(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202683
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セル
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1339 20060101AFI20170914BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20170914BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20170914BHJP
C08K 5/3445 20060101ALI20170914BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 L
C09K3/10 Q
C08L63/00 C
C08K5/3445
C08K3/00
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-84414(P2014-84414)
(22)【出願日】2014年4月16日
(65)【公開番号】特開2015-203833(P2015-203833A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2016年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹居 祥行
(72)【発明者】
【氏名】内藤 伸彦
【審査官】
磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−121069(JP,A)
【文献】
特開昭63−152605(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0054785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表されるラジカル発生剤、(B)硬化性化合物、(C)熱硬化剤、および(D)無機充填剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤。
【化1】
[式中、R
1〜R
6は各々独立して、水素原子、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。]
【請求項2】
前記式(1)において、R1〜R6がいずれも水素原子である請求項1に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項3】
前記成分(A)が平均粒子径5μm以下の固体粉末である請求項1又は2に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項4】
前記成分(B)が、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項5】
前記成分(C)が、有機酸ヒドラジド化合物である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項6】
前記成分(D)が、アルミナ及び/又はシリカである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項7】
前記成分(D)の平均粒子系が10〜2000nmである請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項8】
更に(E)水素供与体を含有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項9】
前記成分(E)が、(E−1)アミノ基を有する化合物、又は(E−2)メルカプト基を有する化合物である請求項8に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項10】
前記成分(E)がN−フェニルグリシン及び/又は2−メルカプトベンゾオキサゾールである請求項8に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項11】
更に(F)シランカップリング剤を含有する請求項1乃至10のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項12】
更に(G)有機フィラーを含有する請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項13】
前記成分(G)が、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーである請求項12に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤。
【請求項14】
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された請求項1乃至13のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後熱により硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法。
【請求項15】
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶滴下工法に使用される液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セルに関する。より詳細には、熱硬化時に発泡することなく、速硬化性及び低液晶汚染性に優れ、更に接着強度等のような液晶シール剤としての一般的な特性においても優れる液晶滴下工法用液晶シール剤及びそれを用いて製造された液晶表示セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱によりラジカル重合性化合物をラジカル重合により硬化させるためのラジカル発生剤としてはアゾ化合物、有機過酸化物、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、ベンゾピナコール類等が知られており、広く使用されている。
【0003】
