(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6202685
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】基板加熱装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/324 20060101AFI20170914BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20170914BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20170914BHJP
H01L 31/0749 20120101ALN20170914BHJP
H01L 31/18 20060101ALN20170914BHJP
【FI】
H01L21/324 G
H01L21/68 N
H01L21/68 A
H01L21/324 S
!H01L31/06 460
!H01L31/04 420
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-538745(P2014-538745)
(86)(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公表番号】特表2015-503216(P2015-503216A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】NL2012050745
(87)【国際公開番号】WO2013062414
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年9月24日
(31)【優先権主張番号】2007658
(32)【優先日】2011年10月26日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】516272618
【氏名又は名称】スミット サーマル ソリューションズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ケイパー, ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ジジルマンズ, ウィロ ルドルフ
【審査官】
桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/018226(WO,A1)
【文献】
米国特許第04809992(US,A)
【文献】
英国特許出願公開第01558425(GB,A)
【文献】
特開2002−064215(JP,A)
【文献】
特表2013−501908(JP,A)
【文献】
特開平11−108559(JP,A)
【文献】
特公昭48−13887(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
H01L 21/677
H01L 21/683
H01L 31/0749
H01L 31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(12)上の材料を結晶化させるために所定の温度プロファイルに従って前記基板を加熱する基板加熱装置(1)であって、
ハウジング(2)と、
前記ハウジング(2)の内側にある少なくとも1つの処理チャンバ(3、4、5)とを備え、
前記処理チャンバには、
基板(12)を通過させるための、第1の封止可能な開口部(6、8、10)及び第2の封止可能な開口部(7、9、11)と、
処理ガスを前記処理チャンバ(3、4、5)内に導入する入口(17)と、
前記基板(12)を前記処理チャンバ(3)内に搬送し、かつ、回転可能であるように前記ハウジング(2)に取り付けられている、少なくとも2つの搬送ローラ(15)と、
前記処理チャンバから前記処理チャンバ(3)と前記ハウジングとの間の空間への前記処理ガスの漏出を防止する封止手段(20、25、26、31、32)とが設けられており、
前記封止手段は、
前記処理チャンバ(3、4、5)内で前記搬送ローラ(15)のそれぞれの端部付近にある通路空間を備えており、それぞれの前記通路空間(20)に、前記処理チャンバ(3)の内壁(23)上の第1の通路開口部(21)、前記処理チャンバ(3、4、5)の外壁(24)上の第2の通路開口部(22)、前記搬送ローラ(15)の周囲に配置されている第1のフランジ(25)、及び前記第1のフランジ(25)に隣り合って前記搬送ローラ(15)の周囲に配置されている第2のフランジ(26)が設けられており、前記第1のフランジ(25)が前記第1の通路開口部(21)付近にあり、前記第2のフランジ(26)が前記第2の通路開口部(22)付近にあり、
