(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2次元X線検出器は、X線検出面に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出機能と、X線検出面に入射するX線を1次元で検出できる1次元X線検出機能と、X線検出面に入射するX線を0次元で検出できる0次元X線検出機能とを備え、これら各X線検出機能を切り替え可能な構成であることを特徴とする請求項7又は10のX線回折装置。
【背景技術】
【0002】
試料の結晶性や結晶構造などを分析する装置の一つとしてX線回折装置が知られている。
図10は、従来のX線回折装置におけるX線光学系の構成例を示す模式図である。
同図に示すように、X線源10で発生したX線を試料台に配置した試料Sの表面に照射し、試料Sから回折してきたX線をX線検出器20で検出する構成となっている。図には示されていないが、試料Sの表面に対するX線照射角度の設定と、試料Sから回折してくるX線を捉える方向へのX線検出器20の移動は、ゴニオメータなどの駆動によって実行される。
同図に示したX線光学系は、Bragg−Brentano光学系と呼ばれ、X線源10から放射状に拡がる発散X線1が試料に照射され、試料Sからは一点に収束する集光X線2が回折してくる。
X線検出器20は、試料Sから回折してきた集光X線2の集光点2a(又はその近接後方位置)に配置される。
X線検出器20におけるX線検出面21の手前には、受光スリット30が配設してある。受光スリット30は、X線検出器20へ導くX線の断面積を調整して、X線検出器20の分解能を調節するための光学部品である。
【0003】
図11は、上述した従来のX線回折装置において、試料から回折してくる集光X線2の光路上にモノクロメータ40と呼ばれる光学部品を配置したX線光学系の構成例を示す模式図である。
試料Sから回折してきた集光X線2には、波長分布のある連続X線と複数の特性X線が含まれている。モノクロメータ40は、この集光X線2から特定の波長のX線(例えば、Κα1線やΚα2線)のみを取り出して単色化する機能をもつ光学部品である。このモノクロメータ40を試料Sから回折してくる集光X線2の光路上に配置することで、ノイズ成分を取り除いて試料分析に必要な特定波長の回折X線のみを検出することができるため、X線検出器20の検出精度(回折角度の検出精度)が向上する。
【0004】
図11に示すように、従来のX線回折装置では、受光スリット30の後方にモノクロメータ40を配置し、集光点2aで収束してさらに発散した回折X線をモノクロメータ40に入射し、単色化した回折X線を反射させる構成となっている。モノクロメータ40の表面から反射してきた回折X線は再び集光X線となって第2の集光点2cに収束する。この第2の集光点2c(又はその近接後方位置)にX線検出器20のX線検出面21を配置してある。
この種のX線光学系を備えた従来のX線回折装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように試料Sから回折してきた集光X線2の集光点2aよりもさらに後方にモノクロメータ40を配置し、このモノクロメータ40から反射してきたX線をX線検出器20に受光させる従来のX線光学系にあっては、X線検出器20に到達するまでの回折X線の光路長が集光点2aからさらに延びてしまうため、回折X線強度の減衰が生じるという課題があった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、試料で回折してきた集光X線がX線検出器に到達するまでの光路長を大きく延ばすことなく、モノクロメータによって当該集光X線を単色化できるX線回折装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のX線回折装置は、
X線を試料に照射するX線源と、
試料から回折してきた集光X線を入射し、ブラッグの条件に基づき特定波長の集光X線のみを反射させる反射型のモノクロメータと、
モノクロメータで単色化された集光X線を検出するX線検出器と、
X線検出器の測定分解能を調節する手段と、を備え、
試料からの集光X線をそのまま収束させたときの集光点と当該試料との間のX線光路上に、モノクロメータを配置したことを特徴とする。
【0009】
試料からの集光X線が収束する集光点よりも前方にモノクロメータを配置することで、試料からの集光X線が収束する集光点よりも後方にモノクロメータを配置するよりも、試料からモノクロメータを介してX線検出器に至る集光X線の光路長は短くなる。なお、X線検出器は、モノクロメータから反射してきた集光X線の集光点(又はその近接後方位置)にX線検出面が配置される。