熱開裂により最も効率良くラジカルを発生するとされるアゾ化合物や有機過酸化物は、接着剤、封止剤およびギャップ形成剤、成型材料などの製品にラジカル発生剤として使用される。しかしながら、上記ラジカル発生剤はラジカル発生時に窒素または二酸化炭素などのガスの発生を伴うことから、そのガスにより上記の製品の特性が大きく損なわれることが懸念されている。例えば損なわれるおそれのある特性としては、接着強度の低下、耐熱強度の低下、成型物の形状不良などが挙げられる。その他のラジカル発生剤として、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、ベンゾピナコール類等が挙げられる。これらにおいては加熱時の発泡は少ないが、ラジカル発生能が劣り、所望の性能(反応性及び硬化性)が得られない問題があった。
【0004】
特許文献1では紫外線と熱の両者を用いて硬化させる系において、光の当たらない陰影部を硬化させるために、熱ラジカル発生剤としてベンゾピナコールを使用することが開示されている。また特許文献2ではコンタクトレンズ、各種レンズや歯科材料のような成型物の作成においてイニファータータイプのラジカル発生剤が有効であることが開示され、その例としてベンゾピナコールが挙げられている。さらに特許文献3ではフラットパネルディスプレイ用の封止剤に使用される熱ラジカル発生剤としてベンゾピナコールが挙げられている。
特許文献1及び3ではさらにベンゾピナコールを化学修飾させた化合物が挙げられている。該化合物はさらに所望の効果を発揮すると記載されている。しかし、ベンゾピナコールは三級アルコールであり、且つ水酸基がフェニル基の立体障害の影響で反応性に乏しく安定な誘導体を得るうえで適切なものは報告されていない。
【0005】
また、熱ラジカル発生剤の使用分野の1つとして、液晶表示セル用の液晶シール剤が挙げられる。
液晶表示セルの大型化に伴い、近年、液晶表示セルの製造法として、従来の液晶真空注入方式による液晶表示セルの製造方法よりも量産性の高い液晶滴下工法が導入され、大型の液晶表示セルの製造が行われてきている(特許文献4参照)。液晶滴下工法とは、液晶基板に液晶シール剤の堰を塗布形成し(メインシール)、さらに最外周に一周、シール剤を塗布後(ダミーシール)、内部シールの内側に液晶を滴下し、その後、真空中で対向するもう一方の液晶基板を貼り合わせ、大気圧に開放することにより液晶が封止され、シール部をUV照射及び加熱により硬化させることにより液晶表示セルを完成させる製造方法である。この製造法で液晶の封止に使用される液晶シール材は、従来の熱硬化型液晶シール剤ではなく、光熱硬化併用タイプの液晶シール剤が一般的に使用されている。従来の熱硬化型液晶シール剤(熱硬化性液晶シール剤とも言う)が液晶滴下工法に使用されない理由は、従来の熱硬化型液晶シール剤で液晶滴下工法を行うと、加熱時の液晶の熱膨張と液晶シール剤の加熱による粘度低下が起き、シールがパンクし、液晶を封止することができないためである。
【0006】
光熱硬化併用タイプの液晶シール剤の使用方法は、液晶基板にディスペンサー等で液晶シール剤の堰を塗布形成後、その堰の内側に液晶を滴下し、真空中で対向するもう一方の基板を貼り合わせた後、シール部に紫外線等の光を照射し、仮硬化させ、その後、約120℃約1時間で液晶シール剤を熱硬化させることにより、液晶セルを製造するものである。
【0007】
しかし、光熱硬化併用タイプの場合、液晶シール剤に紫外線等の光を照射しなくてはいけないが、近年の液晶セルの狭額縁化に伴い、下記のような問題が発生している。
即ち、液晶シール部が配線又はブラックマトリックスによって遮光され、液晶シール剤に光が照射されない部分ができるため、未硬化部分が発生する。その未硬化部分が加熱硬化工程時に液晶によって差し込まれたり、又は、液晶汚染が生じたりする問題が出てきた。そのため、液晶セルの設計にあたっては、シール剤に光がなるべく多く照射されるような設計にしなくてはならないという制限が生じてきた。また、紫外線照射による液晶や配向膜の劣化が問題となるため、紫外線が液晶に当たらないように、紫外線照射工程時に遮光マスクにより液晶部を遮光する必要が生じている。さらに、液晶ガラス基板サイズの大型化に伴い、紫外線照射装置が大型化し、紫外線照射装置のランニングコストが増大化する等が問題になってきている。
【0008】
以上のことから、近年、液晶滴下工法において、紫外線照射を必要とせず、かつ、熱硬化のみで液晶表示セルを作成できる熱硬化型液晶シール剤(液晶滴下工法用熱硬化型液晶シール剤)の実現が望まれてきている。
現在までに、液晶滴下工法用の熱硬化型液晶シール剤の提案は、既に行われていた。例えば、特許文献5には、1分子中の水素結合性官能基数を分子量で除した値が3.5×10−4以上である硬化性樹脂100重量部に対して熱硬化剤を3〜40重量部含有する液晶滴下工法用熱硬化液晶シール剤が提案されている。この液晶シール剤を使用することにより、低液晶汚染になることが開示されている。しかし、該熱硬化型液晶シール剤を用いた液晶滴下工法では、前記した加熱により低粘度化した硬化途中の液晶シール剤の堰が破られて液晶が漏れてしまうという問題(シールパンクの問題)と、加熱により低粘度化した液晶シール剤の成分が、やはりNI点(等方相から液晶相へ転移する温度)以上に加熱されることにより、通常よりもさらに流動しやすくなっている液晶中に溶出し、液晶を汚染してしまうという重大な問題が、十分に解決されているとは言い難い。
【0009】
また、特許文献6では、ゲル化剤が添加された液晶シール剤により、熱硬化のみの液晶
滴下工法で、耐シールパンク、シール形状保持ができるとしている。しかし、熱硬化の液
晶滴下工法の問題点である加熱硬化時の液晶シール剤の液晶への汚染について、解決され
ていない。
特許文献7には熱硬化性樹脂からなる液晶シール剤を塗布後、プレベークをし、その後、液晶滴下、真空貼り合わせを行う製造方法が提案されている。しかし、具体的な液晶シール剤の樹脂組成について明示されていない。
【0010】
特許文献8及び9には、Bステージ化(半硬化状態)処理としてプレベーク工程を行う熱硬化性の液晶滴下工法用液晶シール剤が提案されている。この方法は80℃で20分間のBステージ化処理を必要とするため、工程時間が長くなってしまう欠点がある。また、20分間のBステージ化処理時間を短くするため、処理温度を例えば100℃以上に上げると、記載の液晶シール剤では、硬化反応が進んでしまうため好ましくない。