当該基板加熱装置には、
前記第1のフランジ(25)又は前記第2のフランジ(26)と前記通路空間(20)の壁との間に径方向に延在しているばね空間(31)と、
前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間に取り付けられているリングを備え、前記通路空間内に配置されているばね要素(30)であり、通路を効果的に封止するために、前記第1のフランジ(25)のうち軸方向に向いた側面により前記通路空間のうち前記第1の通路開口部(21)の周辺の部分に第1の力を掛けるため、及び/又は前記第2のフランジ(26)のうち軸方向に向いた側面により前記通路空間のうち前記第2の通路開口部(22)の周辺の部分に第2の力を掛けるためのばね要素(30)とが設けられており、
前記第1及び第2のフランジ(25、26)は、前記搬送ローラが軸方向に移動でき、かつ前記搬送ローラが前記第1及び第2のフランジ(25、26)の内側で回転できるように配置されており、さらに前記第1及び第2のフランジは、前記通路空間のうち前記通路開口部(21、22)の周囲の部分において径方向に移動できる、基板加熱装置。
【請求項2】
前記ばね空間からガスを排出するために前記ばね空間(31)に接続されている排出ダクト(50)が設けられている、請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項3】
前記第1のフランジ(25)の厚さaが前記第2のフランジ(26)の厚さbとは異なる、請求項1又は2に記載の基板加熱装置。
【請求項4】
パージガスを導入するために前記処理チャンバ(3)と前記ハウジング(2)との間の前記空間に接続されている供給部(18)が更に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項5】
処理ガス流を調節するための、前記処理チャンバ(3)の前記入口(17)にある第1の調節可能なガス流制御ユニット(51)と、前記ばね空間(31)からのオフガス流を調節するための、前記ばね空間(31)の排出ダクト(50)内にある第2のガス流制御ユニット(52)とが設けられており、封止された状態にある封止可能な前記処理チャンバ(3)内の前記処理ガスの圧力と、前記処理チャンバ(3)と前記ハウジング(2)との間の前記空間内のパージガスの圧力との間で、調節可能な処理ガス流及び調節可能なオフガス流により所望の圧力差を設定することができる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項6】
前記処理チャンバ(3)と前記ハウジング(2)との間の前記空間内のパージガスの前記圧力を記録する第1の圧力センサ(53)と、処理ガスの前記圧力を記録する、前記処理チャンバ(3)内の第2の圧力センサ(54)と、前記圧力センサ(53、54)及び前記調節可能なガス流制御ユニット(51、52)に接続されている制御ユニット(55)であり、前記所望の圧力差を維持するように構成されている制御ユニット(55)とが更に設けられている、請求項5に記載の基板加熱装置。
【請求項7】
前記第1のフランジ(25)及び前記第2のフランジ(26)の対向面に、径方向に向いたリブ(27、28、29、27’、28’、29’)が設けられており、前記第1のフランジ(25)及び前記第2のフランジ(26)それぞれの隣り合う2つのリブにより形成されている挟角αが互いに等しい、請求項6に記載の基板加熱装置。
【請求項8】
前記第1のフランジの前記リブ(27、28、29)が、前記搬送ローラ(15)の長手方向軸の周囲で、前記第2のフランジ(26)のリブ(27’、28’、29’)に対して前記挟角αの半分に等しい固定角βだけ回転されるように、前記第1のフランジ(25)が前記第2のフランジ(26)に対して位置決めされている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ばね要素(30)が炭素含有材料を備えている、請求項7又は8に記載の基板加熱装置。
【請求項10】
前記炭素含有材料が炭素繊維強化炭素を含む、請求項9に記載の基板加熱装置。
【請求項11】
前記第1のフランジ(25)のそれぞれ及び前記第2のフランジ(26)のそれぞれがグラファイト、溶融石英、又はホウケイ酸塩を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項12】
前記通路空間(20)の外壁に、前記搬送ローラの周囲の取外し可能な部分(32)が設けられている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項13】