【0010】
ここで、モノクロメータは、内部の格子面間隔が一端から他端にかけて連続的に変化した多層膜ミラーで構成することが好ましい。
さらに、この多層膜ミラーは、集光X線が入射角θ
1で入射する部位における深さ方向の格子面間隔d
1と、集光X線が入射角θ
2で入射する部位における深さ方向の格子面間隔d
2とが、ブラッグの条件に基づき次式の関係が成立するように、内部の格子面間隔を調整した構成であることが好ましい。
2d
1×sinθ
1=2d
2×sinθ
2=nλ
なお、上式において、λは回折するX線の波長、nは整数である。
【0011】
このような構成の多層膜ミラーをモノクロメータに適用することで、モノクロメータの表面に違った角度で入射してくる集光X線の全幅に対し、特定波長のX線のみを反射させて取り出すことが可能となる。
【0012】
上述したモノクロメータは、集光X線の入射面を平坦面とすることができる。これによりモノクロメータの製作が容易となる。ただし、これに限定されず必要に応じて集光X線の入射面を湾曲面とすることもできる。
【0013】
また、モノクロメータは、X線検出器に干渉しない範囲で、試料から回折してきた集光X線をそのまま収束させたときの集光点に近接して配置することが好ましい。
このような位置にモノクロメータを配置することで、モノクロメータから反射した集光X線の集光点を、試料から回折してきた集光X線をそのまま収束させたときの集光点に近付けることができる。
【0014】
X線検出器の測定分解能を調節する手段は、例えば受光スリットで構成することができ、この受光スリットをX線検出器におけるX線検出面の手前に配置する。
また、X線検出器としては、X線検出面に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出器を適用することができる。
さらに、この2次元X線検出器は、X線検出面に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出機能と、X線検出面に入射するX線を1次元で検出できる1次元X線検出機能と、X線検出面に入射するX線を0次元で検出できる0次元X線検出機能とを備え、これら各X線検出機能を切り替え可能な構成のものとすることが好ましい。
このような機能を有する2次元X線検出器を用いることにより、一台の2次元X線検出器で2次元、1次元、0次元のX線検出を実行することができ、測定自由度を広げることが可能となる。
ここで、X線を0次元で検出するとは、X線の強度だけを検出することをいい、X線を1次元で検出するとは、X線の強度と1次元位置情報を検出することをいい、さらにX線を2次元で検出するとは、X線の強度と2次元位置情報を検出することをいう。
【0015】
本発明のX線回折装置は、モノクロメータを試料から回折してきた集光X線の光路上から取り除くことができる構成とすることもできる。
ここで、X線検出器のX線検出面は、モノクロメータを集光X線の光路上から取り除いたX線光学系において試料から回折してきた集光X線を検出できるとともに、モノクロメータを前記集光X線の光路上に配置したX線光学系において試料から回折し且つモノクロメータで反射してきた集光X線についても検出できる面積を有した構成とすることができる。
かかる構成は、モノクロメータを、X線検出器に干渉しない範囲で、試料から回折してきた集光X線をそのまま収束させたときの集光点に近接して配置することで実現容易となる。このようにモノクロメータを配置することで、モノクロメータで反射した後の集光X線の集光点を、モノクロメータを取り外したときの試料から回折してきた集光X線の集光点に近付けることができるからである。
受光スリットは、モノクロメータを集光X線の光路上から取り除いたX線光学系において試料から回折してきた集光X線を通過させる位置と、モノクロメータを集光X線の光路上に配置したX線光学系において試料から回折し且つモノクロメータで反射してきた集光X線を通過させる位置との間で、位置変更自在な構成とする。
この構成によって、X線検出器を移動させることなく、モノクロメータを集光X線の光路上から取り除いたX線光学系と、モノクロメータを集光X線の光路上に配置したX線光学系の双方を実現することが可能となる。
【0016】
モノクロメータを試料から回折してきた集光X線の光路上から取り除くことができるようにした構成において、X線検出器は次のように構成することもできる。すなわち、X線検出器は、モノクロメータを集光X線の光路上から取り除いたX線光学系において試料から回折し受光スリットを通過してきた集光X線を検出する位置と、モノクロメータを集光X線の光路上に配置したX線光学系において試料から回折し且つモノクロメータで反射し受光スリットを通過してきた集光X線を検出する位置との間で、位置変更自在の構成としてもよい。