特許文献7には、熱開裂型ラジカル発生剤、不飽和二重結合を有する化合物を含む熱硬化性化合物及び重付加型の熱硬化剤を含有することを特徴とする液晶シール剤が提案されている。そして、そこには、液晶基板の大気圧貼り合わせで、一部UV照射する液晶表示素子の作製について記載されている。しかしながら、液晶基板の真空減圧貼り合わせでUV照射することなく熱硬化のみによる液晶表示素子の作製については記載が無い。
【0011】
特許文献10には、ベンゾピナコールをシリル化した化合物が、熱硬化のみによる液晶滴下工法用液晶シール剤に好適である旨の開示がある。しかし、液晶と直接接触する液晶滴下工法用液晶シール剤であるだけに、更なる速硬化性、低液晶汚染性が要求されている。
【0012】
以上、挙げたように、液晶滴下工法における熱硬化性シール剤での全て問題を解決する加熱硬化型の液晶滴下シール剤はなく、未だ、熱硬化のみでの液晶滴下工法は実現されていない。
【0013】
その他、近年、基板の外形サイズを大きくしないで、より表示領域を大きくしたいという要望が強くなってきている。そのため、液晶シール外周部を狭くする狭額縁化や液晶シール幅を細くする等の液晶セルの設計がなされるようになってきている。その結果、シール幅が細く形成でき、かつ、シール形状が均一で乱れにくい液晶シール剤、更には、シール幅が細くても接着強度が強い液晶シール剤が求められてきている。また、作業時間内で液晶シール剤の塗布条件の変化が小さいポットライフが長い液晶シール剤が求められている。また、近年、液晶テレビ等の普及にともなって、動画の再生に対して、液晶の高速応答性を高めるために、液晶のセルギャップ(液晶が充填される2枚の基板の隙間)が狭くなってきている。液晶基板の真空貼り合わせ時に狭セルギャップ化が容易な液晶シール剤が求められてきている。
【0014】
そして、液晶セルの高寿命化要望に対して、液晶シールの高湿条件化での劣化が問題となってきている。高温高湿試験後の液晶シールの接着強度の劣化が小さい液晶シール剤が求められてきている。
以上述べてきたように、熱硬化型の液晶滴下工法を実現し、基板の真空貼り合わせで、加熱により、シールパンクせず、そして液晶汚染がなく、接着強度及び耐湿試験後の接着強度が強く、シール塗布性に優れ、室温でのポットライフが長く、狭セルギャップ化が容易な液晶滴下工法用熱硬化性液晶シール剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭57−53508号公報
【特許文献2】特開平11−21304号公報
【特許文献3】特開2006−10870号公報
【特許文献4】特公平8−20627号公報
【特許文献5】特許第3955038号公報
【特許文献6】特許第3976749号公報
【特許文献7】特開2005−92043号公報
【特許文献8】特開2007−199710号公報
【特許文献9】特開2007−224117号公報
【特許文献10】国際公開2011/061910号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、液晶滴下工法に使用される液晶シール剤及びそれを用いた液晶表示セルに関し、より詳細には、熱硬化時に発泡することなく、速硬化性及び低液晶汚染性に優れ、更に接着強度等のような液晶シール剤としての一般的な特性においても優れる液晶滴下工法用液晶シール剤及びそれを用いて製造された液晶表示セルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは前記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ビスイミダゾール骨格のラジカル発生剤を利用することにより、前期目的の液晶滴下工法用熱硬化性液晶シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基」を意味する。また、「液晶滴下工法用液晶シール剤」を単に「液晶シール剤」と記載する場合もある。
【0018】
すなわち本発明は、次の1)〜15)に関するものである。
1)
(A)下記式(1)で表されるラジカル発生剤、(B)硬化性化合物、(C)熱硬化剤、および(D)無機充填剤を含有する液晶滴下工法用液晶シール剤、
【化1】
[式中、R
1〜R
6は各々独立して、水素原子、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。]
2)
上記式(1)において、R
1〜R
6がいずれも水素原子である上記1)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
3)
上記成分(A)が平均粒子径5μm以下の固体粉末である上記1)又は2)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
4)
上記成分(B)が、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び/又はエポキシ樹脂である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
5)
上記成分(C)が、有機酸ヒドラジド化合物である上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
6)
上記成分(D)が、アルミナ及び/又はシリカである上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
7)
上記成分(D)の平均粒子系が10〜2000nmである上記1)乃至6)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
8)
更に(E)水素供与体を含有する上記1)乃至7)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
9)
上記成分(E)が、(E−1)アミノ基を有する化合物、又は(E−2)メルカプト基を有する化合物である上記8)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
10)
上記成分(E)がN−フェニルグリシン及び/又は2−メルカプトベンゾオキサゾールである上記8)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
11)
更に(F)シランカップリング剤を含有する上記1)乃至10)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
12)