前記基板(12)の搬送方向において少なくとも第1の処理チャンバ(3)の前に位置決めされている気相輸送堆積装置(42)が更に設けられている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項14】
前記搬送ローラを回転させるために前記搬送ローラ(15)に連結されている駆動装置(34)が更に設けられている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項15】
前記駆動装置(34)が、前記処理チャンバ内で前記基板の振動運動を生み出すために前記搬送ローラ(15)を回転させるように構成されている、請求項14に記載の基板加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上の材料を結晶化するために所定の温度プロファイルに従って基板を加熱する基板加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような装置が、米国特許第5,578,503号明細書から知られており、急速加熱処理装置(RTP:Rapid Thermal Processor)とも呼ばれる。
【0003】
既知の装置は、例えば基板上の材料を結晶化させるために、特定の温度プロファイルに従って基板を連続的に加熱し、冷却するのに使用される。事前に塗布されたセレン層が、とりわけ、例えば太陽電池の光電効率を向上させるのに使用される銅(Cu)、インジウム(I)、ガリウム(Ga)及び/又はセレン(Se)を含む光吸収膜層を作り出すために使用される。当該既知の装置は、例えば金属蒸気を含む処理ガスの制御された雰囲気中で、例えば銅、インジウム、ガリウム及び/又はセレンを含むこの基材を結晶化させるのに使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の装置は、いくつかの処理チャンバを備えている可能性があり、その各々は、加熱素子によりこれらの処理チャンバを加熱することによって特定の温度プロファイルに支配される。
【0005】
また、既知の装置に、例えば低酸素環境を作り出す窒素(N
2)など、パージガスがハウジング内に流入することを可能にするガス入口が設けられていてもよい。後続の処理チャンバ内では、結晶化を実施するために望まれる、たどるべき温度プロファイルに従って異なる温度が設定されていてもよい。更に、処理チャンバは、ある相転移で再結晶化が起こるように、例えば、例えばセレン蒸気を含む処理ガスを含む制御された雰囲気を有する。既知の装置に、基板を第1の開口部及び第2の開口部それぞれを通じて処理チャンバ内へ且つそこから外へ搬送する搬送手段が更に設けられている。これらの搬送手段は、基板を収容する箱を備えていてもよい。この箱内では、基板の特定の周囲環境、例えばセレン蒸気、を簡単な方法で一定の圧力又は蒸気圧に維持することができる。既知の装置の問題は、処理チャンバ内の基板の周囲環境を制御することである。
【0006】
本発明の目的は、材料の結晶化を促進し得る装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、基板上の材料を結晶化させるために所定の温度プロファイルに従って基板を加熱する基板加熱装置であって、ハウジングと、ハウジングの内側にある少なくとも第1の処理チャンバであり、基板を通過させるための、第1の封止可能な開口部及び第2の封止可能な開口部、処理ガスを第1の処理チャンバ内に導入する入口、基板を第1の処理チャンバ内に搬送し、かつ、回転可能であるようにハウジングに取り付けられている、少なくとも2つの搬送ローラが設けられている、少なくとも第1の処理チャンバと、処理チャンバから処理チャンバとハウジングとの間の空間への処理ガスの漏出を防止する封止手段であり、処理チャンバ内で搬送ローラのそれぞれの端部付近にある通路空間を備えており、それぞれの通路空間に、処理チャンバの内壁上の第1の通路開口部、処理チャンバの外壁上の第2の通路開口部、搬送ローラの周囲に固定されている第1のフランジが設けられている、封止手段と、を具備する、装置により達成される。封止手段は、処理チャンバからハウジングと処理チャンバとの間の空間への処理ガスの漏出を防止する。この処理ガスは、処理チャンバ内の搬送ローラの通路を通じて漏出する可能性がある。損失を防ぐことにより、基板の周囲環境における処理ガス、例えば蒸気相、の状態を、より適切に制御することができ、再結晶化の促進をもたらす。更に、処理ガスによるパージガスの汚染が防止される。これらの封止手段を使用することにより、基板を搬送ローラ上に直接置くことが更に可能になる。もはや箱が存在しないので、基板は、より良好に所望の温度プロファイルに従うことが可能であり、箱の熱容量が存在しないので、従って材料の再結晶化の状態を更に向上させる。