【0017】
また、本発明のX線回折装置は、次のように構成することもできる。
モノクロメータは、試料から回折してきた集光X線の光路上から取り除くことができる構成とする。
X線検出器は、X線検出面に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出器を適用する。
当該X線検出器のX線検出面は、モノクロメータを集光X線の光路上から取り除いたX線光学系において試料から回折してきた集光X線を検出できるとともに、モノクロメータを集光X線の光路上に配置したX線光学系において試料から回折し且つモノクロメータで反射してきた集光X線についても検出できる面積を有した構成とする。
かかる構成は、既述したとおり、モノクロメータを、X線検出器に干渉しない範囲で、試料から回折してきた集光X線をそのまま収束させたときの集光点に近接して配置することで実現容易となる。
さらに、X線検出器は、モノクロメータを集光X線の光路上から取り除いたX線光学系において試料から回折してきた集光X線を検出する第1のX線検出領域と、モノクロメータを集光X線の光路上に配置したX線光学系において試料から回折し且つモノクロメータで反射してきた集光X線を検出する第2のX線検出領域との間で、当該X線検出領域を変更自在な機能を有した構成とする。
ここで、X線検出器におけるX線検出領域を変更自在な機能が、X線検出器の測定分解能を調節する手段を構成している。したがって、既述した受光スリットが不要となる。
【0018】
この構成においても、X線検出器(2次元X線検出器)は、X線検出面に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出機能と、X線検出面に入射するX線を1次元で検出できる1次元X線検出機能と、X線検出面に入射するX線を0次元で検出できる0次元X線検出機能とを備え、これら各X線検出機能を切り替え可能な構成のものとすることが好ましい。このような機能を有する2次元X線検出器を用いることにより、一台の2次元X線検出器で2次元、1次元、0次元のX線検出を実行することができ、測定自由度を広げることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したとおり、本発明によれば、試料で回折してきた集光X線がX線検出器に到達するまでの光路長を大きく延ばすことなく、モノクロメータによって当該集光X線を単色化できるX線回折装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
まず、
図1〜
図6および
図10を参照して、本発明の第1の実施形態に係るX線回折装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るX線回折装置の構成例を示す模式図である。
同図に示すX線回折装置は、X線源10、発散スリット51、散乱スリット52、モノクロメータ60、受光スリット30、X線検出器20を備えており、X線源10で発生した発散X線1を試料台に配置した試料Sの表面に照射し、試料Sから回折してきた集光X線2を、モノクロメータ60で単色化してX線検出器20に入射させる構成となっている。
ここで、X線源10からは放射状に拡がる発散X線1が放射される。X線源10から放射された発散X線1は、発散スリット51で広がり(発散角)が制限され、試料Sの表面に照射される。試料Sからはブラッグの法則に基づきX線が回折してくる。試料Sからの回折X線は、一点に収束する集光X線2である。
【0022】
図1に示す本実施形態のX線回折装置は、
図10に示した従来のBragg−Brentano型X線回折装置に反射型のモノクロメータ60を付加したものである。反射型のモノクロメータ60は、ブラッグの条件に基づき特定波長のX線のみを反射させる機能を有している。
モノクロメータ60は、試料Sからの集光X線2をそのまま収束させたときの集光点2a(
図10参照)と当該試料Sとの間に配置してある。
【0023】
試料Sから回折してきた集光X線2は、モノクロメータ60で反射して単色化される。すなわち、モノクロメータ60に入射した集光X線2は、ブラッグの条件に基づき特定波長の集光X線2(例えば、Κα1線やΚα2線)のみがモノクロメータ60から反射してくる。このようにモノクロメータ60で単色化された集光X線3が、X線検出器20のX線検出面21に入射して、X線検出器20で検出される。