更に(G)有機フィラーを含有する上記1)乃至11)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
13)
上記成分(G)が、ウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子、及びシリコーン微粒子からなる群より選択される1又は2以上の有機フィラーである上記12)に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤、
14)
2枚の基板により構成される液晶表示セルにおいて、一方の基板に形成された上記1)乃至13)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤の堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後熱により硬化することを特徴とする液晶表示セルの製造方法、
15)
上記1)乃至13)のいずれか一項に記載の液晶滴下工法用液晶シール剤を硬化して得られる硬化物でシールされた液晶表示セル。
【発明の効果】
【0019】
本発明で使用する一般式(1)で表されるビスイミダゾールは、熱ラジカル発生剤として有用であり、加熱時の発泡がなく、且つ分解しても分解物の分子量が大きいため液晶の汚染性が低い。従って、発泡による物性の劣化のおそれがない熱ラジカル発生剤として、幅広く種々の用途、例えば接着剤、封止剤、及びギャップ形成剤、成型材料などの製造に用いることが可能であり、物性(硬化物性、接着強度、形状安定性等)の優れた製品を得ることができる。特に、液晶滴下工法で使用する熱硬化性液晶シール剤用の熱ラジカル発生剤として優れている。
上記本発明で使用する一般式(1)で表されるビスイミダゾールを熱ラジカル発生剤として用いる熱硬化性液晶シール剤は、液晶シール部への紫外線照射を必要としない液晶滴下工法用の熱硬化性の液晶シール剤(以下本発明の液晶シール剤ともいう)として最適である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の液晶シール剤は、成分(A)として上記式(1)で表されるラジカル発生剤を含有する。
【0021】
上記式(1)中、R
1〜R
6は各々独立して、水素原子、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基又はハロゲン原子を表す。これらのうち、好ましいものは水素原子である。
【0022】
上記式(1)におけるC1−C4アルキル基は、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等の直鎖;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の分岐鎖;のものが挙げられる。これらのうち好ましいものは直鎖のものであり、メチル基、エチル基が挙げられ、より好ましくはメチル基である。
【0023】
上記式(1)におけるC1−C4アルコキシ基は、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルコキシ基を表し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の直鎖;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の分岐鎖;のものが挙げられる。これらのうち好ましいものは直鎖のものであり、メトキシ基、エトキシ基が挙げられ、より好ましくはメチル基である。
【0024】
上記式(1)におけるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
【0025】
本発明に用いられる上記式(1)で表される熱ラジカル発生剤としては、例えば、2,4,5,2’,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−トリル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−トリル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−エチルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−エチルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−エチルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−n−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−n−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−n−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−i−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−i−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−i−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−t−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−t−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−t−プロピルフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−フルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−フルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−フルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(m−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(p−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾールが挙げられる。好ましくは2,4,5,2’,4’,5’−テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾールである。