【0008】
通路空間内にフランジを設ける、その場合例えばフランジが軸方向に一方又は両方の内壁に押し付けられている、ことにより、処理チャンバとハウジングとの間の空間への通路経由の処理ガスの漏出を更に防止することができる。この構造の更なる利点が、封止しているフランジが搬送軸に沿って軸方向に滑動することができること及び処理チャンバの壁に対して径方向に移動することができ、様々な熱膨張に起因する、搬送ローラの寸法及び位置の変化を補償することを可能にすることである。
【0009】
装置の更なる実施形態では、それぞれの通路空間は、第1のフランジに隣り合って搬送ローラの周囲に固定されている第2のフランジを備えており、第1のフランジは第1の通路開口部付近にあり、第2のフランジは第2の通路開口部付近にある。第2のフランジを使用することにより、フランジの側面は、通路空間の内壁に対して互いに独立して調整することができ、通路空間の内壁とフランジとの間の公差は簡単な方法で補償することができ、従って封止の向上をもたらす。
【0010】
装置の更なる実施形態に、第1のフランジ又は第2のフランジと通路空間の壁との間に径方向に延在しているばね空間が設けられている。このばね空間は、処理チャンバの加熱又は冷却中、フランジと通路空間の壁との間の膨張差を補償することができる。
【0011】
装置の更なる実施形態に、ガスを排出するためにばね空間に接続されている排出ダクトが設けられている。
【0012】
この排出ダクト経由で、搬送軸及び第1のフランジ又は第2のフランジそれぞれの外面に沿って漏出する可能性があるオフガス又は処理ガスとパージガスとのガス混合物を排出することができ、従って、この処理ガスが処理チャンバとハウジングとの間の空間に進入しないようにする。
【0013】
装置の更なる実施形態では、第1のフランジの厚さaは第2のフランジの厚さbと異なる。第1のフランジの厚さaを第2のフランジの厚さbと異なるように選択することにより、装置が動作中であり且つ同様の間隙が封止フランジと搬送ローラとの間に存在する場合、処理チャンバと、処理チャンバとハウジングとの間の空間との間の漏出損失を、
D
ex=D
p(1+a/b) (1)
により調整することが可能であり、ここで、D
exは、排出ダクトを通るガス混合物の流れを示し、D
pは、処理チャンバ内に導入される処理ガスの流れを示す。
【0014】
更なる実施形態では、装置に、パージガスを導入するために処理チャンバとハウジングとの間の空間に接続されている供給部が設けられている。パージガスは不活性雰囲気をもたらす可能性があり、その結果、例えば処理チャンバの壁のグラファイトが燃焼しなくなる。
【0015】
更なる実施形態では、装置は、第1のフランジの軸方向に向けられた側面により第1の通路開口部の周辺の通路空間の一部に第1の力を掛けるため、及び/又は第2のフランジの軸方向に向けられた側面により第2の通路開口部の周辺の通路空間の一部に第2の力を掛けるために、通路空間内に配置されているばね要素を備えている。このばね要素は、第1のフランジ及び第2のフランジそれぞれにより通路空間の側壁に軸方向に力を掛け、通路の効率的な封止が実現される。
【0016】
更なる実施形態では、装置に、処理ガス流を調節するための、処理チャンバの入口にある第1の調節可能なガス流制御ユニットと、オフガス流を調節するための、ばねチャンバの排出ダクト内にある第2の調節可能なガス流制御ユニットとが設けられており、封止された状態にある封止可能な処理チャンバ内の処理ガスの圧力と処理チャンバとハウジングとの間の空間内のパージガスの圧力との間で、調節可能な処理ガス流及び調節可能なオフガス流により、所望の圧力差を設定することができる。正の圧力差又は負の圧力差により、閉状態にある封止可能な処理チャンバからの又はそこへの漏出ガス流の向きを調節することができる。更なる実施形態では、装置に、処理チャンバとハウジングとの間の空間内のパージガスの圧力を記録する第1の圧力センサと、処理ガスの圧力を記録する処理チャンバ内の第2の圧力センサと、圧力センサ及び調節可能なガス流制御ユニットに接続されている制御ユニットであり、所望の圧力差を維持するように構成されている制御ユニットとが設けられている。
【0017】
本装置の更なる実施形態では、ばね要素は、第1のフランジと第2のフランジとの間に取り付けられているリングを備えている。
【0018】
本装置の更なる実施形態では、第1のフランジ及び第2のフランジの対向面に、径方向に向けられたリブが設けられており、第1のフランジ及び第2のフランジそれぞれの隣り合う2つのリブにより形成される挟角αが、互いに等しい。第1のフランジ及び第2のフランジ上のリブの数は、例えば3つであってもよい。第1のフランジ及び第2のフランジ上のこれら3つのリブを使用することにより、ばねリングの圧力を調整することができる。この場合、挟角は120度である。