【0024】
本実施形態では、X線検出器20におけるX線検出面21の手前に受光スリット30が配置してある。受光スリット30は、既述したとおり、X線検出器20へ導くX線の断面積を調整して、X線検出器20の分解能を調節するための光学部品である。
【0025】
なお、
図1には示されていないが、試料Sの表面に対するX線照射角度の設定と、試料Sから回折してくるX線を捉える方向へのX線検出器20の移動は、ゴニオメータなどの駆動によって実行される。また、
図1に示した構成例以外のX線回折装置用の光学部品についても、必要に応じて装着できることは勿論である。
【0026】
図2は、本実施形態で用いたモノクロメータ60の構成を示す模式図である。
本実施形態で用いたモノクロメータ60は、集光X線2の入射面(表面)が平坦面に形成されている。そして、内部は人工の多層膜によって、特定波長のX線を回折する多数の格子面が層状に形成されている。これら各格子面の間隔は、モノクロメータ60の一端(
図2の左端)から他端(
図2の右端)にかけて連続的に変化するように調整されている。
【0027】
ここで、
図2に示すように、モノクロメータ60の一端部(
図2の左端部)の表面には、試料Sからの集光X線2が入射角θ
1で入射するものとする。そして、この一端部における深さ方向の格子面間隔をd
1とする。一方、モノクロメータ60の他端部(
図2の右端部)の表面には、試料Sからの集光X線2が入射角θ
2で入射するものとする。そして、この他端部における深さ方向の格子面間隔をd
2とする。
モノクロメータ60の内部に層状に形成された各格子面の間隔は、ブラッグの条件に基づき次式の関係が成立するように連続的に変化している。
2d
1×sinθ
1=2d
2×sinθ
2=nλ
なお、λは回折するX線の波長、nは整数である。
【0028】
これにより、特定波長λのX線が、一端部(
図2の左端部)の表面からはθ
1の角度で反射し、また他端部(
図2の右端部)の表面からはθ
2の角度で反射してくる。すなわち、上述した構成の反射型のモノクロメータ60は、入射した集光X線2から特定波長のX線のみを入射角と同じ角度で表面から反射させ、集光X線3として一点に収束させることができる機能を有している。
なお、この種の機能を有したモノクロメータは公知であり、例えば、特許文献2の米国特許に開示されている。
【0029】
本実施形態に係るX線回折装置は、モノクロメータ60が集光X線2の光路上から着脱自在となっており、モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置することで
図1に示すようなX線光学系を形成し、一方、モノクロメータ60を集光X線2の光路上から取り外すことで
図10に示すようなX線光学系を形成することができる。
モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置した
図1のX線光学系は、モノクロメータ60によりノイズ成分を取り除いて試料Sの分析に必要な特定波長の回折X線のみをX線検出器20に入射させることができるため、X線検出器20の検出精度(回折角度の検出精度)が向上する。
一方、モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置すると、X線検出器20に入射する回折X線の強度が低下するため、回折角度よりもX線強度が重要となる測定などにあっては、むしろモノクロメータ60を集光X線2の光路上から取り外した
図10に示すX線光学系の方が好ましいこともある。
本実施形態では、モノクロメータ60を着脱自在とし、測定目的に応じて検出精度の向上とX線強度の増大のいずれを優先させるか選択できるようになっている。
【0030】
さて、モノクロメータ60を着脱自在とする構成に関連して、本実施形態のX線回折装置では、モノクロメータ60、X線検出器20、受光スリット30を次のように構成してある。
【0031】
まず、モノクロメータ60は、X線検出器20に干渉しない範囲で、試料Sから回折してきた集光X線2をそのまま収束させたときの集光点(
図10参照)に近接して配置してある。
図3(a)(b)は、モノクロメータの着脱と、集光X線が収束する集光点の位置変化との関係を示す図である。
モノクロメータ60を取り外した状態(すなわち、
図10のX線光学系)では、試料Sから回折してきた集光X線2は、
図3(a)に示す第1の集光点2aに収束する。一方、モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置した状態(すなわち、