これらは市販品として日興ケムテック株式会社等から入手できるが、対応するベンジルとベンズアルデヒドを用い、BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN VOL. 43 429−438 (1970)に記載の方法により得ることもできる。
【0026】
成分(A)は、粒径を細かくして均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、5μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。また、(a)の粒径は際限なく細かくしても差し支えないが、通常その下限は平均粒径として0.1μm程度である。
【0027】
本発明の液晶シール剤中における成分(A)の含有量は液晶シール剤総量に対し、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.3〜7質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。含有量が0.1質量%より少ないと硬化性が悪くなりシールパンクが発生し、含有量が10質量%より多いと液晶汚染性が強くなる可能性がある。
【0028】
本発明の液晶シール剤は、成分(B)として硬化性化合物を含有する。
成分(B)は、光又は熱によって重合反応するものであれば特に限定されず、例えば(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物、エポキシ基を有する硬化性化合物等を挙げることができる。
(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、例えば(メタ)アクリルエステル、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリルエステルとしては、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、フロログリシノールトリアクリレート等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応により公知の方法で得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、カテコール、レゾルシノール等の二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、レゾルシン骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、例えばレゾルシンジグリシジルエーテル等である。また、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基との比率は限定されるものではなく、工程適合性及び液晶汚染性の観点から適切に選択される。
したがって、好ましい(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物は、(メタ)アクリロイル基を有し、さらにレゾルシン骨格を有する硬化性化合物であり、例えば、レゾルシンジグリシジルエーテルのアクリル酸エステルやレゾルシンジグリシジルエーテルのメタクリル酸エステルである。
エポキシ基を有する硬化性化合物としては、エポキシ樹脂が挙げられる。該エポキシ樹脂としては特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン骨格を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、およびそれらのハロゲン化物、水素添加物などが挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点より好ましいのはビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂である。
(メタ)アクリロイル基を有する硬化性化合物、エポキシ基を有する硬化性化合物は2種以上を混合して用いることもでき、(メタ)アクリル化エポキシ樹脂とエポキシ樹脂を混合して用いることが、本願発明の特に好ましい態様の一つである。
【0029】
本発明の液晶シール剤中における成分(B)の含有量は、通常30〜75質量%、好ましくは40〜65質量%である また、特にエポキシ樹脂と(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を併用する場合において、成分(B)中のエポキシ樹脂の含有量は、通常3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは8〜15質量%である。
【0030】
本発明の液晶シール剤は、成分(C)として熱硬化剤を含有する。
成分(C)は、上記成分(A)ラジカル発生剤とは異なり、加熱によってラジカルを発生しない熱硬化剤を意味する。具体的には、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えば多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド化合物等を挙げる事ができる。ただしこれらに限定されるものではない。これらのうち有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等をあげることが出来る。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(1−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等をあげることができる。硬化反応性と潜在性のバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはマロン酸ジヒドラジドである。
成分(C)熱硬化剤の含有率は、液晶シール剤の総量中、0.1〜10質量%である場合が好ましく、1〜5質量%である場合が更に好ましい。
【0031】
本発明の液晶シール剤は、成分(D)として無機充填剤を含有する。