【0019】
本装置の更なる実施形態では、第1のフランジは、第1のフランジのリブが固定角βだけ搬送ローラの長手方向軸の周囲で第2のフランジのリブに対して回転されるように、第2のフランジに対して位置決めされており、その固定角βは挟角の半分に等しい。第1のフランジのリブを第2のフランジのリブ同士の間の中心に位置決めすることにより、ばねの圧力を効率的な方法で調整することができる。第1のフランジ及び第2のフランジのそれぞれの3つのリブが利用される場合、第1のフランジが第2のフランジに対して配置されている搬送ローラの長手方向軸の周囲の固定角βは約60度である。
【0020】
更なる実施形態では、リングは、炭素含有材料、特に炭素繊維強化炭素を含んでいる。炭素繊維強化炭素は十分な強度の耐熱材料である。
【0021】
本装置の更なる実施形態では、第1のフランジのそれぞれ及び第2のフランジのそれぞれは、グラファイト、ホウケイ酸塩、又は溶融石英を含む。グラファイト、ホウケイ酸塩、及び溶融石英は、十分な剛性の耐熱材料である。
【0022】
本装置の更なる実施形態では、第1の処理チャンバの外壁に、搬送ローラの周囲の取外し可能な部分が設けられている。第1の処理チャンバの外壁の一部を取外し可能にすることにより、簡単な方法で、搬送ローラを第1の処理チャンバ内に取り付けることができる。
【0023】
本装置の別の実施形態に、基板の搬送方向において少なくとも第1の処理チャンバの前に位置決めされている気相輸送
堆積装置が設けられている。基板加熱装置に気相輸送
堆積装置を組み込むことの利点は、セレン層が塗布された直後に装置の内部で基板を処理チャンバに搬送することができることであり、その結果として、より効率的な方法で大量生産を実現することができる。
【0024】
本装置の別の実施形態に、搬送ローラを回転させるために搬送ローラに連結されている駆動装置が設けられている。駆動装置により、基板を第1の処理チャンバ内に且つそこから外へ搬送することができる。
【0025】
本装置の更なる実施形態では、駆動装置は、第1の処理チャンバ内で基板の振動運動を生じさせるために搬送ローラを回転させるように構成されている。複数の搬送ローラを横切る基板の振動運動に因り、基板と搬送ローラとの間の接触による熱伝導が基板全体に亘って広がる。
【0026】
本発明は複数の好適な実施形態を参照して記載されるであろうが、本発明はそれらに限定されない。記載される実施形態は、単に、本発明の可能性のある説明の例であるに過ぎず、本発明の利点が別の方法でももたらされ得ることは、当業者に明らかになるであろう。
【0027】
本発明は、添付図面を参照して以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】処理チャンバ及び搬送ローラ用の通路の詳細の横断面図である。
【
図4】第1のフランジと第2のフランジとばねとの組立体の横断面図である。
【
図7】調節可能なガス流制御ユニットが設けられている装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図では、同一部分が同一参照番号で示されている。
【0030】
図1は、基板上の材料を結晶化させるために所定の温度プロファイルに従って基板加熱装置1の側面図を示す。そのような装置1は急速加熱処理装置(RTP)とも呼ばれ、例えば、基板から複数の太陽光電池を製造するために使用される。基板は、例えば、ガラス又はホウケイ酸塩を含んでいてもよく、例えば60×40cm、120×60cm、又は110×140cmのサイズを有する。装置1は、例えば積層状の鋼板などの層状材料、例えばロックウールなどの耐熱絶縁材料、及びグラファイト層のハウジング2を備えている。装置は、全てがハウジング2の内側にある、複数の、例えば3つの、処理チャンバ3、4、5を更に備えている。基板12が処理チャンバの第1の開口部6、8、10及び第2の開口部7、9、11それぞれを通じて装置内を通過するように、処理チャンバに、第1の開口部及び第2の開口部がそれぞれ設けられている。処理チャンバ3、4、5は、グラファイト、ホウケイ酸塩、又は溶融石英で作製されていてもよい。
【0031】
更に、装置に入口ポート13と出口ポート14とが設けられていてもよく、それらの間に処理チャンバ3、4、5が配置されている。入口ポート及び出口ポートは封止することができ、基板12が出入りするのを可能にするドアが設けられることが可能である。また、入口ポート及び出口ポートは、グラファイト、ホウケイ酸塩、又は溶融石英で作製されていてもよい。
【0032】