図1のX線光学系)では、試料Sから回折してきた集光X線2は、モノクロメータ60の表面に入射し、モノクロメータ60からは特定波長のX線に単色化された集光X線3が反射してくる。そして、このモノクロメータ60から反射してきた集光X線3は、
図3(a)に示す第2の集光点3aに収束する。
【0032】
図3(a)に示す光学系では、モノクロメータ60は第1の集光点2aに近接して配置してあるため、モノクロメータ60から反射してきた集光X線3の第2の集光点3aは、第1の集光点2aに接近しており、各集光点2a,3aの距離L
1は短い。
一方、
図3(b)に示すように、モノクロメータ60を第1の集光点2aから離していくと、モノクロメータ60から反射してきた集光X線3の第2の集光点3aは、第1の集光点2aから離れていき、各集光点2a,3aの距離L
2が長くなる。
本実施形態のX線回折装置は、このようなモノクロメータ60の配置位置と、集光点3aの位置変化の関係に着目し、モノクロメータ60を、試料Sから回折してきた集光X線2をそのまま収束させたときの第1の集光点2aに近接して配置してある。
【0033】
これにより、第1の集光点2aと第2の集光点3aの距離を短くすることができる。その結果、後述するようにX線検出器20を固定したままで、
図10のX線光学系と
図1のX線光学系のいずれにも対応できる構成が実現可能となる。また、モノクロメータ60を第1の集光点2aに近接して配置することで、集光X線2のモノクロメータ60への入射面積が小さくなるため、モノクロメータ60を小形化することもできる(
図3参照)。
【0034】
X線検出器20は、X線検出面21に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出器を用いている。そして、一台のX線検出器20のX線検出面21により、モノクロメータ60を取り外したX線光学系(
図10のX線光学系)において、試料Sから回折してきた集光X線2を検出するとともに、モノクロメータ60を配置したX線光学系(
図1のX線光学系)において、モノクロメータ60で反射してきた集光X線3を検出できる構成としてある。
このように、一台のX線検出器20を固定したままで、
図10のX線光学系と
図1のX線光学系のいずれにも対応できる構成としたことで、各光学系の切り替えが容易となる。
【0035】
図4は、X線検出器のX線検出面上での集光X線の受光位置の移動と、受光スリットの位置変更を示す模式図である。
X線検出器20のX線検出面21は、集光X線2又は3の集光点2a又は3a(又はその近接後方位置)に配置される。なお、この配置関係の詳細は後述する。
図4において、モノクロメータ60を集光X線2の光路上から取り外したX線光学系(
図10のX線光学系)では、試料Sから回折してきた集光X線2が、X線検出器20のX線検出面21上の第1の受光位置21aに入射する。一方、モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置したX線光学系(
図1のX線光学系)のときは、モノクロメータ60から反射してきた集光X線3が、X線検出器20のX線検出面21上の第2の受光位置21bに入射する。
【0036】
したがって、X線検出器20のX線検出面21の手前に配置される受光スリット30の位置を、モノクロメータ60の着脱に対応して変更する必要がある。すなわち、モノクロメータ60を集光X線2の光路上から取り外したX線光学系(
図10のX線光学系)のときは、第1の受光位置21aの手前に受光スリット30を配置して、試料Sから回折してきた集光X線2を通過させる。一方、モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置したX線光学系(
図1のX線光学系)のときは、第2の受光位置21bの手前に受光スリット30を配置して、モノクロメータ60から反射してきた集光X線3を通過させる。
【0037】
受光スリット30の位置変更は手動又は自動のいずれで行ってもよい。受光スリット30を自動で位置変更するには、受光スリット30駆動機構を組み込み、この駆動機構からの駆動力によって受光スリット30を移動させる構成とすればよい。
【0038】
また、X線検出器20は、X線検出面21に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出機能と、X線検出面21に入射するX線を1次元で検出できる1次元X線検出機能と、X線検出面21に入射するX線を0次元で検出できる0次元X線検出機能とを備え、これら各X線検出機能を切り替え可能な構成の多機能2次元X線検出器を用いることが好ましい。