成分(D)としては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、更に好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いても良い。
成分(D)の平均粒子径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板の貼り合わせ時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、2000nm以下が適当であり、好ましくは1000nm以下である。また好ましい下限は10nm程度であり、さらに好ましくは20nm程度である。粒子径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定することができる。
本発明の液晶シール剤において、無機フィラーを使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。無機フィラーの含有量が5質量%より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。又、無機フィラーの含有量が50質量%より多い場合、フィラー含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0032】
本発明の液晶シール剤は、硬化性の更なる向上のために(E)水素供与体を含有してもよい。成分(E)水素供与体としては、水素を引き抜かれてラジカルを生成する化合物であれば特に限定されず、例えば、フェノール系化合物のように分子内にヒドロキシ基を有する化合物や、分子内にアミノ基や、メルカプトキ基を有する化合物が挙げられる。このうち分子内にアミノ基又はメルカプト基を有する化合物が好ましい。具体例としては、アミノ基を有する化合物として、N−フェニルグリシン、4,4‘−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。メルカプト基を有する化合物として、2−メルカプトベンゾオキサゾール、グルタチオン、ドデカンチオール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプト−5−メトキシベンゾチアゾール、5−メチル−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、3−メルカプト−4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプトチアゾリン、オクタンチオール、ヘキサンジチオール、デカンジディオール、1,4−ジメチルメルカプトベンゼン、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセテート)、等が挙げられる。このうち、更に好ましくはN−フェニルグリシン及び/又は2−メルカプトベンゾオキサゾールである。
【0033】
上記成分(E)は、粒径を細かくして均一に分散することが好ましい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる時のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、4μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以下である。平均粒径としての下限は通常0.1μm程度である。
【0034】
本発明の液晶シール剤中における成分(E)の含有量は、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜8質量%である。
【0035】
本発明の液晶シール剤は、成分(F)としてシランカップリング剤を添加して、接着強度や耐湿性の向上を図ることができる。
成分(F)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されている為、市場から容易に入手可能である。シランカップリング剤(E)の液晶シール剤に占める含有量は、本発明の液晶シール剤総量中、0.05〜3質量%が好適である。
【0036】
本発明の液晶シール剤は、成分(G)として有機フィラーを添加しても良い。
成分(G)としては、例えばウレタン微粒子、アクリル微粒子、スチレン微粒子、スチレンオレフィン微粒子及びシリコーン微粒子が挙げられる。なおシリコーン微粒子としてはKMP−594、KMP−597、KMP−598(信越化学工業株式会社製)、トレフィル
RTME−5500、9701、EP−2001(東レダウコーニング社製)が好ましく、ウレタン微粒子としてはJB−800T、HB−800BK(根上工業株式会社)、スチレン微粒子としてはラバロン
RTMT320C、T331C、SJ4400、SJ5400、SJ6400、SJ4300C、SJ5300C、SJ6300C(三菱化学株式会社製)が好ましく、スチレンオレフィン微粒子としてはセプトン
RTMSEPS2004、SEPS2063が好ましい。
これら有機フィラーは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また2種以上を用いてコアシェル構造としても良い。これらのうち、好ましくは、アクリル微粒子、シリコーン微粒子である。
上記アクリル微粒子を使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、特に好ましくはコア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが好ましい。これはゼフィアック
RTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
また、上記シリコーン微粒子としては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等があげられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものがあげられる。これらの微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状が良い。本発明の液晶シール剤において、有機フィラーを使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0037】