処理チャンバ3、4、5に、例えば、処理チャンバ内で所望の温度プロファイルを作り出す水晶素子45などの、発熱体が更に設けられていてもよい。プロファイル内の温度範囲は、この場合、例えば摂氏300〜550°の範囲内に設定されてもよい。装置に、それぞれの入口17によってそれぞれの処理チャンバに連結されているそれぞれの蒸発器16が更に設けられていてもよい。蒸発器16は、基板に塗布される材料、例えばセレン、を融解させて蒸発させるように設計されており、セレン材料をセレンの融解温度より上に加熱する発熱体が設けられていてもよい。塗布される材料の別の例が、例えば、銀(Ag)又は硫黄(S)であってもよい。
【0033】
蒸発した材料を含む処理ガス、及び例えば窒素が、次いで、それぞれの入口17を通じて処理チャンバ3、4、5に送られる。
【0034】
装置1に、基板12を所望の第1の温度、例えば100℃、にする予熱器40が更に設けられていてもよい。予熱器は石英管41を備えていてもよい。装置1に、既知の気相輸送
堆積装置42が更に設けられていてもよい。気相輸送
堆積装置42は、基板12の搬送方向において少なくとも第1の処理チャンバ3の前に、例えば入口ポート13と第1の処理チャンバ3との間に、位置決めされている。
【0035】
気相輸送
堆積装置42は、塗布される材料、例えばセレン、を蒸発させる蒸発器と、窒素ガスの供給のための接続部とを備えている。気相輸送
堆積装置に、流出開口部44を備えた出口ダクト42が更に設けられており、気相輸送
堆積装置は、基板12の上面に約500℃の温度を有する窒素セレン蒸気48を供給するように構成されている。流出開口部44の幅は基板の幅に対応しており、例えば60cmである。流出開口部の長さは例えば20mmである。更に、気相輸送
堆積装置に、基板上に蒸着されなかった窒素セレン蒸気48を回収するための、基板に面している回収開口部を備えた2つの回収ダクト46が設けられている。装置内に気相輸送
堆積装置を組み込むことの利点は、セレン層が塗布された直後に、装置内で基板を処理チャンバに搬送することができることであり、その結果として、より効率的な方法で大量生産を実現することができる。
【0036】
また、装置1にガス入口18が設けられており、ハウジング2と処理チャンバ3、4、5との間の空間内に低酸素環境を作り出し、それにより例えば処理チャンバ3、4、5の壁のグラファイト材料が燃焼しないようにするために、パージガス、例えば窒素(N
2)などの不活性ガスがハウジング内に流入することを可能にしてもよい。
【0037】
更に、装置に、ハウジング2の内側に真空を付与する真空ポンプ19が設けられていてもよい。装置の内側の圧力は、0.001絶対ミリバールと1100絶対ミリバールの間の範囲内に設定されてもよい。
【0038】
基板の温度プロファイル及びセレン蒸気の制御された蒸気圧に因り、所望の相転移で再結晶化が起こり得る。
【0039】
本装置に、基板を一連の処理チャンバ3、4、5のそれぞれの第1の開口部6、8、10及びそれぞれの第2の開口部7、9、11を通じて入口ポート13から出口ポート14まで移動させる搬送ローラ15が設けられていてもよい。搬送ローラ15は、溶融石英で作製されていてもよく、例えば80cmの長さと100mmの直径とを有する。処理チャンバ3、4及び5の構造は同一である。
【0040】
搬送ローラは、ハウジングに回転可能に取り付けられており、処理チャンバ3、4、5内での基板12の搬送を可能にしてもよい。
【0041】
処理チャンバ3、4、5の寸法は、いくつかの基板12が単一の処理チャンバ3、4、5内で処理され得るように選択されてもよい。
【0042】
セレン蒸気を含む処理ガスが処理チャンバから処理チャンバとハウジングとの間の空間へ流失するのを防ぐために、装置は封止手段を備えている。ある実施形態では、これらの封止手段は、搬送ローラ15のそれぞれの端部付近に設けられている通路空間20を処理チャンバの壁に備えている。
【0043】
図2は、通路空間20を中に備えた処理チャンバの細部の横断面図を示す。通路空間20に、処理チャンバ3の内壁23上の第1の通路開口部21と、処理チャンバの外壁24上の第2の通路開口部22と、搬送ローラ15の周囲に固定されており通路空間を通じた気相中の材料の損失を防ぐ第1のフランジ25及び第2のフランジ26が設けられていてもよい。第2のフランジ26は、第1のフランジ25に隣り合って搬送ローラの周囲に固定されていてもよく、第1のフランジ25は第1の通路開口部21付近にあり、第2のフランジ26は第2の通路開口部22付近にある。第1のフランジ25及び第2のフランジ26は、グラファイト、ホウケイ酸塩、又は溶融石英で作製されていてもよい。
【0044】