既述したとおり、X線を0次元で検出するとは、X線の強度だけを検出することをいい、X線を1次元で検出するとは、X線の強度と1次元位置情報を検出することをいい、さらにX線を2次元で検出するとは、X線の強度と2次元位置情報を検出することをいう。
【0039】
図5(a)(b)(c)は、この種の多機能2次元X線検出器の原理を説明するための模式図である。
2次元X線検出器20は、
図5(a)に示すように、2次元状に配列された複数の検出素子22によって一つの矩形のX線検出面21を形成している。各々の検出素子22は、互いに直角をなす二方向(図の横方向と縦方向)に格子状に並んでいる。各々の検出素子22は、それぞれに入射したX線の強度を検出する。具体的には、ある一つの検出素子22にX線が入射すると、この検出素子22は、入射したX線の強度に比例した検出信号(電気信号等)を生成する。このため、2次元X線検出器20でX線を検出する場合は、X線検出面21を形成する検出素子22の個数分の検出信号を得ることができる。
【0040】
そして、X線検出面21を構成する各検出素子22の使用範囲を変更することで、2次元X線検出機能、1次元X線検出機能、0次元X線検出機能のいずれかを選択して、X線検出方式を切り替えることが可能となる。
すなわち、
図5(a)に示すように、X線検出面21の全体に配列された各検出素子22を使用すれば、X線検出面21に入射するX線を2次元で検出できる2次元X線検出器としての機能を発揮することができる。また、
図5(b)に示すように、X線検出面21に配列された各検出素子22のうち、複数個の直線上に配列された検出素子22aだけを使用すれば、X線検出面21に入射するX線を1次元で検出できる1次元X線検出器としての機能を発揮することができる。さらに、
図5(c)に示すように、X線検出面21に配列された各検出素子22のうち一個又は複数個の固まった検出素子22bだけを使用すれば、X線検出面21に入射するX線を0次元で検出できる0次元X線検出器としての機能を発揮することができる。
【0041】
このような多機能2次元X線検出器を用いることで、モノクロメータ60を取り外したX線光学系(
図10のX線光学系)での、2次元X線検出、1次元X線検出、0次元X線検出と、モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置したX線光学系(
図1のX線光学系)での、2次元X線検出、1次元X線検出、0次元X線検出とを、任意に選択してX線回折測定を行うことができ、測定の自由度を格段に広げることができる。
【0042】
なお、一般には、2次元X線検出又は1次元X線検出では、モノクロメータ60を集光X線2の光路上から取り外し、大きなX線強度の集光X線2をX線検出器20に入射する方式が採用される。一方、0次元X線検出では、モノクロメータ60を集光X線2の光路上に配置して、高い検出精度で集光X線2を検出する方式が採用される。
【0043】
また、2次元X線検出又は1次元X線検出のときは、
図6(a)に示すように、検出対象となる集光X線2(又は3)の集光点2a(又は3a)にX線検出器20のX線検出面21を配置することが好ましい。一方、0次元X線検出のときは、
図6(b)に示すように、検出対象となる集光X線2(又は3)の集光点2a(又は3a)に受光スリット30を配置し、X線検出器20のX線検出面21はその近接後方位置に配置することが好ましい。
【0044】
〔第2の実施形態〕
次に、
図7を参照して、本発明の第2の実施形態に係るX線回折装置について説明する。
図7は、第2の実施形態に係るX線回折装置の要部を示す模式図である。
本実施形態に係るX線回折装置の全体構造は、先に説明した第1の実施形態の装置と同じである。
【0045】
本実施形態では、X線検出器20が受光スリット30と一体に移動するように構成してある。
すなわち、受光スリット30と、X線検出器20のX線検出面21においてこの受光スリット30と対向する検出領域を、次のいずれかの位置に移動させる。まず、モノクロメータ60を取り外したX線光学系(
図10のX線光学系)のときは、試料Sから回折してきた集光X線2の光路上に配置する。一方、モノクロメータ60を配置したX線光学系(
図1のX線光学系)のときは、試料Sから回折し且つモノクロメータ60で反射してきた集光X線3の光路上に配置する。
【0046】
本実施形態に係るX線回折装置では、X線検出器20を移動させるため、先の第1の実施形態に比べ、モノクロメータ60を、試料Sから回折してきた集光X線2をそのまま収束させたときの集光点2a(