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤には、さらに必要に応じて、光重合開始剤、ラジカル重合防止剤、有機酸やイミダゾール化合物等の硬化促進剤、有機溶媒、顔料、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を配合することができる。
【0038】
上記光重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURE
RTM 651、184、2959、127、907、396、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURE
RTM1173、LUCIRIN
RTM TPO(いずれもBASF社製)、セイクオール
RTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(いずれも精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用する事が好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
光重合開始剤を用いる場合の液晶シール剤総量中の含有率は、通常0.001〜3質量%、好ましくは0.002〜2質量%である。
【0039】
上記ラジカル重合防止剤としては、光重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリルβ−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が更に好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤は、成分(C)(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を合成する際に添加する方法や、成分(C)(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び/又は成分(E)エポキシ樹脂に溶解させる方法があるが、より有効な効果を得る為には成分(C)(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び/又は成分(E)エポキシ基を有する硬化性樹脂に対して添加して、溶解させるほうが好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有量としては本発明の液晶シール剤総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%が更に好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
【0040】
上記硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2 ,4−ジアミノ−6(2 ’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4− ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1 ’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の液晶シール剤において、硬化促進剤を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0041】
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(B)(複数使用する場合には、加熱混合し、室温まで冷却する)に、成分(A)、成分(C)、成分(D)及び必要に応じ、成分(E)、成分(F)、成分(G)、消泡剤、レベリング剤、及び溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造する。
【0042】
本発明の液晶表示セルは、所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の熱硬化型液晶滴下工法用液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。
ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等から構成される。熱硬化型液晶滴下工法での液晶表示セルの製造方法は、まず、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加、混合する。スペーサーとしては、例えば、グラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。その径は目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは3〜6μmであり、その使用量は、液晶シール剤100重量部に対し通常0.1〜4重量部、好ましくは0.5〜2重量部、更に好ましくは0.9〜1.5重量部程度である。
【0043】
スペーサーを配合した液晶シール剤を、基板の一方にディスペンサー等により塗布して堰を形成した後(メインシール)、液晶封止基板を真空に保持するために、さらに最外周に一周、シール剤を塗布する(ダミーシール)。その後、内部シールの堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせた後、大気圧に開放することにより、ギャップ出しを行う。液晶封止基板を真空に保持するためのダミーシール剤は、液晶と接触せず、かつ、液晶セル完成後は切り落とされるため、液晶シール剤と同じものを使用しても、別のUV硬化型シール剤、可視光硬化型シール剤又は熱硬化型シール剤を使用しても良い。真空ギャップ形成後、ダミーシールに光硬化型シール剤であるUV硬化型シール剤又は可視光硬化型シール剤を使用した場合、紫外線照射機又は可視光照射装置により紫外線又は可視光をダミーシール部に照射してダミーシール部を硬化させる。ダミーシールに光硬化型シール剤を使用しなかった場合は、光照射工程は省かれる。ギャップ形成した基板を、90〜130℃で1〜2時間加熱させることにより本発明の液晶表示セルを得ることができる。
このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。
【実施例】
【0044】