更に、第1のフランジ及び第2のフランジの対向面に、例えば3つの径方向に向けられたリブが設けられていてもよい。
図3は、第1のフランジ25の側面、及び第1のフランジに設けられている3つのリブ27、28、29の図を示す。更に、
図3は、第2のフランジ26の3つのリブ27’、28’、29’を第1のフランジに射影して示し、その場合、第1のフランジ及び第2のフランジそれぞれの隣り合う2つのリブにより形成されている挟角αが互いに等しく、第2のフランジに対して、搬送ローラの長手方向軸を中心に第1のフランジの3つのリブが第2のフランジの3つのリブに対して固定角βだけ回転されるように、第1のフランジを位置決めすることができ、その固定角は挟角の半分に等しい。1つのフランジ当たり3つのリブの場合には、この固定角は60度である。
【0045】
図3はフランジ25の面及びそこに設けられている3つのリブ27、28、29の図を示す。更に、
図3は、第2のフランジ26の3つのリブ27’、28’、29’を第1のフランジに射影して示す。
【0046】
通路空間は、第1のフランジ25と第2のフランジ26との間のばね空間31内に取り付けられている環状ばね要素30であって、その結果、第1のフランジ25の軸方向に向けられた側面により第1の通路開口部21の周辺の通路空間の一部に第1の力が掛けられること、及び第2のフランジ26の軸方向に向けられた側面により第2の通路開口部の周辺の通路空間の一部に第2の力が掛けられることを可能にする環状ばね要素30を更に備えていてもよい。ばね空間31は、第1のフランジ25及び第2のフランジ26と処理チャンバの壁との間に径方向に延在している。環状要素30は炭素繊維強化炭素で作製されていてもよい。ある実施形態では、ばね要素は、第1のフランジ25及び第2のフランジ26に組み込まれていてもよい。
【0047】
図4は、第1のフランジ25のリブ28、29と第2のフランジ26のリブ28’とを通って伸びているリング30を備えた第1のフランジ25及び第2のフランジ26の組立体の横断面を示す。リング30は第1のフランジの一連のリブ27、28、29及び第2のフランジの一連のリブ27’、28’、29’のそれぞれによりクランプ締めされているので、第1のフランジ25の軸方向に向けられた側面により第1の通路開口部の周辺で通路空間の一部に第1の力を掛けることができ且つ第2のフランジの軸方向に向けられた側面により第2の通路開口部の周辺で通路空間の一部に第2の力を掛けることができるように、リング30をプレストレス下に配置することができる。このことにより、通路を通る蒸発した材料の漏出を防止する、通路の封止がもたらされる。
【0048】
必要に応じて、プレストレスを増大させるために、いくつかのリング30が取り付けられていてもよい。ばね空間31は、装置を加熱すること又は冷却することに起因する、フランジ25、26の材料と処理チャンバの壁の材料との間の膨張差を補償するために、第1のフランジ25と第2のフランジ26との間に且つフランジ25、26の縁部と通路空間20の壁との間に径方向に延在している。
【0049】
処理チャンバ3に、第1のフランジ25と通路空間20の搬送軸15との間の第1の間隙を通って漏出する可能性がある、例えばセレン蒸気を含む処理ガスとN
2との混合物などのオフガス、及び第2のフランジ26と搬送軸15との間の第2の間隙を通って漏出する可能性があるパージガス又は不活性ガスの排出のための、ばね空間31に接続されている排出ダクト50が更に設けられていてもよい。ばねチャンバ31の排出ダクト50は、互いに接続されていてもよく、真空ポンプ(図示せず)に接続されていてもよい。第1のフランジ25の厚さaと第2のフランジの厚さbとは互いに等しくてもよく、又は互いに異なるように選択されてもよい。厚さaと厚さbの間の固定比率を選択すること及び入口17を通る処理ガス流に対して排出ダクト50を通る流れを調節することにより、閉じた処理チャンバ3内の処理空間の圧力と、処理チャンバとハウジング2との間の空間内のパージガスの圧力との間で、圧力差を設定することが可能である。このことは
図7を参照して説明される。
【0050】
図7は、
図1及び
図2を参照して記載されている、処理チャンバ3を備えた装置1の実施形態を図示しており、当該装置に、処理ガス流を調節するための、処理チャンバ3の入口17にある第1の調節可能なガス流制御ユニット51と、ばねチャンバ31からのオフガス流を調節するための、排出ダクト50にある第2のガス流制御ユニット52とが更に設けられている。調節可能なガス流制御ユニット51、52は、処理ガス流及びオフガス流の所望の流れD
p、D
exがそれぞれ流通することを可能にするように構成されている。調節可能な処理ガス流及び調節可能なオフガス流の結果として、所望の圧力差を、封止された状態にある封止可能な処理チャンバ3内の処理ガスの圧力と、処理チャンバ3とハウジング2との間の空間内のパージガスの圧力との間で設定することができる。