図10参照)に近接して配置する必要性は低い。しかし、X線検出器20の移動量を最小限に抑えるためには、やはりモノクロメータ60を、試料Sから回折してきた集光X線2をそのまま収束させたときの集光点2a(
図10参照)に近接して配置する構成が好ましい。
【0047】
X線検出器20と受光スリット30を一体に移動させる機構には、例えば、特許文献3に開示された検出ユニット移動装置(9)を適用することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、X線検出器20が受光スリット30と一体に移動するように構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、X線検出器20と受光スリット30とが別々に移動する構成とすることもできる。
【0049】
〔第3の実施形態〕
次に、
図8を参照して、本発明の第3の実施形態に係るX線回折装置について説明する。
図8は、第3の実施形態に係るX線回折装置の要部を示す模式図である。
本実施形態に係るX線回折装置の全体構造は、先に説明した第1の実施形態の装置と同じである。
【0050】
本実施形態では、X線検出領域を変更自在な機能を有する2次元X線検出器20を用いている。この2次元X線検出器20におけるX線検出領域を変更自在な機能は、X線検出器20の測定分解能を調節する手段を構成する。よって、本実施形態のX線回折装置では、受光スリット30が取り除かれている。
【0051】
図5(a)に示したとおり、2次元X線検出器20のX線検出面21は、2次元状に配列された複数の検出素子22によって一つの矩形のX線検出面21を形成している。各々の検出素子22は、互いに直角をなす二方向(図の横方向と縦方向)に格子状に並んでおり、それぞれに入射したX線の強度を検出する。
本実施形態では、X線検出面21を形成する複数の検出素子22のうちから、X線の検出に使用する検出素子22を選択することで、X線検出面21に任意のX線検出領域を形成する構成となっている。
【0052】
すなわち、
図8に示すように、X線検出器20は、モノクロメータ60を取り外したX線光学系(
図10のX線光学系)に対しては、試料Sから回折してきた集光X線2が入射する領域にある検出素子22cだけを使って第1のX線検出領域を形成する。また、モノクロメータ60を配置したX線光学系(
図1のX線光学系)に対しては、試料Sから回折し且つモノクロメータ60で反射してきた集光X線3が入射する領域にある検出素子22dだけを使って第2のX線検出領域を形成する。これらの検出領域以外の検出素子22は使用しない。
【0053】
このように構成することで、第1のX線検出領域又は第2のX線検出領域を形成する検出素子22c又は22dが、受光スリット30の役割を併せもつこととなり、受光スリット30を省略することが可能となる。
【0054】
2次元X線検出器20のX線検出領域を変更自在とする構成は、例えば、本出願人が先に提出済みの特願2013−243506号に開示した「仮想マスク」の構成を利用することができる。
【0055】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施又は応用実施が可能であることは勿論である。
例えば、基本となるX線光学系は
図10および
図1に示した構成に限定されず、例えば、
図9(a)(b)に示すように、試料Sに集光X線2を照射し、試料Sの内部で回折したX線を透過して一点に収束させる透過式のX線光学系についても、上記各実施形態と同様に本発明を適用することができる。
【0056】
また、上述した実施形態では2次元X線検出器を使用したが、必要に応じて専用の1次元X線検出器又は0次元X線検出器を用いることもできる。
【0057】
さらに、上述した実施形態では、モノクロメータ60を集光X線2の光路上から着脱自在な構成としたが、モノクロメータ60を装置から取り外すことなく、装置上で移動させて集光X線2の光路上から退避できる構成としてもよい。
例えば、
図12に示すように、モノクロメータ60を回動させる機構を設け、回動動作によってモノクロメータを集光X線2の光路上に配置したり、当該集光X線2の光路上から退避させる。
【0058】
また、本発明の応用として、
図13に示すように、モノクロメータ60をX線源から放射状に出射され試料に照射される発散X線の光路上に配置して、試料に入射する発散X線をモノクロメータ60で単色化するように、X線回折装置を構成することもできる。モノクロメータ60は、X線源10に近接して配置する。この構成においても、モノクロメータ60は、上述した本発明の実施形態で用いた反射型のモノクロメータを適用することができる。