から3のいずれかに記載の基板処理装置。
【0103】
〔付記5〕
前記第1原料は、前記第1金属元素としてTiを含むTiCl4であり、前記第2原料は、前記第2金属元素としてHfを含むTDEAHfである付記1から4のいずれかに記載の基板処理装置。
【0104】
〔付記6〕
前記制御部は、前記複合金属窒化膜を形成する処理の処理温度が330℃から350℃となるように前記加熱部を制御する付記1から5のいずれかに記載の基板処理装置。
【0105】
〔付記7〕
前記複合金属窒化膜を形成する処理において、前記第1原料は化学吸着反応を示し、前記第2原料は化学気相成長反応を示す付記1から6のいずれかに記載の基板処理装置。
【0106】
〔付記8〕
処理室内の基板に対して第1金属元素を含む第1原料と前記第1金属元素とは異なる第2金属元素とエチルリガンドとを含む第2原料とを交互に供給して前記基板に前記第2金属元素と窒素元素との結合が結晶性を有する複合金属窒化膜を形成する工程、
を有する半導体装置の製造方法。
【0107】
〔付記9〕
前記第1原料は、前記第1金属元素としてTiを含むTiCl4であり、前記第2原料は、前記第2金属元素としてHfを含むTDEAHfである付記8に記載の半導体装置の製造方法。
【0108】
〔付記10〕
前記複合金属窒化膜を形成する工程において、処理温度が330℃から350℃である付記8または9に記載の半導体装置の製造方法。
【0109】
〔付記11〕
前記複合金属窒化膜を形成する工程において、前記第1原料は化学吸着反応を示し、前記第2原料は化学気相成長反応を示す付記8から10のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【0110】
〔付記12〕
処理室内の基板に対して第1金属元素を含む第1原料と前記第1金属元素とは異なる第2金属元素とエチルリガンドとを含む第2原料とを交互に供給して前記基板に前記第2金属元素と窒素元素との結合が結晶性を有する複合金属窒化膜を形成する手順、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【0111】
〔付記13〕
処理室内の基板に対して第1金属元素を含む第1原料と前記第1金属元素とは異なる第2金属元素とエチルリガンドとを含む第2原料とを交互に供給して前記基板に前記第2金属元素と窒素元素との結合が結晶性を有する複合金属窒化膜を形成する手順、
をコンピュータに実行させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。