【0051】
ある実施形態では、装置に、処理チャンバ3、4、5とハウジング2との間の空間内のパージガスの圧力P
fを記録する第1の圧力センサ53と、処理ガスの圧力P
pを記録する処理チャンバ3内の第2の圧力センサ54と、圧力センサ53、54及びガス流制御ユニット51、52に接続されている制御ユニット55とが更に設けられていてもよい。制御ユニット55は、所望の処理ガス流における調整可能な圧力差P
f及びP
pを維持するように更に構成されている。更に、
図7は、通路空間20によりハウジング2に回転可能に接続されている搬送軸15を示す。通路空間20に、第1のフランジ25及び第2のフランジ26が設けられている。更に、ばね空間31は、フランジ25、26と通路空間20の壁との間に径方向に延在している。ばね空間は、更に、搬送軸15及び通路空間20の壁と開口連通している。ばね空間31は、排出ダクト50を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されている。閉じた処理チャンバの状態では、処理ガスの圧力P
pが、閉じた処理チャンバ3とハウジング2との間の空間内並びに第1のフランジ25及び第2のフランジ26と搬送軸15それぞれの間の同一間隙内のパージガスの圧力P
fと等しくなり、排出ダクトを通じて排出されるオフガス流の流れは、
D
ex=D
p(1+a/b) (1)
により求められ、ここで、D
exは、排出ダクトを通じて排出されるオフガス流の流れを表し、
D
pは、処理チャンバ内に導入される処理ガスの流れを表し、
aは、第1のフランジの厚さを表し、
bは、第2のフランジの厚さを表す。
【0052】
ある実施形態では、処理チャンバ内で排出ダクト50を通るオフガス流の流れD
exの大きさを設定することにより、処理チャンバ3とハウジング2との間の空間内のパージガスの圧力と比較して高い圧力(overpressure)又は低い圧力(underpressure)を実現することが可能であり、それにより、漏出ガス流を処理チャンバ内へ又はそこから外へ向けることが可能になる。
【0053】
処理チャンバ3内での搬送ローラ15の取付けを可能にするために、通路空間の外壁24に、搬送ローラ15の周囲の取外し可能な部分32を設けることができる。基板上でのより均一な温度分布を得るために、搬送ローラ15に、基板3と搬送ローラ15との間の熱伝導を低減する径方向に向けられたリブ34が更に設けられていてもよい。ある実施形態では、封止手段は、セレン蒸気が処理チャンバから漏出しないようにするように、処理チャンバの第1の開口部及び第2の開口部それぞれを封止する処理チャンバドアを備えている。
【0054】
図5は、処理チャンバ3の上面図を示し、処理チャンバに、処理チャンバ3の第1の開口部6を封止する第1の処理チャンバドア31と、第1の処理チャンバ3の第2の開口部7を封止する第2の処理チャンバドア32と、それぞれの処理チャンバドアを開閉するアクチュエータ33とが設けられている。また、処理チャンバドア31、32は、グラファイト、ホウケイ酸塩、又は溶融石英で作製することができる。
【0055】
図6は、処理チャンバ3の処理チャンバドア31と開口部6とを備えた処理チャンバ3の側面図を示す。更に、
図6は、処理チャンバドア31を開閉するアクチュエータ33を示す。更に、装置に、アクチュエータを始動させるためにアクチュエータに電気的に接続されている制御装置を設けることができ、当該制御装置は、第1の処理チャンバから第2の処理チャンバへの基板の通過のために処理チャンバの第1の開口部及び第2の開口部を開閉するように構成されている。
【0056】
装置1に、基板12を搬送する搬送ローラを回転させるために搬送ローラ15に結合されている駆動装置34が更に設けられていてもよい。更に、
図6は、基板12と、搬送ローラ15と、駆動装置34とを示す。駆動装置34は、基板を入口ポート13から処理チャンバ3、4、5経由で出口ポート14まで搬送するように構成されていてもよい。この場合、最高搬送速度は50〜800mm/sの範囲内である。
【0057】
駆動装置34は、処理チャンバ3、4、5内で基板12に振動運動又は水平往復運動を実施させるように更に構成されていてもよい。基板12の最大水平運動は5mmと200mmの間の範囲内である。この振動運動の期間は10〜20秒の範囲内である。これにより、基板12上により均一な温度分布がもたらされ、従って基板12が撓むのを防ぐ。
【0058】
本発明は、前述されているその好適な実施形態に限定されない。むしろ、求められている権利は以下の特許請求の範囲により定義され、多数の修正形態を可能にする。