以下、合成例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0045】
[合成例1]
[2,4,5,2’,4’,5’-テトラフェニル−4,4’−ビイミダゾールの合成]
BULLETIN OF THE CHEMICAL SOCIETY OF JAPAN VOL. 43 429−438 (1970)に記載の方法により合成した。
2,4,5−トリフェニルイミダゾール2.5gを250mLの2N水酸化カリウムエタノール溶液に溶解し、この溶液に2%のヘキサシアノ鉄(III)カリウム水溶液を5℃条件下1.5時間かけて滴下し、反応溶液を得た。この反応溶を濾過し、水で洗浄、乾燥することで目的物2.5gを得た。
[合成例2]
[レゾルシンジグリシジルエーテルの合成]
レゾルシン5500g、エピクロルヒドリン37000g、テトラメチルアンモニウムクロライド500gを加え撹拌下で溶解し70℃にまで昇温した。次いでフレーク状の水酸化ナトリウム4000gを100分かけて分割添加した後、更に70℃で1時間、後反応を行った。反応終了後、水15000gを加えて水洗した後、油層から、130℃で減圧下、過剰のエピクロルヒドリンなどを留去した。残留物にメチルイソブチルケトン22200gを加え溶解し、70℃にまで昇温した。撹拌下で30重量%水酸化ナトリウム水溶液1000gを加え、1時間反応を行った後、水5550gで水洗を3回行い、180℃で減圧下メチルイソブチルケトンを留去し、レゾルシンのジグリシジル化物10550gを得た。得られたエポキシ樹脂のエポキシ当量は129g/eqであった。
[合成例3]
[レゾルシンジグリシジルエーテルの全アクリル化物の合成]
レゾルシンジグリシジルエーテル181.2g(上記合成例2で合成したもの)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え更に80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間攪拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするレゾルシンジグリシジルエーテルのエポキシアクリレート293gを得た。得られたエポキシアクリレートの反応性基当量は理論値で183である。
【0046】
[実施例1〜3、比較例1〜2]
表1に示す量の成分(A)、(B)等を用い、液晶シール剤の製造を行った。製造方法は以下に示す通りである。
まず、成分(B)として、エポキシアクリレートとエポキシ樹脂を加熱混合し、室温まで冷却後、成分(A)ラジカル発生剤、成分(C)熱硬化剤、成分(D)無機充填剤、成分(E)水素供与体、成分(F)シランかプリング剤、(G)有機フィラーを添加し、3本ロールによって混練し、金属メッシュ(635メッシュ)にて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造した。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1〜3、比較例1〜2で調製した液晶シール剤について、以下の評価を行った。結果を表2にまとめる。
【0049】
[評価用液晶セルの作成]
実施例1〜3及び比較例1、2の液晶シール剤各100gにスペーサーとして5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌脱泡を行い、シリンジに充填する。ITO透明電極付きガラス基板に配向膜液(PIA−5540−05A;チッソ株式会社製)を塗布、焼成し、ラビング処理を施した。この基板に先にシリンジに充填した実施例及び比較例の液晶シール剤をディスペンサー(SHOTMASTER300:武蔵エンジニアリング株式会社製)を使って、シールパターン及びダミーシールパターンの塗布を行い、次いで液晶(JC−5015LA;チッソ株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。更にもう一枚のラビング処理済みガラス基板に面内スペーサ(ナトコスペーサKSEB−525F;ナトコ株式会社製;貼り合せ後のギャップ幅5μm)を散布、熱固着し、真空貼り合せ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合せた。その後、大気開放してギャップ形成した後、120℃オーブンに投入して1時間加熱硬化させ評価用液晶テストセルを作成した。
【0050】
作成した評価用液晶セルのシール形状および液晶配向乱れを偏光顕微鏡にて観察した結果を表2に示す。また、作成した液晶セルのギャップは、液晶特性評価装置(OMS−NK3:中央精機株式会社製)を用いて測定した結果を表2に示す。シール形状、液晶配向乱れ及び液晶セルのギャップの評価は下記の4段階とした。
なお、シール形状は、塗布作業性に関する評価であり、液晶配向の評価は液晶汚染性の関する評価である。また液晶セルギャップは、差込耐性について確認することもできる。
【0051】
[シール形状の評価]
○:シールの直線性に乱れが無い。
△:シールの変形が認められるが、液晶の封止には問題が無いレベルである。
×:シールに液晶が差し込み、液晶の封止に問題が発生しうるレベルである。
××:シールが決壊しセルが形成できない。
【0052】
[液晶セルギャップの評価]
○:セル内が均一に5μmのセルギャップとなっている。
△:セル内に5.5μm程度のギャップがでていない場所がある。
×:セル内に6μm以上のギャップがでていない場所がある。
××:シールが決壊しセルが形成出来ない。
【0053】
[液晶配向の評価]
○:シール近傍に液晶の配向乱れがない。
△:シール近傍に僅かに液晶の配向乱れがある。
×:シール近傍に液晶の配向乱れがある。
××:シールが決壊しセルが形成出来ない。
【0054】
【表2】
表2に示されるように、実施例1〜3の液晶シール剤は差込耐性が十分でありながら、塗布作業性に優れ、また液晶汚染性も低いシール剤であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の液晶滴下工法用液晶シール剤は、ラジカル発生剤の優れた性能により、液晶の差込耐性が高く、また低液晶汚染性が実現されている。またディスペンスやスクリーン印刷といった塗布作業性にも優れる。更に、接着強度等のような液晶シール剤としての一般的な特性においても優れる液晶滴下工法用液晶シール剤である為、長期信頼性に優れる液晶表示セルを容易に製造することができるものである。